(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誤配線検出部は、前記電流指令部が無効電流を指令する前に検出されたモータ温度と前記電流指令部が無効電流を指令した後に検出された温度との差が第1の基準値より小さい場合に誤配線が生じていると判断する、請求項1に記載のモータ制御装置。
前記誤配線検出部は、検出されたモータ温度と検出された位置検出器温度との差が第2の基準値より大きい場合に誤配線が生じていると判断する、請求項3に記載のモータ制御装置。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動するためには、モータに対してモータ制御装置からモータへの動力線と検出器への信号線を接続する必要がある。これら動力線や信号線の接続は人の手によって行われるため、配線を誤ることがしばしば発生し得る。
【0003】
動力線の誤配線として、相順間違いや、欠相・短絡などが挙げられる。動力線が誤配線状態かどうかを機械的に判断するための手段として、電圧を印加して電流値の過不足を検出する方法(例えば、特許文献1)や、電流値と出力されるモータトルクを比較する方法(例えば、特許文献2)が知られている。
【0004】
信号線の誤配線として、1対の検出器とモータ制御装置が複数組存在する場合に、1対1の対応を間違えて異なる組合せの検出器とモータ制御装置間で配線してしまうことが挙げられる。信号線が誤配線状態かどうかを機械的に判断するための手段として、パラメータによって指定された検出器タイプと実際に接続されている検出器を比較し、指定された検出器が接続されているかどうかを検出する方法などが知られている(例えば、特許文献3)。
【0005】
また、上記のような検出方法のほかにも、実際にモータを駆動させることで、動力線や信号線の接続が正常かどうかを判定する方法も一般的に採用されている。
【0006】
従来技術を用いる事により、動力線の誤配線については、複数巻線のモータにおいても検出することが可能である。しかし、信号線の誤配線の検出となると、特許文献3のような検出方法の場合、複数台のモータで同じ検出器を使用している場合において、誤配線を検出することが難しい。
【0007】
また、複数台のモータで1つの軸を駆動する機械構成の場合、ロータの位相が合致していた場合は検出器からは問題が認められないため、誤った配線状態でも駆動自体は可能であり、モータの力率低下など、制御面で不安定となる可能性がある。
【0008】
次に、従来のモータ制御装置における誤配線について説明する。
図1に、従来技術における複数台のモータとモータ制御部における信号線の誤配線の状態を表すブロック図を示す。1つのモータは、対応する1つのモータ制御装置で駆動される。複数軸を稼動させるような機械の場合、この1対のモータとモータ制御装置が複数組存在する。
図1にはモータとモータ制御装置の組み合わせが2組ある例を示している。モータ制御装置A(1001A)は動力線(図示せず)を介してモータA(10A)を制御し、モータ制御装置B(1001B)は動力線(図示せず)を介してモータB(10B)を制御する。
【0009】
一方、検出器からの信号線については、モータB(10B)がモータ制御装置A(1001A)と配線30Aを介して接続され、モータA(10A)がモータ制御装置B(1001B)と配線30Bを介して接続されている。このように、複数組のモータとモータ制御装置が存在する場合、動力線は正常に配線されているにもかかわらず、上記のように検出器からの信号線を、異なるモータとモータ制御装置の組合せで配線することがしばしば発生する。上記のような誤配線状態のまま駆動させようとした場合、モータのロータの位相を正しくフィードバックすることができないため、モータに過大な電流を指令する可能性がある。
【0010】
特許文献3に示される方法では、モータ制御装置に使用する検出器のモデルをパラメータで入力しておき、接続された検出器が入力されているモデルと異なる場合に誤配線として検出する。
【0011】
しかし、この方法では、複数のモータで同一の検出器を用いた場合に検出器同士の識別ができないため、誤配線を検出できないという問題がある。
【0012】
また、1つの軸を複数台のモータで駆動する場合(タンデム駆動)にも、この誤配線が発生することが考えられる。
図2に、従来技術のタンデム駆動時における信号線の誤配線の状態を表すブロック図を示す。
図2にはモータとモータ制御装置の組み合わせが2組あり1つの軸100を駆動する例を示している。モータ制御装置A(1002A)及びモータ制御装置B(1002B)と、モータA(10A)及びモータB(10B)との間の動力線(図示せず)及び検出器からの信号線の接続状態は
図1に示した例と同様である。
【0013】
タンデム駆動の場合、複数のモータのロータ位相が同時に回転するため、複数のモータのロータ位相が偶然同じだった場合、モータは見掛け上、正常に駆動する。しかしながら、なんらかの理由でロータ位相に差異が生じた場合にモータがフルトルクで回転するため、機械本体やワークに損傷を与える等、多大な影響を及ぼすことが考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るモータ制御装置について説明する。
【0020】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図3に本発明の実施例1に係るモータ制御装置のブロック図を示す。本発明の実施例1に係るモータ制御装置101Aは、配線30Aを用いてモータ10Aと接続されるように構成されたモータ制御装置であって、モータを駆動するモータ駆動部2Aと、モータ駆動部へ電流を指令する電流指令部3Aと、モータに設置されたモータ温度検出部20Aが検出したモータ温度を示す信号を、配線を介して取得し、モータと接続された配線の誤配線を検出する誤配線検出部4Aと、を具備し、誤配線検出部4Aは、電流指令部3Aがモータ駆動部2Aへ無効電流を指令したときのモータ温度の変化に基づいて配線30Aの誤配線の有無を検出する、ことを特徴とする。
【0021】
次に、本発明の実施例1に係るモータ制御装置による誤配線の検出方法について説明する。まず、
図3に示すように、モータ制御装置A(101A)内にあるモータ駆動部2Aへ電流指令部3Aから無効電流を指令する。ここで、無効電流とは、モータが回転に寄与しない位相電流をいう。モータA(10A)に無効電流を流すと、モータA(10A)のロータは回転しないが、電流はモータA(10A)内のコイル抵抗にて熱として消費されるため、モータA(10A)の温度は上昇する。モータA(10A)の温度が上昇するとモータA(10A)内にあるモータ温度検出部20Aが検出した温度が変化する。この温度変化に基づいて誤配線検出部4Aが誤配線を検出する。
【0022】
図3の例では、モータ制御装置A(101A)にて無効電流を指令すると、モータAの温度が上昇する。しかし、信号線30Aは、正常な状態であれば、モータA(10A)とモータ制御装置A(101A)とを接続すべきところ、モータ制御装置A(101A)からモータB(10B)へと誤接続されているため、モータB(10B)内のモータ温度検出部20Bにて検出される温度変化がモータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aにフィードバックされる。モータB(10B)に電流は印加されていないため、温度変化は生じない。従って、モータ制御装置A(101A)内で温度変化の有無を判断する誤配線検出部4Aで、無効電流指令と温度変化の関係を判定し、誤配線かどうかを検出することができる。
【0023】
モータA(10A)とモータB(10B)のロータが同位相であった場合でも、上記の方法を用いれば誤配線を検出することができる。なお、モータ温度検出部20Aは、例えば、モータの巻線の温度を検出する。
【0024】
誤配線検出部4Aで行う誤配線に対する判定方法としては、以下の2つの方法が考えられる。
【0025】
[1]第1の判断方法
無効電流を印加する前の初期温度Ta1と、無効電流を印加した後の温度Ta2を比較し、一定の閾値である第1の基準値Xを基に判断する。即ち、誤配線検出部4Aは、電流指令部3Aが無効電流を指令する前に検出されたモータ温度Ta1と電流指令部3Aが無効電流を指令した後に検出された温度Ta2との差が第1の基準値Xより小さい場合に誤配線が生じていると判断する。
例えば、(Ta2−Ta1)>Xならば誤配線なし、(Ta2−Ta1)≦Xならば誤配線ありと判断する。
【0026】
[2]第2の判断方法
無効電流を印加していない他のモータ温度Taと、判定対象となるモータの温度Tbを比較し、一定の閾値Xを基に判断する。
例えば、(Tb−Ta)>Xならば誤配線なし、(Tb−Ta)≦Xならば誤配線ありと判断する。
【0027】
上記2つの判断方法について詳細に説明する。まず、上記の[1]第1の判断方法について説明する。
図4に本発明の実施例1に係るモータ制御装置の誤配線検出手順を説明するためのフローチャートを示す。
【0028】
まず、ステップS101において、モータAに無効電流を印加する前の初期温度Ta1を検出する。具体的には、
図3に示すように、モータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aが、モータに設置されたモータ温度検出部が検出したモータ温度を示す信号を、配線を介して取得する。ここで、配線が正常に接続されている場合はモータ温度検出部20Aが検出したモータA(10A)のモータ温度が誤配線検出部4Aに送信されるが、
図3に示すように配線30Aがモータ制御装置A(101A)からモータB(10B)に接続された誤配線が生じている場合には、モータ温度検出部20Bが検出したモータB(10B)のモータ温度が誤配線検出部4Aに送信される。
【0029】
次に、ステップS102において、モータ制御装置A(101A)内にあるモータ駆動部2Aへ電流指令部3Aから無効電流を指令する。指令された無効電流は、モータ制御装置A(101A)から動力線(図示せず)を介してモータA(10A)に印加される。無効電流はモータが回転に寄与しない位相電流であるため、印加された無効電流によってモータA(10A)のロータは回転しないが、無効電流はモータA内のコイル抵抗にて熱として消費されるため、モータA(10A)の温度は上昇する。
【0030】
次に、ステップS103において、モータA(10A)に無効電流を流した後の温度Ta2を検出する。
図3に示した例では、モータ温度検出部20Aが検出したモータ温度を送信するためのモータA(10A)の信号線がモータ制御装置B(101B)に接続され、モータ温度検出部20Bが検出したモータ温度を送信するためのモータB(10B)の信号線がモータ制御装置A(101A)に接続された誤配線が生じている。従って、
図3に示した例では、モータ制御装置A(101A)内の誤配線検出部4Aが取得するモータ温度Ta2はモータBのモータ温度である。
【0031】
次に、ステップS104において、下記の式(1)が成立するか否かを判断する。
(Ta2−Ta1)>X (1)
ここで、第1の基準値Xは所定の閾値であって、環境の変化によって変動する温度変化分より大きく、無効電流を印加した際に生じる温度上昇分より小さな値に設定することが好ましい。
【0032】
図3に示した例では、モータAに無効電流を流した後の温度Ta2は、モータAに無効電流を印加する前の初期温度Ta1とほとんど変わらないと考えられるため、式(1)は成立せず、ステップS106において誤配線が生じていることを検出することができる。
【0033】
一方、
図3とは異なり、モータA(10A)の信号線がモータ制御装置A(101A)に接続され、モータB(10B)の信号線がモータ制御装置B(101B)に接続されるように配線が正常な場合には、モータA(10A)のモータ温度検出部20Aが検出したモータAのモータ温度をモータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aが取得することができるため、モータA(10A)の温度上昇を検出することができる。その結果、式(1)が成立するため、ステップS105において、誤配線が生じていないものと判断することができる。
【0034】
上記のように、第1の判断方法によれば、モータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aのみで誤配線の有無を検出することができる。
【0035】
次に、[2]第2の判断方法について、
図5に示した本発明の実施例1に係るモータ制御装置の誤配線検出手順の他の例を説明するためのフローチャートを用いて説明する。
【0036】
まず、ステップS201において、モータ制御装置A(101A)内にあるモータ駆動部2Aへ電流指令部3Aから無効電流を指令する。指令された無効電流は、モータ制御装置A(101A)から動力線(図示せず)を介してモータA(10A)に印加される。無効電流はモータが回転に寄与しない位相電流であるため、印加された無効電流によってモータA(10A)のロータは回転しないが、無効電流はモータA内のコイル抵抗にて熱として消費されるため、モータA(10A)の温度は上昇する。
【0037】
次に、ステップS202において、モータAに無効電流を印加した後の温度Taを検出する。具体的には、
図3に示すように、モータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aが、モータに設置されたモータ温度検出部が検出したモータ温度を示す信号を、配線を介して取得する。ここで、配線が正常に接続されている場合はモータ温度検出部20Aが検出したモータA(10A)の温度が誤配線検出部4Aに送信されるが、
図3に示すように配線30Aがモータ制御装置A(101A)からモータB(10B)に接続された誤配線が生じている場合には、モータ温度検出部20Bが検出したモータB(10B)のモータ温度が誤配線検出部4Aに送信される。ここで、モータBには無効電流が印加されていないので、検出した温度Taは無効電流印加前から変化がないと考えられる。
【0038】
次に、ステップS203において、無効電流を印加していない他のモータであるモータB(10B)の温度Tbを検出する。
図3に示した例では、モータ温度検出部20Aが検出したモータ温度を送信するためのモータA(10A)の信号線がモータ制御装置B(101B)に接続され、モータ温度検出部20Bが検出したモータ温度を送信するためのモータB(10B)の信号線がモータ制御装置A(101A)に接続された誤配線が生じている。従って、
図3に示した例では、モータ制御装置B(101B)内の誤配線検出部4Bが取得するモータ温度TbはモータAのモータ温度である。ここで、モータAには無効電流が印加されているので、検出した温度TbはTaより高くなっていると考えられる。
【0039】
次に、ステップS204において、下記の式(2)が成立するか否かを判断する。
(Ta−Tb)>X (2)
ここで、Xは所定の閾値であって、環境の変化によって変動する温度変化分より大きく、無効電流を印加した際に生じる温度上昇分より小さな値に設定することが好ましい点は上記と同様である。
【0040】
図3に示した例では、モータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aが取得したモータ温度Taは無効電流を印加していないモータBの温度であり、モータ制御装置B(101B)の誤配線検出部4Bが取得したモータ温度Tbは無効電流を印加したモータAの温度であり、Tb>Taとなっていると考えられる。従って、この場合には、式(2)は成立せず、ステップS206において誤配線が生じていることを検出することができる。
【0041】
一方、
図3とは異なり、モータA(10A)の信号線がモータ制御装置A(101A)に接続され、モータB(10B)の信号線がモータ制御装置B(101B)に接続されるように配線が正常な場合には、モータA(10A)のモータ温度検出部20Aが検出したモータAのモータ温度をモータ制御装置A(101A)の誤配線検出部4Aが取得し、モータB(10B)のモータ温度検出部20Bが検出したモータBのモータ温度をモータ制御装置B(101B)の誤配線検出部4Bが取得することができるため、誤配線検出部4AがモータA(10A)の温度上昇を検出することができる。その結果、式(2)が成立するため、ステップS205において、誤配線が生じていないものと判断することができる。
【0042】
上記のように、第2の判断方法によれば、複数の誤配線検出部で検出したモータ温度に基づいて瞬時に誤配線の有無を検出することができる。
【0043】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るモータ制御装置によれば、モータに無効電流を印加しても無効電流ではモータは回転しないため、安全に誤配線の有無を検出することができる。
【0044】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図6に本発明の実施例2に係るモータ制御装置のブロック図を示す。本発明の実施例2に係るモータ制御装置102Aが、実施例1に係るモータ制御装置101Aと異なっている点は、誤配線検出部4Aは、モータの位置検出器の温度を検出する位置検出器用温度検出部40Aから位置検出器温度の情報を第2の配線50Aを介して取得し、誤配線検出部4Aは、検出されたモータ温度と、検出された位置検出器温度とを比較した結果に基づいて誤配線の有無を検出する点である。本発明の実施例2に係るモータ制御装置102Aのその他の構成は、本発明の実施例1に係るモータ制御装置101Aにおける構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0045】
図6に示すように、本発明の実施例2に係るモータ制御装置では、モータA(10A)の位置検出器(図示せず)に設けた検出器用温度検出部40Aが検出した温度を用いて誤配線の有無を判断する点を特徴としている。位置検出器はモータA(10A)に対して連結して固定されるため、モータA(10A)が発熱した場合は伝熱により位置検出器も温度が上昇する。そこで、モータA(10A)のモータ温度検出部20Aが検出した温度Tmaと検出器用温度検出部40Aが検出した温度Tdaを比較し、一定の閾値に基づいて誤配線が生じているか否かの判定を行う。即ち、誤配線検出部4Aは、検出されたモータ温度Tmaと検出された位置検出器温度Tdaとの差が第2の基準値より大きい場合に誤配線が生じていると判断する。
【0046】
ここで、配線が正常に接続されていればTmaとTdaはほぼ等しい値となると考えられるため、両者の差の絶対値が小さい場合は、誤配線は生じていないと判断することができる。一方、誤配線が生じている場合は、TmaとTdaの差が顕著に生じるため、両者の差が大きくなり所定の閾値を超えた場合には誤配線が生じていると判断することができる。
【0047】
図6に示した例では、モータA(10A)のモータ温度検出部20Aはモータ制御装置A(102A)に第3の配線60Aにより接続され、モータB(10B)のモータ温度検出部20Bはモータ制御装置B(102B)に第3の配線60Bにより接続され、誤配線は生じていない。
【0048】
一方、モータA(10A)に設けられた検出器用温度検出部40Aはモータ制御装置B(102B)に第2の配線50Bにより接続され、モータB(10B)に設けられた検出器用温度検出部40Bはモータ制御装置A(102A)に第2の配線50Aにより接続され、誤配線が生じている。なお、
図6において配線30A及び30Bが示されているが、本実施例においては、モータ温度検出部20A及び20Bが検出したモータ温度は上記のように第3の配線60A及び60Bによりモータ制御装置A(102A)及びモータ制御装置B(102B)に送信されている。
【0049】
上記のように誤配線が生じている状態における、本発明の実施例2に係るモータ制御装置の誤配線検出手順について
図7に示したフローチャートを用いて説明する。
【0050】
まず、ステップS301において、モータ制御装置A(102A)内にあるモータ駆動部2Aへ電流指令部3Aから無効電流を指令する。指令された無効電流は、モータ制御装置A(10
2A)から動力線(図示せず)を介してモータA(10A)に印加される。無効電流はモータが回転に寄与しない位相電流であるため、印加された無効電流によってモータA(10A)のロータは回転しないが、無効電流はモータA内のコイル抵抗にて熱として消費されるため、モータA(10A)の温度は上昇する。
【0051】
次に、ステップS302において、モータA(10A)のモータ温度検出部20Aの温度Tmaを検出する。検出したモータAのモータ温度Tmaは、モータ温度検出部20Aから第3の配線60Aを介して、モータ制御装置A(102A)の誤配線検出装置4Aに送信される。第3の配線60Aは正常に接続されているため、モータ温度Tmaは通常の状態よりも高い温度を示すと考えられる。
【0052】
次に、ステップS303において、モータA(10A)の検出器用温度検出部40Aの温度Tdaを検出する。ここで、
図6に示すように、検出器用温度検出部40A及び40Bと、誤配線検出部4A及び4Bとを接続する第2の配線50A及び50
Bには誤配線が生じている。従って、検出器用温度検出部40Aが検出したモータAのモータ温度は、検出器用温度検出部40Aから第2の配線50Bを介して、モータ制御装置B(102B)の誤配線検出装置4Bに送信される。一方、検出器用温度検出部40Bが検出したモータBのモータ温度は、検出器用温度検出部40Bから第2の配線50Aを介して、モータ制御装置A(102A)の誤配線検出装置4Aに送信される。従って、誤配線検出装置4Aが取得する位置検出器温度Tdaは、実際にはモータBの温度であるので、Tdaは無効電流を印加する前の温度にほぼ等しいと考えられる。
【0053】
次に、ステップS304において、下記の式(3)が成立するか否かを判断する。
|Tma−Tda|≦Y (3)
ここで、Yは所定の閾値である第2の基準値である。式(3)が成立すれば誤配線なし、それ以外ならば誤配線と判断する。
【0054】
図6に示した例では、Tmaは無効電流を印加した後のモータAの温度であるので高い値を示す一方で、Tdaは無効電流が印加されていないモータBの温度であるので低い値を示す。その結果、TmaとTdaの差の絶対値は大きな値となり、式(3)は成立しないと考えられるため、ステップS306において、
誤配線ありと判断することができる。
【0055】
また、
図6とは異なり、誤配線が生じていない場合には、誤配線検出部4Aが取得するTma及びTdaは、それぞれモータ温度検出部20A及び検出器用温度検出部40Aが検出したモータAの温度であるので共に高い値を示し、両者の差の絶対値は小さくなると考えられる。その結果、式(3)は成立し、ステップS305において、誤配線は生じていないと判断することができる。なお、第2の配線50A、50B及び第3の配線60A、60Bが共に誤配線となる場合も式(3)は成立するが、誤配線が2か所同時に生じる可能性は低いものと考えられる。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施例2に係るモータ制御装置によれば、外気や機械本体からの伝熱の影響を受けないため、請求項1に記載の制御装置よりも、より正確に誤配線かどうかの判定を行うことができる。
【0057】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図8に本発明の実施例3に係るモータ制御装置のブロック図を示す。本発明の実施例3に係るモータ制御装置103Aは、n(n≧2)個のモータと配線30A〜30Zで接続されるように構成されたモータ制御装置であって、n個のモータ10A〜10Zをそれぞれ駆動するn個のモータ駆動部2A〜2Zと、n個のモータ駆動部へ電流を指令するn個の電流指令部3A〜3Zと、n個のモータのそれぞれに設置されたn個のモータ温度検出部20A〜20Zが検出したモータ温度を示す信号を、配線30A〜30Zを介して取得し、n個のモータ10A〜10Zと接続された配線の誤配線を検出する誤配線検出部4A〜4Zと、を具備し、誤配線検出部4A〜4Zは、m番目(m≦n)の電流指令部がm番目のモータ駆動部へ無効電流を指令したときのm番目のモータのモータ温度の変化に基づいて誤配線の有無を検出することを特徴とする。
【0058】
また、n個の電流指令部3A〜3Zが、n個のモータ駆動部2A〜2Zに対して、それぞれ異なった無効電流値を指令することが好ましい。
【0059】
図8に示すように、電流指令部3A,3B,・・・,3Zがモータ駆動部2A,2B,・・・,2Zに対して、それぞれ異なる無効電流値を印加する場合を考える。発熱量は電流値の2乗に比例するため、それぞれのモータ温度検出部20A,20B,・・・,20Zで検出される温度変化量は異なる。これにより、同時に複数台のモータの誤配線を検出することが可能になる。
【0060】
例えば、モータAに印加する無効電流をIa、モータBに印加する無効電流をIb、・・・モータZに印加する無効電流をIzとすると、それぞれの無効電流を印加したときの温度上昇は、ΔTa、ΔTb・・・ΔTzとなる。ここで、無効電流の値と温度上昇の値との間の相関関係が既知であれば温度上昇の値から誤配線が生じている個所を特定することができる。
図9に正しい配線がされている場合と、誤配線が生じている場合において、モータA,B・・・Zにそれぞれ異なる無効電流を印加した時のモータ温度上昇の一例を示す。ここで、
図9(a),(b)において、無効電流の印加前の温度をT
0で代表して示し、ハッチングを掛けた部分が温度変化分(例えばΔTa)を示している。
【0061】
図9(a)に示すように、モータAに印加した無効電流Iaによる温度上昇がΔTaであることが既知であれば、無効電流印加後の温度上昇がΔTaとなっていることから誤配線が生じていないことが確認できる。以下、モータB〜Zについても同様である。
【0062】
これに対して、
図9(b)に示すように、モータAに無効電流Iaを印加し、モータZに無効電流Izを印加したにも関わらず、モータAの温度上昇がΔTzであり、モータZの温度上昇がΔTaである場合には、モータAとモータZの信号線の配線が入れ違いになっていることがわかる。
【0063】
上記のように、モータA、モータB・・・モータZのそれぞれの無効電流印加前の初期温度をTa1、Tb1・・・Tz1とし、無効電流印加後の温度をTa2、Tb2・・・Tz2とすると、以下の式が全て成立する場合は誤配線なしと判断できる。
Ta2−Ta1=ΔTa
Tb2−Tb1=ΔTb
・・・
Tz2−Tz1=ΔTz
一方、
Ta2−Ta1=ΔTz
となる場合は、モータ制御装置AとモータZが信号線で配線された誤配線が生じていると判断できる。
【0064】
次に、本発明の実施例3に係るモータ制御装置を用いた誤配線の有無の検出方法について
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
まず、ステップS401において、モータA、B・・・Zの無効電流印加前の初期温度Ta1、Tb1・・・Tz1を検出する。具体的には、誤配線検出部4A,4B・・・4Zが、配線30A,30B・・・30Zを介して、無効電流印加前にモータ温度検出部20A,20B・・・20Zから出力されるモータA,B・・・Zの温度の検出値を取得する。
【0066】
次に、ステップS402において、モータA、B・・・Zにそれぞれ異なる無効電流Ia、Ib・・・Izを印加する。ここで、無効電流はモータA,B・・・Zとモータ制御装置103A,103B・・・103Zをそれぞれ接続する動力線を介して印加され、動力線は正しく接続されていると仮定する。
【0067】
次に、ステップS403において、モータA、B・・・Zに無効電流を印加した後の温度Ta2、Tb2・・・Tz2を検出する。
【0068】
次に、ステップS404において、Ta2とTa1の差が予め既知の温度ΔTaに等しいか否かを判断する。Ta2−Ta1=ΔTaが成立しない場合にはステップS408において誤配線ありと判断して一連の処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS404において、Ta2−Ta1=ΔTaが成立した場合は、モータAとモータ制御装置Aとの間の信号線は正しく接続されていると判断し、モータB以降の誤配線の有無を検出する。
【0070】
次に、ステップS405〜S406において、ステップS404と同様に、Tb2−Tb1=ΔTb,・・・,Tz2−Tz1=ΔTzが成立するか否かを判断する。それぞれの等式が成立しない場合にはステップS408において誤配線ありと判断する。一方、モータA〜Zの全てのモータに関して等式が成立した場合は、ステップS407において、誤配線なしと判断する。
【0071】
なお、上記の説明ではステップS408で誤配線があることのみを判断する例を示したが、無効電流印加前後の温度上昇を既知の値と対比することで、モータとモータ制御装置との間の誤配線の箇所を特定することができる。
【0072】
さらに、上記の説明では、ステップS408で誤配線を検出した時点で処理を終了する例を示したが、これには限られず、誤配線検出後も他のモータについて誤配線の有無を検出することで全てのモータにおける誤配線の箇所を特定することもできる。
【0073】
以上説明したように、本発明の実施例3に係るモータ制御装置によれば、複数台のモータで同じ検出器を使用している場合やタンデム駆動時でも判定が容易に行うことができる。また、複数台で1つの軸を駆動する機械構成において、ロータの位置が同位相であった場合に、モータを駆動することなくモータへの無効電流指令とモータの温度上昇を基に信号線の誤配線検出を行うことができる。さらに、異なる無効電流をそれぞれ印加することで、複数組の誤配線検出を同時に検出することも可能である。