特許第6148209号(P6148209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オティックスの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000002
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000003
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000004
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000005
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000006
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000007
  • 特許6148209-回転電機用ロータ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148209
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】回転電機用ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20170607BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20170607BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H02K1/28 Z
   H02K1/32 Z
   H02K9/19 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-122494(P2014-122494)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-5310(P2016-5310A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 亜富
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義忠
(72)【発明者】
【氏名】朝永 岳志
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−83139(JP,A)
【文献】 特開2012−205402(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0313928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/32
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトと、
該ロータシャフトの外周に設けられる環状のロータコアと、
上記ロータシャフトの外周において上記ロータコアの軸方向の少なくとも一方に配置される環状のエンドプレートと、
を備え、
上記ロータシャフトには、上記ロータコアを軸方向に挟持して固定する一対のコア保持部が、上記ロータコアの軸方向の両側にそれぞれ設けてあり、
上記エンドプレートは、径方向及び軸方向に対して傾斜した冷媒受け面を有し、
上記ロータシャフトは、該ロータシャフトの回転に伴って作用する遠心力によって冷却媒体を噴出する冷媒噴出口を、上記エンドプレートの上記冷媒受け面に向かって開口させてなり、
上記エンドプレートの上記冷媒受け面が、上記冷却媒体から力を受けたときに上記エンドプレートが軸方向に移動する側に、上記エンドプレートに対向する支承部が設けてあることを特徴とする回転電機用ロータ。
【請求項2】
上記冷媒受け面は、径方向外側に向かうほど、軸方向における上記ロータコア側に向かうように傾斜しており、上記ロータシャフトは、上記エンドプレートにおける上記ロータコアと反対側の面に対向する鍔部を有し、該鍔部が上記支承部であることを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
上記冷媒受け面は、径方向外側に向かうほど、軸方向における上記ロータコアの反対側に向かうように傾斜しており、上記ロータコアが上記支承部であることを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
上記冷媒受け面は、周方向の全周にわたって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転電機用ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータシャフトと該ロータシャフトの外周に設けられるロータコアとを有する回転電機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等に用いるモータ、ジェネレータ、モータジェネレータ等の回転電機においては、界磁巻線を設けたステータの内周側に、ロータコアを設けたロータが回転可能に配置されている。そして、ロータコアに内包された永久磁石がロータコアの端部から飛び出すことを防止する等のために、エンドプレートがロータコアの端部に配設されている。さらに、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの非磁性体からなるエンドプレートを用いることにより、ロータコアからエンドプレートへの磁束漏れによる損失を抑えている(特許文献1)。
特許文献1の構成では、エンドプレートはカシメ部材によってロータコアと共締めされることにより、軸方向に位置決めされてロータシャフトに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−59193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミニウム合金やマグネシウム合金などは、高応力に曝されるとクリープ現象によって経時的に変形する。これにより、ロータコアを強固に固定するために強い力でエンドプレートとロータコアとを共締めすると、アルミニウム合金やマグネシウム合金などからなるエンドプレートはクリープ現象により変形することとなる。その結果、ロータシャフトに対するエンドプレート及びロータコアの軸方向の固定力は低下してしまう。
【0005】
一方、エンドプレートとロータコアとをそれぞれ個別にロータシャフトに圧入して固定すれば、ロータシャフトに対するロータコアの軸方向の固定力は安定する。しかしながら、通常、ロータシャフトは鉄などからなり、エンドプレートとは異種材料からなることから、両者には線膨張係数に大きな差がある。そのため、エンドプレートをロータシャフトに圧入すると、温度変化により圧入の締め代が減少して、エンドプレートとロータシャフトとの間に緩みが生じる。その結果、ロータシャフトに対するエンドプレートの固定力が低下し、エンドプレートに軸方向のガタが生じるおそれがある。
また、エンドプレートをロータシャフトに圧入することにより所望の固定力を得るには、エンドプレートやロータシャフト等の圧入に関与する部品に高い成形精度が必要となるため、コスト高となる。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力を確保することができる回転電機用ロータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ロータシャフトと、
該ロータシャフトの外周に設けられる環状のロータコアと、
上記ロータシャフトの外周において上記ロータコアの軸方向の少なくとも一方に配置される環状のエンドプレートと、
を備え、
上記ロータシャフトには、上記ロータコアを軸方向に挟持して固定する一対のコア保持部が、上記ロータコアの軸方向の両側にそれぞれ設けてあり、
上記エンドプレートは、径方向及び軸方向に対して傾斜した冷媒受け面を有し、
上記ロータシャフトは、該ロータシャフトの回転に伴って作用する遠心力によって冷却媒体を噴出する冷媒噴出口を、上記エンドプレートの上記冷媒受け面に向かって開口させてなり、
上記エンドプレートの上記冷媒受け面が、上記冷却媒体から力を受けたときに上記エンドプレートが軸方向に移動する側に、上記エンドプレートに対向する支承部が設けてあることを特徴とする回転電機用ロータにある。
【発明の効果】
【0008】
上記回転電機用ロータにおいて、ロータシャフトは、冷媒噴出口を、エンドプレートの冷媒受け面に向かって開口させてなる。それゆえ、回転電機用ロータが回転しているとき、冷却媒体は、遠心力によって冷媒噴出口から噴出し、径方向外側へ向い、冷媒受け面に衝突することとなる。これにより、冷媒受け面が冷却媒体から力を受ける。そして、冷媒受け面は、径方向及び軸方向に対して傾斜している。それゆえ、冷媒受け面が冷却媒体から受ける力は、径方向外側へ向かう力と、軸方向の一方へ向かう力とが、少なくとも合成された力と考えることができる。
【0009】
冷媒受け面に、軸方向の一方へ向かう力が加わることにより、ロータシャフトに対してエンドプレートが、軸方向の一方に移動することとなる。この移動方向に、エンドプレートに対向する支承部が設けてある。それゆえ、エンドプレートは支承部に当接し、押し付けられる。また、エンドプレートが支承部に当接した状態においても、エンドプレートは軸方向の一方に移動しようとする。その結果、エンドプレートは、支承部に押し付けられた状態で軸方向に安定して固定されることとなる。すなわち、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力が確保される。
【0010】
また、上述のように、エンドプレートは、支承部に押し付けられた状態で軸方向に固定されるため、温度変化による膨張収縮が生じても、ロータシャフトとエンドプレートとの軸方向の固定力が低下することを防ぐことができる。つまり、ロータシャフトの外径とエンドプレートの内径との寸法が多少変動しても、軸方向の固定力が変動することを防ぐことができる。したがって、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力を確保することができる。
【0011】
また、上述のようにエンドプレートは支承部に軸方向に押し付けられて固定されるため、ロータシャフトの外径寸法やエンドプレートの内径寸法に多少の誤差があっても、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力が低下することを防ぐことができる。したがって、ロータシャフトの外径寸法やエンドプレートの内径寸法の精度を特に高くする必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力を確保することができる回転電機用ロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における、回転電機用ロータの断面図。
図2】実施例1における、エンドプレート周辺の回転電機用ロータの拡大断面図。
図3図1のIII−III線矢視断面図。
図4図1のIV−IV線矢視断面図。
図5】実施例1における、ロータシャフトの斜視図。
図6】実施例1における、回転電機用ロータの回転時に、エンドプレートが冷却媒体から受ける力の説明図。
図7】実施例2における、エンドプレート周辺の回転電機用ロータの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記エンドプレートは、ロータコアにおける軸方向の一端にのみ配置されていてもよいし、両端に配置されていてもよい。後者の場合、両方のエンドプレートに対応して、ロータシャフトに冷媒噴出口を設けて、ロータコアの軸方向の両側に同様の機構を構成することもできる。
【0015】
なお、本明細書において、特に示さない限り、「軸方向」とは、回転電機用ロータの回転軸の延在方向をいい、「径方向」とは、回転電機用ロータの回転軸と直交する直線の方向をいう。また、「周方向」とは、回転電機用ロータの回転軸の回転方向に沿う方向をいう。
【0016】
また、エンドプレートが支承部に当接した状態においては、実際には、エンドプレートが軸方向に移動することはなく、軸方向に移動しようとする力が作用するのみである。かかる場合にも、本明細書においては、適宜、「移動する」という表現を用いることもあるが、これは適宜、「移動しようとする力が作用する」を意味するものとして、解釈されたい。
【0017】
また、上記冷媒受け面は、径方向外側に向かうほど、軸方向における上記ロータコア側に向かうように傾斜しており、上記ロータシャフトは、上記エンドプレートにおける上記ロータコアと反対側の面に対向する鍔部を有し、該鍔部が上記支承部であることが好ましい。この場合には、冷媒受け面が冷却媒体から力を受けたとき、エンドプレートは鍔部に当接するように構成されることとなる。それゆえ、この場合にも、エンドプレートを軸方向に安定して固定することができる。
【0018】
また、上記冷媒受け面は、径方向外側に向かうほど、軸方向における上記ロータコアの反対側に向かうように傾斜しており、上記ロータコアが上記支承部であってもよい。この場合にも、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力を確保することができる。また、この場合には、回転電機用ロータの回転に伴い、エンドプレートがロータコアを積層方向に押圧する力を作用させることができる。
【0019】
また、上記冷媒受け面は、周方向の全周にわたって形成されていることが好ましい。この場合には、遠心力によって冷媒噴出口から噴出した冷却媒体が、安定して冷媒受け面に衝突することとなる。それゆえ、この場合には、エンドプレートを軸方向に、より安定して固定することができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
上記回転電機用ロータの実施例につき、図1図6を用いて説明する。
本例の回転電機用ロータ1は、図1に示すごとく、ロータシャフト2と、ロータシャフト2の外周に設けられる環状のロータコア3と、ロータシャフト2の外周においてロータコア3の軸方向Xの少なくとも一方に配置される環状のエンドプレート4と、を備えている。
【0021】
ロータシャフト2には、ロータコア3を軸方向Xに挟持して固定する一対のコア保持部51、52が、ロータコア3の軸方向Xの両側にそれぞれ設けてある。
エンドプレート4は、径方向及び軸方向Xに対して傾斜した冷媒受け面43を有する。
図2に示すごとく、ロータシャフト2は、ロータシャフト2の回転に伴って作用する遠心力によって冷却媒体Cを噴出する冷媒噴出口25を、エンドプレート4の冷媒受け面43に向かって開口させてなる。
図1に示すごとく、エンドプレート4の冷媒受け面43が、冷却媒体Cから力を受けたときにエンドプレート4が軸方向Xに移動する側に、エンドプレート4に対向する支承部11が設けてある。
【0022】
本例において、冷媒受け面43は、径方向外側に向かうほど、軸方向Xにおけるロータコア3側に向かうように傾斜しており、ロータシャフト2は、エンドプレート4におけるロータコア3と反対側の面に対向する鍔部24を有し、鍔部24が支承部11となっている。
【0023】
回転電機用ロータ1は、周方向Yの一方に主として回転するよう構成されており、この方向を、図3図4に示すごとく、ロータ回転方向Y1とする。
そして、回転電機用ロータ1は、図示しないステータの内周側に回転可能に配置され、回転電機を構成する。この回転電機は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等に用いるモータ、ジェネレータ、モータジェネレータとして用いることができる。
【0024】
図1に示すごとく、ロータシャフト2は、インナシャフト22と、インナシャフト22の外周側に配設されたアウタシャフト23とを有する。アウタシャフト23は、インナシャフト22を挿嵌させるための筒状の筒状部231と、筒状部231の外周側に配設され、ロータコア3を取り付けるためのコア取付部232とを有する。筒状部231とコア取付部232とは連結部233によって連結されている。
【0025】
インナシャフト22は、筒状に形成されており、内側に冷却媒体を流通させる冷媒流路26を備えている。また、インナシャフト22には、径方向に開口した冷媒吐出口221が形成されており、冷媒流路26から冷媒吐出口221を介して冷却媒体が吐出されるよう構成されている。冷媒吐出口221は、径方向から見てコア取付部232と重なる位置に形成されている。また、コア取付部232は、その内周面側において、径方向から見て冷媒吐出口221と重なる位置を含む領域に、冷却媒体を一旦保持する冷媒保持部236を有する。すなわち、冷媒保持部236は、冷媒吐出口221から吐出された冷却媒体を受けて、保持する。本例においては、冷媒保持部236は、周方向Yの全域にわたって形成されている。そして、冷媒噴出口25は、その内周側の開口端を、冷媒保持部236に開口し、外周側の開口端をエンドプレート4の冷媒受け面43に向って開口している。なお、冷却媒体としては、例えば、絶縁性油等の冷却油を用いることができる。
【0026】
コア取付部232には、ロータコア3が嵌合されており、その軸方向Xの両端に設けられた一対のコア保持部51、52によって、軸方向Xに保持されている。また、エンドプレート4も、コア取付部232の外周に嵌合されて、軸方向Xの一端からロータコア3に対向配置されている。
【0027】
一対のコア保持部51、52のうち、一方のコア保持部51は、ロータシャフト2と一体的に形成されている。すなわち、コア保持部51は、ロータシャフト2におけるコア取付部232から径方向外側へ突出している。コア保持部51は、コア取付部232における軸方向Xの一端側において、周方向Yの全周にわたって形成されている。他方のコア保持部52は、ロータシャフト2とは別体の環状部材を、ロータシャフト2の外周面に嵌合して形成してある。すなわち、コア保持部52は、コア保持部51とは軸方向Xの反対側の端部において、コア取付部232に、焼き嵌め等によって嵌合固定してある。そして、一対のコア保持部51、52の間に、コア取付部232の外周に配置されたロータコア3が軸方向Xに挟持されている。
【0028】
以下において、適宜、ロータコア3に対してコア保持部51が配置された側の軸方向Xの一端側(図1における左側)を第1端部側X1といい、これと反対側(図1における右側)を第2端部側X2という。
なお、ロータシャフト2(インナシャフト22及びアウタシャフト23)とコア保持部52とは、互いに同種の金属からなることが好ましく、例えば鉄からなる。一方、エンドプレート4は、ロータコア3からの磁束漏れを防ぐために、アルミニウム、マグネシウム等の非磁性金属からなる。
【0029】
コア取付部232における第1端部側X1の端部には、鍔部24が形成されている。鍔部24は、ロータシャフト2の外周から径方向外側へ向かって突出して形成されている。
【0030】
図2に示すごとく、エンドプレート4は、鍔部24に対向する中心側円環部4aと、それよりも径方向外側においてロータコア3に対向する外周側円環部4cと、中心側円環部4aと外周側円環部4cとを繋ぐように形成され、径方向及び軸方向Xに対して傾斜した中間円環部4bとからなる。中間円環部4bは、径方向外側に向かうほど、第2端部側X2に向かうように傾斜している。そして、中間円環部4bに、冷媒受け面43が形成されている。図3に示すごとく、エンドプレート4には、周方向Yの全周にわたって冷媒受け面43が形成されている。
【0031】
また、図3図5に示すごとく、ロータシャフト2には、周方向Yの2箇所に、冷媒噴出口25が形成されている。周方向Yの2箇所に形成された冷媒噴出口25は、互いに周方向Yに180°ずれた位置に配置されている。
【0032】
図1図4に示すごとく、ロータコア3は、複数の永久磁石32を備えている。永久磁石32は、ロータコア3における外周面に近い位置において、軸方向Xに貫くようにロータコア3内に保持されている。ロータコア3は、複数の環状の電磁鋼板33を軸方向Xに積層してなる。
【0033】
次に、本例の作用効果につき説明する。
回転電機用ロータ1においては、以下のように、冷却媒体が流れると共に、エンドプレート4に力を及ぼす。
すなわち、回転電機用ロータ1が回転駆動すると、冷媒流路26から冷媒吐出口221(図1図3参照)を介して冷却媒体Cが、遠心力によって径方向外側へ向かって吐出される。これにより、冷却媒体Cは、冷媒保持部236に到達して、保持される。冷媒保持部236に保持された冷却媒体Cは、さらに、遠心力によって冷媒噴出口25から噴出し、径方向外側へ向い、冷媒受け面43に衝突することとなる。これにより、冷媒受け面43が冷却媒体Cから力を受ける。そして、冷媒受け面43は、径方向及び軸方向Xに対して傾斜している。それゆえ、図6に示すごとく、冷媒受け面43が冷却媒体Cから受ける力Fは、径方向外側へ向かう力Fyと、軸方向Xの一方へ向かう力Fxとが、少なくとも合成された力と考えることができる。
【0034】
冷媒受け面43に、力Fxが加わることにより、ロータシャフト2に対してエンドプレート4が、第1端部側X1に移動することとなる。この移動方向に、エンドプレート4に対向する支承部11が設けてある。それゆえ、エンドプレート4は支承部11に当接し、押し付けられる。また、エンドプレート4が支承部11に当接した状態においても、エンドプレート4は第1端部側X1に移動しようとする。その結果、エンドプレート4は、支承部11に押し付けられた状態で軸方向Xに安定して固定されることとなる。すなわち、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力が確保される。
【0035】
また、上述のように、エンドプレート4は、支承部11に押し付けられた状態で軸方向Xに固定されるため、温度変化による膨張収縮が生じても、ロータシャフト2とエンドプレート4との軸方向Xの固定力が低下することを防ぐことができる。つまり、ロータシャフト2の外径とエンドプレート4の内径との寸法が多少変動しても、軸方向Xの固定力が変動することを防ぐことができる。したがって、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力を確保することができる。
【0036】
また、上述のようにエンドプレート4は支承部11に軸方向Xに押し付けられて固定されるため、ロータシャフト2の外径寸法やエンドプレート4の内径寸法に多少の誤差があっても、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力が低下することを防ぐことができる。したがって、ロータシャフト2の外径寸法やエンドプレート4の内径寸法の精度を特に高くする必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、冷媒受け面43は、径方向外側に向かうほど、軸方向Xにおけるロータコア3側に向かうように傾斜しており、ロータシャフト2は、エンドプレート4におけるロータコア3と反対側の面に対向する鍔部24を有し、鍔部24が支承部11となっている。これにより、冷媒受け面43が冷却媒体Cから力を受けたとき、エンドプレート4は鍔部24に当接するように構成されることとなる。それゆえ、エンドプレート4を軸方向Xに安定して固定することができる。
【0038】
また、冷媒受け面43は、周方向Yの全周にわたって形成されている。これにより、遠心力によって冷媒噴出口25から噴出した冷却媒体Cが、安定して冷媒受け面43に衝突することとなる。それゆえ、エンドプレート4を軸方向Xに、より安定して固定することができる。
【0039】
以上のごとく、本例によれば、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力を確保することができる回転電機用ロータを提供することができる。
【0040】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、冷媒受け面43が、径方向外側に向かうほど、軸方向Xにおけるロータコア3の反対側に向かうように傾斜している例である。
また、エンドプレート4は、鍔部24に対向する中心側円環部4dと、その外周端から径方向外側に向かうと共に第1端部側X1に向かうように延設された傾斜円環部4eとからなる。そして、傾斜円環部4eの表面のうち、軸方向Xにおける第1端部側X1を向く面が冷媒受け面43である。
中心側円環部4dは、鍔部24とロータコア3との間に介在し、ロータコア3に当接している。
また、冷媒噴出口25は、鍔部24に形成されており、その外周側の開口端がエンドプレート4の冷媒受け面43に向って開口している。
【0041】
本例においては、ロータコア3が支承部11となる。すなわち、回転電機用ロータ1が回転したとき、冷媒噴出口25から噴出する冷却媒体Cが冷媒受け面43に衝突する力により、エンドプレート4は、ロータコア3に押し付けられることとなる。
その他は、実施例1と同様である。なお、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0042】
本例の場合にも、実施例1と同様に、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力を確保することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
上記実施例においては、エンドプレート4を、ロータコア3における軸方向Xの一端にのみ配置した例を示したが、エンドプレートをロータコアの両端に配置した構成としてもよい。
また、上記実施例においては、冷媒受け面43及び冷媒噴出口25を周方向Yの2箇所に設けた例を示したが、冷媒受け面及び冷媒噴出口の個数は特に限定されるものではなく、1個でもよいし、3個以上でもよい。ただし、冷媒受け面及び冷媒噴出口は、周方向の複数箇所に設けてあることが好ましく、複数の冷媒受け面及び冷媒噴出口は周方向において等間隔に設けてあることが好ましい。
【0044】
また、エンドプレートは、冷媒受け面を形成することができる構造であれば、特にその形状が限定されるものではない。なお、冷媒噴出口に対する冷媒受け面の位置、軸方向、径方向、周方向に対する冷媒受け面の角度等は、冷媒噴出口から噴出する冷却媒体から効果的に力を受けることができるように、適宜設計することができる。
【0045】
また、ロータシャフトとして、上記実施例においては、インナシャフトとアウタシャフトとを互いに嵌合させて構成したものを示したが、これに限られることはなく、例えば、インナシャフトとアウタシャフトとが一体的に形成されたものであってもよい。あるいは、上記実施例に示したインナシャフトのような筒状のシャフトのみでロータシャフトを構成し、このロータシャフトに直接ロータコアが取り付けられた構成とすることもできる。
【0046】
また、上記実施例においては、ロータシャフトとエンドプレートとの間に、ロータシャフトに対してエンドプレートを周方向に固定する回り止め部を形成してもよい。例えば、回り止め部は、ロータシャフトの外周面に、軸方向から見て凹状となるシャフト凹部を形成し、エンドプレートの内周面に、軸方向から見て凸状となるプレート凸部を形成し、これらを嵌合させることにより形成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 回転電機用ロータ
11 支持部
2 ロータシャフト
25 冷媒噴出口
3 ロータコア
4 エンドプレート
43 冷媒受け面
51、52 コア保持部
X 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7