(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
任意の出力レベルを持つ高周波電源装置において、負荷のインピーダンスが出力レベルを規定した負荷条件と異なる条件となる場合に、期待したレベルを出力できなくなる。ただし、アイソレータ等で負荷インピーダンスの変動を無効としている場合を除く。なお、ここでは、負荷のインピーダンスを50[Ω]とする。
【0003】
高周波電源装置において、任意の負荷インピーダンスに対して出力レベルを一定に保つためには、APC(Auto Power Control)によって、装置の出力レベルを測定し、測定値が期待するレベルになるよう装置出力を可変させることが考えられる。
装置出力を可変するには複数の方法があるが、ここでは電圧制御の可変アッテネータを用い、制御電圧をDAC(Digital to Analog Converter)に与えられるパラメータで設定する方法による。
【0004】
また、例えば、特許文献1の記載のように、例えば、プラズマエッチング、プラズマCVDを行うプラズマ処理装置等の負荷に電力を供給する高周波電源装置において、高周波電源装置に接続する負荷が、反射波電力が頻繁に発生するようなプラズマ放電負荷であり、反射波電力が発生して整合状態でない場合であっても、E級アンプのスイッチング素子での損失を小さくするために、最適のデューティサイクルを設定して、負荷インピーダンスに適したデューティサイクルの高周波信号を出力する技術もある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、負荷インピーダンスに関わらず安定したレベルで高周波電力を出力する高周波電源装置において、出力レベル及び反射レベルを検出する手段、出力レベル及び反射レベルからVSWRを算出する手段、並びに、VSWR及び反射位相角による出力レベルをテーブルとして保有する手段を有し、負荷インピーダンスに関わらず安定したレベルで高周波を出力する高周波電源装置である。
以下に本発明の一実施形態について、図面等を用いて説明する。
なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を説明するためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素若しくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、これらの実施形態も本願発明の範囲に含まれる。
また、各図の説明において、同一の機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、重複を避け、できるだけ説明を省略する。
【0011】
図1は、高周波電源装置の反射位相角による出力レベル変動の一例を示すグラフである。横軸は反射位相角(単位:[°])、縦軸は出力レベル(単位:[dBm])である。
図2は、本発明の高周波電源装置の一実施例の構成を示すブロック図である。20は高周波電源装置、11は所定の周波数の信号を入力するための入力端子、10は所定の周波数の電力を出力するための出力端子、1は方向性結合器、6は出力信号方向性結合器、7は出力信号検波器、8は反射波信号方向性結合器、9は反射波信号検波器、2は制御部、3はDAC(Digital to Analog Converter)、4は可変減衰器、5はRF(Radio Frequency)回路である。
【0012】
図2の高周波電源装置20において、図示しない信号発生器から、低周波数(例えば、周波数400[Hz])の正弦波信号が、入力端子11を介して可変減衰器4に入力される。
可変減衰器4は、入力された低周波信号をDAC3から入力される信号に基づいて減衰して、減衰された低周波信号をRF回路5に出力する。
RF回路5は、入力された低周波信号を所定のRF周波数(例えば、周波数20[MHz])に変調して、変調された高周波信号を、方向性結合器1を介して高周波電源装置20から出力する。
【0013】
即ち、方向性結合器1は、入力された高周波信号を、出力端子10を介して高周波電源装置20の出力信号として出力と共に、その出力信号方向性結合器6が、RF回路5から出力された高周波信号の一部を分波して出力信号検波器7に出力する。
また、出力端子10には図示しない負荷が接続されている場合には、この負荷から高周波電源装置20に反射波信号が出力される。方向性結合器1は、入力された反射波信号を、出力端子10を介してRF回路5に反射波信号として出力する。また同時に、反射波信号方向性結合器8は、負荷から出力された反射波信号の一部を分波して反射波信号検波器9に出力する。
【0014】
出力信号検波器7は、出力信号方向性結合器6から出力された高周波信号を検波して、出力側結合出力Pfを検出し、制御部2に出力する。また、反射波信号検波器9は、反射波信号方向性結合器8から出力された高周波信号を検波して、反射側結合出力Prを検出し、制御部2に出力する。
制御部2は、出力側結合出力Pf及び反射側結合出力Prから、負荷インピーダンスを簡易的に測定することにより、パラメータの変化量を算出し、制御部2は、算出されたパラメータの変化量を新たなパラメータとしてDAC3に与え、DAC3を設定する。
DAC3は、与えられたパラメータに対応する電圧を可変減衰器4に出力する。
可変減衰器4は、DAC3から与えられた電圧に基づいて、入力端子11から入力された信号の振幅レベルを減衰して、減衰された低周波信号をRF回路5に出力する。
この結果、高周波電源装置20から出力される高周波信号の出力レベルが負荷と迅速に整合される。
【0015】
次に、制御部2の動作について、図面によって、詳細に説明する。
図1に示すように、負荷の反射位相に対する出力レベルをグラフ化した場合に、位相毎に異なる特性が得られる。即ち、負荷インピーダンスが50[Ω]の時に、X[dBm]の出力レベルとなるパラメータ(Z)のまま、負荷インピーダンスが変化すると、出力レベルは、X+α[dBm]となる。
高周波電源装置20の出力を安定化するためには、パラメータを+α[dBm]に相当するだけ可変すれば良いが、+α[dBm]の値は負荷インピーダンスにより変化する。これはパラメータの変化量に対する出力レベルの変化が、負荷インピーダンスにより異なることを示している。
そこで、負荷インピーダンスを簡易的に測定することにより、パラメータの変化量を算出し、算出したパラメータの変化量に相当するだけ可変する。
パラメータの変化量を算出するには、制御部2は、次の(1)〜(6)の手順を実行する。
【0016】
なお、高周波電源装置20は、
図2に示すように、その出力端に方向性結合器1を設け、出力側結合出力Pf及び反射側結合出力Prを検出可能な構成である。
なお、
図3は、パラメータ(Z)での反射位相毎の出力レベルテーブルの一例を示す図である。
図3では、反射位相角(単位:[°])毎にVSWR=3と、VSWR=2.5について示す。また、
図4は、反射位相角毎の出力レベルを同一にするためのパラメータテーブルの一例を示す図である。
図5は、本発明の高周波電源装置におけるVSWRに対するテーブルの補正の一実施例について説明するための図である。
図5(a)は補正前を示し、
図5(b)は補正後を示す。
図3と
図4は、反射位相角(単位:[°])毎にVSWR=3及びVSWR=2について示す。また、
図5は、反射位相角(単位:[°])毎にVSWR=3、VSWR=2.5、及びVSWR=2について示す。
また、
図6は、本発明の一実施例の高周波電源装置における高周波電源装置の同一出力レベルとなる反射位相角による出力レベル変動の一例を示すグラフである。
図6は、
図1と同様に、横軸は反射位相角(単位:[°])、縦軸は出力レベル(単位:[dBm])を示す。
【0017】
手順(1)
事前に任意のVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)値において、負荷の反射位相角毎に固定したパラメータに対する出力レベルを測定しテーブル化する(反射位相毎の出力テーブル:
図3参照。)。さらに所要の出力レベルとなるパラメータとの差分をテーブル化する(反射位相毎の出力レベルを同一にするためのパラメータテーブル:
図4参照。)。
反射位相毎の出力テーブル(出力テーブルと略称する)及び反射位相毎の出力レベルを同一にするためのパラメータテーブル(差分テーブルと略称する)の2つのテーブルを制御部2に保存する。即ち、反射位相角毎に同一レベルを出力するためのパラメータを算出しておく。
VSWR及び反射位相角は、細かいほどパラメータ算出の精度向上が期待されるが、現実的には実行上問題があるため、必要な範囲、精度から代表点を測定し、測定ポイント間は近似式で規定する。
【0018】
手順(2)
高周波電源装置20の出力端子10に、負荷として50[Ω]を接続し、X[dBm]となるパラメータで出力を行い、出力信号検波器7及び反射波信号検波器9が検波した出力側結合出力Pf及び反射側結合出力Prを取得する。ここで出力側結合出力Pf及び反射側結合出力Prの結合度は、事前に既知の値としておき、それぞれ出力レベル、反射レベルに相対する値とする。
【0019】
手順(3)
出力側結合出力Pf及び反射側結合出力Prから、反射係数Γは、
Γ=√(Pr/Pf) ・・・式(1)
となり、
VSWRは、
VSWR=(−Γ−1)/(Γ−1) ・・・式(2)
により求められる。
【0020】
手順(4)
上記式(1)及び式(2)で求められたVSWRの値と
図3の出力テーブルを比較し、反射位相角による出力レベルのテーブルにオフセットを行う。例えば、VSWRが2.5であった場合に、反射位相角毎の出力レベルは、
図3の「Q〜X」のように期待される。
同様に、差分テーブルにも「Z+q〜Z+X」を算出し設定する。検出された出力側結合出力Pfの値から出力レベルを算出し、オフセットされた出力レベルのテーブルと比較し、該当する反射位相角を抽出する(
図5参照。)。
図5は、算出されたVSWRが2.5(VSWR=2.5)であった場合、VSWRが2と3(VSWR=2、及びVSWR=3)の値から必要なパラメータ補正量を算出し、新たなテーブルとする。
【0021】
手順(5)
検出された出力レベルの値が反射位相角特性の最大点、または最小点以外であった場合には、該当する反射位相角が2箇所抽出される。例えば、出力レベルR[dBm]が得られたとすると、該当する反射位相角は、45[°]及び135[°]の2箇所となる。即ち、R[dBm]とT[dBm]は、同値となる。
このように、同一パラメータで、同一レベルが出力されることから、2箇所の反射位相角によるパラメータの変化量に差はないとすることができる(
図6参照。)。
【0022】
手順(6)
抽出された反射位相角に対するパラメータの差分を選択し、あらたなパラメータとして、DAC3が設定される。DAC3は、与えられたパラメータに対応する電圧により可変減衰器4を制御し、出力レベルが変更される。
【0023】
上述の実施例によれば、負荷インピーダンスによる出力レベル変動に対する補正量を事前に算出できる。このため、出力レベル安定の高速化が実現できる。また、負荷インピーダンスの検出を簡易的な反射係数のみとしたため、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)等の高速処理を必要とせず、回路の簡素化が実現できる。