特許第6148043号(P6148043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6148043色素増感型太陽電池、並びにその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148043
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】色素増感型太陽電池、並びにその施工方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   H01G9/20 203B
   H01G9/20 205
   H01G9/20 111D
   H01G9/20 115A
   H01G9/20 303A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-52818(P2013-52818)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179254(P2014-179254A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】梶田 直人
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−319383(JP,A)
【文献】 特開2012−174383(JP,A)
【文献】 特開2005−174679(JP,A)
【文献】 特開2006−310252(JP,A)
【文献】 特開2008−146922(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084254(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0012158(US,A1)
【文献】 特開2010−073416(JP,A)
【文献】 特開2012−069411(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/087848(WO,A1)
【文献】 特開2012−059379(JP,A)
【文献】 特開2010−015830(JP,A)
【文献】 特開2012−221814(JP,A)
【文献】 特開2011−187270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01M 14/00
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の広がりを持つとともに、透光性を有する第1封止材と、
面状の広がりを持つ、前記第1封止材と所定の間隔を開けて配された、第2封止材と、
前記第1封止材とその一面を当接させられた、多数の膜状の対向電極と、
前記第2封止材とその一面を当接させられるとともに、そのそれぞれが前記対向電極と対向させられた、多数の膜状の作用電極と、
前記対向電極のそれぞれと、前記作用電極のそれぞれとを電気的に接続する接続片と、
前記第1封止材と、前記第2封止材との間に、前記対向電極、及び前記作用電極と接触するようにして水密に封止された電解液と、
を有してなるZモジュール構造の色素増感型太陽電池であって、
1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極とは、透光性を有し、少なくともその両表面が導電性を有する一枚物のシートであり、導電性を有する多数の縦線、及び横線を含む金属製のメッシュである導電シートを折り曲げたものとされており
前記第1封止材と、前記第2封止材の双方が、所定範囲の伸びが許容された膜材であり、
色素増感型太陽電池は全体として矩形とされ、
前記色素増感型太陽電池の矩形形状の一辺である基準辺と、前記対向電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°であり、且つ前記基準辺と、前記作用電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°となっている、
色素増感型太陽電池。
【請求項2】
1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極とは、前記導電シートを平行に山折りと谷折りをすることにより形成されており、
前記山折りの折目と前記谷折りの折目の間の部分が接続片に、前記山折りの折目の外側と前記谷折りの折目の外側の一方が前記対向電極に、他方が前記作用電極に、それぞれ相当するようになっている、
請求項1記載の色素増感型太陽電池。
【請求項3】
前記導電シートは矩形であり、前記山折りの折目と前記谷折りの折目はともに、前記導電シートの一辺に平行とされている、
請求項2記載の色素増感型太陽電池。
【請求項4】
1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極とは、前記導電シートを平行に2回谷折りすることにより形成されており、
前記2回の谷折りの折目の間の部分が接続片に、前記谷折りの折目の外側の一方が前記対向電極に、他方が前記作用電極に、それぞれ相当するようになっている、
請求項1記載の色素増感型太陽電池。
【請求項5】
前記導電シートは同じ大きさ、形状の2つの矩形部分と、前記矩形部分同士を繋ぐ矩形の接続部分とを備えており、
前記2つの矩形部分は、それらの長さの等しい一辺同士が、平行であり、所定の距離だけ平行に離され、且つそれら一辺同士の一部のみが対向するような位置関係とされているとともに、
前記接続片は、前記一辺同士の一部が対向している部分で前記2つの矩形部分を繋ぐようになっており、
前記2回の谷折りの折目は、前記接続片の部分に位置するようにされている、
請求項4記載の色素増感型太陽電池。
【請求項6】
前記第1封止材と、前記第2封止材の双方が、所定範囲の伸びが許容された膜材である、請求項記載の色素増感型太陽電池の施工方法であって、
施工時における色素増感型太陽電池の向きを、施工後に張力の入る方向として予定されている方向に沿う線である基準線と、前記対向電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°であり、且つ前記基準線と、前記作用電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°となるようにする、
色素増感型太陽電池の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の一ジャンルとして、色素増感型太陽電池が知られている。色素増感型太陽電池は、概ね以下のような構造である。
色素増感型太陽電池は、所定の距離を開けて配された板状或いは膜状の2枚の封止材を有する。両封止材全体の少なくとも一部は透光性を有しており、また、両封止材は互いに内側面(本願では、各封止材が有する面のうちお互いに対向する面を封止材の「内側面」と称する。他方、各封止材の内側面とは反対側の面を「外側面」と称する。)を対向させた状態とされている。色素増感型太陽電池は、また、封止材の内側に、対向電極(正極)と、作用電極(負極)と呼ばれる2つの電極を有する。
作用電極には、金属酸化物を介して色素が付着されている。作用電極には、また、両封止材のうちの透光性を有する部分から入ってきた光(例えば、太陽光)が当たるようになっている。色素は、光を受け励起し、電子を放出するようなものとされている。
光を受けた色素から放出された電子は、金属酸化物、作用電極、他方の封止材を介して外部に取り出される。他方、対向電極と作用電極との間に挟まれた空間の中には、対向電極から電子を受け取り、その電子を励起した色素に渡して励起した色素を通常の状態に戻す電解質、を含む電解液が充填されている。これら、色素、金属酸化物、電解質の存在により、電子は、色素→金属酸化物→作用電極→外部→対向電極→電解質→色素と循環することになる。
このような動作原理により、色素増感型太陽電池は、光を受けたときに起電力を生じ、電池として機能することになる。
このような色素増感型太陽電池は、その製造が比較的容易で、低エネルギーで生産でき、また、板状とするばかりではなく、封止材と対向電極及び作用電極とを可撓性を有する材料とすることにより、可撓性を持つシート状のものとすることができる等の利点があり、今後の実用化に大きな期待が持たれている。
【0003】
ところで、上述した色素増感型太陽電池の動作原理は事実上セルと呼ばれる発電の最小単位についてのものである。実際の色素増感型太陽電池は、セルを複数直列接続したモジュール構造を採用している。全体として板状、或いはシート状の色素増感型太陽電池が採用しうるモジュール構造として一般に、Wモジュール構造やZモジュール構造等が知られている。
Wモジュール構造とZモジュール構造ではともに、一般に、矩形の対向電極と作用電極とが用いられる。ここでは、一例として、対向電極と作用電極の双方が、同幅の細長い矩形、言い換えれば同幅の帯状の形状であるものとして従来技術の説明を行う。
【0004】
Wモジュール構造は、図7に示したようなものとされている。
Wモジュール構造では、1つずつの対向電極901Aと作用電極901Bの長さ方向の縁部同士を互いに電気的に接続した対向電極901Aと作用電極901Bのペア(取り敢えず、「対電極901」と呼ぶ。)が多数用いられる。この対向電極901Aと作用電極901Bのペアは、通常一枚の基板(例えば、一枚の金属の箔)として構成される。一方の封止材902の内側面には、この対向電極901Aと作用電極901Bを含む対電極901が、その長さ方向が揃うようにして、多数連続して並べて配置される。このとき、ある対電極901に含まれる対向電極901Aと作用電極901Bはそれぞれ、対向電極901Aは隣接する対電極901に含まれた作用電極901Bと隣り合うように、作用電極901Bは隣接する対電極901に含まれた対向電極901Aとそれぞれ隣り合うようにされる。また、隣接する2つの対電極901にそれぞれ含まれている、隣り合っている対向電極901Aと作用電極901Bは、それらが互いに電気的に接続されないように、若干の隙間を開けて配置される。
他方の封止材903の内側面にも同様の構造が形成される。
従来のZモジュール構造の上記各封止材の少なくとも内側面のうち対向電極が当接させられる部分には一般に、導電性が与えられている。かかる導電性は、封止材の該当部分に、例えば透明な導電性ポリマーを塗布して透明電極層を形成することにより与えることができる。つまり、封止材の内側面には、所定のパターンによる透明電極層が設けられている。かかるパターンは、封止材の内側面の全面に透明電極層を設けた後透明電極層の一部を削り取ることにより、或いは封止材の内側面にパターンに相当したマスクをした後透明電極層を形成することにより、形成される。
そして、一方の封止材902と他方の封止材903とが、それらの内側面を対向させた状態で、配置される。一方の封止材902に設けられた対電極901の長さ方向と、他方の封止材903に設けられた対電極901の長さ方向は一致するようにされる。
このとき、一方の封止材902側の対向電極901Aと他方の封止材903側の作用電極901Bが対向し、一方の封止材902側の作用電極901Bと他方の封止材903側の対向電極901Aが対向するようにされる。一方の封止材902側の対向電極901Aと他方の封止材903側の作用電極901Bに挟まれた部分、及び一方の封止材902側の作用電極901Bと他方の封止材903側の対向電極901Aに挟まれた部分が、上述のセルSとなる。
このようなWモジュール構造は、作用電極901Bと対向電極901Aを一枚の基板として構成するので、作用電極901Bと対向電極901Aを直列接続するのが容易であるから、後述するZモジュール構造と比べて製造が容易であるという長所がある。反面、Wモジュール構造は、一方の封止材902側にも他方の封止材903側にも、作用電極901Bと対向電極901Aとが配列されるので、一方の封止材902と他方の封止材903がともに透光性を有するのであれば、色素増感型太陽電池のいずれの面に光を照射した場合でも発電を行えるものの、光の照射がその一面側にしかなされない場合(実際は、そのような場合が多い。)における発電の有効面積(作用電極901Bの面積)が略半分になるという短所がある。
【0005】
Zモジュール構造は図8に示されたようなものとされている。
Zモジュール構造では、一方の封止材902の内側面に、多数の対向電極901Aが、それらの長さ方向を揃え、且つそれらが互いに電気的に接続されないように隣接するものとの長さ方向の両縁部に僅かに隙間を開けて、配置される。また、他方の封止材903の内側面に、多数の作用電極901Bが、それらの長さ方向を揃え、且つそれらが互いに電気的に接続されないように隣接するものとの長さ方向の両縁部に僅かに隙間を開けて、配置される。
そして、一方の封止材902と他方の封止材903とが、それらの内側面を対向させた状態で、配置される。このとき、一方の封止材902側の対向電極901Aのそれぞれと、他方の封止材903側の作用電極901Bのそれぞれとが対向するようにされる。
またZモジュール構造では、ある対向電極901Aの長さ方向の縁部と、その対向電極901Aと対向している作用電極901Bの隣に位置する作用電極901Bの縁部とが、導電性を有する接続片901Cによって電気的に接続されている。接続片901Cによる電気的接続は、すべての対向電極901Aの縁部について行われている。
一方の封止材902側の対向電極901Aと、それと対応する他方の封止材903側の作用電極901Bとに挟まれた空間が、上述したセルSとなる。
このようなZモジュール構造は、色素増感型太陽電池への光の照射がその一面側にしかなされない場合であっても、そちら側に作用電極901Bが設けられている、透光性の与えられた他方の封止材903側の面を向けていれば、発電についての有効面積が大きい(Wモジュール構造の略2倍)という長所がある。反面Zモジュール構造では、同一平面上にない対向電極901Aと作用電極901Bの接続片901Cによる電気的な接続を多数の箇所で行わなければならない関係で、Wモジュール構造に比してその製造に手間、コストがかかると共に上記接続部の信頼性確保が非常に困難であるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような長所、短所をそれぞれ備えたWモジュール構造とZモジュール構造ではあるが、本願発明者は、実用時における発電についての有効面積が大きなZモジュール構造の色素増感型太陽電池こそ、その普及が図られるべきと考えた。
そのためには、その短所である製造に手間、コストがかかると共に電極同士の接続部の信頼性確保が非常に困難であるという点の改良が必要である。
【0007】
本発明は、Zモジュール構造の色素増感型太陽電池の製造(対向電極と作用電極の電気的な接続)における手間、コストを減じるとともに、電極同士の接続部の信頼性確保を実現する技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本願発明者は以下の色素増感型太陽電池を提案する。
その色素増感型太陽電池は、面状の広がりを持つとともに、透光性を有する第1封止材と、面状の広がりを持つ、前記第1封止材と所定の間隔を開けて配された、第2封止材と、前記第1封止材とその一面を当接させられた、多数の膜状の対向電極と、前記第2封止材とその一面を当接させられるとともに、そのそれぞれが前記対向電極と対向させられた、多数の膜状の作用電極と、前記対向電極のそれぞれと、前記作用電極のそれぞれとを電気的に接続する接続片と、前記第1封止材と、前記第2封止材との間に、前記対向電極、及び前記作用電極と接触するようにして水密に封止された電解液と、を有してなるZモジュール構造の色素増感型太陽電池である。
つまり、本願発明の色素増感型太陽電池の構造は、基本的には従来からあるZモジュール構造の色素増感型太陽電池と変わらない。
ただし、本願発明の色素増感型太陽電池では、1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極とは、透光性を有し、少なくともその両表面が導電性を有する一枚物のシートである導電シートを折り曲げたものとされている。
なお、本願の明細書における「導電シートを折り曲げる」の語は、シートを湾曲させるという概念を含む。というより、ある程度小さな曲率でシートを湾曲させるという方が実際に近い。作用電極には、従来技術で説明したように金属酸化物を介して色素が付着されているが、鋭角な折目をつけるようにして導電シートを折り曲げた場合には、折目の部分の周囲に付着していた金属酸化物が脱落するおそれがある。そのようなことを避けるには、ある程度小さな曲率でシートを湾曲させるのが実用的である。
【0009】
本願の色素増感型太陽電池では、従来であれば、接続片と、接続片で後から電気的に接続されていた対向電極と、作用電極とが、一枚物のシートである導電シートを折り曲げたものとされている。つまり、本願発明の色素増感型太陽電池で用いられる接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極では、対向電極と、作用電極とが、当初から接続片で接続された状態となっているから、対向電極と作用電極とを接続片で電気的に接続するという従来手間とコストがかかっていた作業が不要となる。導電シートを折り曲げる作業は生じるものの、その手間、コストは、多くの対向電極と作用電極を接続片で電気的に接続していく手間、コストに比べれば遥かに小さい。
また、上記接続作業が不要であり、対向電極と作用電極とがそもそも一枚物のシートから作られるのであるから、電極同士の接続部において接続不良による発電不良が発生する可能性もない。
【0010】
導電シートは、例えば、以下のように作ることができる。
1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極とは、前記導電シートを平行に山折りと谷折りをすることにより形成されており、前記山折りの折目と前記谷折りの折目の間の部分が接続片に、前記山折りの折目の外側と前記谷折りの折目の外側の一方が前記対向電極に、他方が前記作用電極に、それぞれ相当するようになっていてもよい。なお、この場合の「折目」の用語は、山折り、谷折りの用語を使用する関係上便宜的に用いられているものであり、「導電シートを折り曲げる」の語に、上述のように、シートを湾曲させるという概念が含まれるのであるから、「折目」の用語は、ある程度小さな曲率でシートが湾曲された部分という概念も含む。本願明細書では、「折目」の語をそのような意味で用いる。
この場合、前記導電シートは矩形であり、前記山折りの折目と前記谷折りの折目はともに、前記導電シートの一辺に平行とされていてもよい。
或いは、1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極とは、前記導電シートを平行に2回谷折りすることにより形成されており、前記2回の谷折りの折目の間の部分が接続片に、前記谷折りの折目の外側の一方が前記対向電極に、他方が前記作用電極に、それぞれ相当するようになっていてもよい。
この場合、前記導電シートは同じ大きさ、形状の2つの矩形部分と、前記矩形部分同士を繋ぐ矩形の接続部分とを備えており、前記2つの矩形部分は、それらの長さの等しい一辺同士が、平行であり、所定の距離だけ平行に離され、且つそれら一辺同士の一部のみが対向するような位置関係とされているとともに、前記接続片は、前記一辺同士の一部が対向している部分で前記2つの矩形部分を繋ぐようになっており、前記2回の谷折りの折目は、前記接続片の部分に位置するようにされていてもよい。この場合の接続部は例えば、矩形とすることができ、特には、一辺同士の対向する部分に相当する向かい合う2辺を持つ矩形とすることができる。
【0011】
本願発明における前記導電シートは、少なくともその両表面に導電性を有し、且つ透光性を有するものであり、折曲げ可能なものである必要があるが、それ以外には特に制限はない。
本願発明における導電シートは例えば、導電性を有する多数の縦線、及び横線を含む金属製のメッシュであっても良い。
また、前記導電シートは、透明又は半透明のフィルムに導電ポリマーを塗布したものであっても良い。
【0012】
本願の色素増感型太陽電池は、シート状、或いは板状となる。
前記第1封止材と、前記第2封止材の双方が、膜材である場合には、本願の色素増感型太陽電池はシート状となる。この場合、前記第1封止材と、前記第2封止材の双方が、所定範囲の伸びが許容された膜材であっても良い。全体としてシート状の色素増感型太陽電池は、例えば建築用の膜材料として用いることも可能であるが、そのような場合には施工後の色素増感型太陽電池にテンションを入れることが必要となる場合も多い。また、施工後の色素増感型太陽電池に風雨などによりテンションがかかることもある。第1封止材と、第2封止材の双方が、所定範囲の伸びが許容された膜材である場合には、テンションを入れた、或いは入れられたときに、第1封止材と、第2封止材が破損することを防げる。
前記第1封止材と、前記第2封止材の少なくとも一方が、板材である場合には、本願の色素増感型太陽電池は全体として板状となる。この場合には、一般的なパネル状の太陽電池と同様の方法で用いることができる。
【0013】
本願は、また、Zモジュール構造の色素増感型太陽電池の製造方法をも提案する。
このZモジュール構造の色素増感型太陽電池の製造方法は、基本的には、本願発明による色素増感型太陽電池を製造する方法であって、透光性を有し、少なくともその両表面が導電性を有する一枚物のシートである導電シートを折り曲げたものを多数作成し、作成したその折り曲げられた導電シートを、1つの接続片と、その接続片で電気的に接続された対向電極、及び作用電極として用いる、ものである。
その他の部分については、従来通りのZモジュール構造の色素増感型太陽電池の製造方法と同じで良い。
【0014】
本願は、また、前記第1封止材と、前記第2封止材の双方が、所定範囲の伸びが許容された膜材であり、前記導電シートは、導電性を有する多数の縦線、及び横線を含む金属製のメッシュであるような、色素増感型太陽電池の施工方法をも提案する。
この施工方法では、施工時における色素増感型太陽電池の向きを、施工後に張力の入る方向として予定されている方向に沿う線である基準線と、前記対向電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°であり、且つ前記基準線と、前記作用電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°となるようにする。
シート状の色素増感型太陽電池に張力がかかると、その張力に沿う方向にその全体が伸び、所定範囲の伸びが許容された膜材である第1封止材と第2封止材が伸びる。なお、対向電極は第1封止材に、作用電極は第2封止材に、少なくともそれらの一部が固定されているのが通常である。このとき、色素増感型太陽電池の伸びの方向と対向電極中の縦線と横線のいずれかの方向が一致していると、金属であり伸びが殆ど許容されない対向電極中の縦線又は横線のうち、色素増感型太陽電の池伸びの方向と一致しているものに破損が生じる可能性がある。或いは対向電極が第1封止材から離脱するおそれがある。この事情は、作用電極中の縦線と横線、及び作用電極と第2封止材の関係でも同様である。
施工時における色素増感型太陽電池の向きを、施工後に張力の入る方向として予定されている方向に沿う線である基準線と、対向電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°であり、且つ基準線と、作用電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°となるようにすれば、言い換えれば、対向電極中の縦線、横線、作用電極中の縦線、横線のすべてが基準線と平行或いはそれに近い角度でなく、基準線と30°〜60°程度の角を保つ関係になるようにすれば、シート状の色素増感型太陽電池が基準線に沿う方向に伸びた場合であっても、対向電極中の縦線、横線、作用電極中の縦線、横線のいずれかに、基準線に沿う方向の伸びがそのまま強要されるということを防ぐことができる。また、このように色素増感型太陽電池を施工すると、基準線は、対向電極中の縦線と横線が作る四角形、或いは作用電極中の縦線と横線が作る四角形のうちの一の対角線に沿うか、それに近い状態となるので、基準線に沿う方向に伸びる力が対向電極又は作用電極にかかったとしても、上述の四角形がいわばパンタグラフのように変形することにより、その伸びを吸収することができるから、対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱が防止される。
なお、この施工方法における基準線は、上述のように、施工後に張力の入る方向として予定されている方向に沿う線である。この場合の張力は、色素増感型太陽電池の剛性を増すこと等を目的として施工業者が意図的に色素増感型太陽電池に入れる初期張力と、また初期張力が入れられるか入れられないかによらず施工後の風雨、或いは雪などによる荷重により色素増感型太陽電池にかかる張力の双方を含む。後者の張力は、施工を行う者が意図して色素増感型太陽電池に与えるものではないが、色素増感型太陽電池の形状、配置等から予想可能なものである。
【0015】
上述した通り、本願の色素増感型太陽電池の施工方法では、前記基準線に沿う方向に張力を入れて前記色素増感型太陽電池を施工してもよい。その場合には、上記基準線が明確になるから、対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の効果を得やすい。
また、本願の色素増感型太陽電池の施工方法では、前記色素増感型太陽電池として、前記基準線に沿う方向の前記第1封止材、及び前記第2封止材の破断伸度が3%以上のものを用いることもできる。第1封止材及び第2封止材の伸びが許容されればされるほど、対向電極の第1封止材からの離脱、作用電極の第2封止材からの離脱、或いは対向電極中の縦線又は横線の断線、作用電極中の縦線又は横線の断線が生じるおそれが大きくなる。そのような観点からすれば、第1封止材、及び第2封止材の破断伸度が3%以上のものを用いた場合には、対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の効果を得やすい。
【0016】
前記第1封止材と、前記第2封止材の双方が、所定範囲の伸びが許容された膜材であり、色素増感型太陽電池が全体として矩形(正方形を含む)とされている場合、前記色素増感型太陽電池の矩形形状の一辺である基準辺と、前記対向電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°であり、且つ前記基準辺と、前記作用電極中の縦線及び横線がなす角のうちの小さい方がいずれも30°〜60°となっていてもよい。
つまり、この色素増感型太陽電池は、対向電極中の縦線、横線、作用電極中の縦線、横線のいずれもが、矩形形状の色素増感型太陽電池のいずれの辺とも平行ではなく、いずれの辺とも30°から60°の範囲の適宜の角度をなすようになっている。これは、矩形の色素増感型太陽電池を施工する場合、その張力は、意図的にかけるにせよ、意図せずにかかるにせよ、その4辺のいずれかに沿う方向にかかることが多いから、矩形形状の色素増感型太陽電池の一辺である基準辺を本願発明による色素増感型太陽電池の施工方法における上述の基準線と同様のものとして扱い、そしてその基準辺に対して、対向電極中の縦線、横線、作用電極中の縦線、横線のいずれもが、本願発明による色素増感型太陽電池の施工方法における上述の基準線との間で満たすべき上述の関係と同様の関係を満たすようにしておけば、その色素増感型太陽電池を普通に或いは、一般的な方法で施工すれば、対向電極中の縦線、横線、作用電極中の縦線、横線のいずれもが自動的に、本願発明による色素増感型太陽電池の施工方法における上述の基準線との間で満たすべき上述の関係を充足することになる。
つまり、この色素増感型太陽電池は、対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の作用効果を得やすい。
なお、矩形の色素増感型太陽電池には4つの辺があるが、そのうちの一辺との間で、それとなす角のうちの小さい方が30°〜60°の範囲に収まる場合には、他の3辺との間でも同様の関係が満たされる。つまり、基準辺は、矩形の色素増感型太陽電池の4つの辺のどれでも構わない。
【0017】
対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の作用効果を得られる上述の色素増感型太陽電池は、前記対向電極中の縦線及び横線が直交しており、且つ前記作用電極中の縦線及び横線が直交していても構わない。もちろん、前記対向電極中の縦線及び横線が直交しているという条件と、前記作用電極中の縦線及び横線が直交しているという条件の一方のみを充足するものでも構わない。対向電極又は作用電極中の縦線と横線は直交するように製造するのが最も容易である。
なお、本願の色素増感型太陽電池の施工方法で用いられる色素増感型太陽電池も、対向電極中の縦線及び横線が直交しているという条件と、作用電極中の縦線及び横線が直交しているという条件の少なくとも一方を満たすものであってもよい。
【0018】
対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の作用効果を得られる上述の色素増感型太陽電池は、前記色素増感型太陽電池の矩形形状の隣接する2辺に沿う方向の前記第1封止材、及び前記第2封止材の破断伸度が3%以上であってもよい。
対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の作用効果を得られる上述の色素増感型太陽電池の施工方法で述べたのと同様の理由により、色素増感型太陽電池が伸びたときに、対向電極の第1封止材からの離脱、作用電極の第2封止材からの離脱、或いは対向電極中の縦線又は横線の断線、作用電極中の縦線又は横線の断線が生じるおそれを小さくできる、という作用効果をより得やすくなる。
【0019】
対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の作用効果を得られる上述の色素増感型太陽電池では、前記対向電極中の縦線及び横線がいずれも、その少なくとも一部が第1封止材に固定されていても良いし、その略全長にわたって前記第1封止材に固定されていてもよい。また、対向電極と作用電極の破損乃至第1封止材又は第2封止材からの離脱防止の作用効果を有する上述の色素増感型太陽電池では、前記作用電極中の縦線及び横線がいずれも、その少なくとも一部が第2封止材に固定されていても良いし、その略全長にわたって前記第2封止材に固定されていてもよい。
なお、上述の色素増感型太陽電池の施工方法で用いられる色素増感型太陽電池でも、対向電極中の縦線及び横線がいずれも、その少なくとも一部が第1封止材に固定されていても良いし、その略全長にわたって第1封止材に固定されていてもよい。また、上述の色素増感型太陽電池の施工方法で用いられる色素増感型太陽電池でも、作用電極中の縦線及び横線がいずれも、その少なくとも一部が第2封止材に固定されていても良いし、その略全長にわたって第2封止材に固定されていてもよい。
第1封止材と対向電極の固定、及び第2封止材と作用電極の固定は、例えば、第1封止材又は第2封止材の融点以上の温度で加熱しての熱溶着によることができる。第1封止材、第2封止材が樹脂、又はゴムでできている場合において、熱溶着を行えば、対向電極が第1封止材に、又は作用電極が第2封止材に幾らか埋没した状態で固定されるので、容易に、強固な固定を実現できる。
なお、本願の色素増感型太陽電池の施工方法で用いられる色素増感型太陽電池でも、このような方法で、対向電極と第1封止材を、或いは作用電極と第2封止材を固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願の一実施形態における色素増感型太陽電池の構成を示す断面図。
図2図1に示した色素増感型太陽電池に含まれる電極の折曲げ前の形状を示す平面図。
図3図1に示した色素増感型太陽電池に含まれる他の電極の折曲げ前の形状を示す平面図。
図4図1に示した色素増感型太陽電池に含まれる対向電極と第1封止材の位置関係を示す平面図。
図5図1に示した色素増感型太陽電池に含まれる第1封止材と対向電極の関係の許容される例と許容されない例を示す平面図。
図6図1に示した色素増感型太陽電池の施工例を示す平面図。
図7】従来のWモジュール構造の色素増感型太陽電池の構成を示す側断面図。
図8】従来のZモジュール構造の色素増感型太陽電池の構成を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、第1〜第3実施形態における色素増感型太陽電池について説明する。
なお、各実施形態における色素増感型太陽電池の説明において、同じ対象については同じ符号を付すものとし、重複する説明は場合により省略するものとする。
【0022】
≪第1実施形態≫
<第1実施形態の色素増感型太陽電池の構成>
第1実施形態の色素増感型太陽電池の側断面図を図1に示す。
この色素増感型太陽電池は、Zモジュール構造を採用している。
色素増感型太陽電池は、第1封止材101と第2封止材102とを備えている。第1封止材101と第2封止材102は面状であり、この実施形態ではこれには限られないが膜材である。第1封止材101と第2封止材102は、同一の形状、大きさであり、僅かな間隔を隔てて向き合わされている。第1封止材101と第2封止材102は、また、その縁部を水密に接続されている。
【0023】
第1封止材101と第2封止材101のうち、少なくとも第2封止材102は透光性を有している。色素増感型太陽電池には、後述する作用電極が設けられる第2封止材102側の面から光が照射されるようになっている。
【0024】
第1封止材101は、この実施形態では、透明又は半透明の樹脂製又はゴム製の膜材であり、ここで云う膜材とは、樹脂製のフィルムを含むものと定義する。第1封止材101を構成する樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、 ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、 ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)とすることができる。或いは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合休(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合休(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂とすることができる。或いは、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴムとすることができる。 第2封止材102も基本的に第1封止材101と同様に構成することができ、第2封止材102はこの限りではないがこの実施形態では、第1封止材101と同様に構成されている。ただし、第2封止材102は透光性が必要であり、第1封止材で挙げた各種素材のうち樹脂製のフィルムかつ可視光透過率が80%以上となる材料を選択することが好ましい。
第2封止材102の厚さは、100〜500μmとすることができ、より好ましくは150〜350μmとすることができる。このような範囲にすることによって、適度な透光性を保つことと同時に強度等を得ることが可能となる。第1封止材101の厚さは限定されないが、100〜1000μmの厚さにすることができる。
第1封止材101の場合と同様に、第2封止材102の内側面のうち後述する作用電極が当接させられる部分には、導電性が与えられている。
【0025】
第1封止材101と第2封止材102に挟まれた空間には、電極111が設けられている。第1封止材101と第2封止材102の間隔は、例えば、1〜100μmであり、50μmよりも厚みを小さくするのが好ましい。その空間に、電極111は、多数設けられている。
電極111は、図1に示したように、横から見た場合に略Z字形状となるようになっている。電極111は、導電性を持つ一枚物のシートを折り曲げることにより形成されている。
【0026】
電極111は、この実施形態では、金属製のメッシュにて構成されている。
電極111は、多数の縦線、及び横線を含んで構成されている。必ずしもこの限りではないが、電極111は、縦線、横線を、平織で織ったものとされている。
電極111は、導電性を有する金属製である。縦線、横線を構成する金属は、例えば、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、各種ステンレス及びこれらの合金である。縦線、横線は、白金などでコーティングされている場合もある。
また、電極111のその他の例としては、縦線、横線が金属製でない合成繊維や無機繊維等による繊維布(織布、編布のいずれでも良い。)に導電性ポリマーを塗布したものであっても良い。
縦線、横線の線径(P)は、100μm以下が好ましいが、色素増感型太陽電池の可撓性を担保するには、50μm以下とするのが好ましい。縦線、横線の目開きは、50〜800メッシュとすることができる。縦線、横線の目開きが小さい程、色素増感型太陽電池100の起電力を大きくし易いと共に、メッシュの目の中に後述する金属酸化物が入る可能性も小さくなり、張力がかかった場合(伸度が与えられた状態)における金属酸化物の脱落を少なくすることができ、発電効率の低下を少なくすることができる。金属酸化物の塗布等を考慮すると、目開きは、200〜500メッシュとすることが好ましい。
【0027】
この実施形態の電極111は、例えば、折り曲げる前の状態では、図2に示したように矩形である。その矩形のシートを、鎖線X1で山折りし、2点鎖線Y1で谷折りすることにより、電極111は、図1に示したような略Z字形状の側面形状を有することになる。この場合、山折りの折目X1と谷折の折目Y1の外側である111A、111Bの符号が付された、互いに同じ形状、大きさの矩形の部分がそれぞれ、後述する対向電極と、作用電極になる。また、山折りの折目X1と谷折りの折目Y1の間に挟まれた111Cの符号が付された部分は、後述する接続片になる。なお、山折りの折目X1と谷折りの折目Y1に挟まれた部分は、山折りの折目X1と谷折の折目Y1の外側である111A、111Bの符号が付された部分を接続できるのであれば、その一部が欠けていても構わない。
なお、山折りの折目X1と谷折の折目Y1はともに、ある程度小さな曲率で電極111を構成するシート(金属製のメッシュ)が湾曲された部分であっても良く、この実施形態ではそうされている。換言すれば、電極111を構成するシートは、山折りの折目X1と谷折の折目Y1の部分で曲折されており、山折りの折目X1又は谷折の折目Y1の両側の曲折されていない部分同士が事実上90°の角度をなすようになっている。後述する折目Y2、Y3でも事情は変わらない。
折り曲げる前の電極111は、或いは、図3(A)に示したような形状であってもよい。この場合の電極は、111A、111Bの符号が付された2つの矩形の部分と、それらを繋ぐ111Cの符号が付された小さな矩形の部分を備えている。111A、111Bの符号が付された矩形の部分は、互いに同じ大きさで同じ形状である。また、111A、111Bの符号が付された矩形の部分は、それらの長さの等しい一辺同士が、平行であり、所定の距離だけ平行に離され、且つそれら一辺同士の一部のみが対向するような位置関係とされており、111Cの符号が付された矩形の部分は、上述の一辺同士の一部が対向している部分で2つの矩形部分111A、111B同士を繋いでいる。なお、111Cの符号が付された小さな矩形の部分は、111A、111Bの符号が付された矩形の部分を上述の位置で繋いでいれば良く、その限りにおいてその形状は矩形である必要な必ずしもない。
そして、111Cの符号が付された小さな矩形部分には、二点鎖線で示された谷折の折目Y2、Y3がある。折目Y2、Y3は平行であるが、111Cの符号が付された小さな矩形の部分と111Aの符号が付された小さな矩形の部分との接線から、111Cの符号が付された矩形の部分から111Bの符号が付された矩形の部分の接線までのどこに存在していてもよい。折目Y2と折目Y3の距離が、後述する対向電極から作用電極までの距離を決定する。
折目Y2とY3で谷折りすることにより、図3(A)に示された電極111は、断面略Z字型の図3(B)に示されたような形状となる。図3(A)に示した電極111は、折り曲げた後においては、谷折りの折目Y2と、Y3の外側の部分がそれぞれ、後述する対向電極と作用電極となる。また谷折りの折目Y2とY3に挟まれた部分が、後述する接続片となる。これは、2つの矩形部分111A、111Bがそれぞれ、対向電極と作用電極となり、それら矩形部分111A、111Bを繋ぐ矩形部分111Cが接続片となるのに略等しい。
【0028】
電極111の例として、図2に記載のものと、図3に記載のものの2つの例を挙げたが、いずれにせよ、111Aの符号が付された部分が従来技術で説明した対向電極として機能し、111Bの符号が付された部分が従来技術で説明した作用電極として機能し、また、111Cの符号が付された部分が作用電極と対向電極とを電気的に接続する従来技術で説明した接続片として機能する。
図1では、電極111のうち対向電極として機能する部分に111Aの符号を付し、作用電極として機能する部分に111Bの符号を付し、また、接続片として機能する部分に111Cの符号を付すものとし、以後、「対向電極111A」、「作用電極111B」、「接続片111C」といった表現を用いることとする。
対向電極111Aと作用電極111Bは、電極111が図2に記載されたものであっても、図3に記載されたものであっても矩形(図3に記載の電極111の場合には略矩形であるが、簡単のため矩形でまとめる。)となる。矩形の対向電極111Aは、図4に示されたようにして色素増感型太陽電池の中に位置している。
図4は、第1封止材101と対向電極111Aの位置関係を示したものであるが、いずれの対向電極111Aも矩形であり、隣り合う対向電極111Aと若干の隙間を空けて同じ向きに配列される。隣り合う対向電極111Aは、電気的に接続されていない。対向電極111Aの幅(図4における上下方向の長さ)は、第1封止材101の幅(図4における上下方向の長さ)よりも幾分短い。第1封止材101の幅方向における対向電極111Aに対する余白部分は、第1封止材101の縁部を第2封止材102の縁部に接続するために用いられる。
第2封止材102と作用電極111Bの位置関係も同様になっている。
対向電極111Aは第1封止材101の内側面に、作用電極111Bは、第2封止材102の内側面にそれぞれ固定されている。対向電極111Aは、その中に含まれる縦線、横線の全長が第1封止材101の内側面に固定されていても良く、また、その中に含まれる縦線、横線の所々で第1封止材101に固定されていても良い。この実施形態では、溶着により、対向電極111Aは、それに含まれる縦線、横線の全長にわたって第1封止材101の内側面に固定されている。作用電極111Bも、対向電極111Aが第1封止材101に固定されているのと同様の方法で、第2封止材102に固定することができ、この実施形態ではそうされている。
【0029】
電極111の作用電極111Bとなる部分には金属酸化物が付着させられており、金属酸化物には色素が吸着させられている。金属酸化物と色素についてはいずれも図示を省略する。
金属酸化物141としては、色素増感型太陽電池で従来から使用されているものを利用することができる。具体的には、かかる金属酸化物141としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブテン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅を利用可能である。金属酸化物141の粒子径は、例えば、一次粒子径で1〜150nmとすることができるが、5〜20nmとするのが好ましい。
金属酸化物141に吸着させる色素は、色素増感型太陽電池で従来から用いられている色素を用いることができる。かかる色素としては、例えば、キサンテン系色素、クマリン系色素、トリフェニルメタン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリピリジン金属錯体色素、ルテニウムビピリジウム系色素、アゾ色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリウム系色素、ペリレン系色素、 インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素、金属錯体色素(中心金属がRu(ルテニウム)、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Co(コバルト)、Os(オスミウム)、Re(レニウム)、Cu(銅)、Pt(白金)等)、マーキュロクロム色素を利用できる。
金属酸化物141を作用電極111Bに塗布する方法については後述する。
【0030】
対向電極111Aは、上述したように、縦線と横線を含んでいる(なお、縦線と横線のネーミングは便宜的なものであり、両者は入れ替えられても構わない。)。図4の吹き出し状に描かれた一部拡大図に、対向電極111Aの縦線131と横線132を示すが、対向電極111A中の縦線131と横線132は、第1封止材101の任意の辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°となるようになっている。
一部拡大図において、第1封止材101と、対向電極111A中の縦線131及び横線132の関係を示している。また、同図中のXの符号を付した二点鎖線で示された線分は、矩形形状である第1封止材101における図4中の上下の辺(色素増感型太陽電池100の長辺)に平行な線分である。なお、この実施形態では、図4中の膜材110の上下の辺の一方が、本願の色素増感型太陽電池100における基準辺ということになる。
図4における、縦線131と線分Xがなす角のうち小さい方は、角A1であり、横線132と線分Xがなす角のうち小さい方は、角A2である。そして、これらはともに、30°〜60°の範囲に入っている。具体的には、この例では、角A1、角A2はともに、35°である。つまり、対向電極111Aの縦線131と横線132は、第1封止材101の基準辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°となっている。なお、仮に、基準辺を矩形形状である第1封止材101における図2中の左右の辺の一方とした場合、それと縦線131又は横線132がなす角はそれぞれ、(90−A1)°と、(90−A2)°となる。A1とA2が30°〜60°の範囲に入っているのであれば、(90−A1)°と、(90−A2)°はともに、30°〜60°の範囲に含まれる。つまり、対向電極111Aの縦線131と横線132は、第1封止材101のうちの任意の辺である基準辺との関係で、基準辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°となっているという関係を満たすのであれば、第1封止材101の他のどの辺との関係でも、その辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°となっているという関係を充足する。基準辺が矩形形状である第1封止材101の4辺のいずれであっても構わないのは、このような理由による。
【0031】
なお、縦線131と横線132が基準辺となる角は、図4に示した例のように「同じ」であることを、必ずしも要求されない。
例えば、図5の(A)に示した例では、縦線131と線分Xがなす角のうち小さい方は、角A3であり、横線132と線分Xがなす角のうち小さい方は、角A4であるが、42°である角A3と30°である角A4はともに30°〜60°の範囲に入っており、且つ角A3>角A4である。
また、これまでの例では、縦線131と横線132は直交していなかったが、図5(B)の例に示したように、縦線131と横線132は直交していても構わない。なお、この例では、縦線131と線分Xがなす角のうち小さい方は角A5、横線132と線分Xがなす角のうち小さい方は角A6であり、且つ角A5、角A6ともに、45°となっている。
なお、図5(C)と図5(D)はともに、対向電極111Aの縦線131と横線132が、第1封止材101のうちの任意の辺である基準辺との関係で、基準辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°となっているという関係を満たさない場合の例である。図5(C)の例の場合は、縦線131と線分Xがなす角のうち小さい方は角A7、横線132と線分Xがなす角のうち小さい方は角A8であり、角A7は80°、角A8は10°となっている。また、図5(D)の例の場合は、縦線131と線分Xがなす角はともに90°、横線132と線分Xは平行なので、それらがなす角のうち小さい方は、そもそも存在しないか、或いは0°である。
【0032】
なお、図示を省略するが、作用電極111B中の縦線と横線の第2封止材102に対する位置関係は、対向電極111A中の縦線131と横線132の第1封止材101に対する位置関係と、原則として同様になっている。即ち、そのすべての部分で縦線と横線の関係が変わらない一枚物の金属メッシュから対向電極111Aと作用電極111Bとが作られている限り、図2に示された電極111から作られた作用電極111B中の縦線と横線の第2封止材102に対する位置関係は、対向電極111A中の縦線131と横線132の第1封止材101に対する位置関係と同じであり、図3に示された電極111から作られた作用電極111B中の縦線と横線の第2封止材102に対する位置関係は、対向電極111A中の縦線131と横線132の第1封止材101に対する位置関係と、図4の一部拡大図、図5の拡大図で言えば左右反転した状態となる。
いずれにせよ、作用電極111Bの縦線と横線は、第2封止材102のうちの任意の辺である基準辺との関係で、基準辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°の範囲になる。
また、作用電極111B中の縦線と横線の色素増感型太陽電池100の各辺に対する角度は、対向電極111A中の縦線131と横線132の色素増感型太陽電池100の各辺に対する角度と一致している必要はない。
【0033】
第1実施形態の色素増感型太陽電池では、第1封止材101と第2封止材102の間に、電解液103が充填されている。電解液103は、対向電極111Aと作用電極111Bに触れている。
電解液103は、電解質を溶媒に溶かしこんだものである。
電解質は、光を受けて励起して、第2封止材102から外部に供給される電子を放出した色素に対して電子を供給するとともに、対向電極111Aから電子の供給を受ける機能を有する。
電解質の例としては、ヨウ素/ヨウ化物イオン、臭素/臭化物イオン、コバルト錯体、などを挙げることができる。
より具体的には、ヨウ素と、LiI(ヨウ化リチウム)、NaI(ヨウ化ナトリウム)、KI(ヨウ化カリウム)等の金属ヨウ化物の組合せ、ヨウ素と、4級イミダゾリウム化合物のヨウ化物塩、4級ピリジニウム化合物のヨウ化物塩、テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ化物塩等の組合せがその例となる。また、臭素と、LiBr(臭化リチウム)、NaBr(臭化ナトリウム)、KBr(臭化カリウム)等の金属ヨウ化物の組合せ、臭素と、4級イミダゾリウム化合物の臭化物塩、4級ピリジニウム化合物の臭化物塩、テトラアルキルアンモニウム化合物の臭化物塩等の組合せがその例となる。或いは、[CoII(bpy)(B(CN)]、[CoIII(bpy)(B(CN)]、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素)を含有するイオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜臭素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオンがその例となる。
これら電解質を溶かす溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなどの芳香族化合物、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどのアルカン類、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホアミド等のアミド系、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、ジメトキシエタン、スルホラン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類が利用可能である。
【0034】
この色素増感型太陽電池は、図1の鎖線で囲まれたSの範囲が、いわゆる1つのセルとして機能する。それぞれのセルSが電池として機能する理屈は、従来技術で述べたとおりであるからその説明を省略する。
この実施形態の色素増感型太陽電池は、従来のZモジュール構造の色素増感型太陽電池と同様の構成であり、セルを直列接続した状態となっている。必要な電圧に達するまでセルを直列接続することで、この実施形態の色素増感型太陽電池は所望の電圧の電流を取出せるものとなる。
【0035】
電流は、図示を省略の接続線から取出される。
接続線は、図1で図示を省略された一番右の対向電極と、一番左の作用電極にそれぞれ接続され、外部の例えば蓄電池に接続されている。接続線と接続される対向電極と作用電極は、折り曲げられて略Z状の断面形状を持つものではなく、平面状の電極とされている。
【0036】
<第1実施形態の色素増感型太陽電池の製造方法>
次に、以上で説明した色素増感型太陽電池の製造方法について説明する。
この実施形態では、第1封止材101と、第2封止材102は、必ずしもこの限りではないが、市販のものを用いることとし、その製法についての説明は省略する。もっとも、第1封止材101と、第2封止材102から製造する場合は、同種の膜材の製法として公知な一般的な製造方法でそれらを製造すれば良い。
対向電極111A、作用電極111Bを構成する金属製のメッシュも、市販のものを用いても良いが、この実施形態では、既に説明した条件(素材、線径、目開き、厚さ、縦線と横線の角度等)を充足するものを製造するものとする。
第1封止材101、第2封止材102、対向電極111A、作用電極111Bを構成する金属製のメッシュ、及び後述する電解液を主な材料として、色素増感型太陽電池が製造される。
【0037】
まず、電極111を多数作製する。電極111は、金属製のメッシュを、図2或いは図3(A)に示した形状に切断することからその製造を開始する。
次いで、いずれの場合でも、切断後の金属製のメッシュのうち折り曲げ後に作用電極111Bとなる部分に金属酸化物を塗布し、その後金属酸化物に色素を吸着させる。
具体的には、上述したような金属酸化物を溶媒に分散させた分散液を作成し、それを後に作用電極111Bとなる部分に塗布し、固定した後、色素を吸着させる。分散液の作成、その作用電極111Bへの塗布の方法、色素の吸着方法はいずれも、公知の方法を用いることができる。
分散液の溶媒は、例えば、水、又はアルコールである。また、分散液には、分散剤として、酢酸、塩酸等の酸、又はアセチルアセトンを添加する。上述した金属酸化物141、分散剤を溶媒に加え、公知の自転公転ミキサやスターラーを用いて撹拌を行う。
次いで、上述のようにして調整した分散液を作用電極111Bに塗布する。塗布の方法は、スプレー法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディップコート法、スピンコート法等を用いることができる。切断された金属製のメッシュのうちの後に作用電極111Bとなる部分へ分散液を塗布する場合、メッシュの目を出来るだけ金属酸化物で埋めないようにすることで、完成後の色素増感型太陽電池に後述するように張力がかかった場合(伸度が与えられた状態)であっても、金属酸化物が作用電極111Bから脱落にしにくくなり、発電効率の低下を少なくすることができる。分散液の作用電極111Bへの塗布は、作用電極111Bのうちの第2封止材102側の面(つまり、太陽光などの光を照射される側の面)にだけ行うこともできるが、作用電極111Bの両面、或いは、作用電極111Bに含まれる縦線と横線の全表面に分散液を塗布することも可能である。そうすることにより発電効率を上げられるようになり、また完成後の色素増感型太陽電池に後述するように張力がかかった場合であっても、金属酸化物が作用電極111Bから脱落にしにくくなる。このことは伸度が与えられた状態であっても発電効率の低下を少なくできることを意味する。この実施形態では、作用電極111Bに含まれる縦線と横線の全表面に分散液を塗布した。
【0038】
なお、この実施形態では、スプレー法又はスクリーン印刷法を用いて、作用電極111Bに金属酸化物141の塗布を行った。
スプレー法では、作用電極111Bに、低温成膜用酸化チタンペースト(品番:PECC−C01−06、ペクセル・テクノロジーズ株式会社製)を、1−プロパノールで容積比にて50%に希釈したものをスプレーガンで、作用電極111Bから凡そ30cm離れたところからスプレーすることにより均一に塗布し、その後乾燥させるという工程を12回繰り返した後に焼成することにより、作用電極111Bに金属酸化物を固定させた。
他方、スクリーン印刷法では、スプレー法で用いたのと同様の作用電極111Bに対して、チタニアナノペースト(品番:PST−18NR、触媒化成工業株式会社製)を、250メッシュのスクリーン板を用いてスクリーン印刷法で塗布した後、乾燥させ、その後再度スクリーン印刷法で上記ペーストを塗布し、乾燥させた後に、焼成することによって金属製メッシュ体に金属酸化物を固定させ、その後、金属製メッシュ体に固定した金属酸化物に色素を吸着させた。
なお、作用電極111Bとなる部分への金属酸化物の固定と色素の吸着は、金属製のメッシュの切断の前に金属製のメッシュに対して行なってもよい。
【0039】
次いで、図2又は図3(A)に示した形状である金属製のメッシュを既に説明した場所で折曲げ、電極111に対向電極111Aとなる部分、作用電極111Bとなる部分、接続片111Cとなる部分をそれぞれ作る。
このようにして、同じ形状、大きさの多数の電極111を作る。
【0040】
次いで、第1封止材101に多数の電極111中の対向電極111Aを固定し、第2封止材102に作用電極111Bを固定する。隣り合う電極111は、ある電極111の対向電極111Aが隣接する電極111の作用電極111Bと対向するとともに、上述のある電極の作用電極111Bが反対側で隣接する電極111の対向電極111Aと対向するように配置する。ただし、隣り合う電極111同士は電気的に接続されないように若干の隙間を開けて配置される。
対向電極111Aの第1封止材101に対する固定は、第1封止材101の上に、全体として第1封止材101と略同じ大きさ、形状の対向電極111Aを重ね、第1封止材101を構成する樹脂又はゴム113の融点以上の温度に第1封止材101を加熱し、その後冷却することにより行った。なお、樹脂又はゴムを加熱するときに、対向電極111Aを第1封止材101に押し付けるようにしてもよい。これにより、対向電極111Aは、その縦線と横線が幾らか第1封止材101にめり込んだ状態で、第1封止材101に固定される。
同様にして、作用電極111Bを第2封止材102に固定する。
【0041】
次いで、対向電極111Aが固定された第1封止材101と、作用電極111Bが固定された第2封止材102とを、対向電極111Aと作用電極111Bとが互いに対向するように重ね合わせ、図4に示したように、その縁部を水密に融着させる。第1封止材101と、第2封止材102の融着は、公知の方法を用いて、例えば、第1封止材101と第2封止材102を構成する両樹脂の融点よりも高い温度で第1封止材101と第2封止材102を加熱しながら両者を押圧し合い、その後冷却することで第1封止材101と第2封止材102を融着させる。
ただし、この実施形態では、縁部の一部を融着せずに図示を省略の開口部として残す。
【0042】
次いで、上述の開口部から電解液を、第1封止材101と第2封止材102の間の空隙に流しこむ。
電解液は、上述した電解質のうちの適当なものを、上述した溶媒の適当なものに溶かして作成する。
電解液は、例えば、その先端を上述の開口部から第1封止材101と第2封止材102の間の空隙に差し込んだチューブを介して、第1封止材101と第2封止材102の間の空隙に流しこむ。融着された第1封止材101と第2封止材102の開口部の位置を少し高くしてやるか、開口部とチューブの間の隙間をなくしてやれば、電解液が開口部から漏れだすこともない。
その後、チューブを開口部から引き抜いて、開口部の部分も第1封止材101と第2封止材102を水密に融着する。
これにより、第1封止材101と第2封止材102の間の空隙に電解液が水密に閉じ込められる。
【0043】
そして、この工程は、もっと先に行なっても良いが、図1における右端に位置する対向電極(図示せず)に接続線(図示せず)を接続し、図1における左端に位置する作用電極(図示せず)に接続線(図示せず)を接続する。
以上により、色素増感型太陽電池が完成する。
【0044】
<第1実施形態による色素増感型太陽電池の施工方法>
図6に示したように、この実施形態の色素増感型太陽電池100は全体として膜状である。この実施形態の色素増感型太陽電池100は、例えば、図6に示したように施工される。
この実施形態では、シート状の色素増感型太陽電池100を、その両端部を支える平行で同じ高さの2つの壁1の間にわたした状態に施工する。矩形形状の色素増感型太陽電池100はその両短辺をそれぞれ、壁1の上端部に固定される。
このとき、色素増感型太陽電池100の壁1に固定された短辺部分では、公知の適当な方法で、色素増感型太陽電池100に、長辺に沿う方向で初期張力を与える。
このようにして、色素増感型太陽電池100の施工が終わる。
その後色素増感型太陽電池100が使用されているときに、風雨や、降雪などにより色素増感型太陽電池100に張力がかかることがあり得る。
初期張力も、風雨や降雪などによって使用中に色素増感型太陽電池100にかかる張力も、図6で、矢印Zで示したような矩形の色素増感型太陽電池100の長辺方向に沿う方向で色素増感型太陽電池100にかかる。つまり、矢印Zは、施工後の色素増感型太陽電池100に張力の入る方向として予定されている方向に沿うものであり、それに沿う方向が、本願発明でいう基準線となる。
ここで、基準線である矢印Zで示された方向は、基準辺である上述した矩形形状の色素増感型太陽電池100の長辺の方向と一致する。したがって、対向電極111A、作用電極111Bに含まれる縦線と横線は、上述したように、色素増感型太陽電池100の長辺となす角のうち小さい方の角が、30°〜60°となるようになっているのであるから、上述の施工方法では、色素増感型太陽電池100が持つ対向電極111A、作用電極111Bに含まれる縦線及び横線と、基準線とがなす角のうち小さい方の角は、30°〜60°となっている。
このように施工された色素増感型太陽電池100は、基準線の方向に伸びたとしても、その対向電極111Aと作用電極111Bに、対向電極111Aが第1封止材101から外れるとか、作用電極111Bが第2封止材102から外れるとか、対向電極111A又は作用電極111Bに含まれる縦線又は横線が破断するとか、の不具合が発生しにくい。
【0045】
≪第2実施形態≫
第2実施形態による色素増感型太陽電池は、第1実施形態における色素増感型太陽電池とその構成は殆ど同じである。
唯一異なるのは、その電極111の素材である。
電極111は、樹脂製のフィルムの両面に導電ポリマーを塗布したものを、図2又は図3に示した形状に形成し、第1実施形態の金属製のメッシュを折り曲げたのと同様の方法で折り曲げて形成されている。電極111を構成する樹脂製のフィルムと導電ポリマーはいずれも透明或いは半透明であり、透光性を有する。
折り曲げることにより電極111となる樹脂製のフィルムは、折曲げ後に作用電極111Bとなる部分に、第1実施形態の場合と同様に金属酸化物が付着させられ、その金属酸化物には第1実施形態の場合と同様に色素が吸着させられている。
【0046】
この色素増感型太陽電池の製造方法は、概ね第1実施形態の場合と同様である。
第1封止材101と電極111中の対向電極111Aの固定は、熱をかけて溶着により行える。第2封止材102と電極111中の作用電極111Bの固定も同様である。
【0047】
第2実施形態の色素増感型太陽電池もシート状のものとなるが、第2実施形態の色素増感型太陽電池には、第1実施形態の色素増感型太陽電池の場合にあった、金属製のメッシュの中の縦線及び横線の断線の生じやすさのような、張力の方向による特性の違いは存在しないので、張力が入ることが予定された向きに対してどのような向きに施工しても構わない。
【0048】
≪第3実施形態≫
第3実施形態による色素増感型太陽電池は、第1実施形態における色素増感型太陽電池とその構成は殆ど同じである。
異なるのは、第1封止材101と第2封止材102がともに板材であるということである。第3実施形態による色素増感型太陽電池の第1封止材101と第2封止材102はともに透光性を有するガラスまたは樹脂板である。透光性はガラスまたは樹脂板を透明又は半透明なものとすることにより得られる。もっとも第1封止材101は透光性を必ずしも要しない。
第1封止材101の内側面のうち後述する対向電極が当接させられる部分には、導電性が与えられていても良い。かかる導電性は、この実施形態では、第1封止材101の該当部分に、透明な導電性ポリマーを塗布して透明電極層を形成することにより与えられている。つまり、第1封止材101の内側面には、所定のパターンによる透明電極層が設けられている。かかるパターンは、第1封止材101の内側面の全面に透明電極層を設けた後透明電極層の一部を削り取ることにより、或いは第1封止材101の内側面にパターンに相当したマスクをした後透明電極層を形成することにより、形成することができる。
第1封止材101の場合と同様に、第2封止材102の内側面のうち後述する作用電極が当接させられる部分には、導電性が与えられていても良い。
【0049】
この色素増感型太陽電池の製造方法は、概ね第1実施形態の場合と同様である。
第1封止材101と電極111中の対向電極111Aの固定は、接着剤による接着等
により行える。第2封止材102と電極111中の作用電極111Bの固定も同様である。
【0050】
第3実施形態の色素増感型太陽電池は板状である。つまり、それに張力を入れられることは基本的にない。したがって、第3実施形態の色素増感型太陽電池は、施工時に予定された張力に応じてその向きを調整することについての利益はない。
【0051】
なお、第3実施形態の色素増感型太陽電池の電極111を、第2実施形態で説明したような樹脂製のフィルムの両面に導電ポリマーを塗布したものとすることができる。
【符号の説明】
【0052】
101 第1封止材
102 第2封止材
103 電解液
111 電極
111A 対向電極
111B 作用電極
131 縦線
132 横線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8