【実施例1】
【0021】
図1は、本発明における零相電圧基準入力装置を有する地絡方向継電装置DGRaの実施例を示す構成図で、20は零相電流要素、30は零相電圧要素、10は基準零相電流比較要素である。零相電流要素20には、配電線路に挿入された零相変流器により検出した零相電流I
0が入力され、フィルタ21を通すことで基本波成分を取り出す。零相電流I
0の基本波成分は増幅器22で増幅され、設定レベルI
0Lが設定された低感度レベル検出器23と、設定レベルI
0Lhが設定された高感度レベル検出器26および基準零相電流比較要素10にそれぞれ出力される。低感度レベル検出器23による検出値はアンド回路25の一方の入力端に入力され、アンド回路25の他方の入力端には波形整形回路24で波形整形された零相電流I
0の基本波成分の矩形波が入力されて、アンド条件成立時に位相判別回路40に出力される。高感度レベル検出器26では、設定レベルI
0Lhの高感度レベルが設定され、検出された零相電流I
0が高感度設定レベルI
0Lh以上となったときにその信号を基準零相電流比較要素10に出力する。
【0022】
零相電圧要素30には、図示省略された零相電圧基準入力装置ZPDにより検出された零相電圧V
0が入力される。零相電圧基準入力装置ZPDは、例えばコンデンサなどで構成され、検出された零相電圧V
0はフィルタ31により基本波成分が抽出され、増幅器32を介してレベル検出器33と基準零相電流比較要素10にそれぞれ出力される。レベル検出器33の出力はアンド回路35の一方の入力端に入力され、アンド回路35の他方の入力端には波形整形回路34で波形整形された零相電圧の基本波成分の矩形波が入力され、アンド条件成立時に位相判別回路40に出力される。
【0023】
位相判別回路40は、零相電流分と零相電圧分の両信号の位相比較をして地絡事故が零相変流器に対して電源側か負荷側かを判別し、負荷側と判別したときに判別信号を時限回路50に出力し、所定時間経過後にリレーXを介して所定の保護動作を行う。
【0024】
本発明では、基準零相電流比較要素10を追加したものである。増幅器32からの零相電圧V
0は基準零相電流演算手段11に入力され、式(2)に基づいて基準零相電流値I
0nを求める。
I
0n=2π×f×C
L×V
0 …… (2)
基準零相電流演算手段11で算出された基準零相電流値I
0nは比較手段12に入力されて零相電流I
0と比較され、I
0>I
0n時に負荷側地絡事故と判定してアンド回路13の一方の入力端子に出力信号を印加する。アンド回路13の他方の入力端子には、高感度レベル検出器26で設定された高感度の零相電流の設定レベルI
0Lhが印加されており、高感度設定レベルの信号有りを条件として判別信号を時限回路50,50´に出力し、所定時間経過後にそれぞれのリレーX,Yを介して所定の保護動作を行う。
【0025】
ここで、非接地配電線路の電路電圧を6600V、電路周波数を50Hz、零相電圧の設定レベルV
0Lを5%、零相電流の設定レベルI
0Lを0.2Aとすると、このとき地絡方向継電装置DGRaの負荷側対地静電容量の所定値、C
Laは式(1)より3.3μF以下となる。負荷側対地静電容量C
Laを3.3μF以下とし、電源側で零相電圧V
0が完全地絡の2.5%(V
0=95.3V)の地絡事故が発生したとすると、負荷側対地静電容量C
Laに流れる零相電流I
0aは式(2)で求められ、0.1A以下となり地絡方向継電装置DGRaは電源側地絡事故と判断する。
【0026】
負荷側で同様の地絡事故が発生すると、地絡事故が生じたとき電源側接地変圧器(図示省略)の制限抵抗に流れる電流と電源側対地静電容量Ckに流れる電流の合成電流が負荷側対地静電容量C
Laに流れる電流より大きい条件であれば、零相電流I
0aは0.1A以上流れることになり、地絡方向継電装置DGRaは負荷側地絡事故と判断する。
【0027】
なお、
図1において、60はV
0p位相判別信号送信手段、70はV
0電圧値送信手段で、零相電圧基準入力装置を有する地絡方向継電装置DGRaと零相電圧基準入力装置を備えてない地絡方向継電装置DGRbで地絡方向継電装置システムを構成する場合、地絡方向継電装置DGRbに位相判別信号V
0pと零相電圧V
0を送信する場合に使用されるもので、1台の地絡方向継電装置の場合には不要となる。
【0028】
以上のように、本発明での地絡方向継電装置では、配電線路に設置される零相変流器を境にして負荷側対地静電容量値C
L以下で、且つ地絡事故が生じたとき電源側接地変圧器の制限抵抗により流れる電流と、電源側対地静電容量に流れる電流より大きい電路条件とすることで、零相電圧が発生しにくい電路および/又は零相電流が小さい軽微な事故でも、零相電圧V
0の値に応じて式(2)で求めた零相電流値を、発生した零相電圧値での方向判別のための基準零相電流値I
0nとし、I
0>I
0n時に負荷側地絡事故と判断する。
【0029】
このため、零相電圧の設定レベルV
0L以下でも高感度の設定値V
0Lを設けることなく、高感度レベル検出器26における高感度の零相電流設定レベルI
0Lhに、例えば50mA、30mAなどの設定レベルを設けることが可能となる。したがって、電源側地絡事故では、負荷側対地静電容量を所定値C
L以下とすることで、零相電流I
0を基準零相電流値I
0n以下となるようにする。
【0030】
また、負荷側地絡事故では、零相電流I
0を基準零相電流値I
0n以上流す必要があることから、地絡事故が生じたとき電源側接地変圧器の制限抵抗に流れる電流と、電源側対地静電容量に流れる電流の合成電流が負荷側対地静電容量に流れる電流より大きい電路条件で使用する必要がある。
【0031】
以上、第1の実施例によれば、設置された零相変流器の負荷側対地静電容量が所定値以下で、且つ地絡事故が生じたとき負荷側対地静電容量に流れる電流よりも大きい電流が電源側に流れる非接地配電線路であれば、その時の零相電圧V
0の値に応じた基準零相電流値I
0nを演算し、求めた値を方向判断基準としているため、零相電圧設定値に関係なく高感度の零相電流設定値の設定が可能となる。また、零相電流設定値の高感度設定が可能となることで、一般的な地絡方向継電装置の地絡検出動作とは別に、高感度の電流設定値を設けて微地絡検出の警報装置として予防保全に役立てることも可能となる。
【実施例2】
【0032】
図2は本発明による地絡方向継電装置システムの構成図を示したものである。零相電圧基準入力装置ZPDを有する地絡方向継電装置DGRaと、零相電圧基準入力装置ZPDを持たない地絡方向継電装置DGRbにより地絡方向継電装置システムを構成した場合、地絡方向継電装置DGRaは零相電圧基準入力装置ZPDから零相電圧V
0の値が入力されるため、基準零相電流値I
0nを求めて
図1で示すように高感度の地絡方向判別を可能としているが、地絡方向継電装置DGRbは零相電圧基準入力装置ZPDを持たないため、基準零相電流値I
0nを求めることができない。
【0033】
第2の実施例では、地絡方向継電装置DGRaにV
0p位相判別信号送信手段
60とV0電圧値送信手段70を設け、各送信手段を介して地絡方向継電装置DGRbに送り、地絡方向継電装置DGRbでは送信された零相電圧V
0を受信手段15で受信し、この零相電圧V
0の値を基に基準零相電流値I
0nを演算で求め、高感度の地絡方向判別を可能としたものである。
【0034】
図2において、ZPDは零相電圧基準入力装置、ZCTa,ZCTbは零相変流器、Ckは電源側対地静電容量、C
La,C
Lbは負荷側対地静電容量である。地絡方向継電装置DGRaは
図1と同様に構成され、この地絡方向継電装置DGRaには零相電圧基準入力装置ZPDで検出された零相電圧V
0が零相電圧要素30に入力され、また、零相変流器ZCTaで検出された零相電流I
0が零相電流要素20に入力されて位相比較が行われる。
【0035】
地絡方向継電装置DGRbは、
図3で示すように地絡方向継電装置DGRb固有の零相電圧基準入力装置ZPDを備えてなく、したがって零相電圧要素30´の構成においても、地絡方向継電装置DGRaのV
0p位相判別信号送信手段60からの位相判別信号V
0pを受信するV
0p位相判別信号受信手段36のみの構成となっている。
【0036】
また、地絡方向継電装置DGRbの基準零相電流比較要素10´にはV
0電圧値受信手段15が設けられ、V
0電圧値送信手段70から送られた零相電圧V
0を受信して基準零相電流演算手段11に入力され、基準零相電流値をI
0nが算出される。算出された基準零相電流値I
0nは比較手段12に入力されて零相電流I
0と比較され、I
0>I
0n時に負荷側地絡事故と判定してアンド回路13の一方の入力端子に出力信号を印加する。そのとき、零相電流要素20の高感度レベル検出器26の零相電流I
0の設定レベルに応じた出力がアンド回路13の他方の入力端子に印加されていることを条件として判別信号を時限回路50,50´に出力し、所定時間経過後にそれぞれのリレーX,Yを介して所定の保護動作を行う。
【0037】
このように、地絡方向継電装置DGRbは、零相電圧V
0の位相判別信号V
0pと、零相電圧値を地絡方向継電装置DGRaから取得することで、地絡方向継電装置DGRbにおいても高感度の地絡保護が実現できる。
なお、V
0p位相判別信号送信手段60およびV
0電圧値送信手段70については、4〜20mA、0〜5Vなどのアナログ方式の他、EIA−485などのディジタル方式で数値化したものを用いてもよい。
【0038】
したがって、第2の実施例によれば、第1実施例の効果の他に次の効果が得られるものである。すなわち、零相電圧基準入力装置ZPDを有する地絡方向継電装置DGRaの零相電圧設定値に関係なく、零相電圧基準入力装置ZPDを有しない地絡方向継電装置DGRbの零相電流設定レベルを設定することができる。また、零相電圧基準入力装置ZPDを有しない地絡方向継電装置DGRbは、零相電圧基準入力装置ZPDを持たなくとも、零相電圧基準入力装置ZPDを有する地絡方向継電装置DGRaから位相判別信号V
0pと零相電圧V
0を貰うことで、高感度の地絡保護を経済的に構築することができる。