(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、電子装置の一実施形態として、電子制御装置を例示する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る筐体7の斜視図であって、(a)は分解図、(b)は組立図である。
筐体7の厚み方向(環形フック部61及びガイド爪53の延出方向)をZ方向と呼ぶ。ケース10側(環形フック部61の延出方向)を+Z方向、ケース20側(ガイド爪53の延出方向)を−Z方向とする。
【0016】
電子制御装置(電子装置)1は、プリント基板(電子回路基板)5と筐体7を備えている。筐体7は、ケース10とカバー20とから構成される。ケース10とカバー20は、複数のスナップフィット8により固定される。筐体7の収容空間7Sに、プリント基板5が収容固定される。
【0017】
電子制御装置1は、不図示の車両に搭載される電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)にかかるものである。この電子制御装置1は、例えば、不図示の電池収納箱(電池ボックス)に取り付けられ、コネクタ配線ケーブルによって電池収納箱内の電池や上位機種の電子制御装置に接続されるようになっている。または、車体(車体フレーム)に直接取り付けられ、コネクタ配線ケーブルによって電気的に接続されるようになっていてもよい。
【0018】
プリント基板5は、内層を含む各面に配線パターン(不図示)を形成した多層基板である。
図1(a)に示すように、プリント基板5は、各種の電子部品(不図示)を両面実装するとともに、一方の面5a(ケース10を向く面)にコネクタ6を5つ実装している。
これらコネクタ6は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材から形成されたもので、ネジ止めや半田による表面実装によってプリント基板5に固定される。
プリント基板5の四隅等には、挿通孔(不図示)が設けられる。この挿通孔に挿通したネジにより、プリント基板5がケース10に固定される。
【0019】
コネクタ6は、コネクタ配線ケーブルのプラグ(不図示)が嵌め込まれる開口6aを有する。コネクタ6は、開口6aを有する箱形状を有しており、開口6a内には、プリント基板5にはんだ付けされたコネクタ端子が露出する。そして、コネクタ6は、ケース10に形成されたコネクタ用開口部13内に収容される。
このような構成のもとに、コネクタ配線ケーブルのプラグがコネクタ6の開口6a内に嵌め込まれることにより、プリント基板5に実装された各種電子部品が電池収納箱内の電池等に電気的に接続されるようになっている。
【0020】
ケース(樹脂ケース)10は、有底の矩形箱状のもので、例えばPBTからなる。ケース10は、略矩形状の主壁11と、この主壁11の周縁に沿って、ほぼ垂直に立設する側壁12とを有する。側壁12の上端面12tに囲まれた面がケース10の開口部10aとなる。
主壁11と側壁12に囲まれた空間は、プリント基板5が収容される収容空間7Sとなり、ケース10の開口部10aから主壁11に向けてプリント基板5が挿入される。
側壁12には、コネクタ6の開口6aを外部に向けて露出させるコネクタ用開口部13が、5つのコネクタ6に対応して5つ形成されている。これらコネクタ用開口部13は、側壁12のうち、一方の長辺側と一方の短辺側にそれぞれ複数ずつ形成されている。
【0021】
ケース10は、その側壁12に、9個の被係合部50が設けられる。この9個の被係合部50は、カバー20に形成される9個の係合部60に係合される。
被係合部50の詳細構成については、後述する。
【0022】
ケース10は、収容空間7Sにおいてプリント基板5を支持する複数の台座部(不図示)を備えている。台座部は、ケース10の主壁11の底面11bに一体成形された円柱形の部位であって、開口部10aに向けて立設する。
この台座部の先端面には、ネジ穴が形成される。プリント基板5の挿通孔に挿通したネジが螺合するためのネジ穴である。
【0023】
カバー(樹脂カバー)20は、
図1(a)に示すように、ケース10の主壁11の形状にほぼ対応した略矩形板状のもので、例えばPBTからなる。カバー20は、略矩形状の主壁21と、この主壁21の周縁に沿って、ほぼ垂直に立設する側壁22とを有する。
カバー20は、ケース10の側壁12の上端面12tに装着されて、開口部10aを閉塞する。すなわち、カバー20の側壁22とケース10の側壁12が密着して、プリント基板5が収容される収容空間7Sを閉塞する。
【0024】
カバー20の側壁22の上端面22tには、側壁22に沿って矩形環状に配置されたシール部材40が設けられる。
また、カバー20の側壁22の外表面22sには、主壁21に対してほぼ垂直に立設する9個の係合部60が一体的に設けられる。係合部60は、上述したように、ケース10の側壁12に形成された9個の被係合部50に対して係合される。
被係合部50と係合部60からなるスナップフィット8の係合作用により、カバー20がケース10の上端面12tに対して密着して開口部10aを閉塞する。
係合部60の詳細構成については、後述する。
【0025】
スナップフィット8の詳細形状について説明する。
図2は、被係合部50を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は底面図、(d)は斜視図である。
図3は、係合部60を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は上面図、(d)は斜視図である。
【0026】
個々のスナップフィット8(被係合部50,係合部60)において、側壁12,22に沿う方向をXs方向、側壁12,22の厚み方向をYs方向と呼ぶ。外表面12s,22sが向く方向を+Ys方向、内表面12u,22uが向く方向を−Ys方向とする。
【0027】
スナップフィット8は、ケース10の側壁12に形成された被係合部50と、カバー20の側壁22に形成された係合部60と、を備える。
【0028】
被係合部50は、係合突起部51、側壁先端斜面52、ガイド爪53及びガイド壁54を備える。
【0029】
係合突起部(被係合体)51は、被係合部50の主要な部位であって、ケース10の側壁12の外表面12sからほぼ垂直(+Ys方向)に突出する。係合突起部51は、側壁12の基端側に設けられる。
係合突起部51は、側壁12に対して垂直な係合面51aと、側壁12に対して鈍角に交わる傾斜面(第一傾斜面)51bとを有する。係合面51aは、側壁12の基端側(+Z方向)を向き、傾斜面51bは、側壁12の先端側(−Z方向)を向く。係合面51aと傾斜面51bは、係合突起部51の先端で鋭角に交差する。
この係合突起部51には、後述する環形フック部61が嵌まり込む。これにより、係合突起部51と環形フック部61が係合して、被係合部50と係合部60が係合される。
【0030】
側壁先端斜面52は、ケース10の側壁12の上端面12tと内表面12uが交差する角部に形成された斜面である。つまり、側壁先端斜面52は、係合突起部51に背向する(−Ys方向を向く)面である。側壁先端斜面52は、上端面12tに対して、例えば60°程度の角度で交差するように形成される。
側壁先端斜面52は、1つの係合突起部51に対して1つ設けられる。側壁先端斜面52は、係合突起部51に対して、側壁12のXs方向における位置が一致するように配置される。側壁先端斜面52の幅は、後述する可撓突起部63の幅よりも大きく設定される。
この側壁先端斜面52には、後述する可撓突起部63の先端斜面64が摺接する。これにより、可撓突起部63を弾性変形(傾斜)させる。
【0031】
ガイド爪53は、ケース10の側壁12の外表面12sの上端縁から、上端面12tに対して垂直(−Z方向)となるように延出する部位である。つまり、ガイド爪53は、側壁12の外表面12sの上端縁から、カバー20に向けて突出する爪形に形成される。ガイド爪53は、側壁12の外表面12sに対向する(−Ys方向を向く)内面53aを有する。
ガイド爪53は、1つの係合突起部51に対して2つ設けられる。側壁12のXs方向において、2つのガイド爪53が1つの係合突起部51を挟むように配置される。側壁12のXs方向における2つのガイド爪53の距離は、後述する環形フック部61の幅よりも広くなるように配置される。
このガイド爪53の内面53aには、カバー20の側壁22の外表面22sが摺接する。これにより、カバー20の側壁22の上端面22tをケース10の側壁12の上端面12tに向けて案内(誘導)する。
【0032】
ガイド壁54は、ケース10の側壁12の外表面12sにおいて、側壁12のZ方向に直線状に延設されたリブ形の部位である。
ガイド壁54は、1つの係合突起部51に対して2つ設けられる。ガイド壁54は、係合突起部51を側壁12のXs方向において挟むように配置される。側壁12のXs方向における2つのガイド壁54の距離は、後述する環形フック部61の幅よりも広くなるように配置される。
ガイド壁54は、側壁12の基端側(+Z方向)において、係合突起部51を取り囲むように湾曲する。ガイド壁54は、側壁12の先端側(−Z方向)においては、ガイド爪53に接する。
このガイド壁54の内壁面54aには、後述する環形フック部61が摺接する。これにより、環形フック部61を係合突起部51に向けて案内(誘導)する。
【0033】
係合部60は、環形フック部61、ガイドリブ62、可撓突起部63及びストッパ65を備える。
【0034】
環形フック部(係合体)61は、係合部60の主要な部位であって、カバー20の側壁22の外表面22sの上端縁から、上端面22tに対して垂直(+Z方向)となるように延出する部位である。つまり、環形フック部61は、側壁22の外表面22sの上端縁から、ケース10に向けて突出する。
環形フック部61は、側壁22の外表面22sの上端縁からケース10に向けて突出する2本の細長い棒形の部材がその先端で湾曲して互いに繋がった環形を有している。つまり、2本のアーム61aと、2本のアーム61aの先端に繋がる係合フック61bとを有し、馬蹄形又はU字形のフック状に形成される。
2本のアーム61aは、側壁22の外表面22sに対向する(−Ys方向を向く)内面61cを有する。係合フック61bは、2本のアーム61aに挟まれた内側に、側壁22に対して垂直な(−Z方向を向く)係合面61dを有する。
2本のアーム61aは、可撓性を有しており、係合フック61bが側壁22の外表面22sから離間(+Ys方向に移動)するように反る(撓む)ことができる。
側壁22のXs方向における2本のアーム61aの距離は、係合突起部51の幅よりもやや広くなるように配置される。
この環形フック部61は、係合突起部51に嵌まり込む。2本のアーム61aの間に、係合突起部51が入り込み、係合フック61bの係合面61dに係合突起部51の係合面51aが密着する。これにより、係合突起部51と環形フック部61が係合して、被係合部50と係合部60が係合される。
【0035】
ガイドリブ62は、2本のアーム61aのそれぞれの基端側(−Z方向)において、アーム61aに沿って延設されたリブ形の部位である。ガイドリブ62は、アーム61aの内面61cから側壁22の外表面22sに向けて立設する。ガイドリブ62は、アーム61aのZ方向のほぼ中央まで延設される。
ガイドリブ62は、外表面22sに平行に対向する(−Ys方向を向く)上面62aを有する。上面62aは、外表面22sとほぼ面一となるように配置される。また、ガイドリブ62の上端には、上面62aと内面61cに交差する傾斜面62bを有する。
このガイドリブ62の上面62aには、ケース10の側壁12が摺接する。これにより、ケース10の側壁12の側壁先端斜面52を、後述する可撓突起部63の先端斜面64に対して確実に当接させるように案内(誘導)する。
【0036】
可撓突起部63は、カバー20の側壁22の上端面22tと内表面22uが交差する角部に立設する部位である。可撓突起部63は、上端面22tに沿う平板形に形成される。可撓突起部63の幅は、側壁先端斜面52の幅よりも小さく設定される。可撓突起部63の高さは、環形フック部61の長さの1/4から1/5程度である。可撓突起部63の厚みは、上端面22tの厚みのほぼ半分程度である。
可撓突起部63は、1つの環形フック部61に対して1つ設けられる。可撓突起部63は、環形フック部61に対して、側壁22のXs方向における位置が一致するように配置される。
【0037】
可撓突起部63は、その上端に、環形フック部61に対向する(+Ys方向を向く)先端斜面64を有する。先端斜面(第二傾斜面)64は、上端面22tに対して、例えば50°程度(側壁22の内表面22uに対して40°程度)の角度で交差するように形成される。
このように、可撓突起部63は、上端面22tに立設する平板形の部位であるため、その厚み方向(Ys方向)において可撓性(弾性)を有する。
この可撓突起部63の先端斜面64には、側壁先端斜面52が摺接する。これにより、可撓突起部63は、その先端が側壁22の内表面22u側に移動(−Ys方向に移動)するように反る(撓む)ことができる。
【0038】
ストッパ65は、カバー20の側壁22の上端面22tにおいて、可撓突起部63の幅方向(Xs方向)の両側において突出する部位である。2つのストッパ65は、可撓突起部63と一体的に形成される。ストッパ65の上端面65tは、平坦に形成される。ストッパ65の高さは、可撓突起部63の半分以下である。可撓突起部63の先端斜面64の下端よりも低く設定される。ストッパ65の厚みは、可撓突起部63と同一である。2つのストッパ65の距離は、側壁先端斜面52の幅よりも大きく設定される。
この2つのストッパ65の上端面65tには、ケース10の側壁12の上端面12t(側壁先端斜面52の近傍)が当接する。これにより、ケース10の側壁12の移動が規制される。
【0039】
続いて、電子制御装置1の組立手順及びスナップフィット8の作用効果について説明する。
図4は、スナップフィット8の係合時を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【0040】
最初に、ケース10を、開口部10aが上方(−Z方向)を向くようにして、作業台等(不図示)に載置する。そして、このケース10の台座部にプリント基板5を載置して、プリント基板5の挿通孔に挿通したネジでネジ止めする。これにより、プリント基板5が位置決めされる。プリント基板5に実装されたコネクタ6は、ケース10のコネクタ用開口部13に収容される。
最後に、ケース10にカバー20を装着する。ケース10に設けられた9個の被係合部50に対して、カバー20に設けられた9個の係合部60が係合するように、カバー20をケース10に押し付ける(カバー20を+Z方向に移動する)。
【0041】
被係合部50に対して係合部60を係合する際には、まずガイド壁54が作用する。
カバー20をケース10に向けて近づけると、カバー20の側壁22から延出する環形フック部61がケース10の側壁12の外表面22sに沿うように+Z方向に入り込む。側壁12のXs方向において、環形フック部61が入り込んだ位置が係合突起部51から離れていた場合には、環形フック部61の先端がガイド壁54の内壁面54aに当接する。このため、環形フック部61は、ガイド壁54にガイドされて、係合突起部51に近づく方向に強制的に移動させられる。そして、側壁12のXs方向において、環形フック部61と係合突起部51の位置がほぼ一致する。
これにより、環形フック部61は、係合突起部51に向けて案内(誘導)される。
【0042】
環形フック部61がガイド壁54にガイドされた状態で、カバー20をケース10に近づけると、環形フック部61の係合フック61bが係合突起部51の傾斜面51bに当接する。
さらに、カバー20をケース10に押し付けると、環形フック部61の係合フック61bが、係合突起部51の傾斜面51bを滑り上がり、環形フック部61(アーム61a)が+Ys方向に反るように弾性変形(湾曲)し始める。
【0043】
このように、環形フック部61が+Ys方向に反るように変形し始めると、ガイドリブ62が作用する。
環形フック部61のアーム61aの基端側もケース10の側壁12の外表面22sに対して入り込み、アーム61aに配置したガイドリブ62が側壁12に当接する。ガイドリブ62の傾斜面62bが側壁12に当接し、その後に上面62aが側壁12の外表面12sを摺動する。ガイドリブ62の上面62aに対して、ケース10の側壁12の外表面22sが当接するため、ケース10の側壁12は、カバー20の側壁22よりも+Ys方向に移動できなくなる。
これにより、ケース10の側壁12の側壁先端斜面52は、可撓突起部63の先端斜面64に向けて正確に案内(誘導)される。
【0044】
また、環形フック部61が+Ys方向に反るように変形し始めると、ガイド爪53も作用する。
カバー20の側壁22がケース10の側壁12に近接して、ガイド爪53の内面53aが側壁22に当接する。ガイド爪53の内面53aに側壁22の外表面22sが当接するため、ケース10の側壁12は、カバー20の側壁22よりも−Ys方向に移動できなくなる。
これにより、カバー20の側壁22の上端面22tをケース10の側壁12の上端面12tに向けて案内(誘導)する。
【0045】
カバー20をケース10に押し付けて、環形フック部61の係合フック61bが係合突起部51の傾斜面51bを乗り超える直前になると、側壁先端斜面52と可撓突起部63が作用し始める。
カバー20の側壁22がケース10の側壁12に近接して、側壁22の上端面22tの可撓突起部63が、側壁12の上端面12tに形成された側壁先端斜面52に当接する。
ガイド壁54、ガイドリブ62及びガイド爪53の作用により、可撓突起部63の先端斜面64が側壁先端斜面52に対して確実に当接する。
先端斜面64と側壁先端斜面52が上端面12t,22tに対して傾斜しているので、先端斜面64と側壁先端斜面52が互いに滑り合う(楔作用)。そして、側壁12はガイドリブ62に当接してYs方向の移動が規制され、側壁22はガイド爪53に当接してYs方向の移動が規制されている。このため、可撓突起部63が−Ys方向に反るように弾性変形(湾曲)し始める。
【0046】
カバー20をケース10に押し付けて、環形フック部61の係合フック61bが係合突起部51の傾斜面51bを乗り超えると、環形フック部61(アーム61a)の反りが元に戻り、係合フック61bが係合突起部51の係合面51aに密着するように移動する。つまり、環形フック部61の2本のアーム61aと係合フック61bの間の空間に、係合突起部51が嵌まり込む。そして、係合フック61bの係合面61dが係合突起部51の係合面51aに密着する。
これにより、被係合部50と係合部60が係合される。つまり、スナップフィット8により、ケース10とカバー20が固定される。
【0047】
被係合部50と係合部60が係合されたときには、可撓突起部63が側壁先端斜面52に当接して、−Ys方向に反って湾曲した状態が維持される。
また、カバー20の側壁22の上端面22tに設けたシール部材40がケース10の側壁12の上端面12tに押圧されて潰された状態となる。
【0048】
可撓突起部63は、その復元力により、先端斜面64に密着する側壁先端斜面52を押圧する。可撓突起部63が側壁先端斜面52を押圧する方向は、側壁先端斜面52と先端斜面64のそれぞれに垂直な方向である。つまり、可撓突起部63は、側壁12を+Ys方向及び+Z方向に向けて押圧する。
これにより、ケース10の係合突起部51が、カバー20の環形フック部61に向けて、+Ys方向及び+Z方向に押圧されて、係合突起部51の係合面51aが環形フック部61の係合面61dに押し付けられる。
【0049】
このように、可撓突起部63の復元力により、係合突起部51が環形フック部61に押し付けられる。このため、係合突起部51と環形フック部61の間にガタつきが発生しないので、耐振性を向上させることができる。また、係合突起部51の係合面51aが環形フック部61の係合面61dに密着しているため、環形フック部61が自然に反り返って係合突起部51を乗り越えてしまうこともない。
したがって、環形フック部61は、押し付け方向(+Z方向)とは逆方向(−Z方向)に戻れなくなり、環形フック部61に係合突起部51が嵌まり込んだ状態が維持される。また、シール部材40が押圧されて潰された状態も維持される。
このように、被係合部50と係合部60からなるスナップフィット8の係合作用により、カバー20をケース10の開口10aに対して密着させて、開口10aを閉塞することができる。筐体7の防塵性が確保される。
【0050】
なお、可撓突起部63の基端側にストッパ65を設けているので、可撓突起部63が必要以上に大きく−Ys方向に反って、亀裂が発生したり破損したりしないようになっている。
仮に、環形フック部61の係合フック61bが係合突起部51の傾斜面51bを乗り超えた後に、さらにカバー20をケース10に押し付けると、可撓突起部63の基端側に配置したストッパ65の上端面65tがケース10の側壁12の上端面12tに当接する。ストッパ65は、上端面12tのうち、側壁先端斜面52の両脇に当接する。このため、カバー20をケース10に押し付けすぎることがなく、可撓突起部63に亀裂が発生したり破損したりすることが防止される。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る筐体7によれば、簡単な構成により、係合突起部51を環形フック部61に押し付けて、係合突起部51と環形フック部61との間にガタつきが発生しないようにすることができる。係合突起部51を環形フック部61に押し付ける力を発生する可撓突起部63は、カバー20に一体成形されているので、コスト増加を招かない。
【0052】
また、本実施形態に係る筐体7は、側壁22の可撓突起部63の先端斜面64に対して、側壁12の側壁先端斜面52を当接させて、可撓突起部63を撓ませている。側壁12,22に対して傾斜する面(側壁先端斜面52、先端斜面64)を形成して、これらを当接することにより、係合突起部51を環形フック部61に押し付ける力を発生させている。
このため、側壁12,22のZ方向において成型誤差(寸法のばらつき)が生じたとしても、係合突起部51を環形フック部61に押し付ける力をほぼ一定にすることができる。側壁12,22のZ方向の成型誤差の影響が最も大きくなる上端面12t,22tを用いずに、こられに対して大きく傾斜する面(側壁先端斜面52、先端斜面64)を用いて可撓突起部63を撓ませているからである。つまり、側壁先端斜面52と先端斜面64を摺動させる機構は、側壁12,22のZ方向の成型誤差(寸法のばらつき)を吸収することができため、成型誤差(寸法のばらつき)を解消するための金型調整を行う必要がなく、コスト増加を招かない。
このように、筐体7は、ケース10やカバー20の成型誤差による寸法のばらつきに影響されることなく、係合突起部51を環形フック部61に押し付ける力を発生させることができる。したがって、筐体7は、高い防塵性や耐振性を常に実現することができ、コスト増加も招かない。また、筐体7の組立性も、ケース10やカバー20の成型誤差による寸法のばらつきに影響されないため、組立性を向上させることができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、スナップフィットの個数、配置等は、任意に設定することができる。
係合体は、環形のフック部に限らず、棒形や板形のフック部であってもよい。
【0055】
可撓突起部は、カバーと一体成形される場合に限らず、カバーとは別個の部材であってもよい。例えば、板バネ等を用いることもできる。