【実施例】
【0020】
(実施例1)
上記回転電機用ロータの実施例につき、
図1〜
図6を用いて説明する。
本例の回転電機用ロータ1は、
図1に示すごとく、ロータシャフト2と、ロータシャフト2の外周に設けられる環状のロータコア3と、ロータシャフト2の外周においてロータコア3の軸方向Xの少なくとも一方に配置される環状のエンドプレート4と、を備えている。
【0021】
ロータシャフト2には、ロータコア3を軸方向Xに挟持して固定する一対のコア保持部51、52が、ロータコア3の軸方向Xの両側にそれぞれ設けてある。
エンドプレート4は、径方向及び軸方向Xに対して傾斜した冷媒受け面43を有する。
図2に示すごとく、ロータシャフト2は、ロータシャフト2の回転に伴って作用する遠心力によって冷却媒体Cを噴出する冷媒噴出口25を、エンドプレート4の冷媒受け面43に向かって開口させてなる。
図1に示すごとく、エンドプレート4の冷媒受け面43が、冷却媒体Cから力を受けたときにエンドプレート4が軸方向Xに移動する側に、エンドプレート4に対向する支承部11が設けてある。
【0022】
本例において、冷媒受け面43は、径方向外側に向かうほど、軸方向Xにおけるロータコア3側に向かうように傾斜しており、ロータシャフト2は、エンドプレート4におけるロータコア3と反対側の面に対向する鍔部24を有し、鍔部24が支承部11となっている。
【0023】
回転電機用ロータ1は、周方向Yの一方に主として回転するよう構成されており、この方向を、
図3、
図4に示すごとく、ロータ回転方向Y1とする。
そして、回転電機用ロータ1は、図示しないステータの内周側に回転可能に配置され、回転電機を構成する。この回転電機は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等に用いるモータ、ジェネレータ、モータジェネレータとして用いることができる。
【0024】
図1に示すごとく、ロータシャフト2は、インナシャフト22と、インナシャフト22の外周側に配設されたアウタシャフト23とを有する。アウタシャフト23は、インナシャフト22を挿嵌させるための筒状の筒状部231と、筒状部231の外周側に配設され、ロータコア3を取り付けるためのコア取付部232とを有する。筒状部231とコア取付部232とは連結部233によって連結されている。
【0025】
インナシャフト22は、筒状に形成されており、内側に冷却媒体を流通させる冷媒流路26を備えている。また、インナシャフト22には、径方向に開口した冷媒吐出口221が形成されており、冷媒流路26から冷媒吐出口221を介して冷却媒体が吐出されるよう構成されている。冷媒吐出口221は、径方向から見てコア取付部232と重なる位置に形成されている。また、コア取付部232は、その内周面側において、径方向から見て冷媒吐出口221と重なる位置を含む領域に、冷却媒体を一旦保持する冷媒保持部236を有する。すなわち、冷媒保持部236は、冷媒吐出口221から吐出された冷却媒体を受けて、保持する。本例においては、冷媒保持部236は、周方向Yの全域にわたって形成されている。そして、冷媒噴出口25は、その内周側の開口端を、冷媒保持部236に開口し、外周側の開口端をエンドプレート4の冷媒受け面43に向って開口している。なお、冷却媒体としては、例えば、絶縁性油等の冷却油を用いることができる。
【0026】
コア取付部232には、ロータコア3が嵌合されており、その軸方向Xの両端に設けられた一対のコア保持部51、52によって、軸方向Xに保持されている。また、エンドプレート4も、コア取付部232の外周に嵌合されて、軸方向Xの一端からロータコア3に対向配置されている。
【0027】
一対のコア保持部51、52のうち、一方のコア保持部51は、ロータシャフト2と一体的に形成されている。すなわち、コア保持部51は、ロータシャフト2におけるコア取付部232から径方向外側へ突出している。コア保持部51は、コア取付部232における軸方向Xの一端側において、周方向Yの全周にわたって形成されている。他方のコア保持部52は、ロータシャフト2とは別体の環状部材を、ロータシャフト2の外周面に嵌合して形成してある。すなわち、コア保持部52は、コア保持部51とは軸方向Xの反対側の端部において、コア取付部232に、焼き嵌め等によって嵌合固定してある。そして、一対のコア保持部51、52の間に、コア取付部232の外周に配置されたロータコア3が軸方向Xに挟持されている。
【0028】
以下において、適宜、ロータコア3に対してコア保持部51が配置された側の軸方向Xの一端側(
図1における左側)を第1端部側X1といい、これと反対側(
図1における右側)を第2端部側X2という。
なお、ロータシャフト2(インナシャフト22及びアウタシャフト23)とコア保持部52とは、互いに同種の金属からなることが好ましく、例えば鉄からなる。一方、エンドプレート4は、ロータコア3からの磁束漏れを防ぐために、アルミニウム、マグネシウム等の非磁性金属からなる。
【0029】
コア取付部232における第1端部側X1の端部には、鍔部24が形成されている。鍔部24は、ロータシャフト2の外周から径方向外側へ向かって突出して形成されている。
【0030】
図2に示すごとく、エンドプレート4は、鍔部24に対向する中心側円環部4aと、それよりも径方向外側においてロータコア3に対向する外周側円環部4cと、中心側円環部4aと外周側円環部4cとを繋ぐように形成され、径方向及び軸方向Xに対して傾斜した中間円環部4bとからなる。中間円環部4bは、径方向外側に向かうほど、第2端部側X2に向かうように傾斜している。そして、中間円環部4bに、冷媒受け面43が形成されている。
図3に示すごとく、エンドプレート4には、周方向Yの全周にわたって冷媒受け面43が形成されている。
【0031】
また、
図3、
図5に示すごとく、ロータシャフト2には、周方向Yの2箇所に、冷媒噴出口25が形成されている。周方向Yの2箇所に形成された冷媒噴出口25は、互いに周方向Yに180°ずれた位置に配置されている。
【0032】
図1、
図4に示すごとく、ロータコア3は、複数の永久磁石32を備えている。永久磁石32は、ロータコア3における外周面に近い位置において、軸方向Xに貫くようにロータコア3内に保持されている。ロータコア3は、複数の環状の電磁鋼板33を軸方向Xに積層してなる。
【0033】
次に、本例の作用効果につき説明する。
回転電機用ロータ1においては、以下のように、冷却媒体が流れると共に、エンドプレート4に力を及ぼす。
すなわち、回転電機用ロータ1が回転駆動すると、冷媒流路26から冷媒吐出口221(
図1、
図3参照)を介して冷却媒体Cが、遠心力によって径方向外側へ向かって吐出される。これにより、冷却媒体Cは、冷媒保持部236に到達して、保持される。冷媒保持部236に保持された冷却媒体Cは、さらに、遠心力によって冷媒噴出口25から噴出し、径方向外側へ向い、冷媒受け面43に衝突することとなる。これにより、冷媒受け面43が冷却媒体Cから力を受ける。そして、冷媒受け面43は、径方向及び軸方向Xに対して傾斜している。それゆえ、
図6に示すごとく、冷媒受け面43が冷却媒体Cから受ける力Fは、径方向外側へ向かう力Fyと、軸方向Xの一方へ向かう力Fxとが、少なくとも合成された力と考えることができる。
【0034】
冷媒受け面43に、力Fxが加わることにより、ロータシャフト2に対してエンドプレート4が、第1端部側X1に移動することとなる。この移動方向に、エンドプレート4に対向する支承部11が設けてある。それゆえ、エンドプレート4は支承部11に当接し、押し付けられる。また、エンドプレート4が支承部11に当接した状態においても、エンドプレート4は第1端部側X1に移動しようとする。その結果、エンドプレート4は、支承部11に押し付けられた状態で軸方向Xに安定して固定されることとなる。すなわち、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力が確保される。
【0035】
また、上述のように、エンドプレート4は、支承部11に押し付けられた状態で軸方向Xに固定されるため、温度変化による膨張収縮が生じても、ロータシャフト2とエンドプレート4との軸方向Xの固定力が低下することを防ぐことができる。つまり、ロータシャフト2の外径とエンドプレート4の内径との寸法が多少変動しても、軸方向Xの固定力が変動することを防ぐことができる。したがって、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力を確保することができる。
【0036】
また、上述のようにエンドプレート4は支承部11に軸方向Xに押し付けられて固定されるため、ロータシャフト2の外径寸法やエンドプレート4の内径寸法に多少の誤差があっても、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力が低下することを防ぐことができる。したがって、ロータシャフト2の外径寸法やエンドプレート4の内径寸法の精度を特に高くする必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、冷媒受け面43は、径方向外側に向かうほど、軸方向Xにおけるロータコア3側に向かうように傾斜しており、ロータシャフト2は、エンドプレート4におけるロータコア3と反対側の面に対向する鍔部24を有し、鍔部24が支承部11となっている。これにより、冷媒受け面43が冷却媒体Cから力を受けたとき、エンドプレート4は鍔部24に当接するように構成されることとなる。それゆえ、エンドプレート4を軸方向Xに安定して固定することができる。
【0038】
また、冷媒受け面43は、周方向Yの全周にわたって形成されている。これにより、遠心力によって冷媒噴出口25から噴出した冷却媒体Cが、安定して冷媒受け面43に衝突することとなる。それゆえ、エンドプレート4を軸方向Xに、より安定して固定することができる。
【0039】
以上のごとく、本例によれば、ロータシャフトに対するエンドプレートの軸方向の固定力を確保することができる回転電機用ロータを提供することができる。
【0040】
(実施例2)
本例は、
図7に示すごとく、冷媒受け面43が、径方向外側に向かうほど、軸方向Xにおけるロータコア3の反対側に向かうように傾斜している例である。
また、エンドプレート4は、鍔部24に対向する中心側円環部4dと、その外周端から径方向外側に向かうと共に第1端部側X1に向かうように延設された傾斜円環部4eとからなる。そして、傾斜円環部4eの表面のうち、軸方向Xにおける第1端部側X1を向く面が冷媒受け面43である。
中心側円環部4dは、鍔部24とロータコア3との間に介在し、ロータコア3に当接している。
また、冷媒噴出口25は、鍔部24に形成されており、その外周側の開口端がエンドプレート4の冷媒受け面43に向って開口している。
【0041】
本例においては、ロータコア3が支承部11となる。すなわち、回転電機用ロータ1が回転したとき、冷媒噴出口25から噴出する冷却媒体Cが冷媒受け面43に衝突する力により、エンドプレート4は、ロータコア3に押し付けられることとなる。
その他は、実施例1と同様である。なお、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0042】
本例の場合にも、実施例1と同様に、ロータシャフト2に対するエンドプレート4の軸方向Xの固定力を確保することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
上記実施例においては、エンドプレート4を、ロータコア3における軸方向Xの一端にのみ配置した例を示したが、エンドプレートをロータコアの両端に配置した構成としてもよい。
また、上記実施例においては、冷媒受け面43及び冷媒噴出口25を周方向Yの2箇所に設けた例を示したが、冷媒受け面及び冷媒噴出口の個数は特に限定されるものではなく、1個でもよいし、3個以上でもよい。ただし、冷媒受け面及び冷媒噴出口は、周方向の複数箇所に設けてあることが好ましく、複数の冷媒受け面及び冷媒噴出口は周方向において等間隔に設けてあることが好ましい。
【0044】
また、エンドプレートは、冷媒受け面を形成することができる構造であれば、特にその形状が限定されるものではない。なお、冷媒噴出口に対する冷媒受け面の位置、軸方向、径方向、周方向に対する冷媒受け面の角度等は、冷媒噴出口から噴出する冷却媒体から効果的に力を受けることができるように、適宜設計することができる。
【0045】
また、ロータシャフトとして、上記実施例においては、インナシャフトとアウタシャフトとを互いに嵌合させて構成したものを示したが、これに限られることはなく、例えば、インナシャフトとアウタシャフトとが一体的に形成されたものであってもよい。あるいは、上記実施例に示したインナシャフトのような筒状のシャフトのみでロータシャフトを構成し、このロータシャフトに直接ロータコアが取り付けられた構成とすることもできる。
【0046】
また、上記実施例においては、ロータシャフトとエンドプレートとの間に、ロータシャフトに対してエンドプレートを周方向に固定する回り止め部を形成してもよい。例えば、回り止め部は、ロータシャフトの外周面に、軸方向から見て凹状となるシャフト凹部を形成し、エンドプレートの内周面に、軸方向から見て凸状となるプレート凸部を形成し、これらを嵌合させることにより形成してもよい。