(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の冷却装置を含めて、冷却ファンを駆動する油圧モータには、例えば、特許文献1に開示のモータ速度制御手段のように、作動油の流量を調整することで油圧モータの回転速度を制御する回転制御手段が設けられている。この回転制御手段は、作動油の温度が高いときに、冷却ファンの回転数が高くなるように油圧モータを制御する。
このような冷却装置を備える作業機のエンジンを始動させると、エンジンからの駆動力を受けて油圧ポンプも駆動する。この油圧ポンプの駆動によって、冷却ファンの油圧モータへ至る油路にも、油圧ポンプから作動油が供給される。ここで、作動油の温度が低い場合、作動油の粘度は高い状態にあるため、油圧ポンプから油圧モータへ至る油路内の圧力は高くなりやすい。
【0006】
特に、特許文献1が開示するように、作動油の温度が低い状態で冷却ファンを停止させる場合、作動油は、油圧モータの下流へ送出されることになる。つまり、作動油の温度が低い状態で冷却ファンを停止させていると、油路内で非常に粘度の高い作動油によって生じた高い圧力は、冷却ファンの油圧モータの下流に設けられた機器にも及んでしまい、耐圧の低い機器に大きな負荷を加えてしまうおそれがある。
【0007】
特許文献2に関して、作動油の温度が低い場合、作動油の粘度は高い状態にあるため、ヒッチ制御弁やヒッチシリンダに作動油が流れにくくなり、ヒッチシリンダの動作は遅くなる。
そこで、本発明は、上述の問題点に鑑み、油圧モータの下流に設けられた機器に加わる圧力を低く抑えることができる作業機を提供することを目的とする。また、ヒッチシリンダ等の油圧アクチュエータの動作速度を向上させることができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の作業機は、エンジンと、油圧モータと、前記油圧モータにより回転する冷却ファンと、前記エンジンの動力により動作して、作動油を前記油圧モータの一次側に供給する油圧ポンプと、前記油圧モータの一次側と二次側とを連結するバイパス回路に設けられて当該バイパス回路を流れる作動油の量を変更することで前記油圧モータの一次側に供給される作動油の量を変更する電磁弁と、前記油圧モータの二次側の油路に設けられたフィルタと、前記油圧モータの一次側と油圧ポンプとの間に設けられたリリーフ弁と、前記エンジンの始動時に前記作動油の温度が低温であるときに、前記電磁弁を制御して前記油圧モータを駆動する制御装置と、を備えている。
【0009】
前記制御装置は、前記作動油が低温であるときに、前記エンジンのクランキング後に前記電磁弁を制御して前記油圧モータを駆動する。
前記制御装置は、前記エンジンのクランキング中には、前記油圧モータを停止を含む最低速に保持する。
本発明の作業機は、油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに作動油を供給する制御弁と、前記制御弁にパイロット圧を供給するパイロット制御弁とを備え、前記フィルタは、前記パイロット制御弁と油圧モータとの間に設けられている。
【0010】
本発明の作業機は、作動油を供給するパーキング制御弁を備え、前記フィルタは、前記パーキング制御弁と油圧モータとの間に設けられている。
本発明の作業機は、エンジンと、油圧モータと、前記油圧モータにより回転する冷却ファンと、前記エンジンの動力により駆動して作動油を前記油圧モータの一次側に供給する油圧ポンプと、前記油圧モータの一次側と二次側とを連結するバイパス回路に設けられて当該バイパス回路を流れる作動油の量を変更することで前記油圧モータの一次側に供給される作動油の量を変更する電磁弁と、前記油圧モータの一次側と前記油圧ポンプとを接続する第1油路と、前記第1油路から分岐した第2油路と、前記第2油路からの作動油が供給される油圧アクチュエータと、前記第2油路に接続され且つ前記油圧アクチュエータに作動油を供給する制御弁と、前記油圧アクチュエータの作動時に、前記電磁弁を制御して前記油圧モータの回転数を上昇させる制御装置と、を備えている。
【0011】
本発明の作業機は、温度を測定する測定装置を備え、前記制御装置は、前記油圧アクチュエータが作動していない場合は、前記測定装置で測定した温度に基づいて油圧モータの回転数を制御し、前記油圧アクチュエータが作動している場合は、前記温度に基づいて設定された油圧モータの回転数である設定値よりも前記油圧モータの回転数を上昇させる。
前記制御装置は、前記測定装置で測定した温度が低温である場合には、前記温度の低さに伴って前記油圧モータの回転数の上昇幅を大きくする。
【0012】
前記油圧アクチュエータは、ヒッチシリンダである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
作業機によれば、低温で作動油の粘度が高いときにエンジンを始動した場合において、冷却ファンの油圧モータを駆動している。そのため、油圧モータの下流に設けられたフィルタに加わる油圧を減圧することができる。
作業機によれば、低温で作動油の粘度が高いときにエンジンを始動した場合において、油圧ポンプと油圧モータとの間に生じる高い圧力を、リリーフ弁によって減圧させることができると共に、制御装置によって油圧モータを駆動することで、油圧モータの下流に設けられたフィルタに加わる油圧を減圧させることができる。
【0014】
作業機によれば、エンジンをクランキングするための駆動力が、油圧モータに消費されなくなるので、クランキング時の負荷を低減することができる。
作業機によれば、油圧アクチュエータとパイロット制御弁に作動油を供給する油圧回路に、冷却ファンを回転する油圧モータを設けている。そのため、パイロット制御弁を作動させる作動油を用いて冷却ファンを回転させることができる。加えて、油圧モータ等の駆動時の摩耗粉をフィルタによって除去することができるため、油圧モータ側から流れる作動油でもパイロット制御弁をスムーズに動かすことができる。
【0015】
作業機によれば、パーキング制御弁に作動油を供給する油圧回路に、冷却ファンを回転する油圧モータを設けている。そのため、パーキング制御弁を作動させる作動油を用いて冷却ファンを回転させることができる。加えて、油圧モータ側から流れる作動油でもパーキング制御弁をスムーズに動かすことができる。
作業機によれば、油圧アクチュエータの作動時に、電磁弁を制御して油圧モータを駆動することができる。それゆえ、油圧モータの一次側の圧力、即ち、第1油路から下流側に分岐した第2油路における作動油の圧力を高くすることができる。その結果、第2油路に接続された制御弁及び油圧アクチュエータの動作速度を向上させることができる。
【0016】
作業機によれば、作動油が低温であって且つ油圧アクチュエータの作動時に、電磁弁を制御して油圧モータを駆動することができる。それゆえ、作動油が低温であって油圧アクチュエータが動作しにくい状況でも、制御弁及び油圧アクチュエータの動作速度を向上させることができる。
作業機によれば、ヒッチシリンダの動作速度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する各実施形態に共通する同一の構成部材には、同一の符号及び同一の名称を付すこととする。従って、同一の符号及び同一の名称が付された構成部材については、同じ説明を繰り返さない。
(第1実施形態)
まず、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態を説明する。
【0019】
図7は、作業機として例示するスキッドステアローダ1の全体図である。
以下の説明において、左右方向外方とはスキッドステアローダ1の進行方向に対する左右方向の中央から左右方向の端部に向かう方向をいい、左右方向内方とはスキッドステアローダ1の左右方向の端部から左右方向の中央に向かう方向をいう。言い換えれば、左右方向とは、進行方向(前後方向)に直交する方向であって幅方向ということができる。それゆえ、左右方向外方のことを幅方向外方といい、左右方向内方のことを幅方向内方ということがある。
【0020】
図7において、スキッドステアローダ1は、機体フレーム2と、この機体フレーム2に搭載されたキャビン3と、機体フレーム2に装備された作業装置4と、機体フレーム2の左及び右に設けられた走行装置5とを有する。
機体フレーム2内の後部にはエンジン6が搭載されている。キャビン3内の後部には運転席8が設けられている。運転席8の前方であって左側には、走行装置5を操作する走行レバー9Lが設けられている。運転席8の前方であって右側には、走行装置5を操作する走行レバー9Rが設けられている。左側の走行レバー9Lは左側の走行装置5を操作するものであり、右側の走行レバー9Rは右側の走行装置5を操作するものである。なお、キャビン3内には、後述する予備アクチュエータ33を操作する操作部材25が設けられている(
図1参照)。
【0021】
作業装置4は、ブーム10L,10Rと、バケット11(作業具)と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダC1と、バケットシリンダC2とを有する。ブーム10Lは、キャビン3及び機体フレーム2の左に配置され、ブーム10Rは、キャビン3及び機体フレーム2の右に配置されている。バケット11(作業具)は、左側のブーム10Lと、右側のブーム10Rとの先端側(前端側)に、上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10L,10Rの基部側(後部側)を支持している。ブームシリンダC1は、ブーム10L,10Rを昇降するシリンダである。バケットシリンダC2は、バケット11を揺動するシリンダC2である。これらブームシリンダC1及びバケットシリンダC2は複動型油圧シリンダから構成されている。
【0022】
ブーム10L、10Rの先端同士は、異形パイプから構成された前連結部材14で連結されている。ブーム10L、10Rの基部同士は、円形パイプからなる後連結部材15で連結されている。リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダC1は、ブーム10L、10Rに対応して、機体フレーム2の左及び右にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、ブーム10L、10Rの後端側(機体フレーム2の後端側の幅方向方向外方)に、縦向き配置されて設けられている。このリフトリンク12の上端側は、ブーム10L、10Rの基部の後端側に枢軸16(第1枢軸という)を介して左右軸(横軸)回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下端側は、機体フレーム2の後端側上部に枢軸17(第2枢軸という)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。
【0023】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に前後向き配置されて設けられている。この制御リンク13の前端側は、機体フレーム2に枢軸18(第3枢軸という)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。制御リンク13の後端側は、ブーム10L、10Rの基部側の前後方向中途部の下端部に枢軸19(第4枢軸という)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。
【0024】
ブームシリンダC1は、その上部がブーム10L,10Rの基部側前部に第1ブームシリンダピン21を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。このブームシリンダC1の下部は、機体フレーム2の後端側下部に第2ブームシリンダピン22を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。このブームシリンダC1を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によってブーム10L,10Rの基部側が支持されながら該ブーム10L,10Rの先端側(バケット11)が昇降するように該ブーム10L,10Rが第1枢軸16回りに上下に揺動する。制御リンク13は、ブーム10L,10Rの上下の揺動にともなって第3枢軸18回りに上下に揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下の揺動にともなって第2枢軸17回りに前後揺動する。
【0025】
バケット11は、ブーム10L,10Rの先端側(前端側)に枢支された装着体23に着脱自在である。装着体23は、ブーム10L,10Rの先端側に枢支ピン24を介して横軸回りに揺動自在に枢支されている。この装着体23にはバケット11の代わりに、油圧圧砕機,油圧ブレーカ,アングルブルーム,アースオーガー,パレットフォーク,スイーパー,モア,スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)が装着可能とされている。
【0026】
バケットシリンダC2は、ブーム10L,10Rの先端側の幅方向内方にそれぞれ配置されている。このバケットシリンダC2の上端側は、ブーム10L,10Rに第1バケットシリンダピン26を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。バケットシリンダC2の下端側は、装着体23に第2バケットシリンダピン27を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。このバケットシリンダC2を伸縮することでバケット11が揺動する。
【0027】
左及び右の各走行装置5は、本実施形態では前輪5F及び後輪5Rを有する車輪型の走行装置5が採用されている。なお、走行装置5としてクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置5を採用してもよい。
次に、上述の構成を有するスキッドステアローダ1に設けられる油圧回路H1について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態による作業機の油圧回路H1を例示する図である。また、
図1は、スキッドステアローダ1の予備アタッチメントを作動させる油圧回路H1を示している。
まず、油圧回路H1の全体について説明する。
図1に示すように、油圧回路H1は、第1ポンプP1と、第2ポンプP2と、予備用制御弁(SP制御弁という)30と、予備用電磁弁(SP電磁弁という)31,32とを備えている。SP電磁弁31,32は、SP制御弁30を操作する一対の電磁弁である。
【0029】
第1ポンプP1は、油圧ポンプであって、エンジン6の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプである。第1ポンプP1は、バケット11の代わりに装着される予備アタッチメントの油圧アクチュエータ33を駆動するために使用されるものである。説明の便宜上、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ33のことを、予備アクチュエータという。
【0030】
SP制御弁30は、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。SP制御弁30は、パイロット圧によって中立位置35aと第1位置35bと第2位置35cとに切換自在である。なお、SP制御弁30は、バネによって中立位置35aに戻される。
SP制御弁30には、第1ポンプP1の吐出路e1に連通する作業系供給油路f1が接続されている。また、SP制御弁30には、排油路k1を介してバイパス油路h1が接続され、タンク側に戻るドレン油路g1も接続されている。
【0031】
また、SP制御弁30と接続装置50との間には、作動油供給路39が接続されている。作動油供給路39は、2つの流路から構成されており、一方の流路39iは、第1逃がし路m1を介してバイパス油路h1に接続され、他方の流路39jは、第2逃がし路n1を介してバイパス油路h1に接続されている。第1,第2逃がし路m1,n1には、それぞれリリーフ弁40,41が設けられている。
【0032】
接続装置50は、SP制御弁30と予備アクチュエータ33とを接続するものであって、作動油供給路39及び油圧ホース等を介してSP制御弁30と予備アクチュエータ33とを接続する。詳しくは、接続装置50は、
図1及び
図7に示すように、ブーム10Lの前側に設けられた油圧カプラ50aと、油圧カプラ50aをブーム10Lに支持する支持部材(取付ステー)50bとで構成されている。
【0033】
一方のSP電磁弁31は、第1パイロット油路q1を介してSP制御弁30の一側の受圧部42aに接続されている。他方のSP電磁弁32は、第2パイロット油路r1を介してSP制御弁30の他側の受圧部42bに接続されている。SP電磁弁31,32には、パイロット圧供給油路t1を介して第2ポンプP2からのパイロット油(圧油)が供給可能である。
【0034】
したがって、SP電磁弁31によって、SP制御弁30を第1位置35bに切り換えると、一方の流路39iから予備アクチュエータ33へと第1ポンプP1からの作動油が供給されると共に予備アクチュエータ33からの戻りの油が他方の流路39jから排油路k1に流れる。
また、SP電磁弁32によって、SP制御弁30を第2位置35cに切り換えると、他方の流路39jから予備アクチュエータ33へと第1ポンプP1からの作動油が供給されると共に予備アクチュエータ33からの戻りの油が第1作動油流通路39iから排油路k1に流れる。
【0035】
以上の油圧回路H1では、SP電磁弁31,32を作動させることにより、SP制御弁30を介して予備アタッチメントの予備アクチュエータ33を作動させることができる。
このSP電磁弁31,32の制御は、作業機であるスキッドステアローダ1に搭載された制御装置(コントローラ)51によって行う。制御装置51は、操作部材25に設けられたスイッチ等の操作に応じて、SP電磁弁31,32(SP制御弁30)の操作を実行する。
【0036】
さて、上述の油圧回路H1において、第2ポンプP2と、SP電磁弁31,32へパイロット油(圧油)を供給するパイロット圧供給油路t1との間には、油圧モータ60が設けられている。油圧モータ60の回転軸には冷却ファン61が設けられている。つまり、油圧モータ60は、第2ポンプP2から吐出される作動油の流れに沿って第2ポンプP2よりも下流側に設けられている。油圧モータ60の一次側であって作動油の流入口であるポートP10は、油路s1(第1油路ということがある)によって第2ポンプP2に接続されており、第2ポンプP2から油圧モータ60へ作動油が供給される。また、油圧モータ60の二次側であって作動油の吐出口であるポートS10は、油路u1に接続され、この油路u1には作動油を濾過するフィルタ62が接続されている。フィルタ62の上流側には、油路u1が接続され、下流側にはパイロット圧供給油路t1が接続されている。したがって、油圧モータ60を通過して二次側のポートS10から吐出された作動油が、フィルタ62で濾過されてパイロット圧供給油路t1に供給される。
【0037】
油圧回路H1には、バイパス回路63が設けられている。バイパス回路63は、油圧モータ60の一次側のポートP10よりも若干下流側と、二次側のポートS10よりも若干上流側とを連結する油路である。第2ポンプP2から送出された作動油は、バイパス回路63を流れることで、油圧モータ60には作動油が流れないようにすることが可能である。
【0038】
このバイパス回路63には、その油路の途中に、作動油の流量を変更(制御)するための、例えば、ソレノイドを備えた電磁弁64が設けられている。この電磁弁64を全て閉じれば、第2ポンプP2から送出された作動油は、全てバイパス回路63に流入することなく油圧モータ60へ流入し、油圧モータ60は一次側と二次側の圧力差に応じて最大回転数で回転する。また、電磁弁64を全て開けば、第2ポンプP2から送出された作動油は、油圧モータ60に流入することなくバイパス回路63へ流入し、油圧モータ60は回転しない。
【0039】
従って、電磁弁64の開度を全閉から全開の間で変更することによって、油圧モータ60へ流入する作動油の流量が変化し、油圧モータ60の回転数を変更することができる。尚、フェイルセーフの観点から、この電磁弁64は、電磁弁64に供給される電流が、ハーネスの切断などによって0A(アンペア)になると、油圧モータ60を最大回転数で回転させる全閉の状態となる。これによって、電磁弁64への電流の供給が停止した場合でも冷却ファン61が停止することはないので、作動油やエンジン6の冷却水のオーバーヒートを回避することができる。
【0040】
このバイパス回路63に設けられた電磁弁64の制御も、上述の制御装置(コントローラ)51によって行う。制御装置51には、作動油の温度(油温という)を検出する温度センサ65が接続されている。制御装置51は、温度センサ65が検出した油温に応じて、冷却ファン61を適切な回転数で回転させるように、電磁弁64の操作を実行して油圧モータ60の一次側に供給される作動油の量を変更する。なお、制御装置51と温度センサ65とを一体化してもよい。
【0041】
さらに、
図1に示す上述の油圧回路H1には、油圧モータ60の一次側と第2ポンプP2との間にリリーフ弁66が設けられている。この油圧回路H1では、第2ポンプP2の耐圧を超えるような油圧が第2ポンプP2に加わらないように構成されている。ここで、例えば、第2ポンプP2及び油圧モータ60の耐圧は共に20MPa程度であり、リリーフ弁66のリリーフ圧は、20MPa未満の、例えば15MPa程度である。このようなリリーフ弁66を、油圧モータ60の一次側と第2ポンプP2との間に設けることによって、油圧モータ60と第2ポンプP2を保護することができる。
【0042】
ここで、油温が0℃以下の場合、特に、油温が氷点下10℃(−10℃)以下といった非常に低温である場合について説明する。ここで、低温とは、作業機で一般的に用いられる粘度グレード(動粘度)の作動油における粘度が非常に高くなる温度域であって、この高い粘度の影響を受けて、油路における油圧が上昇しやすく、エンジン6の始動後にフィルタ62への圧力負荷が非常に高くなる温度域のことである。このように作動油が低温の場合、冷却すべき対象が存在しないため冷却ファンを動作させる必要はない。従って、制御装置51によってバイパス回路63に設けられた電磁弁64を全開にして、作動油を油圧モータ60ではなくバイパス回路63へ誘導する状態とすることが考えられる。
【0043】
しかし、電磁弁64が全開となった状態は、第2ポンプP2とフィルタ62の間に、リリーフ弁66以外の減圧手段が存在しない状態である。フィルタ62の耐圧力はリリーフ弁66の耐圧力よりも遙かに低い4MPa〜6MPa程度であるので、この低温の状態においてエンジン6を始動すると、エンジン始動後の短時間のうちにフィルタ62に対して耐圧を超える油圧が加わって(立って)しまい、フィルタ62には多大な負荷が加わる。
【0044】
そこで、本実施形態による油圧回路H1の制御装置51は、作動油が低温であっても、冷却ファン61の油圧モータ60を駆動する。バイパス回路63の電磁弁64を全開にせず、例えば、油圧モータ60への流量とバイパス回路63への流量の比が2:8〜4:6となるように電磁弁の開度を制御する。例えば、エンジン回転数が所定値(800rpm)以上の場合は、電磁弁64を30%程度まで閉じる(電磁弁64の全開を100%とすると、電磁弁64の開度を30%程度にする)。なお、エンジン回転数が所定値(800rpm)以上の場合、電磁弁64を全閉にしてもよい。
【0045】
第2ポンプP2から油圧モータ60へ供給された作動油は、油圧モータ60の駆動によって油圧モータ60へ流れる作動油と、バイパス回路63へ流れる作動油とに分かれるため、油圧モータ60から下流側の圧力が減圧される。これにより、フィルタ62に加わる油圧を、フィルタ62の耐圧力を超えないように制御することができる。
図2を参照して、冷却ファン61の回転数の制御方法について説明する。
図2は、油圧回路H1における冷却ファン61の回転数制御のパターンを示す図であり、実線で示すパターンG1は、油温が低い間は冷却ファン61を回転させず、油温の上昇と共に冷却ファン61の回転を上昇させる油温追従型のパターンを示しており、点線及び一点鎖線で示すパターンG2,G3が、本実施形態によるパターンの例示である。
【0046】
制御装置51は、温度センサ65で検出した油温が、例えば−10℃以下であったとき、クランキング後のエンジンの始動直後から、
図2に点線で示すパターンG2に従って、例えば毎分1500回転(rpm)などの所定の回転数で冷却ファン61が回転するように、電磁弁64を制御して油圧モータ60への流量を制御する。
詳しくは、制御装置51は、点線で示すパターンG2のように、エンジンの始動直後から油温がある程度上昇するまで冷却ファン61の回転数を約1500rpm程度に維持する。油温が、例えば10℃といった所定の温度にまで上昇して、フィルタ62に加わる圧力が耐圧以下となる程度にまで作動油の粘度が低下したと判断すれば、制御装置51は、点線で示すパターンG2のように冷却ファン61の回転数を低下させて、実線で示す油温追従型のパターンG1による制御に切替える。
【0047】
別の一例として、制御装置51は、
図2において一点鎖線で示すパターンG3のように、エンジンの始動直後から、冷却ファン61の回転数を約2700rpm程度に維持してもよい。その後同様に、油温が上昇して、フィルタ62に加わる圧力が耐圧以下となる程度にまで作動油の粘度が低下したと判断すれば、制御装置51は、一点鎖線で示すパターンG3のように冷却ファン61の回転数を低下させて、実線で示す油温追従型のパターンG1による制御に切替える。
【0048】
このように、低温時のエンジンの始動直後における、冷却ファン61の回転数を、例えば約1500rpm〜約2700rpmの範囲、及びこの範囲の前後の回転数に設定することができる。また、冷却ファン61の回転数を、油温追従型のパターンG1が示す回転数と一致する油温まで一定の回転数に維持し、その後、実線で示す油温追従型のパターンG1による制御に切替えてもよい。
【0049】
尚、制御装置51は、
図2に示すパターンG1〜G3のように、油温に基づいたパターンに従って冷却ファン61の回転数を制御するが、油温に限らず、エンジン始動からの経過時間に基づいて冷却ファン61の回転数を制御することもできる。
さらに、制御装置51は、エンジン6を始動させるためのクランキング中には、例えば、バイパス回路63の電磁弁64を全開にするなどして、油圧モータ60に作動油が供給されないようにし、油圧モータ60を停止した状態に保持する。これによって、エンジン6をクランキングする駆動力が、油圧モータ60に消費されることがなくなるので、クランキング時の負荷を低減することができる。なお、エンジン6を始動させるためのクランキングの間は、エンジンの回転数が例えば300rpm以下と低く第2ポンプP2からの作動油の吐出量が少ないため、クランキングによる第2ポンプP2の動作では油路s1,u1における油圧はほとんど上昇しない。従って、油圧モータ60を停止したとしてもフィルタ62には多大な圧力が掛かることはない。
【0050】
なお、制御装置51は、上述のように、クランキング中は電磁弁64を開けておくが、エンジン回転数が所定回転数(例えば500rpm)以上となったときに電磁弁64を閉じて、油圧モータ60へ供給する作動油の量を増加させる。
さて、上述の本実施形態による油圧回路H1を備える作業機によれば、低温で作動油の粘度が高いときにエンジン6を始動した場合において、第2ポンプP2と油圧モータ60との間に生じる高い油圧を、リリーフ弁66によって減圧させることができると共に、制御装置51によって油圧モータ60を駆動することで、油圧モータ60の下流に設けられたフィルタ62に加わる油圧を減圧させることができる。
【0051】
このような、フィルタ62に加わる油圧を減圧させることができる油圧回路H1によれば、油圧モータ60の下流でフィルタ62に接続する油路に低圧ホースを用いることができるので、油圧回路H1の製造コストを抑制することができる。加えて、フィルタ62と並列に耐圧の低いバルブなどの部材を配置した油圧回路を構成することもできる。
つまり、本実施形態による油圧回路H1を備える作業機によれば、作動油の減圧のための部材を新たに油圧回路H1に導入することなく、油圧回路H1を保護することができる。
(第2実施形態)
図3を参照しながら、本発明の第2実施形態を説明する。
【0052】
図3は、本実施形態による作業機の走行系の油圧回路H2を例示する図であり、スキッドステアローダ1の走行系である走行モータに付随するパーキング機構を作動させる油圧回路H2を示している。
本実施形態による油圧回路H2は、第2ポンプP2から油路s1,u1に沿って、フィルタ62までは第1実施形態で述べた構成とほぼ同様の構成を有している。フィルタ62の下流側は、スキッドステアローダ1のパーキング機構であるパーキングブレーキ20L,20Rを作動させるパーキング制御弁70が接続されている。パイロット圧供給油路t1から供給されるパイロット圧(作動油)が、このパーキング制御弁70を介して、パーキング機構であるパーキングブレーキ20L及びパーキングブレーキ20Rに加えられる。パーキングブレーキ20L及びパーキングブレーキ20Rは、パイロット圧によって作動するネガティブブレーキであって、パーキング制御弁70が閉状態となってパイロット圧が加わらない状態では制動(ブレーキ)し、パーキング制御弁70が開状態となってパイロット圧が加わると制動を解除する。詳しくは、エンジン始動時には、コントローラ51からパーキング制御弁70に制動を解除する解除信号が出力され、パーキング制御弁70は開状態になる。また、エンジン停止時には、コントローラ51からパーキング制御弁70に制動する制動信号がパーキング制御弁70に出力され、パーキング制御弁70は閉状態になる。
【0053】
本実施形態による油圧回路H2を備える作業機においても、特に、フィルタ62の設置が要求されるパイロット圧を供給する油圧回路H2において、低温で作動油の粘度が高いときにエンジン6を始動した場合、制御装置51によって油圧モータ60を駆動することで、油圧モータ60の下流に設けられたフィルタ62に加わる油圧を減圧させることができる。加えて、第1実施形態と同様に、第2ポンプP2と油圧モータ60との間に生じる高い圧力を、リリーフ弁66によって減圧させることもできる。
【0054】
つまり、本実施形態による油圧回路H2を備える作業機によっても、作動油の減圧のための部材を新たに油圧回路H2に導入することなく、油圧回路H2を保護することができる。
(第3実施形態)
図6は、スキッドステアローダの前部の平面図を示している。
【0055】
図6に示すように、ブーム10L、10Rの前部(先端部)には、枢支ピン24L、24Rが設けられている。この枢支ピン24L、24Rに装着装置80が支持されている。
装着装置80は、バケット11や予備アタッチメントを装着する装置である。装着装置80は、左及び右に設けられる装着体23L、23Rと、ロック機構82と、ヒッチシリンダ83とを有する。
【0056】
装着体23L、23Rは、枢支ピン24L、24Rに横軸回りに揺動自在に枢支されている。装着体23Lと装着体23Rとは前連結部材14によって連結されている。
図6では、装着体23L及び装着体23Rにバケット11が装着されている。ロック機構82は、装着体23L及び装着体23Rからバケット11が離脱するのを阻止する(ロックする)機構である。即ち、ロック機構82は、装着体23L及び装着体23Rにバケット11を係止することで、バケット11をロックする。
【0057】
ヒッチシリンダ83は、ロック機構82に対してロック操作やロック解除操作を行わせるもので、複動型油圧シリンダで構成されている。例えば、ヒッチシリンダ83を伸長させると、ロック操作となって、装着体23L及び装着体23Rに対してバケット11を係止する。一方、ヒッチシリンダ83を収縮させると、ロック操作解除となって、装着体23L及び装着体23Rに対するバケット11の係止は解除される。なお、この実施形態では、バケット11の着脱について説明したが、予備アタッチメントでもバケット11と同様に装着体23に着脱することができる。
【0058】
図4は、本実施形態による作業機の油圧回路H3を例示する図である。なお、油圧回路H3の説明において、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成については説明を省略する。
油圧回路H3は、第2ポンプP2と、油圧モータ60と、バイパス回路63と、電磁弁64と、ヒッチシリンダ83と、制御弁(ヒッチ制御弁という)85とを備えている。
【0059】
第2ポンプP2と油圧モータ60のポートP10とは、油路(第1油路という)s1によって接続されている。油圧モータ60のポートS10には、油路u1が接続され、油路u1にフィルタ62が接続されている。バイパス回路63に電磁弁64が接続されている。
第2ポンプP2と油圧モータ60のポートP10とを接続する第1油路s1は、中途部で下流側に分岐している。下流側に分岐した油路(第2油路という)s2には、ヒッチ制御弁85が接続されている。ヒッチ制御弁85は、油圧アクチュエータであるヒッチシリンダ83に作動油を供給する弁であって、第1位置85aと第2位置85bとに切り換わる2方向切換弁である。
【0060】
ヒッチ制御弁85は、第1位置85aに切り換わると、第2油路s2とヒッチシリンダ83のボトム側とを連通させる。その結果、第2油路s2の作動油がヒッチシリンダ83のボトム側に作用するため、ヒッチシリンダ83は伸長する方向に動く。ヒッチ制御弁85は、第2位置85bに切り換わると、第2油路s2とヒッチシリンダ83のロッド側とを連通させる。その結果、第2油路s2の作動油がヒッチシリンダ83のロッド側に作用するため、ヒッチシリンダ83は伸縮する方向に動く。即ち、ヒッチ制御弁85を第1位置85aにすることで、装着体23L、23Rに装着されたバケット11等はロックが保持される。また、ヒッチ制御弁85を第2位置85bにすることで、装着体23L、23Rに装着されたバケット11等のロックを解除することができる。
【0061】
ヒッチ制御弁85の第1位置85a及び第2位置85bの切換は、制御装置(コントローラ)51で行う。制御装置51は、ヒッチ制御弁85の制御の他に、SP電磁弁31,32を制御したり、或いは、パーキング制御弁70の制御を行う。制御装置51によるSP電磁弁31,32の制御、或いは、パーキング制御弁70の制御は、第1実施形態や第2実施形態と同様である。
【0062】
制御装置51の制御について詳しく説明する。
制御装置51には、ヒッチシリンダ83(ヒッチ制御弁85)を作動させる操作具86が接続されている。この操作具86は、揺動自在に支持されたレバーであっても、オン/オフ切換可能なスイッチであってもよい。操作具86が操作されると、ロックを解除する信号(解除信号)が制御装置51に出力される。なお、操作具86を操作していない状態では、解除信号は制御装置51に出力されない。
【0063】
制御装置51に解除信号が入力されると、当該制御装置51は、ヒッチ制御弁85のソレノイド85cを励磁することにより、ヒッチ制御弁85を第2位置85bに切り換える。即ち、制御装置51は、油圧アクチュエータの1つであるヒッチシリンダ83を収縮する方向に作動させる制御を行う。ヒッチシリンダ83を作動させる場合、制御装置51は、電磁弁64のソレノイドも励磁し、油圧モータ60を駆動する。
【0064】
例えば、
図4に示すように、制御装置51には、温度を測定する測定装置65(温度センサ)が接続されている。温度センサ65は、作動油の温度(油温)、エンジン6等を冷却する冷却水の温度(水温)、エンジン6を搭載したエンジンルーム周囲の雰囲気(外気)の温度等を測定する装置である。この実施形態では、温度センサ65は、油温を測定する装置である。
【0065】
制御装置51は、ヒッチシリンダ83が作動していない場合(解除信号が入力されていない場合)、温度センサ65で測定した油温に基づいて油圧モータ60の回転数を制御する。例えば、制御装置51は、ヒッチシリンダ83を作動させていない状況下で油温が15℃以上である場合には、
図2のG1に示すように、油温の上昇に応じて油圧モータ60の回転数を設定し、設定した設定値に従って油圧モータ60の回転数を上昇させる。
【0066】
制御装置51は、ヒッチシリンダ83を作動させる場合(解除信号が入力された場合)、油圧モータ60の回転数を上昇させる。詳しくは、ヒッチシリンダ83を作動させる場合は、油圧モータ60の回転数を、油温に基づいて設定する設定値よりも高い回転数に設定する。例えば、制御装置51は、ヒッチシリンダ83が作動している状況下で、且つ、油温が15℃未満である場合には、
図2のG2,G3に示すように、温度センサ65で測定した油温に関係無く、油圧モータ60の回転を上昇させる。つまり、ヒッチシリンダ83を作動させる状況下では、電磁弁64のソレノイドも励磁し、油圧モータ60を駆動する。つまり、制御装置51は、ヒッチシリンダ83を収縮させることでバケット11等の離脱を行う場合、油圧モータ60の回転数を上昇させる。
【0067】
このようにすれば、電磁弁64を全開している状態(油圧モータ60を停止若しくは低回転させている状態)に比べて、油圧モータ60のポートP10に掛かる圧力が高くなる。即ち、第1油路s1から分岐した第2油路s2に作用する作動油の圧力(パイロット圧)も高くなる。それゆえ、ヒッチ制御弁85及びヒッチシリンダ83に作用する作動油の圧力(パイロット圧)が増加するため、ヒッチシリンダ83を素早く収縮させることができる。つまり、ヒッチシリンダ83を作動させるときに油圧モータ60を回転させることによってヒッチシリンダ83の動作速度を速くすることができる。
【0068】
なお、制御装置51は、ヒッチシリンダ83の作動時に作動油が低温である場合には、低温であるほど、油圧モータ60の回転数の上昇幅を大きくする。即ち、制御装置51は、油温が低温である場合には、油温が大きければ大きいほど、油温の低さに伴って油圧モータ60の回転数の上昇幅を大きくする。例えば、ヒッチシリンダ83の作動時において、温度センサ65で検出された油温が−10℃である場合には、油温が−5℃である場合よりも、油圧モータ60の回転数を上昇させる上昇幅を大きくする。
【0069】
このようにすれば、作動油が低温であるために、当該作動油の粘度が非常に高い状況では、ヒッチシリンダ83等の油圧アクチュエータの作動が遅くなり易い。しかしながら、本発明では、油圧モータ60の回転を意図的に上昇させることで第2油路s2に掛かる圧力を高くしている。それゆえ、作動油が低温である状況下でもヒッチシリンダ83の動作速度を速くすることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の各実施形態において、フィルタ62の下流の回路構成として、SP電磁弁31,32、及びこれらSP電磁弁によって駆動されて予備アクチュエータ33を駆動するSP制御弁30を開示し、また、パーキング制御弁70、及びこのパーキング制御弁によって駆動されるパーキングブレーキ20L,20Rを開示した。しかし、フィルタ62の下流の回路構成は、上述の各実施形態で開示した構成に限定されるものではなく、例えば、CTLやSSLではフィルタ62の下流にヒッチシリンダを駆動する回路構成を有する場合があり、上述の各実施形態で開示の構成以外に様々な構成を採用することができる。
【0071】
上述した実施形態では、電磁弁64を全開している状態では、油圧モータ60は停止していたが、電磁弁64が全開であっても油圧モータ60が若干回転する構成、即ち、油圧モータ60が低速に回転する構成であってもよい。また、上述した実施形態では、エンジンのクランキング中には、油圧モータ60を停止していたが、例えば、電磁弁64を全閉状態等にすることで、油圧モータ60を最低速に保持してもよい。
【0072】
上述した実施形態では、1つのヒッチ制御弁85でヒッチシリンダ83を制御していたが、
図5Aに示すように、複数のヒッチ制御弁85でヒッチシリンダ83を制御してもよい。複数のヒッチ制御弁85は、ヒッチシリンダ83のボトム側に接続された第1ヒッチ制御弁85Aと、ヒッチシリンダ83のロッド側に接続された第2ヒッチ制御弁85Bとを含んでいる。第1ヒッチ制御弁85A及び第2ヒッチ制御弁85Bは、第1位置85aと第2位置85bとのそれぞれに切換可能である。
【0073】
第1ヒッチ制御弁85Aが第2位置85bである場合には、第2油路s2とヒッチシリンダ83のボトム側との連通が遮断される。このとき、第2ヒッチ制御弁85Bは、第1位置85aになることによって第2油路s2とヒッチシリンダ83のロッド側とを連通させる。これにより、ヒッチシリンダ83は伸縮する方向に動いて、装着体23L、23Rに装着されたバケット11等のロックを保持することができる。また、第1ヒッチ制御弁85Aが第1位置85aである場合には、第2油路s2とヒッチシリンダ83のボトム側とが連通する。このとき、第2ヒッチ制御弁85Bは、第2位置85bになることによって第2油路s2とヒッチシリンダ83のロッド側との連通を遮断する。これにより、ヒッチシリンダ83は伸長する方向に動いて、装着体23L、23Rに装着されたバケット11等のロックを解除することができる。
【0074】
上述した実施形態では、油圧モータ60は一方向に回転するモータであったが、
図5Bに示すように、油圧モータ60は一方向(正転)及び他方向(逆転)に回転するモータであってもよい。油圧モータ60には、当該油圧モータ60の一次側のポートP10を通る第1メイン油路95と、当該油圧モータ60の二次側のポートS10を通る第2メイン油路96とが接続されている。また、第1メイン油路95と第2メイン油路96との間にはバイパス回路63が接続されている。バイパス回路63には電磁弁64が接続されている。また、第1メイン油路95及び第2メイン油路96には、作動油の向きを変える切換弁97が接続されている。切換弁97は、第1位置97aと第2位置97bとに切換可能である。切換弁97が第1位置97aである場合には、油圧モータ60は正転する。切換弁97が第2位置97bである場合には、油圧モータ60は逆転する。
【0075】
また、油圧モータ60を接続する油圧回路は、
図5Cに示す回路であってもよい。この場合、
図5Cに示すように、油圧モータ60には、当該油圧モータ60の一次側のポートP10を通る第1メイン油路95と、当該油圧モータ60の二次側のポートS10を通る第2メイン油路96とが接続されている。第1メイン油路95と第2メイン油路96との間にはバイパス回路63が接続されている。バイパス回路63には電磁弁64が接続されている。第1メイン油路95には、第1油路s1が接続され、第2メイン油路96には、パイロット圧供給油路t1が接続されている。第1油路s1と、パイロット圧供給油路t1との間には、切換弁98が接続されている。
【0076】
切換弁98は、第1位置98aと第2位置98bとに切換可能である。切換弁98が第1位置98aである場合には、第2ポンプP2から吐出した作動油が第1油路s1からパイロット圧供給油路t1へ直接流れるのを阻止する。即ち、切換弁98が第1位置98aである場合には、作動油は油圧モータ60或いは電磁弁64を通過して、パイロット圧供給油路t1に向かう。
【0077】
切換弁98が第2位置98bである場合には、第2ポンプP2から吐出した作動油が第1油路s1からパイロット圧供給油路t1に直接流れるのを許容する。
なお、切換弁97、98における第1位置或いは第2位置の切換は、制御装置(コントローラ)51から出力された制御信号によって行う。また、第2メイン油路96及び切換弁98には、パイロット圧供給油路t1に代えて、油路u1或いは第2油路s2を接続してもよい。