(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインパクト用成形金型と、前記パンチを前記ダイスのキャビティに載置された被成形素材に所定の圧力で衝突させるプレス機械と、を有することを特徴とするインパクト成形装置。
両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞されている形状を有する容器形状成形体であって、請求項4に記載のインパクト成形装置を用いて成形されることを特徴とする容器形状成形体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように有底筒状の成形体だけでなく、インパクト成形の利点を活かした、より多様な形状の成形体を成形できることが望まれている。例えば、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞された容器形状の成形体をインパクト成形により成形する場合、従来の後方押出しによるインパクト成形と同時に前方押出しによりインパクト成形を行うことが考えられるが、当該容器形状の成形体を一工程で、かつ均一な形状となるようにインパクト成形を行う技術はまだ確立されていない。具体的には、当該容器形状の成形体を成形するためには、前記隔壁を介して後方側(パンチ側)の押出し成形部分となる後方筒体と前方側(ダイス側)の押出し成形部分となる前方筒体とのつなぎ目部分がなめらかに連続して、筒体表面が均一になるように塑性変形させることができるインパクト成形技術が求められる。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞された容器形状の成形体をインパクト成形により一工程で、かつ成形体表面形状を均一に成形するためのインパクト成形用金型、この金型を用いたインパクト成形装置、インパクト成形方法、この方法により製造される容器形状成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本願に開示するインパクト成形用金型は、
被成形素材を載置するためのキャビティを有するダイスと、
前記ダイスに対向して配置され、前記キャビティに載置された前記被成形素材に衝突させることにより当該被成形素材を塑性変形させるパンチと、を有するインパクト成形用金型において、
前記ダイスは、
前記パンチに対向する側に開口空間を有するダイス本体と、
前記ダイス本体を支持する支持型と、
前記支持型に摺動自在に嵌挿されるとともに、前記開口空間の内外に進退するノックアウト型と、
前記ノックアウト型の退行側に配置され、前記ノックアウト型の退行位置を規制するための規制型とを備え、
前記キャビティは、
前記ダイス本体と前記ノックアウト型と前記規制型とで構成され、
前記ダイス本体の開口空間の内周面と、前記ノックアウト型及び前記規制型の外周面との間に形成される筒状の隙間を有し、
前記パンチにより前記被成形素材を後方押出しによりインパクト成形を行うとともに前記隙間に前記被成形素材を流入させて前方押出しによりインパクト成形を行うものである。
【0010】
本願に開示するインパクト成形用金型において、
前記容器形状成形体は、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞されている構成とすることが好ましい。
【0011】
本願に開示するインパクト成形用金型において、
前記パンチは、当該パンチの長手方向に沿って、前記容器形状成形体にリブを形成するための凹部を有する構成とすることが好ましい。
【0012】
本願に開示するインパクト成形装置は、
前記インパクト用成形金型と、前記パンチを前記ダイスのキャビティに載置された被成形素材に所定の圧力で衝突させるプレス機械と、を有するものである。
【0013】
本願に開示する前記インパクト成形装置を用いたインパクト成形方法は、
前記インパクト成形装置を用いたインパクト成形方法であって、
被成形素材を前記キャビティに載置する素材載置工程と、
前記パンチを前記ダイス側に移動させ、前記キャビティに載置された被成形素材に所定の圧力で衝突させ、前記被成形素材を塑性変形させ、容器形状成形体を形成するパンチ衝突工程と、
前記パンチを前記キャビティから離間させるとともに、前記ノックアウト型を前記パンチ側に移動させて前記容器形状成形体を前記ダイスから離型させる準備をする離形準備工程と、
前記離形準備工程においてノックアウト型を停止した状態において、前記パンチを前記容器形状成形体から抜き取るパンチ抜き取り工程と、
前記パンチを前記容器形状成形体から抜き取る際に、パンチ抜き取り工程にて停止していたノックアウト型を再びパンチ側に移動させるノックアウト型再移動工程と、を有するものである。
【0014】
本願に開示する容器形状成形体は、
両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞されている形状を有する容器形状成形体であって、前記インパクト成形装置を用いて成形されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞された容器形状の成形体をインパクト成形により一工程で、かつ成形体表面形状を均一に成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態においては、照明器具100の構成部材である器具本体21をインパクト成形により成形する場合を例として挙げて説明する。本実施形態では、インパクト成形に使用される金型のダイス部分の構造を改良し、後方押出し及び前方押出しによるインパクト成形を行うことで、照明器具100の構成部材である器具本体21を一工程で成形できるようにしたものである。
【0018】
インパクト成形は、一般に、スラグ(例えば平板状の材料)をダイス(雌型)にセットし、プレス機によって棒状のパンチ(雄型)をスラグに打ち込むことによりスラグに衝撃(インパクト)を与えて、当該スラグを押し潰すとともに押し潰されたスラグの一部をパンチとダイスの隙間から放出させることにより、パンチ外周面に沿って塑性変形させて、有底筒状の成形体を瞬時に成形する技術である。本実施形態に係るインパクト成形では、従来のインパクト成形用の金型(本実施形態ではダイス)を改良することにより、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞された容器形状の成形体を成形可能にしたものである。
【0019】
〔1.照明器具100の構成〕
先ず、本実施形態に係る照明器具100の全体構成について、
図1から
図4を用いて説明する。なお、以下の説明では、照明器具100の「前側」は光を照射する側とし、「後側」は前側の反対側として説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、照明器具100は、例えば、天井等の取付壁部に取り付けて使用されるスポットライトである。照明器具100は、LED102aが実装されたLED基板102と、このLED基板102に電力を供給する電源回路103とを有するとともに、LED基板102及び電源回路103を収納する器具本体21と、端板部22とを備える。器具本体21は、LED基板102を収納するLEDケーシング部104と、このLEDケーシング部104とは隔壁25を介して別区画として構成され、電源回路103を収納する電源ケーシング部105とを備えている。詳しくは後述するが、器具本体21は、インパクト成形により製造される。
【0021】
LED基板102は、円板状に加工されたプリント配線板上の中央部に、発光ダイオード(LED)102aが配置されて実装されている。LED102aは、COB(Chip on Board)素子で構成することができる。LED102aは、例えばプリント配線板上に直接形成されたLED素子と、アノード電極と、カソード電極とを備える。LED102aには、レンズ106が装着されている。
【0022】
図3、
図4に示すように、器具本体21は、軸方向両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁25で閉塞された容器形状の成形体である。すなわち、器具本体21は、円盤状の隔壁25を介して円筒状の前方筒体と同じく円筒状の後方筒体とが連結された構造を有している。前方筒体は、LED基板102を収納するLEDケーシング部104であり、後方筒体は、電源回路103を収納する電源ケーシング部105である。器具本体21は、金属材料(本実施形態では純アルミニウム又はアルミニウム合金)からなる熱伝導性材料で構成される。なお、器具本体21の形状及びそれに含まれる各部(隔壁25等)の形状は、一例である。また、以下の説明では、器具本体21の円筒軸に沿う方向を「軸方向」と称し、円筒軸に直交する方向を「径方向」と称する。
【0023】
隔壁25は、その前面及び後面にそれぞれ前方筒体であるLEDケーシング部104と、後方筒体である電源ケーシング部105とに一体的に形成され、LEDケーシング部104と電源ケーシング部105とを区画するための所定厚さの円盤状部分である。なお、「一体的」とは、成形により単一部品として形成された状態をいう。隔壁25には、
図4(a)に示すように、第1平行リブ111の前端部近傍には、配線を通すための貫通孔25aが設けられている。該貫通孔25aには、LEDケーシング部104に収納されたLED基板102から延出されるコードが挿通される。コードは、電源ケーシング部105に収納された電源回路103に電気的に接続される。なお、コードは、本明細書では図示を省略している。
【0024】
器具本体21の材料は、熱伝導性が高いことが好ましく、本実施形態では純アルミニウム(JISA1000番台)、あるいはアルミニウム合金から構成されるが、本発明はこれに限定されず、器具本体21を構成する材料をインパクト成形にて成形可能な他の材料を用いることができる。このような他の材料としては、例えば、銅、マグネシウム、鉄、ニッケル、及びこれらの合金などが含まれる。
【0025】
端板部22は、器具本体21(電源ケーシング部105)の後端部に取り付けられて、該電源ケーシング部105の後端部の開放された部分を閉塞するための円盤状部材である。端板部22は、該端板部22の周縁部に設けられている取付孔(図示せず)と、電源ケーシング部105の第1平行リブ111・111の後端部に設けられているネジ溝112・112とに、ネジが螺挿されることにより、端板部22と器具本体21(電源ケーシング部105)とが組み付けられるように構成されている。なお、例えば円筒状のピンを第1平行リブ111・111に嵌合させて端板部22を器具本体21に固定する構成にすれば、ネジ溝112は省略することができる。端板部22には、電源回路103に接続される電源コード(図示せず)を内蔵したアーム部116が挿通されるアーム差込口105aが開口されている。当該アーム部116の一端は、電源ケーシング部105内において回動自在となるように支持され、器具本体21を90度の可動範囲で回動することができる。アーム部116の他端は、取付プラグ117内に固定される。該取付プラグ117は、天井等の取付壁部に埋めこまれた配線器具に取付られることによって、器具本体21が天井等の取付壁部に取付けられるともに、外部商用電源から電力が供給されるように構成されている。なお、ネジは、本明細書では図示を省略している。
【0026】
なお、器具本体21の直径、長さ、前方筒体であるLEDケーシング部104側面の厚み、後方筒体である電源ケーシング部105側面の厚み、隔壁25の厚みは任意の寸法であるので、器具本体21の要求される仕様(強度、重量、熱伝導性、意匠性等)や用途に応じて各値を適宜任意の値を設定することができる。
【0027】
LEDケーシング部104は、LED基板102を収納するための筒状部材である。LEDケーシング部104は、前端が開放された円筒状に形成され、この円筒の中空部にLED基板102が収納されている。LEDケーシング部104に一体的に形成される隔壁25の前面は、平らに形成されており、LEDケーシング部104の隔壁25の前面には、前記LED基板102が電気絶縁部材(不図示)を介して固着されている。LEDケーシング部104の前面には、LED102aの光を導出するための導出口104aが、開口されている。導出口104aは、レンズ106の直径よりも大きく、正面視略円形に形成されている。なお、導出口104aを塞ぐ位置に、透光性又は透明性を有するカバーを備えてもよい。
【0028】
電源ケーシング部105は、電源回路103を収納するための筒状部材である。電源ケーシング部105は、隔壁25を介してLEDケーシング部104に一体的に形成される部分である。電源ケーシング部105は、後端が開放された円筒状に形成され、この円筒の中空部に電源回路103が収納されている。電源ケーシング部105に一体的に形成される隔壁25の後面は、平らに形成されている。電源ケーシング部105は、LEDケーシング部104と隔壁25とを介して一体的に形成され、LEDケーシング部104と略同一断面形状を有する円筒状に形成され、LEDケーシング部104と軸心を同じくするように形成されて一の筒状体となるように構成されている。
【0029】
電源回路103は、交流電圧を所定の直流電圧に変換し、または高圧直流電圧を低圧直流電圧に減圧し、LED基板102に電力を供給するためのものであり、長方形板状に加工されたプリント配線板上に実装されている。電源回路103は、後述する第2平行リブ122の後端部から差し込んで、電源ケーシング部105内の所定の位置に保持される。
【0030】
電源ケーシング部105には、一対の第1平行リブ111・111と、一対の第2平行リブ122・122とが、一体的に形成されている。第1平行リブ111・111は、電源ケーシング部105の内壁面において、軸方向に電源ケーシング部105の前端から後端に亘って延設される。第1平行リブ111・111は、電源ケーシング部105の内壁面から径方向に突出している。第1平行リブ111・111は、微小隙間を挟んで互いに対向している。第1平行リブ111・111は、電源ケーシング部105の断面における略直径となる部分に対向配置されている。第1平行リブ111・111は、その後端部分が端板部22をネジで固定するためにタップ加工により形成されるネジ溝112が設けられた部分である。第2平行リブ122は、所定のリブ間隔(前記電源回路103が有するプリント配線基板の厚さと略同じ間隔寸法)を有しており、平行に立設された一対のリブ間に電源回路103を第2平行リブ122の後端部から差し込んで、電源ケーシング部105内を所定の位置に保持するための部分である。第2平行リブは、軸心と垂直となる方向に第1平行リブと所定長離間して設けられている。なお、一対の第1平行リブ111・111は、互いに平行であることは必須ではない。一対の第2平行リブ122・122は、互いに平行であることは必須ではない。また、ネジ溝112は、省略することができる。
【0031】
〔2.インパクト成形装置の基本構成及び動作〕
次に、照明器具100の器具本体21を成形するためのインパクト成形装置2の基本的な構成について
図5を用いて説明する。
【0032】
インパクト成形装置2は、プレス機械3と、このプレス機械3に取り付けられるインパクト成形用の金型4と、を有している。プレス機械3は、パンチ41を、ダイス42のキャビティ50に載置された被成形素材であるスラグWに、所定の圧力で衝突させるものである。
【0033】
インパクト成形用の金型4は、照明器具100の器具本体21として用いられる成形体を成形する金型であって、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁25で閉塞された容器形状の成形体(以下では、成形体1という)を成形するための金型である。詳細は後述するが、金型4は、
図5に示すように、互いに対向配置されるパンチ41と、ダイス42と、を備えている。
【0034】
プレス機械3は、パンチ41をダイス42側に移動させ、所定の高圧力で当該ダイス42にセットされたアルミ材料からなる被成形素材であるスラグWに衝突させるものである。
図5に示すプレス機械3は、クランクプレス式のもので、フレーム31、スライド駆動機構(フライホイール32、クランクシャフト33、コネクティングロッド34)、スライド35、スライドギブ36、ボルスタ37、ストリッパプレート38を備えている。本実施形態では、例えば630t(加圧能力が約6300kN)のクランクプレス式のプレス機械を使用している。
【0035】
フレーム31は、プレス機械3の外枠を構成するものである。
【0036】
スライド駆動機構は、フライホイール32、クランクシャフト33、及びコネクティングロッド34等で構成される。フライホイール32は、モータ(プレスのエネルギー源)からVベルトによって供給される運動エネルギー(回転エネルギー)を蓄積し、これを回転動力として増幅する機能を果たすものである。フライホイール32は、円盤形状をしている。クランクシャフト33は、該フライホイール32の回転運動を直線運動(本実施形態では、上下運動)に変換するものである。クランクシャフト33は、両端部がL字状に屈曲した棒部材からなり、クランクシャフト33の両端は、フレーム31内の上部に回転可能に支持されている。コネクティングロッド34は、該クランクシャフト33と前記スライド35とを連結するものである。なお、モータ及びVベルトは、本明細書では図示を省略している。
【0037】
クランクシャフト33の中央部にはコネクティングロッド34が回動可能に取り付けられ、クランクシャフト33のフレーム31の右側側面を貫通した一方端にはクラッチを介してフライホイール32が取り付けられている。クラッチは、フライホイール32をクランクシャフト33に連結するか否か切替えるものである。フライホイール32とクランクシャフト33がクラッチによって連結されると、フライホイール32の運動エネルギー(回転エネルギー)がクランクシャフト33に伝達され、フライホイール32とクランクシャフト33との連結がクラッチによって解除されると、フライホイール32の運動エネルギー(回転エネルギー)はクランクシャフト33に伝達されない。
【0038】
コネクティングロッド34は、正面視T字状の棒状部材からなり、水平に延びる部分がクランクシャフト33の中央部に回動可能に取り付けられている。コネクティングロッド34の下方に延びる部分の先端は、軸受けを介してインパクト成形用金型4におけるパンチ41が装着されたスライド35に、当該スライド35に対して揺動可能に取り付けられている。スライド35の両端部は、フレーム31の内側側面の略中央部に設けられたスライドギブ36に上下動可能に支持されている。スライドギブ36は、スライド35の水平方向の移動を規制し、スライド35を垂直方向に正確に移動させるものである。なお、軸受けは、本明細書では図示を省略している。
【0039】
スライド35は、インパクト成形用金型4の上型であり可動型であるパンチ41が取り付けられ、ボルスタ37に対してパンチ41を進退往復動(本実施形態では上下往復動)させるものである。スライド35は、スライド35を駆動する前述したスライド駆動機構に連結される。
【0040】
ボルスタ37は、その上部にインパクト成形用金型4の下型であり固定型となるダイス42を装着して、ダイス42を下方から支持するものである。ボルスタ37は、フレーム31の内側底面の中央に設けられている。プレス機械3は、ダイス42が取り付けられたボルスタ37に対して、インパクト成形用金型4の上型であり可動型であるパンチ41が取り付けられたスライド35を進退移動(往復運動)させることで、パンチ41がダイス42に対して進退移動され、パンチ41とダイス42との間でスラグWをインパクト成形するものである。本実施形態においては、ボルスタ37とスライド35とは略垂直方向に並設され、スライド35は略垂直方向に往復動する。プレス機械3では、スライド35を移動(本実施形態では降下)させることによって、パンチ41をダイス42のキャビティに収容したスラグWに衝突させてインパクト成形する。
【0041】
ストリッパプレート38は、パンチ41の進退移動をガイドするためのもので、中央にパンチ41を通すための穴が設けられた板部材で構成されている。この穴の径は、パンチ41の径より僅かに大きく設定されている。ストリッパプレート38は、ボルスタ37の上方位置に当該ボルスタ37の上面に立設された脚を介して設けられている。ストリッパプレート38のボルスタ37からの高さは、スライド35が最も上昇した位置(以下、この位置を「上死点」という。)に位置するとき、スライド35の下面に取り付けられたパンチ41の下端がストリッパプレート38の下面よりも上に位置するように設置されている。
【0042】
スライド35の下面のパンチ41の取付位置、ストリッパプレート38の穴及びボルスタ37のダイス42の取付位置は、鉛直線上に配置されている。棒状のパンチ41は先端部(本実施形態では下端部)をストリッパプレート38の穴に貫通して基端部(本実施形態では上端部)がスライド35の下面の所定位置に固定され、円柱状のダイス42は、ボルスタ37の所定位置に固定されている。
【0043】
次に、インパクト成形装置2の動作について説明する。
【0044】
まず、クラッチをフライホイール32がクランクシャフト33に連結しない状態にして、モータが起動されると、そのモータの回転力がVベルトによりフライホイール32に伝えられ、当該フライホイール32が回転する。フライホイール32は、自重による慣性を利用して回転エネルギーを蓄える。なお、クラッチは、本明細書では図示を省略している。
【0045】
次に、操作者によりフライホイール32がクランクシャフト33に連結されるようにクラッチが切替えられると、フライホイール32の回転エネルギーがクランクシャフト33に伝達され、クランクシャフト33は回転する。クランクシャフト33が回転すると、その回転運動は、コネクティングロッド34により直線運動に変換されてスライド35に伝達される。従って、クランクシャフト33が1回転する間に、スライド35は、上死点と、上死点から最も下降した位置(以下、この位置を「下死点」という。)との間を1往復する。
【0046】
スライド35が上死点から下死点に移動する間に、所定のタイミングでスライド35に固着されたパンチ41が所定の圧力でダイス42にセットされたスラグWに衝突し、この衝撃によりスラグWが瞬時に塑性変形して成形体1が成形される。本実施形態では加圧能力が約6300kNのプレス機械を使用してスラグWに高い圧力をかけている。本実施形態に係るインパクト成形工程の詳細については後述するが、成形後の成形体1は温度低下等による収縮作用によりパンチ41及びノックアウト型45に張り付いた状態となる。
【0047】
なお、成形体1の量産工程においては、インパクト成形装置2に、クランクシャフト33の回転(パンチ41の上下動)に同期してスラグWを自動的にダイス42にセットする材料供給装置と、製造された成形体1を次の工程に搬送するベルトコンベア等の給送装置と、クランクシャフト33の回転(パンチ41の上下動)に同期してダイス42から成形体1を取り外す取外し手段とを組み合わせたインパクト成形システムを構成することができる。
【0048】
材料供給装置は、スライド35が下死点から上死点まで上昇している間の所定のタイミングで、次のインパクトプレスのためのスラグWをダイス42のキャビティ50にセットする。材料供給装置は、通常、プレス機械3と同期して動作可能なパーツフィーダやロボットが使用される。
【0049】
このインパクト成形システムでは、クランクシャフト33が1回転する毎に上述した所定のタイミングで材料供給装置によりダイス42のキャビティ50にスラグWがセットされるとともに、このスラグWからインパクト成形により成形体1が成形され、成形された成形体1が取外し手段によりキャビティ50から取り外される。キャビティ50から取り外された成形体1は、給送装置により次の工程に搬送される。このような動作が連続して繰り返される。クランクシャフト33は、例えば、40〜60rpm程度の回転速度で回転されるので、本実施形態に係る成形体1は、極めて短時間(1〜数秒/個)の一工程成形処理により量産されることになる。
【0050】
なお、本実施形態では、インパクト成形システムとして、クランクプレス式を用いているが、6300kN程度の加圧能力があれば、他の機械式プレスでも良く、油圧プレスや空圧プレス、サーボプレスであっても良い。
【0051】
〔3.インパクト成形用金型の構成〕
次に、本実施形態に係るインパクト成形用の金型4の構造について
図6を用いて説明する。本実施形態に係る金型4の構造は、
図1、
図2に示す照明器具100における器具本体21をインパクト成形により成形するための金型構造である。
なお、本実施形態に係る金型4の構造は、本発明の一実施形態であり、特に照明器具100における器具本体21への適用に限定するものではない。
【0052】
パンチ41は、断面円形の棒状のパンチ41、及び取付け機構により構成されている。パンチ41はプレス機械3のスライド35(
図5参照)の下面に配置される。パンチ41には、当該パンチ41の長手方向に沿って、前記容器形状の成形体1に第1平行リブ111、第2平行リブ122を形成するための4箇所の凹部(図示せず)を有する。該凹部の断面形状は、第1平行リブ111、第2平行リブ122のそれぞれの断面形状と同じ形状である。なお、取付け機構は、本明細書では図示を省略している。
【0053】
取付け機構は、パンチ41をプレス機械3のスライド35の下面に固定するものであり、
図6では省略されている。
【0054】
スラグWは、純度の高いアルミニウムまたはアルミニウムの合金で、低背の円柱体形状の被成形素材である。スラグWの底面の形状は、ダイス42のキャビティ50の底面の形状と同一形状であり、キャビティ50内への載置し易さのため、大きさはキャビティ50の底面よりも少し小さいものとなっている。インパクト成形においては、材料が流動変形されて製品に加工されるので、材料であるスラグWの体積と加工後の製品である成形体1の体積とは等しくなる。よって、スラグWの高さ(厚さ)は、成形体1の体積とスラグWの底面積から算出され決定される。
なお、本実施形態では円柱体形状のスラグWを用いているが、特に限定するものではなく、成形体の断面形状に応じて適宜、楕円状、三角形状、多角形状等のスラグを用いればよい。
【0055】
スラグWとして好適に用いられる金属素材としては、例えば1000番系アルミニウム合金材料が挙げられる。1000番系アルミニウム合金材料は、純度が99.0%以上の純アルミニウム系材料(特にA1050は純度99.50%以上、A1070は純度99.70%以上)であるため、アルマイト染色を施す際の染色性がよい。
【0056】
ダイス42は、ボルスタ37上面に配置される雌型である。ダイス42は、パンチ41に対向する側に、成形体1の表面周囲を形成するための開口空間である周囲形成部43aを有する円筒状のダイス本体43と、前記ダイス本体43を支持する支持型である下型44と、前記下型44に装着され前記下型44に摺動自在に嵌挿されるとともに、前記周囲形成部43aの内外に進退するノックアウト型45と、ノックアウト型45の退行側(本実施形態では下側)に配置され、前記ノックアウト型45の退行位置(本実施形態では下降位置)を規制するための規制型46とを備えている。ダイス42は、下型44に固定されている。
【0057】
ノックアウト型45は、所定の範囲で上下摺動自在に構成されており、成形体1をダイス42から離型する際に、該成形体1を下方から突き上げて離型を容易にするためのものである。ノックアウト型45は、その下部に配置される、タイミングカムで動作するリフタ48を可動することにより上昇又は下降することができる。ノックアウト型45は、インパクト成形装置2が有する制御手段によりダイス42に対する上下方向の位置、及び移動速度等が制御される。詳細は後述するが、ノックアウト型45は、制御手段によりインパクト成形時の成形体1を離型する際に、ノックアウト型45の上昇位置が制御されて、成形体1の表面を凹凸のない均一な形状にすることができる。なお、制御手段は、本明細書では図示を省略している。
【0058】
規制型46は、略円筒形状であり、ノックアウト型45の下部に配置され、ノックアウト型45の下降位置を規制する金型である。規制型46の下部には、外側に突出する突出部46aを有する。規制型46の平面視外形は、ノックアウト型45の平面視外形と同じ円形状である。
【0059】
ダイス42においては、前記ダイス本体43とノックアウト型45と規制型46とで囲まれる空間が、インパクト成形対象となるスラグWが載置される成形空間であるキャビティ50として構成されている。キャビティ50内の底面の形状とキャビティ50の深さは、製造する成形体1の底面の形状と成形体1の高さに合わせて適宜設計される。ダイス42は、プレス機械3のボルスタ37の上面に固定されるための取付け機構を有するが、
図6では省略されている。
【0060】
図6に示すように、前記ダイス本体43の内部に形成される周囲形成部43aは、所定の直径を有する円柱状空間であり、ノックアウト型45の上面に対して垂直となるように構成されている。また、ダイス本体43の開口空間の内周面である周囲形成部43aと、前記ノックアウト型45及び規制型46の外周面との間には筒状(本実施形態では円筒状)の成形空間である隙間47が形成されている。キャビティ50は、ダイス本体43が有する円柱状の成形空間となる周囲形成部43aと、該周囲形成部43aと連通する円筒状の成形空間となる隙間47とから構成される。
【0061】
隙間47は、キャビティ50に載置されたスラグWをパンチ41により押圧して加圧変形させる際に、スラグWが流入可能となる空間として作用する。隙間47は、前述した照明器具100の器具本体21の前方筒体であるLEDケーシング部104を形成するための成形空間である。
【0062】
このように構成された金型4においては、パンチ41がプレス機械3のスライド35と一体となって上下移動することで、ダイス42に対して相対的に上下移動し、スライドが下死点付近に達したときに、ダイス42のキャビティ50内に載置されたスラグWに衝突して加工を行う。すなわち、本実施形態の金型4では、前記パンチ41によりスラグWを後方押出しによりインパクト成形を行うとともに前記隙間47にスラグWの一部を流入させて前方押出しによりインパクト成形を行うことで容器形状の成形体1が形成される。なお、スライド35が下死点に位置するときに、パンチ41の先端面41aとダイス42のキャビティ50の底面となるノックアウト型45の上面との距離が成形体1の隔壁25の厚みとなるように、スライド35とボルスタ37の位置はあらかじめ調整されている。
【0063】
〔4.インパクト成形の動作〕
次に、以上のように構成される金型4を備えたインパクト成形装置2を用いたインパクト成形方法について
図6から
図10を用いて説明する。
【0064】
本実施形態に係るインパクト成形方法は、素材載置工程S10、パンチ衝突工程S20、離形準備工程S30、パンチ抜き取り工程S40、及びノックアウト型再移動工程S50を有する。本実施形態に係るインパクト成形方法は、素材載置工程S10、パンチ衝突工程S20、離形準備工程S30、パンチ抜き取り工程S40、ノックアウト型再移動工程S50の順番で実行可能である。以下、各工程について具体的に説明する。
【0065】
(4−1.素材載置工程S10)
素材載置工程S10は、被成形素材であるスラグWを前記キャビティに載置する工程である。すなわち、スラグWをインパクト成形して成形体を得る際には、まず、材料供給装置から所定のタイミングでスラグWが供給され、
図6に示すように、ダイス42のキャビティ50に被成形素材であるスラグWが載置される。この場合、ノックアウト型45は、規制型46の上面に規制された状態であり、ノックアウト型45の上下摺動範囲の最下端側に位置しており、スラグWの上面は、ダイス本体43の上面43bに対して所定長低い位置に配置される。
【0066】
(4−2.パンチ衝突工程S20)
パンチ衝突工程S20は、パンチ41を前記ダイス42側に移動させ、前記キャビティ50に載置された被成形素材であるスラグWに所定の圧力で衝突させ、前記スラグWを塑性変形させ、容器形状成形体を形成する工程である。すなわち、素材載置工程S10にて、前記キャビティ50にスラグWを載置した後、プレス機械3が起動され、クラッチが接続され、
図7に示すように、パンチ41を下降させて(ダイス42方向へ移動させて)該スラグWに衝突させ、変形させる。パンチ41の衝突により瞬間的に押圧されたスラグWは、押し潰されて変形し、スラグWの径方向外周が径方向外側(ダイス本体43側)へ膨出する。膨出されたスラグWの一部は、パンチ41とダイス本体43の隙間に沿って軸方向上方へ放出されることにより、パンチ41の外周面に沿って塑性変形する。この変形とほぼ同時に、径方向外側に膨出したスラグWの一部が、前記ダイス42におけるダイス本体43の周囲形成部43aとノックアウト型45及び規制型46の外周面とで形成される隙間47内に流入して、隙間47の形状に沿って塑性変形する。このようにして、パンチ41がダイス42のキャビティ50内のスラグWに衝突することで、スラグWが、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁25で閉塞された容器形状の成形体1が成形される。
【0067】
(4−3.離形準備工程S30)
離形準備工程S30は、パンチ41をキャビティから離間させるとともに、前記ノックアウト型45をパンチ41側に移動させて前記容器形状の成形体1をダイス42から離型させる準備をする工程である。すなわち、パンチ41の下降によりスラグWを加圧変形させて行ったインパクト成形が完了すると、
図8に示すように、前記パンチ41を上昇させて該パンチ41からダイス42側へかかっていた荷重を取り除くとともに、リフタ48を駆動して前記ノックアウト型45を規制型46に対して上昇させて成形体1を上方へ突き上げ、該成形体1をダイス42から離型(ノックアウト)させる準備をする。この際に、隔壁25の上面25bがダイス本体43の上面43bと略面一になる位置(一例)で、ノックアウト型45の上昇を一度停止する。成形後の成形体1は収縮作用によりパンチ41及びノックアウト型45に張り付いた状態となっている。
【0068】
(4−4.パンチ抜き取り工程S40)
前記離形準備工程S30においてノックアウト型45を停止した状態において、パンチ41を前記容器形状の成形体1の後方筒体から抜き取る工程である。すなわち、パンチ抜き取り工程S40では、離形準備工程S30においてノックアウト型45が停止した状態で、スライド35が上死点に向けて上昇する際に、
図9に示すように、パンチ41が上昇して成形体1の後方筒体から抜け出る。
【0069】
(4−5.ノックアウト型再移動工程S50)
ノックアウト型再移動工程S50は、パンチ41を成形体1から抜き取る際に、パンチ抜き取り工程S40にて停止していたノックアウト型を再びパンチ側に移動させる工程である。すなわち、ノックアウト型再移動工程S50では、
図10に示すように、パンチ41が成形体1の後方筒体から抜け出ていく際に、停止していたノックアウト型45を再びパンチ41側に上昇させる。成形体1を保持したノックアウト型45が、ダイス本体43の上面43bに対して所定高さまで上昇することで成形体1がダイス42のキャビティ50から取り出され、取外し手段により成形体1がノックアウト型45より取り外される。取り外された成形体1は、給送装置により次の工程に搬送される。
【0070】
成形体1は、器具本体21を製造するための中間部材であるため、次の工程では、成形体1の両端部を設計サイズや設計形状に合うようにカットするカット工程、成形体1の所定部の穿孔を行う穿孔工程、及び成形体1表面に対してアルマイト染色を行う染色工程等が行われて、上述した照明器具100の構成部材として用いられる器具本体21が製造される。
【0071】
本実施形態では、容器形状の成形体として、隔壁25を介して断面が同形状かつ同サイズの前方筒体と後方筒体とが連結した構造のものを説明したが、特に限定するものではない。隔壁を介して前方筒体と後方筒体と断面が異なる形状または異なるサイズであってもかまわない。例えば、長さ方向中途部に段付き形状を有する容器形状成形体であってもかまわない。
【0072】
〔5.実施形態の効果、他〕
このように、本実施形態に係るインパクト成形装置2を使用したインパクト成形方法によれば、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁25で閉塞された容器形状の成形体1をインパクト成形により一工程で、かつ成形体表面形状を均一に成形することができる。この成形体1を一工程により器具本体21のLEDケーシング部104となる前方筒体と、電源ケーシング部105となる後方筒体とが隔壁25を介して一体として得られるため、照明器具100の製造時間が短縮され、生産性が向上する。また、本実施形態に係るインパクト成形方法では、器具本体21として用いられる成形体1を1工程で製造できるので従来のアルミダイキャストや薄板からの絞り加工に比べて製造に要する時間の短縮が可能となり、薄板からの絞り加工のように複数の金型を必要とせず、一組の金型で製造できるので製造コストを削減できる。さらに、材料を塑性変形して効率良く使うことができるので材料のロスが少なく、製品の低コスト化を図ることができる。
【0073】
また、本発明に係るインパクト成形装置を使用すれば、本実施形態に係る照明器具100の器具本体21以外にも、両端が開放された筒体で、その内部空間が隔壁で閉塞された容器形状の部材を一工程で製造することができる。
【0074】
本発明によれば、照明器具のケーシング部材として一体的な筒状体を構成することができるため、照明器具の外観がシンプルになり、意匠が向上する。
なお、本実施形態では、成形品の一例として円筒形状の部品を挙げたが、本実施形態に示すインパクト成形装置及びインパクト成形方法を用いて成形される成形品は、円筒形状に限らない。例えば、断面形状が多角形の筒状の部品を成形可能である。