(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記真空ポンプは、さらに、前記線状ヒータを前記管状部材の内面に密着させるために、当該線状ヒータに張力を付与する張力付与手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
前記管状部材は、前記被加熱部と同じ材料又は前記被加熱部より熱伝導率の良い材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の真空ポンプ。
前記管状部材は、前記被加熱部と同じ材料又は前記被加熱部とほぼ同じ線膨張係数の材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の真空ポンプ。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置におけるエッチング等のプロセス装置では、プロセスチャンバで使用されたガスを排気する手段として、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを使用しており、プロセスチャンバ内で使用されたガスは、真空ポンプとその排気系のガス流路を通じてプロセスチャンバの外部へ排出される。真空ポンプは、ポンプ外装ケース内にロータを有し、該ロータの回転によりガスを排気する。
【0003】
ところで、前記のようにプロセスチャンバ内から排出されるガスの中には、反応性ガスだけでなく、プロセスで副次的に生成されるガス状物質(副生成物)も含まれている。この種の反応性ガスやガス状物質は、温度が低くなると、排気系のガス流路内や真空ポンプ内で凝固し、真空ポンプ内のステータに付着し堆積することがある。そして、そのような凝固物の堆積量が多くなると、凝固物とロータとが接触し、真空ポンプにダメージを与えるおそれがある。特に、真空ポンプ内では下流側ほど圧力が高くなるため、反応性ガスやガス状物質の凝固が生じやすい。
【0004】
そこで、従来の真空ポンプでは、前記のような凝固物とロータとの接触を防止する手段として、下記《A》《B》《C》の方式でヒータを真空ポンプに設置し、ヒータによる加熱でポンプ内温度を上昇させることにより、反応性ガスやガス状生成物の凝固を防止するようにしている。
【0005】
《A》 ポンプ外装ケースの外周面にヒータを巻付ける。
《B》 ポンプ外装ケースにヒータを埋設する。
《C》 ポンプ外装ケース内の固定部材にヒータを埋設する。
【0006】
しかしながら、前記《A》のヒータ巻付け方式では、被加熱部だけでなく、その周囲への放熱も大きく、効率的に被加熱部を加熱することができない。また、このヒータの巻付け方式によると、ヒータやポンプ外装ケースの加工精度やヒータの取付け固定具合によって、ポンプ外装ケースとヒータとの密着性にバラツキが生じ、加熱のバラツキやヒータ自体の異常加熱が発生するという問題点もある。
【0007】
前記《B》のヒータ埋設方式は、例えば、特許文献1の
図1に開示されている。同文献1の
図1では、真空ポンプ(1)のポンプ外装ケース(11、13)を構成するポンプベース(13)にヒータ(51)を埋設している。その埋設の具体例として、同文献1では下記《B1》《B2》の方式を開示している。
【0008】
《B1》 ポンプベース(13)の上端面にリング状の溝(図示省略)を形成し、形成したリング状の溝内にヒータ(51)を充填材で埋設する(同文献1の段落0015を参照)。
《B2》 ポンプベース(13)を鋳造で形成する際に、ヒータ(51)を鋳込み工法によりポンプベース(13)に埋設する(同文献1の段落0015を参照)。
【0009】
しかしながら、前記《B1》のようにポンプベース(13)上端面のリング状の溝内にヒータ(51)を充填材で埋設する方式では、埋設したヒータ(51)とポンプベース(13)との間に充填材が介在し、ヒータ(51)とポンプベース(13)との密着性が悪くなり、加熱効率が低下する可能性が高い。
【0010】
また、前記《B1》の方式において、前記ヒータ(51)が予めリング状に曲げられて作製したものである場合は、その曲げのバラツキやポンプベース(13)上面のリング状の溝の寸法バラツキなどのため、特許文献1の
図3のように、ヒータ(51)の先端部をポンプベース(13)上面のリング状の溝の先端部に精度よくぴったり埋め込むことは難しく、そのようなリング状の溝の先端部にヒータ(51)の無い空白部が発生することによって、加熱効率の更なる低下を招く可能性が高い。ヒータ(51)が直線棒状である場合は、ポンプベース(13)上端面のリング状の溝に合わせて、その直線棒状のヒータ(51)をリング状に曲げる必要があるため、柔軟性のある材料でヒータ(51)を作製しなければならず、ヒータ(51)材料の制約やヒータ(51)自体のコストが高くなってしまうなどの問題もある。
【0011】
前記《B2》のようにポンプベース(13)の鋳造時に鋳込み工法でヒータ(51)をポンプベース(13)に埋設する、あるいは、ネジ溝排気部ステータ(8)の鋳造時に鋳込み工法でヒータ(51)をネジ溝排気部ステータ(8)に埋設する方式では、被加熱部であるポンプベース(13)またはネジ溝排気部ステータ(8)の仕上げ加工性が悪いという問題点がある。
【0012】
すなわち、ネジ溝排気部ステータ(8)やポンプベース(13)は、いずれも鋳造で作製され、寸法精度が要求されるため、鋳造後に仕上げ加工が必要になる。そのため、例えば前記《B2》のようにポンプベース(13)の鋳造時に鋳込み工法でヒータ(51)をポンプベース(13)に直接埋設したり、ネジ溝排気部ステータ(8)の鋳造時に鋳込み工法でヒータ(51)をネジ溝排気部ステータ(8)に直接埋設したりする方式では、鋳造後の仕上げ加工の段階で、ポンプベース(13)やネジ溝排気部ステータ(8)からヒータ(51)のリード線が露出した状態になる。このことから、ポンプベース(13)やネジ溝排気部ステータ(8)の仕上げ加工時には、露出したヒータ(51)のリード線を仕上げ加工用の切削バイトなどで切断したり、仕上げ加工時に使用される切削油や仕上げ加工後の洗浄液がヒータ(51)のリード線にかかったりしないよう、細心の注意を払わなければならず、ポンプベース(13)やネジ溝排気部ステータ(8)といった被加熱部の仕上げ加工性は悪い。また、前記のように露出したヒータ(51)のリード線がポンプ組立て時に邪魔になり、ポンプ組立作業効率が低下するという問題点もある。
【0013】
前記《C》のヒータ埋設方式は、例えば、特許文献1の
図4に開示されている。同文献1の
図4では、真空ポンプ(1)のポンプ外装ケース(11、13)内に固定部材として設けられているネジ溝排気部ステータ(8)にヒータ(51)を埋設するものであり、具体的には、予めヒータ(51)を埋設した部材(55)を作成し、その部材(55)をボルトなどでネジ溝排気部ステータ(8)に取付け固定するというものである(同文献1の段落0021を参照)。
【0014】
しかしながら、前記のようにヒータ(51)を埋設した部材(55)もまた、鋳造で作製され、寸法精度が要求されるため、鋳造後に仕上げ加工が必要になり、部材(55)の仕上げ加工の段階において、部材(55)からヒータ(51)のリード線が露出した状態になるから、先に説明したネジ溝排気部ステータ(8)などにヒータ(51)を直接埋設した場合と同じく、仕上げ加工性が悪い、及び、ポンプ組立作業効率が低下するという問題点がある。
【0015】
なお、以上の説明において、カッコ()内の符号は、特許文献1で用いられている符号である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
なお、本実施形態の説明では真空ポンプの一例としてターボ分子ポンプについて説明するが、本発明はターボ分子ポンプに限定されず、ネジ溝ポンプ段を有するポンプ、例えばドラッグポンプなどにも適用できる。また、後述の各実施形態、実施例及び変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0031】
図1は、本発明を適用した真空ポンプ(加熱手段をポンプベースに設けた実施例)の断面図である。同図の真空ポンプPは、半導体製造装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置におけるプロセスチャンバやその他の密閉チャンバのガス排気手段等として利用される。同真空ポンプPは、外装ケース1内に、回転翼ブレード13と固定翼ブレード14により気体を排気する翼排気部Ptと、ネジ溝16を利用して気体を排気するネジ溝排気部Psと、これらの駆動系とを有している。
【0032】
外装ケース1は、筒状のポンプケース1Aと有底筒状のポンプベース1Bとをその筒軸方向にボルトで一体に連結した有底円筒形になっている。ポンプケース1Aの上端部側はガス吸気口2として開口しており、ポンプベース1Bの下端部側面にはガス排気口3を設けてある。
【0033】
ガス吸気口2は、ポンプケース1A上縁のフランジ1Cに設けた図示しないボルトにより、例えば半導体製造装置のプロセスチャンバ等、高真空となる図示しない密閉チャンバに接続される。ガス排気口3は、図示しない補助ポンプに連通するように接続される。
【0034】
ポンプケース1A内の中央部には各種電装品を内蔵する円筒状のステータコラム4が設けられており、ステータコラム4はその下端側がポンプベース1B上にネジ止め固定される形態で立設してある。
【0035】
ステータコラム4の内側にはロータ軸5が設けられており、ロータ軸5は、その上端部がガス吸気口2の方向を向き、その下端部がポンプベース1Bの方向を向くように配置してある。また、ロータ軸5の上端部はステータコラム4の円筒上端面から上方に突出するように設けてある。
【0036】
ロータ軸5は、ラジアル磁気軸受10とアキシャル磁気軸受11の磁力で径方向と軸方向が回転可能に浮上支持され、駆動モータ12により回転駆動される。また、このロータ軸5の上下端側には保護ベアリングB1、B2を設けている。
【0037】
ステータコラム4の外側にはロータ6が設けられている。ロータ6は、ステータコラム4の外周を囲む円筒形状であって、ロータ軸5に一体化されていて、かつ、そのロータ軸5を回転軸心としてポンプケース1A内で回転するように構成してある。
【0038】
従って、
図1の真空ポンプPでは、ロータ軸5、ラジアル磁気軸受10、10及びアキシャル磁気軸受11が、ロータ6をその軸心周りに回転可能に支持する支持手段として機能する。また、このロータ6はロータ軸5と一体に回転するので、ロータ軸5を回転駆動する駆動モータ12がロータ6を回転駆動する駆動手段として機能する。
【0039】
駆動モータ12、保護ベアリングB1とB2、ラジアル磁気軸受10及びアキシャル磁気軸受11の詳細構成については業界周知の内容のため、説明を省略する。
【0040】
《翼排気部Ptの詳細構成》
図1の真空ポンプPでは、ロータ6の略中間より上流(ロータ6の略中間からロータ6のガス吸気口2側端部までの範囲)が翼排気部Ptとして機能する。以下、この翼排気部Ptの詳細構成を説明する。
【0041】
ロータ6の略中間より上流側のロータ6外周面には回転翼ブレード13が一体に複数設けられている。これら複数の回転翼ブレード13は、ロータ6外周面からロータ径方向に突出した形態になっていて、かつ、ロータ6の回転軸心(ロータ軸5)若しくは外装ケース1の軸心(以下「ポンプ軸心」という)を中心として放射状に配置してある。また、回転翼ブレード13は、ロータ6の外径加工部と一体的に切削加工で切り出し形成した切削加工品であって、気体分子の排気に最適な角度で傾斜している。
【0042】
ポンプケース1Aの内周面側には固定翼ブレード14が複数設けられており、これらの固定翼ブレード14は、ポンプケース1A内周面からロータ6外周面に向って突出した形態になっていて、かつ、ポンプ軸心を中心として放射状に配置してある。これらの固定翼ブレード14もまた、回転翼ブレード13と同じく、気体分子の排気に最適な角度で傾斜している。
【0043】
そして、
図1の真空ポンプPにおいては、前記のような複数の回転翼ブレード13と固定翼ブレード14とがポンプ軸心に沿って交互に多段に配置されることによって多段の翼排気部Ptを形成している。
【0044】
《翼排気部Ptによる排気動作説明》
以上の構成からなる翼排気部Ptでは、駆動モータ12の起動により、ロータ軸5、ロータ6および複数の回転翼ブレード13が一体に高速回転し、最上段の回転翼ブレード13がガス吸気口2から入射した気体分子に下向き方向の運動量を付与する。この下向き方向の運動量を有する気体分子が固定翼14によって次段の回転翼ブレード13側へ送り込まれる。このような気体分子への運動量の付与と送り込み動作とが繰り返し多段に行われることにより、ガス吸気口2側の気体分子はロータ6の下流に向かって順次移行するように排気される。
【0045】
《ネジ溝排気部Psの詳細構成》
図1の真空ポンプPでは、ロータ6の略中間より下流(ロータ6の略中間からロータ6のガス排気口3側端部までの範囲)がネジ溝排気部Psとして機能する。以下、このネジ溝排気部Psの詳細構成を説明する。
【0046】
ロータ6の略中間より下流側のロータ6は、ネジ溝排気部Psの回転部材として回転する部分であり、ネジ溝排気部ステータ15の内側に配置されている。
【0047】
ネジ溝排気部ステータ15は、筒形の固定部材であって、ロータ6の外周(ロータ6の略中間より下流)を囲むように配置されている。また、このネジ溝排気部ステータ15はその下端部がポンプベース1Bで支持されるように設置してある。
【0048】
ネジ溝排気部ステータ15の内周部には、深さが下方に向けて小径化したテーパコーン形状に変化するネジ溝16を形成してある。このネジ溝16は、ネジ溝排気部ステータ15の上端から下端にかけて螺旋状に刻設してあり、かかるネジ溝16により、ロータ6とネジ溝排気部ステータ15との間には、螺旋状のネジ溝排気通路Sが設けられる構成になっている。なお、図示は省略するが、先に説明したネジ溝16をロータ6の外周面に形成することで、ネジ溝排気通路Sが設けられる構成も採用し得る。
【0049】
ネジ溝排気部Psでは、ネジ溝16とロータ6の外周面でのドラッグ効果により気体を圧縮しながら移送するため、ネジ溝16の深さは、ネジ溝排気通路Sの上流入口側(ガス吸気口2に近い方の通路開口端)で最も深く、その下流出口側(ガス排気口3に近い方の通路開口端)で最も浅くなるように設定してある。
【0050】
ネジ溝排気通路Sの上流入口は、前述のように多段に配置されている回転翼ブレード13と固定翼ブレード14のうち、最下段の翼(
図1の例では、最下段の固定翼ブレード14)の下流に形成される隙間Gに連通しており、また、そのネジ溝排気通路Sの下流出口は、ガス排気口3側に連通するように構成してある。
【0051】
《ネジ溝排気部Psにおける排気動作説明》
先に説明した翼排気部Ptの排気動作による移送で最下段の翼(
図1の例では、固定翼ブレード14)に到達した気体分子は、ネジ溝排気通路Sの上流入口から同ネジ溝排気通路Sに移行する。移行した気体分子は、ロータ6の回転によって生じる効果、すなわちロータ6の外周面とネジ溝16でのドラッグ効果によって、遷移流から粘性流に圧縮されながらガス排気口3に向って移行し、最終的に図示しない補助ポンプを通じて外部へ排気される。
【0052】
《加熱手段の構成説明》
図1の真空ポンプPは、真空ポンプP内でのガスの凝固による堆積を加熱により低減する手段として、加熱手段17を有している。加熱手段17は、被加熱部(
図1の例では、ポンプベース1B)にパイプからなる管状部材18を埋設し、該管状部材18内に線状ヒータ19を通して設置した構造になっている。
【0053】
図2は、
図1に示すA−A線で切断した加熱手段の第1の実施例の断面図である。
【0054】
この第1の実施例において、加熱手段17の管状部材18は、被加熱部であるポンプベース1Bの断面形状に合わせてC字形状に形成されるとともに、少なくとも2ヶ所に開口した構造になっている。
図2では、管状部材18の両端が開口部OP1、OP2として2箇所(具体的には、
図1に示すポンプベース1Bの外面)に開口する例を示したが、この例に限定されることはない。管状部材18の開口する箇所やその開口の数は、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、管状部材18の途中に穴が開いて開口している構成も採用しうる。さらに、管状部材18としてはパイプ以外の他の管体を採用してもよい。
【0055】
そして、この第1の実施例では、線状ヒータ19は、前記管状部材18の一方の開口部OP1から該管状部材18内に入って、該管状部材18の他方の開口部OP2より該管状部材18外に出るように設置してある。
【0056】
図3(a)(b)は、
図2に示した管状部材の開口部と真空ポンプのガス排気口との位置関係の一例の説明図である。
【0057】
図3(a)は、ガス排気口3の径方向左右両側またはガス排気口3のポンプ軸心方向上部に、前記管状部材18の開口部OP1、OP2が位置する例であり、
図3(b)は、ガス排気口3のポンプ軸心方向上部に、前記管状部材18の開口部OP1、OP2が位置する例である。
【0058】
図3(a)の例では、管状部材18の開口部OP1、OP2間にガス排気口3が介在する構成になるので、その開口部OP1、OP2間の幅はガス排気口3の直径よりやや長くなるが、
図3(b)の例では、管状部材18の開口部OP1、OP2間にガス排気口3が介在しないので、その開口部OP1、OP2間の幅はガス排気口3の直径より短くすることができる。
【0059】
前記管状部材18の開口部OP1、OP2は、先に説明した
図3(a)(b)のように真空ポンプPのガス排気口3付近に開口するのが好ましい。そのように開口した場合は、ガス排気口3への配管の接続作業と、線状ヒータ19のリード線19Aの配線作業とを一箇所で集中的に行えるためである。
【0060】
図4は、
図1に示すA−A線で切断した加熱手段の第2の実施例の断面図である。
【0061】
この第2の実施例において、加熱手段17の管状部材18は、先に説明した第1の実施例の管状部材18(
図2参照)を2本のパイプ18A、18Bで構成している。このような構成例において、それぞれのパイプ18A、18Bは、少なくとも2ヶ所に開口している。
図3では、各パイプ18A、18Bの両端が開口部OP1、OP2として2箇所(具体的には、
図1に示すポンプベース1Bの外面)に開口する例を示したが、この例に限定されることはない。各パイプ18A、18Bの開口する箇所やその開口の数は、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、パイプ18A、18Bの途中に穴が開いて開口している構成も採用しうる。
【0062】
そして、この第2の実施例では、前記各パイプ18A、18B内に線状ヒータ19を個別に通して設置してある。具体的には、一方のパイプ18A内の線状ヒータ19は、そのパイプ18の一方の開口部OP1から該パイプ18A内に入って、該パイプの他方の開口部OP2より該パイプ18A外に出るように設置してある。もう一つのパイプ18B内の線状ヒータ19も同様である。
【0063】
前記第2の実施例では、第1の実施例の管状部材18(
図2参照)を2本のパイプ18A、18Bで構成したが、これに限定されることはなく、例えば3本又は4本のパイプなど、パイプの数は必要に応じて適宜変更することができる。
【0064】
この第2の実施例のように管状部材18として2本のパイプ18A、18Bを採用するなど、複数本のパイプを採用した例では、ヒータ1個あたりの加熱容量を小さくすることができ、部分加熱も可能になる。例えば、2本のパイプ18A、18Bを採用した例の場合、一方のパイプ18A付近のみを加熱したい場合は、一方のパイプ18A内に設置されている線状ヒータ19を動作させ、他方のパイプ18B内に設置してある線状ヒータ19の動作を休止にすることで、加熱したい部分(一方のパイプ18A付近)のみを部分的に加熱することができ、無駄な加熱がなくなるという利点がある。
【0065】
なお、この第2の実施例で説明したパイプ18A、18Bの開口部OP1、OP2もまた、第1の実施例で説明した管状部材18と同様に、真空ポンプPのガス排気口3付近に開口するのが好ましい。
【0066】
前記第1、第2の実施例では、加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bをポンプベース1Bに埋設したが、かかる管状部材18やパイプ18A、18Bは、その埋設場所に関する変形例として、例えば
図7に示すように、ネジ溝排気通路Sの下流部を形成しているネジ溝排気部ステータ15の下部に埋設することもできる。
【0067】
ネジ溝排気部ステータ15やポンプベース1Bは鋳物で形成されるので、前記第1及び第2の実施例において、管状部材18やパイプ18A、18Bは鋳込み工法により、ネジ溝排気部ステータ15やポンプベース1Bに埋設することができる。
【0068】
図5(a)及び(b)は、
図1、
図2、
図4、
図7に示した加熱手段において、線状ヒータに張力を付与する張力付与手段の説明図である。
【0069】
この
図5(a)及び(b)の張力付与手段21A、21Bは、いずれも、例えば
図2の管状部材18や
図4のパイプ18A、18B内に設置してある線状ヒータ19に対して所定の張力を付与することにより、線状ヒータ19を管状部材18やパイプ18A、18Bの内面に密着させるための手段として機能する。これより、線状ヒータ19と管状部材18やパイプ18A、18Bとの間での密着性が向上し、効率よく加熱することが可能になる。
【0070】
図5(a)の張力付与手段21Aは、管状部材18又はパイプ18A、18Bの開口部OP1、OP2において、線状ヒータ19の両端を剛性のある連結部材23で連結した構造になっている。この連結部材23の中央部付近には調節ボルト24が設けられており、調節ボルト24を回すことにより、連結部材23はその長さLを任意の長さに変更することができる。
【0071】
例えば、連結部材23の長さが
図5(a)に示す長さLであるとき、線状ヒータ19には張力が付与されない。このとき、特に
図2(a)の破線で囲んだ部分において、ヒータ19の密着性低下が生じる可能性が高い。ここで、連結部材23の長さLを短く変更すると、短くなった連結部材23で線状ヒータ19の両端が引っ張られ、線状ヒータ19に所定の張力が付与されることにより、
図2(a)の破線で囲んだ部分でもヒータ19の密着性が高まるようになる。なお、連結部材23の長さが短くなるほど、線状ヒータ19に付与される張力は大きくなる。
【0072】
図5(b)の張力付与手段21Bは、管状部材18又はパイプ18A、18Bの開口部OP1、OP2において、線状ヒータ19の両端を引張バネ25で連結し、その引張バネ25のバネ力で線状ヒータ19の両端を引っ張ることにより、線状ヒータ19に張力を付与する構成になっている。
【0073】
この
図5(b)に示す引張バネ25よりもバネ力の大きい引張バネを採用した場合、線状ヒータ19に付与される張力は大となり、逆に、小さなバネ力を採用した場合、その張力は小さくなる。
【0074】
図6(a)は、
図1、
図2、
図3、
図7に示した加熱手段の管状部材、または
図4に示した加熱手段のパイプを支持する支持部材の説明図、
図6(b)は、その支持部材の具体例の説明図である。
【0075】
図1の加熱手段17のように管状部材18をポンプベース1Bに鋳込み工法で埋設する時や、
図7の加熱手段17のように管状部材18をネジ溝排気部ステータ15に同工法で埋設する時は、当該管状部材18を位置決め支持する手段として、
図6(a)の支持部材26を用いる。鋳型に流し込んだ溶融金属の流動による管状部材18の位置ずれを防止するためである。このことは、
図4に示した加熱手段17のパイプ18A、18Bを鋳込み工法でポンプベース1Bまたはネジ溝排気部ステータ15に埋設する場合も、同様である。
【0076】
図6(a)の支持部材26は例えば同図(b)のようなU字状の線材からなり、この線材のU字部を管状部材18の外周面に引っ掛けて当該管状部材18をその径方向外向きに引っ張ることにより、当該管状部材18は所定位置に精度よく位置決め支持される。
【0077】
以上説明した加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bは、加熱効率の向上などを図る観点より、被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15と同じ材料か、又は、そのような被加熱部より熱伝導率の良い材料で形成することが好ましい。
【0078】
更に、以上説明した加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bは、加熱時の線膨張係数の差で生じる変形・破損などの発生を低減する為に、被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15と同じ材料か、又は、そのような被加熱部とほぼ同じ線膨張係数の材料で形成することが好ましい。
【0079】
例えば、加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bの線膨張係数が、被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15の線膨張係数よりも大きい場合は、加熱によって管状部材18やパイプ18A、18Bの外径が被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15の内径よりも大きくなり、加熱手段を被加熱部に押し付けるような変形が発生する。
【0080】
逆に、加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bの線膨張係数が、被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15の線膨張係数よりも小さい場合は、加熱によって管状部材18やパイプ18A、18Bの外径が被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15の内径よりも小さくなり、隙間が発生するような変形をする。
【0081】
加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bと被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15とにおいて、それぞれの線膨張係数に大きな差があると、加熱手段17には異常な力が掛かり、故障に繋がる為、加熱手段17の管状部材18やパイプ18A、18Bは、被加熱部であるポンプベース1Bあるいはネジ溝排気部ステータ15と同じ材料か、又は、そのような被加熱部とほぼ同じ線膨張係数の材料で形成することが好ましい。
【0082】
以上説明した実施形態の真空ポンプPにあっては、ポンプ外装ケース1内でのガスの凝固による堆積を加熱により低減する加熱手段17の具体的な構成として、前記の通り、かかる加熱手段17は、被加熱部(ポンプベース1B、ネジ溝排気部ステータ15)に管状部材18またはパイプ18A、18Bを埋設し、該管状部材18又はパイプ18A、18B内に線状ヒータ19を通して設置する構造を採用した。このため、被加熱部が鋳造で作製され、その寸法精度が要求されるため、鋳造後に被加熱部の仕上げ加工が行われる場合には、最初に、被加熱部の鋳造時に鋳込み工法で管状部材18またはパイプ18A、18Bを被加熱部に埋設し、被加熱部の仕上げ加工終了後に、前記のように埋設された管状部材18またはパイプ18A,18Bに線状ヒータ19を通して設置する方式(ヒータ後付け方式)を採用することができる。従って、被加熱部の仕上げ加工の際にヒータ19のリード線19Aが従来のように被加熱部から露出することはなく、よって、露出したヒータのリード線を仕上げ加工用の切削バイトなどで切断したり、仕上げ加工時に使用される切削油や仕上げ加工後の洗浄液がヒータのリード線にかかったりしないよう、細心の注意を払う必要もなく、被加熱部の仕上げ加工性が良い。また、真空ポンプ組立て完了後に、管状部材18内に線状ヒータ19を通すことによって被加熱部に線状ヒータ19をセットすることもでき、これにより、真空ポンプ組立て時には被加熱部から線状ヒータ19のリード線19Aが露出しないので、そのように露出したリード線が真空ポンプ組立ての邪魔になることもなく、真空ポンプ組立作業効率も向上する。
【0083】
さらに、前記実施形態の真空ポンプPでは、前記のように被加熱部に埋設された管状部材18またはパイプ18A、18Bの具体的な構成として、当該管状部材18またはパイプ18A、18Bは少なくとも2箇所に開口する構成を採用した。このため、その2ヶ所の開口部OP1、OP2から線状ヒータ19の両端を引き出して、当該線状ヒータ19に所定の張力を付与することができ、管状部材18またはパイプ18A、18Bへの組立作業性も向上する。また、これにより、線状ヒータ19と管状部材18またはパイプ18A、18Bとの密着性を高めることができるため、線状ヒータ19による加熱効率の向上を図れる。
【0084】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。