(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148112
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】光透過度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20170607BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
G01N21/33
H01L21/30 531Z
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-171098(P2013-171098)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-211426(P2014-211426A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-76544(P2013-76544)
(32)【優先日】2013年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594192349
【氏名又は名称】リソテック ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101281
【弁理士】
【氏名又は名称】辻永 和徳
(72)【発明者】
【氏名】関口 淳
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−331275(JP,A)
【文献】
特表2005−533907(JP,A)
【文献】
特開2004−138809(JP,A)
【文献】
特表2010−541267(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0195076(US,A1)
【文献】
特開平10−340843(JP,A)
【文献】
特開2009−116284(JP,A)
【文献】
特開2012−151158(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0183757(US,A1)
【文献】
米国特許第06623893(US,B1)
【文献】
特開平07−183199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01N 21/84−21/958
G01N 23/00−23/227
H01L 21/30
H01L 21/46
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si基板の片面に、光が透過可能な厚さにされた超薄膜領域を形成する工程、該超薄膜領域の光透過度を測定する工程、該Si基板の他方の面上に光透過度被測定物質を塗布する工程、および該Si基板と該被測定物質の光透過度を測定する工程を含む、光透過度測定方法。
【請求項2】
光透過度被測定物質がフォトレジストである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Si基板の片面に超薄膜領域を形成する工程が、エッチングにより行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該エッチングが深掘りエッチング法により行われる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
該超薄膜領域のSi基板の厚さが10ナノメートルから80ナノメートルの範囲である、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
該超薄膜領域が格子構造を有する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
光がEUV光である、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光透過度測定方法に関し、特には超薄膜Si基板を用いた、極端紫外光とも呼ばれるEUV(Extream Ultraviolet)光の透過率測定に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばArFエキシマレーザー光の波長193nmなどでは、石英基板にレジストを塗布して、透過モードでレジストの透過率を測定する。厚さ1mm程度の石英基板の193nmにおける透過率は90%程度あり、石英基板を用いた透過測定が可能である。しかし、波長が13.5nmと短いEUV光は1mmの石英基板を透過することが出来ない。そのため、従来の石英基板を用いた透過モードによるEUV光での透過率測定は不可能である。そこで、フォトレジストに対するEUV光の透過率を測定する場合、Si/Moの多層膜反射基板(マルチレイヤーミラー)を用いて測定している。かかる方法においては、最初にレジストを塗布していない多層膜反射基板のEUV反射率を測定し、ついで多層膜反射基板にレジストを塗布し、EUVでの反射率を測定し、反射率のロス分からレジスト材料における透過率を算出している。
多層膜反射基板はSiとMo層が各4nmの厚さごとに交互に40層程度積層された形状を有するため、製作は難しく、大変高価である。また、EUV光における反射率測定装置も大変高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−331275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、多層膜反射基板を用いる代わりに、超薄膜Si基板を用いた簡便な光透過度の測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、Si基板の片面に、光が透過可能な厚さにされた超薄膜領域を形成する工程、該超薄膜領域の光透過度を測定する工程、該Si基板の他方の面上に光透過度被測定物質を塗布する工程、および該Si基板と該被測定物質の光透過度を測定する工程を含む、光透過度測定方法に関する。
光透過度被測定物質とは光透過度が測定される対象物質である。典型的には光透過度被測定物質はフォトレジストである。本明細書においてはフォトレジストを例として本発明が説明されるが、本発明の測定方法はこれに限定されること無く任意の物質について適用可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、簡便に光透過度、特にはフォトレジストに対するEUV光の透過度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】光の透過度を測定する装置の概要を示す図である。
【
図2】本発明の測定に使用される、光が透過可能な厚さにされた超薄膜領域を有するSi基板の例を示す図である。
【
図3】フォトレジストの塗布に使用されるスピンチャックの構造を示す図である。
【
図5】本発明の測定に使用される、光が透過可能な厚さにされた超薄膜領域を有するSi基板の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
Si基板とは主としてICの基板として使用されるSi薄膜をいい、本発明においてはその一部分を光が透過可能な厚さに加工し、超薄膜領域を形成する。その加工方法としては、たとえばエッチングによる方法が使用できる。超薄膜領域のSi基板の厚さは、透過光強度を実用的に測定できる厚さであり、好ましくは10ナノメートルから80ナノメートル、より好ましくは10ナノメートルから50ナノメートル、より好ましくは10ナノメートルから35ナノメートル、最も好ましくは10ナノメートルから25ナノメートルの範囲である。
【0009】
Si基板を薄くする方法としては公知の任意の方法が使用でき、機械的方法および化学的方法、または両者の組み合わせによることができる。一般的にはエッチングによる方法が使用でき、公知の任意のエッチング方法が使用できる。好ましくは深掘りエッチング方法が使用され、より好適にはDeep Si RIE法(深掘りSi反応性イオンエッチング法)が使用される。Deep Si RIE法は深くエッチングでき、エッチング部分のアスペクト比が大きくなるので好ましい。また光が透過可能な厚さにされた超薄膜領域は強度が小さくなるので、強度を大きくするため格子構造を有することもできる。その例は後述の実施例2に記載される。
【0010】
透過度の測定方法は公知である。たとえば
図1に示すように、Si基板1の中央部分に超薄膜領域2を形成し、典型的にはEUV光である測定光4を照射し、透過光5の強度をフォトセンサー6で測定する。なお、測定は真空領域内において行われることが望ましい。
【0011】
次いで該Si基板の他方の面上にフォトレジストを塗布する。
図1により説明すると、Si基板の超薄膜領域2の下側表面上にフォトレジスト3を塗布する。基板は強度が小さいので、たとえば
図3に示した特殊なスピンチャックを用いてレジストを塗布することが好ましい。スピンチャックはSi薄膜部分がスピン吸着により破壊されないように、リング形状をしており、リング部分の中央に吸着のための溝が掘られている。こうすることで、Siウェハの超薄膜領域にスピンチャックが触れる事によって超薄膜領域が破壊されることを防止することが出来る。
【0012】
ついで再度真空領域内において光をSi基板の超薄膜領域2に照射し、Si基板とフォトレジスト3を透過した透過光5の強度をフォトセンサー6により測定すると、Si基板とフォトレジストの両者を透過した光の強度を得ることができる。
【0013】
超薄膜Si基板の光透過度を100%として、以下の計算式によりレジストの透過率を求める。
T(透過率)=レジスト膜付サンプルの透過光強度Ii/レジスト膜無しのサンプルの透過光強度I
0
得られた透過率は、たとえばリソグラフィーシミュレーションに必要なBパラメータの算出に使用される。
【0014】
本発明においてフォトレジストとは、露光エネルギーに暴露された時に化学反応を起こす感光性材料をいい、ポジ型およびネガ型の任意の公知のフォトレジストを使用することができる。たとえば、ポジ型レジストとしてはPMMAおよびノボラック−ナフトキノンジアジト系レジストなどが使用でき、ネガ型レジストとしては、ポリヒドキシスチレン系レジスト、およびアクリル系レジストなどが使用できる。また、化学増幅系フォトレジストも使用できる。さらにいわゆる分子レジストやフッ素含有レジストを使用することもできる。
【0015】
本明細書においては、EUV光とは数nmから数十nmの範囲の波長を有する光をいい、典型的には5から40nmの範囲の光をいい、より典型的には10から20nmの範囲の波長を有する光をいい、最も典型的には13nm近傍、特には13.5nmの波長を有する光をいう。
EUVの光源としては任意のものが使用できる。たとえば、XeジェットLLP等のレーザープラズマ光源、キャピラリー放電プラズマ光源等の放電プラズマ光源が使用できる。レーザープラズマ光源としては、固体ターゲットのものおよびガスターゲットのものの両者が好適に使用でき、レーザーとしてはたとえば、YAGレーザーやエキシマレーザーが使用できる。
【0016】
以下に好ましい測定方法を例示する。
1) 両面研磨のSi基板上にSiO
2膜を形成し、フォトレジストを塗布して、リソグラフィー技術で超薄膜領域を作るパターンを形成する。
2) レジストパターンをマスクとして、SiO
2膜加工し、SiO
2マスクを用いてDeep Si RIE法(深掘りSi反応性イオンエッチング法)によりSiの深掘りエッチングを行う。
3) 得られたSi基板の超薄膜領域の光透過度を測定する。
4) Si基板の超薄膜領域の裏面部分(エッチング面と反対側)にフォトレジストを塗布する。
5) 再度、光透過度を測定する。
【実施例】
【0017】
実施例1
図2に示す構造の透過率測定用の超薄膜Si基板を使用した。
2インチSi基板(厚さ400μm)の中心に直径5mmの領域を、フォトエッチング技術により厚さ25nmまで超薄膜化した。得られた超薄膜領域に波長が13.5nmのEUV光を照射し、光透過度を測定した。その後、この基板に
図3に示す特殊なスピンチャックを用いて、基板裏面にレジストを塗布した。レジストは、PHS系のEUVレジストを用いた。膜厚は100nmであった。またプリベークは90℃/90秒とした。波長が13.5nmのEUV光を照射し、光透過度を測定した。
図4にEUVレジストの透過率測定結果を示す。
【0018】
実施例2
図5に示す構造の、1mm格子を持つ薄膜Si基板を使用した。この基板では超薄膜領域を格子状にし、強度を保持している。この基板を使用し、実施例1と同様にして厚さ25nmまで超薄膜化した領域を得た。透過率の測定結果を
図6に示す。1mm格子を持つ基板でも、透過率測定は可能であり、実施例1と同じ結果が得られることがわかった。