(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6148393
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】服内環境冷却装置
(51)【国際特許分類】
F04D 25/08 20060101AFI20170607BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20170607BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20170607BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
F04D25/08 307E
A41D13/005 106
A41D13/002 105
B05B17/06
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-203043(P2016-203043)
(22)【出願日】2016年9月28日
【審査請求日】2016年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516309213
【氏名又は名称】リン エンレイ
(72)【発明者】
【氏名】リン エンレイ
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−033267(JP,A)
【文献】
特開2016−037959(JP,A)
【文献】
再公表特許第2004/017773(JP,A1)
【文献】
特開2012−117418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/08
A41D 13/005
A41D 13/002
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服の外部に配置され、外部の空気を取り込む空気取込口と、
衣服と該衣服を装着した人体の間の衣服内空間に配置され、前記空気取込口から取り込まれた空気を該衣服内空間に排出する空気排出口と、
前記空気取込口から前記空気排出口に向かう空気流を生成する気流発生手段と、
液体を貯蔵する液体貯蔵部と、
前記液体貯蔵部に貯蔵された液体を使って霧を発生させ、前記空気流に霧を供給する霧発生手段と、を備え、
前記霧発生手段の霧発生面の垂線の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して衣服側に傾斜していることを特徴する服内環境冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の服内環境冷却装置であって、
前記霧発生手段は、超音波振動子タイプの霧発生装置であることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の服内環境冷却装置であって、
前記霧発生手段が、前記気流発生手段の下流側に配置されていることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
前記霧発生手段が、前記空気排出口の近傍に配置されていることを特徴とする。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
前記霧発生手段が、前記空気排出口より人体側に配置されていることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
前記空気排出口から排出された空気流の方向が人体と平行であることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項7】
請求項6に記載の服内環境冷却装置であって、
前記霧発生手段の霧発生面の垂線の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して衣服側に0°より大きく、30°以下だけ傾斜していることを特徴する服内環境冷却装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
前記空気取込口から取り込まれた空気流の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して0°より大きく、90°以下だけ傾斜していることを特徴する服内環境冷却装置。
【請求項9】
請求項8に記載の服内環境冷却装置であって、
前記空気取込口から取り込まれた空気流の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して0°より大きく、45°以下だけ傾斜していることを特徴する服内環境冷却装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
服内環境冷却装置から前記衣服内空間の奥側に向かって伸びる延伸部と、該延伸部の先端に形成され、前記衣服と当接する服当接部とを備え、前記服当接部が前記衣服と当接することによって前記衣服を人体から離れる方向に広げ、前記衣服と前記人体の間に、前記空気排出口から排出された空気流が通る空間を確保するスペーサをさらに備えることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項11】
請求項10に記載の服内環境冷却装置であって、
前記スペーサが前記空気排出口から前記衣服内空間の奥側に向かって伸縮自在であることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項12】
請求項11に記載の服内環境冷却装置であって、
前記スペーサが前記空気排出口から衣服内空間の奥側にいくにつれて、人体から離れるように形成されていることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
服内環境冷却装置の筐体は、前記空気取込口の部分において人体から離れる方向に突出するように形成されており、該突出している部分の高さが、空気取込口から空気排出口に向かって徐々に低くなっており、かつ、該突出している部分の幅が、空気取込口から空気排出口にに向かって徐々に狭くなっていることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
服内環境冷却装置の筐体の人体側の面に、服内環境冷却装置を衣服のベルトに引っ掛けるための、下方に向けて開口を有するフック状の第1のベルト装着用部材を備えることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
服内環境冷却装置の筐体の側面に、ベルトを通すための環状の第2のベルト装着用部材を備えることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
服内環境冷却装置の筐体の衣服側の面に、下方から衣服を受け止めるための、上方に向かって開口を有するフック状の衣服保持用部材を備えることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
通信端末と通信するための通信手段と、
前記通信手段により入力された制御信号に基づき、前記気流発生手段及び/又は前記霧発生手段の動作を制御する制御手段とを更に備えることを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の服内環境冷却装置であって、
前記液体貯蔵部に貯蔵された液体が、香水又は薬剤を含むことを特徴とする服内環境冷却装置。
【請求項19】
気流発生手段により、衣服の外部に配置された空気取込口から外部の空気を取り込み、衣服と該衣服を装着した人体の間の衣服内空間に配置された空気排出口から該衣服内空間に空気を排出して、前記空気取込口から前記空気排出口に向かう空気流を生成する気流発生ステップと、
霧発生手段により、液体貯蔵部に貯蔵された液体を使って霧を発生させ、前記空気流に霧を供給する霧発生ステップと、
前記衣服内空間で霧を気化させることにより、その気化熱で前記衣服内空間の温度を冷却する冷却ステップとを備え、
前記霧発生手段の霧発生面の垂線の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して衣服側に傾斜していることを特徴とする服内環境冷却方法。
【請求項20】
請求項19に記載の服内環境冷却装置であって、
前記液体貯蔵部に貯蔵された液体が消臭剤、芳香剤又は香水を含むことを特徴とする服内環境冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の内側の温度を冷却するための服内環境冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣服の内側の温度を冷却するために、服地部に取り付けられたファンを備える空調衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の空調衣服では、人体の汗を気化させて服内環境を冷却するため、長時間使用した場合、人体内の水分が過剰に消費される虞があった。また、従来の空調衣服では、冷却効果を高めるために、ファンの回転数を上げて風力を大きくする必要があったため、使用時の騒音が大きいという問題や、風力が大きいため、衣服が膨らみ、見た目が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−307354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、人体内の水分を過剰に消費することなく、服内環境を冷却することができる服内環境冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる服内環境冷却装置は、衣服の外部に配置され、外部の空気を取り込む空気取込口と、衣服と該衣服を装着した人体の間の衣服内空間に配置され、前記空気取込口から取り込まれた空気を該衣服内空間に排出する空気排出口と、前記空気取込口から前記空気排出口に向かう空気流を生成する気流発生手段と、液体を貯蔵する液体貯蔵部と、前記液体貯蔵部に貯蔵された液体を使って霧を発生させ、前記空気流に霧を供給する霧発生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
霧発生手段で発生した霧は、気流発生手段によって生成された空気流に乗って衣服内空間に運ばれ、霧が気化する際の気化熱によって衣服内空間の温度が冷却される。
【0008】
ここで、前記霧発生手段は、超音波振動子タイプの霧発生装置であることが好ましい。
【0009】
また、前記霧発生手段が、前記気流発生手段の下流側に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記霧発生手段が、前記空気排出口の近傍に配置されていることが好ましい。
【0011】
また、前記霧発生手段が、前記空気排出口より人体側に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、前記空気排出口から排出された空気流の方向が人体と平行であることが好ましい。
【0013】
また、前記霧発生手段の霧発生面の垂線の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して衣服側に傾斜していることが好ましく、前記霧発生手段の霧発生面の垂線の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して衣服側に0°より大きく、30°以下だけ傾斜していることがより好ましい。
【0014】
また、前記空気取込口から取り込まれた空気流の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して0°より大きく、90°以下だけ傾斜していることが好ましく、前記空気取込口から取り込まれた空気流の方向が、前記空気排出口から排出された空気流の方向に対して0°より大きく、45°以下だけ傾斜していることがより好ましい。
【0015】
また、服内環境冷却装置から前記衣服内空間の奥側に向かって伸びる延伸部と、該延伸部の先端に形成され、前記衣服と当接する服当接部とを備え、前記服当接部が前記衣服と当接することによって前記衣服を人体から離れる方向に広げ、前記衣服と前記人体の間に、前記空気排出口から排出された空気流が通る空間を確保するスペーサをさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、前記スペーサが前記空気排出口から前記衣服内空間の奥側に向かって伸縮自在であることが好ましい。
【0017】
また、前記スペーサが前記空気排出口から衣服内空間の奥側にいくにつれて、人体から離れるように形成されていることが好ましい。
【0018】
また、服内環境冷却装置の筐体は、前記空気取込口の部分において人体から離れる方向に突出するように形成されており、該突出している部分の高さが、空気取込口から空気排出口に向かって徐々に低くなっており、かつ、該突出している部分の幅が、空気取込口から空気排出口にに向かって徐々に狭くなっていることが好ましい。
【0019】
また、服内環境冷却装置の筐体の人体側の面に、服内環境冷却装置を衣服のベルトに引っ掛けるための、下方に向けて開口を有するフック状の第1のベルト装着用部材を備えることが好ましい。
【0020】
また、服内環境冷却装置の筐体の側面に、ベルトを通すための環状の第2のベルト装着用部材を備えることが好ましい。
【0021】
また、服内環境冷却装置の筐体の衣服側の面に、下方から衣服を受け止めるための、上方に向かって開口を有するフック状の衣服保持用部材を備えることが好ましい。
【0022】
また、通信端末と通信するための通信手段と、前記通信手段により入力された制御信号に基づき、前記気流発生手段及び/又は前記霧発生手段の動作を制御する制御手段とを更に備えることが好ましい。
【0023】
ここで、前記液体貯蔵部に貯蔵された液体は、香水又は薬剤を含むことができる。
【0024】
また、本発明にかかる服内環境冷却方法は、気流発生手段により、衣服の外部に配置された空気取込口から外部の空気を取り込み、衣服と該衣服を装着した人体の間の衣服内空間に配置された空気排出口から該衣服内空間に空気を排出して、前記空気取込口から前記空気排出口に向かう空気流を生成する気流発生ステップと、霧発生手段により、液体貯蔵部に貯蔵された液体を使って霧を発生させ、前記空気流に霧を供給する霧発生ステップと、前記衣服内空間で霧を気化させることにより、その気化熱で前記衣服内空間の温度を冷却する冷却ステップとを備えることを特徴とする。
【0025】
ここで、前記液体貯蔵部に貯蔵された液体は、消臭剤、芳香剤又は香水を含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の服内環境冷却装置は、人体から出た汗ではなく、霧発生手段で発生したが霧が気化する際の気化熱によって衣服内空間の温度を冷却するので、人体内の水分を過剰に消費することがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明にかかる服内環境冷却装置を正面中央で切断した断面斜視図。
【
図7】同服内環境冷却装置を正面斜め方向から見た斜視図。
【
図8】Tシャツを着た状態で同服内環境冷却装置を装着した状態を示す図であり、(a)は人体の側方からみた図、(b)は人体の背面からみた図。
【
図9】スーツを着た状態で同服内環境冷却装置を装着した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願にかかる服内環境冷却装置を図面を参照しつつ説明する。服内環境冷却装置1は、衣服Cの外部に配置され、外部の空気を取り込む空気取込口2と、衣服Cと該衣服Cを装着した人体Hの間の衣服内空間Sに配置され、空気取込口2から取り込まれた空気を衣服内空間Sに排出する空気排出口3と、空気取込口2から空気排出口3に向かう空気流Fを生成するファン4(気流発生手段)と、液体Lを貯蔵する液体貯蔵部5と、液体貯蔵部5に貯蔵された液体Lを使って霧を発生させ、空気流Fに霧を供給する超音波振動子6(霧発生手段)と、を備えている。
【0029】
ユーザが電源スイッチ84を操作することにより服内環境冷却装置1のオン/オフが切り替えられ、内部に装填された電池BT又は筐体の側面12に設置された外部電源入力端子85(例えば、USB端子など)によりファン4、超音波振動子6、各種センサ及び制御基板90などに電源が供給される。なお、服内環境冷却装置1の筐体のファン4の近傍の内面などには、ファン4のモータの振動を抑えて静音化する静音部材41が設置されている。
【0030】
また、制御基板90には、スマートフォンSPなどの通信端末と通信するための通信手段としてのアンテナ及び送受信回路と、通信手段により入力された制御信号等に基づき、ファン4及び超音波振動子6などの動作を制御する制御手段としてのMPUが設置されている。ユーザは、スマートフォンSPにインストールされたアプリを操作することにより、服内環境冷却装置1のファン4及び超音波振動子6などの動作を制御することができる。
【0031】
本実施形態において服内環境冷却装置1は左右2つの超音波振動子6を備えている。超音波振動子6は、円板状の圧電セラミックスを振動源として、高周波の交流電圧を印加することにより、液体貯蔵部5内の液体Lを振動させて霧を発生させる。なお、液体貯蔵部5内には、毛細管現状により超音波振動子6まで水を吸い上げる円柱状の吸水部材51、液体貯蔵部5内の液体Lの量を検知する水量センサ52が設置されている。
【0032】
液体貯蔵部5に貯蔵する液体としては水の他、種々の液体を用いることができる。液体は香水又は薬剤を含んでいてもよい。ここで、薬剤には、医薬用の薬剤の他、消臭剤、芳香剤などのような非医薬用の薬剤が含まれる。液体に香水、消臭剤又は芳香剤を含ませることにより、体臭や汗のにおいを抑えることができる。また、液体に医薬用の薬剤を含ませることにより、疾患(例えば、皮膚疾患)の治療、予防及びかゆみ・苦痛の軽減が可能となる。
【0033】
また、服内環境冷却装置1の筐体の、液体貯蔵部5の上方に位置する箇所には給水口53が設けられている。この給水口53を介して液体Lを補充する。また、服内環境冷却装置1の筐体の背面13の上端の中央には、衣服内空間Sの温度及び湿度を検出するための温度・湿度センサ93が設けられている。
【0034】
超音波振動子6は、ファン4の下流側であって、空気排出口3の近傍に配置されている。ここで、空気排出口3の近傍とは、空気排出口3に隣接する服内環境冷却装置1の部位であって、超音波振動子6によって発生した霧が空気排出口3から排出された空気流によって影響を受け、流される領域をいう。超音波振動子6をファン4の下流側に配置することにより、超音波振動子6で発生した霧が効率的にファン4で生成された空気流Fによって衣服内空間Sに運ばれる。また、超音波振動子6が空気排出口3の近傍に配置されているので、超音波振動子6を空気取込口2から空気排出口3の経路の途中に配置した場合に比べて、超音波振動子6で発生した霧が水滴となって空気取込口2から空気排出口3の経路内に入り込みにくくなり、水滴によってファン4などが壊れることを防止することができる。
【0035】
服内環境冷却装置1では超音波振動子6が、空気排出口3より人体側に配置されている。このように、超音波振動子6を空気排出口3より人体側に配置することにより、直接、衣服Cにあたる霧の量を少なくすることができ、衣服Cが濡れやすくなることを防ぐことができる。
【0036】
また、服内環境冷却装置1は、空気排出口3から排出された空気流の方向D1が人体Hと平行になるように設計されている。このように、空気流の方向D1が人体Hと平行になるようにすることにより、霧を含んだ空気流を衣服内空間Sのより奥側に送り込むことができるようになり、人体Hをより広範囲において効率的に冷却することができるようになる。
【0037】
また、服内環境冷却装置1は、超音波振動子6の霧発生面の垂線の方向D2が、空気流の方向D1に対して衣服側に傾斜している。超音波振動子6の霧発生面をこのように配置することにより、直接、人体Hにあたる霧の量を少なくすることができる。ここで、霧発生面の垂線の方向D2が、空気流の方向D1に対して衣服側に0°より大きく、30°以下だけ傾斜していることが好ましい。30°を超えると、衣服Cにあたる霧の量が多くなり、衣服Cが濡れやすくなる。
【0038】
また、服内環境冷却装置1は、空気取込口2から取り込まれた空気流の方向D3が、空気排出口3から排出された空気流の方向D1に対して0°より大きく、90°以下だけ傾斜していることが好ましく、方向D3が方向D1に対して0°より大きく、45°以下だけ傾斜していることがより好ましい。方向D3を方向D1に対して傾斜させることにより、方向D3を方向D1に対して平行になるように配置した場合と比べて、ファン4を設置した部分の厚さを薄くすることができる。なお、方向D3が方向D1に対して90°より大きいと空気取込口2から空気排出口3に向かう空気流の流れが悪くなる。
【0039】
また、服内環境冷却装置1、空気排出口3近傍から衣服内空間Sの奥側に向かって伸びる延伸部71と、該延伸部71の先端に形成され、衣服Cと当接する服当接部72とを備え、服当接部72が衣服Cと当接することによって衣服Cを人体Hから離れる方向に広げ、衣服Cと人体Hの間に、空気排出口3から排出された空気流が通る空間を確保するスペーサ7をさらに備える。なお、
図2及び
図7はスペーサ7を伸ばした状態、
図1、
図3乃至
図6はスペーサ7を収納した状態を示している。
【0040】
より具体的には、延伸部71は、
図1及び
図2に示されるように、服内環境冷却装置1の左右の側面12にそれぞれ1つずつ配置されている。それぞれの延伸部71はわずかに湾曲した長尺扁平状に形成されており、その中央には溝部73が形成されている。溝部73は、服内環境冷却装置1の左右の側面12に形成された円筒状の側面を有する突起部74に沿って移動可能となるように、溝部73に嵌め込まれている。なお、突起部74の先端は延伸部71が抜け落ちないように他の部分に比べて直径が大きくなっている。また、延伸部71の人体側の側面には、ノコギリ刃状の切欠き75が形成されている。そして、切欠き75と対向する位置には、服内環境冷却装置1の側面12から突出するように形成された突起部76が設けられている。突起部76は延伸部71の延伸方向と同じ方向に伸びるように形成されており、切欠き75と対向する位置には、切欠き75の形状と対応するようにノコギリ刃状の側面が形成されている。切欠き75と突起部76の側面が係合することにより、延伸部71は切欠き75の任意の位置で固定することができ、スペーサ7は、空気排出口3から衣服内空間Sの奥側に向かって伸縮自在となるようになっている。
【0041】
延伸部71の先端は衣服C側に向かって湾曲しており、服当接部72は、2つの延伸部71の先端をつなぐように、服内環境冷却装置1の幅方向に伸びて形成されている。
【0042】
延伸部71が人体に向かって凸となるようにわずかに湾曲しているので、スペーサ7を伸ばすと、スペーサ7が空気排出口3から衣服内空間Sの奥側にいくにつれて、服当接部72が人体Hから離れるようになっている。このような構造にすることにより、より広い衣服内空間Sを確保することが可能となる。
【0043】
服内環境冷却装置1の筐体は例えば、プラスチックなどにより形成されている。筐体は、空気取込口2の部分において人体Hから離れる方向に突出するように形成されており、該突出している部分の高さが、空気取込口2から空気排出口3に向かって徐々に低くなっており、かつ、該突出している部分の幅が、空気取込口2から空気排出口3に向かって徐々に狭くなっている。
【0044】
このように服内環境冷却装置1の筐体を、空気取込口2の部分において人体Hから離れる方向に突出するように形成することにより、空気取込口2への空気の取入れがより容易になる。また、突出している部分の高さが、空気取込口2から空気排出口3に向かって徐々に低くなっており、かつ、該突出している部分の幅が、空気取込口2から空気排出口3に向かって徐々に狭くなっていることにより、
図9に示すように、センターベントのあるスーツCSを着た状態で服内環境冷却装置1を装着した際、服内環境冷却装置1の筐体の突出している部分にそって、ベントが自然に分かれるので、見た目がよくなる。
【0045】
また、服内環境冷却装置1は、服内環境冷却装置1の筐体の人体側の面(筐体の背面)13に、服内環境冷却装置1を衣服Cのベルトに引っ掛けるための、下方に向けて開口を有するフック状の第1のベルト装着用部材81を備えている。
【0046】
また、服内環境冷却装置1は、服内環境冷却装置1の筐体の側面12に、装着用のベルトBを通すための環状の第2のベルト装着用部材82を備えている。なお、第1のベルト装着用部材81は一般的に用いられている衣服(例えば、ズボン)のベルトに装着されるのに対し、第2のベルト装着用部材82に用いられるベルトBは、このような衣服のベルトとは別の専用の服内環境冷却装置装置着用のベルトである(
図7参照)。
【0047】
また、服内環境冷却装置1は、服内環境冷却装置1の筐体の衣服側の面(筐体の正面)11に、下方から衣服Cを受け止めるための、上方に向かって開口を有するフック状の衣服保持用部材83を備えている。衣服保持用部材はW字状に形成されている。このように衣服保持用部材をW字状に形成することにより、衣服保持用部材の開口を広くとることができる。
【0048】
服内環境冷却装置1による服内環境冷却方法では、ファン4により、衣服Cの外部に配置された空気取込口2から外部の空気を取り込み、衣服Cと該衣服Cを装着した人体の間の衣服内空間Sに配置された空気排出口3から該衣服内空間Sに空気を排出して、空気取込口2から空気排出口3に向かう空気流を生成する(気流発生ステップ)。
【0049】
そして、超音波振動子6により、液体貯蔵部5に貯蔵された液体を使って霧を発生させ、空気流に霧を供給する(霧発生ステップ)。
【0050】
そして、衣服内空間Sで霧を気化させることにより、その気化熱で衣服内空間Sの温度を冷却する(冷却ステップ)。
【0051】
服内環境冷却装置1によれば、人体から出た汗ではなく、超音波振動子6で発生したが霧が気化する際の気化熱によって衣服内空間Sの温度を冷却するので、人体H内の水分を過剰に消費することない。
【0052】
また、霧が気化する際の気化熱によって衣服内空間Sの温度を冷却するので、風力を大きくする必要がなく、ファン4の回転数を抑えることができる。このため、冷却中であっても、音が静かで、また、衣服が膨らむことがなく、見た目が悪くならない。
【符号の説明】
【0053】
1 服内環境冷却装置
11 筐体の正面
12 服内環境冷却装置の左右の側面
13 筐体の背面
2 空気取込口
3 空気排出口
4 ファン(気流発生手段)
5 液体貯蔵部
6 超音波振動子(霧発生手段)
7 スペーサ
41 静音部材
51 吸水部材
52 水量センサ
53 給水口
71 延伸部
72 服当接部
81 第1のベルト装着用部材
82 第2のベルト装着用部材
83 衣服保持用部材
84 電源スイッチ
85 外部電源入力端子
90 制御基板
93 温度・湿度センサ
B ベルト
BT 電池
C 衣服
F 空気取込口から空気排出口に向かう空気流
H 人体
L 液体
S 衣服内空間
SP スマートフォン
SW スイッチ
【要約】
【課題】人体内の水分を過剰に消費することなく、服内環境を冷却することができる服内環境冷却装置を提供する。
【解決手段】服内環境冷却装置1は、衣服Cの外部に配置され、外部の空気を取り込む空気取込口2と、衣服Cと該衣服Cを装着した人体Hの間の衣服内空間Sに配置され、前記空気取込口2から取り込まれた空気を該衣服内空間Sに排出する空気排出口3と、前記空気取込口2から前記空気排出口3に向かう空気流を生成する気流発生手段4と、液体Lを貯蔵する液体貯蔵部5と、前記液体貯蔵部5に貯蔵された液体Lを使って霧を発生させ、前記空気流に霧を供給する霧発生手段6と、を備える。
【選択図】
図1