(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148140
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】局側終端装置及び加入者側終端装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
H04L12/44 200
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-201413(P2013-201413)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-70374(P2015-70374A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】縣 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓仁
【審査官】
速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−187302(JP,A)
【文献】
特開平11−069431(JP,A)
【文献】
特開2012−175525(JP,A)
【文献】
特開2011−146780(JP,A)
【文献】
特開2012−257163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブ光ネットワークの局側終端装置であって、
1つ以上の加入者側終端装置から受信する上り方向の要求帯域を示す情報に基づき、割当周期毎に前記1つ以上の加入者側終端装置に上り方向の帯域を割り当てる割当手段と、
割当周期毎に前記割当手段が割り当てた上り方向の帯域を前記1つ以上の加入者側終端装置に通知する通知手段と、
を備えており、
前記割当手段は、前記1つ以上の加入者側終端装置の内、前記局側終端装置に固定的な割り当てを要求する帯域を示す第1要求信号を送信した第1加入者側終端装置には、前記割当周期内において、複数回、上り方向の信号を送信する機会を割り当てることを特徴とする局側終端装置。
【請求項2】
前記第1加入者側終端装置は、前記局側終端装置との接続開始時に前記第1要求信号を送信した加入者側終端装置であることを特徴とする請求項1に記載の局側終端装置。
【請求項3】
前記割当手段は、前記第1加入者側終端装置から受信した前記第1要求信号が示す帯域を、前記割当周期内で前記第1加入者側終端装置がN回(Nは2以上の整数)に分けて送信する様に帯域を割り当てることを特徴とする請求項1又は2に記載の局側終端装置。
【請求項4】
前記割当手段は、前記N回の送信間隔を、前記割当周期をNで除することで決定することを特徴とする請求項3に記載の局側終端装置。
【請求項5】
前記割当手段は、第1要求信号を受信すると、当該第1要求信号を送信した第1加入者側終端装置が接続している間、各割当周期において当該第1要求信号が示す帯域を、当該第1加入者側終端装置に割り当てることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の局側終端装置。
【請求項6】
前記割当手段は、第1要求信号を受信すると、当該第1要求信号が示す帯域と、既に前記パッシブ光ネットワークに接続している他の第1加入者側終端装置から受信した第1要求信号が示す帯域との合計帯域を前記割当周期内で伝送できるかを判定し、伝送できない場合には当該第1要求信号を送信した第1加入者側終端装置に割り当て不可を示す情報を送信することを特徴とする請求項5に記載の局側終端装置。
【請求項7】
前記割当手段は、前記1つ以上の加入者側終端装置の前記第1加入者側終端装置以外の第2加入者側終端装置から第2要求信号で受信した上り方向の要求帯域に基づき、前記割当周期内の前記第1要求信号に基づき割り当てた帯域以外の帯域を、前記第2加入者側終端装置に割り当てることを特徴とする請求項5又は6に記載の局側終端装置。
【請求項8】
前記割当手段は、前記第1加入者側終端装置及び前記第2加入者側終端装置から第2要求信号で受信した上り方向の要求帯域に基づき、前記割当周期内の前記第1要求信号に基づき割り当て帯域以外の帯域を、前記第1加入者側終端装置及び前記第2加入者側終端装置に割り当てることを特徴とする請求項7に記載の局側終端装置。
【請求項9】
パッシブ光ネットワークの加入者側終端装置であって、
上り方向において、固定的な割り当てを要求する帯域を示し、かつ、当該帯域について割当周期内で複数回の送信機会を要求する第1要求信号を局側終端装置に送信する要求手段を有することを特徴とする加入者側終端装置。
【請求項10】
前記要求手段は、前記第1要求信号を前記局側終端装置との接続開始時に送信することを特徴とする請求項9に記載の加入者側終端装置。
【請求項11】
前記要求手段は、前記第1要求信号が示す帯域を超える帯域を必要とする場合には、前記第1要求信号が示す帯域を超えた帯域を第2要求信号で前記局側終端装置に通知することを特徴とする請求項9又は10に記載の加入者側終端装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パッシブ光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)における帯域割当技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示する様に、光アクセスシステムとして、PONが利用されている。PONにおいては、1つの局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が、光カップラを介して1つ以上の加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)と通信する。このとき、OLTは、上り方向、つまり、ONUからOLT方向への通信において各ONUが送信する光信号が衝突しない様に、各ONUに、各ONUの送信タイミング及び期間、つまり、伝送帯域を割り当てる。
【0003】
この上り方向の伝送帯域の割り当ては、割当周期を単位として行われる。具体的には、各ONUは、送信データが有る場合、OLTに送信データ量を示す情報を含む要求信号を送信する。OLTは、所定期間に受信した要求信号に基づき、次の割当周期において、要求信号を送信したONUに割り当てる帯域を、要求信号に含まれる送信データ量に基づき決定する。そして、各ONUに割り当てた帯域を割当信号で各ONUに通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−146780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PONのONUは、OLTに送信するデータを端末から受信すると、自装置が要求信号を送信できるタイミングに要求信号をOLTに送信し、次の割当周期においてOLTから帯域の割り当てを受けると、指定されたタイミングにおいてデータを指定された期間だけ送信する。このため、ONUがデータを端末より受信してからOLTに向けて送信するまでの時間に相当する伝送遅延がONUにおいて生じる。この遅延量は、ONUが端末からデータを受信したタイミングと、ONUが要求信号をOLTに送信できるタイミング等によって変動するが、概ね割当周期の1から2倍程度の値となる。
【0006】
この遅延量を低減するために、割当周期を短くすることを考えることができる。しかしながら、PONの国際規格では、OLTとONUとの距離として最大20kmをサポートする必要がある。しかしながら、20kmの光ファイバを光信号が伝搬するには約50μ秒の時間がかかり、よって、割当周期を100μ秒以下には設定できない。また、割当周期を短くすると、通知信号及び割当信号の伝搬遅延の影響により伝送帯域の利用効率が減少する。
【0007】
特許文献1は、ONUにおける伝送遅延を抑えるために、固定帯域で契約したユーザに対応するONUには、各割当周期において、契約した固定帯域に対応する量のデータの送信機会を1回割り当てる構成を開示している。特許文献1の構成においてONUで生じる伝送遅延、つまり、ONUがOLTに送信するデータをバッファする期間は、データの受信タイミングと、送信機会のタイミングに依存するが、割当周期以下に抑えることができる。しかしながら、ONUにおける伝送遅延をさらに抑えることが求められている。
【0008】
本発明は、パッシブ光ネットワークにおいて、上り方向の伝送遅延を抑える局側終端装置及び加入者側終端装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、パッシブ光ネットワークの局側終端装置
は、1つ以上の加入者側終端装置から受信する上り方向の要求帯域を示す情報に基づき、割当周期毎に前記1つ以上の加入者側終端装置に上り方向の帯域を割り当てる割当手段と、割当周期毎に前記割当手段が割り当てた上り方向の帯域を前記1つ以上の加入者側終端装置に通知する通知手段と、を備えており、前記割当手段は、前記1つ以上の加入者側終端装置の
内、前記局側終端装置に固定的な割り当てを要求する帯域を示す第1要求信号を送信した第1加入者側終端装置には、前記割当周期内において、複数回、上り方向の信号を送信する機会を割り当てることを特徴とする。
【0010】
本発明の一側面によると、パッシブ光ネットワークの加入者側終端装置
は、上り方向
において、固定的な割り当てを要求する帯域を示し、かつ、当該帯域について割当周期内で複数回の送信機会を要求する
第1要求信号を局側終端装置に送信する要求手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
パッシブ光ネットワークにおいて、上り方向の伝送遅延を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】一実施形態による帯域割当のフローチャート。
【
図5】一実施形態による局側及び加入者側終端装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。また、以下の実施形態は例示であり本発明の範囲を実施形態の内容に限定するものではない。なお、以下の説明は、上り方向、つまり、ONUからOLT方向の伝送についてのものである。
【0014】
図1は、一実施形態によるPONの構成図である。
図1では、局側終端装置(OLT)1は、スプリッタ2を介して複数の加入者側終端装置(ONU)31、32、33と接続している。ここで、
図1のONU31及びONU32は、固定的な帯域の割り当てを要求し、ONU33は、固定的な帯域の割り当てを要求せず、データ送信が必要となる度に要求信号により、帯域の割り当てをOLT1に要求するものとする。この場合、OLT1は、ONU31及び32については、要求する固定的な帯域に相当する量のデータを送信するための、各割当周期における送信タイミングと送信期間を決定してONU31及び32に通知する。そして、ONU31及び32は、この通知された送信タイミングから、通知された送信期間においては、OLT1に要求信号を送ることなく、常に、データを送信することができる。なお、本実施形態においては、固定的な割り当てを要求された帯域のために、OLT1は、各割当周期における送信機会をN回(Nは2以上の整数)だけONUに割り当てる。以下では、Nを2として説明を行う。
【0015】
図2は、OLT1が割り当てた帯域を示している。
図2に示す様に、ONU31及び32には、各割当周期において2回の送信機会を与えている(図中ではそれぞれ固定割当と表記)。また、固定的に割り当てた帯域以外の帯域は、要求信号に基づいて割り当てを決定する。なお、ONU31及び32は、固定的な帯域の割り当てを受けているが、さらに、追加の帯域を要求信号によりOLT1に要求することができる。
【0016】
図3は、固定的な帯域の割り当てを要求するONUとOLTとの間の通信のシーケンス図である。ONUは、S1で、OLTと光ファイバ経由で接続し初めて通信する際に、S2で、固定帯域要求信号をOLTに送信する。なお、固定帯域要求信号には、固定的な割り当てを要求する帯域を示す情報を含んでいる。なお、固定的な帯域を示す情報とは、例えば、単位時間当たりのデータ量を示す情報である。OLTは、S3で、割当周期において伝送可能な全データ量(帯域)と、既に固定的な帯域として他のONUに割り当てたデータ量(帯域)に基づき、新たに固定的な帯域の割り当てを要求したONUに帯域を割り当てることができるかを判定する。具体的には、割当周期において伝送可能な全データ量をAとし、既に固定的な帯域として他のONUに割り当てたデータ量(帯域)の合計値をBとし、新たに固定的な帯域の割り当てを要求したONUの要求帯域をCとすると、A−BがC以上であれば、割り当て可能と判定する。
【0017】
OLT1は、割り当て可能である場合、S4で、固定帯域割当信号をONUに送信する。この固定帯域割当信号には、ONUの送信タイミングと送信期間の情報が含まれている。なお、上述した様に、本実施形態では、この送信タイミングを1割当周期内にN回(本例ではN=2)設定する。つまり、OLT1は、ONUが接続している間、各割当周期における当該ONUの複数の送信タイミング及び期間を割り当てる。このとき、OLT1は、1割当周期の期間がTであるとすると、複数の送信タイミング間の期間がT/Nとなる様に設定することができる。また、各送信タイミングで送信するデータ量もC/Nと均等に設定することができる。
【0018】
その後、各割当周期において、ONUは、固定帯域割当信号で通知された送信タイミングから通知された送信期間だけデータを送信できる。なお、
図3の割当信号とは、各割当周期の最初に送信され、対応する割当周期における各ONUの送信タイミング及び期間を示す信号である。なお、固定的に割り当てた帯域については、割当信号で通知しても通知しなくても良い。
図3において、ONUは、割当周期#k+1において、要求信号を送信し、追加の帯域をOLT1に要求する。これは、必要な帯域が、固定的な割り当てを受けた帯域を超えた場合に生じ、追加で要求する帯域は、必要な帯域と固定的な割り当てを受けた帯域との差である。OLT1は、割当周期#k+2の開始時の割当信号で、割当周期#k+1において要求信号において要求された帯域に基づき割り当てた帯域をONUに通知し、よって、ONUは、割当周期#k+2において、固定的に割り当てられた送信タイミング(2回)以外に、さらに、1回の送信機会を得ている。なお、固定的な帯域の割り当てを要求しないONUは、要求信号により帯域を要求し、割当信号に従いデータを送信する。
【0019】
図4は、帯域割当のフローチャートである。OLT1は、S10で固定帯域要求信号を受信すると、S11で、既に説明した様に割当可能であるかを判定する。割り当て可能であると、S12で、割当周期内の送信タイミング及び送信期間を決定し、S13で、固定帯域要求信号を送信したONUを宛先として固定帯域割当信号を送信する。一方、割当不可であると、その旨を、固定帯域要求信号を送信したONUに通知する。OLT1は、S15において、各ONUからの要求信号に基づき、割当周期内の固定的に割り当てた帯域以外の帯域の割り当てを行い、S16で各ONUに送信タイミング及び期間を通知する。その後、OLT1はS10からの処理を繰り返す。
【0020】
本実施形態では、固定帯域を要求するONUに対しては各割当周期において複数回の送信機会を与える。したがって、ONUがOLTに送信するデータをバッファする期間は平均的に短くなり、伝送遅延を抑えることができる。例えば、Nを2とすると、伝送遅延の最大値は割当周期の半分程度に抑えることができる。また、ONUは、固定帯域要求信号により固定帯域を要求し、OLTは、要求の都度、固定帯域の割り当てが可能であるかを判定する。この構成により、固定帯域を要求するONUと、固定帯域を要求しないONUを混在させることができる。なお、
図3のシーケンスにおいて、ONUはOLTと初めて接続したときに固定帯域要求信号を送信するものとしたが、接続後であっても、ONUを操作することで、固定帯域要求信号を送信する構成とすることができる。
【0021】
図5(A)は、OLT1の概略的な構成図である。通信部13は、ONUと光信号の送受信を行う。なお、ONUに送信するデータは図示しない処理部から取得し、ONUから受信したデータは、当該処理部に出力する。割当部11は、固定帯域要求信号及び要求信号に基づき帯域の割り当てを行う。なお、固定帯域要求信号を受信した際には、割当可否の判定も行う。また、通知部12は、割り当て結果をONUに通知する。
【0022】
図5(B)は、ONU31の概略的な構成図である。なお、ONU32及び33についても同様である。通信部13は、OLTと光信号の送受信を行う。なお、OLTに送信するデータは図示しない処理部から取得し、OLTから受信したデータは、当該処理部に出力する。要求部311は、固定的な割り当てを要求するか否かを示す情報と、固定的な割り当てを要求する場合にはその要求帯域を示す情報を保持している。そして、要求部311は、OLT1と初めて通信する際や、固定的な割り当てを要求するか否かを示す情報が、しないからするに変更されたときに、要求帯域を含む固定帯域要求信号をOLT1に送信する。また、要求部311は、図示しない処理部が保持するOLT1に送信するデータ量に基づき、要求信号を送信できる所定のタイミングにおいて要求信号を送信する。通信部310は、OLT1から受信する固定帯域割当信号及び割当信号で示される送信スケジュールに従いデータを送信する。
【0023】
なお、上記実施形態でONUは、固定帯域要求信号により、固定的な帯域の割り当てを要求する装置であることと、その要求帯域をOLTに通知したが、固定的な帯域の割り当てを要求する装置であることOLTに示す信号と、その際の要求帯域を示す信号を異なるものとしても良い。