(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係る金属多孔体は、ニッケル(Ni)とスズ(Sn)と鉄(Fe)とを含む三次元網目状構造を有する金属多孔体であって、前記スズの含有量が1質量%以上、25質量%以下であり、前記鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下である金属多孔体、である。
なお、以下では「三次元網目状構造を有する金属多孔体」のことを単に「金属多孔体」とも記す。
【0012】
上記(1)に記載の金属多孔体は、耐熱性と機械的強度に優れる金属多孔体である。このため、高温環境下で静置して用いるフィルターの濾材や、電池、キャパシタ等の電気化学デバイスの集電体として好ましく用いることができる。また、後述するように、製造コストが安く、連続生産に適した方法によって得ることができる。
なお、上記本発明の金属多孔体は、スズの含有量が1質量%以上、25質量%以下、鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下であり、残余の金属成分はニッケルであることが好ましいが、不可避的不純物として他の金属成分を含んでいても構わない。また、耐熱性、機械的強度に優れるという本発明の金属多孔体の効果を損なわない範囲において意図的に他の成分を含有していても構わない。
【0013】
(2)また、本発明の実施形態に係る金属多孔体は、Ni
3Snの含有量が1質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
本発明者等が種々検討を重ねた結果、ニッケルとスズとの合金からなる金属多孔体の場合には、金属間化合物としてNi
3Snが形成されていると金属多孔体の強度が増して硬くなるものの脆く崩れ易くなってしまうが、骨格中に鉄成分が含まれていると脆化が抑制されることを見出した。すなわち、金属多孔体の骨格中にNi
3Snが形成されていることによって機械的強度を増し、更に、鉄成分が含まれていることによって骨格が脆くなることを抑制することができる。
【0014】
(3)本発明の実施形態に係る金属多孔体の製造方法は、三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面を導電化処理する工程と、前記樹脂成形体に、ニッケルめっき層、スズめっき層、及び鉄めっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、を含む金属多孔体の製造方法である。
上記(3)に記載の金属多孔体の製造方法は、全ての金属成分を電解めっきによって形成することができるため連続的に製造することができ、量産性に優れた製造方法である。また、樹脂成形体の表面に形成する各金属のめっき層の形成順序は限定されるものではなく、ニッケルめっき層、スズめっき層、鉄めっき層をどの順に形成しても構わない。しかしながら、前記金属多孔体はスズ及び鉄の含有量に比べてニッケルの含有量が多いため、めっき後の基材のハンドリングを考慮すると、ニッケルめっき層を最初に形成することが好ましい。
【0015】
(4)本発明の実施形態に係る金属多孔体の製造方法は、三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面を導電化処理する工程と、前記樹脂成形体に、ニッケルめっき層、及びスズと鉄との合金めっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、を含む金属多孔体の製造方法である。
上記(4)に記載の金属多孔体の製造方法は、ニッケルめっき層の表面にスズと鉄との合金めっき層を形成する工程を含むため、めっき工程を少なくすることができ、より低コストで金属多孔体を提供することができる。また、樹脂成形体の表面に形成する金属のめっき層の形成順序は限定されるものではなく、ニッケルめっき層、スズと鉄との合金めっき層のどちらを先に形成しても構わない。
【0016】
(5)本発明の実施形態に係る金属多孔体の製造方法は、三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面を、スズを含む導電処理材によって導電化処理する工程と、前記樹脂成形体に、ニッケルめっき層、及び鉄めっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、を含む金属多孔体の製造方法である。
上記(5)に記載の金属多孔体の製造方法は、樹脂成形体の表面を導電化処理する際にスズを含む導電処理材を使用するため、その後にスズめっき層を形成する工程が不要となる。このため、より低コストで金属多孔体を提供することができるようになる。また、樹脂成形体の表面に形成する金属のめっき層の形成順序は限定されるものではなく、ニッケルめっき層、鉄めっき層のどちらを先に形成しても構わない。しかしながら、前記金属多孔体は鉄の含有量に比べてニッケルの含有量の方が多いため、めっき後の基材のハンドリングを考慮すると、ニッケルめっき層を最に形成することが好ましい。
【0017】
(6)本発明の実施形態に係る金属多孔体の製造方法は、三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面を、スズを含む導電処理材によって導電化処理する工程と、前記樹脂成形体の表面にニッケルと鉄との合金めっき層を形成する工程と、前記ニッケルと鉄との合金めっき層を形成した樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、を含む金属多孔体の製造方法、である。
上記(6)に記載の金属多孔体の製造方法は、樹脂成形体の表面を導電化処理する際にスズを含む導電処理材を使用するため、その後にスズめっき層を形成する工程が不要である。更に、ニッケルと鉄との合金めっき層を形成する工程を含むため、めっき工程が1回だけにすることができる。このため、上記(4)、(5)に記載の製造方法よりも更に低コストで金属多孔体を提供することができる。
【0018】
また、本発明の実施形態に係る金属多孔体は、更に以下の(i)〜(iv)に記載の製造方法によっても得ることができる。
【0019】
(i)三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面を、鉄を含む導電処理材によって導電化処理する工程と、
前記樹脂成形体に、ニッケルめっき層、スズめっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、
を含む金属多孔体の製造方法。
【0020】
上記(i)に記載の金属多孔体の製造方法は、樹脂成形体の表面を導電化処理する際に鉄を含む導電処理材を使用するため、その後に鉄めっき層を形成する工程が不要となる。このため、より低コストで金属多孔体を提供することができるようになる。また、樹脂成形体の表面に形成する金属のめっき層の形成順序は限定されるものではなく、ニッケルめっき層、スズめっき層のどちらを先に形成しても構わない。しかしながら、前記金属多孔体はスズの含有量に比べてニッケルの含有量の方が多いため、めっき後の基材のハンドリングを考慮すると、ニッケルめっき層を最に形成することが好ましい。
【0021】
(ii)三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面を、スズと鉄を含む導電処理材によって導電化処理する工程と、
前記樹脂成形体の表面にニッケルめっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、
を含む金属多孔体の製造方法。
【0022】
上記(ii)に記載の金属多孔体の製造方法は、樹脂成形体の表面を導電化処理する際にスズと鉄を含む導電処理材を使用するため、その後にスズめっき層、鉄めっき層を形成する工程が不要である。このため、樹脂成形体の表面にはニッケルめっき層を形成するのみでよいためめっき工程が1回で済み、低コストで金属多孔体を提供することができる。
【0023】
(iii)三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面にスズをスパッタリングすることによって導電化処理する工程と、
前記樹脂成形体に、ニッケルめっき層、鉄めっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、
を含む金属多孔体の製造方法。
【0024】
上記(iii)に記載の金属多孔体の製造方法は、樹脂成形体の表面にスズをスパッタリングすることによって樹脂成形体を導電化処理するため、その後にスズめっき層を形成する工程が不要となる。このため、より低コストで金属多孔体を提供することができるようになる。また、樹脂成形体の表面に形成する金属のめっき層の形成順序は限定されるものではなく、ニッケルめっき層、鉄めっき層のどちらを先に形成しても構わない。しかしながら、前記金属多孔体は鉄の含有量に比べてニッケルの含有量の方が多いため、めっき後の基材のハンドリングを考慮すると、ニッケルめっき層を最に形成することが好ましい。
【0025】
(iv)三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面に鉄をスパッタリングすることによって導電化処理する工程と、
前記樹脂成形体に、ニッケルめっき層、スズめっき層を形成して樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体を熱処理してニッケルとスズと鉄とを拡散させる工程と、
を含む金属多孔体の製造方法。
【0026】
上記(iv)に記載の金属多孔体の製造方法は、樹脂成形体の表面に鉄をスパッタリングすることによって樹脂成形体を導電化処理するため、その後に鉄めっき層を形成する工程が不要となる。このため、より低コストで金属多孔体を提供することができるようになる。また、樹脂成形体の表面に形成する金属のめっき層の形成順序は限定されるものではなく、ニッケルめっき層、スズめっき層のどちらを先に形成しても構わない。しかしながら、前記金属多孔体はスズの含有量に比べてニッケルの含有量の方が多いため、めっき後の基材のハンドリングを考慮すると、ニッケルめっき層を最に形成することが好ましい。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る金属多孔体の具体例を以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0028】
<金属多孔体>
本発明の実施形態に係る金属多孔体は、三次元網目状構造を有する金属多孔体であってニッケルと、スズと、鉄とを含むものである。金属多孔体の骨格構造を三次元網目状構造にするためには、例えば、前述の製造方法のように三次元網目状構造を有する樹脂多孔体の表面に各金属層を形成するという方法により金属多孔を製造すればよい。
【0029】
前記金属多孔体はスズを含んでいることによって、ニッケル多孔体に比べて耐熱性と機械的強度が向上している。特に、金属多孔体の製造工程において金属間化合物であるNi
3Snが形成されると金属多孔体が硬くなるという効果が得られる。また、Ni
3Snが多く形成されると金属多孔体は硬くなるものの脆くなる傾向にあるが、本発明の実施形態に係る金属多孔体は鉄を含んでいることにより金属組織が変化し、この脆化を抑制することができる。従って、本発明の実施形態に係る金属多孔体は、硬く、かつ、圧縮や引張り等にも強いという効果を奏する。
【0030】
前記金属多孔体におけるスズの含有量は1質量%以上、25質量%以下である。スズの含有量が1質量%未満であると金属多孔体の耐熱性を向上させるという効果が充分に得られなくなる。また、スズの含有量が25質量%を超えると、金属多孔体の製造工程において形成されるNi
3Snの量が多くなり過ぎてしまい、鉄による脆化の抑制の効果が充分に得られなくなってしまう。
上記のような観点から、前記金属多孔体におけるスズの含有量は3質量%以上、20質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上、18質量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
前記金属多孔体における鉄の含有量は5質量%以上、25質量%以下である。鉄の含有量が5質量%未満であると、Ni
3Snによる脆化を抑制するという効果が充分に得られなくなってしまう。また、鉄の含有量が25質量%を超えると耐熱性が低下してしまう。
上記のような観点から、前記金属多孔体における鉄の含有量は7質量%以上、22質量%以下であることがより好ましく、9質量%以上、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0032】
本発明の実施形態に係る金属多孔体においては、骨格中におけるNi
3Snの含有量が1質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。Ni
3Snの含有量が1質量%以上であることにより金属多孔体を充分に硬くすることができる。また、Ni
3Snの含有量が30質量%以下であることにより、金属多孔体が脆化し過ぎて骨格が崩れてしまうことを抑制することができる。このような観点から、前記金属多孔体におけるNi
3Snの含有量は3質量%以上、25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上、20質量%以下であることが更に好ましい。
なお、金属多孔体におけるNi
3Snの含有量(質量%)は、例えば、X線回折法(XRD)により測定したピークの高さの比率により定量することができる。
【0033】
本発明の実施形態に係る金属多孔体は、前述のようにスズ及び鉄以外の残余の金属成分はニッケルであることが好ましいが、不可避的に不純物を含有していたり、あるいは、本発明の金属多孔体の効果を損なわない範囲において意図的に他の金属成分を含有していたりいても構わない。
他の金属成分を意図的に含有させる場合としては、例えば、耐熱性や機械的強度を向上させることを目的として、タングステン(W)を含有させてもよい。
【0034】
<金属多孔体の使用例>
前記本発明の実施形態に係る金属多孔体は、様々な用途に利用することが可能であり、例えば、電気化学デバイス用の集電体や電極、触媒担持体、フィルター、熱交換器などが挙げられる。
【0035】
<金属多孔体の製造方法>
本発明実施形態に係る金属多孔体は種々の方法によって製造することができ、その製造方法としては、例えば、前記(3)〜(6)や前記(i)〜(iv)に記載の方法が挙げられる。
以下に、前記製造方法についてより詳細に説明する。
【0036】
(三次元網目状構造を有する樹脂成形体)
三次元網目状構造を有する樹脂成形体としては多孔性のものであればよく公知又は市販のものを使用でき、樹脂製の発泡体、不織布、フェルト、織布などを用いることができる。また、必要に応じてこれらを組み合わせて用いることもできる。素材としては特に限定されるものではないが、金属をめっきした後焼却処理により除去できるものが好ましい。また、樹脂成形体の取扱い上、特にシート状のものにおいては剛性が高いと折れるので柔軟性のある素材であることが好ましい。
【0037】
前記樹脂成形体としては樹脂発泡体を用いることが好ましい。樹脂発泡体としては発泡ウレタン、発泡スチレン、発泡メラミン樹脂等が挙げられるが、これらの中でも、特に多孔度が大きい観点から、発泡ウレタンが好ましい。
【0038】
樹脂成形体の多孔度は限定的でなく、通常60%以上、97%以下程度、好ましくは80%以上、96%以下程度である。樹脂成形体の厚みは限定的でなく、得られる金属多孔体の用途に応じて適宜決定されるが、通常300μm以上、5000μm以下程度、好ましくは400μm以上、2000μm以下程度とすればよい。
以下では、三次元網目状構造を有する樹脂成形体として発泡状樹脂を用いた場合を例にとって説明する。
【0039】
(導電化処理)
導電化処理は、樹脂成形体の表面に導電性を有する層を設けることができる限り、特に限定されるものではない。導電性を有する層(導電被覆層)を構成する材料としては、例えば、ニッケル、銅、スズ、鉄、タングステン、チタン、ステンレススチール等の金属の他、カーボン粉末等が挙げられる。
導電化処理の具体例としては、例えばニッケル、スズ、鉄などの金属を用いる場合は、無電解めっき処理、スパッタリングや蒸着・イオンプレーティングなどの気相処理等が好ましく挙げられる。また、ステンレススチール等の合金金属、黒鉛などの材料を用いる場合は、これら材料の微粉末にバインダを加えて得られる混合物を、樹脂成形体の表面に塗着する処理が好ましく挙げられる。
【0040】
ニッケルを用いた無電解めっき処理は、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを含有した硫酸ニッケル水溶液等の公知の無電解ニッケルめっき浴に発泡状樹脂を浸漬することによって行うことができる。必要に応じて、めっき浴浸漬前に、樹脂成形体を微量のパラジウムイオンを含む活性化液(カニゼン社製の洗浄液)等に浸漬してもよい。
【0041】
ニッケル、スズ又は鉄を用いたスパッタリング処理としては、例えば、まず、基板ホルダーに樹脂成形体を取り付けた後、不活性ガスを導入しながらホルダーとターゲット(ニッケル、スズ又は鉄)との間に直流電圧を印加する。これによりイオン化した不活性ガスをニッケル、スズ又は鉄に衝突させて、吹き飛ばしたニッケル粒子、スズ粒子又は鉄粒子を樹脂成形体表面に堆積すればよい。
【0042】
カーボン粉末等の導電性塗料を塗布する場合には、前記樹脂成形体の表面に導電性を有する粉末(例えば、ステンレススチール等の金属材料の粉末、結晶質のグラファイト、非晶質のカーボンブラック等のカーボンの粉末)とバインダとの混合物を塗着する方法等が挙げられる。また、このときに、スズ粉末とカーボン粉末とを用いたり、鉄粉末とカーボン粉末とを用いたりしてもよい。この場合には、スズ粉末あるいは鉄粉末の量を金属多孔体におけるスズの含有量が1質量%以上、15質量%以下、鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下となるようにすれば、後のスズめっき工程あるいは鉄めっき工程が不要となる。
【0043】
導電被覆層の目付量(付着量)は、後の工程のニッケルめっき、スズめっき又は鉄めっきの目付け量と合わせた最終的な金属組成として、スズの含有量が1質量%以上、15質量%以下、鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下となるように調整すればよい。
導電被覆層にニッケルを用いる場合は樹脂成形体表面に連続的に形成されていればよく、目付量は限定的でないが、通常5g/m
2以上、15g/m
2以下程度、好ましくは7g/m
2以上、10g/m
2以下程度とすればよい。
【0044】
(電解ニッケルめっき工程)
電解ニッケルめっき処理は、常法に従って行えばよい。電解ニッケルめっき処理に用いるめっき浴としては、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴等が挙げられる。
前記の無電解めっきやスパッタリングにより表面に導電層を形成された樹脂構造体をめっき浴に浸し、樹脂構造体を陰極に、ニッケル対極板を陽極に接続して直流或いはパルス断続電流を通電させることにより、導電層上に、さらにニッケルの被覆を形成することができる。
電解ニッケルめっき層の目付量は、金属多孔体の最終的な金属組成としてスズの含有量が1質量%以上、15質量%以下となるように調整すればよい。
【0045】
(スズめっき工程)
樹脂構造体にスズめっき層を形成する工程は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、硫酸浴としてを、硫酸第一スズ 55g/L、硫酸 100g/L、クレゾールスルホン酸 100g/L、ゼラチン 2g/L、βナフトール 1g/Lの組成のめっき浴を用意し、陰極電流密度を2A/dm
2、陽極電流密度を1A/dm
2以下とし、温度を20℃、攪拌(陰極揺動)を2m/分とすることで、スズめっき層の形成を行うことができる。
スズめっきの目付量は、金属多孔体の最終的な金属組成としてスズの含有量が1質量%以上、15質量%以下となるように調整すればよい。
【0046】
スズめっきの密着性を向上させるため、直前にストライクニッケルめっきを行って、金属多孔体の表面酸化膜を除去し、乾燥させずに濡れたままスズめっき液に投入することが望ましい。これによりめっき層の密着性を高めることができる。
ストライクニッケルめっきの条件は、例えば次のようにすることができる。すなわち、ウッドストライクニッケル浴として、塩化ニッケル 240g/L、塩酸(比重1.18程度のもの) 125ml/Lの組成のものを用意し、温度を室温にして、陽極にニッケルまたはカーボンを用いることで行うことができる。
【0047】
以上のめっき手順をまとめると、エースクリーンによる脱脂(陰極電解脱脂5A/dm
2×1分)、湯洗、水洗、酸活性(塩酸浸漬1分)、ウッドストライクニッケルめっき処理(5〜10A/dm
2×1分)、洗浄して乾燥させずにスズめっきへ処理、水洗・乾燥、となる。
【0048】
(鉄めっき工程)
樹脂構造体にスズめっき層を形成する工程は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、めっき浴としては、例えば、FeCl
2・4H
2Oを2.00mol/L、CaCl
2を1.5mol/L、サッカリンを10mmol/L、CH
3(CH
2)
6CH
2OSO
3Naを0.30mmol/Lの電気鉄めっき液を使用することができる。なお、この例では、サッカリンは応力緩和剤として、ラウリル硫酸ナトリウムは水素ガス脱泡剤として添加するものである。また、めっき液のpHは2に調整し、浴温は50℃程度にすればよい。
鉄めっきの目付量は、金属多孔体の最終的な金属組成として鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下となるように調整すればよい。
【0049】
(スズと鉄との合金めっき工程)
樹脂構造体にスズと鉄の合金めっき層を形成する工程は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、めっき浴としては、例えば、SnSO
4を0.1mol/L、FeSO
4を0.05mol/L、グルコン酸ナトリウム0.3mol/L、ポリエチレングリコール1g/Lのスズ鉄合金めっき液を使用することができる。また、pHは4に調整し、浴温は30℃程度にすればよい。
スズと鉄との合金めっきの目付量は、金属多孔体の最終的な金属組成として、スズの含有量が1質量%以上、25質量%以下であり、鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下となるように調整すればよい。
【0050】
(ニッケルと鉄との合金めっき工程)
樹脂構造体にニッケルと鉄との合金めっき層を形成する工程は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、めっき浴としは、例えば、塩化ニッケル(II)170mmol/L、硫酸ニッケル(II)80mmol/L、硫酸鉄(II)11mmol/L、ホウ酸404mmol/L、塩化アンモニウム187mmol/L、サッカリン5.5mmol/Lのニッケル鉄電気めっき液を使用することができる。また、pHは2.5に調整し、浴温は30℃程度にすればよい。
ニッケルと鉄との合金めっきの目付量は、金属多孔体の最終的な金属組成として、スズの含有量が1質量%以上、25質量%以下であり、鉄の含有量が5質量%以上、25質量%以下であり、残部がニッケルとなるように調整すればよい。
【0051】
(めっき時のめっき液の循環)
三次元網目状構造を有する樹脂成形体のような基材へのめっきは、一般的に内部へ均一にめっきすることが難しい。内部への未着を防いだり、内部と外部のめっき付着量の差を低減したりするために、めっき液を循環させることが好ましい。循環の方法としては、ポンプを使用したり、めっき槽内部にファンを設置したりするなどの方法がある。また、これらの方法を用いて樹脂成形体にめっき液を吹き付けたり、吸引口に樹脂成形体を隣接させたりすると、樹脂成形体の内部にめっき液の流れができやすくなって効果的である。
【0052】
(樹脂成形体の除去)
表面に金属めっき層が形成された樹脂構造体から基材として用いた樹脂成形体を除去する方法は限定的でなく、薬品による処理や、焼却による燃焼除去の方法が挙げられる。焼却による場合には、例えば、600℃程度以上の大気等の酸化性雰囲気下で加熱すればよい。
得られた金属多孔体を還元性雰囲気下で加熱処理して金属を還元することにより、ニッケルとスズと鉄とを含む金属多孔体が得られる。
【0053】
(熱処理)
金属めっき後そのままでは、金属多孔体の骨格表面の大部分がニッケルにより形成されていることがあるため、熱処理を行ってスズ成分及び鉄成分を拡散させることが必要である。スズ及び鉄の拡散は不活性雰囲気(減圧や、窒素・アルゴンなど)あるいは還元雰囲気(水素)で行うことができる。
この熱処理工程ではスズ成分及び鉄成分をニッケルめっき層中に充分に拡散させて、金属多孔体骨格の表側と内側のスズあるいは鉄の濃度比が、表側濃度/内側濃度が2/1以上、1/2以下の範囲になるようにすることが好ましい。前記濃度比は、より好ましくは3/2以上、2/3以下であり、更に好ましくは4/3以上、3/4以下であり、最も好ましくは均一に拡散させることである。
【0054】
前記熱処理温度は、低すぎると拡散に時間がかかり、高すぎると軟化して自重で多孔体構造を損なう可能性があるため、300℃以上、1200℃以下の範囲で行うことが好ましい。前記熱処理温度は、より好ましくは500℃以上、1150℃以下であり、更に好ましくは700℃以上、1100℃以下である。
【0055】
(金属目付量)
導電被覆層、ニッケルめっき層、スズめっき層、鉄めっき層を形成した後の金属目付量の合計量としては、金属多孔体の用途に応じて適宜変更すればよいが、例えば、200g/m
2以上、2000g/m
2以下とすることが好ましい。より好ましくは300g/m
2以上、1200g/m
2以下であり、更に好ましくは400g/m
2以上、1000g/m
2以下である。金属目付量の合計量を200g/m
2以上とすることで金属多孔体の強度を充分にすることができる。また、金属目付量の合計量を2000g/m
2以下とすることで、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0056】
(孔径)
金属多孔体の平均孔径は金属多孔体の用途に応じて適宜変更すればよいが、例えば、150μm以上、1000μm以下とすることが好ましい。より好ましくは300μm以上、700μm以下であり、更に好ましくは350μm以上、600μm以下である。その他集電体として使用する場合は150μm以上、1000μm以下が好ましい。より好ましくは200μm以上、700μm以下であり、更に好ましくは300μm以上、600μm以下である。
なお、平均孔径は金属多孔体のセル数の逆数から求めた値である。セル数は、金属多孔体表面に長さ1インチの線を引いたときに、線と交差する最表面のセルの数を数えた数値であり、単位は個/インチである。但し、1インチは2.54センチメートルとする。
【0057】
(金属多孔体の組成の確認)
誘導結合プラズマ(Inductively CoupledPlasma:ICP)を利用した定量測定を行い、含有元素の質量%を求めることができる。
【0058】
(スズ及び鉄の拡散確認)
金属多孔体について、断面からのエネルギー分散型X線分析(Energy DispersiveX-ray spectroscopy:EDX)測定を行い、骨格表側と骨格内側のスペクトルを比較することにより、スズ及び鉄の拡散状態を確認することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明の金属多孔体等はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0060】
<金属多孔体の製造>
[金属多孔体1]
(三次元網目状構造を有する樹脂成形体の導電化処理)
三次元網目状構造を有する樹脂成形体として、2.0mm厚のポリウレタンシート(セル数27〜33個/inch、平均セル径900μm、気効率94体積%)を用いた。このポリウレタンシートの表面を導電化するために、粒径0.01〜0.2μmの非晶性炭素であるカーボンブラック100gを0.5Lの10%アクリル酸エステル系樹脂水溶液に分散した導電性塗料を作製した。そして、前記ポリウレタンシートを前記塗料に連続的に漬け、ロールで絞った後に乾燥させることで前記ポリウレタンシータに導電化処理を施した。これによりポリウレタンシート(三次元網目状構造を有するシート状の樹脂成形体)の表面に導電被覆層が形成された。
【0061】
(ニッケルめっき)
上記の様にして表面を導電化したポリウレタンシートに、目付け374g/m
2のニッケルめっきを施し、ニッケルめっき層を形成した。めっき液としては、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いた。スルファミン酸浴は、スルファミン酸ニッケル450g/Lと硼酸30g/Lの濃度の水溶液で、pHを4に調製した。そして、温度を55℃とし、電流密度を20ASD(A/dm
2)としてニッケルめっきを行った。これによりニッケルを含む樹脂構造体が得られた。
【0062】
(スズめっき)
上記で作製したニッケルを含む樹脂構造体の表面に目付け162g/m
2のスズめっきを施し、スズめっき層を形成した。スズめっき液としては、水1000gに対し、硫酸第一スズ55g/L、硫酸100g/L、クレゾールスルホン酸100g/L、ゼラチン2g/L、βナフトール1g/Lの組成としたものを使用した。また、めっき浴の浴温は20℃とし、陽極電流密度は1A/dm
2とした。めっき液は陰極揺動により2m/分となるように攪拌した。
【0063】
(鉄めっき)
上記で作製したニッケルとスズとを含む樹脂構造体の表面に目付け169g/m
2の鉄めっきを施し、鉄めっき層を形成した。鉄めっき液としては、FeCl
2・4H
2Oを2.00mol/L、CaCl
2を1.5mol/L、サッカリンを10mmol/L、CH
3(CH
2)
6CH
2OSO
3Naを0.30mmol/Lの電気鉄めっき液を使用した。サッカリンは応力緩和剤として、ラウリル硫酸ナトリウムは水素ガス脱泡剤として添加した。めっき液のpHは2に調整し、浴温は50℃とした。
陽極電流密度は1A/dm
2とした。めっき液は陰極揺動により2m/分となるように攪拌した。
【0064】
(樹脂成形体の除去及び金属の拡散)
前記ニッケルとスズと鉄とを含む樹脂構造体を大気中1000℃で15分間加熱することによって基材(ポリウレタンシート)を燃焼除去した。このとき金属多孔体も一部酸化されるため、その後更に、還元(水素)雰囲気で1000℃、20分の条件で還元処理を行った。
EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズ及び鉄は満遍なく拡散していると考えられる。
【0065】
[金属多孔体2]〜[金属多孔体21]
上記の[金属多孔体1]の製造において、ニッケルめっきの目付量、スズめっきの目付量、及び鉄めっきの目付量を下記表1に示す通りにした以外は[金属多孔体1]と同様にして[金属多孔体2]〜[金属多孔体21]を製造した。各めっきの目付量は、所望の組成比のSn及びFeめっきを施した後に約700g/m
2になるように調整した。
なお、[金属多孔体1]〜[金属多孔体13]は実施例であり、[金属多孔体14]〜[金属多孔体21]は比較例である。
【0066】
[金属多孔体22]
(ニッケルめっき)
上記の[金属多孔体1]の製造方法と同様にして、ポリウレタンシートを導電化処理した後、表面に目付け370g/m
2のニッケルめっきを施した。ニッケルのめっきは[金属多孔体1]の製造方法と同様にして行った。
(スズと鉄との合金めっき)
上記で作製したニッケルを含む樹脂構造体の表面に、スズの目付け量が178g/m
2、鉄の目付け量が164g/m
2となるように、スズと鉄の合金めっきを施した。めっき液としては、SnSO
4を0.1mol/L、FeSO
4を0.05mol/L、グルコン酸ナトリウム0.3mol/L、ポリエチレングリコール1g/Lのスズ鉄合金めっき液を使用した。pHは4に調整し、浴温は30℃とし、電流密度は1A/dm
2とした。また、めっき液は陰極揺動により2m/分となるように攪拌した。
(樹脂成形体の除去及び金属の拡散)
上記で得られたニッケルとスズと鉄とを含む樹脂構造体について、基材の燃焼除去と金属の還元処理を、前記[金属多孔体1]の製造方法と同様にして行った。
得られた金属多孔体は、EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズ及び鉄は満遍なく拡散していると考えられる。
【0067】
[金属多孔体23]
上記の[金属多孔体22]の製造において、ニッケルめっきの目付量、スズめっきの目付量、及び鉄めっきの目付量を下記表1に示す通りにした以外は[金属多孔体22]と同様にして[金属多孔体23]を製造した。
【0068】
[金属多孔体24]
(三次元網目状構造を有する樹脂成形体の導電化処理)
[金属多孔体1]の製造において使用したポリウレタンシートを、スズ粉末を含む導電性塗料を用いて導電化処理した以外は[金属多孔体1]と同様にしてポリウレタンシートを導電化処理した。導電性塗料におけるスズ粉末の含有量は6質量%となるようにした。ポリウレタンシート表面のスズの目付けは171g/m
2となった。
(ニッケルめっき)
上記の様にして表面を導電化したポリウレタンシートに、目付け364g/m
2のニッケルめっきを施してニッケルめっき層を形成した。ニッケルめっきは[金属多孔体1]の製造方法と同様の条件により行った。但し、電流密度は1A/dm
2となるようにし、また、めっき液は陰極揺動により2m/分となるように攪拌した。
(鉄めっき)
上記で作製したスズとニッケルとを含む樹脂構造体の表面に目付け178g/m
2の鉄めっきを施し、鉄めっき層を形成した。鉄めっきは[金属多孔体1]の製造方法と同様の条件により行った。
(樹脂成形体の除去及び金属の拡散)
上記で得られたニッケルとスズと鉄とを含む樹脂構造体について、基材の燃焼除去と金属の還元処理を、前記[金属多孔体1]の製造方法と同様にして行った。
得られた金属多孔体は、EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズ及び鉄は満遍なく拡散していると考えられる。
【0069】
[金属多孔体25]
上記の[金属多孔体24]の製造において、ニッケルめっきの目付量、スズめっきの目付量、及び鉄めっきの目付量を下記表1に示す通りにした以外は[金属多孔体24]と同様にして[金属多孔体25]を製造した。
【0070】
[金属多孔体26]
(三次元網目状構造を有する樹脂成形体の導電化処理)
[金属多孔体24]の製造と同様にしてポリウレタンシート表面のスズの目付けが175g/m
2となるようにしてポリウレタンシートを導電化処理した。
(ニッケルと鉄との合金めっき)
上記の様にして表面を導電化したポリウレタンシートに、ニッケルの目付け量が358g/m
2、鉄の目付け量が168g/m
2となるように、ニッケルと鉄との合金めっきを形成した。ニッケルめっきを施してニッケルめっき層を形成した。めっき液としては、塩化ニッケル(II)170mmol/L、硫酸ニッケル(II)80mmol/L、硫酸鉄(II)11mmol/L、ホウ酸404mmol/L、塩化アンモニウム187mmol/L、サッカリン5.5mmol/Lのニッケル鉄電気めっき液を使用した。めっき液のpHは2.5に調整し、浴温は30℃とし、電流密度は1A/dm
2とした。また、めっき液は陰極揺動により2m/分となるように攪拌した。
(樹脂成形体の除去及び金属の拡散)
上記で得られたニッケルとスズと鉄とを含む樹脂構造体について、基材の燃焼除去と金属の還元処理を、前記[金属多孔体1]の製造方法と同様にして行った。
得られた金属多孔体は、EDXスペクトル比較では表側・内側に差異はなく、スズ及び鉄は満遍なく拡散していると考えられる。
【0071】
[金属多孔体27]
上記の[金属多孔体26]の製造において、ニッケルめっきの目付量、スズめっきの目付量、及び鉄めっきの目付量を下記表1に示す通りにした以外は[金属多孔体26]と同様にして[金属多孔体27]を製造した。
なお、[金属多孔体22]〜[金属多孔体27]は実施例である。
【0072】
【表1】
【0073】
<金属多孔体の評価>
(圧縮荷重試験)
前記[金属多孔体1]〜[金属多孔体27]をそれぞれ20mm×20mmの大きさに切り取って試験片とし、荷重を付加した際の変化量を測定するという圧縮荷重試験を行った。そしてその結果に基づいてSSカーブ(Stress−Strain Curve、応力−ひずみ曲線)を作成し、変曲点荷重を調べた。その結果を表2に表す。
【0074】
また、[金属多孔体8]及び[金属多孔体9]について、上記のようにしてそれぞれ2つの試験片を作製し、その圧縮荷重試験により得られたSSカーブを
図1A、
図1Bに示す。
図1A、
図1Bのグラフにおいて、縦軸は金属多孔体に加えた加圧力(N)を表し、横軸は金属多孔体の変位(mm)を表す。
参考として、特開2010−171154号公報に記載の方法によって得たニッケル−クロム多孔体(Cr40質量%)の試験片を作製し、圧縮荷重試験を行って得たSSカーブを
図1Cに示す。また、鉄を含まず、スズの含有量が10質量%、15質量%、17質量%のニッケル−スズ多孔体を作製し、その試験片を用いて圧縮荷重試験を行って得たSSカーブを
図1Dに示す。
これらの結果より、本発明の実施形態に係る金属多孔体は、ニッケル−スズ多孔体よりもはるかに強度が向上しており、ニッケル−クロム多孔体と同等の強度を有していることが示された。また、鉄の含有量が多い金属多孔体ほど強度が向上していた。
【0075】
(加熱試験後の重量増加)
前記[金属多孔体1]〜[金属多孔体27]をそれぞれ50mm×50mmの大きさに切り取って試験片とし、重量を測定した。そして、これらの試験片を750℃の大気下に1時間、静置した。
その後、各試験片を取り出して重量を測定し、金属が酸化したことによる重量変化を測定した。結果を表2に示す。
【0076】
[金属多孔体1]〜[金属多孔体13]、[金属多孔体22]〜[金属多孔体27]は加熱処理後に表面の色が黒っぽく変化したものの重量変化は少なく、酸化量が少なかった。また、スズの含有量が多い金属多孔体ほど酸化量が少ないことが示された。
[金属多孔体14]のニッケル多孔体は加熱処理後には緑色に変化しており、重量変化も大きく、酸化量が多かった。
【0077】
【表2】
【0078】
(X線回折法による測定)
[金属多孔体5]、[金属多孔体8]及び[金属多孔体9]について、X線回折法によりこれらの金属多孔体の回折X線強度を測定し、RIR(Reference Intensity Ratios)法によって各金属多孔体におけるNiFe及びNi
3Snの含有量を定量した。
その結果、[金属多孔体8]はNiとSnとFeとが固溶した状態のものの含有量が96質量%であり、Ni
3Snの含有量が4質量%であった。[金属多孔体9]はNi-Sn-Fe固容体の含有量が99質量%であり、Ni
3Snの含有量が1質量%であった。また、[金属多孔体5]はNi-Sn-Fe固容体の含有量が93質量%であり、Ni
3Snの含有量が7質量%であった。
図2Aに[金属多孔体8]のX線回折スペクトルを、
図2Bに[金属多孔体9]のX線回折スペクトルを、
図2Cに[金属多孔体5]のX線回折スペクトルを示す。
図2A〜
図2Cにおいて、横軸は回折角2θ(deg)を表し、縦軸は強度(cps)を表す。
【0079】
(走査型電子顕微鏡による観察)
[金属多孔体8]の骨格表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を
図3Aに示す。また、
図3Aと同じ視野においてスズ成分の存在位置をEDXにより確認した結果を
図3Bに示す。更に、
図3Aと同じ視野において鉄成分の存在位置をEDXにより確認した結果を
図3Cに示す。
これにより、スズと鉄とは金属多孔体の骨格中に均一に拡散していることが示された。