(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗工装置においては、一般に、塗工処理を繰り返しても塗液の塗布状態が良好に保持されることが望ましい。特許文献1の技術では、流れ工程において均質な触媒層を形成するために、塗布部は、転写フィルムの搬送を停止させた状態で触媒塗液の塗布を実行している。しかし、この方法では、転写フィルムの搬送の停止と再開とが繰り返されるため、製造効率が低下する可能性があり、転写フィルムの搬送制御が複雑化してしまう可能性がある。また、特許文献1には、塗布不良が発生した場合の対処方法については開示されていない。
【0005】
特許文献2の技術では、撮像カメラによってペーストの塗布状態を撮像し、その撮像された画像データに基づいて、ペーストの塗布状態の良否を判定している。しかし、特許文献2の技術では、ペーストの塗布不良が検出された場合には復帰作業のためにペーストの塗布が一旦停止されてしまうため、流れ工程が阻害されて製造効率が著しく低下してしまう可能性がある。
【0006】
特許文献3の技術では、塗布液の濃度差に起因する塗布ムラの発生を抑制するために、塗布液の濃度をフィードバック制御によって調整している。しかし、特許文献3には、塗布不良が発生した場合に対処する技術や、塗布液の濃度以外の原因で生じる塗布不良の対策については開示されていない。
【0007】
このように、従来から、塗工装置における流れ工程など、塗工が繰り返される塗工処理において塗料の塗布状態を良好に保持する技術については、依然として改良の余地がある。そのほか、従来の塗工装置においては、その小型化や、低コスト化、省資源化、製造の容易化、使い勝手の向上等が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。本発明の第1形態は、塗膜を形成する塗工装置であって、塗工面に対して相対的に移動しつつ塗料を吐出する塗料吐出部と、前記塗料吐出部への前記塗料の供給を制御するバルブ
であって、前記塗料吐出部に接続されている出口を有するケーシングと、前記ケーシング内において前記出口に対して往復移動して前記バルブを開閉する弁体と、を備え、前記バルブが開かれるときに、前記弁体が、前記出口に向かって移動して前記出口から前記塗料を押し出すバルブと、前記バルブの開閉を制御して、前記塗料吐出部による前記塗料の吐出と停止とを制御し、前記塗料吐出部に前記塗料の吐出と停止とを繰り返させて複数の塗膜を連続して形成する塗工処理を実行し、前記塗工処理において、
前記バルブを開いて前記塗料吐出部
からの前記塗料
の吐出
を開始させるときの
前記弁体の移動量を変更する塗布制御部と、前記塗工処理において、前記塗膜の後端に前記塗料が尾をひいた塗布不良の発生を検出する塗布不良検出部と、を備え、前記塗布制御部は、前記塗布不良検出部によって前記塗布不良の発生が検出されたときに、前記塗膜を形成する
ために、前記バルブを開いて前記塗料吐出部からの前記塗料の吐出を開始させるときの前記弁体の移動量を、前記塗布不良の発生が検出される前より低下させる、塗工装置として提供される。本発明の第2形態は、
塗料を吐出する吐出口を有する塗料吐出部への前記塗料の供給を制御するバルブであって、前記塗料吐出部に接続されている出口を有するケーシングと、前記ケーシング内において前記出口に対して往復移動して前記バルブを開閉する弁体と、を備え、前記バルブが開かれるときに、前記弁体が、前記出口に向かって移動して前記出口から前記塗料を押し出すバルブを用いて塗膜を形成する塗工方法であって、(a)
前記吐出口を塗工面に対して相対的に移動させつつ、
前記バルブの開閉を制御して前記塗料の吐出と停止とを繰り返し、複数の塗膜を連続して形成する工程と、(b)前記工程(a)の実行中に、前記塗膜の後端に前記塗料が尾をひいた塗布不良の発生を検出し、前記塗布不良の発生が検出されたときに、前記塗膜を形成する
ために、前記バルブを開いて前記塗料吐出部からの前記塗料の吐出を開始させるときの前記弁体の移動量を、前記塗布不良の発生が検出される前より低下させる工程と、を備える、塗工方法として提供される。
【0009】
(1)本発明の一形態によれば、塗膜を形成する塗工装置が提供される。この塗工装置は、塗膜を形成する塗工装置であって;塗工面に対して相対的に移動しつつ塗料を吐出する塗料吐出部と;前記塗料吐出部への前記塗料の供給を制御するバルブと;前記バルブの開閉を制御して、前記塗料吐出部による前記塗料の吐出と停止とを制御する塗工制御部と;前記塗料吐出部に前記塗料の吐出と停止とを繰り返させて複数の塗膜を連続して形成する塗工処理において、前記塗料吐出部が前記塗料を吐出するときの前記バルブの開度を変更するバルブ開度制御部と;を備える。この形態の塗工装置によれば、間欠的に連続して複数の塗膜を形成する流れ工程において、塗膜の形成が開始されるときの塗料の吐出量を適切に調整することができ、塗料の塗布状態を良好に保持することができる。
【0010】
(2)上記形態の塗工装置は、さらに、前記塗料吐出部の吐出口の周辺における前記塗料の滞留を検出する滞留検出部を備えていても良く、前記バルブ開度制御部は、前記滞留検出部が所定量の前記塗料の滞留を検出した後に、前記塗料吐出部が前記塗料の吐出するときの前記バルブの開度を低下させても良い。この形態の塗工装置によれば、塗料吐出部の吐出口の周辺に付着して滞留している塗料が検出された場合には、塗料の吐出を開始する時の吐出量を減少させることによって、当該滞留している塗料の量がそれ以上増大してしまうことを抑制できる。従って、塗料吐出部の吐出口の周辺に滞留している塗料に起因して塗料の塗布状態が劣化してしまうことを抑制することができる。
【0011】
(3)上記形態の塗工装置において、前記滞留検出部は;前記吐出口の周辺を撮像する撮像部と;前記撮像部が撮像した画像に基づいて前記塗料の滞留状態を検出する撮像解析部と;を備えていても良い。この形態の塗工装置によれば、塗料吐出部の吐出口周辺における塗料の滞留の検出性を確保することができる。
【0012】
(4)上記形態の塗工装置は、さらに、前記バルブに前記塗料を供給する塗料供給部を備えていても良く;前記バルブは;前記塗料供給部と、前記塗料吐出部と、に接続されるとともに、前記塗料が充填されている塗料充填室と;前記塗料充填室と前記塗料供給部との間の接続の開閉を制御する弁体であって、前記塗料充填室内の前記塗料を前記塗料吐出部へと押し出すように前記塗料充填室内に移動して、前記塗料充填室と前記塗料供給部との接続を開く弁体と;を備え;前記バルブ開度制御部は、前記バルブの開度として、前記弁体の移動量を変更しても良い。この形態の塗工装置によれば、バルブを開く際に、塗料充填室に充填されていた塗料が弁体によって塗料吐出部に押し出されるため、塗料の吐出開始の遅延(タイムラグ)を抑制することができ、塗膜の始端の塗布状態を良好にすることができる。また、バルブの開度に応じた塗料の吐出量の制御を精度良く行うことができる。
【0013】
(5)上記形態の塗工装置において、前記弁体は、前記バルブを閉じる際に、前記塗料充填室の外部に向かって移動して、前記塗料充填室内に負圧を発生させても良い。この形態の塗工装置によれば、バルブを閉じるときの弁体の移動によって生じた塗料充填室の負圧によって塗料吐出部の塗料が塗料充填室に吸引されるため、塗膜の終端における塗料のきれを良くすることができ、塗膜の終端の塗布状態を良好にすることができる。
【0014】
(6)上記形態の塗工装置において、前記塗料は、燃料電池用触媒が分散された触媒インクであっても良い。この塗工装置によれば、良好な状態の燃料電池用の触媒電極を間欠的に連続して形成することができる。
【0015】
(7)本発明の他の形態によれば、塗膜を形成する塗工方法が提供される。この塗工方法は、塗料の吐出口を塗工面に対して相対的に移動させつつ、塗料の吐出を制御するバルブの開閉を制御して前記塗料の吐出と停止とを繰り返し、複数の塗膜を連続して形成する工程と;前記工程の実行中に、前記塗料を吐出するときの前記バルブの開度を変更する工程と、を備える。この塗工方法によれば、間欠的に連続して複数の塗膜を形成する流れ工程において、塗膜の形成を開始するときの塗料の吐出量を適切に調整することができ、塗料の塗布状態を良好に保持することができる。
【0016】
上述した本発明の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本発明の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本発明の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本発明の独立した一形態とすることも可能である。
【0017】
本発明は、塗工装置や塗工方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、塗工装置の制御方法や、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としての燃料電池用の触媒電極を形成する触媒電極形成装置の構成を示す概略図である。この触媒電極形成装置10は、流れ工程によって、帯状の電解質膜1の表面に複数の燃料電池用の触媒電極4を連続的に形成する。触媒電極形成装置10は、膜繰出部11と、触媒インク塗布部12と、乾燥部13と、搬送制御部14と、搬送ローラ15と、を備える。
【0020】
膜繰出部11は、帯状の電解質膜1がロール状に巻かれた電解質膜ロール1rを備える。膜繰出部11は、電解質膜ロール1rを周方向に回転させて電解質膜1を繰り出す。なお、電解質膜1としては、例えば、フッ素系のイオン交換樹脂の薄膜を採用することができる。膜繰出部11から繰り出された電解質膜1は、所定の間隔で配列されている複数の搬送ローラ15の回転駆動によって所定のテンション(張力)を維持されたまま、その延伸方向に所定の速度で搬送されていく。なお、膜繰出部11における電解質膜ロール1rの回転速度や、搬送ローラ15の回転速度は、搬送制御部14によって制御されている。
【0021】
触媒インク塗布部12は、膜繰出部11の下流側に配置されており、所定の搬送速度で搬送中の電解質膜1の一方の面に対して触媒インクを間欠的に塗布する。これによって、電解質膜1の表面には、その搬送方向に一列に配列された複数の触媒インクの塗布膜3が連続して形成される。ここで、「触媒インク」とは、燃料電池用の触媒を担持する導電性粒子(例えば白金担持カーボン)と、電解質膜1と同じまたは類似の電解質とを有機溶媒や無機溶媒によって分散させた粒体分散溶液である。触媒インク塗布部12の詳細な構成については後述する。
【0022】
乾燥部13は触媒インク塗布部12の下流側に配置されている。乾燥部13の内部には、電解質膜1の搬送路に沿って、複数のドライヤー13dが配列されている。乾燥部13は、電解質膜1に形成されている触媒インクの塗布膜3を、ドライヤー13dの温風によって乾燥させる。塗布膜3は、乾燥部13において溶媒成分が除去されることによって触媒電極4となる。なお、乾燥部13の下流側には、電解質膜1の巻き取りローラなどの、触媒電極4が形成された電解質膜1を回収するための回収部が設けられるが、その図示及び説明は省略する。
【0023】
触媒電極形成装置10において触媒電極4が形成された電解質膜1は燃料電池における発電体である膜電極接合体の作成に用いられる。具体的には、膜電極接合体は、触媒電極4が形成された電解質膜1の裏面に、転写フィルム等に形成しておいた触媒電極を転写させることによって形成されても良い。あるいは、膜電極接合体は、触媒電極4が形成された電解質膜1同士を面接合して形成されても良い。
【0024】
図2は触媒インク塗布部12の構成を示す概略図である。触媒インク塗布部12は、塗工部100と、塗布不良検出部200と、を備える。塗工部100は、電解質膜1に対する触媒インク2の塗布を実行する。塗工部100は、配管101〜106と、塗布制御部110と、タンク120と、ポンプ121と、第1と第2のバルブ130a,130bと、ダイヘッド150と、を備える。
【0025】
塗布制御部110は、中央処理装置(CPU)と主記憶装置とを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。塗布制御部110は、ポンプ121の駆動を制御するとともに、バルブ駆動部135を制御して、第1と第2のバルブ130a,130bの開閉を制御する。これによって、塗布制御部110は、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出を制御する。
【0026】
タンク120には触媒インク2が貯蔵されている。ポンプ121の入口は、タンク120の底面に設けられた出口と接続されており、ポンプ121の出口は配管102に接続されている。ポンプ121は、通常、塗工部100の稼働中には継続的に駆動してり、タンク120の触媒インク2を配管101を介して吸引して、配管102へと出力する。なお、塗布膜3を形成する際の触媒インク2の吐出量は、ポンプ121の回転数によって調整することが可能である。
【0027】
配管102は、下流側において、配管103,104に分岐しており、配管103,104はそれぞれ、第1と第2のバルブ130a,130bの入口に接続されている。これによって、ポンプ121が配管102に出力した触媒インク2は、各配管103,104を介して第1と第2のバルブ130a,130bへと供給される。
【0028】
第1のバルブ130aの出口は配管105を介してダイヘッド150の入口に接続されている。第2のバルブ130bの出口は配管106を介してタンク120の側面に設けられた供給口に接続されている。第1のバルブ130aが開かれているときには、第1のバルブ130aに供給された触媒インク2は配管105を介して、触媒インク2の吐出ノズルとして機能するダイヘッド150へと供給される。一方、第2のバルブ130bが開かれているときには、第2のバルブ130bに供給された触媒インク2は配管106を介してタンク120に戻る。
【0029】
図3(A),(B)は、第1と第2のバルブ130a,130bの詳細な構成と、塗布制御部110による第1と第2のバルブ130a,130bの開閉制御とを説明するための模式図である。
図3(A)には、第1のバルブ130aが開かれ、第2のバルブ130bが閉じられた状態を図示してあり、
図3(B)には、第1のバルブ130aが閉じられ、第2のバルブ130bが開かれた状態を図示してある。
【0030】
なお、
図3では、
図2と対応する構成部に同じ符号を付してある。また、第1と第2のバルブ130a,130bはそれぞれ同様な構成を有しているため、以下では、第1のバルブ130aの構成についてのみ説明し、第2のバルブ130bの構成については、第1のバルブ130aとの相違点のみを説明する。
【0031】
第1のバルブ130aは、弁箱であるケーシング131と、シール部132と、弁体133と、バルブ駆動部135と、を備える。ケーシング131は略円筒形状を有する中空容体である。第1のバルブ130aのケーシング131内は、シール部132と弁体133とが以下に説明するように配置されることによって、第1と第2のインク室131a,131bに仕切られている。
【0032】
シール部132は、略円環状を有しており、ケーシング131の中程において、その外周面とケーシング131の内壁面とを密着させた状態で固定されている。また、弁体133は、シール部132の中央の貫通孔にほぼ嵌り込む略円柱形状を有しており、その外周面とシール部132の貫通孔の内壁面とが摺擦するように配置されている。
【0033】
このように、ケーシング131は、シール部132と弁体133とで仕切られた、第1と第2のインク室131a,131bを有する。なお、第1のバルブ130aでは、第1のインク室131aが配管103に接続されており、第2のインク室131bが配管105に接続されている。一方、第2のバルブ130bでは、第1のインク室131aが配管104に接続されており、第2のインク室131bが配管106に接続されている。
【0034】
弁体133は、第1のインク室131aの中央を貫通するシャフト部134を介して、ケーシング131の外部に配置されたバルブ駆動部135に接続されている。バルブ駆動部135は、サーボモータなどの駆動力源を備えており、シャフト部134をその軸方向に往復移動させる。弁体133は、シャフト部134の軸方向への往復移動によって、シール部132の貫通孔の内周面に沿って、第1と第2のインク室131a,131bの間を往復移動する。この弁体133の往復移動によって第1のバルブ130aは以下に説明するように開閉する。
【0035】
ここで、弁体133の側面には、弁体133の移動方向に沿って走る複数の並列な直線状の溝部133dが設けられている。各溝部133dは、シール部132と弁体133との間に触媒インク2の流路を形成する。なお、各溝部133dは、第1のインク室131a側の端部が開放されており、第2のインク室131b側の端部が閉塞されている。
【0036】
第1のバルブ130aは、弁体133が移動して、各溝部133dの閉塞された端部が第2のインク室131b内に進入したときに、第1と第2のインク室131a,131bが各溝部133dを介して互いに空間的に接続されて開いた状態となる(
図3(A))。逆に、第1のバルブ130aは、弁体133が移動して、弁体133の各溝部133dの閉塞された端部がシール部132の貫通孔内に収容されたときに、第1と第2のインク室131a,131bが空間的に遮断されて閉じた状態となる(
図3(B))。
【0037】
なお、第1のバルブ130aでは、弁体133の各溝部133dがシール部132から第2のインク室131bに突出しているほど、その開度が大きくなる。即ち、第1のバルブ130aの開度は、弁体133が第2のインク室131b側に移動している移動量によって表すことができる。以後、弁体133の各溝部133dがシール部132から第2のインク室131bに突出している量を「リフト量」とも呼ぶ。
【0038】
塗布制御部110(
図2)は、触媒インク2の吐出と停止を繰り返して触媒インク2を間欠的に塗布する際には、第1と第2のバルブ130a,130bをほとんど交互に開閉させる。具体的には、塗布制御部110は、ダイヘッド150に触媒インク2を吐出させるときには、第2のバルブ130bを閉じた後に、第1のバルブ130aを開く(
図3(A))。これによって、タンク120の触媒インク2を第1のバルブ130aを介してダイヘッド150に供給する。一方、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出を停止させるときには、塗布制御部110は、第2のバルブ130bを開いた後に、第1のバルブ130aを閉じる(
図3(B))。これによって、ダイヘッド150への触媒インクの供給を停止するとともに、触媒インク2を第2のバルブ130bを介してタンク120に循環流動させる。
【0039】
ところで、本実施形態の触媒インク塗布部12では、上述した機構の第1のバルブ130aによって、第1のバルブ130aの開閉に対して、ダイヘッド150における触媒インク2の吐出と停止がリニアに実行されている。この構成によって、触媒インク2の塗布膜3の端部を良好に形成することができるが、その詳細については後述する。
【0040】
また、本実施形態の触媒インク塗布部12では、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出が停止されている間は、触媒インク2が継続的に第2のバルブ130bを介してタンク120へと循環流動される。この待機中の触媒インク2の循環流動によって、第1のバルブ130aに対して触媒インク2の供給が再開されるときに、ポンプ121の駆動力の復帰のためのタイムラグなどのロスタイムが発生してしまうことが抑制されている。
【0041】
図4は、塗工部100が備えるダイヘッド150の構成を示す概略斜視図である。
図4には、ダイヘッド150が、搬送ローラ15によって搬送されている電解質膜1に対して触媒インク2の塗布膜3を間欠的に形成している様子を図示してある。ダイヘッド150は、触媒インク2の吐出ノズルであり、互いにほぼ鏡面対象をなす外形を有する第1と第2の本体部151,152を備えている。
【0042】
第1と第2の本体部151,152は、互いの間に触媒インク2を薄膜状に吐出するための平板状の空隙であるスリット156が形成されるように、第1の本体部151を重力方向上側とし、第2の本体部152を重力方向下側として重ねられている。第1と第2の本体部151,152は、先端側(触媒インク2の吐出方向側)に、触媒インク2の吐出口153(スリット156の開口端部)に向かって互いに鋭角に傾斜する傾斜面154を有している。
【0043】
ここで、第1と第2の本体部151,152の間には、スリット156と接続され、触媒インク2をダイヘッド150の幅方向(紙面奥行き方向)に行き渡らせた上でスリット156に流入させるためのマニホールド155が形成されている。マニホールド155には、配管105(
図2)が接続されており、第1のバルブ130aから触媒インク2が供給される。配管105を介してマニホールド155に供給された触媒インク2は、マニホールド155においてダイヘッド150の幅方向に広がり、スリット156へと流入して薄膜状に成形され、吐出口153から吐出される。
【0044】
なお、本実施形態の触媒インク塗布部12では、ダイヘッド150は、その吐出口153が電解質膜1の搬送ローラ15の側面に向かって開口するように配置されている。これによって、搬送ローラ15はいわゆるバックロールとして機能し、搬送ローラ15の側面に沿って所定の張力を有するように張り渡された電解質膜1に対して触媒インク2を塗布することができ、塗布膜3の塗布状態を向上させることができる。ここで、バックロールとしての搬送ローラ15の側面の曲率は、塗布膜3の形成サイズに対して十分に大きいことが望ましい。
【0045】
このように、本実施形態の触媒インク塗布部12では、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出と停止とを繰り返す間欠的な塗工処理によって、複数の触媒電極4を連続して作成する。しかし、この流れ工程においては、次のような不具合が発生する場合があることを本発明の発明者は見出した。
【0046】
図5(A),(B)は、複数の塗布膜3を連続して形成する流れ工程において生じる不具合を説明するための模式図である。
図5(A)は、ダイヘッド150によって、電解質膜1に塗布膜3を連続して形成している様子を示す模式図である。なお、
図5(A)では、便宜上、電解質膜1を直線状に延した状態で図示してある。
図5(B)は、不具合を生じている塗布膜3の一例を模式的に図示した概略正面図である。
【0047】
ここで、本明細書では、以後、触媒インク2の塗布の開始によって形成される塗布膜3の端部を「始端部3b」と呼び、触媒インク2の塗布の停止によって形成される塗布膜3の端部を「終端部3t」と呼ぶ。本発明の発明者は、連続して複数の塗布膜3を形成する流れ工程においては、それまで正常な塗布膜3の形成が継続されていたにも拘わらず、途中から塗布膜3の終端部3tに触媒インク2のひきずりが生じ始めてしまう場合があることを見出した。また、本発明の発明者は、この触媒インク2のひきずりは以下のように発生することを見出した。
【0048】
図6(A),(B)は、塗布膜3において触媒インク2のひきずりが発生するメカニズムを説明するための模式図である。
図6(A),(B)はそれぞれ、塗工中のダイヘッド150を側面方向および上面方向に見たときの模式図である。
図6(A),(B)には、ダイヘッド150とともに、搬送ローラ15の一部と、搬送中の電解質膜1の一部とを図示してある。
【0049】
触媒インク2は、その塗料のロットの違いや、環境温度などの使用環境の条件の変化などに起因して、その粘度にばらつきが生じてしまう可能性がある。そのため、触媒電極4を形成する流れ工程においては、その途中で、触媒インク2の流動性が変化してしまい、ダイヘッド150からの吐出量が、想定されている吐出量の適正値から外れてしまう場合がある。
【0050】
特に、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出量が適正値よりも大きくなってしまった場合には、ダイヘッド150の上側(第1の本体部151側)の傾斜面154に、触媒インク2がせり上がってしまう場合がある(
図6(A))。一旦、触媒インク2の傾斜面154へのせり上がりが発生すると、吐出口153と傾斜面154との間には触媒インク2が流動しやすい触媒インク2の流動経路が形成されてしまう。
【0051】
そのため、ダイヘッド150からの間欠的な触媒インク2の吐出が繰り返されると、その流動経路を介して、吐出された触媒インク2の一部が傾斜面154へと継続的に流出し、傾斜面154上に、触媒インク2が滞留したインク溜まり2rが生じてしまう。
【0052】
このインク溜まり2rが大きくなると、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出を停止されたときに、インク溜まり2rと塗布膜3との間において触媒インク2が糸を引き、インク溜まり2rからの触媒インク2がひきずられてしまう(
図6(B))。この結果、塗布膜3の終端部3tには触媒インク2のひきずりが生じることになる。
【0053】
このように、塗布膜3の終端部3tにおける触媒インク2のひきずりは、ダイヘッド150の先端部に生じたインク溜まり2rに起因して生じてしまう。そこで、本実施形態の触媒インク塗布部12では、塗工部100が触媒電極4の形成を実行している間に、塗布不良検出部200(
図2)によって、ダイヘッド150の上面に生じるインク溜まり2rの発生を検出する。
【0054】
塗布不良検出部200は、撮像カメラ210と、照明部220と、画像検査部230と、を備える。撮像カメラ210は、例えば、CCDカメラによって構成することができる。撮像カメラ210は、ダイヘッド150の傾斜面154を含む吐出口153の周辺領域を所定の時間間隔で定期的に撮像して画像データを生成する。なお、撮像カメラ210は、複数の方向(例えば、上面方向や側面方向)からダイヘッド150の吐出口153の周辺を撮像することが好ましい。これによって、滞留している触媒インク2の検出精度を向上させることができる。
【0055】
照明部220は、画像データ上において触媒インク2が検出しやすくなるように傾斜面154上に照明光を照射する。画像検査部230は、撮像カメラ210が生成する画像データを取得し、画像データ上においてダイヘッド150に付着しているインク溜まり2rを検出する。具体的に、画像検査部230は、画像データを2値化した後にインク溜まり2rの外周輪郭線を検出して、インク溜まり2rの面積を算出する。そして、その算出結果に基づいてダイヘッド150の吐出口153周辺に滞留している触媒インク2の量を検出する。画像検査部230は、その検出結果を塗工部100の塗布制御部110に送信する。
【0056】
塗布制御部110は、画像検査部230から受信した検出結果に基づいて、触媒インク2のひきずりの発生を抑制または解消するための処理を実行する。具体的に、塗布制御部110は、以下のような処理手順の塗工処理によって、触媒インク2のひきずりの発生を抑制または解消しつつ、触媒電極4を形成する。
【0057】
図7は、塗布制御部110が実行する触媒電極4を形成するための塗工処理の処理手順を示すフローチャートである。ステップS10では、塗布制御部110は、
図3において説明したように第1と第2のバルブ130a,130bを交互に開閉させることによって、ダイヘッド150から触媒インク2の間欠的な吐出を実行する。これによって、搬送中の電解質膜1に複数の塗布膜3が所定の間隔で形成される。
【0058】
ステップS20では、塗布制御部110は、上述した画像検査部230による検出結果を受信する。塗布不良検出部200によってダイヘッド150の吐出口153の周辺に所定の量以上の触媒インク2が滞留していることが検出された場合には、塗布膜3に触媒インク2のひきずりが発生する可能性が高くなっている、または、発生してしまっている可能性がある。
【0059】
そこで、塗布制御部110は、触媒インク2のひきずりの発生を抑制または解消するためのステップS30の処理を実行する。なお、ステップS20において、塗布不良検出部200によって所定の量の触媒インク2の滞留が検出されなかった場合には、塗布制御部110は、そのまま、触媒インク2の間欠的な吐出を継続する(ステップS10)。ステップS30では、塗布制御部110は、第1のバルブ130aを開くときの弁体133のリフト量を初期の設定値よりも低下させて、ステップS10の処理へと戻る。
【0060】
ここで、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出が開始されるときの触媒インク
2の吐出量は、ほとんど、第1のバルブ
130aが開くときに弁体
133によって第1のインク室131aから押し出される触媒インク2の量によって決まる。従って、ステップS30において弁体
133のリフト量が低下されることにより、塗布膜3の形成のためにダイヘッド150からの触媒インク2の吐出が開始されるときの触媒インク2の吐出量は低減される。
【0061】
これによって、塗布膜3を形成するときの触媒インク2の吐出量を適正な範囲内にすることができ、インク溜まり2rへの触媒インク2の流動が抑制されるため、塗布膜3における触媒インク2のひきずりの発生が抑制される。また、塗布膜3において触媒インク2のひきずりが既に発生してしまっている場合であっても、塗布膜3の形成を繰り返すうちにインク溜まり2rの触媒インク2が減少するため、触媒インク2のひきずりの発生が解消される。
【0062】
図8は、本発明の発明者が行った実験結果を示す説明図である。
図8には、横軸を第1のバルブ130aが開くときの弁体133のリフト量とし、縦軸を触媒インク2のひきずりを発生することなく繰り返すことができた触媒インク2の塗布回数とするグラフを図示してある。この実験では、触媒インク2として、白金担持カーボンと固体電解質(パーフルオロスルホン酸)とを水およびアルコール溶液によって分散させた分散液を用い、電解質膜1としてパーフルオロスルホン酸膜を用いて、触媒インクの吐出を間欠的に最大N
max回行った。
【0063】
この実験では、触媒インク2の吐出開始時における第1のバルブ130aの弁体133のリフト量が小さいときには塗布膜3に触媒インク2のひきずりを発生することなく、触媒インク2の吐出をN
max回繰り返すことができた。ただし、そのリフト量がある値L
limよりも小さくしたときには、塗布膜3の始端部3bの形状が崩れてしまった。これは、吐出開始時における第1のバルブ130aの弁体133のリフト量が小さすぎると、良好な塗布膜3の始端部3bを形成するための触媒インク2の吐出量を確保できないためであると考えられる。一方、触媒インク2の吐出開始時における第1のバルブ130aの弁体133のリフト量を大きくしたときには、リフト量が大きいほど、早い段階で、塗布膜3に触媒インク2のひきずりが発生した。
【0064】
この実験結果から、第1のバルブ130aを開くときのリフト量を低下させることによって、塗布膜3における触媒インク2のひきずりの発生を抑制できることがわかる。なお、この実験では、触媒インク2のひきずりの発生を目視で確認したときには、必ず、撮像カメラ210によって、ダイヘッド150の傾斜面に所定の面積のインク溜まり2rが発生していることを検出することができた。
【0065】
ところで、本発明の発明者は、参考例として、第1のバルブ130aを開くときのリフト量ではなく、第1のバルブ130aを閉じるときの所定の期間のリフト量を変えて触媒インク2を間欠的に吐出する実験を行った。この参考例の実験では、リフト量を変化させた場合であっても、触媒インク2のひきずりを発生することなく繰り返すことができた触媒インク2の塗布回数にはわずかな差しか生じなかった。従って、この参考例の実験結果から、塗布膜3における触媒インク2のひきずりは、塗布膜3の終端部3tの形成時における触媒インク2の吐出量には影響されないことがわかる。
【0066】
このように、本実施形態の触媒インク塗布部12であれば、塗布不良検出部200によって、塗布膜3の終端部3tにおける触媒インク2のひきずりの発生原因となる、ダイヘッド150におけるインク溜まり2rを検出することができる。また、塗工部100が、その検出結果に応じて第1のバルブ130aにおけるリフト量を低下させるため、塗布膜3の終端部3tにおける触媒インク2のひきずりの発生を解消または抑制することができる。さらに、本実施形態の触媒インク塗布部12では、第1のバルブ130aによってダイヘッド150からの触媒インク2の吐出を制御しているため、塗布膜3の塗布状態が、以下のように改善されている。
【0067】
図9は、本実施形態の塗工部100によって形成される塗布膜3を塗工方向(電解質膜1の搬送方向)に切断したときの断面形状を示す概略図である。なお、
図9では、紙面左側から紙面右側に向かう方向が塗工方向である。即ち、紙面左側が塗布膜3の始端部3bであり、紙面右側が塗布膜3の終端部3tである。また、
図9には、参考例としての塗布膜3aの形状を破線で図示してある。
【0068】
後述するように、本実施形態の塗工部100によれば、第1のバルブ130aが開かれるタイミングでリニアに(即時的に)触媒インク2の吐出が開始される。従って、触媒インク2の吐出開始時における触媒インク2の吐出量を確保することができ、塗布膜3の始端部3bが、塗布面(電解質膜1の表面)に対して垂直に近い角度で切り立った端面を有するように形成される。また、本実施形態の塗工部100によれば、第1のバルブ130aが閉じられるタイミングでリニアに(即時的に)触媒インク2の吐出が停止される。従って、触媒インク2の吐出終了時において触媒インク2が余分に吐出されることが抑制され、塗布膜3の終端部3tが、始端部3bと同様に、塗布面に対して垂直に近い角度で切り立った端面を有するように形成される。
【0069】
図10(A),(B)はそれぞれ、塗布膜3の始端部3bと終端部3tとが形成されるときの第1のバルブ130aとダイヘッド150の状態を示す模式図である。上述したとおり、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出を開始するときには、第1のバルブ130aの弁体133が第2のインク室131b内へと突出する(
図10(A))。
【0070】
ここで、第1のバルブ130aが開かれる前には、ダイヘッド150のマニホールド155やスリット156、配管106、第1のバルブ130aの第2のインク室131bは、触媒インク2が充填されている状態になっている。そのため、触媒インク2の吐出開始のために弁体133が第2のインク室131bに突出すると、第2のインク室131b内の触媒インク2がダイヘッド150に向かって押し出されることになる。従って、第1のバルブ130aが開くのとほぼ同時にダイヘッド150の吐出口153から触媒インク2の吐出が開始される。
【0071】
一方、ダイヘッド150からの触媒インク2の吐出を停止するときには、上述したとおり、第1のバルブ130aの弁体133は第2のインク室131bから第1のインク室131aに向かって移動する(
図10(B))。そのため、弁体133の移動に伴って、第2のインク室131bに負圧を発生させることができ、ダイヘッド150の触媒インク2を第1のバルブ130aへと逆流させることができる(サックバック機能)。従って、ダイヘッド150における触媒インク2の逆流によって、塗布膜3とダイヘッド150の吐出口153との間の触媒インク2の切断が促進され、触媒インク2の吐出終了時における触媒インク2の余分な吐出が抑制される。
【0072】
なお、本実施形態の第1のバルブ130aに換えて、弁体の移動に伴う触媒インクの押し出しや吸引が生じないタイプのバルブを用いた場合には、
図9の破線で示したように、塗布膜3の始端部3bおよび終端部3tの形状が崩れてしまう可能性がある。具体的には、上述のタイプのバルブを用いた場合には、バルブが開いたときに即時的に触媒インク2の吐出量が確保できず、塗布膜3の始端部3bがなだらかに形成されてしまう可能性がある。また、バルブを閉じた後に、即座に触媒インク2の吐出が停止されず、余剰な触媒インク2が吐出されてしまい、塗布膜3の終端部3tに余分な触媒インク2のかたまりが形成されてしまう可能性がある。
【0073】
以上のように、本実施形態の触媒インク塗布部12であれば、塗工部100と塗布不良検出部200との連携によって、流れ工程を停止させることなく、塗布膜3の終端部3tにおける触媒インク2のひきずりの発生の解消や抑制ができる。また、第1と第2のバルブ130a,130bの開閉制御によって触媒インク2の吐出が制御されるため、塗布膜3の始塗布状態が改善されている。従って、この触媒インク塗布部12を備える触媒電極形成装置10であれば、良好な燃料電池用の触媒電極4を効率的に形成することができる。
【0074】
B.第2実施形態:
図11は、本発明の第2実施形態としての触媒電極形成装置が備える触媒インク塗布部12Aの構成を示す概略図である。第2実施形態の触媒インク塗布部12Aは、第1と第2のバルブ130a,130bに換えて、第1と第2のバルブ130aA,130bAを備えている点以外は、第1実施形態の触媒インク塗布部12の構成と同じである。なお、第2実施形態の触媒電極形成装置は、触媒インク塗布部12A以外の構成は、第1実施形態の触媒電極形成装置10と同じである。
【0075】
第2実施形態の第1と第2のバルブ130aA,130bAは、ケーシング131内に、弁体133Aと、弁座136と、を備える。弁体133Aは、弁座136中央の貫通孔に挿通されているシャフト部134を介してバルブ駆動部135と接続されており、弁座136に対して往復移動する。
【0076】
ここで、第1と第2のバルブ130aA,130bAは、弁体133Aが弁座136から離れて弁座136の貫通孔が開放されているときに開いた状態となり、弁体133Aが弁座136に密着して弁座136の貫通孔を閉塞しているときに閉じた状態となる。バルブ駆動部135はエアシリンダーを備えており、エアシリンダーによってシャフト部134とともに弁体133を往復移動させる。なお、弁体133の移動量(即ち、第1と第2のバルブ130aA,130bAの開度)は塗布制御部110によって制御されている。
【0077】
以上のように、第2実施形態の触媒インク塗布部12Aは、弁体133による触媒インク2の押し出しや吸引が発生しないタイプの第1と第2のバルブ130aA,130bAを備えている。しかし、第2実施形態の触媒インク塗布部12Aであっても、触媒インク2の吐出開始時における第1のバルブ130aAの開度を調整することによって、触媒インク2の吐出開始時における触媒インク2の吐出量を低減させることができる。従って、第1実施形態の触媒インク塗布部12と同様に、塗布膜3の終端部3tにおける触媒インク2のひきずりの発生の解消や抑制が可能である。
【0078】
C.変形例:
C1.変形例1:
上記実施形態では、触媒インク塗布部12,12Aは、塗布不良検出部200を備えていたが、塗布不良検出部200は省略されても良い。この場合には、例えば、操作者が、目視でインク溜まり2rの発生を確認し、塗布制御部110に、触媒インク2の吐出を開始するときの第1のバルブ130a,130aAの開度の低下を実行させても良い。
【0079】
C2.変形例2:
上記実施形態では、塗布不良検出部200は、インク溜まり2rの発生を検出することによって、塗布層3における触媒インク2のひきずりの発生を検出していた。しかし、塗布不良検出部200は、他の方法によって、塗布層3における触媒インク2のひきずりの発生を検出しても良い。例えば、塗布不良検出部200は、触媒インク2の粘度の変化に基づいて塗布層3における触媒インク2のひきずりの発生を検出しても良い。また、塗布不良検出部200は、撮像カメラ210によって塗布膜3を撮像し、その画像データに基づいて、触媒インク2のひきずりの発生自体を検出しても良い。
【0080】
C3.変形例3:
上記実施形態では、塗布不良検出部200は、撮像カメラ210の生成した画像データに基づいて、ダイヘッド150の吐出口153の周辺領域における触媒インク2の滞留を検出していた。しかし、塗布不良検出部200は、他の方法によって、ダイヘッド150の吐出口153の周辺領域における触媒インク2の滞留を検出しても良い。
【0081】
C4.変形例4:
上記実施形態では、塗布制御部110は、流れ工程において、塗布層3における触媒インク2のひきずりの発生を抑制または解消するために、触媒インク2の吐出を開始するときの第1のバルブ130a,130aAの開度を低下させていた。しかし、塗布制御部110は、流れ工程において、例えば、触媒インク2の吐出量不足を解消するために、触媒インク2の吐出を開始するときの第1のバルブ130a,130aAの開度を増大させる処理を実行しても良い。
【0082】
C5.変形例5:
上記実施形態では、触媒インク塗布部12,12Aは、電解質膜1に触媒電極4を形成していた。しかし、触媒インク塗布部12,12Aは、電解質膜1に換えて、樹脂フィルムなどの基材に転写用の触媒電極4を形成しても良い。
【0083】
C6.変形例6:
上記実施形態の触媒インク塗布部12,12Aでは、位置が固定されたダイヘッド150によって、搬送中の電解質膜1に対して触媒インク2を塗布していた。しかし、触媒インク塗布部12,12Aでは、ダイヘッド150を所定の速度で移動させつつ、固定的に配置された電解質膜1に対して触媒インク2を塗布しても良い。ダイヘッド150は、塗工の際にその位置が塗工面に対して相対的に移動すれば良い。
【0084】
C7.変形例7:
上記実施形態では、触媒インク2の吐出を停止しているときには、第2のバルブ130b,130bAとタンク120との間で触媒インク2を循環流動させていた。しかし、第2のバルブ130b,130bAや、触媒インク2の吐出を停止しているときの触媒インク2の循環流動は省略されても良い。ただし、触媒インク2の吐出を停止している間に触媒インク2を循環流動させておく方が、触媒インク2の吐出の再開を迅速に実行できるため望ましい。
【0085】
C8.変形例8:
上記実施形態では、塗工部100は、触媒インク2を塗料として塗布して塗膜を形成する塗工処理を実行していた。しかし、塗工部100は、他の粒体が分散された粒体分散液を塗料として塗布して塗膜を形成する塗工処理を実行しても良い。
【0086】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須であるとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。