特許第6148231号(P6148231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148231
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】自動車のハンドル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20170607BHJP
   B60Q 3/20 20170101ALI20170607BHJP
【FI】
   B62D1/06
   B60Q3/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-516197(P2014-516197)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-520028(P2014-520028A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】DE2012100178
(87)【国際公開番号】WO2012175075
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年4月11日
【審判番号】不服2015-21582(P2015-21582/J1)
【審判請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】102011104994.4
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513323531
【氏名又は名称】シペック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(74)【代理人】
【識別番号】100143340
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 美良
(72)【発明者】
【氏名】ペカリ,クリストフ
【合議体】
【審判長】 和田 雄二
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−48025(JP,A)
【文献】 特開2010−244812(JP,A)
【文献】 特開2009−126448(JP,A)
【文献】 特開2010−70134(JP,A)
【文献】 実開平6−21500(JP,U)
【文献】 英国特許出願公告第980673(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
B60Q 3/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のハンドルの製造方法であって、
ハンドルの基部は、前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条(18、20)を有する被覆(16)内に収容されており、
前記少なくとも2つの条(18、20)の第1の自由端(22、24)には、前記基部に形成された第1の溝(28)内に保持される前に、ミシンによる機械縫合によって装飾縫い目が形成されており、
第1の溝(28)内に共に保持された前記少なくとも2つの条(18、20)の前記第1の自由端(22、24)は、前記第1の溝(28)内に配置された少なくとも1つの装飾ブレード(26)にミシンによる機械縫合によって連結されており、
前記少なくとも2つの条(18、20)の第2の自由端(32、34)は、前記基部に形成された第2の溝(36)内に保持されている、自動車のハンドルの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの条(18、20)の前記第1及び第2の自由端(22、24、32、34)は、接着剤により、それぞれ前記第1及び第2の溝(28、36)に保持されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のハンドルの製造方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の溝(28、36)には光源が組み込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車のハンドルの製造方法。
【請求項4】
前記基部は、合成材料の発泡体(14)で包まれた金属製の担体(12)を含み、該泡体(14)には前記第1及び第2の溝(28、36)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車のハンドルの製造方法。
【請求項5】
基部と、
前記基部の外周を覆う少なくとも2つの条(18、20)を有する被覆(16)と、を有し、
少なくとも2つの条(18、20)の第1の自由端(22、24)は、前記基部に形成
された第1の溝(28)内にしっかりと保持され、
前記少なくとも2つの条(18、20)の第2の自由端(32、34)は、前記基部に形成された第2の溝(36)内にしっかりと保持され、
前記第1の溝(28)内に保持された前記第1の自由端(22、24)は、ミシンによる機械縫合によって形成された装飾縫い目(44、46)を備え、
前記第1の溝(28)内に保持された前記第1の自由端(22、24)は、前記第1の溝(28)内に配置された少なくとも1つの装飾ブレード(26)にミシンによる機械縫合によって連結されている、ことを特徴とする自動車のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部及びその基部を包む少なくとも1つの条から成る被覆を備え、前記条の一端は前記基部に形成された溝にしっかりと保持された自動車のハンドル並びにそのハンドルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、革で被覆された自動車のハンドルが記載されている。2つの革条は、一端で縫い合わされている。2つの革条をハンドルのリムに良好に位置決めできるように、縫い合わされた端部はハンドルのリムにハブの外周方向に形成された溝に係止されている。縫い合わされた端部を溝に装着してから、2つの革条は、外周のハンドルのリム面に装着し、2つの革条の自由端を縫い合わせて連結する。
【0003】
また、リムの断面半径がrであるハンドルを2πrの幅を有する1つの革条によってハンドルのリムを被覆する方法も周知の技術である。革条の長さは、ハンドルのリムの外周を廻る長さに相当する。革条の両端には、仮縫いした縫い目を備えている。革条をハンドルのリムの周りに装着すると、向かい合った端部が突合わせ連結部を形成する。次いで、仮縫いした縫い目を互いに連結させる。この場合の縫い目は、例えばインディアナポリス縫いであり、革条がハンドルのリムに装着されている場合には、ミシンが使えないので、手縫いとなる。ハンドルのリムがトーラス形状でなく、条が複雑な形状となるハンドルの被覆においても、双方の自由端の連結は手縫いで行う必要があることが多い。
【0004】
被覆の手縫いは多大の工数を要するので、コスト高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007028201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の問題点を解決し、低コストの自動車のハンドル及びその製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、請求項1に記載のハンドル及び請求項9に記載の製造方法により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施例における自動車のハンドルのリムの断面を示す模式斜視図
図2図1の2つの革条が装飾ブレードにより縫い付けられて連結された状態を示す断面図
図3図2の連結された2つの革条の伸長された状態を示す斜視図
図4】第2の実施例における革条の平面図
図5】第3の実施例における革条の展開図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による自動車のハンドルは、ハンドルの基部及び被覆を備え、その被覆は前記基部を包む少なくとも1つの革条より成る。少なくとも1つの条の第1の自由端は、前記基部に形成された溝にしっかりと保持される。前記条の第2の自由端も前記基部に形成された溝にしっかりと保持される。このことは、被覆を前記基部に装着した後に、条の端部同士を縫い合わせる必要が無く、むしろ、少なくとも1つの溝へと端部を挿入することにより、被覆が基部に固定されることを意味している。
【0010】
被覆の少なくとも1つの条をハンドルの基部に装着してその基部を包み、条の端部を少なくとも1つの溝に係止することにより基部に保持される。これにより、被覆のハンドルへの縫い付け工程が無くなるので、低コストでハンドルを供給できる。
【0011】
好適な実施例では、被覆は単一の条により構成され、該条の2つの自由端は、同一の溝に保持される。このような被覆のハンドルへの取付けにより、極めてコストを低くできる。従来の被覆では必要であった(装飾)縫い目は、完全に無くなる。
【0012】
少なくとも1つの第1の条及び少なくとも1つの第2の条により構成される被覆の別の好適な実施例では、魅力的な意匠のハンドルが提供できる。この実施例では、2つの条のそれぞれの第1の自由端は第1の溝に保持され、それぞれの第2の自由端は第2の溝に保持される。また、被覆を溝に挿入することにより、被覆の縫いの操作無しにハンドルの基部に固定できる。更に、3つ以上の条を備えた実施例も可能であり、それぞれの自由端はハンドルのリムの周方向に伸長する溝にその自由端が固定されている。
【0013】
共通の溝に収納されている双方の条の自由端が機械による少なくとも1つの装飾縫い目を備えていることは、本発明の特徴である。この装飾縫い目は、2つの自由端を溝に挿入する前に、ミシンにより為されたもので、従来の手縫いと同様に、ハンドルに取付けられる。装飾縫い目を機械的に縫い付けた後に、装飾縫い目を備えた自由端は、共通の溝に挿入される。自由端の溝への挿入により、被覆がハンドルの基部に固定される。このようにして、手動によらずに、種々の複雑な模様を被覆上に形成できる。
【0014】
更に、あるいは代わりの実施例として、共通の溝に配された少なくとも1つのブレードにより、その溝に保持されている2つの条の自由端を連結する構成も考えられる。そのような装飾ブレード、すなわち一回折りの条が、2つの条と異なった色であれば、魅力的な外見を備えたハンドルが得られる。2つの条の自由端は、被覆をハンドルの基部に装着する前に、機械的な縫い合わせにより、ブレードにより連結される。
【0015】
接着剤により、条の自由端の保持を強化してもよい。接着剤は、溝に部分的に塗布してもよい。
【0016】
更に、ハンドルの基部及び/又は被覆の内側に少なくとも部分的に接着剤を塗付すると、被覆がハンドルの基部に確実に固定されることになる。
【0017】
LED、発光する条などの光源を溝に組み込んで、ハンドル周りの装飾的な照明として用いてもよい。
【0018】
自動車のハンドルを製造する本発明の工程においては、ハンドルの基部は、その外周面を少なくとも1つの条から成る被覆に包まれる。少なくとも1つの条の第1の自由端は、前記基部に形成された第1の溝に固定される。少なくとも1つの条の第2の自由端も前記基部に形成された第2の溝に固定される。このような構成では、条の手による縫い合わせが不要なので、低コストで製造できる。
【0019】
上述の特徴及びその組み合わせ並びに以下の図の説明及び/又は図に示された特徴及びその組み合わせは、発明の範囲を逸脱することなく、特定な組み合わせばかりでなく、他の組み合わせ又は単独で使用できる。
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、自動車のハンドルのリム10の断面を示す模式斜視図である。リム10は、例えばアルミニウム合金などの金属製の担体12及びその担体を包む合成材料、特に発泡体14を含んで構成される。このようにして形成されたリムの基部は、rの半径を有する。
【0022】
図1に示すように、基部の外周は、第1の革条18及び第2の革条20から成る革の被覆16で包まれている。第1の革条18の第1の自由端22と第2の革条20の第1の自由端24は装飾ブレード26に縫い付けられている。2つの自由端22、24並びに装飾ブレード26は、リム10の基部の発泡体14に形成された溝28に保持されている。溝28は、(不図示の)ハブの周りを、双方向矢印30で示されるリム10の周方向に伸長している。
【0023】
第1の革条18の第2の自由端32及び第2の革条20の第2の自由端34は、リム10の基部の第1の溝28と平行な第2の溝36に保持されている。第2の溝36も、リム10の基部の発泡体14に形成されている。
【0024】
ハンドルの製造過程においては、2つの革条18、20のそれぞれの自由端22、24は、先ず装飾ブレード26に縫い付けられる(図2参照)。この縫い付けは、自由端22、24を第1の溝28に挿入する前に行われる。縫い目38により装飾ブレード26と革条18、20をミシンで簡単に連結できるように、2つの革条18、20の幅を選定する。
【0025】
次いで、狭幅の革条20を所望の幅に切断する。図2では、模式的に切断箇所を40の符号で示した。2つの革条18、20のそれぞれの第2の自由端32、34が第2の溝36に挿入されるように、リム10の基部の大部分を包む広幅の革条18を正確な幅に切断する。図2では、革条18、20を矢印42のように動かして、それぞれの革条の第1の自由端22、24が装飾ブレード26と縫い目を形成することを示している(図3参照)。
【0026】
切断により、広幅の革条18及び狭幅の革条20は、ハンドルのリム10を包むのに適した幅を有することになる。図3からわかるように、装飾ブレード26を含んだ縫い目は、第1の溝28に挿入することができる。
【0027】
次いで、第2の自由端32、34が第2の溝36に位置するように、2つの革条18、20をハンドルのリム10の周りに装着する(図1参照)。第2の自由端32、34は、接着剤により第2の溝36に係止される。このようにして、手作業によって縫い目を形成しなくても、ハンドルのリム10の基部に革の被覆16を取付けることができる。
【実施例2】
【0028】
図4に示すハンドルのリム10の被覆16は、革条18、20の第1の自由端22、24と共に溝28に保持される装飾ブレード26に加えて、装飾縫い目44、46を備えている。これらの装飾縫い目44、46も、ハンドルのリム10の基部に被覆16装着する前に、機械的に形成される。2つの装飾縫い目44、46の代わりに、1つ又は数個でもよく、場合によっては装飾ブレード26を省いてもよい。
【実施例3】
【0029】
図5に示す別の実施例では、ハンドルのリム10の基部の被覆は、第1の革条18のみから成る。この図において、長さLは、ハンドルのリム10のハブの周を伸長する図1では双方向矢印30で示される外周に相当する。
【0030】
本実施例では、革条18の幅は、ハンドルのリム10の基部の円周2πrよりも2つの自由端22、32の幅、すなわち2Δ分だけ広い。この余分な幅により、自由端22、32を共通の溝36に挿入できる。革条18の自由端22、32を溝内36に係止することにより、革条18をハンドルに手縫いで取り付ける必要がなくなる。ここでは、装飾ブレードは用いないため、溝28は不要となる。
【0031】
共通の溝36並びに被覆16に接するハンドルのリム10の基部に接着剤を塗布して、被覆16の装着を改善することができる。
【0032】
溝36には、照明として、例えば、発光する条、あるいは1つ又は複数のLEDを組み込んでもよい。これにより、以前には無い、自動車内部の照明並びに内装の意匠に新たな可能性が開ける。
【符号の説明】
【0033】
10 (ハンドルの)リム
12 担体
14 発泡体
16 被覆
18、20 革条
22 革条18の第1の自由端
24 革条20の第1の自由端
26 装飾ブレード
28 第1の溝
30 (溝28の伸長方向を示す)双方向矢印
32 革条18の第2の自由端
34 革条20の第2の自由端
36 第2の溝
38 縫い目
40 (革条20の)切断箇所
42 (革条18、20を動かす方向を示す)矢印
44、46 装飾縫い目
図1
図2
図3
図4
図5