特許第6148277号(P6148277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148277
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】系統連系インバータシステムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170607BHJP
   G05F 1/67 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   G05F1/67 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-84263(P2015-84263)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-208220(P2015-208220A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0045297
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】リ キ ス
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026593(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/051152(WO,A1)
【文献】 特開平06−332554(JP,A)
【文献】 特開2012−165588(JP,A)
【文献】 特開2002−112459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCエネルギー供給源の出力端に接続されるDC−DCコンバータと、前記DC−DCコンバータの出力端に接続されるインバータとを備え、前記DCエネルギー供給源から印加されるDC電圧をACの系統電圧に変換して系統に供給する系統連系インバータシステムの制御装置において、
前記DC−DCコンバータの入力電流及びDCリンク電圧の入力に基づいて、前記DC−DCコンバータを制御するDC−DCコンバータ制御信号を出力する第1制御部と、
前記DC−DCコンバータの入力電圧及び前記インバータの出力電流の入力に基づいて、前記インバータを制御するインバータ制御信号を出力する第2制御部とを含み、
前記第1制御部と前記第2制御部とは、信号の入出力が互いに連携しておらず、独立した制御構成を有し、
前記第2制御部は、
前記DC−DCコンバータの入力電圧を入力電圧指令により制御して出力電流指令を出力する入力電圧制御部と、
前記DCエネルギー供給源の最大電力点の電力が要求される場合、前記インバータの出力電流を前記入力電圧制御部から出力される出力電流指令により制御して前記インバータ制御信号を出力し、前記最大電力点より低い電力が要求される場合、前記インバータの出力電流を前記要求された電力に応じて設定された出力電流指令により制御する出力電流制御部とを含むことを特徴とする系統連系インバータシステムの制御装置。
【請求項2】
前記第1制御部は、
前記DCリンク電圧をDCリンク電圧指令により制御して入力電流指令を出力するDCリンク電圧制御部と、
入力電流を入力電流指令により制御して前記DC−DCコンバータ制御信号を出力する入力電流制御部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の系統連系インバータシステムの制御装置。
【請求項3】
前記第1制御部は、
DCリンク電圧をDCリンク電圧指令により制御して前記DC−DCコンバータ制御信号を出力するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の系統連系インバータシステムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力供給源からの直流電力を商用交流系統に供給するインバータシステムに関し、特に、商用交流系統から要求される電力に直ちに合わせることができるようにシーケンス制御構成(以下、単に制御構成という)が改善された系統連系インバータシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流(Direct Current)(以下、DCという)電圧は、太陽光、風力、燃料電池などの様々なDCエネルギー供給源から生産され、インバータシステムにより系統電圧(グリッド電圧)に一致する交流(Alternate Current)(以下、ACという)電圧に変換されて系統(グリッド)に供給される。
【0003】
従来のインバータシステムは、DCエネルギー供給源の出力端に接続されるDC−DCコンバータと、前記DC−DCコンバータの出力端に接続されるインバータとを備え、制御装置からの指令値に基づいて出力電流を制御する。
【0004】
また、系統負荷の変動に応じて最大電力を供給できるように、最大電力点追従(Maximum Power Point Tracking: MPPT)アルゴリズムを適用して入力電圧指令を制御する。
【0005】
近年、系統の保護や発電量の制限の必要性が高まって関連規定が制定されることにより、DCエネルギー供給源の発電電力を最大電力以下に制御する技術が非常に重要となっている。
【0006】
従来のインバータシステムの制御装置は、DC−DCコンバータの制御信号を出力すると生成されるDCリンク電圧を用いてインバータ制御信号を出力するので、多数の制御部が入力電圧から出力電流に至るまで信号の入出力に連携しており、事実上多数の制御部が1つにまとめられた制御構成構造を有する。
【0007】
よって、電力を制御するためには、入力電圧指令を制御して連鎖的に多数の制御部が動作を行った後に最終的に出力電流を供給する過程を繰り返すことにより、要求電力を供給しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1032720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の制御方式は、制御構成が複雑であるので処理時間が長く、応答速度が遅いので特定の電力に対応する出力電流を即時に供給できないという問題があった。
【0010】
なお、系統連系インバータシステムについては、特許文献1をはじめとする様々な先行技術文献が開示されているが、本発明の技術的課題に関するものは開示されていない。
【0011】
本発明の目的は、特定の電力に対する即時制御を実現するように改善された制御構成を有する系統連系インバータシステムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、DCエネルギー供給源の出力端に接続されるDC−DCコンバータと、前記DC−DCコンバータの出力端に接続されるインバータとを備え、前記DCエネルギー供給源から印加されるDC電圧をACの系統電圧に変換して系統に供給する系統連系インバータシステムの制御装置において、前記DC−DCコンバータを制御するDC−DCコンバータ制御信号を出力する第1制御部と、前記インバータを制御するインバータ制御信号を出力する第2制御部とを含み、前記第1制御部と前記第2制御部とは、信号の入出力が互いに連携しておらず、独立した制御構成を有し、前記第2制御部は、入力電圧を入力電圧指令により制御して出力電流指令を出力する入力電圧制御部と、出力電流を前記入力電圧制御部から出力される出力電流指令により制御して前記インバータ制御信号を出力する出力電流制御部とを含む本発明による系統連系インバータシステムの制御装置を提供することにより達成することができる。
【0013】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1制御部は、DCリンク電圧をDCリンク電圧指令により制御して入力電流指令を出力するDCリンク電圧制御部と、入力電流を入力電流指令により制御して前記DC−DCコンバータ制御信号を出力する入力電流制御部とを含む。
【0014】
本発明の好ましい他の態様によれば、前記第1制御部は、DCリンク電圧をDCリンク電圧指令により制御して前記DC−DCコンバータ制御信号を出力するように構成される。
【0015】
本発明の好ましいさらに他の態様によれば、前記第2制御部は、要求電力に応じて設定された出力電流指令により出力電流を制御して前記インバータ制御信号を出力するように構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、1つの流れにまとめられていたインバータシステムの制御装置の制御構成を2つの部分に分けることにより改善したので、出力電流に対する直接的な制御が可能であり、要求電力に対応する出力電流を即時供給することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるインバータシステムのブロック図である。
図2】従来のインバータシステムの制御装置の制御構成を示すブロック図である。
図3】本発明によるインバータシステムの制御装置の第1制御部の制御構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明によるインバータシステムの制御装置の第1制御部の制御構成の他の例を示すブロック図である。
図5】本発明によるインバータシステムの制御装置の第2制御部の制御構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の技術的特徴を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明によるインバータシステムのブロック図である。本発明によるインバータシステムは、DC−DCコンバータ10、インバータ20、フィルタ部30及び制御装置40を含む。
【0020】
DC−DCコンバータ10は、様々な種類のDCエネルギー供給源により生産されるDC電圧を安定化させて適宜昇圧又は変圧する手段であり、図1には一例としてブーストコンバータを示すが、本発明によるインバータシステムのDC−DCコンバータがこれに限定されるものではない。
【0021】
DC−DCコンバータ10は、制御装置40のDC−DCコンバータPWM(Pulse Width Modulation)制御信号DC−DC PWMが供給されてスイッチング素子S5が導通すると、入力電流Iinの電気エネルギーがリアクタL1に蓄積され、スイッチング素子S5がターンオフされると、リアクタL1に蓄積された電気エネルギーがコンデンサC2に供給されて定電圧のDCリンク電圧Vdcを形成する。
【0022】
インバータ20は、DC−DCコンバータ10の出力端に接続され、制御装置40のインバータPWM制御信号INV PWMに基づくスイッチング素子S1〜S4のスイッチング動作により、DC−DCコンバータ10から出力されるDCリンク電圧Vdcを系統電圧に一致するAC電圧に変換する。
【0023】
フィルタ部30は、インバータ20により変換されたAC電圧(信号)に混入した高調波成分を除去するための回路であって、リアクタL2及びコンデンサC3を含む。
【0024】
制御装置40は、第1制御部41及び第2制御部42から構成され、コンデンサC1にかかる入力電圧Vinを制御するための入力電圧指令Vin ref、リアクタL1に流れる入力電流Iinを制御するための入力電流指令Iin ref、コンデンサC2に印加されるDCリンク電圧Vdcを制御するためのDCリンク電圧指令Vdc ref、及びリアクタL2に流れる出力電流Iinvを制御するための出力電流指令Iinv refを該当制御部に出力する。また、制御装置40は、DC−DCコンバータ10を駆動制御するためのDC−DCコンバータPWM制御信号DC−DC PWM、及びインバータ20を駆動制御するためのインバータPWM制御信号INV PWMを出力する。
【0025】
制御装置40は、前記各制御信号を生成する際に、一般的に、系統負荷の変動に応じて本発明によるインバータシステムが特定の電圧及び特定の電流で最大電力を生産できるように最大電力点追従(MPPT)アルゴリズムを用いる。また、制御装置40は、最大電力点を求めるために、指令値を変化させ続けることにより、本発明によるインバータシステムの出力電力が最大電力点に追従するようにする。
【0026】
第1制御部41は、DC−DCコンバータPWM制御信号DC−DC PWMを出力する制御構成を含み、第2制御部42は、インバータPWM制御信号INV PWMを出力する制御構成を含む。
【0027】
図2を参照すると、従来は、入力電圧制御部1、入力電流制御部2、DCリンク電圧制御部3及び出力電流制御部4が互いに信号の入出力に連携している。
【0028】
すなわち、入力電圧制御部1は、入力電圧Vinを入力電圧指令Vin refにより制御して入力電流指令Iin refを出力する。
【0029】
入力電流制御部2は、入力電流指令Iin refにより入力電流Iinを制御してDC−DCコンバータPWM制御信号DC−DC PWMを出力することによりDC−DCコンバータ10を駆動制御する。
【0030】
DC−DCコンバータ10の駆動制御によりDCリンク電圧Vdcが生成されると、DCリンク電圧制御部3は、DCリンク電圧VdcをDCリンク電圧指令Vdc refにより制御してインバータ20の出力電流指令Iinv refを出力する。
【0031】
出力電流制御部4は、出力電流指令Iinv refにより出力電流Iinvを制御してインバータPWM制御信号INV PWMを出力することによりインバータ20を駆動制御する。
【0032】
つまり、従来のインバータシステムの制御装置の制御構成は、入力電圧Vinに追従するための入力電圧制御部1が入力電流指令Iin refを生成し、入力電流制御部2が動作して所望の入力電流Iinを流すためのDC−DCコンバータPWM制御信号DC−DC PWMを生成することにより、DC−DCコンバータ10が動作する制御シーケンス構成となっている。
【0033】
そして、DC−DCコンバータ10の動作状態に応じてDCリンク電圧Vdcが変化し、所望のDCリンク電圧Vdcを維持するためにDCリンク電圧制御部3が出力電流指令Iinv refを出力し、出力電流制御部4が動作して所望の出力電流Iinvを流すためのインバータPWM制御信号INV PWMを生成することにより、インバータ20が動作する。
【0034】
このように、従来のインバータシステムの制御装置は、多数の制御部が1つの流れにまとめられており、各制御部間の相互依存性が大きく、出力電流Iinvの応答速度が遅い。
【0035】
応答過程を具体的に説明すると次の通りである。出力電流Iinvを変化させるためには、出力電流制御部4における出力電流指令Iinv refを変更しなければならず、このためには、DCリンク電圧制御部3における出力を変更しなければならない。
【0036】
しかし、DCリンク電圧Vdcは一定に維持されなければならないので、DCリンク電圧制御部3における入力を変更しなければならない。このためには、入力電流制御部2における出力を変更しなければならない。また、このためには、入力電流制御部2における入力を変更しなければならない。さらに、このためには、入力電圧制御部1における出力を変更しなければならない。さらに、このためには、入力電圧制御部1における入力を変更しなければならない。
【0037】
つまり、出力電流Iinvを変化させるためには、制御シーケンス構成のうち最初の構成である入力電圧制御部1における入力を変更し、多数の制御部を連鎖的に反応させることにより、所望の制御結果が得られるようにする構成を有する。
【0038】
同図には各制御部の制御としてPI制御(Proportional Integral Control)を例に挙げているが、本発明は、PI制御に限定されるものではなく、比例制御(Proportional Control)やPID制御(Proportional Integral and Differential Control)など様々な制御方式を適用することができる。
【0039】
本発明は、前述したような従来の制御部間の連係構造により事実上1つの制御部のように動作していた多数の制御部を大きく2つの部分、すなわち第1制御部41と第2制御部42とに分けることにより、相互依存性をなくし、出力電流制御の速い応答速度が得られるようにする。
【0040】
第1制御部41と第2制御部42とは、独立した制御構成を有し、第1制御部41の出力であるDC−DCコンバータPWM制御信号DC−DC PWMはDC−DCコンバータ10を駆動するが、DC−DCコンバータ10の駆動結果は第2制御部42の入力信号に影響を及ぼさない。第2制御部42は、第1制御部41とは無関係に、入力電圧指令Vin ref及び/又は出力電流指令Iinv refを生成し、出力信号としてインバータPWM制御信号INV PWMを出力する。
【0041】
これは、DC−DCコンバータ10をインバータ制御から分離させることを意味し、インバータシステムの回路においてDCリンク電圧Vdcを一定に維持しながらも、出力電流Iinvの迅速な即時制御を可能にする。
【0042】
図3は第1制御部41の制御構成の一例を示すブロック図である。図3を参照すると、DCリンク電圧Vdcを制御するためのDCリンク電圧制御部403の出力が入力電流指令Iin refに変換され、その指令を受けた入力電流制御部404がDC−DCコンバータ10を制御する。つまり、第1制御部41は、図1の回路においてDCリンク電圧Vdcを一定に維持し、入出力が第2制御部42と連携しておらず、独立して動作する。
【0043】
図4は第1制御部41の制御構成の他の例を示すブロック図である。図4を参照すると、入力電流制御部404が備えられておらず、DCリンク電圧制御部403がDC−DCコンバータ10を制御する。
【0044】
図5は第2制御部42の制御構成の一例を示すブロック図である。図5を参照すると、入力電圧制御部401の出力を出力電流制御部402に直ちに接続させ、出力電流制御部402の出力がインバータ20への制御出力となる制御構成となっている。つまり、本発明においては、シーケンス制御構成が図2の従来技術による4段階の制御構成から2段階の制御構成に変更されることにより、従来技術に比べて出力電流Iinvを出力する応答時間を大幅に短縮することができる。
【0045】
また、最大電力点より低い電力が要求される状況で、出力電流Iinvを即時制御するためには、入力電圧制御部401と出力電流制御部402の連携を切り、出力電流制御部402のみを独立して駆動し、出力電流Iinvの制御により入力電圧Vinが変更されるようにすることができる。
【0046】
すなわち、P(電力)=V(電圧)×I(電流)であるので、出力電流Iinvを制御すれば、要求電力を即時制御することができ、出力電流指令Iinv refを要求電力に応じて設定して出力電流制御部402を駆動することにより、入力電圧制御部401の出力に関係なく所望の出力電流Iinvを直ちに得ることができる。
【0047】
このように、本発明は、要求電力レベルに迅速に反応して応答速度を向上させることができるように、インバータシステムの制御装置の制御構成を第1制御部41と第2制御部42とに分けて構成したことを技術的特徴とし、そのための具体的な制御構成を提示する。
【符号の説明】
【0048】
10 DC−DCコンバータ
20 インバータ
30 フィルタ部
40 制御装置
41 第1制御部
42 第2制御部
401 入力電圧制御部
402 出力電流制御部
403 DCリンク電圧制御部
404 入力電流制御部
図1
図2
図3
図4
図5