(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例1】
【0019】
[渡し板組の構成]
図1は、一対の渡し板を有する渡し板組を示す一部分解斜視図、
図2は、
図1の渡し板組の平面図、
図3は、
図1の渡し板組の折りたたみ状態の渡し板組を示す斜視図である。
【0020】
渡し板組1は、例えば、歩道と車道の段差、バスの乗降口と路面との段差、列車や電車に乗り降りする際の車両とホームとの段差や隙間等、或いは住宅の入り口等の段差を解消するために一時的に設置されるものである。
【0021】
本実施例の渡し板組1は、
図1及び
図2のように、一対の渡し板3a,3bを幅方向に併設し、それらの渡し板3a,3bの幅方向端部間が可撓性の帯状ヒンジ5によって結合されている。この渡し板組1は、ヒンジ5を支点に二つ折りにして、渡し板3a,3bを向い合せるように折りたたむことができるようになっている。渡し板組1を使用する際には、
図3の折りたたみ状態で搬送され、設置場所において
図1及び
図2のように展開される。
【0022】
図4は、
図2のIV−IV線矢視に係る一部省略断面図、
図5は、
図2のV−V線矢視に係る拡大断面図である。
【0023】
渡し板3a,3bは、略対称な構成となっており、以下の説明においては、一方の渡し板3aについてのみ構成を説明する。
【0024】
渡し板3aは、
図1〜
図5のように、板状の本体部7と、幅方向両側の一対のサイドフレーム部9a,9bと、長手方向両側のエンドフレーム部である一対のスペーサ19a,19bと、保持部材としての一対のキャップ11a,11bとを備えている。
[本体部]
本体部7は、
図1、
図4及び
図5のように、表板材13及び裏板材15間に中板材17を介設した断面構造を有している。
【0025】
表板材13及び裏板材15は、相互に対向配置された矩形板状体である。表板材13は、長手方向の中間部21が全体として平坦に形成されており、中間部21に対する端部23,25側が裏板材15に対して対向方向で漸次近接するように傾斜している。なお、裏板材15は、長手方向の全体にわたって平坦に形成されている。
【0026】
表板材13は、少なくとも車椅子等の通行面を構成する表面が金属製であり、裏板材15よりも剛性の高い薄板からなる。本実施例の表板材13は、例えばアルポリック(登録商標)等の複合薄板で構成されている。
【0027】
図6は、表板材の断面構造を示す概略図である。
【0028】
表板材13は、
図6のように、樹脂製の芯材14と、この芯材14の表裏面に接合された金属製の面材16a,16aとを有している。芯材14の材質は、例えばポリエチレン等であり、面材16a,16aの材質は、例えばアルミニウム等である。なお、表板材13の材質は、通行面を構成する表面が金属製であり、裏板材15よりも剛性の高い限り、適宜選択することが可能である。例えば、表板材13全体をアルミニウム等の金属で構成することも可能である。
【0029】
表板材13の板厚は、例えば1mm±0.2mm等に設定されており、面材16a,16aが0.12mm程度、芯材14が0.76mm程度となっている。表板材13の曲げ弾性率は、3.75×10
4N/mm
2程度、引張強度は、73N/mm
2程度である。
【0030】
裏板材15は、表板材13よりも靭性の高い樹脂製の薄板からなる。本実施例の裏板材15は、ガラス繊維を芯材とする繊維強化プラスチックからなる。ただし、裏板材15の材質は、表板材13よりも靭性の高い樹脂製である限り、適宜選択することが可能である。
【0031】
裏板材15の板厚は、表板材13と同一又は同程度であり、本実施例で例えば0.7mm±0.2mm又は0.8mm±0.2mm等に設定されている。裏板材15の曲げ強さは、166MPa程度、引張強さは、75MPa程度である。
【0032】
かかる構成により、表板材13は、裏板材15よりも耐荷重性が高く、裏板材15は、表板材13よりも耐衝撃性が高くなっている。
【0033】
表板材13の表面には、略全体にわたって、ポリ塩化ビニル等からなる軟質滑り止め用の樹脂シート27が接着により固定されている(
図1参照)。これにより、樹脂シート27は、表板材13の表面を被覆し、表板材13の表面上で車椅子等の通行面を構成する。表板材13は、剛性が高いが靭性が比較的低く衝撃によって損傷しやすいので、樹脂シート27は、その表板材13を保護する役割も果たす。
【0034】
樹脂シート27上には、幅方向外側(一側)に、長手方向に沿って車椅子等の走行を案内するマーク29が描かれている。
【0035】
中板材17は、例えば発泡スチロール等の可撓性を有する発泡樹脂からなり、
図1、
図4及び
図5のように、表板材13及び裏板材15よりも板厚の厚い矩形板状に形成されている。中板材17の表裏面には、それぞれ表板材13及び裏板材15が接着により取り付けられている。
【0036】
この接着では、中板材17と表板材13及び裏板材15との各界面で接着剤のムラを完全に無くすことは困難であり、各界面に空気が溜まりやすい。この溜まった空気による空気層は、表板材13及び裏板材15を中板材17の板厚方向で外側に押圧することになる。これに対し、本実施例では、表板材13の剛性が高いので、空気層によって押圧されても表板材13上の通行面が膨らむことが少ない。
【0037】
中板材17の長手方向の端部31,33では、表板材13の端部23,25側の傾斜に応じて漸次板厚が薄くなっている。この中板材17の端部31,33は、表板材13の端部23,25及び裏板材15の端部35,37に対して長手方向内側に配置されている(
図4参照)。
【0038】
これにより、中板材17の端部31,33に対する長手方向外側で、上記対向方向での表板材13の端部23,25及び裏板材15の端部35,37間に凹部39a,39bが区画されている。この凹部39a,39bを介し、本体部7の長手方向両側にスペーサ19a,19bが取り付けられている。
[スペーサ]
スペーサ19a,19bは、
図1、
図4及び
図5のように、略対称に構成されている。このため、以下においては、一方のスペーサ19aについてのみ構成を説明する(
図5参照)。
【0039】
スペーサ19aは、例えばアルミニウム等の金属の押し出し成型品からなり、中板材17よりも高剛性となっている。このスペーサ19aは、全体として略断面楔状に形成され、基端部41及び先端部43を有している。
【0040】
スペーサ19aの基端部41は、表板材13及び裏板材15の端部23,35間の凹部39a内に挿入固定されている。具体的には、基端部41は凹部39aに対応した断面を有し、表面が表板材13の傾斜に応じて漸次傾斜し、裏面が裏板材15に沿って平坦になっている。なお、基端部41の基端面では、肉抜き部45が形成されて軽量化が図られている。
【0041】
基端部41の表裏面には、表板材13及び裏板材15の端部23,35が接着により各別に固定されている。この基端部41の表裏面は、後述する先端部43の表裏面に対して段差を有しており、表板材13及び裏板材15の端部23,35を各別に入れ込む表裏の段差部47a,47bを構成している。なお、基端部41の表裏面には、接着剤を保持するための溝49a,49b,49cが形成されている。
【0042】
スペーサ19aの先端部43は、表板材13及び裏板材15の端部23,35間の凹部39aに対し、長手方向外側に突出している。先端部43の表裏面は、表板材13及び裏板材15の端部23,35が基端部41の段差部47a,47bに入れ込まれていることによって、表板材13及び裏板材15の端部23,35表面に段差無く遷移している。
【0043】
この先端部43は、長手方向外側へ向けて上記対向方向での板厚が漸次薄くなっている。これにより、先端部43は、車椅子等の乗り降りを円滑に行わせる斜面部を構成する。
【0044】
また、スペーサ19aの先端部43は、基端部41に対して表板材13及び裏板材15の凹部39a外で上記対向方向に屈曲している。これにより、渡し板3aを設置する際に、設置先の段差等に安定性して係合させることができる。なお、スペーサ19bの先端部43には屈曲がない(
図4参照)。
[サイドフレーム部]
図7は、
図2の渡し板組の一方の渡し板の要部拡大平面図、
図8は、
図7のVII−VII線矢視に係る断面図、
図9は、
図7のVIII−VIII線矢視に係る断面図である。
【0045】
サイドフレーム部9a,9bは、
図1、
図2、及び
図7〜
図9のように、幅方向両側に長手方向に沿って取り付けられている。サイドフレーム部9a,9bは、例えばアルミニウム等の金属からなり、断面コ字状のチャンネル形状に形成されている。これらサイドフレーム部9a,9bは、本体部7の幅方向両側に外嵌している。サイドフレーム部9a,9bは、樹脂シート27の幅方向端部を挟み込んでいる。これにより、樹脂シート27は、長期使用時や太陽光での熱によるズレが防止される。
【0046】
幅方向外側のサイドフレーム部9aは、内周側に本体部7の板厚方向に突出する凸部65a,65bを備えている。凸部65a,65bは、本体部7の幅方向の端部に突き当たり、サイドフレーム部9aの内周側に本体部7の幅方向端部に対する内部空間Sを確保する。
【0047】
サイドフレーム部9a,9bは、ビス等によって本体部7及びスペーサ19a,19bに締結固定されている(
図1参照)。サイドフレーム部9a,9bのスペーサ19a,19bへの締結は、サイドフレーム部9a,9bの対応する端部間において行われる。具体的には、スペーサ19a,19bの先端部43から基端部41が、幅方向の両側において対応するサイドフレーム部9a,9bの端部に締結される。このため、スペーサ19a,19bは、サイドフレーム部9a,9bの対応する長手方向の端部間を結合した構成となっている。
【0048】
幅方向外側のサイドフレーム部9aには、側壁部51が本体部7の板厚方向に突出すると共に長手方向に沿って延設されている。なお、サイドフレーム部9bにも側壁部51を設ける構成としても良い。従って、側壁部51は、一対のサイドフレーム部9a,9bの少なくとも一方に設けられる。
【0049】
側壁部51は、車椅子等の脱輪を防止するようになっている。側壁部51の先端部は、断面形状が膨出するように形成されている。この側壁部51の先端部には、ポリ塩化ビニル等からなる軟質樹脂カバー53が外嵌している。また、サイドフレーム部9aには、持ち運び用の取っ手55及び渡し板組1の折りたたみ状態を保持するためのバンド54が取り付けられている。幅方向内側のサイドフレーム部9bは、ヒンジ5に結合されている。
[キャップ]
キャップ11a,11bは、
図1及び
図2のように、渡し板3aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。キャップ11a,11bは、略対象な構成となっているので、一方のキャップ11aについてのみ構成を説明する。
【0050】
キャップ11aは、例えばエラストマー等の熱可塑性の樹脂からなっている。キャップ11aは、
図7のように、全体として平面コ字状に形成され、キャップ本体57と、幅方向両側の一対の突出部59,61とを一体に備えている。
【0051】
キャップ本体57は、
図5及び
図7のように、本体部7の板厚方向で対向する一対の対向板部67a,67bを、本体部7の長手方向での先端において一体に結合してなる。一対の対向板部67a,67bは、本体部7の幅方向に延設された矩形板状に形成されている。一対の対向板部67a,67b間には、嵌合凹部69が設けられている。
【0052】
嵌合凹部69には、渡し板3aのスペーサ19aの先端部43から本体部7の表板材13及び裏板材15の端部23,35までが嵌合している。この範囲において、キャップ本体57は、サイドフレーム部9a,9bの端部も嵌合凹部69内に嵌合させている。
【0053】
従って、キャップ本体57は、スペーサ19a及びサイドフレーム部9a,9bの対応する端部を含む端部領域Rの外周に嵌合し、その端部領域Rを一体的に保持している。
【0054】
本実施例では、キャップ本体57が端部領域Rから隣接する本体部7の長手方向端部にわたって延設された構成となっており、端部領域R及び本体部7を一体的に保持している。
【0055】
なお、キャップ本体57の表面及び裏面には、滑り止め用の凹凸部63が形成されており、設置先や車椅子等に対するグリップとして機能する。
【0056】
突出部59,61は、キャップ本体57に一体に形成されている。突出部59,61は、
図7〜
図9のように、キャップ本体57の幅方向の両側からサイドフレーム部9a,9bの端部に沿って突出すると共にそのサイドフレーム部9a,9bの端部を幅方向外側から挟持する。
【0057】
本実施例の突出部59,61は、断面が略L字状に形成されてサイドフレーム部9a,9bに外嵌している。幅方向外側の突出部59は、本体部7の表面側に位置する内周面に長手方向に沿った係止凹部71を備え、サイドフレーム部9aの表面に形成された係止凸部73に係合している。
【0058】
突出部59,61は、サイドフレーム部9a,9bの端部から本体部7の中間部の一部に対応する部分まで長手方向に沿って延設されている。幅方向外側の突出部59には、嵌合壁部75が一体に設けられている。
【0059】
嵌合壁部75は、側壁部51に対応して本体部7の板厚方向に突設され、中空状の内周側に側壁部51を嵌合させる。これにより、嵌合壁部75は、側壁部51の外周の一部を被覆している。
[渡し板の作用等]
(搬送及び設置)
かかる構成の本実施例の渡し板組1は、上記のとおり、
図3のように折りたたんだ状態で取っ手55を把持して持ち運ぶことができる。このとき、本実施例の渡し板組1では、両渡し板3a,3bの本体部7の樹脂製の裏板材15が外面を構成するので、耐衝撃性が高く、不用意な衝撃が入力されても損傷を防止することができる。
【0060】
また、裏板材15に衝撃が入力された場合は、中板材17を介して表板材13に衝撃が伝達され、その反力が表板材13から中板材17を介して裏板材15に入力される。このため、裏板材15は、表板材13からの反力によって衝撃による塑性変形が抑制される。
【0061】
渡し板組1を設置する際には、
図1及び
図2のように展開して、渡し板3a,3bの長手方向一端側のスペーサ19aの先端部43を、キャップ11aを介して設置先の段差等に係合させる。
【0062】
この係合は、渡し板3a,3bの本体部7の裏板材15側で行われるが、本体部7の裏板材15が耐衝撃性が高いので、設置先の段差等によって不用意な衝撃が入力されても損傷することが防止されると共に上記同様に衝撃に対する反力で裏板材15の塑性変形が抑制される。
【0063】
従って、本実施例の渡し板組1では、持ち運び時及び設置時の双方において、不用意な損傷が防止され、取り扱いを極めて容易にすることができる。
【0064】
(使用)
こうして設置された渡し板組1は、長手方向の何れか一方の端部から車椅子等を乗り上げさせて本体部7上を走行させることになる。本実施例では、表板材13の金属製の表面が通行面を構成するため、車椅子等が走行しても樹脂の場合と比較して塑性変形が起きにくい。従って、繰り返しの使用による通行面の耐久性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施例では、本体部7に対する負荷を低減するようになっている。なお、以下においては、渡し板組1の渡し板3a,3bの長手方向一端側での作用について
図5,
図7〜
図9を参照して説明するが、他端側も同様である。
【0066】
車椅子等の乗り上げの際は、まず車椅子等の車輪等が
図5の渡し板3a,3bのキャップ11aを介して本体部7のスペーサ19aの先端部43上に乗り上げる。このため、乗り上げによる衝撃がスペーサ19aの先端部43に入力され、本体部7の表板材13の端部23及び裏板材15の端部35に対する衝撃の入力を抑制できる。
【0067】
このとき、本実施例では、
図5,
図7〜
図9のように、端部領域Rであるスペーサ19aとサイドフレーム部9a,9bの端部とがキャップ11aにより一体的に保持されているので、スペーサ19a側に入力された衝撃をサイドフレーム部9a,9bに分散することができる。同時に、スペーサ19aとサイドフレーム部9a,9bの端部との結合部分への負荷を軽減することもできる。
【0068】
また、キャップ11aは、端部領域Rから隣接する本体部7の長手方向端部を一体的に保持しているので、スペーサ19a側に入力された衝撃を本体部7側にも分散することができ、且つスペーサ19a及びフレーム部9a,9bと本体部7との結合部分への負荷をも軽減することができる。
【0069】
また、キャップ11aは、車椅子等の乗り上げによって、
図8及び
図9の幅方向両側の突出部59,61がキャップ本体57に対して本体部7の表面側に浮き上がろうとする。このとき、突出部59,61は、サイドフレーム部9a,9bの端部を幅方向外側から挟持しているので、浮き上がろうとする力がサイドフレーム部9a,9bを幅方向内側に押圧することになる。従って、スペーサ19aとサイドフレーム部9a,9b間の一体的な保持を強固にする。
【0070】
さらに、キャップ11aは、突出部59が嵌合壁部75の内周側に側壁部51を嵌合させているので、捻れ等に強く、スペーサ19aとサイドフレーム部9a,9b間の一体的な保持を確実に行うことができる。
【0071】
また、スペーサ19aの先端部43は、
図5のように、乗り上げを円滑に行わせる斜面部を構成しているので、乗り上げ時の衝撃を低減することもできる。従って、より確実に本体部7の表板材13の端部23及び裏板材15の端部35に対する衝撃の入力が抑制される。
【0072】
乗り上げが進むと、車椅子の車輪等が
図5の本体部7の表板材13の端部23及び裏板材15の端部35上を走行するが、それら表板材13の端部23及び裏板材15の端部35がスペーサ19aの基端部41によって撓まずに支持される。このため、表板材13の端部23及び裏板材15の端部35に対する曲げ等による応力の発生が抑制される。
【0073】
このときも、上記同様に、スペーサ19aの基端部41や本体部7に入力された衝撃を上記同様に分散することができると共にスペーサ19aとサイドフレーム部9a,9bの端部との結合部分やそれらと本体部7との結合部分への負荷を軽減することができる。
【0074】
加えて、上記同様に、キャップ11aの突出部59,61によってスペーサ19aとサイドフレーム部9a,9b間の一体的な保持を強固にすることができると共に嵌合壁部75によってスペーサ19aとサイドフレーム部9a,9b間の一体的な保持を確実に行うことができる。
【0075】
こうして本体部7の表板材13の端部23及び裏板材15の端部35に負荷をかけることなく、極めて円滑に車椅子等の乗り上げを行わせることができる。
【0076】
渡し板3a,3b上へ乗り上げた後は、車椅子等が渡し板3a,3bの本体部7上を長手方向に沿って走行する。この走行時には、本体部7の通行面を構成する樹脂シート27にマーク29が描かれているので、車椅子等の利用者にマーク29を意識させることで車椅子等を側壁部51に接触させることなく円滑に案内できる。
【0077】
本体部7を走行した車椅子等は、渡し板組1の渡し板3a,3bの他方の端部から降ろされることになる。車椅子等を降ろす際は、上記乗り上げ時とは逆の手順で負荷の低減が行われる。
[実施例1の効果]
本実施例は、表面が使用者を通行させる通行面となる渡し板3a,3bであって、相互に対向配置された表板材13及び裏板材15と、表及び裏板材13,15間に介設された発泡樹脂製の中板材17とを備え、表板材13が、少なくとも通行面を構成する表面が金属製であり裏板材15よりも剛性の高い薄板からなり、裏板材15が、表板材13よりも靭性の高い樹脂製の薄板からなる。
【0078】
従って、本実施例では、通行面が車椅子等が走行しても樹脂の場合と比較して塑性変形が起きにくく、繰り返しの使用による通行面の耐久性を向上させることができる。
【0079】
しかも、本実施例の渡し板3a,3bでは、持ち運び時や設置時等に樹脂製の裏板材15を不用意な衝撃が入力されやすい方向に向けて取り扱うことができ、不用意な衝撃による損傷を抑制することが可能となる。特に、裏板材15よりも剛性が高い表板材13が衝撃により損傷しやすいので、表板材13を保護することができる。
【0080】
また、裏板材15に衝撃が入力された場合は、中板材17を介して表板材13に衝撃が伝達され、その反力が表板材13から中板材17を介して裏板材15に入力される。このため、本実施例では、表板材13からの反力により衝撃による裏板材15の塑性変形を抑制できる。
【0081】
また、本実施例の渡し板3a,3bは、表板材13が、樹脂製の芯材14と、該芯材14の表裏面に接合された金属製の面材16a,16bとを有する複合薄板であるから、より確実に通行面の耐久性を向上することができる。
【0082】
また、本実施例の渡し板3a,3bは、表板材13に用いられる金属がアルミニウムであるから、より確実に通行面の耐久性を向上することができる。
【0083】
本実施例渡し板3a,3bは、表板材13の表面を被覆する滑り止め用の樹脂シート7を備えたから、車椅子等の滑り止めを行うことができながら、衝撃によって損傷しやすい表板材13を保護することもできる。
【0084】
裏板材15に用いられる樹脂がガラス繊維を芯材とする繊維強化プラスチックであるから、不用意な衝撃による損傷を抑制することが可能となる。
【0085】
本実施例の渡し板組1は、一対の渡し板3a,3bをヒンジ5を介して接続して、一対の渡し板3a,3bの表面を向かい合わせるように折り畳み可能であり、展開時に表面が使用者を通行させる通行面となる。
【0086】
従って、渡し板組1では、折り畳むことで、渡し板3a,3bの裏板材15を外側に向けて位置させることができ、確実に渡し板3a,3bの表板材13を保護することができ、確実に不用意な衝撃による損傷を抑制することが可能となる。
【0087】
結果として、本実施例では、ユーザーが損傷を意識することなく、渡し板組1の持ち運びを極めて容易に行わせることが可能となる。