(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記固有情報記憶手段は、上記ユニットと対を成すと共に上記ユニット固有情報が記憶されたユニット固有情報記憶手段と、該ユニット固有情報とは別個に設けられており上記荷重検出固有情報が記憶された荷重検出固有情報記憶手段と、を含む、
請求項1に記載の計量装置。
【背景技術】
【0002】
この種の計量装置においては、例えば
図4に示すように、荷重検出手段としてのロードセル1が設けられている。ロードセル1は、自身に荷重Wxが印加されると、当該荷重Wxの大きさに応じた態様の、例えば電圧値を示す、アナログ荷重信号Ax(∝Wx)を出力する。言い換えれば、ロードセル1は、自身の特性に応じたゲインkaをもって当該荷重Wxをアナログ荷重信号Ax(=ka・Wx)に変換する。このアナログ荷重信号Axは、増幅手段としての増幅回路2に入力され、ここで、当該増幅回路2のゲインkbをもって増幅される。そして、この増幅回路2による増幅後のアナログ荷重信号kb・Axは、A/D変換手段としてのA/D変換回路3に入力され、ここで、デジタル荷重信号Dxに変換される。さらに、このデジタル荷重信号Dxは、CPU(Central
Processing Unit)4に入力される。CPU4は、次の式1に基づいて、デジタル荷重信号Dxのうち図示しない被計量物の重量Wnに対応する成分、言わば正味デジタル値Dn、を求める。
【0003】
《式1》
Dn=Dx−Di
【0004】
この式1において、Diは、デジタル荷重信号Wxのうち初期荷重Wiに対応する成分である。ここで言う初期荷重Wiとは、ロードセル1に取り付けられている図示しない計量台(被計量物載置台)の重量による荷重のように最初から当該ロードセル1に印加されている荷重のことを言う。この初期荷重Wiに対応する成分、言わば初期荷重デジタル値Diは、計量台上に何らの物体も載置されていないいわゆる空掛け状態にあるときのデジタル荷重信号Dxそのものであり、予め測定され、CPU4に付随の図示しないメモリに記憶される。
【0005】
さらに、CPU4は、式1に基づく正味デジタル値Dnにスパン係数Kを乗ずることで、つまり次の式2に基づいて、被計量物の重量Wnの推定値である重量測定値Wn’を求める。
【0006】
《式2》
Wn’=K・Dn
【0007】
この式2におけるスパン係数Kは、式1に基づく正味デジタル値Dnを重量測定値Wn’に変換するための一種の変換係数であり、例えば次のようにして求められる。即ちまず、計量装置の秤量Wmと等価な重量を持つ図示しない分銅(テスト用物品)が計量台上に載置される。そして、このときの式2に基づく重量測定値Wn’が分銅の重量値Wmと等価(Wn’=Wm)となるように、つまり次の式3に基づいて、当該スパン係数Kが求められる。求められたスパン係数Kは、上述のメモリに記憶される。
【0008】
《式3》
K=Wm/Dn
【0009】
なお、ロードセル1に印加される荷重Wxの大きさ(印加荷重値)と、当該ロードセル1から出力されるアナログ荷重信号Axの大きさ(電圧値)とは、互いに比例関係にあるのが理想的であるが、実際には、
図5のグラフに太実線の曲線α示すように、概略2次関数的な非線形の関係にあることが多い。この
図5の横軸は、ロードセル1への印加荷重Wxを表す。そして、この横軸におけるWiは、上述した初期荷重値であり、Wpは、秤量Wmと等価な重量を持つ被計量物が計量台上に載置されたときの当該ロードセル1への印加荷重値Wx、言わば想定最大印加荷重値、である。さらに、Wrは、ロードセル1の定格荷重値である。このロードセル1の定格荷重値Wrは当然に、想定最大印加荷重値Wp以上(Wr≧Wp)である。一方、縦軸は、アナログ荷重信号Axの電圧値を表す。そして、この横軸におけるAi,ApおよびAxは、それぞれ初期荷重値Wi,想定最大印加荷重値Wpおよびロードセル1の定格荷重値Wrに対応する電圧値である。また、初期荷重値Wiに対応する電圧値Aiと想定最大印加荷重値Wpに対応する電圧値Apとの差Am(=Ap−Ai)が、秤量Wmに対応する。
【0010】
このように、ロードセル1への印加荷重値Wxと、アナログ荷重信号Axの電圧値Axとは、互いに非線形の関係にあるものの、計量に実用される領域(Wi,Ai)〜(Wp,Ap)においては概ね比例関係にあるものと見なして、つまり
図5に一点鎖線の直線βで示す関係にあるものと見なして、当該計量が行われる。即ち実際には、曲線αの傾きがロードセル1の上述したゲインkaに相当するが、計量上は、直線βの傾きが当該ロードセル1のゲインkaに相当するものとされる。また、このゲインkaは、ロードセル1を駆動するために当該ロードセル1に供給される駆動電圧(励磁電圧)の電圧値によって変わる。
【0011】
ところで、増幅回路2とA/D変換回路3とCPU4とは一般に、1つのユニットを構成し、例えば1枚のプリント基板(いわゆるプリント回路板と呼ばれる広義のプリント基板)5に纏められる。このプリント基板5は、図示しない指示計に内蔵され、或いは、ロードセル1の近傍に設けられる。特に、当該プリント基板5がロードセル1と一体的に設けられることによって、いわゆるデジタルロードセルが実現される。また、プリント基板5には、上述の駆動電圧の供給源である電源回路も組み込まれる。
【0012】
ここで例えば、プリント基板5の故障や損傷等によって、当該プリント基板5が交換される、とする。この場合、元の(故障や損傷等を生じた)プリント基板5に代えて、これと同一仕様の新たなプリント基板5が取り付けられるが、これら両者間で、互いの特性が、とりわけ増幅回路2のゲインkbが、異なることがある。言い換えれば、個々のプリント基板5は、増幅回路2のゲインkbを含む固有の特性を有している。その一方で、上述のデジタル荷重信号Dxは、増幅回路2のゲインkbに依存する。そして、このデジタル荷重信号Dxを要素として含む上述の式3で表されるスパン係数Kもまた、当該増幅回路2のゲインkbに依存する。従って、プリント基板5の交換時には、新たなプリント基板5について、スパン係数Kを求めるためのいわゆるスパン調整を行う必要がある。このスパン調整は、上述した分銅の計量台上への積み降ろしを含めかなり面倒な作業であると共に、それ相応のコストが掛かる。
【0013】
この不都合を解消するべく、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、ロードセル等のセンサの出力が入力されるセンサ用アンプを有するアンプ基板が設けられている。このアンプ基板について、まず初めに、センサ用アンプに付属されたゲイン調整器によって、当該センサ用アンプのゲインが適当に調整される。そして、この調整されたセンサ用アンプのゲイン、言わば初期ゲインG0が、測定される。具体的には、センサ用アンプの入力側に設けられた切換スイッチによって、所定の比較電圧Vrefの1/n電圧(Vref/n)が当該センサ用アンプに入力されるように選択される。そして、このときのアンプ出力がA/Dコンバータに入力され、そのA/D変換値が得られる。続いて、当該アンプ出力に代えて、比較電圧VrefがA/Dコンバータに入力され、そのA/D変換値が得られる。さらに、当該比較電圧Vrefに代えて、アンプ基板のアース電位がA/Dコンバータに入力され、そのA/D変換値が得られる。その上で、次の式4に基づいて、初期ゲインG0が求められる。求められた初期ゲインG0は、メモリに記憶される。
【0014】
《式4》
G0=[{(アンプ出力のA/D変換値)−(基板アース電位のA/D変換値)}/{(比較電圧のA/D変換値)−(基板アース電位のA/D変換値)}]×(分圧比n)
【0015】
このようにして初期ゲインG0が求められた後、上述した切換スイッチによって、センサ出力がセンサ用アンプに入力されるように選択される。そして、所定重量の原器を用いてのスパン調整が行われる。具体的には、計量台としての計量タンクまたは計量皿が空とされた空掛け状態にあるときのアンプ出力がA/Dコンバータに入力され、そのA/D変換値X0が得られる。この空掛け状態にあるときのA/D変換値X0は、メモリに記憶される。続いて、秤量M分の重量の原器が計量タンクまたは計量皿に積み込まれ、このときのアンプ出力がA/Dコンバータに入力され、そのA/D変換値XFが得られる。そして、次の式5に基づいて、スパン係数(初期較正値)Kが求められる。このスパン係数Kもまた、メモリに記憶される。
【0016】
《式5》
K=M/(XF−X0)
【0017】
これをもって、事前の準備作業が終了し、実際の計量作業が可能となる。この実際の計量作業においては、次の式6に基づいて、被計量物の重量測定値Sが求められる。なお、この式6におけるX1は、アンプ出力のA/D変換値である。
【0018】
《式6》
S=K・(X1−X0)
【0019】
ここで例えば、アンプ基板が故障した場合には、この故障したアンプ基板(旧基板)に代えて、新たなアンプ基板(新基板)が取り付けられる。その際まず、新基板のゲイン調整器の設定が旧基板のそれと同じになるように手動で合わせられる。その上で、新基板のセンサ用アンプのゲインG1が初期ゲインG0のときと同様の要領で測定される。即ち、比較電圧Vrefの1/n電圧がセンサ用アンプに入力されたときの当該センサ用アンプの出力と、当該比較電圧Vrefそのものと、アンプ基板のアース電位と、のそれぞれがA/Dコンバータに入力され、それぞれのA/D変換値が得られる。その上で、上述の式4と同様の次の式7に基づいて、新基板のゲインG1が求められる。
【0020】
《式7》
G1=[{(アンプ出力のA/D変換値)−(基板アース電位のA/D変換値)}/{(比較電圧のA/D変換値)−(基板アース電位のA/D変換値)}]×(分圧比n)
【0021】
なお、この式7に基づく新基板のゲインG1は、式4に基づく旧基板のゲインG0と比較される。そして、これら新旧両基板のゲインG1およびG0の差が5%以上である場合には、新基板のゲインG1が不適当であるものとされ、当該新基板のゲイン調整器が再設定される。そして、これら新旧両基板のゲインG1およびG0の差が5%未満であることが確認された上で、次の式8に基づいて、新基板のスパン係数(新較正値)K’が求められる。この新基板のスパン係数K’もまた、メモリに記憶される。
【0022】
《式8》
K’=K・(G1/G0)
【0023】
これをもって、アンプ基板交換時の作業が終了し、実際の計量作業が可能となる。このアンプ基板交換後の実際の計量作業においては、上述の式6に準拠する次の式9に基づいて、被計量物の重量測定値mが求められる。
【0024】
《式9》
m=K’・(X1−X0)
【0025】
このように特許文献1に開示された従来技術によれば、アンプ基板交換時に新基板のゲイン調整器の設定が旧基板のそれと同じになるように合わせられるだけで、当該新基板のスパン係数K’が自動的に求められる、とされている。即ち、アンプ基板交換時には原器を用いてのスパン調整が不要である、とされている。
【0026】
しかしながら、この従来技術においては確かに、アンプ基板交換時のスパン調整は不要であるものの、その前準備として、新基板のゲイン調整器の設定が旧基板のそれと同じになるように合わせられ、つまりその作業が必要となる。しかも、新旧両基板のゲインG1およびG0の差が5%以上である場合には、新基板のゲイン調整器の再設定が必要であり、これもまた面倒であると共に、それ相応のコストが掛かる。即ち、スパン調整以外の面倒かつコストの掛かる作業が必要となる。
【0027】
これとは別の従来技術として、例えば特許文献2に開示されたものがある。この言わば第2の従来技術によれば、カウンターフォース(起歪体)に力変換器としての少なくとも1つの歪みゲージと記憶手段としてのメモリチップとが永久固着されており、これにより、ロードセルのモデュール状ユニットが形成されている。メモリチップには、カウンターフォースおよび歪みゲージについての固有の補正/較正データが記憶されており、当該メモリチップは、歪みゲージによって構成されたホイートストンブリッジと共に、可撓性回路を介して、局部回路基板(印刷回路基板)に接続されている。局部回路基板には、前置増幅器とA/D変換器とプロセッサとが搭載されている。このうちの前置増幅器に、ホイートストンブリッジからのアナログ電気信号が入力される。この前置増幅器によって増幅されたアナログ電気信号は、A/D変換器によってデジタル電気信号に変換された後、プロセッサに入力される。プロセッサは、このデジタル電気信号とメモリチップに記憶されている補正/構成データとに基づいて、被計量物の重量を求める。
【0028】
ここで例えば、局部回路基板が故障した場合には、当該局部回路基板をカウンターフォースおよび歪みゲージから取り外して交換すればよく、カウンターフォースや歪みゲージを再較正する必要はない、とされている。即ち、カウンターフォースおよび歪ゲージについての補正/較正データが記憶されたメモリチップが歪ゲージと共にカウンターフォースに永久固着されているので、局部回路基板が交換されたとしても、当該補正/較正データを改めて得る必要はない、とされている。
【0029】
しかしながら、この第2従来技術においては確かに、局部回路基板が交換されたときにカウンターフォースや歪みゲージを再較正する必要はないものの、計量装置全体としてのスパン調整のやり直しが必要となる。局部回路基板が交換されることによって、当該局部回路基板の特性が変わり、とりわけ前置増幅器のゲインが変わるからである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の一実施形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0044】
図1に示すように、本実施形態に係る計量装置10は、荷重検出手段としてのロードセル20を備えている。このロードセル20は、図示しない起歪体と、この起歪体の適当な位置に固着された1以上の、例えば4つの、歪ゲージ22a,22b,22cおよび22dと、を有している。なお、起歪体には図示しない計量台が結合されており、この計量台上に図示しない被計量物が載置される。
【0045】
上述の4つの歪ゲージ22a,22b,22cおよび22dは、ブリッジ(ホイートストンブリッジ)回路22を構成している。このブリッジ回路22を構成する各歪ゲージ22a,22b,22cおよび22dの4つの相互接続点22e,22f,22gおよび22hのうちの互いに対向する1組22eおよび22gは、当該ブリッジ回路22を駆動するための駆動電圧Edが供給される駆動電圧供給端子であり、この一対の駆動電圧供給端子22eおよび22gは、外部から当該駆動電圧Edの供給を受け付ける駆動電圧外部供給端子24に接続されており、詳しくは当該駆動電圧外部供給端子24を構成する一対の端子24aおよび24bに接続されている。また、当該一対の駆動電圧供給端子22eおよび22gは、駆動電圧外部供給端子24(24aおよび24b)とは別個に設けられた駆動電圧監視信号出力端子26に接続されており、詳しくは当該駆動電圧監視信号出力端子26を構成する一対の端子26aおよび26bに接続されている。そして、他の1組の相互接続点22fおよび22hは、ブリッジ回路22の出力端子であり、この一対の出力端子22fおよび22hは、後述するアナログ荷重信号Axを外部へ出力するためのアナログ荷重信号外部出力端子28に接続されており、詳しくは当該アナログ荷重信号外部出力端子28を構成する一対の端子28aおよび28bに接続されている。
【0046】
このロードセル20は、伝送線路としての多芯のロードセルケーブル30を介して当該ロードセル20から離れた位置にある指示計40に接続されており、詳しくは当該指示計40に内蔵されたプリント基板50に接続されている。具体的には、プリント基板50は、ロードセル20の駆動電圧外部供給端子24に接続される駆動電圧出力端子52を有しており、詳しくは当該駆動電圧外部供給端子24を構成する一対の端子24aおよび24bに対応する一対の端子52aおよび52bを有している。また、プリント基板50は、ロードセル20のアナログ荷重信号外部出力端子28に接続されるアナログ荷重信号入力端子54を有しており、詳しくは当該アナログ荷重信号外部出力端子28を構成する一対の端子28aおよび28bに対応する一対の端子54aおよび54bを有している。さらに、プリント基板50は、駆動電圧監視信号出力端子26に接続される駆動電圧監視信号入力端子56を有しており、詳しくは当該当該駆動電圧監視信号出力端子26を構成する一対の端子26aおよび26bに対応する一対の端子56aおよび56bを有している。
【0047】
加えて、プリント基板50は、後述する第1基準信号E1の入力を受け付ける第1基準信号入力端子58を有しており、詳しくは当該第1基準信号入力端子58を構成する一対の端子58aおよび58bを有している。これとは別に、プリント基板50は、後述する第2基準信号E2の入力を受け付ける第2基準信号入力端子60を有しており、詳しくは当該第2基準信号入力端子60を構成する一対の端子60aおよび60bを有している。
【0048】
その上で、プリント基板50は、上述の駆動電圧Edの供給源である駆動電圧供給手段としての電源回路62を有している。この電源回路62は、交流または直流の主電源電圧の供給を受けて、例えば直流の当該駆動電圧Edを生成する。この駆動電圧Edは、駆動電圧出力端子52(52aおよび52b)ならびにロードセルケーブル30を介してロードセル20に供給され、詳しくは当該ロードセル20の駆動電圧外部供給端子24(24aおよび24b)を介してブリッジ回路22の駆動電圧供給端子22eおよび22gに供給される。なお図示は省略するが、電源回路62は、次に説明する増幅手段としての第1増幅回路64等の各回路を駆動するための回路電源電圧の供給源でもある。
【0049】
第1増幅回路64は、図示しない演算増幅器を用いた反転増幅回路,非反転増幅回路,差動増幅回路等の適宜の回路によって構成されており、その前段には、第1切換手段としての手動の第1切換スイッチ66(以下、SW1という符号で表現されることがある。)が設けられている。この第1切換スイッチSW1は、上述したアナログ荷重信号入力端子54(54aおよび54b)と第1基準信号入力端子58(58aおよび58b)とのいずれか一方を選択的に第1増幅回路64の入力側に接続する。即ち、第1増幅回路64には、アナログ荷重信号Axおよび第1基準信号E1のいずれか一方が選択的に入力される。この第1増幅回路64に入力されたアナログ荷重信号Axまたは第1基準信号E1は、当該第1増幅回路64のゲインk1をもって増幅される。そして、この第1増幅回路64による増幅後の信号A1(=k1・Axまたはk1・E1)は、A/D変換手段としてのA/D変換回路68に入力される。
【0050】
A/D変換回路68は、外部からリファレンス電圧の供給を受ける外部リファレンス型のものであり、この外部リファレンス電圧は、リファレンス電圧供給手段としての第2増幅回路70から供給される。第2増幅回路70は、第1増幅回路64と同様、図示しない演算増幅器を用いたものであるが、その入力インピーダンスは、極めて高い。このような高入力インピーダンスの第2増幅回路70は、例えばその入力段に高入力インピーダンス回路、とりわけボルテージフォロワ回路、が設けられることによって実現される。この第2増幅回路70の前段にも、第1切換スイッチSW1と同様の第2切換手段としての手動の第2切換スイッチ72(以下、SW2という符号で表現されることがある。)が設けられている。この第2切換スイッチSWは、上述した駆動電圧監視信号入力端子56(56aおよび56b)と第2基準信号入力端子60(60aおよび60b)とのいずれか一方を選択的に第2増幅回路70の入力側に接続する。なお、駆動電圧監視信号入力端子56には、上述した電源回路62からロードセルケーブル30を介して実際にロードセル20(ブリッジ回路22の駆動電圧供給端子22eおよび22g)に供給される駆動電圧、言い換えれば主として当該ロードセルケーブル30のインピーダンス成分による電圧降下を受けた駆動電圧Ed’(<Ed)が、駆動電圧監視信号として入力される。従って、第2増幅回路70には、当該駆動電圧監視信号Ed’およびおよび第2基準信号E2のいずれか一方が選択的に入力される。この第2増幅回路70に入力された駆動電圧監視信号Ed’または第2基準信号E2は、当該第2増幅回路70のゲインk2をもって増幅される。そして、この第2増幅回路70による増幅後の信号A2(=k2・Ed’またはk2・E2)が、A/D変換回路68のリファレンス電圧として当該A/D変換回路68に供給される。
【0051】
A/D変換回路68は、第1増幅回路64から入力された信号A1を第2増幅回路70から供給されたリファレンス電圧A2を基準としてデジタル信号Dxに変換する。そして、この変換後のデジタル信号Dxは、演算手段としてのCPU74に入力される。なお、A/D変換回路68としては、二重積分形や逐次比較形等の様々な形式のものが採用可能であるが、例えば分解能の優位性からデルタシグマ形のものが採用される。
【0052】
CPU74は、A/D変換回路68による変換後のデジタル信号、とりわけアナログ荷重信号Axが第1増幅回路64に入力されると共に駆動電圧監視信号Ed’が第2増幅回路70に入力されているときに得られるデジタル荷重信号Dx、に基づいて、上述の被計量物の重量Wnを求め、厳密にはその推定値である重量測定値Wn’を求める。この重量測定値Wn’を求めるための演算要領を含むCPU74の動作は、当該CPU74に付随の図示しないメモリに記憶されている制御プログラムによって制御される。このCPU74の動作については、後で詳しく説明する。
【0053】
また、CPU74には、ユニット固有情報記憶手段としての回路用メモリ76(以下、M1という符号で表現されることがある。)と、荷重検出固有情報記憶手段としてのロードセル用メモリ78(以下、M2という符号で表現されることがある。)とが、接続されている。これらのメモリ76および78は、いずれも不揮発性のものであり、例えばEEPROM(Electrically
Erasable Programmable Read-Only Memory)である。また特に、ロードセル用メモリM2は、プリント基板50に対して容易に着脱可能とされており、例えば当該プリント基板50に取り付けられたIC(Integrated Circuit)ソケット80を介して着脱容易とされている。これらのメモリM1およびM2についても、後で詳しく説明する。併せて、CPU74には、当該CPU74に対して種々の命令を入力するための命令入力手段としての操作キー90と、当該CPU74による制御によって各種情報を表示するための情報表示手段としてのディスプレイ92と、が接続されている。これら操作キー90およびディスプレイ92は、プリント基板50とは別個に、つまり当該プリント基板50の外部に、設けられている。このため、プリント基板50には、操作キー90およびディスプレイ92が個別に接続される端子80および82が設けられている。なお、操作キー90およびディスプレイ92は、互いに一体化されたものであってもよく、例えばタッチパネルであってもよい。
【0054】
さて、本実施形態においては、事前に、例えば工場出荷前に、次のような調整作業が行われる。
【0055】
即ち、図示しない第1基準信号生成装置がプリント基板50の第1基準信号入力端子58に接続されると共に、図示しない第2基準信号生成装置が当該プリント基板50の第2基準信号入力端子60に接続される。そして、第1切換スイッチSW1によって第1基準信号入力端子58が第1増幅回路64の入力側に接続されるように選択されると共に、第2切換スイッチSW2によって第2基準信号入力端子60が第2増幅回路70の入力側に接続されるように選択される。その上で、第1基準信号生成装置から第1基準信号入力端子58に直流の第1基準信号E1が入力されると共に、第2基準信号生成装置から第2基準信号入力端子60に直流の第2基準信号E2が入力される。これにより、第1増幅回路64に第1基準信号E1が入力されると共に、第2増幅回路70に第2基準信号E2が入力される。なお、第1切換スイッチSW1と第2切換スイッチSW2とは、互いに連動するものであってもよい。また、第1基準信号E1の電圧値と第2基準信号E2の電圧値とは、第1増幅回路64のゲインk1と第2増幅回路70のゲインk2とに応じて適宜に設定され、詳しくは当該第1基準信号E1の第1増幅回路64による増幅後信号A1(=k1・E1)の電圧値が当該第2基準信号E2の第2増幅回路70による増幅後信号A2(=k2・E2)の電圧値以下(A1≦A2)となる範囲内で適宜に設定される。
【0056】
このときのA/D変換回路68による変換後のデジタル信号Dx、厳密には第2増幅回路70による増幅後信号A2の電圧値を基準とする第1増幅回路64による増幅後信号A1の電圧値の比率は、次の式10のように表される。そして、この式10に基づくデジタル信号、言わば調整時デジタル値Dxは、CPU74に入力される。
【0057】
《式10》
Dx=A1/A2=(k1・E1)/(k2・E2)
∵ A1=k1・E1, A2=k2・E2
【0058】
CPU74は、この式10に基づく調整時デジタル値Dxに対して補正情報としての或る補正係数k3を乗ずると共に、その結果Dx’(=k3・Dx)が或る基準値Dsと等価(Dx=Ds)になるように、つまりは次の式11が満足されるように、当該補正係数k3を求める。この式11に基づく演算は、操作キー90による所定の操作(補正係数算出操作)に応答して実行される。また、ここで言う基準値Dsは、或る一定の値であっても任意の値であってもよく、例えば上述した制御プログラムに組み込まれており、或いは、操作キー90による操作によって入力され、つまりそうなるように当該制御プログラムが構成されている。
【0059】
《式11》
Dx’=k3・Dx=k3・(A1/A2)=k3・{(k1・E1)/(k2・E2)}=Ds
∴ k3=Ds/Dx=Ds・{(k2・E2)/(k1・E1)}
【0060】
この式11において、基準値Dsと第1基準信号E1の電圧値と第2基準信号E2の電圧値とのそれぞれが一定であることを鑑みると、補正係数k3は、第1増幅回路64のゲインk1と第2増幅回路70のゲインk2とのみに依存すること、つまりこれらのゲインk1およびk2を含むプリント基板50固有の特性のみに依存することが、分かる。CPU74は、この式11に基づく補正係数k3を回路用メモリM1に記憶する。このとき例えば、上述したディスプレイ92に当該比例係数k3が一定期間にわたって表示されてもよい。
【0061】
続いて、第1切換スイッチSW1によって、アナログ荷重信号入力端子54が第1増幅回路64の入力側に接続されるように選択されると共に、第2切換スイッチSW2によって駆動電圧監視信号入力端子56が第2増幅回路70の入力側に接続されるように選択される。これにより、第1増幅回路64にアナログ荷重信号Axが入力され、第2増幅回路70に駆動電圧監視信号Ed’が入力される。なお、これ以降は、上述した第1基準信号生成装置および第2基準信号生成装置は不要であるので、これらはそれぞれの(第1基準信号E1および第2基準信号E2の)出力が停止された上で、第1基準信号入力端子58および第2基準信号入力端子60から取り外される。
【0062】
ところで、ロードセル20(ブリッジ回路22)は、自身(起歪体)に印加されている荷重Wxの大きさに応じた態様の、例えば直流電圧値を示す、上述のアナログ荷重信号Ax(∝Wx)を出力する。言い換えれば、ロードセル20は、自身の特性に応じたゲインkaをもって当該荷重Wxをアナログ荷重信号Ax(=ka・Wx)に変換する。このロードセル20への印加荷重値Wxと当該ロードセル20から出力されるアナログ荷重信号Axの電圧値とは、上述の
図5に曲線αで示したような関係にある。即ち、これら両者WxおよびAxは、互いに非線形の関係にあるものの、計量に実用される領域(Wi,Ai)〜(Wp,Ap)においては当該
図5に直線βで示した如く概ね比例関係にあるものと見なすことができる。また、この
図5における直線βの傾きに相当するロードセル20のゲインkaは、当該ロードセル20に供給される駆動電圧Ed、厳密には実際に供給される駆動電圧Ed’、の電圧値によって変わる。そうすると、アナログ荷重信号Axは、次の式11によって表される。
【0063】
《式12》
Ax=ka・Ed’・Wx
【0064】
そして、このときのA/D変換回路68による変換後のデジタル信号、つまりデジタル荷重信号Wxは、上述の式10に準拠する次の式13のように表される。
【0065】
《式13》
Dx=A1/A2=(k1・Ax)/(k2・Ed’)=(k1・ka・Ed’・Wx)/(k2・Ed’)=(k1/k2)・ka・Wx
∵ A1=k1・Ax, A2=k2・Ed’
【0066】
この式13から分かるように、当該式13に基づくデジタル荷重信号、言わば荷重デジタル値Dxは、ロードセル20に実際に供給される駆動電圧Ed’の電圧値とは無関係である。即ち、レシオメトリックが実現される。従って例えば、何らかの原因により当該駆動電圧Ed’が変動したとしても、このことによる荷重デジタル値Dxへの影響はない。また、当該駆動電圧Ed’は、ロードセルケーブル30のインピーダンス成分による電圧降下を受けたものであり、つまり本来の電圧値Edよりも小さい(Ed’<Ed)が、このことによる荷重デジタル値Dxへの影響もない。
【0067】
CPU74は、この式13に基づく荷重デジタル値Dxに上述の補正係数k3を乗ずることで、つまり上述の式11に準拠する次の式14に基づいて、補正後デジタル値Dx’を求める。
【0068】
《式14》
Dx’=k3・Dx=k3・(k1/k2)・ka・Wx=Ds・{(k2・E2)/(k1・E1)}・(k1/k2)・ka・Wx=Ds・(E2/E1)・ka・Wx
∵ k3=Ds・{(k2・E2)/(k1・E1)}
【0069】
この式14において、基準値Dsと第1基準信号E1の電圧値と第2基準信号E2の電圧値とのそれぞれが一定であることを鑑みると、補正後デジタル値Dx’は、ロードセル20への印加荷重値Wxと当該ロードセル20のゲインkaのみに依存すること、言い換えれば第1増幅回路64のゲインk1と第2増幅回路70のゲインk2とを含むプリント基板50固有の特性には依存しないことが、分かる。即ち、式13に基づく荷重デジタル値Dxに補正係数k3が乗ぜられることで、プリント基板50固有の特性に無関係な当該補正後デジタル値Dx’が得られる。
【0070】
そして、この補正後デジタル値Dx’に基づいて、変換情報としてのスパン係数Kを求めるためのスパン調整が行われる。具体的にはまず、上述した計量台上に何らの物体も載置されない空掛け状態が形成される。この空掛け状態にあるときの補正後デジタル値Dx’は、初期荷重Wiに対応する。この初期荷重Wiには、計量台の重量による荷重が含まれる。この空掛け状態において、操作キー90による所定の操作(初期荷重記憶操作)が成されると、これに応答してCPU74は、当該空掛け状態にあるときの補正後デジタル値Dx’を初期荷重Wiに対応する補正後初期荷重デジタル値Di’としてロードセル用メモリM2に記憶する。次に、計量装置10の秤量Wmと等価な重量を持つ図示しない分銅が計量台上に載置される。この状態で、操作キー90による所定の操作(スパン係数算出操作)が成されると、これに応答してCPU74は、このときの補正後デジタル値Dx’を含む次の式15が満足されるように、スパン係数Kを求める。
【0071】
《式15》
K・(Dx’−Di’)=Wm
∴K=Wm/(Dx’−Di’)
【0072】
この式15に基づくスパン係数Kを展開すると、次の式16のようになる。
【0073】
《式16》
K=Wm/[{Ds・(E2/E1)・ka・Wm}−{Ds・(E2/E1)・ka・Wi}
=Wm/{Ds・(E2/E1)・ka・(Wm−Wi)}
∵ Dx’=Ds・(E2/E1)・ka・Wm, Di’=Ds・(E2/E1)・ka・Wi
【0074】
この式16において、秤量Wmと基準値Dsと第1基準信号E1の電圧値と第2基準信号E2の電圧値とのそれぞれが一定であることを鑑みると、スパン係数Kは、ロードセル20のゲインkaと初期荷重値Wiとのみに依存すること、つまり当該ロードセル20固有の特性のみに依存することが、分かる。CPU74は、このスパン係数Kをロードセル用メモリM2に記憶する。このとき例えば、上述したディスプレイ92に当該スパン係数Kが一定期間にわたって表示されてもよい。
【0075】
このようにしてスパン係数Kがロードセル用メモリM2に記憶された後、つまりスパン調整が成された後、上述の分銅が計量台から降ろされることで、工場出荷前の調整作業が終了する。なお、スパン調整は、工場出荷前に限らず、例えば計量装置10が実際に設置されるときに(つまり設置現場で)行われてもよい。そして、このスパン調整を含む一連の調整作業の終了後、実際の計量作業が可能となる。
【0076】
実際の計量作業においては、上述の式14に基づいて、補正後デジタル値Dx’が求められ、さらに、次の式17に基づいて、重量測定値Wn’が求められる。
【0077】
《式17》
Wn’=K・(Dx’−Di’)
【0078】
即ち、CPU74は、回路用メモリM1に記憶されている補正係数k3を用いて、式14に基づく補正後デジタル値Dx’を求め、つまりプリント基板50固有の特性に無関係な当該補正後デジタル値Dx’を求める。その上で、CPU74は、この補正後デジタル値Dx’とロードセル用メモリM2に記憶されているスパン係数Kおよび補正後初期荷重デジタル値Di’とを用いて、式17に基づく重量測定値Wn’を求める。求められた重量測定値Wn’は、ディスプレイ92に表示される。
【0079】
ここで例えば、プリント基板50に故障や損傷等が生じた場合には、当該プリント基板50が新しいものと交換される。なお、この新しいプリント基板50についても、上述と同じ要領で補正係数k3が求められ、回路用メモリM1に記憶される。ただし、この新しいプリント基板50については、スパン調整までは行われず、当該補正係数k3が回路用メモリM1に記憶されるまでに留められる。また、新しいプリント基板50には、ロードセル用メモリM2が搭載されていなくてもよい。
【0080】
このプリント基板50の交換に際しては、元の(故障や損傷等を生じた)プリント基板50からロードセル用メモリM2が取り外される。そして、取り外されたロードセル用メモリM2は、新しいプリント基板50に取り付けられ、言わば移植される。これ以降は、新たなプリント基板50の回路用メモリM1に記憶されている補正係数k3を用いて、上述の式14に基づく補正後デジタル値Dx’が求められ、つまり新たなプリント基板50固有の特性に無関係な当該補正後デジタル値Dx’が求められる。その上で、この補正後デジタル値Dx’と新たなプリント基板50に移植されたロードセル用メモリM2に記憶されているスパン係数Kおよび補正後初期荷重デジタル値Di’とを用いて、式17に基づく重量測定値Wn’が求められる。即ち、プリント基板50の交換前と何ら変わらず同じ要領で重量測定値Wn’が求められる。要するに、スパン調整等の特段な作業、とりわけ面倒かつコストの掛かる作業が、一切不要である。
【0081】
このように本実施形態によれば、プリント基板50の交換時にスパン調整等の面倒かつコストの掛かる作業が一切不要である。従って、上述した第1従来技術や第2従来技術に比べて、プリント基板50の交換時における作業の効率化および低コスト化が図られる。
【0082】
なお、本実施形態の内容は、飽くまでも本発明の1つの具体例であり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0083】
例えば、本実施形態におけるロードセル20は、アナログ荷重信号Wxを出力するいわゆるアナログロードセルであるが、当該ロードセル20の近傍にプリント基板50が設けられることによって、特に当該プリント基板50がロードセル20と一体的に設けられることによって、デジタルロードセルが実現される。即ち、アナログロードセルに限らず、デジタルロードセルにも、本発明を適用することができる。
【0084】
また、デジタルロードセルにおいては、ロードセルケーブル30が短縮化されるので、このロードセルケーブル30のインピーダンス成分が十分に小さく、ゆえに、電源回路62から出力される駆動電圧Edとロードセル20に実際に供給される駆動電圧Ed’とが基本的に等価(Ed=Ed’)である(厳密には略等価(Ed≒Ed’)である)と見なすことができる場合がある。この場合は、上述した駆動電圧Ed’が第2切換スイッチSW2を介して第2増幅回路70に入力されるのではなく、例えば
図2に示すように、電源回路62から出力された駆動電圧Edそのものが当該第2切換スイッチSW2を介して第2増幅回路70に入力されるように構成されてもよい。この
図2に示す構成は、デジタルロードセルに限らず、アナログロードセルにおいても、ロードセルケーブル30が十分に短く、当該ロードセルケーブル30のインピーダンス成分が十分に小さい場合に、採用可能である。
【0085】
さらに、より高精度な計量を実現するべく、次のような構成が採用されてもよい。即ち、
図5を参照しながら説明したように、ロードセル20への印加荷重値Wxと当該ロードセル20から出力されるアナログ荷重信号Axの電圧値とは、互いに非線形の関係にあり、概ね比例関係にあるものと見なされる領域(Wi,Ai)〜(Wp,Ap)であっても、やはり厳密には当該非線形の関係にある。そして、この非線形の関係に起因して、上述の式17に基づく重量測定値Wn’に多少の誤差が生じる。この誤差を低減するべく、上述した要領でスパン調整が行われた後に、当該スパン調整において用いられたのと同じ分銅、つまり計量装置10の秤量Wmと等価な重量を持つ分銅が、計量台上に載置される。この状態で、式17に基づく重量測定値Wn’が求められる。この重量測定値Wn’は、(基本的に)秤量Wmと等価(Wn’=Wm)になる。そして、計量台上に載置されている分銅に代えて、例えば秤量Wmの1/2の重量を持つ別の分銅が当該計量台上に載置される。この状態で、重量測定値Wn’が求められ、当該重量測定値Wn’として例えばWn’=Wm1という値が得られる、とする。そして、計量台上に載置されている分銅が当該計量台上から降ろされ、空掛け状態とされる。この空掛け状態にあるときの重量測定値Wn’は、(基本的に)ゼロ(Wn’=0)になる。
【0086】
このようにして秤量Wmと等価な重量を持つ分銅が計量台上に載置されたときの、言わば当該分銅が被計量物とされたときの、重量測定値Wn’=Wmと、秤量Wmの1/2の重量を持つ別の分銅が被計量物とされたときの重量測定値Wn’=Wm1と、計量台上に被計量物が載置されていない空掛け状態にあるときの重量測定値Wn’=0と、が得られた上で、重量測定値Wn’と被計量物の重量値Wnとの関係(Wn’,Wn)が、例えば
図3に示すようにグラフ化される。即ち、この
図3のグラフに太実線の曲線γで示すように、被計量物の重量値Wnは、式17に基づく重量測定値Wn’を変数とする2次関数で表され、つまり次の式18によって表される。
【0087】
《式18》
Wn=f(Wn’)=a・Wn’
2+b・Wn’+c
【0088】
この式18に基づく曲線γは、
図3において、(Wm,Wm),(Wm1,Wm/2)および(0,0)という3つの点を通る。そして、これら3つの点(Wm,Wm),(Wm1,Wm/2)および(0,0)の関係(Wn’,Wn)を用いて、式18における各係数a,bおよびcが求められる。これら各係数a,bおよびcを含む式18は、ロードセル20固有の特性に従う要素として、つまり荷重検出固有情報の1つとして、ロードセル用メモリM2に記憶される。ここまでが、事前の調整作業とされる。
【0089】
そして、実際の計量作業においては、上述の如く式14に基づいて、補正後デジタル値Dx’が求められ、さらに、式17に基づいて、重量測定値Wn’が求められる。そしてさらに、式18に準拠する次の式19に基づいて、より精確な重量測定値Wn”が求められる。
【0090】
《式19》
Wn”=f(Wn’)=a・Wn’
2+b・Wn’+c
【0091】
これにより、ロードセル20のいわゆる非線形性に起因する誤差が補償され、より高精度な計量が実現される。
【0092】
加えて厳密に言えば、ロードセル20は、ヒステリシス特性を持つので、このヒステリシス特性に起因する誤差も多少なりとも生じるが、これについても、当該非線形性に起因する誤差補償と同様の要領で補償されてもよい。即ち、当該ヒステリシス特性をも含めて、上述の式17に基づく重量測定値Wn’を変数とする適宜の関数式が立てられ、この関数式によって、被計量物の重量値Wn(より精確な重量測定値)が求められてもよい。この場合も、当該関数式を構成する適宜の係数が、荷重検出固有情報の1つとして、ロードセル用メモリM2に記憶される。
【0093】
また、ロードセル20を駆動するための駆動電圧Edについては、直流に限らず、交流であってもよい。この場合、ロードセル20から出力されるアナログ荷重信号Axも交流になるので、これを直流に変換する等の適宜の対策が講じられる。
【0094】
さらに、ロードセル20として、いわゆる歪ゲージ式のものが採用されたが、これに限らず、例えばフォースバランス式のものが採用されてもよい。この場合は、電磁コイルに流れる電流を電圧に変換する等の適宜の対策が講じられる。
【0095】
そして、ロードセル用メモリM2については、プリント基板50に取り付けられたが、これに限らない。例えば、指示計40内の適当な位置に取り付けられてもよいし、或いは、ロードセル20の適当な位置に取り付けられてもよい。
【0096】
また、当該ロードセル用メモリM2として、EEPROMが採用されたが、これに限らない。例えば、EEPROM以外のPROMやマスクROM等の適宜の不揮発性メモリが採用されてもよい。極端には、EEPROMの一種であるUSBメモリ、或いは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やDVD(Digital
Versatile Disc)等の非半導体の記憶媒体が、採用されてもよい。
【0097】
加えて、各切換スイッチSW1およびSW2として、手動式のものが採用されたが、これに限らない。例えば、アナログスイッチや小型リレー等のような適宜の非手動式の切換手段が採用されると共に、その切換動作がCPU74によって制御されてもよい。
【0098】
さらに極端には、補正係数k3およびスパン係数Kは、互いに共通のメモリに記憶されてもよい。例えば、当該共通のメモリがプリント基板50に搭載される構成とされる、とする。この場合、プリント基板50が交換される際には、新たなプリント基板50に搭載されているメモリに、当該新たなプリント基板50用の補正係数k3が予め記憶されているものとする。そして、この新たなプリント基板50に搭載されているメモリに、元のプリント基板50に搭載されているメモリに記憶されているスパン係数Kがコピーされる。この構成によっても、本実施形態と同様、スパン調整等の面倒かつコストの掛かる作業が不要となる。また例えば、共通のメモリがプリント基板50の外部に設けられる構成の場合には、プリント基板50が交換される際に、当該共通のメモリに記憶されている補正係数k3が、新たなプリント基板50用の補正係数k3に書き換えられる。この構成によっても、スパン調整等の面倒かつコストの掛かる作業が不要となる。