【文献】
杉林竪次,ナノ材料の経皮吸収性から皮膚の安全性を考える,フレグランス ジャーナル,フレグランス ジャーナル社,2007年11月15日,Vol.35, No.11,p.25-28,特に「2.物質の経皮吸収性と分子サイズ」
【文献】
KITAOKA Momoko et al.,Needle-free immunization using a solid-in-oil nanodispersion enhanced by a skin-permeable oligoargin,International Journal of Pharmaceutics,2013年,Vol.458,p.334-339,特にp.335[2.1.],[2.2.]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.コアシェル構造体
本発明のコアシェル構造体は、分子量400以上の親水性薬物を含有する、コア部と、界面活性剤を含有する、シェル部と、を備える。すなわち、本発明のコアシェル構造体は、コア部が分子量400以上の親水性薬物を、かつシェル部が界面活性剤をそれぞれ含有する。上記コア部は、固体である。上記親水性薬物の水オクタノール分配係数は、−3以上、6以下である。上記界面活性剤は、炭素数が10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する。上記親水性薬物と上記界面活性剤との比(親水性薬物:界面活性剤)は、1:5〜1:20である。本発明のコアシェル構造体は、上記の構成を備えるので、親水性薬物の皮膚透過性が高められている。
【0017】
コアシェル構造体は、分子量400以上の親水性薬物を含有するコア部を、シェル部の界面活性剤が一部もしくは全面を被覆している構造を有する。なお、コア部とシェル部とは、互いに結びつきあって集合体を形成していればよく、コア部の全表面がシェル部で覆われている必要はない。コアシェル構造体がこのような構成を有していることにより、皮膚に適用した場合、コア部の親水性薬物を多量に透過させることができる。
【0018】
コアシェル構造体の形状やサイズは、特に限定されないが、平均サイズが通常、1〜10000nm又は10〜10000nmであり、1〜2000nm又は50〜2000nmであれば適度な経皮吸収性を得やすい点で好ましい。平均サイズが、経皮吸収を得やすい点で、好ましくは、1nm〜10000nmであり、更に好ましくは、1nm〜2000nmであり、更により好ましくは、2nm〜500nmであり、特に好ましくは、2nm〜300nmである。
【0019】
なお、本発明において、コアシェル構造体の平均サイズとは、溶媒(例えば、スクワラン等)分散時の動的光散乱法により、数平均径を算出したものとする。
【0020】
1.1.コア部
分子量400以上の親水性薬物(以下、単に「親水性薬物」という場合がある。)としては、特に限定されず、通常、全身作用又は局所作用が求められるものが用いられる。
【0021】
コア部は、固体である。コア部が固体であるので、後述する基剤中での安定性が向上する。そのため、後述するように、コアシェル構造体を油相である基剤相中に分散させることで、S/O(Solid in Oil)型外用剤を形成することができる。
【0022】
親水性薬物の水オクタノール分配係数は、−3以上、6以下である。そのため、皮膚透過性が高められている。皮膚透過性をより一層向上させる観点から、水オクタノール分配係数が、−1以上であれば好ましく、0以上であればより好ましい。また、親水性薬物の水オクタノール分配係数は、4以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。親水性薬物の水オクタノール分配係数が、上記上限以下である場合、皮膚透過性がより一層向上する。
【0023】
親水性薬物は、皮膚透過性をより一層向上させる観点から、分子量が、6,000以下であれば好ましく、5,500以下であればより好ましく、3,000以下であればさらに好ましく、1,500以下であれば特に好ましい。
【0024】
また、親水性薬物の分子量は、500以上であることが好ましく、550以上であることがより好ましく、900以上であることがさらに好ましい。分子量が上記下限以上である場合、粒子形状の安定性をより一層高めることができる。
【0025】
親水性薬物のうち塩基性薬物の具体例としては、薬理学上許容される塩であれば、特に限定されず、塩酸ドネペジル(分子量416)やバルデナフィル塩酸塩水和物(分子量579)等の塩酸塩、酒石酸リバスチグミン(分子量400)等の酒石酸塩、及びオクトレオチド酢酸塩(分子量1139)、テリパラチド酢酸塩(分子量4418)等の酢酸塩が挙げられ、特に塩酸塩や酢酸塩が好ましい。また、酸性薬物の具体例としては、薬理学上許容される塩であれば特に限定されず、ブクラデシンナトリウム(分子量491)、クロモグリク酸ナトリウム(分子量512)等のナトリウム塩が挙げられる。
【0026】
コアシェル構造体に含まれる親水性薬物の量は、親水性薬物の種類にもよるが、例えば、原料仕込み重量として、0.1〜30質量%(コアシェル構造体に含まれる全原料の総質量を基準とする)とすることができる。
【0027】
コア部は、必要に応じて、二種以上の親水性薬物を含有していてもよい。この場合、コアシェル構造体を含有する本発明における高透過性の外用剤は、配合剤として使用できる。
【0028】
コア部は、親水性薬物に加えてさらに他の成分を少なくとも一種さらに含有していてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、安定化剤、経皮吸収促進剤、皮膚刺激低減剤及び防腐剤等が挙げられる。
【0029】
安定化剤は、コアシェル構造を安定化させる作用を有し、コアシェル構造の意図せぬ早期の崩壊を防止し、親水性薬物の徐放効果を担保する役割を有する。
【0030】
安定化剤としては、特に限定されないが、具体的には、多糖類、タンパク質、及び親水性高分子材料等が挙げられる。安定化剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。安定化剤のコア部における含有量は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、親水性薬物と安定化剤の質量比が、1:0.1〜1:10となるように配合することもできる。
【0031】
経皮吸収促進剤としては、特に限定されないが、具体的には、高級アルコール、N−アシルサルコシン及びその塩、高級モノカルボン酸、高級モノカルボン酸エステル、芳香族モノテルペン脂肪酸エステル、炭素数2〜10の2価カルボン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩、乳酸、乳酸エステル、並びにクエン酸等が挙げられる。経皮吸収促進剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。経皮吸収促進剤のコア部における含有量は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、親水性薬物と経皮吸収促進剤の質量比が、1:0.01〜1:50となるように配合することもできる。
【0032】
皮膚刺激低減剤としては、特に限定されないが、具体的には、ハイドロキノン配糖体、パンテチン、トラネキサム酸、レシチン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、BHT、BHA、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、並びにメルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。皮膚刺激低減剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。皮膚刺激低減剤のコア部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、0.1質量%〜50質量%となるように配合することもできる。
【0033】
防腐剤としては、特に限定されないが、具体的には、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール及びチモール等が挙げられる。防腐剤のコア部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、0.01質量%〜10質量%となるように配合することもできる。防腐剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。
【0034】
1.2.シェル部
界面活性剤は、コアシェル構造のシェル部を形成できるものであればよく、特に限定されない。
【0035】
界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド及び脂肪酸アルカノールアミド、並びにポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0037】
脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、糖脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸及びベヘニン酸等の脂肪酸とショ糖とのエステル等が挙げられる。
【0038】
その他の脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、グリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ソルビタン、及びポリオキシエチレンソルビット等のうち少なくとも一種と脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0039】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0040】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩及びアミン塩類等が挙げられる。
【0041】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン及びアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、特に、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油が好ましく用いられる。
【0043】
また、複数種の界面活性剤を併用してもよい。
【0044】
界面活性剤は、炭素数が10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有している。そのため、親水性薬物の皮膚透過性が高められている。また、界面活性剤は、炭素数が10〜15のアルキル基又はアルケニル基と、炭素数16〜20のアルケニル基とのうち少なくとも一方を有していることが好ましい。界面活性剤が、炭素数が10〜15のアルキル基又はアルケニル基を有していることがより好ましい。この場合、親水性薬物の皮膚透過性をより一層高めることができる。
【0045】
炭素数が10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有している界面活性剤としては、例えば、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、グリセリンラウリン酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。なかでも、炭素数が10〜15のアルキル基又はアルケニル基を有している界面活性剤としては、ショ糖ラウリン酸エステル、グリセリンラウリン酸エステル、ラウリン酸ソルビタンなどが挙げられる。また、炭素数16〜20のアルケニル基を有している界面活性剤としては、ショ糖オレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
界面活性剤は、好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。なかでも、親水性薬物の皮膚透過性をより一層高める観点より、ショ糖ラウリン酸エステル及び/又はショ糖オレイン酸エステルが好ましく、ショ糖ラウリン酸エステルがより好ましい。
【0047】
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と、飽和脂肪酸のエステルであってもよいし、不飽和脂肪酸のエステルであってもよい。
【0048】
界面活性剤は、HLB値の加重平均値が、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下のものを用いることができる。
【0049】
本発明におけるHLB(Hydrophile Lypophile Balanceの略)値は、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0〜20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明においては下記Griffin式より算出される。
【0050】
HLB値=20×{(親水部分の分子量)/(全分子量)}
HLB値の加重平均値は、以下のようにして算出する。
【0051】
例えば、HLB値A、B、Cの界面活性剤原料があり、それぞれの粒子合成時の仕込み重量がx、y、zであったときの加重平均値の算出式は、(xA+yB+zC)÷(x+y+z)である。界面活性剤は、特に限定されず、外用剤として使用可能なもののなかから幅広く選択することができる。
【0052】
界面活性剤の配合量は、親水性薬物と界面活性剤との質量比(親水性薬物:界面活性剤)が、1:5〜1:20となるように設定される。このとき、本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、皮膚透過性が優れている。
【0053】
シェル部は、界面活性剤に加えてさらに他の成分を少なくとも一種さらに含有していてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、皮膚刺激低減剤、鎮痛剤、経皮吸収促進剤、安定化剤及び防腐剤等が挙げられる。
【0054】
皮膚刺激低減剤としては、特に限定されないが、具体的には、ハイドロキノン配糖体、パンテチン、トラネキサム酸、レシチン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、BHT、BHA、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、並びにメルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。皮膚刺激低減剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。皮膚刺激低減剤のシェル部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、0.1質量%〜50質量%となるように配合することもできる。
【0055】
鎮痛剤としては、特に限定されないが、具体的には、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、ジブカイン及びプリロカイン等の局所麻酔薬及びその塩等が挙げられる。鎮痛剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。鎮痛剤のシェル部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、0.1質量%〜30質量%となるように配合することもできる。
【0056】
経皮吸収促進剤としては、特に限定されないが、具体的には、高級アルコール、N−アシルサルコシン及びその塩、高級モノカルボン酸、高級モノカルボン酸エステル、芳香族モノテルペン脂肪酸エステル、炭素数2〜10の2価カルボン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩、乳酸、乳酸エステル、並びにクエン酸等が挙げられる。経皮吸収促進剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。経皮吸収促進剤のシェル部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、0.1質量%〜30質量%となるように配合することもできる。
【0057】
安定化剤は、コアシェル構造を安定化させる作用を有し、コアシェル構造の意図せぬ早期の崩壊を防止し、親水性薬物の徐放効果を担保する役割を有する。
【0058】
安定化剤としては、特に限定されないが、具体的には、脂肪酸及びその塩、メチルパラベン,プロピルパラペン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ペンジルアルコール,フェニルエチルアルコール等のアルコール類、チメロサール、無水酢酸、ソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、酢酸トコフェロール、dl−α−トコフェロール、タンパク質及び多糖類等が挙げられる。安定化剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。安定化剤のシェル部における含有量は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、界面活性剤と安定化剤の質量比が、1:0.01〜1:50となるように配合することもできる。
【0059】
防腐剤としては、特に限定されないが、具体的には、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール及びチモール等が挙げられる。防腐剤は、1種又は2種以上を含有してもよい。防腐剤のシェル部における含有割合は、その種類にもより、適宜設定できるが、例えば、0.01質量%〜10質量%となるように配合することもできる。
【0060】
1.3.コアシェル構造体の製造方法
コアシェル構造体は、例えば水相に有効成分を含有するW/Oエマルションを乾燥する工程を備える方法によって、製造することができる。
【0061】
W/Oエマルションは、いわゆる油中水滴エマルション、具体的には水性溶媒の液滴が油性溶媒中に分散した状態のエマルションである限り特に制限されない。
【0062】
水相に有効成分を含有するW/Oエマルションは、有効成分を含有する例えば水や緩衝水溶液等の水性溶媒と、界面活性剤を含有する例えばシクロヘキサン、ヘキサン若しくはトルエン等の油性溶媒とを混合することによって得ることができる。有効成分を含有する水性溶媒は、有効成分の他に、必要に応じて安定化剤、吸収促進剤又は刺激低減剤等の添加成分を含有していてもよい。また、界面活性剤を含有する油性溶媒も、界面活性剤の他に、必要に応じて、刺激低減剤、鎮痛剤、吸収促進剤又は安定化剤等の添加成分を含有していてもよい。混合の方法としては、W/Oエマルションを形成できる方法である限り特に限定されず、例えばホモジナイザー等による撹拌が挙げられる。
【0063】
ホモジナイザー撹拌時の条件は、例えば、5000〜50000rpm程度、より好ましくは、10000〜30000rpm程度である。
【0064】
上記W/Oエマルションにおける有効成分に対する界面活性剤の質量比(界面活性剤/有効成分)は、特に限定されないが、例えば2〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。
【0065】
水相に有効成分を含有するW/Oエマルションの乾燥の方法としては、該エマルション中の溶媒(水性溶媒及び油性溶媒)を除去できる方法である限り特に限定されず、例えば凍結乾燥又は減圧乾燥等が挙げられ、好ましくは凍結乾燥が挙げられる。
【0066】
また、得られるコアシェル構造体の個数平均粒子径をより一層小さくする観点から、水相に有効成分を含有するW/Oエマルション又は該W/Oエマルションの乾燥物を加熱処理する工程をさらに備えることが好ましい。加熱処理温度は、例えば30〜60℃、好ましくは35〜50℃、より好ましくは35〜45℃である。
【0067】
加熱処理時間は、加熱処理温度に応じて適宜調整されるものであるが、例えば1〜30日間、好ましくは2〜15日間、より好ましくは3〜7日間である。なお、該W/Oエマルションを加熱処理した場合は、処理後、上記乾燥を行うことによって、本発明のコアシェル構造体を得ることができる。
【0068】
また、得られるコアシェル構造体の個数平均粒子径をより一層小さくする別の方法としては、水相に有効成分を含有するW/Oエマルション又は該W/Oエマルションの乾燥物を必要に応じて溶媒等に分散後、フィルタ等で濾過する方法や、遠心処理分離を行う方法が挙げられる。フィルタ濾過の場合のフィルタ孔径は、例えば1μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0069】
本発明のコアシェル構造体は、そのまま用いてもよいが、以下に示す基剤相等に分散して用いてもよい。
【0070】
1.4.基剤相
本発明の高透過性の全身又は局所作用型外用剤は、さらに基剤を含有する相(基剤相)を含有し、基剤相が前記コアシェル構造体を含有するものであってもよい。このとき、コアシェル構造体は、基剤相中に分散又は溶解している。
【0071】
基剤は、特に限定されず、外用剤として使用可能なもののなかから幅広く選択することができる。
【0072】
上述したように、本発明のコアシェル構造体は、コア部が固体である。そのため、基剤相が油相である場合、コアシェル構造体を油相である基剤相中に分散させることで、S/O(Solid in Oil)型外用剤を形成することができる。S/O型の外用剤は、例えば、上述した製造方法により得られたコアシェル構造体を、油相中に分散又は溶解させることにより得ることができる。
【0073】
基剤は、コアシェル構造体を分散又は溶解させるのに適切なものの中から使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
【0074】
また、複数種の基剤を併用してもよい。
【0075】
基剤としては、特に限定されないが、例えば、植物油、動物油、中性脂質、合成油脂、ステロール誘導体、ワックス類、炭化水素類、モノアルコールカルボン酸エステル類、オキシ酸エステル類、多価アルコール脂肪酸エステル類、シリコーン類、高級(多価)アルコール類、高級脂肪酸類及びフッ素系油剤類等が挙げられる。
【0076】
植物油としては、特に限定されないが、例えば、大豆油、ゴマ油、オリーブ油、やし油、バーム油、こめ油、綿実油、ひまわり油、コメヌカ油、カカオ脂、コーン油、べに花油及びなたね油等が挙げられる。
【0077】
動物油としては、特に限定されないが、例えば、ミンク油、タートル油、魚油、牛油、馬油、豚油及び鮫スクワラン等が挙げられる。
【0078】
中性脂質としては、特に限定されないが、例えば、トリオレイン、トリリノレイン、トリミリスチン、トリステアリン及びトリアラキドニン等が挙げられる。
【0079】
合成油脂としては、特に限定されないが、例えば、リン脂質及びアゾン等が挙げられる。
【0080】
ステロール誘導体としては、としては、特に限定されないが、例えば、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、フィトステロール、コール酸及びコレステリルリノレート等が挙げられる。
【0081】
ワックス類としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、みつろう、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス及びエチレン・プロピレンコポリマー等が挙げられる。
【0082】
炭化水素類としては、流動パラフィン(ミネラルオイル)、重質流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、スクワラン、オリーブ由来スクワラン、スクワレン、ワセリン及び固形パラフィン等が挙げられる。
【0083】
モノアルコールカルボン酸エステル類としては、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、パリミチン酸セチル、パルミチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、オクタン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオデカン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、オレイン酸エチル、アボカド油脂肪酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、セバチン酸ジエチル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジブチルオクチル、アジピン酸ジイソブチル、コハク酸ジオクチル及びクエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0084】
オキシ酸エステル類としては、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル及びモノイソステアリン酸水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0085】
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、トリオクタン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、水添ロジントリグリセリド(水素添加エステルガム)、ロジントリグリセリド(エステルガム)、ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジオレイン酸プロピレングリコール、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、水素添加ロジンペンタエリスリチル、トリエチルヘキサン酸ジトリメチロールプロパン、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパン、トリエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、ノナイソステアリン酸ポリグリセリル−10、デカ(エルカ酸/イソステアリン酸/リシノレイン酸)ポリグリセリル−8、(ヘキシルデカン酸/セバシン酸)ジグリセリルオリゴエステル、ジステアリン酸グリコール(ジステアリン酸エチレングリコール)、ジネオペンタン酸3−メチル−1,5−ペンタンジオール及びジネオペンタン酸2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0086】
シリコーン類としては、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、高重合ジメチコン(高重合ジメチルポリシロキサン)、シクロメチコン(環状ジメチルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー、ジメチコノール、ジメチコノールクロスポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノプロピルジメチコン又はアモジメチコン等のアミノ変性シリコーン、カチオン変性シリコーン、ジメチコンコポリオール等のポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、糖変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、リン酸変性シリコーン、硫酸変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルキルエーテル変性シリコーン、アミノ酸変性シリコーン、ペプチド変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、カチオン変性又はポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性又はポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性又はポリエーテル変性シリコーン及びポリシロキサン・オキシアルキレン共重合体等が挙げられる。
【0087】
高級(多価)アルコール類としては、セタノール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール及びダイマージオール等が挙げられる。
【0088】
高級脂肪酸類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、イソヘキサデカン酸、アンテイソヘンイコサン酸、長鎖分岐脂肪酸、ダイマー酸及び水素添加ダイマー酸等が挙げられる。
【0089】
フッ素系油剤類としては、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン及びパーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0090】
また、その他の基剤としては、特に限定されないが、軟膏剤、クリーム剤、エアゾール剤、テープ剤、パッチ剤、パップ剤、ゲル剤又はマイクロニードル等に使用される基剤等が挙げられる。
【0091】
2.高透過性全身又は局所作用型の外用剤の構成
本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、少なくとも上記のコアシェル構造体を含有する。
【0092】
本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、その剤形や使用目的等に応じて、その他の添加成分をさらに含有していてもよい。
【0093】
添加成分としては、特に限定されないが、賦形剤、着色剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、安定剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤、ゲル化剤、粘着剤、酸化防止剤、経皮吸収促進剤、刺激緩和剤、防腐剤、キレート剤及び分散剤等が挙げられる。
【0094】
また、本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、基剤相を含有しない場合はコアシェル構造体が、又は基剤相を含有する場合はコアシェル構造体を含有した状態の基剤相が(以下、これらを総称して「コアシェル構造体含有基本成分」ということがある。)、さらに他の成分に分散されているものであってもよい。この場合、本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、コアシェル構造体含有基本成分が完全溶解しない成分に、コアシェル構造体含有基本成分を混合分散又はエマルション化等させることにより提供される。剤型により適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、軟膏剤、クリーム剤、エアゾール剤、テープ剤、パッチ剤、パップ剤、ゲル剤又はマイクロニードル等として提供するため、それぞれの剤型に使用される基剤等に、コアシェル構造体含有基本成分を混合分散又はエマルション化等させることができる。
【0095】
3.高透過性全身又は局所作用型の外用剤の製造方法
本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、特に限定されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
【0096】
まず、特に限定されないが、本発明のコアシェル構造体を、例えば以下のようにして製造することができる。薬物並びに所望により安定化剤、経皮吸収促進剤及び皮膚刺激低減剤等の添加成分を純水又はリン酸緩衝液等の溶媒に溶解する。これに、界面活性剤並びに所望により皮膚刺激低減剤、鎮痛剤、経皮吸収促進剤及び安定化剤等の添加成分を、シクロヘキサン、ヘキサン又はトルエン等の溶剤に溶解した溶液を加え、ホモジナイザー撹拌する。その後に凍結乾燥することによって本発明のコアシェル構造体を調製できる。
【0097】
コアシェル構造体を用いて、例えば、溶液塗工法より持続性全身又は局所作用型外用剤を製造できる。溶液塗工法では、本発明のコアシェル構造体及び基剤に加えてさらに所望により経皮吸収促進剤、増粘剤及びゲル化剤等の添加成分を所定の割合になるようにヘキサン、トルエン又は酢酸エチル等の溶剤に添加し、攪拌して均一な溶液を調製する。溶液中の固形分濃度は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0098】
次に、各成分を含有する上記溶液を、例えばナイフコーター、コンマコーター又はリバースコーターなどの塗工機を用いて、剥離ライナー(シリコーン処理したポリエステルフィルム等)上に均一に塗布し、乾燥して薬剤含有層を完成させ、該層の上に支持体をラミネートすることにより、経皮吸収型製剤を得ることができる。支持体の種類によっては、支持体に上記層を形成した後、上記層の表面に剥離ライナーをラミネートしても良い。
【0099】
また、別の方法としては、例えば、コアシェル構造体に必要に応じて基剤や経皮吸収促進剤、安定剤、増粘剤及びゲル化剤等の添加成分を加えて混合し、用途に応じて、ガーゼ若しくは脱脂綿等の天然織物部材、ポリエステル若しくはポリエチレン等の合成繊維織物部材、又はこれらを適宜組み合わせて織布若しくは不織布等に加工したもの、又は透過性膜等に積層や含浸等して保持させた状態とし、さらに粘着カバー材等で覆って使用することもできる。
【0100】
このようにして得られた経皮吸収型製剤は、使用用途に応じて楕円形、円形、正方形、長方形などの形状に適宜裁断する。また、必要に応じて周辺に粘着剤相等を設けてもよい。
【0101】
4.高透過性全身又は局所作用型の外用剤の用途
本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、特に限定されないが、通常、1日〜1週間持続性であり、好ましい態様では1日〜1週間あたり1回適用されるように用いられる。
【0102】
対象疾患は、塩型親水性薬物の種類によって異なる。
【0103】
本発明の高透過性全身又は局所作用型の外用剤は、特に限定されないが、テープ剤(リザーバ型又はマトリックス型等)、軟膏剤、ローション剤、エアゾール剤、硬膏剤、水性バップ剤、クリーム剤、ゲル剤、エアゾール剤、パッチ剤及びマイクロニードル等として使用できる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例及び試験例を例に挙げて詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0105】
(実施例1)
ドネペジル塩酸塩(東京化成工業社製、分子量416、水オクタノール分配係数4.3)0.2gを40gの純水に溶解し、これに、ショ糖ラウリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、L−195;HLB値1)3.0gをシクロヘキサン80gに溶解した溶液を加え、ホモジナイザー撹拌(25,000rpm、2分間)した。この後に2日間凍結乾燥し、コアシェル構造体を得た。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、211nmであった。得られたコアシェル構造体1.0gに2.0gのプラスチベース(大正製薬社製、日本薬局方)に加え、混合して分散してS/O型外用剤を調製した。
【0106】
(実施例2)
実施例1で用いたショ糖ラウリン酸エステルの代わりに、ショ糖オレイン酸エステル(三菱化学フーズ社製、O−170;HLB値1)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、23nmであった。
【0107】
(実施例3)
実施例1で用いたドネペジル塩酸塩の代わりに、バルデナフィル塩酸塩三水和物(Atomax Chemicals社製、分子量579、水オクタノール分配係数3.2)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、153nmであった。
【0108】
(実施例4)
実施例3のショ糖ラウリン酸エステルを1.0gにした以外は実施例3と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、207nmであった。
【0109】
(実施例5)
実施例1で用いたドネペジル塩酸塩の代わりに、オクトレオチド酢酸塩(BACHE社製、分子量1139、水オクタノール分配係数0.1)を用い、実施例1で用いたショ糖ラウリン酸エステルの代わりに、ショ糖オレイン酸エステル(三菱化学フーズ社製、O−170;HLB値1)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、262nmであった。
【0110】
(実施例6)
実施例5のショ糖オレイン酸エステルを1.0gにしたこと以外は実施例5と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、298nmであった。
【0111】
(比較例1)
ドネペジル塩酸塩62.5mgに3.0gのプラスチベースに加え、混合して分散して外用剤を調製した。
【0112】
(比較例2)
バルデナフィル塩酸塩三水和物62.5mgに3.0gのプラスチベースに加え、混合して分散して外用剤を調製した。
【0113】
(比較例3)
オクトレオチド酢酸塩62.5mgに3.0gのプラスチベースに加え、混合して分散して外用剤を調製した。
【0114】
(比較例4)
実施例1で用いたドネペジル塩酸塩の代わりに、リセドロン酸一ナトリウム2.5水和物(東京化成工業社製、分子量306、水オクタノール分配係数−5.0)を用いたこと、及び実施例1で用いたショ糖ラウリン酸エステルの代わりに、ショ糖エルカ酸エステル(三菱化学フーズ社製、ER−290;HLB値2)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、196nmであった。
【0115】
(比較例5)
リセドロン酸一ナトリウム2.5水和物62.5mgに3.0gのプラスチベースに加え、混合して分散して外用剤を調製した。
【0116】
(比較例6)
実施例1のドネペジル塩酸塩の量を0.1gにしたこと以外は実施例1と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、3nmであった。
【0117】
(比較例7)
実施例1のドネペジル塩酸塩の量を0.06gにしたこと以外は実施例1と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、3nmであった。
【0118】
(比較例8)
比較例4で用いたリセドロン酸一ナトリウム2.5水和物の代わりに、バルデナフィル塩酸塩三水和物(Atomax Chemicals社製、分子量579、水オクタノール分配係数3.2)を用いたこと以外は比較例4と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、9nmであった。
【0119】
(比較例9)
比較例4で用いたリセドロン酸一ナトリウム2.5水和物の代わりに、オクトレオチド酢酸塩(BACHE社製、分子量1139、水オクタノール分配係数0.1)を用いたこと以外は比較例4と同様にしてS/O型外用剤を調製した。また、コアシェル構造体をオリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)に分散後、動的光散乱法(スペクトリス株式会社製、ゼータサイザ−ナノS)により算出した個数平均粒子径は、247nmであった。
【0120】
試験例1 ヘアレスラット皮膚透過性試験
薬物皮膚透過試験セル(
図1)にヘアレスラット皮膚(日本エスエルシー社、HWY/Slc8週齢より摘出)をセットした。この装置の上部に実施例1、2、3、5及び比較例1、2、3、4、5、8、9で製造した各種外用剤は330mg、実施例4、6の外用剤は125mg、比較例6の外用剤は640mg、比較例7の外用剤は1050mg(約3cm
2)適用し、下部のレセプター層においては、蒸留水中にNaH
2PO
4を5×10
−4M、Na
2HPO
4を2×10
−4M、NaClを1.5×10
−4M、硫酸ゲンタマイシン(和光純薬社製、G1658)を10ppm含有させた液をNaOHでpH7.2に調整した緩衝液をいれ、試験開始後より32℃に保たれた恒温槽中に装置を設置した。試験開始後、所定時間後に下部のレセプター層より槽中の液のうち1mlを採取し直後に、同じ組成の液を1ml補充した。回収した各々のレセプター液試料にメタノールを添加して溶出脂質等を抽出し遠心分離した後に、上清中の各薬物濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した(装置:システムコントローラー;島津製作所社製 CBM−20A、送液ユニット;島津製作所社製 LC−20AD、カラムオーブン;島津製作所社製 CTO−20A、検出器;島津製作所社製 SPD−20A、検出波長;271nm、使用カラム:Thermoscientific社製Hypersi GOLD 150×4.6mm 3μm)。皮膚透過性を示す薬物の累積透過量(mg/cm
2)の結果を下記の表1及び
図2〜6に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
図2〜5の結果より、実施例の外用剤は比較例の外用剤に対して、透過性が大幅に向上されていることが判った。
【0123】
また、
図5の結果より、親水性薬物に対して脂肪酸エステルの重量が低いほど、透過性が向上することが判った。
【0124】
図6の結果より、分子量が400未満であり、水オクタノール分配係数が−3.0より低いと、コアシェル構造体であっても透過性が向上しないことが判った。