(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁性体部材は、前記磁石部材が前記下降端に配置された状態で、下降されることにより前記磁石部材に接触し、その後、上昇されることによって、前記磁性体部材と前記磁石部材との間の磁力により前記磁石部材が上昇されるように構成されている、請求項2に記載のバックアップピン。
前記固定部は、前記磁石部材と前記ベースプレートとが接触されない状態で前記磁石部材を前記下降端において保持する下降端側保持部(911)と、前記磁性体部材と前記磁石部材とが接触された状態で前記磁性体部材が上昇された際に前記磁石部材を前記上昇端において保持する上昇端側保持部(912)とを含む、請求項3に記載のバックアップピン。
前記磁石部材が前記上昇端側保持部に配置された状態で前記固定部が下降されて前記ベースプレートに当接された場合には、前記磁石部材と前記ベースプレートとの間に作用する磁力と、前記磁石部材の自重による重力と、前記磁石部材の前記ベースプレート方向への慣性力との合計が、前記磁石部材と前記磁性体部材との間に作用する磁力よりも大きくなるように設定されている、請求項6に記載のバックアップピン。
前記軸部は、磁力により前記磁石部材が上昇された状態で、吸引ノズルにより吸引可能に構成されるとともに、前記吸引ノズルにより吸引された状態で上下方向に移動されるように構成されている、請求項8に記載のバックアップピン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2013−38205号公報のピンモジュールでは、マグネット部材が真空吸引されることにより基部とベース部とが固定された固定状態が解除されるので、真空吸引の吸引力が低下した場合には、マグネット部材とベース部との間に作用する磁力を弱めて基部とベース部との固定状態を解除することができないという問題点がある。
【0006】
また、マグネット部材が真空吸引されることにより固定状態が解除される場合には、次のような不都合もある。具体的には、真空吸引する力(真空吸引力)は、真空圧と外部との差圧(1気圧)と、マグネット部材が吸引される部分(吸引面積)との積により規定されるので、基部とベース部とをより強固に固定するために磁力が大きいマグネット部材を使用する場合には吸引面積を大きくする必要がある。その結果、バックアップピンの設置面積が大きくなるので、ベース部に固定されるバックアップピンの数およびピッチに制約が生じるという問題点がある。
【0007】
上記のように、真空吸引を用いてマグネット部材(磁石部材)を真空吸引することにより基部とベース部との固定状態を解除する場合には、種々の問題点が発生すると考えられる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、真空吸引を用いずに固定部とベースプレートとの固定状態を解除することが可能なバックアップピンおよび基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の局面によるバックアップピンは、ベースプレートに磁力により固定された状態で基板を裏面から支持するバックアップピンであって、ベースプレートに固定可能な固定部と、固定部の内部に配置されるとともに固定部の内部で上昇および下降されるように構成され、固定部を磁力によりベースプレートに固定するための磁石部材と、磁石部材の上方に配置され、固定部の内部で上昇されることにより磁石部材を磁力により上昇させて固定部とベースプレートとが固定された固定状態を解除する磁性体部材とを備える。
【0010】
この発明の第1の局面によるバックアップピンでは、上記のように、磁石部材を磁力により上昇させて固定部とベースプレートとが固定された固定状態を解除する磁性体部材を設けることによって、磁石部材と磁性体部材との間で作用する磁力により、固定部をベースプレートに固定する固定状態の磁石部材をベースプレートから引き離すことができる。これにより、真空吸引を用いずに、固定部とベースプレートとの固定状態を解除することができる。また、真空吸引を用いずに、磁石部材と磁性体部材との間の磁力により、固定部をベースプレートに固定する磁石部材をベースプレートから引き離すことができるので、固定部とベースプレートとをより強固に固定するために磁力が大きい磁石部材を使用する場合でも、磁石部材(磁石部材の面積)を大きくする必要がない。その結果、バックアップピンの設置面積が大きくなるのを抑制し、ベースプレートに固定されるバックアップピンの数およびピッチに制約が生じるのを防止することができる。
【0011】
上記第1の局面によるバックアップピンにおいて、好ましくは、磁石部材が固定部の内部の下降端に配置されている状態において、固定部とベースプレートとの固定状態が維持され、磁性体部材が上昇されることにより磁石部材が固定部の内部の上昇端に配置されている状態において、固定部とベースプレートとの固定状態が解除されるように構成されている。このように構成すれば、磁石部材が固定部の内部の下降端に配置されている固定状態から上昇端に配置されている固定状態が解除された状態(固定解除状態)に切り替えることにより、容易に、磁石部材をベースプレートから引き離すことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、磁性体部材は、磁石部材が下降端に配置された状態で、下降されることにより磁石部材に接触し、その後、上昇されることによって、磁性体部材と磁石部材との間の磁力により磁石部材が上昇されるように構成されている。このように構成すれば、磁石部材と磁性体部材との接触により下降端に配置された磁石部材と磁性体部材との間に作用する磁力を大きくした状態で磁性体部材を上昇させることができるので、磁石部材をベースプレートから確実に引き離すことができる。
【0013】
上記磁性体部材と磁石部材とが接触する構成において、好ましくは、固定部は、磁石部材とベースプレートとが接触されない状態で磁石部材を下降端において保持する下降端側保持部と、磁性体部材と磁石部材とが接触された状態で磁性体部材が上昇された際に磁石部材を上昇端において保持する上昇端側保持部とを含む。このように構成すれば、下降端側保持部により磁石部材を下降端で保持することができるので、安定した状態で固定部をベースプレートに固定することができる。また、上昇端側保持部により磁石部材と接触された磁性体部材を保持することができるので、安定した状態で、磁石部材をベースプレートから引き離した状態を維持することができる。
【0014】
上記固定部が下降端側保持部を含む構成において、好ましくは、下降端側保持部は、固定部の内部側に突出するとともに、磁石部材をベースプレートとの間に第1の隙間を有した状態で保持するように構成されており、第1の隙間は、磁石部材が下降端側保持部に配置された際に固定部とベースプレートとの固定状態が維持される磁力が磁石部材とベースプレートとの間に作用するととともに、磁石部材が磁性体部材と接触した後上昇される際に、磁石部材とベースプレートとの間に作用する磁力と、磁石部材の自重による重力との合計が、磁石部材と磁性体部材との間に作用する磁力よりも小さくなるように設定されている。このように構成すれば、ベースプレートと第1の隙間を隔てて保持される磁石部材により固定部をベースプレートに確実に固定することができるとともに、磁石部材とベースプレートとが直接接触する場合と異なり、第1の隙間の分、磁石部材とベースプレートの間に作用する磁力を弱めて、容易に、磁石部材をベースプレートから引き離すことができる。
【0015】
上記固定部が下降端側保持部を含む構成において、好ましくは、固定部は、上昇される磁性体部材を磁石部材との間に第2の隙間を有した状態で保持する磁性体部材保持部を含み、第2の隙間は、上昇端側保持部により磁石部材が保持され、かつ、磁性体部材保持部により磁性体部材が保持された状態で、磁石部材と磁性体部材との間に作用する磁力が、磁石部材とベースプレートとの間に作用する磁力と磁石部材の自重による重力との合計よりも大きくなるように設定されている。このように構成すれば、固定部とベースプレートとの固定状態を解除した後に、磁石部材を磁性体部材に確実に引き付けることができる第2の隙間を隔てた状態で磁石部材と磁性体部材とを保持することができるので、容易に、磁石部材をベースプレートから引き離した状態を維持することができる。
【0016】
上記固定部が磁性体部材保持部を含む構成において、好ましくは、磁石部材が上昇端側保持部に配置された状態で固定部が下降されてベースプレートに当接された場合には、磁石部材とベースプレートとの間に作用する磁力と、磁石部材の自重による重力と、磁石部材のベースプレート方向への慣性力との合計が、磁石部材と磁性体部材との間に作用する磁力よりも大きくなるように設定されている。このように構成すれば、固定部が下降されてベースプレートに当接された際に発生する磁石部材のベースプレート方向への慣性力を利用して磁石部材を上昇端側保持部から下降端側保持部に移動(落下)させることができるので、簡易な構造により固定解除状態から固定状態に切り替えることができる。
【0017】
上記第1の局面によるバックアップピンにおいて、好ましくは、磁性体部材が装着され、固定部の内部に摺動される軸部をさらに備え、軸部が上昇されることにより磁性体部材を上昇されることによって、固定部とベースプレートとが固定された固定状態を解除するように構成されている。このように構成すれば、軸部を用いて容易に磁性体部材を上昇させて、固定部をベースプレートに固定する磁石部材をベースプレートから引き離すことができる。
【0018】
この場合、好ましくは、軸部は、磁力により磁石部材が上昇された状態で、吸引ノズルにより吸引可能に構成されるとともに、吸引ノズルにより吸引された状態で上下方向に移動されるように構成されている。このように構成すれば、固定部とベースプレートとの固定が解除された際に、吸引ノズルにより実質的にバックアップピンの自重に対応する吸引力でバックアップピンを吸引し、吸引ノズルを含むヘッドを上昇させることにより、バックアップピンを移動させることができる。
【0019】
上記軸部を備える構成において、好ましくは、軸部と固定部との間には、軸部が下降された際に弾性変形可能なバネ部材が設けられている。このように構成すれば、基板上の電子部品などに対応するベースプレートの位置にバックアップピンが配置されてしまった場合でも、バネ部材が電子部品などと当接した際に弾性変形して衝撃を吸収することができるので、電子部品または基板が損傷するのを抑制することができる。また、吸引ノズルにより下方向に押し込まれた(移動された)際のバネ部材の反発力により、軸部を上方に移動させることができる。
【0020】
この発明の第2の局面による基板処理装置は、ベースプレートと、ベースプレートに磁力により固定された状態で基板を裏面から支持するバックアップピンと、バックアップピンを吸引可能な吸引ノズルとを備え、バックアップピンは、ベースプレートに固定可能な固定部と、固定部の内部に配置されるとともに固定部の内部で上昇および下降されるように構成され、固定部を磁力によりベースプレートに固定するための磁石部材と、磁石部材の上方に配置され、固定部の内部で上昇されることにより磁石部材を磁力により上昇させて固定部とベースプレートとが固定された固定状態を解除する磁性体部材とを含む。
【0021】
この発明の第2の局面による基板処理装置では、上記のように、磁石部材を磁力により上昇させて固定部とベースプレートとが固定された固定状態を解除する磁性体部材を設けることによって、磁石部材と磁性体部材との間で作用する磁力により、固定部をベースプレートに固定する固定状態の磁石部材をベースプレートから引き離すことができる。これにより、真空吸引を用いずに、固定部とベースプレートとの固定状態を解除することができる。また、真空吸引を用いずに、磁石部材と磁性体部材との間の磁力により、固定部をベースプレートに固定する磁石部材をベースプレートから引き離すことができるので、固定部とベースプレートとをより強固に固定するために磁力が大きい磁石部材を使用する場合でも、磁石部材(磁石部材の面積)を大きくする必要がない。その結果、バックアップピンの設置面積が大きくなるのを抑制し、ベース部に固定されるバックアップピンの数およびピッチに制約が生じるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、真空吸引を用いずに固定部とベースプレートとの固定状態を解除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、
図1〜
図10を参照して、本発明の一実施形態による表面実装装置100の構造について説明する。なお、表面実装装置100は、本発明の「基板処理装置」の一例である。
【0026】
表面実装装置100は、
図1に示すように、一対のコンベア2により基板200(
図2参照)がX2方向からX1方向(搬送方向)に搬送され、所定の作業位置で基板200に部品4aを実装する装置である。
【0027】
表面実装装置100は、
図1に示すように、基台1と、一対のコンベア2と、ベースプレート3と、テープフィーダ4と、ヘッドユニット5とを備えている。また、表面実装装置100は、支持部6と、レール部7と、カメラユニット8とを備えている。また、ベースプレート3には、基板200を裏面(Z1方向)から支持し、基板200の撓みを抑制するバックアップピン9が配置される。また、基台1は、使用しないバックアップピン9を待機(仮置き)させておくバックアップピン待機部1aを含んでいる。また、バックアップピン待機部1aは、たとえば鉄などの磁性体により構成されている。また、表面実装装置100は、図示しないコントローラ(制御機構)により実装作業に関する動作が制御される。なお、本実施形態では、先ず、表面実装装置100の構成について説明し、その後、バックアップピン9の構成の詳細について説明する。
【0028】
コンベア2は、基板200を搬送方向(X方向)に搬送する機能を有する。また、コンベア2には、図示しないクランプ機構が設けられている。コンベア2は、このクランプ機構により、搬送中の基板200を実装作業位置で停止させた状態で保持(固定)するように構成されている。なお、実装作業位置は、ベースプレート3のバックアップピン9が設けられた位置の上方に位置している。
【0029】
ベースプレート3は、たとえば鉄などの磁性体により構成されている。バックアップピン9は、実装作業開始前に、表面実装装置100が予め取得している基板200のデータに基づき、ベースプレート3上の所定位置に配置される。ベースプレート3は、実装作業時には、実装作業位置に固定された基板200の裏面(Z1方向側)にバックアップピン9が当接するまでベースプレート3が上昇(
図2参照)されるように構成されている。
【0030】
テープフィーダ4は、基板200に実装されるICなどの部品4aをヘッドユニット5に供給するように構成されている。また、テープフィーダ4は、コンベア2のY方向の両側に複数配置されている。
【0031】
ヘッドユニット5は、6本のヘッド51と、Z軸駆動モータ(図示せず)とを含んでいる。ヘッドユニット5は、テープフィーダ4から部品4aを取得するとともに、基板200に部品4aを実装するように構成されている。
【0032】
ヘッド51は、
図2に示すように、ヘッドユニット5の下面側(Z1方向側)に突出するように配置されている。ヘッド51の先端には、部品4aや、バックアップピン9(後述する軸部92)を真空吸引する吸引ノズル52が取付けられている。また、ヘッド51は、Z軸駆動モータが駆動されることによりヘッドユニット5に対してZ軸方向に昇降可能に構成されている。また、ヘッドユニット5には、
図1に示すように、基板200を撮像するためのカメラユニット53が設けられている。カメラユニット53は、ベースプレート3に配置されているバックアップピン9を上方(Z2方向)から撮像し、認識するように構成されている。また、カメラユニット53は、バックアップピン待機部1aに配置されているバックアップピン9を上方から撮像し、バックアップピン待機部1a上に配置されるバックアップピン9の位置や本数を認識するように構成されている。
【0033】
支持部6は、ボールネジ軸61とボールネジ軸61を回転させるX軸駆動モータ62とを含んでいる。X軸駆動モータ62が駆動されることにより、ヘッドユニット5はX方向に移動されるように構成されている。
【0034】
レール部7は、支持部6の両端部(X方向)をY方向に移動可能に支持する一対のガイドレール71と、Y方向に延びるボールネジ軸72と、ボールネジ軸72を回転させるY軸駆動モータ73とを含んでいる。Y軸駆動モータ73が駆動されることにより、ヘッドユニット5はY方向に移動されるように構成されている。
【0035】
カメラユニット8は、基台1の上面上に固定的に設置されている。また、カメラユニット8は、各ヘッド51の吸引ノズル52に吸着された部品4aを撮像し、部品4aの実装に先立って部品4aの吸着状態を認識するように構成されている。
【0036】
次に、バックアップピン9の構成について説明する。
【0037】
ここで、本実施形態では、
図4および
図5に示すように、バックアップピン9は、固定部91と、軸部92と、バネ93と、磁性体部材94と、磁性体部材94の下方(Z1方向)に配置される円盤状の磁石95とを含んでいる。バックアップピン9は、磁石95の磁力により固定部91がベースプレート3に固定されるように構成されている。このバックアップピン9は、磁石95が固定部91の後述の下降端911aに配置(保持)されている状態(以下、下降端保持状態という)において、固定部91とベースプレート3との固定状態が維持されるように構成されている。また、バックアップピン9は、磁石95が固定部91の後述の上昇端912aに配置(保持)されている状態(以下、上昇端保持状態という)において、固定部91とベースプレート3との固定状態が解除されるように構成されている。また、磁石95には、磁石95とベースプレートとの間に作用する磁力(Fb)、磁石95の自重による重力(Fg)、および、磁石95と磁性体部材94との間で作用する磁力(Fm)が作用する。また、バックアップピン9を固定する(
図9の状態から
図10の状態に移行する)際には、磁石95には、これらの力に加えて、磁石95のベースプレート方向への慣性力(Fi)が作用する。なお、バネ93は、本発明の「バネ部材」の一例である。また、磁石95は、本発明の「磁石部材」の一例である。
【0038】
固定部91は、非磁性体(たとえば、アルミニウム)により形成されている。固定部91は、
図5に示すように、内部が中空に形成され、磁性体部材94および磁石95が配置されるように構成されている。また、固定部91の内部は、下側(ベースプレート3側)から順に、固定部91の断面方向(XY方向)の内径がそれぞれ異なる略円筒形状の領域91a〜91dを含んでいる。また、各領域は、領域91b、領域91a、領域91c、領域91dの順で内径が小さくなる。すなわち、固定部91の内径は、領域91bで最大となり、領域91dで最小となる。また、固定部91は、長手方向(Z方向)の中央部近傍(
図3参照)に、外側に向けて突出するフランジ部(周状の凸部)91eを含んでいる。
【0039】
また、固定部91は、
図4および
図5に示すように、下降端側保持部911と、上昇端側保持部912と、磁性体部材保持部913とを含んでいる。固定部91は、下降端側保持部911と上昇端側保持部912との間の領域91bにおいて、磁石95を昇降させるように構成されている。固定部91は、下降端側保持部911と磁性体部材保持部913との間の領域91bおよび91cにおいて、磁性体部材94(後述する先端部94a)を昇降させるように構成されている。固定部91は、領域91dにおいて、軸部92を摺動させるように構成されている。
【0040】
下降端側保持部911は、固定部91の内部91(領域91a)側に突出するように板状に形成されている。下降端側保持部911の上面は、磁石95の下方への移動を規制する下降端911aを構成している。下降端側保持部911は、磁石95とベースプレート3とが接触されない状態で磁石95を下降端911aにおいて保持するように構成されている。言い換えると、下降端側保持部911は、下降端保持状態の磁石95(磁石95の下面)とベースプレート3(ベースプレート3の表面)とが第1の隙間(以下、隙間D1という)を隔てた状態で、磁石95を下降端911aにおいて保持するように構成されている。また、隙間D1は、固定部91とベースプレート3との固定状態が維持される磁力が下降端保持状態の磁石95とベースプレート3との間に作用するような大きさに設定されている。
【0041】
上昇端側保持部912は、領域91cを構成する固定部91の内壁により構成されている。上昇端側保持部912の下面は、磁石95の上方への移動を規制する上昇端912aを構成している。上昇端側保持部912は、磁性体部材94と磁石95とが接触された状態(
図7参照)で磁性体部材94が上昇された際に磁石95を上昇端912aにおいて保持するように構成されている。また、上昇端側保持部912は、上昇端保持状態の磁石95(磁石95の下面)とベースプレート3(ベースプレート3の表面)とが隙間D0を隔てるように構成されている。なお、
図5において、上昇端側保持部912により保持された磁石95は一点鎖線により示されている。また、隙間D1は、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力(Fb)と、磁石95の自重による重力(Fg)との合計(Fb+Fg)が、上昇端保持状態の磁石95と磁性体部材94との間に作用する磁力(Fm)よりも小さくなるように設定されている。なお、上昇端保持状態の磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力は略ゼロ(Fm≒0)になるように設定されている。
【0042】
磁性体部材保持部913は、領域91dを構成する固定部91の内壁により構成されている。磁性体部材保持部913の下面913aは、磁性体部材94の上方への移動を規制する機能を有する。磁性体部材保持部913は、上昇されて磁性体部材保持部913により保持(配置)された状態(以下、磁性体保持状態という)(
図8参照)の磁性体部材94と磁石95(磁石95の上面)との間に第2の隙間(以下、隙間D2という)を有した状態で磁性体部材94を保持するように構成されている。すなわち、磁性体部材保持部913は、上昇端保持状態の磁石95と磁性体保持状態の磁性体部材94とが隙間D2を有するように構成されている。また、隙間D2は、上昇端側保持部912により保持された磁石95とベースプレート3との隙間D0よりも小さい。詳細には、隙間D2は、上昇端保持状態の磁石95と磁性体保持状態の磁性体部材94との間に作用する磁力(Fm)が、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力と磁石95の自重による重力の合計(Fb+Fg)よりも大きくなるように設定されている。
【0043】
軸部92は、固定部91の内部に摺動されるように構成されている。軸部92は、非磁性体(たとえば、アルミニウム)により形成されている。軸部92は、
図3および
図4に示すように、長手方向(Z方向)の中央部近傍と上部近傍とのそれぞれに、外側に向けて突出するフランジ部(周状の凸部)92aおよび92bを含んでいる。バックアップピン9は、
図8〜
図10に示すように、吸引ノズル52によりフランジ部92bが吸引された状態で、上下方向(Z方向)に移動(昇降)されるように構成されている。
【0044】
バネ93は、
図3および
図4に示すように、軸部92のフランジ部92aと固定部91のフランジ部91eとの間に設けられている。バネ93は、軸部92がZ1方向に下降された際に弾性変形可能に構成されている。バネ93は、ヘッド51(吸引ノズル52)により下方に押し込まれた軸部92(
図6参照)を、上方に付勢するように構成されている。
図4や
図8に示した状態においては、このバネ93の付勢力によって、磁性体部材94が磁性体部材保持部913の下面913aに当接する状態が維持される。また、図示しないコントローラのエラー等により基板200上の電子部品などに対応するベースプレート3の位置にバックアップピン9が配置されてしまった場合でも、バネ93が電子部品などと当接した際に弾性変形することにより、電子部品(基板200)が損傷するのが抑制される。
【0045】
磁性体部材94は、
図5に示すように、たとえば鉄を材料として、ネジ状に形成されている。具体的には、磁性体部材94は、磁石95と接触する先端部94aと、軸部92に固定される固定部94bとを含んでいる。先端部94aは、固定部94bの外径よりも大きい外径を有している。ネジ状の磁性体部材94(固定部94b)は、軸部92の下端部に螺合されることにより軸部92に固定されている。これにより、接着剤などを用いなくても磁性体部材94と軸部92とを固定することができる。また、磁性体部材94(先端部94a)は、磁性体部材保持部913(下面913a)と係合するように構成されている。また、磁性体部材94は、磁石95の上方(Z2方向側)に配置されている。また、磁性体部材94は、下方に移動された際に磁石95と接触するように構成されている。磁性体部材94は、固定部91の内部で上昇されることにより磁石95を磁力により上昇させて固定部91とベースプレート3とが固定された固定状態を解除するように構成されている。これにより、磁石95は、軸部92とともに磁性体部材94が昇降することによって固定部91の内部で昇降されるように構成されている。
【0046】
次に、
図4および
図6〜
図9を参照して、固定状態を解除する際のバックアップピン9の動作について説明する。
【0047】
まず、
図6に示すように、ベースプレート3に固定されたバックアップピン9(
図4参照)の軸部92(フランジ部92b)が、真空吸引していない吸引ノズル52により下方(Z1方向)に向けて押し込まれる。この際、軸部92は、下降端911aに配置された(下降端保持状態の)磁石95に磁性体部材94が接触するまで下降される。この状態では、下降端保持状態の磁石95と磁性体部材94と間に作用する磁力(Fm)が、下降端保持状態の磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力(Fb)と磁石部材の自重による重力(Fg)との合計よりも大きくなる(Fm>Fb+Fg)ように設定されている。
【0048】
次に、
図7に示すように、真空吸引していない吸引ノズル52を上昇させる。この際、磁性体部材94と磁石95とは、密着している。また、バネ93の反発力によって軸部92のフランジ部92aが上方に付勢される。これにより、磁性体部材94と磁石95との間の磁力(Fm)により、磁石95が磁性体部材94とともに上昇端912aまで上昇され、上昇端側保持部912により保持される上昇端保持状態になる。この状態では、上昇端保持状態の磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力は略ゼロ(Fm≒0)になるように設定されている。また、この状態では、バックアップピン9の固定状態が解除される。
【0049】
次に、
図8に示すように、磁石95の上昇端保持状態において、真空吸引していない吸引ノズル52をさらに上昇させる。これにより、バネ93の反発力によって軸部92のフランジ部92aが上方に付勢され、軸部92が
図7の状態からさらに上昇される。この際、磁性体部材94は、上昇端保持状態の磁石95と離間されて、磁性体部材94が磁性体部材保持部913まで上昇される。この状態では、上昇端保持状態の磁石95と磁性体部材94と間に作用する磁力(Fm)が、上昇端保持状態の磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力(Fb≒0)よりも大きく(Fm>Fb(≒0)+Fg)なるように設定されている。これにより、磁石95は磁性体部材94の磁力により上方に引っ張られた状態(上昇端912aの位置で磁石95が宙に浮いた状態)で、バックアップピン9の固定状態が解除される。なお、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力(Fm)が略ゼロであるため、実質的にバックアップピン9の自重のみでベースプレート3に載置されている。
【0050】
次に、
図9に示すように、軸部92のフランジ部92bが吸引ノズル52により吸引された状態で吸引ノズル52(ヘッド51)が上昇される。この状態では、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力(Fm)が略ゼロであるため、実質的にバックアップピン9の自重に対応する吸引力で吸引ノズル52によりバックアップピン9を吸引した状態で吸引ノズル52が上昇され、バックアップピン9がベースプレート3から移動(除去)される。なお、移動されたバックアップピン9はバックアップピン待機部1aに配置される。
【0051】
次に、
図4、
図9および
図10を参照して、バックアップピン9をベースプレート3に固定する際の動作について説明する。
【0052】
まず、
図9に示すように、軸部92のフランジ部92bが吸引ノズル52により吸引された状態で吸引ノズル52が下降される。そして、
図10に示すように、固定部91の底面がベースプレート3に当接される。この際、磁性体部材94は磁性体保持状態を維持するとともに、磁石95は上昇端保持状態を維持した状態で、バックアップピン9がベースプレート3に当接される。なお、簡略化のため、軸部92のフランジ部92bが吸引ノズル52により吸引された状態で吸引ノズル52が下降される状態の図は、軸部92のフランジ部92bが吸引ノズル52により吸引された状態で吸引ノズル52が上昇される状態を示した
図9を流用している。
【0053】
また、
図9の状態から
図10の状態に移行された際に、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力(Fb)と磁石95の自重による重力(Fg)との合計(Fb+Fg)に、磁石95のベースプレート3方向(下方向)への慣性力(Fi)が付加される。これにより、慣性力が付加されたバックアップピン9をベースプレート3に固定する力(Fb+Fg+Fi)が、磁石95と磁性体部材94との磁力(Fm)よりも大きくなる(Fm<Fb+Fg+Fi)。その結果、上昇端保持状態(上昇端912aの位置で宙に浮いた状態)の磁石95が下方に落下し、下降端側保持部911により保持される。そして、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力により、バックアップピン9がベースプレート3に固定される。
【0054】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、磁石95を磁力により上昇させて固定部91とベースプレート3とが固定された固定状態を解除する磁性体部材94を設ける。これにより、磁石95と磁性体部材94との間で作用する磁力Fmにより、固定部91をベースプレート3に固定する固定状態の磁石95をベースプレート3から引き離すことができる。その結果、真空吸引を用いずに、固定部91とベースプレート3との固定状態を解除することができる。また、真空吸引を用いずに、磁石95と磁性体部材94と間の磁力Fmにより、固定部91をベースプレート3に固定する磁石95をベースプレート3から引き離すことができるので、固定部91とベースプレート3とをより強固に固定するために磁力が大きい磁石95を使用する場合でも、磁石95(磁石95の面積)を大きくする必要がない。これにより、バックアップピン9の設置面積が大きくなるのを抑制し、ベースプレート3に固定されるバックアップピン9の数およびピッチに制約が生じるのを防止することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、磁石95が固定部91の内部の下降端911aに配置されている状態において、固定部91とベースプレート3との固定状態が維持され、磁性体部材94が上昇されることにより磁石95が固定部91の内部の上昇端912aに配置されている状態において、固定部91とベースプレート3との固定状態が解除されるようにバックアップピン9を構成する。これにより、磁石95が固定部91の内部の下降端911aに配置されている固定状態から上昇端912aに配置されている固定解除状態に切り替えることにより、容易に、磁石95をベースプレート3から引き離すことができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、磁石95が下降端911aに配置された状態で、下降されることにより磁石95に接触し、その後、上昇されることによって、磁性体部材94と磁石95との間の磁力Fmにより磁石95が上昇されるように磁性体部材94を構成する。これにより、磁石95と磁性体部材94との接触により下降端911aに配置された磁石95と磁性体部材94との間に作用する磁力Fmを大きくした状態で磁性体部材94を上昇させることができるので、磁石95をベースプレート3から確実に引き離すことができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、磁石95とベースプレート3とが接触されない状態で磁石95を下降端911aにおいて保持する下降端側保持部911と、磁性体部材94と磁石95とが接触された状態で磁性体部材94が上昇された際に磁石95を上昇端912aにおいて保持する上昇端側保持部912とを含むように固定部91を構成する。これにより、下降端側保持部911により磁石95を下降端911aで保持することができるので、安定した状態で固定部91をベースプレート3に固定することができる。また、上昇端側保持部912により磁石95と接触された磁性体部材94を保持することができるので、安定した状態で、磁石95をベースプレート3から引き離した状態を維持することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、固定部91の内部側に突出するとともに、磁石95をベースプレート3との間に第1の隙間D1を有した状態で保持するように下降端側保持部911を構成し、磁石95が下降端側保持部に配置された際に固定部91とベースプレート3との固定状態が維持される磁力Fb+Fgが磁石95とベースプレート3との間に作用するととともに、磁石95が磁性体部材94と接触した後上昇される際に、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力Fbと、磁石95の自重による重力Fgとの合計Fb+Fgが、磁石95と磁性体部材94との間に作用する磁力Fmよりも小さくなるように第1の隙間D1を設定する。これにより、ベースプレート3と第1の隙間D1を隔てて保持される磁石95により固定部91をベースプレート3に確実に固定することができるとともに、磁石95とベースプレート3とが直接接触する場合と異なり、第1の隙間D1の分、磁石95とベースプレート3の間に作用する磁力Fbを弱めて、容易に、磁石95をベースプレート3から引き離すことができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、上昇される磁性体部材94を磁石95との間に第2の隙間D2を有した状態で保持する磁性体部材保持部913を含むように固定部91を構成し、上昇端側保持部912により上昇される磁石95が保持され、かつ、磁性体部材保持部913により上昇される磁性体部材94が保持された状態で、磁石95と磁性体部材94との間に作用する磁力Fmが、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力Fbと磁石95の自重による重力Fgとの合計Fb+Fgよりも大きくなるように第2の隙間D2を設定する。これにより、固定部91とベースプレート3との固定状態を解除した後に、磁石95を磁性体部材94に確実に引き付けることができる第2の隙間D2を隔てた状態で磁石95と磁性体部材94とを保持することができるので、容易に、磁石95をベースプレート3から引き離した状態を維持することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、磁石95が上昇端側保持部912に配置された状態で固定部91が下降されてベースプレート3に当接された場合には、磁石95とベースプレート3との間に作用する磁力Fbと、磁石95の自重による重力Fgと、磁石95のベースプレート3方向への慣性力Fiとの合計Fb+Fg+Fiが、磁石95と磁性体部材94との磁力Fmよりも大きくなるように設定する。これにより、固定部91が下降されてベースプレート3に当接された際に発生する磁石95のベースプレート3方向への慣性力Fiを利用して磁石95を上昇端側保持部912から下降端側保持部911に移動(落下)させることができるので、簡易な構造により固定解除状態から固定状態に切り替えることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、磁性体部材94が装着され、固定部91の内部に摺動される軸部92を設け、軸部92が上昇されることにより磁性体部材94を上昇されることによって、固定部91とベースプレート3とが固定された固定状態を解除するように構成する。これにより、軸部92を用いて容易に磁性体部材94を上昇させて、固定部91をベースプレート3に固定する磁石95をベースプレート3から引き離すことができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、磁力により磁石95が上昇された状態で、吸引ノズル52により吸引可能に軸部92を構成し、吸引ノズル52により吸引された状態で上下方向に移動されるようにバックアップピン9を構成する。これにより、固定部91とベースプレート3との固定が解除された際に、吸引ノズル52により実質的にバックアップピン9の自重に対応する吸引力でバックアップピン9を吸引し、吸引ノズル52を含むヘッドを上昇させることにより、バックアップピン9を移動させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、軸部92と固定部91との間には、軸部92が下降された際に弾性変形可能なバネ93を設ける。これにより、基板200上の電子部品などに対応するベースプレート3の位置にバックアップピン9が配置されてしまった場合でも、バネ93が電子部品などと当接した際に弾性変形して衝撃を吸収することができるので、電子部品または基板200が損傷するのを抑制することができる。また、吸引ノズル52により下方向に押し込まれた(移動された)際のバネ93の反発力により、軸部92を上方に移動させることができる。
【0065】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0066】
たとえば、上記実施形態では、本発明を表面実装装置(基板処理装置)に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。バックアップピンを用いる構成であれば、たとえば、検査装置、印刷装置、および、ディスペンサ装置など、表面実装装置以外の基板処理装置に本発明を適用してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、バックアップピンの固定状態を解除する際、下降端に配置された磁石(磁石部材)と、下降される磁性体部材とが接触する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バックアップピンの固定状態を解除する際、下降端に配置された磁石(磁石部材)と、下降される磁性体部材とが接触しなくてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、磁性体部材と軸部とを別個に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁性体材料により、磁性体部材と軸部とを一体的に形成してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、固定部および軸部を非磁性体材料としてのアルミニウムにより形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定部および軸部を、樹脂など、アルミニウム以外の非磁性体材料により形成してもよい。これにより、バックアップピンの重量を軽くすることができるので、ベースプレートとバックアップピン待機部との間を移動させるバックアップピンを吸引ノズルにより確実に吸引して、バックアップピンが落下するのを抑制することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、ベースプレートおよび磁性体部材を鉄(磁性体)により形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、鉄以外の磁性体により、ベースプレートおよび磁性体部材を形成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、固定部がベースプレートに当接された際に、磁石(磁石部材)に作用するベースプレート方向への慣性力を利用して磁石を落下させ、固定部をベースプレートに固定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、正圧を発生可能な吸引ノズルを設け、この正圧により磁石部材を落下させるなど、磁石部材に作用するベースプレート方向への慣性力以外の力により磁石部材を落下させ、固定部をベースプレートに固定してもよい。