特許第6147989号(P6147989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147989
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】土砂投入用減衰器
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/00 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   E02F7/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-249114(P2012-249114)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-98237(P2014-98237A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】天明 敏行
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄二
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121364(JP,A)
【文献】 特開平10−000384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/627−3/815、3/88−3/96、5/00−7/10
E02D 15/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形形状の胴体を有するサイクロン式に構成され、水域上で土砂を水とともにポンプ圧送する土砂の輸送ラインの終端に設置され、前記輸送ラインの終端から水とともに排出される土砂を前記胴体内に通し螺旋状に回転させて土砂の勢いを減衰し水域内の投入地点に投入する土砂投入用減衰器において、
前記胴体は、
少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次拡径される略円錐台形に形成され、上部側に土砂の流入口を有する上側胴部と、
前記上側胴部の下部に連続し、少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次縮径される略逆円錐台形に形成され、下部に土砂の排出口を有する下側胴部と、
を備え、
前記上側胴部の軸方向の長さは前記下側胴部の軸方向の長さよりも長く、前記胴体の中心軸と前記上側胴部の内面とのなす角度は前記胴体の中心軸と前記下側胴部の内面とのなす角度よりも小さく設定されて、前記上側胴部は前記下側胴部よりも大きい円錐台形に、前記下側胴部は前記上側胴部よりも小さい逆円錐台形に形成されてなり、
前記胴体に通す土砂を、前記上側胴部の内面を案内にして回転し、前記下側胴部の内面を案内にして前記土砂の排出口に送り出し排出する、
ことを特徴とする土砂投入用減衰器。
【請求項2】
土砂の排出口は下側胴部の下部に下方に向けて延びる略円柱状に形成される請求項1に記載の土砂投入用減衰器。
【請求項3】
上側胴部の上面に空気の排出口を有する請求項1又は2に記載の土砂投入用減衰器。
【請求項4】
空気の排出口は上側胴部の上面に上方に向けて延びる略円柱状に形成される請求項3に記載の土砂投入用減衰器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの貯水池、湖沼、海、河川などの水域に土砂を水とともに投入するのに使用する土砂投入用減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダムの貯水池、湖沼、海、河川などの水域で、水質の維持を図る堆砂(排除)対策や底質の改善を図る覆砂対策に、土砂を水域内で移動させる方法が有効とされている。しかしながら、この方法を実施する場合、水域周辺への濁りの影響を避けるために、濁りの発生を可及的に抑制する必要がある。
【0003】
例えば、ダム貯水池内の堆砂を浚渫して貯水池内で移動させる場合、一般に、グラブ浚渫やポンプ浚渫が採用される。
【0004】
グラブ浚渫は、貯水池内の採取元で、グラブ浚渫船に吊されたグラブバケットを使い、水底の土砂を掴み取って土運船に投下し、土運船で土砂を貯水池の移動先へ搬送した後、移動先で、グラブ浚渫船のグラブバケットを使って土運船から土砂を掴み上げ、貯水池内の移動地点に投入する。このグラブ浚渫の場合、土砂の採取先ではグラブバケットで水底の土砂を掴み取り、土砂の移動先ではグラブバケットで土砂を貯水池の水面上から投入するので、土砂の採取先でも移動先でも、濁水の発生を抑制することが難しい。
【0005】
これに対してポンプ浚渫は、貯水池内の採取元で、ポンプ浚渫船の吸引ポンプによって水底の土砂を連続して吸引し、搬送管を介して搬送し、移動先で排出する。このポンプ浚渫の場合、土砂の採取元で土砂をポンプにより吸引するので、土砂の採取元での濁水の発生が少ないが、排出先では濁水の抑制が課題になる。
そこで、従来は、搬送管の終端で、サイクロンやトレミー管などの土砂投入用減衰器を使って、搬送管の終端から排出される土砂の勢いを減衰することが行われている。
従来のサイクロンは、例えば特許文献1に記載されているように、円柱状の胴部からなり、その下端に漏斗部を有し、その下端が開口される。このようにして搬送管の排出口から勢いよく吐出される土砂をサイクロンの内面に沿って螺旋状に回転させて、土砂の勢いを減衰するようになっている。
トレミー管は、例えば特許文献2に記載されているように、外筒管と内管で構成され、内管の上部に開口を設けた構造を有する。このようにして土砂を内管に投入すると、内管の上部開口に負圧が発生し、濁質分が外筒管と内管の間から吸い上げられ、内管内に戻されること(循環流の発生)で濁質の沈降を促進し濁りの拡散を抑制するようになっている。
このようにポンプ浚渫では、土砂投入用減衰器を併用することで、土砂の採取先でも移動先でも、濁水の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−121364公報
【特許文献2】特開2011− 69076公報
【特許文献3】特願2011−191677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本願出願人は、ポンプ浚渫に関するもので、先の出願(特許文献3)で、ダム貯水池などの水底の堆砂を連続的に効率よく吸引し、長い距離でも搬送することのできるエジェクターポンプを用いた土砂輸送システムを提案した。このシステムはダムの貯水池他各水域で土砂の移動に使用することが可能である。
この土砂輸送システムは、超高圧ポンプ、特殊エジェクター、吸引管、流体注入装置及び輸送管ラインを備え、エジェクターを流体注入装置とともに駆動して、水底の堆砂を流体注入装置により注入される流体と混合して、吸引管を通してエジェクターに吸引し、輸送管ラインへ圧送するようになっている。かかるエジェクターポンプはジェット水による負圧を利用して吸引・輸送を行うので、例えばサンドポンプと比較するとインペラの摩耗がない分だけ、耐久性が高く、閉塞の可能性が少ない点で活用が期待される。
【0008】
しかしながら、この土砂輸送システムでは、輸送管ラインの終端から排出される土砂の勢いを減衰するため、従来の土砂投入用減衰器を採用し、輸送管ラインの終端に設置して、この減衰器を通じて、土砂を水域内に投入した場合、次のような問題がある。
(1)この土砂輸送システムの場合、輸送管ラインに圧送される土砂と水の勢いは従来のポンプ圧送による場合に比べて大きく、輸送管ラインの終端から土砂と水が相当の勢いで排出されるため、輸送管ラインの終端から排出された土砂と水は従来のサイクロンの一定の円柱面で回転動作してもその減衰能力が低く、十分な減衰効果が得られていない。このため、土砂をサイクロンを通じて水域内に排出しても、水域内での濁りの拡散を抑制できない。
(2)この土砂輸送システムの場合、礫を輸送する場合は、特に大量の土砂と水が相当の勢いで排出され、また、土砂の輸送距離が長くなると、空気を用いて、流速を増加させて輸送を行うため、排出側での水の勢いの確実な減衰能力が求められるところ、従来の円柱型のサイクロンでは、既述のとおり、十分な減衰効果は期待できない。また、空気を用いた場合、輸送管ラインに大量の空気が混入されるため、輸送管ラインの終端でこの空気の処理が必要となるが、従来のサイクロンでは、この空気の処理に対応できない。
(3)この土砂輸送システムの場合、水域内の土砂の輸送終点に撒布台船が設置されて、この台船上にサイクロンが搭載され、輸送管ラインから排出された土砂と水は、このサイクロンを通じて、水域の水面に対して上方から排出されるため、土砂と水が水面を叩くことから、土砂をサイクロンを通じて水域内に排出しても、水域内での濁りの拡散を抑制できない。
(4)この土砂輸送システムの場合、土砂と水が輸送管ラインを通じて圧送され、輸送管ラインの終端から排出されるので、輸送管ラインの終端に土砂を直接投入する形式のトレミー管は利用できない。なお、この点について実験を行ったところ、トレミー管に循環流が生じないことが確認された。また、一般に、トレミー管を輸送管ラインの終端に設置する場合、水中にトレミー管を設置するための設備が必要で、施工に多くの手間がかかるため、この点でも、この土砂輸送システムに適していない。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の土砂投入用減衰器において、本願出願人提案の土砂輸送システムを含む各種ポンプにより土砂を圧送するシステムを用いて、水域内での土砂の移動を実施する場合に、水域上の土砂の輸送ラインの終端に設置され、土砂の輸送ラインの終端から排出される土砂を可及的に遅い速度でスムーズに水域内の投入地点に投入し、水域内に濁水の発生及びその拡散を抑制すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、
筒形形状の胴体を有するサイクロン式に構成され、水域上で土砂を水とともにポンプ圧送する土砂の輸送ラインの終端に設置され、前記輸送ラインの終端から水とともに排出される土砂を前記胴体内に通し螺旋状に回転させて土砂の勢いを減衰し水域内の投入地点に投入する土砂投入用減衰器において、
前記胴体は、
少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次拡径される略円錐台形に形成され、上部側に土砂の流入口を有する上側胴部と、
前記上側胴部の下部に連続し、少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次縮径される略逆円錐台形に形成され、下部に土砂の排出口を有する下側胴部と
を備え、
前記上側胴部の軸方向の長さは前記下側胴部の軸方向の長さよりも長く、前記胴体の中心軸と前記上側胴部の内面とのなす角度は前記胴体の中心軸と前記下側胴部の内面とのなす角度よりも小さく設定されて、前記上側胴部は前記下側胴部よりも大きい円錐台形に、前記下側胴部は前記上側胴部よりも小さい逆円錐台形に形成されてなり、
前記胴体に通す土砂を、前記上側胴部の内面を案内にして回転し、前記下側胴部の内面を案内にして前記土砂の排出口に送り出し排出する、
ことを要旨とする。
た、この減衰器は各部に次のような構成を備える。
(1)土砂の排出口は下側胴部の下部に下方に向けて延びる略円柱状に形成される。
(2)上側胴部の上面に空気の排出口を有する。この場合、空気の排出口は上側胴部の上面に上方に向けて延びる略円柱状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の土砂投入用減衰器によれば、上記のとおり胴体は、少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次拡径される略円錐台形に形成され、上部側に土砂の流入口を有する上側胴部と、上側胴部の下部に連続し、少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次縮径される略逆円錐台形に形成され、下部に土砂の排出口を有する下側胴部とを備え、上側胴部の軸方向の長さは下側胴部の軸方向の長さよりも長く、胴体の中心軸と上側胴部の内面とのなす角度は胴体の中心軸と下側胴部の内面とのなす角度よりも小さく設定されて、上側胴部は下側胴部よりも大きい円錐台形に、下側胴部は上側胴部よりも小さい逆円錐台形に形成されてなり、胴体に通す土砂を、上側胴部の内面を案内にして螺旋状に回転させるので、土砂の回転半径を徐々に長くして、土砂の流れをスムーズにし、土砂の勢いを効果的に減衰することができ、この土砂を下側胴部の内面を案内にして土砂の排出口に送り出し排出するので、上側胴部の回転案内により減衰された土砂を徐々に土砂の排出口から排出することができ、従来のサイクロンのように土砂を下方の水域に直接落下させるのと異なり、土砂の落下速度を低下させつつ水域へ投入することができる。
また、この減衰器では、土砂の排出口を下側胴部の下部に下方に向けて延びる略円柱状に形成するので、この排出口を水域の水面下に挿入して、この減衰器から土砂を直接水中に排出することができ、これにより、土砂が水面上を叩かないため、水面で濁水の発生及びその拡散を抑えることができ、水中に排出された土砂は減衰器で既に勢いを減衰されて沈降されるので、土砂を減衰器の下方に直進的に沈下させて、水中で濁水の発生及びその拡散を抑制することができる。
さらに、この減衰器では、上側胴部の上面に空気の排出口を有するので、土砂が空気圧送されて大量の空気が減衰器内に排出されても、空気の排出口のベンチレーションにより空気が水域内に入り込むことがない。
したがって、この減衰器によれば、本願出願人提案の土砂輸送システムを含む各種ポンプにより土砂を圧送するシステムを用いて、水域内での土砂の移動を実施する場合に、水域上で土砂を水とともに圧送する土砂の輸送ラインの終端に設置して、輸送ラインの終端から水とともに排出される土砂を可及的に遅い速度でスムーズに水域内の投入地点に投入し、水域内での濁水の発生及びその拡散を抑制することができる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態における土砂投入用減衰器の構成を示す図
図2】同減衰器を本願出願人により提案した土砂輸送システムに用いた場合の同減衰器の作用を示す図
図3】従来のサイクロンの模型と同減衰器の模型を用いた模型実験のイメージを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1に土砂投入用減衰器の構成を示している。
図1に示すように、土砂投入用減衰器1は筒形形状の胴体10を有するサイクロン式に構成され、胴体10は、少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次拡径される略円錐台形に形成され、上部側に土砂の流入口110を有する上側胴部11と、この上側胴部11の下部に連続し、少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次縮径される略逆円錐台形に形成され、下部に土砂の排出口13を有する下側胴部12とを備える。
【0014】
この場合、胴体10は上側胴部11が外面、内面共に上方から下方に向けて漸次拡径される略円錐台形に形成され、下側胴部12が外面、内面共に上方から下方に向けて漸次縮径される略逆円錐台形に形成されて、全体が略円錐台形と略逆円錐台形が組み合わせられてなる複合形状を呈する。そして、上側胴部11の軸方向の長さが下側胴部12の軸方向の長さよりも長く、胴体10の中心軸と上側胴部11の内面とのなす角度が胴体10の中心軸と下側胴部12の内面とのなす角度よりも小さく設定されて、上側胴部11は大きい円錐台形に、下側胴部12は小さい逆円錐台形に形成され、下側胴部12の外周面の傾斜角度は上側胴部11の外周面の傾斜角度よりも緩やかになっている。
また、この胴体10の土砂の排出口13は下側胴部12の下部、この場合、下側胴部12の下面中央に下方に向けて所定の長さだけ延びる略円柱状に形成されて、この減衰器1の水域での設置位置においてこの排出口13が水域の水面下適宜の位置まで挿入可能になっている。
【0015】
また、この胴体10には上側胴部11の上面に空気の排出口14が設けられる。この場合、空気の排出口14は、上側胴部11の上面が開口され、この上側胴部11の上部に上方に向けて延びる略円柱状に形成される。
【0016】
図2にこの減衰器1を本願出願人が先の出願で提案した土砂輸送システムSに適用した場合のイメージを示している。
図2に示すように、土砂輸送システムSは、ダム貯水池などの水域Aで土砂の輸送始点と輸送終点との間に土砂の輸送管ラインLが形成され、輸送管ラインLの輸送始点で土砂を投入し、輸送管ラインLの輸送始点から輸送終点へ土砂を圧送する形式のシステムになっている。この場合、輸送管ラインLは複数の輸送管が連結されてなり、各輸送管を水面に浮かせて配管するため、輸送管1本につき2個のフロートが設置される。
このシステムSのポンプは、特に図示していないが、高圧の動力水を送給する超高圧ポンプと、噴射口、吸引口、及び吐出口を有し、超高圧ポンプから送給される動力水により駆動され、土砂を吸引、圧送するエジェクターと、輸送管ラインLに圧縮空気を送入する空気送入装置とを備え、超高圧ポンプがエジェクターの噴射口に接続され、エジェクターの吐出口と輸送管ラインLの輸送始点が接続され、空気送入装置が輸送管ラインLの輸送始点側に接続されて構成される(詳細は特許文献3参照)。
また、このシステムSでは、土砂の輸送終点で土砂を投入するので、輸送終点に撒布台船Mがウインチを用いて移動可能に設置され、この台船Mに土砂投入用減衰器1が搭載される。この場合、土砂の排出口13を輸送終点の貯水池の水面下に挿入する。そして、輸送管ラインLの終端をこの減衰器1(の土砂の流入口110)に連結する。
このようにしてエジェクターを空気送入装置とともに駆動して、輸送管ラインLの輸送始点に投入される土砂を空気と混合し、輸送管ラインLを通して、輸送終点へ圧送する。
そして、輸送管ラインLの輸送終点で、輸送された土砂が土砂投入用減衰器1に土砂の流入口110を通じて流入される。この減衰器1では、土砂が胴体10に通されて、上側胴部11の内面を案内にして螺旋状に回転される。この場合、上側胴部11の内面は略円錐台形で土砂の回転半径が徐々に長くなっているので、土砂の流れは上から下に向けて徐々に拡張する螺旋状の回転になって土砂がスムーズに流れ、土砂の勢いが十分に減衰される。そして、この土砂は下側胴部12の内面を案内にして下部の土砂の排出口13に送り出され排出される。この場合、下側胴部12の内面は略逆円錐台形で上側胴部11の内面に比べて緩やかな傾斜面になっているので、上側胴部11で回転され減衰された土砂はこの下側胴部12の内面の案内により中央の排出口13に向けて徐々に流されて排出され、土砂は、従来の円柱型のサイクロンの下部から下方の水域に向けて直接落下させるのと異なり、落下速度を適宜落とされて水域Aの投入地点に投入される。また、この場合、土砂の排出口13は貯水池の水面下に挿入されているので、この減衰器1から土砂は直接水中に排出される。このような土砂の排出により、従来の円柱型のサイクロンの下部から下方の水域に向けて直接落下させるのと異なり、土砂が水面を叩かないので、水域Aの水面での濁水の発生及びその拡散が抑えられ、また、水中に排出された土砂は、既述のとおり、減衰器1を通じて、既に勢いを減衰されているので、減衰器1(の土砂の排出口13)の下方に略直進的に水底に向けて沈降され、水中での濁水の発生及びその拡散が抑制される。なお、この土砂は水底に達すると、水底である程度水平方向に拡散されるが、水底での拡散になるため、水中での濁水の発生及びその拡散の抑制に影響は少ない。
また、このシステムSの場合、輸送管ラインLから土砂減衰器1へ土砂が排出される際に、大量の空気が併せて排出されるが、この減衰器1には上側胴部11の上部に空気の排出口14が設けられているので、輸送ラインLから排出された空気はこの空気の排出口14から排出されて、水域Aの水中に入り込むことがない。
【0017】
本願出願人は従来のサイクロンの模型(縮尺1/10)と本発明による土砂投入用減衰器の模型(縮尺1/10)を作って、模型実験を実施し、次のような結果を得た。図3にこの実験のイメージを示す。
従来のサイクロン2は既述のとおり円柱形で、このサイクロン2を水槽の上方に設置し、サイクロン2下端の排出口20を水槽内の水面の位置よりも少し上方に配置して、縮尺1/10のエジェクターにより土砂をこのサイクロン2に圧送したところ、このサイクロン2を通じて排出された土砂は水面上に落下して水中を沈下していくが、土砂は水面に当たった時点で水平方向に拡散し、水中を沈下中に水平方向に拡散し、水底に達して水平方向にさらに拡散された。このサイクロン2の場合、土砂が水面、水中で拡散されたことで、水槽内の水に濁りが発生した。
本発明による減衰器1は既述のとおり略円錐台形と略逆円錐台形からなる複合形状で、この減衰器1を水槽の上方に設置し、この減衰器1の土砂の排出口13を水槽内の水面下(水中)に挿入して、縮尺1/10のエジェクターにより土砂をこの減衰器1に圧送したところ、この減衰器1を通じて排出された土砂は水中に直接排出されて水中を沈下していくが、土砂は減衰器1(の土砂の排出口13)の下方に略直進的に沈降し、水底に達して水平方向に拡散された。この減衰器1の場合、土砂が水面でも水中でも拡散することがなく、水槽内の水に濁りが発生しなかった。
以上の結果から明らかなように、本発明の減衰器1は、従来のサイクロン2に比べて、ポンプ圧送された土砂に対する減衰能力が高く、濁水の発生及びその拡散を抑制する効果が高い、ことが確認された。
【0018】
以上説明したように、この土砂投入用減衰器1では、胴体10を上側胴部11と下側胴部12とにより構成し、上側胴部11の少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次拡径される略円錐台形に形成し、上部側に土砂の流入口110を設け、下側胴部12の少なくとも内面を上方から下方に向けて漸次縮径される略逆円錐台形に形成し、下部に土砂の排出口13を設けた構造として、胴体10に通す土砂を、上側胴部11の略円錐台形の内面を案内にして螺旋状に回転させるので、土砂の回転半径を徐々に長くして、土砂の流れをスムーズにし、土砂の勢いを効果的に減衰することができる。そして、この土砂を下側胴部12の略逆円錐台形の内面を案内にして土砂の排出口13に送り出し排出するので、上側胴部11で回転され減衰された土砂を徐々に排出口13から排出することができ、従来のサイクロンのように土砂を下方の水域に直接落下させるのと異なり、土砂の落下速度を低下させながら水域へ投入することができる。
また、この減衰器1では、土砂の排出口13を下側胴部12の下部に下方に向けて延びる略円柱状に形成したので、この排出口13を水域の水面下に挿入して、この減衰器1から土砂を直接水中に排出することができる。これにより、土砂が水面上を叩かないため、水面での濁水の発生及びその拡散を抑えることができ、水中に排出された土砂は減衰器1で既に勢いを減衰されて沈降されるので、土砂を減衰器1の下方に直進的に沈下させて、水中での濁水の発生及びその拡散を抑制することができる。
さらに、この減衰器1では、上側胴部11の上面に空気の排出口14を有するので、土砂が空気圧送されて大量の空気が減衰器1内に排出されても、空気の排出口14のベンチレーションにより空気が水域内に入り込むことがない。
したがって、この減衰器1によれば、本願出願人提案の土砂輸送システムを用いて、水域内での土砂の移動を実施する場合に、水域上で土砂を水とともに圧送する土砂の輸送ラインの終端に設置して、この輸送ラインの終端から水とともに排出される土砂を可及的に遅い速度でスムーズに水域内の投入地点に投入して、水域内での濁水の発生及びその拡散を抑制することができる。
【0019】
なお、この実施の形態では、土砂投入用減衰器1を本願出願人提案の土砂輸送システムに適用した場合を例示したが、従来から一般に用いられる各種ポンプにより土砂を水とともに圧送するシステムにも同様に適用することができ、従来の減衰器を用いた場合に比べて、土砂の勢いの減衰効果並びに濁水の発生及びその拡散の抑制効果のいずれをも顕著に向上させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 土砂投入用減衰器
10 胴体
11 上側胴部
110 土砂の流入口
12 下側胴部
13 土砂の排出口
14 空気の排出口
S 土砂輸送システム
A 水域
L 輸送管ライン
M 撒布台船
2 従来のサイクロン
20 排出口
図1
図2
図3