特許第6148306号(P6148306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6148306自己着火式内燃エンジンの燃料室にガス燃料を噴射するための燃料バルブ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148306
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】自己着火式内燃エンジンの燃料室にガス燃料を噴射するための燃料バルブ及び方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20170607BHJP
   F02M 61/04 20060101ALI20170607BHJP
   F02B 23/10 20060101ALI20170607BHJP
   F02B 23/02 20060101ALI20170607BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20170607BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20170607BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   F02M21/02 S
   F02M61/04 G
   F02B23/10 F
   F02B23/10 320
   F02B23/02 C
   F02M37/00 341D
   F02D19/08 C
   F02B43/00 A
   F02M21/02 L
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-201673(P2015-201673)
(22)【出願日】2015年10月12日
(65)【公開番号】特開2016-79974(P2016-79974A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年7月11日
(31)【優先権主張番号】PA 2014 00591
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】フェーホルム ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】フルト ヨーアン
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−118470(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0108631(US,A1)
【文献】 特開2010−144516(JP,A)
【文献】 特表2003−530512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02M 37/00
F02M 61/04
F02B 23/02
F02B 23/10
F02B 43/00
F02D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型低速ターボ過給式2ストローク式自己着火型内燃エンジンの燃焼室にガス燃料を噴射するための燃料バルブ(50)であって、前記燃料バルブ(50)は、
後端と前端とを有する細長の燃料バルブ筺体(52)と、
複数のノズル穴(56)を有するノズル(54)と、
を備え、前記複数のノズル穴(56)は、各々、前記ノズル(54)内のサック室(55)に開口し、前記ノズル(54)は、前記燃料バルブ筺体(52)の前記前端部に配置され、基部(51)と、細長のノズル本体とを備え、前記基部(51)において、前記燃料バルブ筺体(52)の前端に接続され、さらに前記ノズル(54)は、前記ノズル穴(56)を有する閉じた先端(59)を有し、前記ノズル穴(56)は前記先端(59)に近接して設けられ、前記サック室(55)は、前記先端(59)から前記基部(51)にかけて拡がっており、
さらに前記燃料バルブ(50)は、
高圧のガス燃料のソース(60)に接続するためのガス燃料吸入口(53)であって、前記燃料バルブ筺体(52)に設けられるガス燃料吸入口(53)と、
前記燃料バルブ筺体(52)の長手方向穴(77)に摺動可能に受容され、閉鎖位置及び開放位置を有する、軸方向に移動可能なバルブニードル(61)と、
を有し、
前記バルブニードル(61)は、前記閉鎖位置においてはバルブシート(69)上に載っており、前記開放位置においては前記バルブシート(69)から上昇しているようにされ、
前記バルブシート(69)は、前記燃料バルブ筺体(52)に設けられており、前記燃料バルブ筺体(52)の燃料チャンバ(58)と、燃料バルブ筺体(52)の吹出口(68)との間に設けられ、
前記燃料チャンバ(58)と前記ガス燃料吸入口(53)との間を流体が行き来できるようにされ、
前記吹出口(68)と前記サック室(55)との間を流体が行き来できるようにされ、
さらに前記燃料バルブ(50)は、
前記バルブニードル(61)を、前記閉鎖位置と前記開放位置との間で制御可能に移動させるアクチュエータシステムと、
高圧の着火液のソース(57)に連結する着火液導入ポート(78,98)と、
前記着火液導入ポート(78,98)を前記燃料チャンバ(58)に接続する着火液供給管(76,99)であって、固定式の流れ制限部を備える着火液供給管(76,99)と、
を備え、
少量の着火液が、前記流れ制限部を通る一定の流れとなるように、前記流れ制限部は、前記着火液導入ポート(78,98)から前記燃料チャンバ(58)への着火液の流れを制限するように設けられ、それによって、前記バルブニードル(61)が前記バルブシート(69)上に載っている時に、前記バルブシート(69)の上方で前記燃料チャンバ(58)に前記着火液が蓄積するようにされる、
燃料バルブ(50)。
【請求項2】
前記流れ制限部は、口径固定のオリフィス絞りによる流れ制限部(100)である、請求項1に記載の燃料バルブ。
【請求項3】
前記バルブニードル(61)は、所定のクリアランスをもって前記長手方向穴(77)に摺動可能に受容され、ここで前記クリアランスは、前記長手方向穴(77)の一端で前記燃料チャンバ(58)に開口しており、前記着火液供給管が、前記着火液を前記クリアランスに供給し、前記クリアランスが前記流れ制限部を形成する、請求項1または2に記載の燃料バルブ。
【請求項4】
前記着火液は、前記クリアランスにおいてシール液の役割を果たす、請求項3に記載の燃料バルブ。
【請求項5】
前記長手方向穴(77)と前記バルブニードル(61)との間の前記クリアランスに着火液を送給するために、前記着火液供給管(76)は、前記着火液導入ポート(78)を前記長手方向穴(77)に開口するポートに接続している、請求項3または4に記載の燃料バルブ。
【請求項6】
前記着火液のソース(57)の圧力は、前記ガス燃料のソース(60)の圧力よりも高い、請求項1から5のいずれかに記載の燃料バルブ。
【請求項7】
前記バルブニードル(61)は、前記燃料バルブ筐体(52)に摺動可能に受容される、軸方向に変位可能なアクチュエーションピストン(64)とつながっており、前記燃料バルブ筐体(52)と共に、アクチュエーションチャンバ(74)を規定し、
前記アクチュエーションチャンバ(74)と制御ポートとの間は流体が行き来できるようにされており、それによって前記アクチュエーションチャンバ(74)は制御油のソース(97)に接続される、
請求項1から6のいずれかに記載の燃料バルブ。
【請求項8】
前記バルブニードル(61)は、前記長手方向穴(77)から、前記燃料チャンバ(58)へと突き出ており、そのため前記燃料チャンバ(58)は、前記バルブニードルの一部を取り囲むようにされている、請求項1から7のいずれかに記載の燃料バルブ。
【請求項9】
前記着火液供給管(76)は、前記燃料バルブ筐体(52)内を走り、前記バルブニードル(61)を通って、前記着火液導入ポート(78)を前記クリアランスに流体的に接続する、請求項3から8のいずれかに記載の燃料バルブ。
【請求項10】
複数のシリンダ(1)と、高圧ガス燃料供給システムと、高圧着火液供給システムと、前記シリンダに設けられる請求項1からのいずれかに記載の1又は複数の燃料バルブ(50)とを有する、大型低速ターボ過給式2ストローク式自己着火型内燃エンジンであって、前記燃料バルブ(50)は、前記高圧ガス燃料供給システムと前記着火液供給システムとに接続されている、大型低速ターボ過給式2ストローク式自己着火型内燃エンジン。

【請求項11】
前記燃料チャンバ(58)に蓄積された着火液の補助を受けることにより、かつその他着火装置を用いることなく、噴射されたガス燃料を自己着火させるように構成されている、請求項10に記載のエンジン。
【請求項12】
前記ガス燃料が前記サック室(55)に侵入するに際し、前記ガス燃料を着火させるように構成される、請求項10又は11に記載のエンジン。
【請求項13】
前記ガス燃料のソースが、前記ガス燃料を高圧で前記燃料バルブ(50)に送給し、前記着火液のソースは、前記ガス燃料のソースの圧力よりも高い圧力で前記着火液を送給するように構成されている、請求項10から12の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項14】
大型低速ターボ過給式2ストローク式自己着火型内燃エンジンを作動させる方法であって、該方法は、前記エンジンの燃料バルブ(50)に第1高圧の加圧ガス燃料を供給することを含み、
但し、前記燃料バルブは、後端と前端とを有する、細長の燃料バルブ筺体(52)を備え、前記燃料バルブ(50)は、複数のノズル穴(56)を有する中空ノズル(54)を備え、前記複数のノズル穴(56)は、前記中空ノズル(54)の内部(55)を、前記エンジンのシリンダ(1)内の燃焼室に接続し、前記ノズル(54)は、基部(51)と、細長のノズル本体とを備え、前記基部(51)において、前記燃料バルブ筺体(52)の前端に接続され、さらに前記ノズル(54)は、前記ノズル穴(56)を有する閉じた先端(59)を有し、前記ノズル穴(56)は前記先端(59)に近接して設けられ、前記サック室(55)は、前記先端(59)から前記基部(51)にかけて拡がっており、
さらに前記方法は、
前記燃料バルブ(50)に、前記第1高圧よりも高い第2高圧の着火液を供給することと;
前記中空ノズル(54)の上にあるバルブシート(69)であって、その上に燃料チャンバ(58)が配されているバルブシート(69)と協働する可動バルブニードル(61)を用いて、ガス燃料の噴射を制御すること、ただし前記バルブシート(69)は、前記燃料バルブ筺体(52)に設けられており、前記燃料バルブ筺体(52)の燃料チャンバ(58)と、燃料バルブ筺体(52)の吹出口(68)との間に設けられる、前記制御することと;
前記ガス燃料を用いて前記燃料チャンバ(58)を加圧することと;
前記バルブニードル(61)が前記バルブシート(69)上に載っている間に、少量の着火液の連続的な流れを前記燃料チャンバ(58)に送給し、該着火液が、前記バルブシートの上方に蓄積することを可能にすることと;
前記バルブシート(69)から前記軸方向に移動可能なバルブニードル(61)を上昇させることによってガス燃料噴射イベントを開始し、それによって、前記蓄積した着火液を、前記ガス燃料よりも前に前記中空ノズル(54)に侵入させることと;
を含む、方法。
【請求項15】
前記ガス燃料が前記着火液の補助を受けることにより前記中空ノズル(54)内部で着火する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記中空ノズル(54)が、エンジンサイクル全体を通して300℃を超えた状態で維持される、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料供給システムを有する自己着火内燃エンジンのためのガス燃料バルブに関し、特に、ガス燃料供給システムを有する大型低速ユニフロー式ターボ過給機付2ストローク式内燃エンジンのためのガス燃料バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
クロスヘッド型の大型低速2ストローク式自己着火(ディーゼル)エンジンは、大型船舶の推進システムにおいて、又は発電所の原動機として通常用いられている。頻繁に、これらエンジンは、重油又は燃料油を用いて運転されている。
【0003】
近年、大型2ストローク式ディーゼルエンジンは、ガス、石炭スラリー、石油コークス等の代替タイプの燃料、特にガスを扱えるようにすることが求められている。
【0004】
天然ガス等のガス燃料は、大型低速ユニフロー式ターボ過給機付2ストローク式内燃エンジンに燃料として用いられる場合、例えば燃料として重油を用いた場合と比較すると、排気ガスにおける亜硫酸成分、NOx及びCO2のレベルが顕著に低下する比較的クリーンな燃料である。
【0005】
しかしながら、大型低速ユニフロー式ターボ過給機付2ストローク式内燃エンジンにおいてガス燃料を用いることに関連する問題がある。それら問題の1つとしては、燃焼室への噴射に関するガスの自然着火の傾向及び予測可能性であり、両者は、自己着火エンジンにおいては制御下にあることが不可欠である。従って、既存の大型低速ユニフロー式ターボ過給機付2ストローク式内燃エンジンでは、ガス燃料の噴射と同時に、オイル又はその他着火液のパイロット噴射を用いることにより、ガス燃料の確実かつ適切なタイミングの着火を確実なものとする。
【0006】
大型低速ユニフロー式ターボ付2ストローク式内燃エンジンは、通常、大型外洋航行貨物船の推進力に用いられており、それ故にその信頼性が最も重要である。それらエンジンのガス燃料による運転は、依然、比較的最近に発展したものであり、ガスを用いたその運転の信頼性は従来の燃料のレベルに依然として到達していない。従って、既存の大型低速2ストローク式ディーゼルエンジンは全て、燃料油のみで動作する際に全出力で運転され得るように、ガス燃料による運転用の燃料システムと燃料油を用いた運転用の燃料システムとを有するデュアル燃料エンジンとなっている。
【0007】
これらエンジンの内燃室の直径は大きいことから、それらエンジンには、通常、各シリンダに、中央の排気バルブの周囲に約120°の角度で分離された3個の燃料噴射バルブが備えられている。このように、デュアル燃料システムを用いる場合、確実なガス燃料の噴射を確保するために、シリンダ当たり3個のガス燃料バルブと、シリンダ当たり3個の燃料油バルブが存在すると同時に、各ガス噴射バルブに近接して1個の燃料油噴射バルブが設けられることにより、それ故、シリンダの上部カバーは、比較的密集した場所となる。
【0008】
上記既存のデュアル燃料エンジンにおいては、燃料油バルブが、ガス燃料を用いた運転の間、パイロット油噴射を提供するために用いられている。これらの燃料油バルブは、燃料油のみで全負荷をかけた状態でエンジンを運転するのに必要となる量の燃料油を送給することができるような寸法とされる。しかしながら、パイロット噴射で噴射されある油の量は、所望される排ガスの削減を達成するために可能限り少なくする必要がある。このような少量の使用量では、全負荷での運転に必要な大容量を送給することもできる大型燃料噴射システムを用いた場合、重大な技術的課題を引き起こし、実際上、そのような使用量は達成するのが困難である。従って、パイロット油使用量は、既存のエンジンにおいては、特に中レベル又は低い負荷において、燃料噴射イベント当たり所望されるよりも大量となる。小パイロット量を扱える更なる少量噴射システムの代替は、かなり複雑なものであり、コストもかかる。更に、追加の小量パイロット油噴射バルブは、シリンダの上部カバーを更に一層密集した状態にしてしまう。
【発明の開示】
【0009】
上記背景に関し、本願は、上記に示した課題を解消し、又は少なくとも低減する自己着火内燃エンジンのための燃料バルブを提供することを目的とする。
【0010】
第1の態様によれば、この目的は、次のような燃料バルブを提供することによって達成される。この燃料バルブは、大型低速ターボ過給式2ストローク式自己着火型内燃エンジンの燃焼室にガス燃料を噴射するための燃料バルブであって、前記燃料バルブは、後端と前端とを有する細長の燃料バルブ筺体と、複数のノズル穴を有するノズルとを備え、前記複数のノズル穴は、各々、前記ノズル内のサック室に開口し、前記ノズルは、前記燃料バルブ筺体の前記前端部に配置され、基部と、細長のノズル本体とを備え、前記基部において、前記燃料バルブ筺体の前端に接続され、さらに前記ノズルは、前記ノズル穴を有する閉じた先端を有し、前記ノズル穴は前記先端に近接して設けられる。さらに前記燃料バルブは、高圧のガス燃料のソースに接続するためのガス燃料吸入口であって、前記燃料バルブ筺体に設けられるガス燃料吸入口と、前記燃料バルブ筺体の長手方向穴に摺動可能に受容され、閉鎖位置及び開放位置を有する、軸方向に移動可能なバルブニードルとを有し、前記バルブニードルは、前記閉鎖位置においてはバルブシート上に載っており、前記開放位置においては前記バルブシートから上昇しているようにされ、前記バルブシートは、燃料チャンバと吹出口との間に設けられ、前記燃料チャンバと前記ガス燃料吸入口との間を流体が行き来できるようにされ、前記吹出口と前記サック室との間を流体が行き来できるようにされる。さらに前記燃料バルブは、前記バルブニードルを、前記閉鎖位置と前記開放位置との間で制御可能に移動させるアクチュエータシステムと、高圧の着火液のソースに連結する着火液導入ポートと、前記着火液導入ポートを前記燃料チャンバに接続する着火液供給管であって、固定式の流れ制限部を備える着火液供給管とを備え、少量の着火液が、前記流れ制限部を通る一定の流れとなるように、前記流れ制限部は、前記着火液導入ポートから前記燃料チャンバへの着火液の流れを制限するように設けられ、それによって、前記バルブニードルが前記バルブニードル上に載っている時に、前記バルブシートの上方で前記燃料チャンバに前記着火液が蓄積するようにされる。
【0011】
着火液をゆっくりと連続的に制御して燃焼室に送給することにより、エンジンサイクルにおいてバルブニードルがバルブシートに載っている間に、バルブシートのすぐ上、ガス燃料チャンバの底に、着火液の小さな貯留部が形成されうる。エンジンサイクル中の適切な時点でバルブニードルがリフトすると、燃料チャンバ内の高圧ガス燃料が、ノズルの中空部(すなわちサック室)へと流れ込む。そのとき、バルブ閉鎖中にバルブシート状に堆積した少量の着火液が、ガス燃料に先立って押し出され、従って着火液は、ガス燃料の直前に、ノズル内のサック室へと入る。燃焼室における掃気の圧縮のために、サック室内には既に高温高圧の空気が存在する。この空気と着火液とガス燃料が混合することにより、はやくもノズル内で着火が生じることになる。
【0012】
前記第1の態様の第1の可能な実装形態においては、前記流れ制限部は、口径固定のオリフィス絞りによる流れ制限部である。
【0013】
前記第1の態様の第2の可能な実装形態においては、前記バルブニードルは、所定のクリアランスをもって前記長手方向穴に摺動可能に受容され、ここで前記クリアランスは、前記長手方向穴の一端で前記燃料チャンバに開口しており、前記着火液供給管が、前記着火液を前記クリアランスに供給し、前記クリアランスが前記流れ制限部を形成する。
【0014】
前記第1の態様の第3の可能な実装形態においては、前記着火液は、前記クリアランスにおいてシール液の役割を果たす。
【0015】
前記第1の態様の第4の可能な実装形態においては、前記長手方向穴と前記バルブニードルとの間の前記クリアランスに着火液を送給するために、前記着火液供給管は、前記着火液導入ポートを前記長手方向穴に開口するポートに接続している。
【0016】
前記第1の態様の第5の可能な実装形態においては、前記着火液のソースの圧力は、前記ガス燃料のソースの圧力よりも高い。
【0017】
前記第1の態様の第6の可能な実装形態においては、前記バルブニードルは、前記燃料バルブ筐体に摺動可能に受容される、軸方向に変位可能なアクチュエーションピストンとつながっており、前記燃料バルブ筐体と共に、アクチュエーションチャンバを規定し、前記アクチュエーションチャンバと制御ポートとの間は流体が行き来できるようにされており、それによって前記アクチュエーションチャンバは制御油のソースに接続される。
【0018】
前記第1の態様の第7の可能な実装形態においては、前記バルブニードルは、前記長手方向穴から、前記燃料チャンバへと突き出ており、そのため前記燃料チャンバは、前記バルブニードルの一部を取り囲むようにされている。
【0019】
前記第1の態様の第8の可能な実装形態においては、前記着火液供給管は、前記燃料バルブ筐体内を走り、前記バルブニードルを通って、前記着火液導入ポートを前記クリアランスに流体的に接続する。
【0020】
前記第1の態様の第9の可能な実装形態においては、上記ノズルは、基部と、細長のノズル本体とを備え、ノズルは、その基部により細長のバルブ筺体の前端部に連結しており、かつノズルは、閉じた先端を有し、ノズル穴が該先端に近接して配置されている。
【0021】
上記目的はまた、第2の態様によれば、複数のシリンダと、高圧ガス燃料供給システムと、高圧着火液供給システムと、エンジンのシリンダに設けられる上記第1の実施態様に記載の1又は複数の燃料バルブとを有する自己着火内燃エンジンであって、上記燃料バルブは上記高圧ガス燃料供給システムと上記着火液供給システムとに連結されている、自己着火内燃エンジンを提供することによっても達成される。
【0022】
第2の態様の第1の可能な実装形態においては、上記エンジンは、上記燃料チャンバに蓄積された着火液の補助を受けることにより、その他の着火装置を用いることなく、噴射されたガス燃料を自己着火させるように構成されている。
【0023】
第2の態様の第2の可能な実装形態においては、上記エンジンは、上記ガス燃料がノズル内部のサック室に侵入するに際し、上記ガス燃料を着火させるように構成されている。
【0024】
第2の態様の第3の可能な実装形態においては、上記ガス燃料のソースが、上記ガス燃料を高圧で上記燃料バルブに送給し、上記着火液のソースは、上記着火液をガス燃料の上記ソースの圧力よりも高い圧力で上記着火液を送給するように構成されている。
【0025】
上記目的はまた、第3の態様によれば、以下を提供することによっても達成される。これは、自己着火型内燃エンジンを作動させる方法であって、該方法は、前記エンジンの燃料バルブに第1高圧の加圧ガス燃料を供給することを含む。ここで前記燃料バルブは、複数のノズル穴を有する中空ノズルを備え、前記複数のノズル穴は、前記中空ノズルの内部を、前記エンジンのシリンダ内の燃焼室に接続する。さらに前記方法は、前記燃料バルブに、前記第1高圧よりも高い第2高圧の着火液を供給することと;前記中空ノズルの上にあるバルブシートであって、その上に燃料チャンバが配されているバルブシートと協働する可動バルブニードルを用いて、ガス燃料の噴射を制御することと;前記ガス燃料を用いて前記燃料チャンバを加圧することと;前記バルブニードルが前記バルブニードル上に載っている間に、少量の着火液の連続的な流れを前記燃料チャンバに送給し、該着火液が、前記バルブシートの上方に蓄積することを可能にすることと;前記バルブシートから前記軸方向に移動可能なバルブニードルを上昇させることによってガス燃料噴射イベントを開始し、それによって、前記蓄積した着火液を、前記ガス燃料よりも前に前記中空ノズルに侵入させることと;を含む。
【0026】
第3の態様の第1の可能な実装形態においては、上記ガス燃料が上記着火液の補助を受けることにより上記ノズル内部で着火する。
【0027】
第3の態様の第2の可能な実装形態においては、上記ノズルが、エンジンサイクル全体を通して300℃を超えた状態で維持される。
【0028】
上記目的はまた、第4の態様によれば、以下を提供することによっても達成される。これは、大型低速ターボ過給式2ストローク式自己着火型内燃エンジンの燃焼室にガス燃料を噴射するための燃料バルブであって、前記燃料バルブは、後端と前端とを有する細長の燃料バルブ筺体と、複数のノズル穴を有するノズルとを備え、前記複数のノズル穴は、各々、前記ノズル内のサック室に開口し、前記ノズルは、前記燃料バルブ筺体の前記前端部に配置され、基部と、細長のノズル本体とを備え、前記基部において、前記燃料バルブ筺体の前端に接続され、さらに前記ノズルは、前記ノズル穴を有する閉じた先端を有し、前記ノズル穴は前記先端に近接して設けられる。さらに前記燃料バルブは、高圧のガス燃料のソースに接続するためのガス燃料吸入口であって、前記燃料バルブ筺体に設けられるガス燃料吸入口と、前記燃料バルブ筺体の長手方向穴に摺動可能に受容され、閉鎖位置及び開放位置を有する、軸方向に移動可能なバルブニードルとを有し、前記バルブニードルは、前記閉鎖位置においてはバルブシート上に載っており、前記開放位置においては前記バルブシートから上昇しているようにされ、前記バルブシートは燃料チャンバと吹出口との間に設けられ、前記燃料チャンバと前記ガス燃料吸入口との間を流体が行き来できるようにされ、前記吹出口と前記サック室との間を流体が行き来できるようにされる。さらに前記燃料バルブは、前記バルブニードルを、前記閉鎖位置と前記開放位置との間で制御可能に移動させるアクチュエータシステムと、高圧の着火液のソースに連結する着火液導入ポートと、前記着火液導入ポートを前記燃料チャンバに接続する着火液供給管とを備える。
【0029】
第4の態様の第1の可能な実装形態においては、前記着火液供給管は、固定式の流れ制限部を備える。
【0030】
本開示による上記ガス燃料バルブ、エンジン、方法の更なる目的、特徴、有利な点及び性状は詳細な説明により明らかとなる。
【0031】
以下本明細書の詳細部では、本発明について、以下の図面に示される例示実施形態を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】例示実施形態による大型2ストローク式ディーゼルエンジンの正面図である。
図2図1の大型2ストローク式エンジンの側面図である。
図3図1による大型2ストローク式エンジンを図示したものである。
図4】シリンダの上部について図1のエンジンのガス燃料システムの例示実施形態を図示した断面図である。
図5】シリンダ、及び図4の実施形態のガス燃料噴射システムを図示した上面図である。
図6】本発明の例示実施形態による、図1に示されるエンジンに用いるためのガス燃料噴射バルブの断面図である。
図7図6の断面の詳細図である。
図8図1に示されるエンジンに用いるためのガス燃料噴射バルブの別の例示実施形態の断面詳細図である。
図9図6〜8の燃料バルブの立面図である。
図10図6〜9の燃料バルブと共に用いるためのノズルの断面図である。
図11】シリンダカバーにおけるズ6〜9の燃料バルブの位置を示す断面図である。
図12】別の実施形態によるガス燃料噴射バルブの断面図である。
【好適な実施形態の詳細説明】
【0033】
以下の詳細な説明において、自己着火内燃エンジンについて、例実施形態における大型2ストローク式低速ターボ過給機付内燃(ディーゼル)エンジンを参照しながら説明する。図1、2及び3は、クランクシャフト42及びクロスヘッド43を有する大型低速ターボ過給機付2ストローク式ディーゼルエンジンを示す。図3は、吸気システム及び排気システムを有する大型低速ターボ過給機付2ストローク式ディーゼルエンジンを図示したもの示す。この例示実施形態においては、エンジンは、1列の4個のシリンダ1を有する。大型低速ターボ過給機付2ストローク式ディーゼルエンジンは、通常、エンジンフレーム13によって保持される1列の4〜14個のシリンダを有する。エンジンは、例えば、外洋航行船舶において主エンジンとして用いてもよいし、又は発電所の発電機を作動させるための定置式エンジンとして用いてもよい。エンジンの総出力は、例えば、1000〜110000kWの範囲であってもよい。
【0034】
本例示実施形態において、エンジンは、シリンダ1の下部に掃気口を有し、かつ該シリンダ1の上部に中心排気バルブ4を有する2ストローク式ユニフロー式のディーゼルエンジンである。掃気空気は、掃気空気レシーバ2から個々のシリンダ1の掃気口(不図示)へと通過する。シリンダ1におけるピストン41が掃気空気を圧縮し、燃料がシリンダカバーにおける燃料噴射バルブから噴射され、次いで燃焼が行われ、排気ガスが生成される。排気バルブ4が開放されている場合、排気ガスは、シリンダ1に対応する排気ダクトを通過して排気ガスレシーバ3に流れ、さらに第1排気管18を通過してターボ過給機5のタービン6に進み、タービン6から、排気ガスは、エコノマイザ28を介して第2排気管を通過し、排気口29へと、さらに大気中に流れ出る。シャフトを介して、タービン6は、外気導入口10を介して新鮮空気が供給されたコンプレッサ9を駆動する。コンプレッサ9は、掃気空気レシーバ2に繋がる掃気管11に圧縮掃気を送給する。
【0035】
管11における掃気空気は、掃気を冷却するインタクーラ12を通過し、このインタクーラ12により、約200℃のコンプレッサを36〜80℃の温度にする。
【0036】
ターボ過給機5のコンプレッサ9が、掃気空気レシーバ2に対して十分な圧力を送給しない場合、つまり、エンジンが低負荷状態又は部分負荷状態の場合において、冷却掃気空気は、掃気空気流を圧縮する電動モータ17によって駆動する補助ブロワ16を通過する。エンジン負荷がより高い状態では、ターボ過給機コンプレッサ9は、十分な圧縮掃気空気を送給し、次いで補助ブロワ16は、逆止弁15を介してバイパスされる。
【0037】
本開示において、「ガス燃料」とは、大気圧かつ大気温度において気層にある任意の可燃燃料として広く定義される。
【0038】
図4及び5は、例示実施形態による複数のシリンダ1のうち1つの上部を示す。シリンダ1の上部カバー48には、燃料バルブ50の吹出口、例えばノズルからシリンダ1の燃焼室にガス燃料を噴射するための3個のガス燃料バルブ50が備えられている。本例示実施形態では、シリンダ当たり3個のガス燃料バルブ50が示されているが、燃焼室のサイズに応じて1個又は2個のガス燃料バルブで十分であり得ることを理解されたい。ガス燃料バルブ50は、高圧ガス燃料をガス燃料バルブ50に供給するガス燃料供給管62に連結された導入口53を有する。上記3個のガス燃料バルブ50のうちの1つは、供給管62によって供給され、他の2つのガス燃料バルブ50は、供給管63によって供給される。本実施形態においては、供給管62、63は、シリンダ1に対応する蓄ガス器60に連結するトップカバー48における削孔である。ガスアキュムレータ(gas accumulator)60は、ガスタンク及び高圧ポンプを備えるガス供給システム(不図示)から高圧ガスを受容する。
【0039】
ガス燃料バルブ50は、符号57で示される加圧着火液のソースに連結した導入口を有する。ここで着火液としては、シール油、舶用ディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、潤滑油、重油又はジメチルエーテル(DME)等であることができる。ガス燃料バルブ50は、ガス燃料の圧力よりもほぼ一定のマージンだけ高圧の着火液を送給するように構成されている。加圧着火液のソース57は、ガス燃料のソース60の圧力より少なくとも僅かに高い圧力を有する。
【0040】
本例示実施形態においては、各シリンダ1には、ガス燃料アキュムレータ60が備えられている。ガス燃料アキュムレータ60は、シリンダ1の燃料バルブ50に送給される準備が整っている、高圧(例えば、約300バール)下のガス燃料の任意量を含有する。ガス燃料供給管62、63は、ガス燃料アキュムレータ60と、それに関係するシリンダ1の各ガス燃料バルブ50との間に伸びている。
【0041】
ウインドウバルブ61はガス燃料アキュムレータ60の放出口に配置されており、ウインドウバルブ61は、ガス燃料アキュムレータ60からガス燃料供給管62、63へのガス燃料の流れを制御する。
【0042】
3個の燃料油バルブ49が、燃料油によるエンジンの運転のために、トップカバー48に備えられている。燃料油バルブは、周知の様式で高圧燃料油のソースに連結されている。
【0043】
エンジンには、エンジンの作動を制御する電子制御ユニットECUが備えられている。信号線により、電子制御ユニットECUを、ガス燃料バルブ50に、燃料油バルブ49に、並びにウインドウバルブ61に連結する。
【0044】
電子制御ユニットECUは、ガス燃料バルブの噴射イベントのタイミングを正確に調整し、かつガス燃料バルブ50用いてガス燃料の使用量を制御するように構成されている。
【0045】
電子制御ユニットECUは、ウインドウバルブ61を開閉することにより、ガス燃料バルブ50によって制御されるガス燃料噴射イベントの開始前に供給管62、63が高圧ガス燃料で充填されていることを確実にする。
【0046】
図6、7及び9は、自己着火内燃エンジンの燃焼室にガス燃料を噴射し、かつ噴射液を送給する燃料バルブ50を示す。燃料バルブ50は、最後端88と、前端にノズル54とを備える細長のバルブ筺体52を有する。最後端88には、制御ポート72、着火液ポート78及びガス漏れ検知ポート86を含む複数のポートが備えられている。最後端88は、肥大化して頭部を形成し、この頭部にはシリンダカバー48に燃料バルブ50を固定するボルト(付図示)を受容する穴94が備えられている。本実施形態においては、燃料バルブは、中心排気弁4の周囲に、つまりシリンダライナの壁に相対的に近傍に配置されている。細長のバルブ筺体52、及び燃料噴射バルブ50のその他構成要素、並びにノズルは、実施形態においてはステンレス鋼などの鋼鉄でできている。
【0047】
中空ノズル54には、ノズルの中空内部55(サック室)に連結されたノズル穴56が備えられており、ノズル穴56は、その長さにわたり分布し、ノズル54上でその径方向に分布する。ノズル穴56は、軸方向においては先端近傍にあり、その径方向の分布は、本実施形態においては約50°の比較的狭い範囲にあり、ノズル穴の径方向の配向は、ノズルがシリンダライナの壁から離れる方向に向かっている。更に、ノズルは、掃気ポートの構成によって生じる燃料チャンバにおける掃気空気の旋回の方向とおおよそ同じ方向となるように向けられている。
【0048】
ノズル54の先端59(図10)は、本実施形態では閉じている。ノズル54の後部又は基部51は、ノズル54においてサック室55を有する筺体52の前端に連結されており、ノズル54は筺体52に向かって開放している。サック室55が、閉じた先端から基部51まで伸長し、かつノズルの後部に開放する細長の穴であることにより、細長のバルブの前端における開放口/吹出口68にバルブシート69の下の筺体52を連結する。
【0049】
軸方向に変位可能なバルブニードル61は、細長のバルブ筺体52における長手方向穴77において精密に規定されるクリアランスで摺動可能に受容される。バルブニードル61は、細長のバルブ筺体52に形成されるシート69に密封係合状態で侵入するように構成された先端を有する。一実施形態においては、シート69は、細長のバルブ筺体52の前端部に近接して配置されている。細長のバルブ筺体52には、例えばガス燃料供給管62,63を介して加圧ガス燃料のソース60に連結するガス燃料導入ポート53が備えられている。ガス燃料導入ポート53は、細長のバルブ筺体52に配置された燃料チャンバ58に連結し、燃料チャンバ58は、バルブニードル61の一部を取り囲む。シート69は、燃料チャンバ58とサック室55との間に配置されることにより、バルブニードル61が上昇した際、ガス燃料は、燃料チャンバ58からチャンバ55に流入し得る。ガス燃料は、サック室55から、ノズル穴56を介して、シリンダ1の燃焼室内に噴射される。
【0050】
軸方向に変位可能なバルブニードル61は、閉鎖位置及び開放位置を有する。閉鎖位置においては、軸方向に変位可能なバルブニードル61は、シート69に上に載っている。閉鎖位置においては、軸方向に変位可能なバルブニードル61は、したがって、ガス燃料導入ポート53からノズル54への流れを遮断する。開放位置においては、軸方向に変位可能なバルブニードル61は、シート69から上昇することにより、ガス燃料導入ポート53からノズル54への流れを可能にする。
【0051】
予めテンションがかけられたつる巻きばね66は、軸方向に変位可能なバルブニードル61に作用し、シート69上で閉鎖位置に向けてバルブニードル61を付勢する。しかしながら、ガス圧又は油圧などのその他手段が、バルブニードル61を閉鎖位置に付勢するために設けられ得る。一実施形態においては、つる巻きばね66の一端は、細長のバルブ筺体52の後端部に係合し、つる巻きばね66の他端は、バルブニードル61の後端部で拡幅部又はフランジ83に係合することにより、バルブニードル61の後端部は、アクチュエーションピストン64によって形成される。
【0052】
ガス燃料バルブ50には、閉鎖状態と開放状態との間で軸方向に変位可能なバルブニードル61を制御可能に移動させるアクチュエータシステムが備えられている。本実施形態においては、アクチュエータシステムは、細長のバルブ筺体52の筒部に摺動可能に受容される軸方向に変位可能なアクチュエーションピストン64を備える。アクチュエーションピストン64は、細長のバルブ筺体52と共に、アクチュエーションチャンバ74を規定する。本実施形態においては、アクチュエーションピストン64は、軸方向に変位可能なバルブニードル61の一体の最後端部である。しかしながら、アクチュエーションピストン64は、ネジによる連結、又は溶接等、様々な方法でバルブニードル61に動作可能に連結され得ることが理解され、好ましくは、アクチュエーションピストン64は、バルブニードル61と協調して移動する。但し、これは必要条件ではない。
【0053】
アクチュエーションチャンバ74は、制御油管70を介して制御油ポート72に流体連結される(すなわち、アクチュエーションチャンバ74と制御油ポート72との間を流体が行き来できるようにされている)。制御油ポート72は、電子制御油バルブ96(図4)に連結され、電子制御油バルブ96は、次に、高圧制御油のソース97に連結される。電子制御油バルブ96は、好ましくはオン/オフ型であり、電子制御ユニットECUから電子制御信号を受信し、噴射イベントを制御する。
【0054】
他の実施形態(不図示)においては、バルブニードルは、ソレノイド又はリニア電気モータ等の他のアクチュエーション手段によって作動させることができる。
【0055】
アクチュエーションピストン64には、上記筺体の後端部に向けて開放する、好ましくは同心のシリンダが備えられ、固定ピストン87は、そのシリンダ内部に摺動可能に受容される。アクチュエーションピストン64は、固定ピストン87に対して変位可能である。アクチュエーションピストン64内部のシリンダは、アクチュエーションピストン64が軸方向に動くためのスペースを提供するチャンバ80を、固定ピストン87と共に規定する。
【0056】
細長のバルブ筺体52には、着火液のソース57に連結される着火液ポート78が設けられている。着火液供給管76は、細長のバルブ筺体において、固定ピストン87を通して軸方向に伸長し、着火液ポート78をチャンバ80に流体連結する。
【0057】
着火液送給管の第2部分は、穴82としてバルブニードルにおいて同軸方向に伸長している。径方向流路85は、軸方向に変位可能なバルブニードル61において、細長のバルブ筺体52と軸方向に変位可能なバルブニードル61との間の間隙に着火液を供給することによりバルブニードル61を潤滑状態かつ密封状態とするためのポートより、穴82から軸方向に変位可能なバルブニードル61の外面まで広がっている。この事により、着火液をシール油として用いることが可能になる。着火液は上記間隙を通過し、上方のアクチュエーションチャンバ74と、下方の燃料チャンバ58へと流れる。アクチュエーションチャンバ74に流れる着火液分は、制御油と混合する。この事は、制御油に実質的な影響は与えない。燃料チャンバ58に流れる着火液分は、図8に示す通り、軸方向に変位可能なバルブニードル61がバルブシート69上にある状態では、燃料チャンバ58の底部に、つまり、バルブシート69の真上に蓄積する。
【0058】
軸方向に変位可能なバルブニードル61がバルブシート69上にあるエンジンサイクルの時に、適切な量の着火液が燃料チャンバ58の底部に集められるように、上記間隙の寸法は、精密に制御され、かつ選択される。着火液の適切な量は、確実かつ安定した着火を作り出すのに十分な量であり、エンジンの寸法及び負荷等に応じて、例えば0.2mg〜200mgの範囲であり得る。着火液のソースの圧力は、ガス燃料のソースの圧力を超えるマージンを有する。上記間隙の寸法は、着火液の流れが適切な程度に一定になるように、着火液の性状、例えば粘度との関係で選択される。
【0059】
細長のバルブ筺体52におけるガス漏れ検知流路84は、ガス漏れの検知のためのガス漏れ検知ポート86に繋がる。
【0060】
ガス燃料の噴射イベントは、電子制御ユニットECUによってガス燃料バルブ50の開放時間の長さを介して制御される。つまり、1つの噴射イベントにおいて噴射されるガス量は、その開放時間の長さによって決定される。このように、電子制御ユニットECUからの信号により、制御油圧が、アクチュエーションチャンバ74において上昇し、バルブニードル61が、閉鎖位置から開放位置への動きにおいてシート69から上昇する。バルブニードル61は、制御油圧力が上昇すると閉鎖位置から開放位置へとフルストロークを常に実行し、アクチュエーションチャンバ74における圧力上昇により、アクチュエーションピストン64が、ノズル54とシート69とから離れる軸方向でつる巻きばね66の力に対して付勢される。
【0061】
燃料チャンバ58の底部(図8)に蓄積された着火液は、ノズル54におけるサック室55に最初に侵入し、続いてガス燃料が侵入する。つまり、ガス燃料が、着火液を前方に押し出し、サック室55の中に着火液を入れる。このように、燃焼室58に蓄積された着火液は、ガス燃料よりも前にノズル54のサック室55に侵入する。燃料バルブ50が開放する直前に、サック室55は、燃焼室における掃気空気の圧縮により、圧縮高温空気と残留未燃ガス燃料との混合物で充填される(ノズル穴56により、燃焼室からサック室55内への空気の流れが可能になる。)。従って、燃料バルブ50の開放の直後には、サック室55内に高温圧縮空気、着火液及びガス燃料が存在する。この事は、中空ノズル54内部に既に存在するガス燃料の着火に繋がる。
【0062】
図12は、間隙77が、ポート178及び管176、軸方向穴182と径方向穴185介してシールのソースから提供されるシール油の粘度との関係で、実際上、シール油は燃焼室内に漏れることはない点を除き、上記図の実施形態と本質的に同一である、バルブ50の別の実施形態を示す。代わりに、別の燃焼液流路99により、燃料チャンバ58が着火液ポート98に連結する。燃焼液流路99は、軸方向に変位可能なバルブニードル61の閉鎖期間において燃料チャンバ58に送給される着火液の量を調整しかつ制御するために、例えば口径固定のオリフィス絞りの形態の、固定絞り100を備える。
【0063】
着火液ポート98は、ガス燃料のソースの圧力を超えるマージンを有する圧力を有する高圧着火液のソースに連結している。図12の実施形態によるバルブの動作は、上記図で説明した燃料バルブの動作と本質的には同一である。
【0064】
一実施形態(不図示)において、アクチュエーション手段は、ソレノイド又はリニア電気モータとピストンを備え、制御油は必要とされない。
【0065】
自然着火内燃エンジンは、第1高圧力で加圧ガス燃料をエンジンの燃料バルブ50に供給することによって作動する。着火液は、燃料バルブ50に第2高圧力で供給される。第2高圧力は、第1高圧力よりも高い。ガス燃料の噴射は、中空ノズル54の上のバルブシート69と協働する変位可能なバルブニードル61を用いて制御される。燃料チャンバ58は、バルブシート69の上に配置される。燃料チャンバ58は、ガス燃料により加圧される。小量の連続流量の着火液が燃料チャンバ58に送給され、着火液が、バルブニードル61がバルブシート69上にある期間においてバルブシート69の上に蓄積する。ガス燃料噴射イベントは、バルブシート69から、軸方向に変位可能なバルブニードル61を上昇させることによって開始され、それによりガス燃料を送給する直前に蓄積着火液が中空噴射ノズル54に侵入させる。次いでガス燃料が、着火液によりノズル54内部で着火する。
【0066】
エンジンは、着火液の補助を受けることにより、かつその他の着火装置は使用せずに噴射ガスを自然着火させるように構成されている。
【0067】
エンジンは、ガス燃料がノズル内部のチャンバの中に侵入した際にガス燃料を着火させるように構成されている。
【0068】
一実施形態においては、ノズル54は、エンジンサイクル全体を通して300℃を超える温度で維持される。一実施形態においては、中空ノズル54内部の温度は、圧縮ストロークの最後において約600℃である。
【0069】
特許請求の範囲において用いられる参照符号は、発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0070】
本発明について説明のために詳細に記載してきたが、その詳細は、その目的のみのものであり、本発明の要旨から逸脱することなく当業者において変形がされ得る。
図1
図2
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図7
図8
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図10
図11
図12