(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、風流入方向に対するボルテックスジェネレータの取付方向が適切な方向からずれていると、ボルテックスジェネレータによる渦の生成が不安定となり、風車翼の空力的性能の改善が十分でない場合や、却って風車翼の空力的性能が低下する場合がある。よって、風車翼に対して規定の取付角度でボルテックスジェネレータを取り付けることが望まれる。
しかしながら、特許文献1〜10には、ボルテックスジェネレータを規定の取付角度で精度良く風車翼に取り付けるための具体的なボルテックスジェネレータの構成は開示されていない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、風流入方向に対して適切な取付方向で風車翼に取付け可能なボルテックスジェネレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風車翼用ボルテックスジェネレータは、
前記風車翼の表面に固定される基部と、
前記基部上に立設される少なくとも1本のフィンと、
を備え、
前記基部は、前記基部の外縁領域における少なくとも一対の対向位置に、前記ボルテックスジェネレータの配向を示すマークを有する。
【0008】
上記(1)の構成では、ボルテックスジェネレータは、基部の外縁領域における少なくとも一対の対向位置に、該ボルテックスジェネレータの配向を示すマークを有する。よって、風車翼における基準方向に対してボルテックスジェネレータのマークを所定角度になるようにボルテックスジェネレータの取付角度を調節することで、風流入方向に対して適切な取付方向でボルテックスジェネレータを取付けることができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記基部は、平面視にて円形を有し、
前記一対の対向位置を結ぶ直線が、前記基部の前記円形の中心を通る。
上記(2)の構成によれば、ボルテックスジェネレータの基部は平面視にて円形を有し、マークがそれぞれ形成されている一対の対向位置を結ぶ直線が基部の円形の中心を通るので、風車翼面上で該直線に直交する方向における基部の円形の中心位置を特定することができる。よって、基部のマークを利用して、ボルテックスジェネレータの風車翼における取付位置への位置決めをすることができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記少なくとも一本のフィンは、前記基部上に隣り合って設けられ、且つ、互いのコード方向が交差するように配向された2本のフィンを含み、
前記マークは、
前記基部の前記円形の中心を通る前記一対の対向位置を結ぶ直線であって、前記2本のフィンの前記コード方向がなす角度の二等分線に直交する直線上に配置される第1基準マークと、
前記基部の前記円形の中心を通る前記一対の対向位置を結ぶ直線であって、前記2本のフィンの前記コード方向がなす角度の二等分線と平行な直線上に配置される第2基準マークと、を含む。
上記(3)の構成によれば、第1基準マーク及び第2基準マークは、基部の円形の中心を通り互いに直交する直線上に配置されるので、これらの直線の交点である基部の円形の中心位置を、ボルテックスジェネレータの取付位置に精度良く合わせることができる。よって、ボルテックスジェネレータの風車翼における取付位置への位置決めを精度良く行うことができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の構成において、
前記少なくとも一本のフィンは、前記基部上に隣り合って設けられ、且つ、互いのコード方向が交差するように配向された2本のフィンを含み、
前記マークは、
前記2本のフィンの前記コード方向がなす角度の二等分線に直交する基準線に沿って形成された基準マークと、
前記基準線に対して規定角度をなす直線に沿って形成された角度指示マークと、
を含む。
上記(4)の構成では、ボルテックスジェネレータは、基準マークの示す方向を規定する基準線に対して規定角度αをなす直線に沿って形成された角度指示マークを有するので、風車翼における基準方向に該角度指示マークを沿わせることで、風車翼に対して取付角度αでボルテックスジェネレータを高精度に取付けることができる。よって、上記(4)の構成によれば、基準線に対して所望の角度αをなすように角度指示マークを設けておけば、風車翼における基準方向に角度指示マークを沿わせるだけで、風流入方向に対して適切な取付方向(取付角度α)でボルテックスジェネレータを高精度に取付けることができる。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記角度指示マークは、前記基準線に対してなす角度が異なる複数の直線に沿ってそれぞれ形成された複数の角度指示マークを含み、
前記複数の角度指示マークのうち一部は、前記基準マーク及び残りの前記角度指示マークと長さ又は太さが異なる。
上記(5)の構成では、ボルテックスジェネレータは、基準マークの示す方向を規定する基準線に対してなす角度が異なる複数の直線に沿ってそれぞれ形成された複数の角度指示マークを含む。よって、複数の角度指示マークのうち、基準線に対して所望の角度αをなす角度指示マークを選択して、この角度指示マークを風車翼における基準方向に沿わせることで、風流入方向に対して適切な取付方向(取付角度α)でボルテックスジェネレータを高精度に取付けることができる。
また、上記(5)の構成では、複数の角度指示マークのうち一部は、基準マーク及び残りの角度指示マークと長さ又は太さが異なるので、それぞれの角度指示マークが示す角度を正確に読み取ることが容易となる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れかの構成において、前記マークは、前記基部のうち前記マークの周辺の部位に対して凹んでいる。
上記(6)の構成によれば、ボルテックスジェネレータのマークは、基部において、マーク周辺の部位に対して凹んでいるので、凹んだ部分をボルテックスジェネレータ取付け時に他の物体(例えば、シーラントやパテ)で埋めたり、風車の運転中において凹んだ部分に他の物体(例えば大気中の浮遊物等)が堆積することで、ボルテックスジェネレータの基部の表面が平滑化される。このため、ボルテックスジェネレータが風車翼に取り付けられた風車の運転時に、マークにより風車翼が受ける風の流れに与える影響を抑えることができる。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れかの構成において、前記フィンの圧力面及び負圧面は、前記基部を基準とした高さ方向において抜き勾配を有する。
上記(7)の構成によれば、フィンの圧力面及び負圧面は、基部を基準とした高さ方向において抜き勾配を有するので、型を用いてボルテックスジェネレータを製造するときに、離型が容易となる。
【0015】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る風車翼は、
翼本体と、
前記翼本体の表面に取り付けられた上記(1)〜(7)の何れかに記載のボルテックスジェネレータと、
を備える。
【0016】
上記(8)の構成では、ボルテックスジェネレータは、基部の外縁領域における少なくとも一対の対向位置に、該ボルテックスジェネレータの配向を示すマークを有する。よって、風車翼における基準方向に対してボルテックスジェネレータのマークを所定角度になるようにボルテックスジェネレータの取付角度を調節することで、風流入方向に対して適切な取付方向でボルテックスジェネレータを取付けることができる。
【0017】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、前記ボルテックスジェネレータは、前記翼本体の負圧面において、該負圧面に沿った風の流れの乱流域内に設置される。
風車翼の負圧面における流れの剥離は、前縁近傍の層流域からその下流側の乱流域に向かって境界層が徐々に厚くなり、後縁に到達する前に流れが剥がれてしまうことで生じる。
この点、上記(9)の構成によれば、負圧面に沿った風の流れの乱流域内にボルテックスジェネレータを設置することで、負圧面からの流れの剥離を抑制することができる。
【0018】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、上記(8)又は(9)に記載の風車翼を備える。
【0019】
上記(10)の構成では、ボルテックスジェネレータは、基部の外縁領域における少なくとも一対の対向位置に、該ボルテックスジェネレータの配向を示すマークを有する。よって、風車翼に対してボルテックスジェネレータのマークを所定角度になるようにボルテックスジェネレータの取付け角度を調節することで、風流入方向に対して適切な取付方向でボルテックスジェネレータを風車翼に取り付けることができる。
【0020】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るボルテックスジェネレータの取付方法は、
前記風車翼において少なくとも2つの基準点の位置を前記風車翼に対して特定するステップと、
上記(1)乃至(7)の何れかに記載のボルテックスジェネレータの前記マークが前記基準点を結ぶ直線上に配置されるように前記ボルテックスジェネレータを前記風車翼に取り付けるステップと、
を備える。
【0021】
上記(11)の方法では、風車翼において特定された少なくとも2つの基準点を結ぶ直線上に、ボルテックスジェネレータの配向を示すマークが配置されるようにボルテックスジェネレータを風車翼に取り付ける。これにより、風流入方向に対して適切な取付方向でボルテックスジェネレータを風車翼に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、風流入方向に対して適切な取付方向で風車翼に取付け可能なボルテックスジェネレータが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0025】
まず、
図1及び
図2を参照して、幾つかの実施形態に係るボルテックスジェネレータが適用される風車翼及び風力発電装置の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る風力発電装置の概略構成図であり、
図2は、一実施形態に係る風車翼の斜視図である。
【0026】
図1に示すように、風力発電装置90は、少なくとも一本(例えば3本)の風車翼1及びハブ94で構成されるロータ93を備える。風車翼1は放射状にハブ94に取り付けられており、風車翼1で風を受けることによってロータ93が回転し、ロータ93に連結された発電機(不図示)で発電を行うように構成されている。
なお、
図1に示す実施形態において、ロータ93は、タワー96の上方に設けられたナセル95によって支持されている。また、タワー96は、水上又は陸上に設けられた土台構造97(基礎構造又は浮体構造等)に立設されている。
以下に説明するように、風力発電装置90の風車翼1には、一実施形態に係るボルテックスジェネレータが取り付けられている。
【0027】
図2に示すように、風車翼1は、翼本体2と、翼本体2の表面(翼面)に取り付けられたボルテックスジェネレータ10と、を備える。
翼本体2は、風力発電装置90のハブ94に取り付けられる翼根3と、ハブ94から最も遠くに位置する翼先端4と、翼根3と翼先端4の間に延在する翼型部5と、を含む。また、風車翼1は、翼根3から翼先端4にかけて、前縁6と後縁7とを有する。また、風車翼1の外形は、圧力面(腹面)8と、圧力面8に対向する負圧面(背面)9とによって形成される。
【0028】
図2に示す風車翼1においては、複数のボルテックスジェネレータ10が翼本体2の負圧面9に取り付けられている。また、複数のボルテックスジェネレータ10は、翼本体2の負圧面9において翼長方向に複数配列されている。
なお、本明細書において、「翼長方向」とは、翼根3と翼先端4とを結ぶ方向であり、「翼コード方向」とは、翼本体2の前縁6と後縁7とを結ぶ線(コード)に沿った方向である。
【0029】
次に、
図3A〜
図7を参照して、幾つかの実施形態に係るボルテックスジェネレータについて具体的に説明する。
図3A及び
図4Aは、それぞれ、一実施形態に係るボルテックスジェネレータ10の斜視図であり、
図3B及び
図4Bは、それぞれ、
図3A及び
図4Aに示すボルテックスジェネレータ10の平面図である。
図5〜
図7は、それぞれ、一実施形態に係るボルテックスジェネレータ10の平面図である。
【0030】
ボルテックスジェネレータ10は、風車翼1の表面(より具体的には翼本体2の表面)に固定される基部11と、基部11上に立設される少なくとも一本のフィン12と、を備えている。
図3A〜
図5及び
図7に示す実施形態では、ボルテックスジェネレータ10は、基部11上において隣り合うように設けられた一対(合計2本)のフィン12(12A,12B)を有している。また、
図6に示す実施形態では、ボルテックスジェネレータ10は、基部11上において隣り合うように設けられた一対のフィン12(12A,12B)を2組(合計4本)有している。
【0031】
図3A〜
図3B、
図5及び
図7に示す実施形態では、基部11は平面視において円形形状を有している。また、
図4A〜
図4Bに示す実施形態では、基部11は平面視において台形形状を有している。
幾つかの実施形態では、基部11は、円形や台形以外の形状を有していてもよい。基部11は、例えば、
図6に示すような楕円形状を有していてもよく、あるいは、長方形等の多角形の形状や、他の形状を有していてもよい。
【0032】
図3A〜
図7に示す実施形態では、フィン12は翼型を有している。フィン12は、風の流入方向の上流側に位置する前縁13と、風の流入方向の下流側に位置する後縁14と、風の流入方向における上流側を向くフィン12の腹面(圧力面)15と、風の流入方向における下流側を向くフィン12の背面(負圧面)16と、を有する。フィン12において、前縁13と後縁14とを結ぶ直線の方向が、フィン12のコード方向である。
【0033】
幾つかの実施形態において、フィン12は、風流入方向に対して所定の角度をなすように傾斜して設けられている。
例えば、
図3A〜
図7に示すボルテックスジェネレータ10においては、風流入方向の上流側から下流側に向けて(すなわち、風車翼1(
図2参照)の前縁6側から後縁7側に向けて)、一対のフィン12A,12Bの間の隙間が広がるように各々のフィン12A,12Bが設けられている。
幾つかの実施形態では、風流入方向の下流側から上流側に向けて(すなわち、風車翼1(
図2参照)の後縁7側から前縁6側に向けて)、一対のフィン12A,12Bの間の隙間が広がるように各々のフィン12A,12Bが設けられていてもよい。
【0034】
ここで、ボルテックスジェネレータ10の作用について簡単に説明する。
風車翼1の負圧面9における流れの剥離は、前縁6近傍の層流域からその下流側の乱流域に向かって境界層が徐々に厚くなり、後縁7に到達する前に流れが剥がれてしまうことで生じる。
風車翼1に取り付けられたボルテックスジェネレータ10は、フィン12が生み出す揚力によって、フィン12の背面16側に縦渦を形成する。また、フィン12に流入した流れによって、フィン12の前縁13の最上流側位置13aから頂部13bに向かうエッジに沿った縦渦が形成される。このようにフィン12により生成される縦渦によって、ボルテックスジェネレータ10の後流側において、風車翼1面上の境界層内外でのフィン12の高さ方向における運動量交換が促進される。これにより、風車翼1の表面における境界相が薄くなり、風車翼1の後縁剥離が抑制されるようになっている。
【0035】
幾つかの実施形態では、ボルテックスジェネレータ10は、翼本体2の負圧面9において、負圧面9に沿った風の流れの乱流域内に設置される。このように、負圧面9に沿った風の流れの乱流域内にボルテックスジェネレータ10を設置することで、負圧面9からの流れの剥離を抑制することができる。
【0036】
図3A〜
図7に示す実施形態において、基部11は、基部11の外縁領域における少なくとも一対の対向位置に、前記ボルテックスジェネレータの配向を示すマーク20を有する。
【0037】
基部11の外縁領域とは、平面視における基部11の輪郭の周辺領域のことである。例えば、
図3A〜
図3Bに示す例では、基部11の円形形状の輪郭の周辺領域のことであり、
図4A〜
図4Bに示す例では、基部11の台形形状の輪郭の周辺領域のことである。
【0038】
また、基部11の外縁領域における一対の対向位置とは、基部11の外縁領域において、該外縁領域に囲まれる内側領域を挟んで互いに向き合う一対の位置のことである。例えば、
図3A〜
図7において、マーク20Aとマーク20A’、又は、マーク20Bとマーク20B’は、それぞれ、基部11の外縁領域における一対の対向位置に設けられたマークである。
【0039】
基部11の外縁領域における一対の対向位置に設けられたマーク20により示される方向(すなわち、一対の対向位置を相互に結ぶ直線の方向)は、基部11におけるフィン12の向き(配設方向)と特定の角度をなす。よって、基部11の外縁領域における一対の対向位置に設けられたマーク20は、基部11におけるフィン12の向きを間接的に示すものであり、すなわちボルテックスジェネレータ10の配向を示すものである。
【0040】
風力発電装置90は、通常、運転時には、風車翼1の前縁6から後縁7に向かって風が流入されるようになっている。よって、風車翼1において、ボルテックスジェネレータ10の取付方向の基準となる基準方向を予め定義しておき、該基準方向に対してボルテックスジェネレータ10のマーク20が示す方向が所定角度となるようにボルテックスジェネレータ10の取付角度を調節することで、風流入方向に対して適切な取付方向でボルテックスジェネレータ10を風車翼1に取り付けることができる。
【0041】
風車翼1に対するボルテックスジェネレータ10の適切な取付方向は、例えば流体解析に基づいて決定することができる。また、風車翼1における基準方向に対する各ボルテックスジェネレータ10のマーク20の所定角度は、風車翼1において定義された基準方向と、予め流体解析等により決定された適切な取付方向とに基づいて決定することができる。
【0042】
なお、マーク20は、
図3A〜
図4B、
図6及び
図7に示すように、基部11の外縁領域における一対の対向位置のそれぞれに形成された一対のマークであってもよい。あるいは、マーク20は、例えば
図5に示すように、基部11の外縁領域における一対の対向位置のマーク20A,20A’を結ぶ直線状のマーク20として設けられてもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、基部11は、平面視にて円形を有しており、マーク20が形成されている一対の対向位置を結ぶ直線が、基部11の円形の中心を通る。
例えば、
図3A〜
図3B、及び
図7に示す実施形態では、マーク20A及びマーク20A’がそれぞれ設けられた一対の対向位置を結ぶ直線L
Aは、基部11の円形の中心Cを通る。また、同実施形態では、マーク20B及びマーク20B’がそれぞれ設けられた一対の対向位置を結ぶ直線L
Bは、基部11の円形の中心Cを通る。
【0044】
このように、平面視円形を有する基部11においてマーク20がそれぞれ形成されている一対の対向位置を結ぶ直線(例えば
図3B及び
図7に示されるL
A又はL
B)が、基部11の中心Cを通るようにすることで、風車翼1の翼面上で該直線に直交する方向における基部11の円形の中心位置を特定することができる。よって、基部11のマーク20を利用して、ボルテックスジェネレータ10の風車翼1における取付位置への位置決めをすることができる。
【0045】
図3A〜
図7に示す実施形態では、基部11上において隣り合うように設けられた一対のフィン12(12A,12B)は、互いのコード方向が交差するように配向されている。例えば、
図3Bを参照すると、基部11上に設けられた一対のフィン12(12A,12B)は、各フィン12A,12Bの前縁13と後縁14とを結ぶ直線(各コード方向に伸びる直線L
C1,L
C2)が交点Iで交差している。
【0046】
図3A〜
図3B及び
図7に示す実施形態では、基部11に設けられたマーク20は、基準マーク(第1基準マーク)24と、基準マーク(第2基準マーク)26とを含む。
ここで、基準マーク(第1基準マーク)24は、基部11の円形の中心Cを通る一対の対向位置(対向する一対のマーク20が設けられた位置)を結ぶ直線であって、2本のフィン12(12A,12B)のコード方向がなす角度の二等分線L
H(
図3B参照)に直交する直線上に配置されるマーク20である。また、基準マーク(第2基準マーク)26は、基部11の円形の中心Cを通る一対の対向位置(対向する一対のマーク20が設けられた位置)を結ぶ直線であって、2本のフィン12(12A,12B)のコード方向がなす角度の二等分線L
Hと平行な直線上に配置されるマーク20である。
【0047】
図3Bを参照して説明すると、マーク20A及びマーク20A’がそれぞれ設けられた一対の対向位置を結ぶ直線L
Aは、基部11の円形の中心Cを通る直線であり、2本のフィン12(12A,12B)のコード方向がなす角度(各コード方向に伸びる直線L
C1,L
C2がなす角度)の二等分線L
Hに直交する直線である。そして、マーク20A及びマーク20A’は、それぞれ、該直線L
A上に配置される基準マーク(第1基準マーク)24である。
また、マーク20B及びマーク20B’がそれぞれ設けられた一対の対向位置を結ぶ直線L
Bは、基部11の円形の中心Cを通る直線であり、2本のフィン12(12A,12B)のコード方向がなす角度(各コード方向に伸びる直線L
C1,L
C2がなす角度)の二等分線L
Hと平行な直線である。そして、マーク20B及びマーク20B’は、それぞれ、該直線L
B上に配置される基準マーク(第2基準マーク)26である。
【0048】
また、
図7に示す実施形態においても、
図3A〜
図3Bに示す実施形態と同様に、円形の基部11は、基準マーク(第1基準マーク)24と基準マーク(第2基準マーク)26とを有する。
【0049】
基準マーク(第1基準マーク)24及び基準マーク(第2基準マーク)26は、基部11の円形の中心Cを通り互いに直交する直線(
図3Bの直線L
A,L
B)上に配置されるので、これらの直線L
A,L
Bの交点である基部11の円形の中心Cの位置を、ボルテックスジェネレータ10の取付位置に精度良く合わせることができる。よって、基部11が基準マーク(第1基準マーク)24及び基準マーク(第2基準マーク)26を有することにより、ボルテックスジェネレータ10の風車翼1における取付位置への位置決めを精度良く行うことができる。
【0050】
図7に示す実施形態では、基部11は、基準マーク24と、角度指示マーク25(25A,25B)と、を有する。
【0051】
基準マーク24は、2本のフィン12(12A,12B)のコード方向がなす角度の二等分線L
Hに直交する基準線L
Rに沿って形成されたマーク20である。
なお、
図7に示す実施形態において、基準線L
Rは、基部11の円形の中心Cを通る直線であり、マーク20A及びマーク20A’がそれぞれ設けられた一対の対向位置を結ぶ直線L
Aと同一の直線である。また、
図7の実施形態では、基部11が円形であることから、該基準マーク24は、上述の第1基準マーク24と等価のマークであるため、同一の符号で示している。
【0052】
角度指示マーク25は、基準線L
Rに対して既定角度αを成す直線に沿って形成されたマーク20である。
基部11において、基準線L
Rに対して規定角度αをなす直線に沿った角度指示マーク25が形成されていれば、風車翼1における基準方向に該角度指示マーク25を沿わせることで、風車翼1に対して取付角度αでボルテックスジェネレータ10を高精度に取付けることができる。
【0053】
図7に示す実施形態では、基部11には、基準線L
Rに対してなす角度(ここでは、基部11の円形の中心C回りの角度)が異なる複数の直線にそれぞれ沿った複数の角度指示マーク25が形成されている。すなわち、基部11には、複数の規定角度αに対応した角度指示マーク25が形成されている。
【0054】
図7に示す実施形態では、複数の角度指示マーク25は、それぞれ、等しい角度間隔で配置されている。すなわち、複数の角度指示マーク25は、それぞれ、規定角度α(基準線L
Rに対してなす角度(基部11の円形の中心C回りの角度))がn×a(ただし、nは整数であり、a>0°である。)である直線に沿ってそれぞれ形成されている。例えば、a=1°の場合、複数の角度指示マーク25の角度間隔は1°となる。
なお、
図7に示す実施形態における基準マーク24は、規定角度α(基準線L
Rに対してなす角度)が0°(すなわち、上述の式におけるn=0の場合の角度)の直線に沿った角度指示マーク25でもある。
【0055】
このように、基部11において複数の角度指示マーク25を設けることで、複数の角度指示マーク25のうち、基準線L
Rに対して所望の角度αをなす角度指示マーク25を選択して、この角度指示マーク25を風車翼1における基準方向に沿わせることで、風流入方向に対して適切な取付方向(取付角度α)でボルテックスジェネレータ10を高精度に取付けることができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、複数の角度指示マーク25のうち一部は、基準マーク24及び残りの角度指示マーク25と長さ又は太さが異なる。
例えば、
図7に示す実施形態では、基準マーク24の近傍に形成された複数の角度指示マーク25において、比較的長い角度指示マーク25A(基準マーク24を含む)が5つおきに(例えば、a=1°であれば5°毎に)設けられているとともに、隣り合う長い角度指示マーク25Aの間には、それぞれ4つの比較的短い角度指示マーク25Bがa°おき(例えばa=1°であれば1°毎に)設けられている。
他の実施形態では、例えば、比較的長い角度指示マーク25と比較的短い角度指示マーク25とが交互に配列されていてもよい。
【0057】
このように、複数の角度指示マーク25のうち一部の角度指示マーク25(
図7では角度指示マーク25B)と、基準マーク24及び残りの角度指示マーク25(
図7では角度指示マーク25A)とで、長さ又は太さを異ならせることで、それぞれの角度指示マーク25が示す角度を正確に読み取ることが容易となる。
【0058】
幾つかの実施形態では、マーク20(基準マーク24,26又は角度指示マーク25等)は、基部11のうちマーク20の周辺の部位に対して凹んでいる。例えば、
図3Aに示すように、マーク20は基部11の表面よりも凹んだ溝として基部11に形成されていてもよい。
この場合、基部11において凹んだマーク20の部分をボルテックスジェネレータ10の取付け時に他の物体(例えば、シーラントやパテ)で埋めたり、風力発電装置90の運転中において凹んだマーク20の部分に他の物体(例えば大気中の浮遊物等)が堆積することで、ボルテックスジェネレータ10の基部11の表面が平滑化される。このため、ボルテックスジェネレータ10が風車翼1に取り付けられた風力発電装置90の運転時に、マーク20により風車翼1が受ける風の流れに与える影響を抑えることができる。
【0059】
なお、角度指示マーク25は、
図7に示すように、一対の基準マーク(第1基準マーク)24(マーク20A,20A’)の近傍に設けてもよい。あるいは、角度指示マーク25は、一対の基準マーク(第2基準マーク)26(20B,20B’)の近傍に設けてもよい。
また、角度指示マーク25は、一対の対向する基準マーク24(マーク20A,20A’)又は一対の対向する基準マーク26(20B,20B’)のうち、一方のマーク20の近傍にのみ設けてもよい。
【0060】
幾つかの実施形態では、フィン12の圧力面15及び負圧面16は、基部11を基準とした高さ方向において抜き勾配を有する。
【0061】
ここで、
図8は、
図3Bに示すボルテックスジェネレータ10のVIII−VIII断面図である。例えば、
図8に示す例では、フィン12の後縁14において、フィン12の厚さが、フィン12の基部17から頂部18に向かって徐々に減少するように、圧力面15及び負圧面16の角度が、基部11を基準とする高さ方向(基部11に対する垂直方向)に対してそれぞれ角度θ
1,θ
2だけ傾斜している。
【0062】
このように、フィン12の圧力面15及び負圧面16は、基部11を基準とした高さ方向において抜き勾配を有するので、型を用いてボルテックスジェネレータ10を製造する場合に、離型が容易となる。
【0063】
次に、
図9〜
図12を参照して、幾つかの実施形態に係るボルテックスジェネレータ10の風車翼1(翼本体2)への取付け方法について説明する。
図9〜
図12は、それぞれ、ボルテックスジェネレータ10の取付方法を説明するための図である。
【0064】
なお、ここでは、ボルテックスジェネレータ10を、風車翼1(翼本体2)の負圧面9に取り付ける場合を例として説明するが、ボルテックスジェネレータ10を風車翼1の圧力面8に取り付ける場合も同様の方法で取り付けることができる。
【0065】
(風車翼面における基準点の特定)
一実施形態に係るボルテックスジェネレータ10の取付方法では、まず、基準点P
1及びP
2の風車翼1の翼面(負圧面9)上における位置を特定する。
基準点は、ボルテックスジェネレータ10の取付方向の基準となる基準方向を決める点である。2つの基準点P
1,P
2の風車翼1の翼面上での位置は、例えば、流体解析等により予め決定されたボルテックスジェネレータ10の取付位置に基づいて決定される。
基準点は、例えば、風車翼1の翼面における翼長方向及びコード方向の座標(z,l)で表すことができる。該座標系を用いて、予め決定される基準点P
1及びP
2の座標は、それぞれP
1(z
1,l
1)及びP
2(z
2,l
2)で表される。
【0066】
図9に示すように、基準点P
1及びP
2のコード方向における位置については、例えば、翼長方向に沿った翼長方向線Lsからの翼面における長さを計測することにより、基準点P
1及びP
2のl座標(すなわちl
1及びl
2)に該当する位置を翼面上において特定することができる。
なお、
図9における翼長方向線Lsは、翼面(負圧面9)上にて、コード方向における前縁6と後縁7の間の位置にて翼長方向に延びる直線である。このような直線Lsは、例えば、翼面において特定の位置に取り付けられた部材(例えば、受雷器(レセプタ)等)の位置を基準として引くことができる。他の実施形態では、翼長方向線Lsとして、風車翼1の後縁7を用いてもよい。
【0067】
あるいは、基準点P
1及びP
2の翼長方向における位置については、例えば、翼根3を基準とし、翼根3からの距離をレーザ計測等の手段で計測することにより、基準点P
1及びP
2のz座標(すなわちz
1及びz
2)に該当する位置を翼面上において特定することができる。
【0068】
(ボルテックスジェネレータの取付け)
次に、ボルテックスジェネレータ10の配向を示すマーク20が、基準点P
1及びP
2を結ぶ直線L
ref上に配置されるように、ボルテックスジェネレータ10を風車翼1に取り付ける。
ここで、基準点P
1及びP
2を結ぶ直線L
refは、風車翼1へのボルテックスジェネレータ10の取付け時における基準方向を示す直線である。直線L
refは、風車翼1の翼面において、例えば、テープ又はペン等を用いて、あるいはケガキ等により視覚可能に表示してもよい。
また、ボルテックスジェネレータ10の取付け時に直線L
ref上に配置されるマーク20は、基準マーク24であってもよく、角度指示マーク25であってもよい。
図10〜
図11Bでは、基準マーク24及び角度指示マーク25を有するボルテックスジェネレータ10を、角度指示マーク25が直線L
ref上に配置されるように風車翼1に取り付ける場合について図示している。
【0069】
図10に示すように、ボルテックスジェネレータ10の一対の基準マーク24が直線L
ref上に沿うようにして、ボルテックスジェネレータ10を風車翼1の表面に配置する。この際、ボルテックスジェネレータ10の基準点(例えば円形の基部11の中心C)が、翼長方向における規定の取付位置となるように配置する。なお、ボルテックスジェネレータ10の翼長方向における取付位置は、例えば流体解析等に基づいて予め決定されていてもよい。また、ボルテックスジェネレータ10の翼長方向における取付位置は、基準点P
1又は基準点P
2と同一であってもよい。
図11Aには、上述のようにして風車翼1の翼面上に配置されたボルテックスジェネレータ10が図示されている。
【0070】
次に、
図11Bに示すように、ボルテックスジェネレータ10を、中心Cの回りに、規定の取付角度αだけ回転させることで、ボルテックスジェネレータ10の取付角度を調節する。この際、基準マーク24が示す方向との角度がαである角度指示マーク25が直線L
refに沿うように、ボルテックスジェネレータ10を中心C回りに回転させる。
なお、規定の取付角度αは、例えば流体解析等に基づいて予め決定されていてもよい。
【0071】
上述のようにしてボルテックスジェネレータ10の風車翼1における取付位置及び取付角度を調整したら、ボルテックスジェネレータ10を風車翼1に固定させる。この際、接着剤又は両面テープを用いて、ボルテックスジェネレータ10を風車翼1に固定させてもよい。
また、
図12に示すように、風車翼1上に引いた1本の直線L
refを基準として、複数のボルテックスジェネレータ10を風車翼1に取り付けてもよい。このように、1本の直線L
refを基準として複数のボルテックスジェネレータ10を風車翼1に取り付けることで、ボルテックスジェネレータ10を風車翼1に効率的に取り付けることができる。
【0072】
以上に説明したように、風車翼1において特定された基準点P
1及びP
2を結ぶ直線L
ref上に、ボルテックスジェネレータ10の配向を示すマーク20が配置されるようにボルテックスジェネレータ10を風車翼1に取り付けることにより、風流入方向に対して適切な取付方向でボルテックスジェネレータ10を風車翼1に取り付けることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0074】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【解決手段】風車翼のためのボルテックスジェネレータは、前記風車翼の表面に固定される基部と、前記基部上に立設される少なくとも1本のフィンと、を備え、前記基部は、前記基部の外縁領域における少なくとも一対の対向位置に、前記ボルテックスジェネレータの配向を示すマークを有する。