特許第6148405号(P6148405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6148405導電性透明酸化物膜を含む積重体で被覆された基材の製造方法
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  • 特許6148405-導電性透明酸化物膜を含む積重体で被覆された基材の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148405
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】導電性透明酸化物膜を含む積重体で被覆された基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20170607BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20170607BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20170607BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C03C17/36
   C03C23/00 D
   B32B17/06
   B32B18/00 B
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-524444(P2016-524444)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-536246(P2016-536246A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】FR2014052615
(87)【国際公開番号】WO2015055944
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】1360092
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1453402
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ カノ−バ
(72)【発明者】
【氏名】ドリス ラミーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ナドー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ロワ
(72)【発明者】
【氏名】ニシタ ワナクール
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−533201(JP,A)
【文献】 特表2011−516390(JP,A)
【文献】 特表2012−529419(JP,A)
【文献】 特表2015−504035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分が、銀層を含まずに透明な導電性酸化物の薄層を少なくとも1つ含む薄層の積重体により被覆された、ガラス又はガラスセラミック製の基材を含む材料を得るための方法であって、
・前記積重体を被着させる工程であって、透明な導電性酸化物の前記薄層と少なくとも1つの均一化薄層とを被着させ、当該均一化薄層は金属層であるか、又は窒化アルミニウム以外の金属窒化物をベースとする層であるか、又は金属炭化物をベースとする層である、積重体被着工程、
・その後前記積重体を放射線に曝露する熱処理工程、
を含み、
前記積重体は溶媒に可溶性の層を含まない
透明な導電性酸化物の薄層を含む積重体で被覆された基材を含む材料を得るための方法。
【請求項2】
前記透明な導電性酸化物を、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、アンチモン又はフッ素をドープした酸化スズ、アルミニウム及び/又はガリウム及び/又はチタンをドープした酸化亜鉛、ニオブ及び/又はタンタルをドープした酸化チタン、スズ酸亜鉛、スズ酸カドミウムから選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記透明な導電性酸化物が酸化インジウムスズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
透明な導電性酸化物の薄層の物理的厚さが少なくとも30nmである、請求項1〜3のうちの1項に記載の方法。
【請求項5】
透明な導電性酸化物の薄層の光吸収率の物理的厚さに対する比が、熱処理前において0.1〜0.9μm-1範囲に含まれる、請求項1〜4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
前記積重体が、透明な導電性酸化物の複数の層を含む、請求項1〜5のうちの1項に記載の方法。
【請求項7】
前記均一化薄層が透明な導電性酸化物の層の上に位置する、請求項1〜6の1項に記載の方法。
【請求項8】
前記均一化薄層が、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウム、セリウムから選択される金属の、又はそれらの合金のうちのいずれか1種の合の層から選択される金属層である、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属がチタンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記合金がスズと亜鉛の合金である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記均一化薄層が、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの固溶体のうちのいずれか1種から選択される金属窒化物をベースとする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項12】
前記均一化薄層が、炭化チタン、炭化タングステン、又はそれらの固溶体のうちのいずれか1種から選択される金属炭化物をベースとする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項13】
前記均一化薄層の物理的厚さが最大で15nmである、請求項1〜12のうちの1項に記載の方法。
【請求項14】
前記放射線を少なくとも1つのフラッシュランプにより放射させる、請求項1〜13のうちの1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フラッシュランプがキセノンフラッシュランプである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記放射線が、少なくとも1つのレーザーラインの形態で前記積重体に集束させたレーザー光線である、請求項1〜13のうちの1項に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザー光線の波長が500〜2000nmの範囲内に含まれる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス又はガラスセラミック製の基材と透明な導電性酸化物の少なくとも1つの薄層を含むコーティングとを含む材料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
グレージング基材上に薄層の形態で被着させた「TCO」と呼ばれる透明な導電性酸化物は、多くの用途を有し、その低い放射率がこれらを、エネルギー移動低減用途(断熱性が向上したグレージングユニット、結露防止グレージングユニットなど)に有用なものにし、一方、その低い電気抵抗がこれらを、例えば太陽電池、能動グレージングユニット又はスクリーンの、電極として使用し、あるいは加熱層として使用することを可能にする。
【0003】
これらの層は、多くの場合、真空法により、具体的にはマグネトロン陰極スパッタリングにより被着され、そして層を活性化するために、すなわちその結晶特性を改善することにより電気抵抗を低下させるために、多くの場合その後の加熱処理が必要となる。
【0004】
国際公開第2010/139908号には、層に集束された放射線、特に赤外又は可視レーザー光線を用いて層の熱処理を実施する方法が記載されている。かかる処理は、基材を顕著に加熱することなく、TCO層を極めて急速に加熱することを可能にする。具体的には、層を支持する面の反対側の基材の面上の任意の点の温度が、熱処理中150℃未満、特に100℃未満に維持される。例えばフラッシュランプにより放射されるような、他のタイプの放射線も、同じ目的に使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/139908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光学的により均一なコーティングを得ることを可能にする方法を提供することにより、これらの方法を改良することである。
【0007】
具体的に言うと、既知の処理の適用は、高出力密度を有する放射線、例えばレーザー光線又はフラッシュランプにより放射される放射線により、高い処理速度(コーティングの被着速度との相性がよい)で処理される大きな基材の場合特に、光学的均一性の問題を引き起こし易い。
【0008】
グレージング業界で使用されるもののような大きな基材、すなわち例えば6×3.2m2の基材の場合、熱処理前のTCO層は完全に均一ではない。
【0009】
レーザーラインの場合、出力と形状寸法の点で、特にライン幅の点で、完全に均一な長いレーザーラインを得ることは、工業的観点から非常に困難である。基材の走行速度も変動し易い。
【0010】
フラッシュランプの場合、その全長にわたって均一に発光する大きなランプ(例えば長さが少なくとも1m又は2mの)を得ることが困難なことがある。さらにこの技術は、基材を一連の不連続な閃光に曝露することを必要とし、従って、処理すべき領域を全体として処理しようとする場合、連続して照射する領域は部分的に重複しなければならない。従って、基材の平面は空間的な不均一性を含み、異なる領域は異なる数の閃光に曝露されている(例えば、ある領域は2回の閃光に曝露され、他の領域は1回のみの閃光に曝露されている)。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、TCO層の場合、層の吸収における小さな不均一性又は処理の小さな不均一性が、例えば放射線(例えばレーザー又はフラッシュランプ)の出力の点から見て、処理後の非常に目立つ不均一性、特に反射の色の変動、につながりかねないことを明らかにした。
【0012】
この問題に対処するために、本発明の1つの主題は、面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分が透明な導電性酸化物の少なくとも1つの薄層を含む薄層の積重体により被覆された、ガラス又はガラスセラミック製の基材を含む材料を得るための方法であって、
・前記積重体を被着させる工程であって、透明な導電性酸化物の前記薄層と少なくとも1つの均一化薄層とを被着させ、前記均一化薄層は金属層であるか、又は窒化アルミニウム以外の金属窒化物をベースとする層であるか、又は金属炭化物をベースとする層である、積重体被着工程、
・その後前記積重体を放射線に曝露する熱処理工程、
を含む方法である。
【0013】
この放射線は、具体的には、少なくとも1つのレーザーラインの形態でコーティングに焦点を合わされるレーザー光線である。それはまた、少なくとも1つのフラッシュランプにより放射されてもよい。
【0014】
熱処理は、透明な導電性酸化物薄層を支持する面と反対側の基材の面上の任意の点の温度が、処理中に150℃を超えず、特に100℃及びさらには50℃を超えないものであるのが有利である。
【0015】
本発明の別の主題は、本発明による方法により得られる材料である。
【0016】
本発明者らは、積重体中に金属層又は金属窒化物(窒化アルミニウム以外の)をベースとする層又は金属炭化物をベースとする層の存在することが、TCO層の不均一性と放射線源(特にレーザーライン)のパラメーターの不均一性との組み合わさった作用を「解消する」ことと、そして特に光学的観点から、完全に均一である1つ以上のTCO層で被覆された大きな基材を得ることとを可能にすることを実証した。それゆえに、これらの薄層は、本明細書において適格の「均一化層」である。
【0017】
基材は、ガラス又はガラスセラミック製である。これは、好ましくは透明で、無色であるか(この場合、それは透明な又は超透明なガラスである)、又は例えば青、灰色、緑、又は青銅色に着色されている。ガラスは、好ましくはソーダ石灰シリカガラスであるが、特に高温用途(オーブン扉、暖炉インサート、耐火グレージングユニット)向けにはホウ珪酸ガラス又はアルミノホウ珪酸ガラスでもよい。基材は有利には、1m以上、更には2m以上、更には3m以上の寸法を少なくとも1つ有する。基材の厚さは、一般的に0.1mmと19mmの間、好ましくは0.7mmと9mmの間、特に1mmと6mmの間、更には2mmと4mmの間である。
【0018】
ガラス基材は、好ましくはフロートガラス基材であり、すなわち溶融ガラスを溶融スズ浴(「フロート」浴)上へ流し込むことからなる方法により得ることができる基材である。この場合、処理されるコーティングは、基材の「スズ面」上又は「雰囲気面」上のどちらに被着させてもよい。「雰囲気面」及び「スズ面」という表現は、それぞれ、フロート浴上の雰囲気と接触していた基材面及び溶融スズと接触していた基材面を意味すると理解される。スズ面は、ガラスの構造中に拡散した少量の表面スズを含有している。ガラス基材はまた、2つのローラー間での圧延で得てもよく、この方法は特に、ガラスの表面に模様を与えることを可能にする。透明な導電性酸化物(TCO)は、好ましくは、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アンチモンドープ又はフッ素ドープした酸化スズ(ATO及びFTO)、アルミニウムドープ及び/又はガリウムドープ及び/又はチタンドープした酸化亜鉛(それぞれAZO、GZO又はTZO)、ニオブドープ及び/又はタンタルドープした酸化チタン、及びスズ酸亜鉛又はスズ酸カドミウムから選択される。
【0019】
非常に好適な酸化物は、しばしば「ITO」と呼ばれる酸化インジウムスズである。Snの原子百分率は、好ましくは5〜70%、特に6〜60%、有利には8〜12%の範囲に含まれる。フッ素ドープした酸化スズなどの他の導電性酸化物と比較して、ITOはその高い導電性のために好適であり、と言うのは、これは小さい厚さで良好な放射率又は抵抗率レベルが得られることを意味するからである。それゆえに、得られた材料は、目的とする用途のほとんどにおいて有利である高い光透過率を有する。ITOはさらに、マグネトロン陰極スパッタリングにより、良好な収率と高い被着速度で容易に被着させることができる。
【0020】
積重体は、透明導電性酸化物の単層を含むことができる。これは有利には、複数の層を含んでもよく、特に2層又は3層を含んでもよい。具体的に言えば、TCOの所定の総厚さについて、単一の厚い層の代わりの複数のTCO層を使用すると、処理の均一性を、特に高い処理速度に関して、さらに向上させることが可能ということになる。積重体が複数のTCO層を含む場合、TCOは好ましくはこれらのすべての層で同じである。ITOの場合、この実施形態は、大きなITO厚さにとって、例えば少なくとも120nmの物理的厚さにとって、好適であることが分かった。具体的に言えば、厚い層は高速度で均一に処理することがより困難であり、従ってTCO層を分割して少なくとも1つの誘電体層により切り離した複数のより薄い層にすることが好ましい。透明な導電性酸化物の薄層の物理的厚さは、好ましくは少なくとも30nmで最大5000nm、特に少なくとも50nmで最大2000nmである。積重体が透明な導電性酸化物の複数の薄層を含む場合、これらの数は全体の物理的厚さ、すなわちこれらの層のおのおのの物理的厚さの合計に関連する。
【0021】
ほとんどの場合、厚さは所望のシート抵抗又は放射率により決定され、これらの2つの量は非常に密接に相関している。さらに、TCOの厚さが大きくなるにつれ、上述の不均一性の問題はますます重大であるということになる。
【0022】
低放射率又は結露防止グレージングユニットについて言えば、目標とされる放射率は一般に0.15と0.50の間である。「放射率」という用語は、標準規格EN 12898で規定されている283Kでの標準放射率を意味すると理解される。
【0023】
電極としての用途については、最大15Ω、特に10Ωのシート抵抗が、一般的に目標とされよう。
【0024】
ITOの場合、物理的厚さは、好ましくは少なくとも30nm、特に50nm、更には70nm、更には100nmである。それは一般的に、最大で800nm、特に500nmである。
【0025】
GZO層又はAZO層の場合、アルミニウム又はガリウムの原子含量は、好ましくは1〜5%の範囲内に含まれる。物理的厚さは、好ましくは60〜1500nm、特に100〜1000nmの範囲内である。
【0026】
FTOの場合、物理的厚さは、好ましくは少なくとも300nm、特に500nm、そして最大で5000nm、特に3000nmである。
【0027】
繰り返して言うと、該当する場合、これらの各種数値は、積重体が複数のこれらの層を含む場合には透明な導電性酸化物の合計の物理的厚さに関係する。
【0028】
本発明者らはまた、TCO層の酸化状態が熱処理後の層の均一性に影響を与えることを観察した。この点で、相対的に酸化された層、従って光の吸収が比較的少ない層を被着することが好ましいことがわかる。特に、ITOの場合(しかしこの場合のみではないが)、TCO層の光吸収率の物理的厚さに対する比は、熱処理前に0.1〜0.9μm-1、特に0.2〜0.7μm-1の範囲に含まれることが好ましい。例えば、光吸収率が3%で物理的厚さが100nm(=0.1μm)のTCO層については、この比は0.03/0.1=0.3μm-1に等しい。TCO層の光吸収率は、この層だけをガラス上に同じ被着条件下で被着することで測定されて、測定された光吸収率から基材の光吸収率を差し引くことにより算出される。その一部として、後者は、標準規格ISO 9050:2003に規定された光透過率と光反射率を1の値から差し引くことにより算出される。かなり強い酸化の証拠となるこれらの比較的低い吸収率は、陰極スパッタリングによるITO層の被着中に、プラズマガス中の酸素流量を調整することにより得ることができる。積重体が複数のTCO層を含む場合、考慮しなければならないのがTCOの総厚さ(各層の厚さの合計)及び総吸収率である。
【0029】
積重体は、単一の薄い均一化層、特に単一の金属層を含むのが好ましい。
【0030】
熱処理中に、薄い均一化層は一般に、少なくとも部分的にあるいは更には完全に酸化される。従って、金属、金属窒化物、又は金属炭化物が、少なくとも一部は当該金属の酸化物となる。
【0031】
好ましくは、均一化(特に金属)薄層は、透明な導電性酸化物の層の上に位置し、あるいは該当する場合には、基材から最も遠い透明な導電性酸化物の層の上に位置する。更に有利には、それは積重体の最後の層であり、こうして特にその酸化を促進するために、大気と直接接触している。
【0032】
「上」という表現は、均一化(特に金属)薄層が透明な導電性酸化物の層よりも基材から遠いことを意味すると理解しなければならない。しかし、この表現は、後にさらに詳細に説明するように、2つの層の間の直接の接触を除外するものと理解してはならない。
【0033】
別の実施形態において、均一化(特に金属)薄層は、透明な導電性酸化物の層の下に(基材と後者との間に、任意選択的に、とは言え必ずしもそうとは限らないが、それらと接触して)位置しているか、あるいは該当する場合は、基材に最も近い透明な導電性酸化物の層の下に位置する。この場合でも、均一化(特に金属)薄層は、一般に少なくとも部分的に酸化され、酸素は上にある層を通って拡散することができる。この実施形態は、特に材料を電極にしようとする場合に、特に有利であり、これは、TCO層の上に絶縁層(酸化された金属層の事例)がなく、電気的接触がより容易に維持されるためである。
【0034】
均一化薄層は、好ましくは、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウム、セリウムから選択される金属の、又はそれらの合金のうちのいずれか1種の、特にスズと亜鉛との合金、又は更にはチタンとジルコニウムとの合金の層から選択される金属層である。
【0035】
金属は、好ましくは、銀でも、銅でも、又はニッケルとクロムとの合金でもない。
【0036】
積重体はさらに、銀層を含まないことが好ましい。
【0037】
これらの金属のうちで、大きな処理速度を可能にすることから、チタンが特に有利であることが分かった。
【0038】
別の実施形態によれば、均一化薄層は、特に窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化ジルコニウムから選択される、金属窒化物、又はそれらの固溶体のうちのいずれか1種をベースとし、特に窒化チタンジルコニウムをベースとする。
【0039】
別の実施形態によれば、均一化薄層は、特に炭化チタン、炭化タングステンから選択される、金属炭化物、又はそれらの固溶体のうちのいずれか1種をベースとする。
【0040】
好ましくは、均一化(特に金属)薄層は、最終製品の光透過に悪影響を与えないように、熱処理中に少なくとも部分的に、更には完全に、酸化される。従って最終製品は一般的に、少なくとも部分的に酸化された、あるいは更には完全に酸化された、金属又は窒化物又は炭化物、例えばTiOx、ZrOx、TiZrOx、ZnSnOx、TiOxy、TiZrOxyなどの層を含む。
【0041】
このため、均一化(特に金属)薄層の物理的厚さは、好ましくは最大15nm、更には10nm又は更には8nmである。均一化(特に金属、より具体的にはチタン)薄層の物理的厚さは、好ましくは少なくとも1nm、更には2nmである。
【0042】
それがTCO層の上(該当する場合、基材から最も遠いTCO層の上)に位置し、電極としての用途が目的とされる場合には、均一化(特に金属)薄層は、酸化後に得られる絶縁層が電気的接触を妨げないように、極めて薄いことが好ましい。均一化(特に金属)薄層の厚さは、この場合には最大5nmであることが有利である。
【0043】
チタンの場合、その少なくとも部分的な酸化が、熱処理後に酸化チタンを生成させる。自己洗浄性が所望の場合、TCO層の上に(又は該当する場合、基材から最も遠いTCO層の上に)チタン層を配置し、このチタン層は有利には積重体の最後の層を形成し、そして得られる酸化チタンは好ましくは、少なくとも一部分がアナターゼ型で結晶化されている。処理後に酸化チタンの厚さが申し分のない光触媒活性を得るのに充分厚くなるように、金属チタンの厚さは少なくとも4nm及び最大8nm又は10nmであるのが好ましい。最終製品に光触媒作用が求められない場合は、少なくとも2nm及び最大5nmのチタンの厚さで充分である。
【0044】
言うまでもないが、TCO層と均一化(特に金属)薄層についてそれぞれ好ましい材料のあらゆる組み合わせが可能であるが、簡潔さという明白な理由のためここにそれらのすべてを明記してはいない。限定しない例として、ITO/Zr、ITO/Ti、ITO/ZnSn、AZO/Zr、AZO/Ti、AZO/ZnSn、GZO/Zr、GZO/Ti、GZO/ZnSn、ITO/TiN、ITO/TiZrNの組合せを特に挙げることができる。
【0045】
好ましくは、積重体は、基材の1つの面の又は基材の両面の、表面全体を覆う。先に示したように、積重体は単一のTCO層のみを含んでもよいが、もちろんそれを2つ以上、例えば3つ又は4つ含んでもよい。この場合、一般的に単一の均一化(特に金属)薄層が必要とされ、後者は基材から最も遠いTCO層の上に位置する。
【0046】
積重体(熱処理前)は、TCO層と均一化(特に金属)薄層から、特にチタン層を上に載せたITO層からなることができる。
【0047】
積重体はまた、後者以外の層を含んでもよい。積重体は特に、基材とTCO層の間に少なくとも1つの誘電体層を含んでもよく、及び/又はTCO層と均一化薄層の間に少なくとも1つの誘電体層を含んでもよい。好ましくは、均一化(特に金属)薄層は積重体の最後の層であり、従って熱処理中に大気と接触する。誘電体層は、好ましくは、アルミニウム又はケイ素の窒化物、酸化物又は酸窒化物で作製した、特に窒化又は酸窒化ケイ素で作製した層である。
【0048】
積重体が複数のTCO層を含む場合、これらの層の2つの間には、少なくとも1つの、好ましくは1つのみの、誘電体層、特にシリカをベースとするか又は(本質的に)シリカからなる誘電体層がある。この誘電体層の物理的厚さは、5〜100nm、特に10〜80nm、更には20〜60nmの範囲に含まれるのが好ましい。
【0049】
積重体は、溶媒、特に水性溶媒に可溶性の層を含まないことが好ましい。
【0050】
積重体は特に、基材とTCO層(該当する場合、基材に最も近いTCO層)の間に、少なくとも1つの中性層又は層の積重体を含むことができる。単一層の場合、その屈折率は好ましくは、基材の屈折率とTCO層の屈折率との間に含まれる。このような層又は層の積重体は、材料の反射外観、特にその反射する色に影響を与えることを可能にする。一般的に、負のb*色座標を特徴とする青っぽい色が好まれる。限定しない例として、混合酸化スズケイ素(SiSnOx)、酸窒化若しくは酸炭化ケイ素、酸化アルミニウム、又は混合酸化ケイ素チタンの層を使用することが可能である。それぞれ高屈折率及び低屈折率の2つの層を含む積重体層、例えばTiOx/SiO(N)x、SiNx/SiOx、又はITO/SiOxの積重体も使用可能であり、高屈折率層が基材に最も近い層である。この層又はこれらの層の物理的厚さは、好ましくは2〜100nm、特に5〜50nmの範囲に含まれる。好ましい中性層又は積重体は、酸窒化ケイ素又はSiNx/SiOx積重体で作製した中性層である。
【0051】
中性層又は積重体は、好ましくは、TCO層(該当する場合、基材に最も近いTCO層)と直接接触する。TCO層と基材との間に位置する場合、中性層又は積重体はまた、アルカリ金属イオンなどのイオンの起こり得る移動を阻止する働きをすることもできる。
【0052】
基材と中性層又は積重体との間に接着層を配置することが可能である。ガラス基材の屈折率と同様の屈折率を有するのが有利なこの層は、中性層の接着を促進することにより焼き戻しに対する抵抗を向上させるのを可能にする。接着層は、好ましくはケイ素又は窒化ケイ素で作られる。その物理的厚さは、好ましくは20〜200nm、特に30〜150nmの範囲に含まれる。
【0053】
積重体はまた、TCO層(該当する場合、基材から最も遠いTCO層)と均一化薄層との間に、特にケイ素又はアルミニウムの、窒化物又は酸窒化物から選択される、又はチタン、ジルコニウム、亜鉛の酸化物、及び混合亜鉛スズ酸化物から選択される材料をベースとする(又は本質的にそれからなる)のが好ましい酸素バリア層を含んでもよい。考えられる材料は、特に窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、亜鉛酸化、酸化亜鉛スズ、又はこれらの混合物のうちのいずれか1種である。非常に好ましくは、酸素バリア層は窒化ケイ素をベースとするか、又は窒化ケイ素から本質的になる。実際、窒化ケイ素は酸素に対する非常に効果的なバリアを形成し、そしてマグネトロン陰極スパッタリングにより迅速に被着させることができる。「窒化ケイ素」という語は、ケイ素と窒素以外の原子の存在を除外せず、又は層の実際の化学量論組成を限定しない。実際、窒化ケイ素は、使用するケイ素ターゲットにその導電性を上昇させ、従ってマグネトロン陰極スパッタリングによる被着を促進する目的でドーパントとして加えられる1種以上の原子、典型的にはアルミニウム又はホウ素を、少量含むのが好ましい。窒化ケイ素は、窒素が化学量論量でも、窒素が準化学量論量でも、あるいは窒素が超化学量論量でもよい。それが酸素に対するバリアの役割を充分に果たすためには、酸素バリア層は(特にそれが窒化ケイ素をベースとするか又は本質的にこれからなる場合には)、少なくとも3nm、特に4nm又は5nmの物理的厚さを有するのが好ましい。その物理的厚さは、有利には最大50nm、特に40又は30nmである。
【0054】
酸素バリア層は、TCO層と均一化薄層との間に被着された唯一の層であることができる。
【0055】
あるいは、酸素バリア層と均一化(特に金属)薄層との間に、他の層を被着させてもよい。それは、積重体から反射される光の量を減らすために、特に酸化ケイ素をベースとする層でよく、有利にはシリカ層でよい。シリカはドープされていてもよく、又は化学量論的でなくてもよいことが理解されよう。例えば、シリカには、陰極スパッタリング法によるその被着を容易にすることを目的として、アルミニウム又はホウ素原子をドープしてもよい。この酸化ケイ素をベースとする層の物理的厚さは、20〜100nm、特に30nm〜90nm、更には40〜80nmの範囲内に含まれるのが好ましい。
【0056】
上記の種々の好適な実施形態はもちろん互いに組合せることができるが、本明細書を不必要に長くしないために、すべての可能な組合せをここに明記してはいない。熱処理の前に、薄層の積重体は基材から出発して、TCO層、酸素バリア層及び均一化層の連続体であることができる。それはまた、基材から出発して一連の、高屈折率層と次の低屈折率層からなる中性積重体、TCO層、酸素バリア層、及び均一化層であることもできる。それはさらに、基材から出発して一連の、高屈折率層と次の低屈折率層からなる中性積重体、TCO層、酸素バリア層、酸化ケイ素をベースとする層、及び均一化薄層であってもよい。好ましくは、TCOはITO層であり、均一化薄層はチタン又はジルコニウムの層である。
【0057】
熱処理前のいくつかの積重体の例を以下に示す。
ガラス/SiNx/SiOx/ITO/SiNx/SiOx/Ti
ガラス/SiN/TiOx/SiOxy/ITO/SiNx/Zr
ガラス/Si(O)Nx/ITO/Si(O)Nx/Ti
ガラス/SiNx/SiOx/ITO/SiOx/ITO/SiNx/SiOx/Ti
【0058】
このタイプの積重体、及び一般的に上記したタイプの積重体は、種々の用途を有することができる。グレージングユニットの面1(居住施設の外部に向く面)上に被着させると、それらは結露減少機能を提供する。単一グレージングユニットの面2、二層グレージングユニット又は積層グレージングユニットの面4、あるいはさらに三層グレージングユニットの面6に被着させると、それらはその低放射率のために、建物、自動車、更にはそれを備えた家庭用オーブン又は冷蔵庫の断熱を向上させる。
【0059】
材料が電極を目的としている場合には、積重体はTCO層と均一化層のみを含むことができ、後者は好ましくはTCO層の下にある。
【0060】
熱処理は、特に結晶の大きさ及び/又は結晶相の量を増加させることにより、TCO層の結晶化を向上させるのを目的とするのが好ましい。
【0061】
好ましくは、熱処理工程はコーティングの部分的溶融さえ必要としない。処理がコーティングの結晶化の向上を意図する場合、熱処理は、充分な量のエネルギーを供給して、コーティング中にすでに存在する種晶の周りでの結晶成長の物理化学的メカニズムによるコーティングの結晶化を促進するのを可能にし、その一方でコーティングは固体状態にとどまる。この処理は、溶融材料の冷却を伴う結晶化メカニズムを実行しないが、その理由は、一方ではそれが極端に高い温度を必要とするからであり、他方ではそれがコーティングの厚さ又は屈折率を変更し易く、従ってその特性を変更し易く、例えばその光学的外観を変化させるからである。
【0062】
一つの好ましい実施形態によれば、放射線は少なくとも1つのフラッシュランプにより放射される。
【0063】
かかるランプは一般に、密封されて希ガスを充填され、端部に電極を装備したガラス又は石英管の形をしている。コンデンサーを放電させることにより得られる短い電気パルスの作用を受けて、ガスがイオン化し、インコヒーレント光の特に強いバーストを生じさせる。発光スペクトルは一般に少なくとも2つの輝線を含み、それは好ましくは、近紫外に最大の発光を有する連続スペクトルである。
【0064】
ランプは、好ましくはキセノンランプである。それはまた、アルゴンランプ、ヘリウムランプ、又はクリプトンランプでもよい。発光スペクトルは、特に160〜1000nmの範囲の波長に、複数の輝線を含むのが好ましい。
【0065】
フラッシュの長さは、0.05〜20ミリ秒、特に0.1〜5ミリ秒の範囲内に含まれるのが好ましい。反復速度は、0.1〜5Hz、特に0.2〜2Hzの範囲内に含まれるのが好ましい。
【0066】
放射線は、より大きな領域を同時に処理するように、並べて配置した複数のランプ、例えば5〜20個のランプ、更には8〜15個のランプにより放射させることができる。この場合、すべてのランプが同時にフラッシュを放射することができる。
【0067】
ランプは好ましくは、基材の最長の辺を横切るように配置される。ランプは、大きな基材の処理を可能にするように、長さが少なくとも1m、特に2m、更には3mであるのが好ましい。
【0068】
コンデンサーは一般的には、500V〜500kVの電圧で充電される。電流密度は、好ましくは少なくとも4000A/cm2である。コーティングの面積により除した、フラッシュランプにより放射される総エネルギー密度は、1J/cm2と100J/cm2の間、特に1J/cm2と30J/cm2の間、更には5J/cm2と20J/cm2の間に含まれるのが好ましい。
【0069】
別の好ましい実施形態によれば、放射線は、少なくとも1つのレーザーラインの形で前記コーティングに焦点を合わされるレーザー光線である。
【0070】
レーザー光線は好ましくは、1つ以上のレーザー光源と整形及び方向変換光学系とを含むモジュールにより発生される。
【0071】
レーザー光源は、一般にはレーザーダイオード又はファイバー伝送レーザーであり、特にファイバーレーザー、ダイオードレーザー、又は更にはディスクレーザーである。レーザーダイオードは、供給電力の割に、高出力密度を経済的にかつ小さな設置面積で得ることを可能にする。ファイバー伝送レーザーの設置面積はさらに小さく、コストは高くなるが得られる単位長さ当たりの出力をさらに大きくすることができる。「ファイバー伝送レーザー」という表現は、レーザー光が発生される場所がそれが送られる場所から空間的に離れており、レーザー光が少なくとも1つの光ファイバーにより送られることを意味している。ディスクレーザーの場合、レーザー光は共振空洞中で発生され、そこにディスク、例えばYb:YAG製の薄い(約0.1mmの厚さの)ディスク、の形態を取る放射媒体が存在する。こうして発生された光は、処理の場所に向けられる少なくとも1つの光ファイバーに連結される。ファイバーレーザー又はディスクレーザーは、レーザーダイオードを駆動光源として使用するのが好ましい。
【0072】
レーザー光源は、放射線を連続的に放射するのが好ましい。
【0073】
レーザー光線の波長は、500〜2000nm、特に700〜1100nm、更には800〜1000nmの範囲内に含まれるのが好ましい。808nm、880nm、915nm、940nm又は980nmから選択される1つ以上の波長で発光するパワーレーザーダイオードが、特に適していることが分かっている。ディスクレーザーの場合、波長は例えば1030nm(Yb:YAGレーザーの発光波長)である。ファイバーレーザーについては、波長は一般に1070nmである。
【0074】
ファイバーによって伝送されないレーザーの場合、整形及び方向変換光学系は、好ましくはレンズとミラーを含み、そして放射線の方位を定め、均一化し、集束させるための手段として使用される。
【0075】
方位を定める手段の目的は、必要な場合に、レーザー光源により放射された放射線を一本のラインにすることである。当該手段は、好ましくはミラーを含む。均一化手段の目的は、ライン全体に沿って単位長さ当たり均一な出力が得られるように、レーザー光源の空間的なプロフィールに重ね合わせることである。均一化手段は好ましくは、入射ビームを2次ビームに分けて当該2次ビームを再結合させ均一なラインにすることを可能にするレンズを含む。放射線を集束させるための手段は、所望の長さと幅のラインの形態で、処理すべきコーティングに放射線を集束させることを可能にする。集束手段は、好ましくは、集束ミラーと収束レンズとを含む。
【0076】
ファイバー伝送レーザーの場合、整形光学系は、各光ファイバーの出口に配置された光学ヘッドの形態で集成されるのが好ましい。
【0077】
前記光学ヘッドの整形光学系は好ましくは、レンズ、ミラー及びプリズムを含み、放射線を変換し、均一化し、そして集束させるための手段として使用される。
【0078】
変換手段は、ミラー及び/又はプリズムを含み、光ファイバーからの出力である円形ビームを、非円形で異方性のライン状に整形されたビームに変換するように機能する。これを行うために、この変換手段は、その軸線(速軸、又はレーザーラインの幅lの軸線)の1つに沿ってビームの特性を向上させ、他の軸線(遅軸、又はレーザーラインの長さLの軸線)に沿ってビームの特性を低下させる。
【0079】
均一化手段は、ライン全体に沿って単位長さ当たり均一な出力が得られるように、レーザー光源の空間的プロファイルを重ね合わせる。均一化手段は好ましくは、入射ビームを2次ビームに分割し当該2次ビームを再結合させて均一なラインにするのを可能にするレンズを含む。
【0080】
最後に、放射線を集束させるための手段は、作業面上すなわち処理すべきコーティングの平面上に、所望の長さと幅のラインの形態で放射線を集束させることを可能にする。集束手段は、集束ミラーと収束レンズとを含むのが好ましい。
【0081】
単一のレーザーラインを使用する場合、ラインの長さは基材の幅に等しいことが有利である。この長さは、一般に少なくとも1m、特に2m、更には3mである。複数の光学的に分かれたラインを使用することもできるが、ただしこれらのラインは基材の幅全体を処理するように配列される。この場合、各レーザーラインの長さは好ましくは少なくとも10cm又は20cmであり、特に30〜100cm、とりわけ30〜75cm、更には30〜60cmの範囲内に含まれる。
【0082】
ラインの「長さ」は、コーティングの表面において第1の方向で測定される最も大きな寸法であると理解され、ラインの「幅」は第2の方向の寸法である。レーザー分野では一般的であるが、ラインの幅wは、ビームの軸線(ここで放射線の強度は最大である)と放射線の強度が最大強度の(l/e2)倍に等しい箇所との距離(第2の方向での)に相当する。レーザーラインの長手方向の軸線をxとすると、w(x)と表される幅の分布をこの軸線に沿って規定することができる。
【0083】
各レーザーラインの平均幅は、好ましくは少なくとも35マイクロメートルであり、特に40〜100マイクロメートル又は40〜70マイクロメートルの範囲内に含まれる。本書を通して、「平均」という語は算術平均を意味すると理解される。処理の不均一性をできるだけ制限するために、ラインの全長にわたって幅の分布は狭い。例えば、最大幅と最小幅の差は、好ましくは平均幅の値の最大10%である。この値は、好ましくは最大5%、更には3%である。
【0084】
整形及び方向変換光学系、特に方位を定める手段は、手動で、又は遠く離れてそれらを調整するのを可能にするアクチュエーターを使用して、調整することができる。これらのアクチュエーター(典型的にはモーター又は圧電アクチュエーター)は、手動で制御してもよく及び/又は自動的に調整してもよい。後者の場合、アクチュエーターは検出器及びフィードバックループに接続されるのが好ましい。
【0085】
レーザーモジュールの少なくとも一部、更にはそれらのすべては、その熱安定性を確保するために、冷却されるのが有利な、特にファンで冷却される、密封した筺体中に配置されるのが好ましい。
【0086】
レーザーモジュールは、アルミニウム製であるのが一般的の金属の構成部品をベースとする、「ブリッジ」と呼ばれる剛性の構造体に取り付けられるのが好ましい。この構造体は、好ましくは大理石のシートを含まない。レーザーラインの焦点面が処理すべき基材の表面と平行に維持されるように、ブリッジは搬送手段と平行に配置されるのが好ましい。好ましくは、ブリッジは、少なくとも4つの脚を含み、それらの高さは、いずれにしてもブリッジと搬送手段とが互いに平行であることを保証にするために、個々に調整することができる。この調整は、各脚に位置するモーターを用いて、手動でか、又は距離センサーを用いて自動的に行うことができる。ブリッジの高さは、処理すべき基材の厚さを考慮して基材の平面とレーザーラインの焦点面との一致を確保するため、変更(手動で又は自動的に)することができる。
【0087】
レーザーラインの単位長さ当たりの出力は、好ましくは少なくとも300W/cm、有利には350又は400W/cm、特に450W/cm、更には500W/cm、更には550W/cmである。それは、さらに有利には少なくとも600W/cm、特に800W/cm、更には1000W/cmである。単位長さ当たりの出力は、コーティング上のレーザーラインの焦点面で測定される。それは、ライン上にパワーメーター、例えば熱量式パワーメーター、特にCoherent Inc.社により販売されているBeam Finder (S/N 2000716)など、を配置して測定することができる。出力は、各ラインの全長にわたって均一に分布するのが有利である。好ましくは、最大出力と最小出力との差は平均出力の10%未満である。
【0088】
コーティングに供給されるエネルギー密度は、好ましくは少なくとも20J/cm2、更には30J/cm2である。
【0089】
高いエネルギー密度と出力は、基材を有意に加熱せずにコーティングを非常に急速に加熱することを可能にする。
【0090】
熱処理中にコーティングの各点がさらされる最高温度は、好ましくは少なくとも300℃、特に350℃、更には400℃、更には500℃又は600℃である。この最高温度には、通常、当該コーティングの点が放射装置の下、例えばレーザーラインの下又はフラッシュランプの下、を通過する時にさらされる。所定の瞬間において、放射装置の下(例えばレーザーラインの下)及びその直近(例えば1ミリメートル未満の距離)にあるコーティングの表面の点のみが、通常少なくとも300℃の温度にある。レーザーラインの下流を含む、レーザーラインまで2mm超の、特に5mm超の距離(走行方向で測定される)について、コーティングの温度は通常最高で50℃であり、更には最高で40℃又は30℃である。
【0091】
コーティングの各点は、有利には0.05〜10ms、特に0.1〜5ms、又は0.1〜2msの範囲内の時間、熱処理を受ける(又は最高温度に昇温される)。レーザーラインによる処理の場合、この時間は、レーザーラインの幅、及び基材とレーザーラインの相対的移動の速度の両方により決定される。フラッシュランプによる処理の場合は、この時間はフラッシュの長さに対応する。
【0092】
レーザー光線は、処理すべきコーティングにより一部が反射され、一部は基材を透過する。安全上の理由により、この反射及び/又は透過する放射線の経路上に、放射線を阻止する手段を配置することが好ましい。それは典型的には、流体、特に水の流れにより冷却される金属ジャケットである。反射された放射線がレーザーモジュールに損傷を与えることを防ぐために、レーザーラインの伝播の軸線は、基材に対する垂線とゼロでない角度、一般的には5°と20°の間の角度を作るのが好ましい。
【0093】
処理の効率を上げるために、基材を透過し及び/又はコーティングにより反射される(主)レーザー光線の少なくとも一部は、少なくとも1つの2次レーザー光線を作るためその基材に向けて方向を変えられるのが好ましく、この2次光線は、主レーザー光線と同じ場所で基材に突き当たるのが好ましく、同じ焦点深度と同じプロフィールを有することが有利である。2次レーザー光線は、ミラー、プリズム及びレンズから選択される光学要素のみを含む光学集成装置、特に2つのミラーとレンズ、又はプリズムとレンズからなる光学集成装置、を使用して形成されるのが有利である。失われた主放射線の少なくとも一部を回収しそれを基材に向けて方向変更することは、熱処理を大幅に改善する。基材を透過した主光線の一部を使用する(「透過」モード)か、コーティングにより反射された主光線の一部を使用する(「反射」モード)か、又はこれらの両方を使用するかの選択は、層の性質とレーザー光線の波長とに依存する。
【0094】
基材を特に並進的に移動させる場合には、それは並進的に移動させるための任意の機械的搬送手段を使用して、例えばベルト、ローラー、又はトレイを使用して移動させる。この搬送システムは、移動速度の制御及び調整を可能にする。搬送手段は、剛性シャーシと複数のローラーとを含むのが好ましい。ローラーのピッチは、50〜300mmの範囲内に含まれることが有利である。ローラーは、プラスチックカバーで覆われた、典型的には鋼製の、金属リングを含むのが好ましい。ローラーは、一般的には末端軸受け1個当たり3個のローラーを有する、遊びの少ない末端軸受けに取り付けられるのが好ましい。完全に平らな搬送平面を確保するために、ローラーそれぞれの位置を調節できることが有利である。ローラーは、少なくとも1つのモーターで駆動されるピニオン又はチェーン、好ましくはタンジェンシャルチェーンを用いて作動されるのが好ましい。
【0095】
基材と放射線源(特にレーザーライン)との相対移動の速度は、有利には少なくとも2m/分又は4m/分、特に5m/分、更には6m/分又は7m/分、あるいは更には8m/分、更には9m/分又は10m/分である。特定の実施形態によれば、特に、コーティングによる放射線の吸収が多い場合、又はコーティングが速い被着速度で被着され得る場合には、基材と放射線源(特にレーザーライン又はフラッシュランプ)との相対移動の速度は、少なくとも12m/分又は少なくとも15m/分、特に20m/分、更には25m/分又は30m/分である。できるだけ均一な処理を保証するために、基材と放射線源(特にレーザーライン又はフラッシュランプ)との相対移動の速度は、処理中その公称値に対して相対的に最大で10%、特に2%、更には1%だけ変動する。
【0096】
好ましくは、放射線源(特にレーザーライン又はフラッシュランプ)は固定されており、そして基材が、相対移動の速度が基材の走行速度に一致するように移動する。
【0097】
熱処理装置は、層被着ラインに、例えばマグネトロン陰極スパッタリング(マグネトロン法)被着ライン、又は化学気相成長(CVD)被着ライン、特に真空プラズマ強化化学気相成長(PECVD)ラインもしくは大気圧プラズマ強化化学気相成長(APPECVD)被着ラインに統合させることができる。概して当該ラインは、基材取扱い装置、被着ツール、光学検査装置、及び積重装置を含む。基材は、例えば搬送ローラーに載って、各装置又は各ツールに面して連続的に走行する。
【0098】
熱処理装置は、コーティング被着ツールのすぐ後に、例えば被着ツールの出口に、位置するのが好ましい。こうして、被覆された基材を、コーティングを被着させた後のラインにおいて被着ツールの出口且つ光学検査装置の前で、又は光学検査装置の後且つ基材を積み重ねるための装置の前で、処理することができる。
【0099】
熱処理装置はまた、被着ツールに統合させてもよい。例えば、レーザー又はフラッシュランプを陰極スパッタリング被着ツールのチャンバーの1つに、特に、圧力が特に10-6mbarと10-2mbarの間に含まれる、希薄化した雰囲気のチャンバーに設置してもよい。熱処理装置はまた、被着ツールの外部に、ただし当該ツールの内側に位置する基材を処理するように、配置してもよい。そのためには、使用する放射線の波長に対して透明な窓を設けるだけでよく、放射線はこの窓を透過して層を処理する。このようにして、層(例えば銀層)を処理してから同じツール内で別の層を続いて被着させることが可能である。
【0100】
熱処理装置が被着ツールの外部にあってもそれに統合されていても、これらの「インライン」処理は、被着工程と熱処理との間でガラス基材を積み重ねることを必要とする再処理よりも好ましい。
【0101】
とは言え、再処理プロセスは、被着が行われるのと異なる現場、例えばガラスを変質させる現場で、本発明による熱処理が行われる場合に有利であろう。従って、熱処理装置を層被着ライン以外のラインに統合してもよい。例えば、それを、複層ガラスユニット(特に二層又は三層グレージングユニット)製造ラインに、積層グレージングユニット製造ラインに、あるいは湾曲及び/又は強化グレージングユニット製造ラインにさえも、統合させることができる。積層、湾曲又は強化グレージングユニットは、建築又は自動車用途で用いることができる。いずれの場合にも、本発明による熱処理は、積層又は複層グレージングユニットを組み立てる前に行われるのが好ましい。とは言え、熱処理は、二層グレージングユニット又は積層グレージングユニットを組み立てた後に行ってもよい。
【0102】
熱処理装置は、放射線との接触を防ぐことにより人員の安全を確保するとともに、光学装置又は処理領域の汚染、特に基材の汚染を防ぐ閉鎖容器内に配置するのが好ましい。
【0103】
積重体は、陰極スパッタリング、特にマグネトロン陰極スパッタリングによって被着させるのが好ましい。
【0104】
積重体は、他の方法、例えば化学気相成長(CVD)法、特にプラズマ強化化学気相成長(PECVD)法、真空蒸着法、又は更にはゾル−ゲル法などを使用して、基材上に被着させることができる。
【0105】
更に簡便にするために、積重体の熱処理は、大気下で及び/又は大気圧で好ましく行うことができる。しかしながら、積重体の熱処理を真空被着チャンバー内で、例えばそれに続く被着の前に、行うことも可能である。
【0106】
本発明の別の主題は、本発明のプロセスにより得られる材料である。
【0107】
本発明の別の主題は、本発明による少なくとも1つの材料を含む、単一の複層又は積層グレージングユニット、ミラー、ガラス壁コーティング、オーブン扉、あるいは暖炉インサートである。
【0108】
コーティングは、結露防止特性を与えて結露又は霜が生じるのを制限又は防止するために、グレージングユニットの面1上に配置することができる。コーティングは、特に面2又は3上の他の低放射率コーティングと共同して、断熱性能を向上させるために、二層グレージングユニットの面4又は三層グレージングユニットの面6の上に配置してもよい。同じ理由で、コーティングはまた、例えば自動車のフロントガラスとして使用される、積層グレージングユニットの面4に配置してもよい。グレージングユニットは、特に耐火性でもよい。
【0109】
本発明の別の主題は、本発明による少なくとも1つの材料を含む光電池、ディスプレイスクリーン、又は能動グレージングユニットであり、コーティングは電極として使用される。
【0110】
ディスプレイスクリーンは、例えばLCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、OLED(有機発光ダイオード)、又はFED(電界放出ディスプレイ)スクリーンである。能動グレージングユニットは、具体的に言えばその透明性を電気的に制御可能である、特にエレクトロクロミック又は液晶タイプの、グレージングユニットである。
【0111】
以下の非限定の例の実施形態により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】例1と2で得られた試料の光反射の空間的変動を単位長さ当たりの出力490W/cmについて示すグラフである。
【実施例】
【0113】
〔第1の一連の例〕
4mm厚のソーダ石灰シリカガラス基材上に、マグネトロン陰極スパッタリングにより3つの異なる積重体を被着させた。
【0114】
層の種類及び層の物理的厚さ(nm単位)を、積重体のそれぞれについて以下に示す。
1: ガラス/SiNx(19)/SiOx(24)/ITO(106)/SiNx(8)/SiOx(40)/Ti(6)
2: ガラス/SiNx(19)/SiOx(24)/ITO(106)/SiNx(8)/SiOx(40)/TiOx(11)
3: ガラス/SiNx(19)/SiOx(24)/ITO(106)/SiNx(8)/SiOx(40)/C(6)
4: ガラス/SiNx(10)/SiOx(30)/ITO(120)/SiNx(5)/SiOx(40)/Ti(4)
5: ガラス/SiNx(10)/SiOx(30)/ITO(60)/SiOx(20又は40)/ITO(60)/SiNx(5)/SiOx(40)/Ti(4)
【0115】
例1、4及び5は、積重体が、この場合チタン製の、金属の均一化層を含むため、本発明による例である。例4と比較して、例5は、試験に応じて物理的厚さが20又は40nmのSiOx層により分離された2つのITO層を含む。ITOの総厚さは、両方の事例で同じ(120nm)であった。
【0116】
例2と3は比較例であり、チタン層がそれぞれ酸化チタン層及び炭素層により置換されている。
【0117】
指数「x」は、層の正確な化学量論量が不明であることを示している。式SiNx又はSiOxは、ドーパントの存在を除外していない。実際、これらの層は、その導電率を上昇させるためにアルミニウムをドープしたケイ素ターゲットをスパッタリングすることにより得られるため、少量のアルミニウム原子を含有している。
【0118】
例1については、ITO層を光吸収率が4.4%となるように被着させた。従ってその光吸収率の厚さに対する比は0.42μm-1であった。
【0119】
次に、こうして被覆した基材に、積重体上に集束されたラインの形態のレーザー光線を放射する固定した装置の下を走行させた。レーザーラインの平均幅は45μmであり、単位長さ当たりの出力は、試験に応じて250W/cmと500W/cmの間であった。レーザー光線は2つの波長、すなわち915nmと980nmを重ね合わた。3m/分と20m/分の間の種々の走行速度を試験した。
【0120】
例1と2の場合、60%と高いシート抵抗の相対的改善が得られた。しかし例1については、改善は、レーザーの単位長さ当たりの出力と移動速度への依存性が弱いことが観察され、相対的な改善は常に50%と60%の間に含まれていた。これに対して、例2のシート抵抗の改善は、明らかにレーザーラインの操作条件により依存していることが観察された。その結果、ラインの長さに関する又は時間に関する出力及び/又は幅の変動から、得られる改善が大きく変動することもあった。
【0121】
例3の場合、シート抵抗の低下は明らかに小さく、炭素は得られた積重体が低い透過率を有するに至るほど完全には除去されていない。
【0122】
例4の場合、ITOの厚さがより大きいことが、処理を高速で、例えば20m/分で行った場合に、処理の均一性がわずかに悪化する結果をもたらした。具体的に言うと、シート抵抗の改善は、例1の場合よりも処理速度により多く依存していることが分かった。厚いITO層を2つに分割(例5)すると、再度完全な安定性を得ることが可能になった。
【0123】
図1は、単位長さ当たりの出力490W/cmについて、例1と2で得られた試料の光反射の空間的変動を示している。試料の一端から1cm毎に30cmの長さにわたって、光反射率を測定した。図1のx軸は試料上のxで表示される位置を示し、そして図1のy軸は、先行の測定値に対する光反射率のΔRLで表示される変動の絶対値を示している。
【0124】
例2の場合、光反射率は、試料上の位置の関数として極めて大きく変動した。それに対して例1の場合、本発明による均一化層を使用することが、最終製品の均一性を大幅に改善するのを可能にして、光反射率の空間的変動はゼロに近く、常に0.1%未満であった。
【0125】
〔第2の一連の例〕
この一連の例は、上記の例1と同じ積重体を使用し(例6)、比較例7ではチタンの均一化層のない同じ積重体を使用した。
【0126】
これらの積重体で被覆した基材に、幅6.5cm及び長さ20cmのバンドの形態で積重体上に集束される250〜2500nmの範囲の波長のインコヒーレント光線を放射する固定されたキセノンフラッシュランプの下を走行させた。
【0127】
10〜30J/cm2のエネルギー密度(2500Vと4500Vの間のコンデンサーの充電電圧に対応する)を使用した。フラッシュ(パルス)は、長さが3msであり、反復速度は0.5Hzであった。試験した走行速度は、0.1m/分と1m/分の間に含まれていた。
【0128】
60%という高いシート抵抗の改善が得られた。
【0129】
本発明による例6の場合、積重体の光学的外観はエネルギー密度にあまり依存せず、従ってランプの操作条件にあまり依存しないことが観察された。具体的に言うと、反射のb*色座標の値は、コンデンサーの充電電圧に依存して−4から−4.5まで変動した。
【0130】
これに対して、比較例7の場合、層の外観はランプの操作条件に依存して大きく変動した。充電電圧3400Vの場合−1であったb*座標は、4200Vの充電電圧の場合−4まで低下した。従って、処理の不均一性は、積重体中にはっきり見える不均一性を生じさせることになった。
本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分が、銀層を含まずに透明な導電性酸化物の薄層を少なくとも1つ含む薄層の積重体により被覆された、ガラス又はガラスセラミック製の基材を含む材料を得るための方法であって、
・前記積重体を被着させる工程であって、透明な導電性酸化物の前記薄層と少なくとも1つの均一化薄層とを被着させ、当該均一化薄層は金属層であるか、又は窒化アルミニウム以外の金属窒化物をベースとする層であるか、又は金属炭化物をベースとする層である、積重体被着工程、
・その後前記積重体を放射線に曝露する熱処理工程、
を含む、透明な導電性酸化物の薄層を含む積重体で被覆された基材を含む材料を得るための方法。
《態様2》
前記透明な導電性酸化物を、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、アンチモン又はフッ素をドープした酸化スズ、アルミニウム及び/又はガリウム及び/又はチタンをドープした酸化亜鉛、ニオブ及び/又はタンタルをドープした酸化チタン、スズ酸亜鉛、スズ酸カドミウムから選択する、態様1に記載の方法。
《態様3》
前記透明な導電性酸化物が酸化インジウムスズである、態様2に記載の方法。
《態様4》
透明な導電性酸化物の薄層の物理的厚さが少なくとも30nm、特に50nmである、態様1〜3のうちの1項に記載の方法。
《態様5》
透明な導電性酸化物の薄層の光吸収率の物理的厚さに対する比が、熱処理前において0.1〜0.9μm-1、特に0.2〜0.7μm-1の範囲に含まれる、態様の1〜4のうちの1項に記載の方法。
《態様6》
前記積重体が、透明な導電性酸化物の複数の層、特に2つ又は3つの層を含む、態様1〜5のうちの1項に記載の方法。
《態様7》
前記均一化薄層が透明な導電性酸化物の層の上に位置する、態様1〜6の1項に記載の方法。
《態様8》
前記均一化薄層が、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウム、セリウムから選択される金属の、又はそれらの合金のうちのいずれか1種の、特にスズと亜鉛の合金の、層から選択される金属層である、態様の1〜7のうちの1項に記載の方法。
《態様9》
前記金属がチタンである、態様8に記載の方法。
《態様10》
前記均一化薄層が、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、又はそれらの固溶体のうちのいずれか1種から選択される金属窒化物をベースとする、態様1〜7のうちの1項に記載の方法。
《態様11》
前記均一化薄層が、炭化チタン、炭化タングステン、又はそれらの固溶体のうちのいずれか1種から選択される金属炭化物をベースとする、態様1〜7のうちの1項に記載の方法。
《態様12》
前記均一化薄層の物理的厚さが最大で15nm、特に8nmである、態様1〜11のうちの1項に記載の方法。
《態様13》
前記放射線を少なくとも1つのフラッシュランプ、特にキセノンフラッシュランプにより放射させる、態様1〜12のうちの1項に記載の方法。
《態様14》
前記放射線が、少なくとも1つのレーザーラインの形態で前記コーティングに集束させたレーザー光線である、態様1〜12のうちの1項に記載の方法。
《態様15》
前記レーザー光線の波長が500〜2000nm、特に700〜1100nmの範囲内に含まれる、態様14に記載の方法。
《態様16》
態様1〜15のいずれか1項に記載の方法により得られる材料。
《態様17》
態様16に記載の材料を少なくとも1つ含む、単一の複層又は積層グレージングユニット、ミラー、ガラス壁コーティング、オーブン扉又は暖炉インサート。
《態様18》
前記コーティングを電極として使用する、態様16に記載の材料を少なくとも1つ含む光電池、ディスプレイスクリーン又は能動グレージングユニット。
図1