【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものでない。なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
【0044】
<平均粒径(nm)の測定及びCV値(%)の算出方法>
処理前のセルロース微粒子及び蛍光セルロース微粒子の分散液を、日機装株式会社製粒度分布計マイクロトラックを用いて、粒度分布測定を実施し、平均粒径を測定した。尚、CV値は下記式(1)により算出する。また、測定は、測定時間30秒で、積算回数99回で実施した。
CV値(%)=(粒度分布測定装置より求めた体積粒度分布における標準偏差)/(粒度分布測定装置より求めた体積平均メジアン径)×100 式(1)
【0045】
<平均重合度の測定及び算出方法>
セルロース微粒子をカドキセンに溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し、その極限粘度数[η]から以下の粘度式(2)と換算式(3)により算出した値を平均重合度として採用した(参考文献:Eur.Polym.J.,1, 1 (1996))。
極限粘度数[η]=3.85×10
−2×M
W0.76 式(2)
平均重合度(DP)=M
W/162 式(3)
【0046】
<蛍光色素化合物の含有量>
蛍光セルロース微粒子に対する蛍光色素化合物成分の割合は、蛍光色素化合物処理前後の重量変化から算出できる。処理後の回収できた粒子の重量と処理前のセルロース微粒子の絶乾後の重量を用いて、以下の式(4)から蛍光色素化合物成分の割合を算出した。
蛍光色素化合物含有量(%)=1−{(処理前のセルロース微粒子の重量)/(蛍光色素化合物処理後の蛍光セルロース微粒子の重量)}×100 式(4)
【0047】
(処理前のセルロース微粒子の重量が不明である場合)
蛍光セルロース微粒子をセルラーゼ処理、酸処理又は塩基処理をしてから、サンプルを重水に溶解させ3〜5wt%重水溶液を調製し、FT-NMRで
13C-NMR(Avance 400MHz)により測定を行い、置換度を算出する。置換度はセルロースのC1のピーク面積を基準とし、蛍光色素化合物のピーク面積から算出する。その置換度と蛍光色素化合物の分子量から、蛍光色素化合物の含有量を算出する。
【0048】
(処理前のセルロース微粒子の重量が不明であり、かつ蛍光色素化合物が窒素原子を含有している場合)
窒素元素含有率を、窒素定量装置CHNコーダー(ヤナコ分析工業社製)を用いて下記測定条件で発光分析法により測定する。測定した窒素元素含有率から、含まれている蛍光色素化合物の含有量を算出する。
測定方式:自己積分方式
キャリアーガス:ヘリウム
助燃ガス:高純度酸素
助燃方式:ヘリウム、酸素混合方式
【0049】
<イムノクロマト評価の感度の判定方法>
発色の判定方法は、イムノクロマトキットのメンブレンを露出させ、レーザーダイオードを用いて励起を行い、フォトダイオードで蛍光を受光することでメンブレンの蛍光プロファイルを取得した。得られた蛍光プロファイルからテストライン、コントロールラインの感度を評価した。評価基準として、テストラインにて、発色が認められない場合を(−)、発色が認められる場合を(+)とした。
【0050】
[実施例1]
セルロース濃度0.37wt%、銅濃度0.13wt%、アンモニア濃度1.00wt%の銅アンモニアセルロース溶液を調製した。さらにテトラヒドロフラン濃度87.5wt%、水濃度12.5wt%、の凝固液を調製した。
マグネティックスターラーを用い凝固液5000gをゆっくり攪拌しながら、これに、調製しておいた銅アンモニアセルロース溶液500gを添加した。5秒程度攪拌を継続した後10wt%の硫酸1000gを加え中和、再生を行い、セルロース微粒子を含有したスラリー6500gを得た。
【0051】
得られたスラリーを10000rpmの速度で10分間遠心分離した。沈殿物をデカンテーションにより取り出し、超純水を注入して攪拌し、再び遠心分離した。PHが6.0〜7.0になるまでこの操作を数回繰り返し、その後高圧ホモジナイザーによる分散処理を行い、セルロース微粒子分散液150gを得た。凍結乾燥により、乾燥したセルロース微粒子を得た。得られたセルロース微粒子の平均粒径を測定した結果、205nmであった。また、そのCV値は18%であった。得られたセルロース微粒子分散液を、遠心分離して脱水した後、メタルコンタクト法による凍結乾燥を行った。なお、このときのセルロース微粒子の重合は200、長径/短径は1.9だった。
【0052】
ナス型ガラスフラスコに、分散媒体としてテトラヒドロフラン50gを加え、DY−651−NHSエステル(Dyomics社製)を1.0g添加して、30℃、マグネットスターラーで、攪拌した。そこに、乾燥させたセルロース微粒子0.50gを加え、トリエチルアミン(東京化成工業社製)を1.0ml添加した。そのまま攪拌を行い、2時間後に攪拌を終了し、遠心分離機を用いて、デカンテーション−脱イオン水による希釈を数回繰り返し、PHを6.0〜7.0とし、さらに高圧ホモジナイザーによる分散処理を行い、蛍光セルロース微粒子分散液100gを得た。得られた蛍光セルロース微粒子の平均粒径を測定した結果、208nmだった。また、そのCV値は19%で、長径/短径は1.5であった。処理後の蛍光セルロース微粒子の蛍光色素の含有率は1.0%だった。結果を以下の表1に示す。
【0053】
[実施例2〜6]
蛍光色素化合物処理時に、セルロース微粒子の平均粒径を、変化させて処理した以外は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0054】
[実施例7〜10]
蛍光色素化合物処理時に、蛍光色素化合物の添加量を、変化させて処理する以外は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0055】
[実施例11〜12]
実施例1で得た蛍光色素化合物導入前のセルロース微粒子を、ナス型ガラスフラスコに、分散媒体としてテトラヒドロフラン50gと10wt%水酸化ナトリウム水溶液を1.0g加えて、2−クロロエタンアミン又は11−クロロウンデカンチオールを1.0g添加して、ガラス製還流管を取り付け、水道水を還流させ冷却しながら、マグネットスターラーで、60℃、3時間攪拌した。この後、遠心分離機を用いて、デカンテーション−脱イオン水による希釈、洗浄を行った。その後の洗浄、分散処理は実施例1と同様に実施し、改質したセルロース微粒子を得た。その後は、実施例1と同様の方法で、蛍光色素化合物を導入し、蛍光セルロース微粒子を製造した。結果を以下の表1に示す。
【0056】
[実施例13]
蛍光色素化合物処理時、ナス型ガラスフラスコに、分散媒体としてテトラヒドロフランを加え、DY−651−NHSエステルを10gとγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10g添加して、ガラス製還流管を取り付け、水道水を還流させ冷却しながら、マグネットスターラーで、60℃、3時間攪拌した。そこに、乾燥処理後のセルロース微粒子0.50gと、トリエチルアミン(東京化成工業社製)を1.0ml添加し、2時間攪拌を行った。その混合分散液を、遠心分離で、溶媒を取り除いた後、ナスフラスコをオーブンに入れて、120℃で5分間熱処理を行った。この後、遠心分離機を用いて、デカンテーション−脱イオン水による希釈、洗浄を行った。その後の洗浄、分散処理は実施例1と同様に実施した。得られた蛍光セルロース微粒子の平均粒径を測定した結果、280nmで、長径/短径は1.2であり、CV値は19%であった。処理後の蛍光セルロース微粒子の蛍光色素の含有率は20%であった。結果を以下の表1に示す。
【0057】
[実施例14]
蛍光色素化合物処理時に、γ−アミノプロピルトリエトキシシランの量を変化させて処理した他は、実施例13と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0058】
[実施例15〜19]
蛍光色素化合物処理時に、蛍光色素化合物の種類を変えて処理した他は、実施例11と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0059】
[実施例20〜24]
蛍光色素化合物処理時に、セルロース微粒子の重合度を変化させて処理した他は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0060】
[比較例1と2]
蛍光色素化合物処理時に、セルロース微粒子の平均粒径を本発明の範囲外に変えて処理した他は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0061】
[比較例3]
蛍光色素化合物処理時に、セルロース微粒子の平均粒径を本発明の範囲外に変えて処理した他は、実施例13と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0062】
[比較例4と5]
蛍光色素化合物処理時に、蛍光色素化合物の添加量を本発明の範囲外に変えて処理した他は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0063】
[比較例6]
蛍光色素化合物処理時に、蛍光色素化合物の添加量を本発明の範囲外に変えて処理した他は、実施例13と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0064】
[比較例7と8]
蛍光色素化合物処理時に、セルロース微粒子の重合度を変化させて処理した他は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。得られた粒子は、CV値(%)と蛍光色素化合物含有量(%)のいずれかに関して、本発明の範囲外のものとなった。結果を以下の表1に示す。
【0065】
[比較例9]
蛍光色素化合物処理時に、セルロース微粒子の重合度を変化させて処理した他は、実施例13と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。得られた粒子は、蛍光色素化合物含有量(%)に関して本発明の範囲外のものとなった。結果を以下の表1に示す。
【0066】
[比較例10と11]
セルロース微粒子の長径/短径が10以上のものを用いて、蛍光セルロース微粒子を製造した他は、実施例1と同様の方法で、蛍光セルロース微粒子の製造を行った。結果を以下の表1に示す。
【0067】
[蛍光セルロース微粒子の分散安定性試験]
実施例1〜24、及び比較例1〜11で得た蛍光セルロース微粒子を純水に分散させ1.0wt%に調整したものを、ポリプロピレン製のスクリュー管に25℃で、暗所に3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間、保存したもののCV値をそれぞれ測定し、分散安定性試験を実施した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から、実施例1〜24で得た蛍光セルロース微粒子は、比較例1〜11で得たもの比較して、分散安定性が概ね良好であることが分かる。
【0068】
【表1】
【0069】
[蛍光セルロース微粒子を用いて作製したイムノクロマトキットにおける発色強度試験]
得られた蛍光粒子を用いて、イムノクロマトキットを作製、発色強度を評価した。
以下、イムノクロマトキットの作製について説明する。
濃度5mg/mlの蛍光セルロース微粒子(実施例1〜24、比較例1〜11)の分散液100μL(分散媒:蒸留水)及び50mM KH
2PO
4(pH7.0)390μLをマイクロチューブに加えて軽く撹拌した。前記マイクロチューブに抗hCG抗体(Anti−hCG clone codes/5008,Medix Biochemica社製)10μL(5.8mg/mL)を加え、室温で10分間緩やかに混合し、抗hCG抗体を前記蛍光セルロース微粒子に吸着させた。
混合液を12000×gで15分間遠心分離し、上清を取り除いた。ここに保存用バッファー(20mM Tris−HCl(pH 8.2)、0.05% PEG20,000、150mM NaCl、1%BSA、0.1%NaN
3)を1mL加え、再度遠心分離し、上清を取り除いた。ここに蒸留水500μLと塗布バッファー(20mM Tris−HCl(pH8.2)、0.05%PEG(分子量20,000)、5%スクロース)を500μL加え、粒子を分散させ、蛍光セルロース微粒子/生体分子の複合粒子のコロイドを得た(0.5mg/mL×1mL)。
上記複合粒子のコロイド0.8mLをGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)(8×150mm)に均一に塗布した。デシケーター内で室温下、一夜減圧乾燥し、複合粒子を含有してなるコンジュゲートパッドを作製した。
【0070】
以下、抗体固定化メンブレンの作製方法を説明する。
メンブレン(丈25mm、商品名:Hi−Flow Plus120 メンブレン、MILLIPORE社製)の中央付近(端から約12mm)に、幅約1mmのテストラインとして、抗hCG抗体(alpha subunit of FSH(LH),clone code/6601、Medix Biochemica社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH
2PO
4,pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
次いで、幅約1mmのコントロールラインとして、抗マウスIgG抗体(Anti Mouse IgG、Dako社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH
2PO
4,pH7.0)シュガー・フリー)を0.75μL/cmの塗布量で塗布し、50℃で30分乾燥させた。なお、テストラインとコントロールラインとの間隔は4mmとした。次に、ブロッキング処理として前記メンブレン全体をブロッキングバッファー(組成:100mMホウ酸(pH8.5)、1重量%カゼイン)中に室温で30分浸した。
前記メンブレンをメンブレン洗浄/安定バッファー(組成:10mM KH
2PO
4(pH7.5)、1重量%スクロース、0.1%コール酸ナトリウム)に移し室温で30分以上静置した。メンブレンを引き上げ、ペーパータオル上に置いて室温で一夜乾燥させて、抗体固定化メンブレンを作製した。
【0071】
サンプルパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)、前記コンジュゲートパッド、前記抗体固定化メンブレン、及び吸収パッド(Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)、MILLIPORE社製)をバッキングシート(商品名AR9020,Adhesives Research社製)上でこの順に組み立て、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、テストストリップを得た。
なお、各構成部材は、各々その両端を隣接する部材と2mm程度重ね合わせて貼付した所定濃度のリコンビナントhCG(ロート製薬社製)を、作製したテストストリップのサンプルパッド部分に100μL滴下し、20分間放置後、テストストリップのサンプルパッドとコンジュゲートパッドを剥がし、メンブレンを露出させ、レーザーダイオードを用いて励起を行いフォトダイオードで蛍光を受光することでメンブレンの蛍光プロファイルを取得した。得られた蛍光プロファイルからテストライン、コントロールラインの蛍光強度を陽性(+)又は陰性(−)で評価した。結果を以下の表2に示す。
【0072】
[蛍光セルロース微粒子を用いて作製したイムノクロマトキットにおける3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間保存した後の発色強度試験]
前記したイムノクロマトキットを作製方法と同様の方法で、濃度0.005mIU/mlのリコンビナントhCGで、イムノクロマトキットを作製し、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間保存した後の発色強度試験を実施した。結果を以下の表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示す結果から、実施例1〜24の蛍光セルロース微粒子についてはいずれも、イムノクロマトキットの展開粒子として高い感度及び分散安定性を示すことが分かる。
これに反し、比較例1では、イムノクロマトキット作製直後は高感度であったものの、平均粒径が小さすぎるため、6ヶ月保存した辺りから、凝集してしまい、検出できなかった。
比較例2と3では、粒子径が大きいために、展開膜中で目詰まりを起こしてしまい、抗原を検出することができなかった。
比較例4と5では、蛍光色素化合物の含有量が少なすぎたため、ほとんど発色せず、十分な感度が得られなかった。
比較例6では、蛍光色素化合物を導入した直後から、凝集が発生してしまい、イムノクロマトキットに使用した時に、ほとんど展開しなかった。
比較例7では、製造直後、目標とする感度は達成していたものの、分散安定性が悪く、3ヵ月後には、保存前に検出できていた0.002mIU/mlの抗原濃度でも発色しなかった。
比較例8と9は、蛍光色素化合物の含有量が少なすぎるため、十分な感度を達成できなかった。
比較例10では、擬陽性が発生した。
比較例11では、展開直後にすぐ目詰まりを起こしてしまっており、展開不良が起こっていた。