(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂組成物全量基準で、スチレン系樹脂97.0〜99.9質量%、及びジエン系ゴム変性ポリスチレン0.1〜3.0質量%を含有する樹脂組成物を二軸延伸してなるスチレン系二軸延伸シートであって、
前記スチレン系樹脂が、スチレン及びアクリロニトリルをモノマー単位として含む共重合体であり、
モノマー単位全量基準で、前記スチレンの含有量が64〜88質量%であり、前記アクリロニトリルの含有量が12〜36質量%であり、
前記ジエン系ゴムとして、平均ゴム粒子径が1.5μm以上であるジエン系ゴム粒子を含む、スチレン系二軸延伸シート。
二軸延伸の面倍率が4〜11倍であり、最大配向緩和応力が0.2〜0.8MPaであり、MD方向の最大配向緩和応力とTD方向の最大配向緩和応力との差の絶対値が0.2MPa以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系二軸延伸シート。
JIS B0601で規定する算術平均粗さの粗さパラメータRaが0.002〜0.020であり、うねりパラメータWaが0.005〜0.050である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系二軸延伸シート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るスチレン系二軸延伸シートは、樹脂組成物全量基準で、スチレン系樹脂97.0〜99.9質量%、及びジエン系ゴム変性ポリスチレン0.1〜3.0質量%を含有する樹脂組成物を二軸延伸してなっている。換言すれば、本実施形態に係るスチレン系二軸延伸シートは、二軸延伸シート全量基準で、スチレン系樹脂97.0〜99.9質量%、及びジエン系ゴム変性ポリスチレン0.1〜3.0質量%を含有している。
【0011】
スチレン系樹脂は、スチレン系モノマー単位を含んでいる樹脂であり、単独重合体でも共重合体でもよい。ただし、スチレン系樹脂は、ジエン系ゴム変性ポリスチレン(詳細は後述)とは異なる樹脂である。スチレン系樹脂としては、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体が挙げられる。
【0012】
アクリロニトリル−スチレン共重合体を構成するアクリロニトリル系モノマー単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の単位を挙げることができるが、好ましくはアクリロニトリル単位である。これらのアクリロニトリル系モノマー単位は、単独で用いられてもよく2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0013】
アクリロニトリル−スチレン共重合体を構成するスチレン系モノマー単位は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等の単位であってよく、好ましくはスチレン単位である。これらのスチレン系モノマー単位は、単独で用いられてもよく2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0014】
アクリロニトリル−スチレン共重合体において、アクリロニトリル系モノマー単位の含有量は、モノマー単位全量基準で、好ましくは12〜36質量%であり、より好ましくは16〜33質量%である。アクリロニトリル系モノマー単位が36質量%以下であると、成形性及び色相に優れる。アクリロニトリル系モノマー単位が12質量%以上であると、耐油性及び電子レンジ耐性に優れる。
【0015】
アクリロニトリル−スチレン共重合体において、スチレン系モノマー単位の含有量は、モノマー単位全量基準で、好ましくは64〜88質量%であり、より好ましくは67〜84質量%である。スチレン系モノマー単位が88質量%以下であると、耐油性及び電子レンジ耐性に優れる。スチレン系モノマー単位が12質量%以上であると、成形性及び色相に優れる。
【0016】
アクリロニトリル−スチレン共重合体は、必要に応じて共重合可能なその他のビニル系モノマー単位を含んでいてもよい。その他のビニル系モノマー単位としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート等のアクリル酸エステルなどの単位が挙げられる。その他のビニル系モノマー単位の含有量は、例えば、スチレン系モノマー単位とアクリロニトリル系モノマー単位の合計100質量部に対して10質量部未満であってよい。
【0017】
アクリロニトリル−スチレン共重合体は、アクリロニトリル系モノマーとスチレン系モノマーとを重合させることにより得られる。重合方法は、特に限定されないが、臭気低減の観点から好ましくは塊状連続重合である。
【0018】
塊状連続重合法としては、公知の例が採用できるが、エチルベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン等の溶剤をスチレン系モノマーとアクリロニトリル系モノマーの合計100質量部に対して10〜40質量部添加して重合させる方法が好ましくは用いられる。
【0019】
重合時には、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の公知の有機過酸化物を添加してもよく、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の公知の分子量調整剤を添加してもよい。
【0020】
重合温度は、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜160℃である。
【0021】
アクリロニトリル−スチレン共重合体のSEC法で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10万〜25万、より好ましくは15〜20万である。重量平均分子量が10万以上であると、樹脂の強度が維持され、シート強度及び耐折性に優れる。重量平均分子量が25万以下である、粘度上昇を抑制でき、シート製膜性及び容器成形性に優れる。
【0022】
なお、SEC測定は、以下のような条件で実施する。
装置:昭和電工社製Shodex「SYSTEM−21」
カラム:PLgel MIXED−B
温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/分
検出:RI
濃度:0.2質量%
注入量:100μl
検量線:標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換して各種平均分子量を求める。
【0023】
樹脂組成物におけるスチレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物全量基準で、97.0〜99.9質量%であり、好ましくは98.5〜99.9質量%、より好ましくは99.0〜99.9質量%、更に好ましくは99.3〜99.7質量%である。換言すれば、二軸延伸シートにおけるスチレン系樹脂の含有量は、二軸延伸シート全量基準で、97.0〜99.9質量%であり、好ましくは98.5〜99.9質量%、より好ましくは99.0〜99.9質量%、更に好ましくは99.3〜99.7質量%である。含有量が上記の下限値以上であると、透明性の点で優れる。含有量が上記の上限値以下であると、滑性及び防曇性の点で優れる。
【0024】
ジエン系ゴム変性ポリスチレン(以下「ゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂」ともいう)は、例えば、スチレン系単量体にゴム状重合体を溶解し、重合(好ましくはグラフト重合)して得られる。
【0025】
ゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂の原料の単量体としては、例えばスチレン、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン及び第三級ブチルスチレンなどのo−、m−、p−の各異性体)、アルファアルキルスチレン(例えばアルファメチルスチレン、アルファエチルスチレンなど)、モノハロゲン化スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレン及びフルオロスチレンなどのo−、m−、及びp−の各異性体)、ジハロゲン化スチレン(例えば、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ジフルオロスチレン及びクロロブロモスチレンなどの各核置換異性体)、トリハロゲン化スチレン(例えば、トリクロロスチレン、トリブロモスチレン、トリフルオロスチレン、ジクロロブロモスチレン、ジブロモクロロスチレン及びジフルオロクロロスチレンなどの各核置換異性体)、テトラハロゲン化スチレン(例えば、テトラクロロスチレン、テトラブロモスチレン、テトラフルオロスチレン及びジクロロジブロモスチレンなどの各核置換異性体)、ペンタハロゲン化スチレン(例えば、ペンタクロロスチレン、ペンタブロモスチレン、トリクロロジブロモスチレン及びトリフルオロジクロロスチレンなどの各核置換異性体)、アルファー及びベーターハロゲン置換スチレン(例えば、アルファクロロスチレン、アルファブロモスチレン、ベータークロロスチレン及びベーターブロモスチレンなど)などが挙げられる。これらの単量体は、1種単独で用いられてもよく2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0026】
ゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂の原料となるゴム状重合体としては、例えば1種又は2種以上の共役1,3−ジエン(例えばブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3ブタジエン、1−クロロ−1,3ブタジエン、ピペリレンなど)、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエンースチレンーアクリロニトリル共重合体、イソブチレン−アクリル酸エステル共重合体、ブチルゴム及びエチレンープロピレンーターポリマー(EPDM)などが使用できる。
【0027】
ジエン系ゴム変性ポリスチレンの含有量は、樹脂組成物全量基準で、0.1〜3.0質量%であり、好ましくは0.2〜2.0質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%、更に好ましくは0.4〜1.2質量%である。換言すれば、ジエン系ゴム変性ポリスチレンの含有量は、二軸延伸シート全量基準で、0.1〜3.0質量%であり、好ましくは0.2〜2.0質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%、更に好ましくは0.4〜1.2質量%である。含有量が上記の下限値以上であると、滑性及び防曇性の点で優れる。含有量が上記の上限値以下であると、透明性の点で優れる。
【0028】
ゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂中のジエン系ゴム成分(以下、単に「ゴム成分」ともいう)の含有量は、ゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂全量基準で、好ましくは5〜12質量%、より好ましくは8〜10質量%である。含有量が上記の下限値以上であると、滑性及び防曇性の点で更に優れる。含有量が上記の上限値以下であると、透明性の点で更に優れる。
【0029】
スチレン系二軸延伸シート中のゴム成分の含有量は、スチレン系二軸延伸シート全量基準で、好ましくは0.005〜0.36質量%であり、より好ましくは0.008〜0.3質量%である。含有量が上記の下限値以上であると、滑性及び防曇性の点で更に優れる。含有量が上記の上限値以下であると、透明性の点で更に優れる。
【0030】
樹脂組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤、及び酸化防止剤から選ばれる添加剤の1種又は2種以上を更に含有していてもよい。
【0031】
紫外線吸収剤としては、2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロ・フタルイミドメチル)−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−エトキシ−2’−エチル蓚酸ビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチル蓚酸ビスアニリド及び2−エトキシ−4’−イソデシルフェニル蓚酸ビスアニリド等の蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、並びにアルミナ、シリカ、シランカップリング剤及びチタン系カップリング剤等の表面処理剤で処理された酸化チタン等の酸化チタン系紫外線安定剤等が挙げられる。
【0032】
光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6,(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]及び1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクチル−3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルージートリデシル)ホスファイト、(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルオクチルホスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)1,4−フェニレンージーホスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン等の燐系酸化防止剤が挙げられる。
【0034】
アクリロニトリル−スチレン共重合体を含有する樹脂組成物は、用途に応じて滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、鉱油等の添加剤、ガラス繊維、カーボン繊維およびアラミド繊維等の補強繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウムなどの充填剤を、二軸延伸シートの性能を損なわない範囲で更に含有していてもよい。
【0035】
上述した添加剤、充填剤等の任意成分の含有量は、樹脂組成物全量基準で、例えば1.0質量%以下である。換言すれば、上述した添加剤、充填剤等の任意成分の含有量は、二軸延伸シート全量基準で、例えば1.0質量%以下である。
【0036】
二軸延伸シートの製造方法としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体を含有する樹脂組成物を押出機により溶融混練してダイ(特にTダイ)から押し出し、次いで、二軸方向に逐次又は同時で延伸する製造方法が挙げられる。二軸延伸シートの厚みは、特に限定されないが、例えば0.05mm以上0.6mm未満、好ましくは0.1mm以上0.5mm未満である。
【0037】
二軸延伸シートの製造においては、樹脂組成物の溶融混練時に、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、発泡剤、発泡核剤、無機フィラー、帯電防止剤等公知の添加剤を樹脂組成物に更に添加してもよい。
【0038】
二軸延伸シート中の平均ゴム粒子径(Ro)は、好ましくは1.0〜9.0μm、より好ましくは1.5〜7.0μm、更に好ましくは2.0〜5.0μmである。R
Oが1.0μm以上であると、滑性及び防曇性の点で更に優れる。R
Oが9.0以下であると、透過光が減少及び散乱光の増加を抑制し、透明性の点で更に優れる。
【0039】
本発明における平均ゴム粒子径(Ro)は、超薄切片法にて観察面が二軸延伸シートの主面と並行方向となるよう切削し、四酸化オスミウム(OsO
4)にてゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にて粒子100個の粒子径を測定し、下記式(1)により算出する。
【数1】
(式中、niは測定個数、Diは測定したゴム粒子の粒子径を示す。)
【0040】
二軸延伸シートの、MD(Machine Direction;シート流れ方向)延伸倍率をA、TD(Transverse Direction;シート流れ方向に垂直な方向)延伸倍率をBとしたとき、A×Bで示される面倍率は、好ましくは4〜11倍である。当該面倍率において、MD延伸倍率及びTD延伸倍率は、それぞれ好ましくは1.5〜3.5倍である。A,B,A×Bのいずれもが上記範囲内の場合、シートの厚さムラを抑制し、該シートを熱板成形して得られる容器において、座屈強度を確保できる。上記面倍率はより好ましくは4〜9倍であり、MD延伸倍率及びTD延伸倍率はそれぞれより好ましくは2.0〜3.0倍である。
【0041】
本発明において延伸倍率とは、二軸延伸シートの試験片が加熱前後で変化する割合であり、具体的には、次式すなわち、延伸倍率=Y/Z(単位[倍])によって算出される値を意味する。この式において、Yは、加熱前に二軸延伸シートの試験片に対して、MDおよびTDに描いた直線の長さ[mm]を示し、Zは、JIS K7206に準拠して測定したシートのビカット軟化点温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させた後の、上記直線の長さ[mm]を示す。
【0042】
二軸延伸シートにおいては、MD方向の最大配向緩和応力をa、TD方向の最大配向緩和応力をbとした時、a,bは、それぞれ好ましくは0.2〜0.8MPa、より好ましくは0.3MPa〜0.7MPaであり、|a−b|(a−bの絶対値)は、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.10MPa以下である。a,bが0.2MPa以上の場合、シート強度が確保され、耐折性に優れる。a,bが0.8MPa以下の場合、収縮力の上昇を抑制でき、油付着時の白化(耐油性)及び成形性に優れる。|a−b|が0.2MPa以下であると、MD、TD方向の収縮力の違いによる成形性不良及び成形品の歪みを抑制できる。
【0043】
二軸延伸シートのJIS B0601で規定する算術平均粗さの粗さパラメータRaは好ましくは0.002〜0.020μmであり、うねりパラメータWaは好ましくは0.005〜0.050μmである。粗さパラメータRaが0.002μm以上、うねりパラメータWaが0.005μm以上の場合は、シート同士の好適な密着性を維持でき、滑性不良及び長期保管後の防曇剤不良を抑制できる。Raが0.020μm以下、Waが0.050μm以下の場合、シート表面の凹凸を抑制でき、外観及び成形性の点で優れる。
【0044】
本実施形態の防曇剤層付き二軸延伸シート(以下「積層シート」ともいう)は、スチレン系二軸延伸シートと、防曇層と、を備えている。防曇剤層は、積層シートの少なくとも一方の表面に設けられている。これにより、積層シートの耐油性を高めることができる。
【0045】
防曇剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノモンタネートなどのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノモンタネートなどのグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレートなどのポリエチレングリコール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン/グリセリン縮合物と有機酸とのエステル;ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルアミン、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン化合物、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンジステアレート、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミンジステアレート、ポリオキシエチレン(8モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンモノベヘネート、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルアミンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルアミン化合物の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン化合物の脂肪酸アミド等のアミン系界面活性剤などが挙げられる。が挙げられる。その他に、ポリビニルアルコールおよびその共重合体(例えば、アクリルアミド、ポリビニルピロリドンとの共重合体)、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体(例えば、酢酸ビニルとの共重合体)、セルロース系誘導体(ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、澱粉誘導体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、キサンタンガム、グリコーゲン、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、水溶性アルキッド樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリカルボン酸塩、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリオール樹脂、あるいは、これら重合体を化学修飾したもの、などに代表される水溶性高分子などが挙げられる。
【0046】
防曇剤を二軸延伸シートに塗工する方法は、特に限定されず、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアロールコーター等を用い塗工する方法が挙げられる。防曇剤層は、噴霧、浸漬等により形成されてもよい。
【0047】
防曇剤塗工後(すなわち、防曇剤層表面)の水接触角は、好ましくは5〜25°である。水接触角が5°以上の場合、表面が粘着状態となり成形時の外観不良やゴミの付着を抑制でき、また、ベタつきが発生することによる滑性不良も抑制できる。水接触角が25°以下の場合、好適な親油性を確保でき、内容物視認性に優れ、また、防曇性の点で更に優れる。
【0048】
本実施形態に係るスチレン系二軸延伸シート及び防曇剤層付き二軸延伸シートは、成形加工により包装容器等の成形品に利用可能である。防曇剤層付き二軸延伸シートで形成された包装容器の場合、当該シートの防曇剤層側の表面が内容物接触面であることが好ましい。成形品としては、食品包装容器(すなわち食品を内容物とする包装容器)や食品包装容器の蓋材が好適であり、特に当該食品が油脂を含む食品である場合に好適である。また、食品包装容器、食品包装容器の蓋材は、電子レンジ加熱用、冷蔵用とすることができる。スチレン系二軸延伸シート及び防曇剤層付き二軸延伸シートが食品包装容器又は食品包装容器の蓋材に用いられる場合、スチレン系二軸延伸シート及び防曇剤層付き二軸延伸シートに使用される原材料については、食品添加物公定書やポリオレフィン衛生協議会のポジティブリストに登録されているなどの公に衛生性、安定性が認められている材料を用いることが好ましい。
【0049】
スチレン系二軸延伸シート及び防曇剤層付き二軸延伸シートから成形品を得る方法としては、市販の一般的な熱板圧空成形機を使用する方法が挙げられる。使用する成形機は、熱板にシートが圧接している時間や圧空による成形する時間、シート圧接から圧空成形に切り替わるタイムラグ、成形サイクル等が設定できるタイプのものが望ましい。これらの方法は例えば、高分子学会編「プラスチック加工技術ハンドブック」日刊工業新聞社(1995)に記載されている。
【0050】
本実施形態に係る加熱調理方法は、上記の包装容器に充填された食品を電子レンジで加熱調理する工程を備えている。
【実施例】
【0051】
以下に使用したアクリロニトリル−スチレン共重合体の製造例を示す。
【0052】
{実験例1:アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS−1)の製造}
容積約20Lの完全混合型攪拌槽である第一反応器と容積約40Lの攪拌機付塔式プラグフロー型反応器である第二反応器を直列に接続し、さらに予熱器を付した脱揮槽を2基直列に接続して構成した。表1に記載のとおり、アクリロニトリル12質量%、スチレン88質量%を含有する単量体溶液85質量部に対し、エチルベンゼン15質量部、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.01質量部、t−ドデシルメルカプタン0.25質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時6.0kgで125℃に制御した第一反応器に導入した。第一反応器より連続的に反応液を抜き出し、この反応液を流れの方向に向かって125℃から160℃の勾配がつくように調整した第二反応器に導入した。次に予熱器で160℃に加温した後67kPaに減圧した第一脱揮槽に導入し、さらに予熱器で230℃に加温した後1.3kPaに減圧した第二脱揮槽に導入し残存単量体と溶剤を除去した。これをストランド状に押出し切断することによりペレット形状のアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS−1)を得た。
【0053】
{実験例2〜7:アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS−2〜7)の製造}
アクリロニトリル及びスチレンの仕込み量を表1のとおりに変更した以外は、製造例1と同様にしてアクリロニトリル−スチレン樹脂(AS−2〜7)を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
{実験例8:ハイインパクトポリスチレン(HS−1)の製造}
ゴム状重合体として3.4質量%のローシスポリブタジエンゴム(旭化成製、商品名ジエン55AS)と、91.6質量%のスチレンとを、5.0質量%のエチルベンゼンに溶解させた。また、ゴムの酸化防止剤(チバガイギー製、商品名イルガノックス1076)0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径d=0.285[m]の錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R−01、図.2参照)に12.5[kg/hr]で供給した。反応温度は140℃、N3d2は0.83[m2/S3]で、樹脂率は25%であった。得られた樹脂液を直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R−02)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に120℃〜140℃、2基目のプラグフロー型反応器(R−03)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に130℃〜160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。R−02出口での樹脂率は50%、R−03出口での樹脂率は70%であった。得られた樹脂液は230℃に加熱後、真空度5[torr]の脱揮槽に送られ、未反応単量体、溶剤を分離・回収した後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽を通してペレット化し製品として回収した。得られた樹脂のジエン系ゴム成分含有量は5.0%であった。
【0056】
{実験例9〜13:ジエン系ゴム変性ポリスチレン(HS−1)の製造}
実験例8の各種原料仕込み量を調整し、表2に記載のジエン系ゴム成分を含有するジエン系ゴム変性ポリスチレンを得た。
【0057】
【表2】
【0058】
<実施例1>
アクリロニトリル−スチレン共重合体(A)とゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂(B)をシート押出機(Tダイ幅500mm、φ40mmのエキストルーダー(田辺プラスチック機械社製))を用い、押出温度230℃で、厚さ1.2mmの未延伸シートを得た。この未延伸シートをバッチ式二軸延伸機(東洋精機)にて、140℃に予熱し、歪み速度0.1/secでMD方向2.4倍、TD方向2.4倍(面倍率5.8倍)に延伸し、厚さ0.21mmの二軸延伸シートを得た。
【0059】
さらに、バーコーターにて1%ショ糖オレイン酸エステル(リョートーシュガーエステルO−1570(三菱化学フーズ社製))を5g/m
2塗工し、105℃のオーブンにて1分間乾燥させた。得られた積層シートにつき、以下の方法にて物性測定、評価を行った。結果を表3に示す。
【0060】
[延伸倍率]
積層シートの試験片に対して、MDおよびTDに100mmの直線Yを引き、JIS K7206に準拠して測定したシートのビカット軟化点温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させた後の、上記直線の長さZ[mm]を測定し、次式すなわち、延伸倍率=Y/Z、単位[倍]によってMD延伸倍率、TD延伸倍率、面倍率を算出した。
【0061】
[最大配向緩和応力]
積層シートから20mm×200mm×0.2mmの試験片を得た。その試験片の両端を固定し、130℃のオイルバスに浸漬した後、荷重が最大となった時の応力値を算出した。その時のMD方向の応力値を最大配向緩和応力(a)とし、TD方向の応力値を最大緩和応力(b)とし、|(a)−(b)|を求めた。
【0062】
[水接触角]
JIS R3257に準じて、接触角計DM−701(協和界面化学)にて、試験液に蒸留水を用い、滴下量2μLで積層シートに滴下後から30秒後の接触角を測定した。
【0063】
[透明性]
JIS K−7361−1に準じ、ヘーズメーターNDH5000(日本電色社)によりヘーズを測定した。測定には上記にて作製した二軸延伸シート0.21mm厚を用いた。なお、ヘーズが2.0%未満であれば透明性に優れているといえる。
A:1.0%未満
B:1.0%以上2.0%未満
C:2.0%以上
【0064】
[滑性]
容器天面から切り出した積層シートの食品接触面と食品非接触面を重ねた状態にて、JISP8147紙及び板紙−静及び動摩擦係数の測定方法に準じた方法にて摩擦角(滑り始める角度)を測定した。なお、摩擦角が30°未満であれば滑性に優れているといえる。
A:15°未満
B:15°以上30°未満
C:30°以上
【0065】
[保管後の防曇性]
積層シートを巻取、ロールの状態で23℃、6か月静置後、熱板成型機HPT−400A(脇坂エンジニアリング製)にて、熱板温度135℃、加熱時間2.0秒の条件で、弁当蓋(寸法 縦241×横193×高さ28mm)を成形した。得られた容器の本体に95℃の水を50g入れ、蓋をし、23℃にて静置した。10分後の内容物視認性を確認した。なお、評価がA又はBであれば保管後の防曇性に優れているといえる。
A:内容物が鮮明に確認できる。
B:蓋部への露付により内容物が見えにくくなる。
C:蓋部への露付多く、内容物が判別つかない。
【0066】
<実施例2〜48、比較例1〜4>
実施例1と同様の方法で、表3〜10に記載の組成、延伸条件にて積層シートを作製し、評価を行った。結果を表3〜10に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
さらに、各実施例及び比較例に積層シートについて、以下の評価を行った。結果を表11〜16に示す。
【0076】
[耐折性]
ASTM D2176に準じて、積層シートの押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の耐折曲げ強さを測定した。縦横の平均値を求め評価した。
A:10回以上
B:5回以上、10回未満
C:5回未満
【0077】
[成形性]
熱板成型機HPT−400A(脇坂エンジニアリング製)にて、熱板温度135℃、加熱時間2.0秒の条件で、積層シートで形成された弁当蓋(寸法 縦241×横193×高さ28mm)の外観を評価した。
A:良好
B:表面の荒れによる軽微な白化、レインドロップ、形状不良
C:表面の荒れによる著しい白化、レインドロップ、形状不良(製品化できない)
【0078】
[容器強度]
積層シートで形成された容器本体に500gの錘を入れ、蓋をした弁当容器を5段重ね、24時間静置後の蓋材の変形状態を確認した。
A:形状変化なし。
B:変形有り。
C:割れ有り。
【0079】
[色相]
厚さ0.21mmの積層シートを10枚重ね、分光測色計CM−2500d(コニカミノルタ)のSCI測定(正反射光込み)より得られたb値を評価した。
A:3未満
B:3以上5未満
C:5以上
【0080】
[耐油性]
積層シートで形成された弁当蓋の中央にサラダ油(日清製油社製)、マヨネーズ(味の素社製)、ココナードML(花王社製)の試験液をしみ込ませたガーゼ10×10mmを貼り付け、60℃オーブンにて24時間静置し、付着部の表面観察を行った。
A:変化無し
B:わずかに白化あり
C:著しい白化、割れあり
【0081】
[レンジ耐性]
積層シートで形成された弁当蓋中央に2×2cmでマヨネーズを付け、容器本体に水300gを入れ、蓋容器をかぶせて1500Wの電子レンジで1分間加熱した後、マヨネーズ付着部分の様子を目視で評価した。
A:変化なし
B:容器がわずかに変形
C:白化あり、穴あきあり、容器が著しく変形(製品化できない)
【0082】
【表11】
【0083】
【表12】
【0084】
【表13】
【0085】
【表14】
【0086】
【表15】
【0087】
【表16】