(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に衝撃が加えられた際に、このときの車両の位置、車両周囲の映像、音声、走行速度等の車両の走行に関する各種の情報を記録するために、ドライブレコーダが提案され実用に供されている。ドライブレコーダを用いることにより、例えば車両が衝突事故を起こした場合に、この衝突の前後の情報が記録保存されるので、事故原因の解析等に役立てることができる。
【0003】
また、ドライブレコーダは、運転者の運転を支援する運転支援装置としても利用される。その際には、車両が急ブレーキをかけた地点等、ドライブレコーダの記録情報を解析して得られた危険地点(ヒヤリ・ハット地点)のデータベース(ハザードマップデータ)がドライブレコーダに搭載される。そして、車両が危険箇所を通行する際にドライブレコーダから運転者に対して警報が出力される。
【0004】
上述したハザードマップデータは、個々のドライブレコーダで独自に作成される場合もあるが、情報量を豊富にする観点から、ドライブレコーダの記録情報を解析する解析装置で一元的に作成される場合もある(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、記録情報やハザードマップデータの受け渡しをネットワークによるオンライン通信で行うことを開示しているが、必ずしもそのようなインフラが整備されているとは限らない。したがって、可搬型記録媒体(メモリカード)を用いてオフラインで受け渡しを行うことも大いに行われている。その場合、危険地点やそれを基にしたハザードマップデータの、解析装置からドライブレコーダへの受け渡しにも、メモリカードを用いるのが合理的である。
【0007】
この場合、メモリカードの主たる使用目的は、ドライブレコーダで収集した記録情報を解析装置に受け渡すことにあるので、それに必要な記憶容量を割り込むような容量のハザードマップデータをメモリカードに記憶させる訳には行かない。その反面、ハザードマップデータの内容が充実すればするほどそのデータ量は当然増える。したがって、このままでは、解析装置でハザードマップデータを一元的に作成することの利点を充分に生かすことができなくなってしまう。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、内容の充実した運転支援情報(ハザードマップデータ)を、コンパクトなデータ量でメモリカードを介して運転支援装置(ドライブレコーダ)に供給できる運転支援情報管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の運転支援情報管理装置は、
リーダライタに装填した前記メモリカードから前記運行状況の記録情報を読み出して、該読み出した運行状況の記録情報から車両走行上の危険地点
を、前記リーダライタに前記メモリカードを装填したままの状態で特定する危険地点特定手段と、
前記特定した車両走行上の危険地点に基づいて、ハードディスクに記憶された前記車両走行上の危険地点を示すハザードマップのデータを更新する更新手段と、
前記更新後のハザードマップのデータ
を、前記運行情報の記録情報を読み出すために前記リーダライタに装填
してそのまま該リーダライタに装填した状態の前記メモリカードに記憶された識別子から特定した前記車両の運行経路と照合して、該運行経路上に存在する前記危険地点を抽出する抽出手段と、
前記抽出した危険地点のデータを、前記リーダライタに装填したメモリカードに記憶された前記識別子から特定した前記車両の走行時に運転者に警報するために用いる運転支援情報として、前記リーダライタに装填したメモリカー
ドが該リーダライタから取り出されるまでの間に該メモリカードのハザードマップデータの記憶領域に記憶させる記録手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載した本発明の運転支援情報管理装置によれば、車両において収集した運行状況の記録情報が書き込まれるメモリカードに、その車両の走行時に運転者に危険地点を警報するために用いる運転支援情報として、危険地点のデータが記憶される。そして、記憶される危険地点のデータは、その車両の運行経路上に存在する危険地点のみに限られる。
【0011】
したがって、車両の運行経路上に存在しない危険地点のデータ分だけメモリカードに記憶する運転支援情報のデータ量を少なくすることができ、内容の充実した運転支援情報をコンパクトなデータ量でメモリカードを介して車両側に供給することができる。
【0012】
また、
請求項1に記載した本発明の運転支援情報管理装置
は、前記抽出手段は、前
記リーダライタに装填したメモリカードに記憶された識別子から特定した前記車両の運行経路を、前記
更新後のハザードマップのデータと照合することを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載した本発明の運転支援情報管理装置によれ
ば、識別子がメモリカードに記憶されている場合は、その識別子から車両の運行経路を特定して、その車両が運行する経路上の危険地点を容易に抽出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内容の充実した運転支援情報をコンパクトなデータ量でメモリカードを介して車両側に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による運転支援情報管理装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るドライブレコーダシステムの概略構成図である。
図1に示すドライブレコーダシステムは、ドライブレコーダ解析ユニット1とドライブレコーダ3とを有している。
【0018】
ドライブレコーダ解析ユニット1は、ドライブレコーダ3を搭載する車両(図示せず)を管理する営業所等に設置される。ドライブレコーダ解析ユニット1は、キーボード11及びディスプレイ13を有するパーソナルコンピュータ(請求項中の運転支援情報管理装置に相当。以下、「パソコン」と略記する。)10と、パソコン10に接続したプリンタ15及びリーダライタ17とを有している。
【0019】
パソコン10は、CPU、RAM、ROM、及び、ハードディスク等(いずれも図示せず)を内蔵しており、ハードディスクには、ドライブレコーダ3で収集した車両の運行状況の記録情報を解析するためのプログラムがインストールされている。
【0020】
この解析プログラムは、ドライブレコーダ3の後述するカメラ35a〜35nにより撮影してメモリーカード(可搬型メモリカード)Cに録画した画像を、パソコン10で再生したり解析するためのソフトウェアである。
【0021】
また、解析プログラムには、メモリカードCをフォーマットするプログラムや、カメラ35a〜35nを用いてドライブレコーダ3により画像を録画する際の画質を設定してメモリカードCの専用領域に書き込むプログラムが含まれている。
【0022】
さらに、解析プログラムには、ドライブレコーダ3の搭載車両(図示せず)において収集してメモリカードCに記憶された記録情報から、走行上の危険地点を特定するためのプログラムが含まれている。この危険地点とは、所謂ヒヤリ・ハット地点であり、車両の運転者が急ブレーキや急ハンドル等の危険回避行動を取る傾向がある地点のことを言う。
【0023】
プリンタ15は、パソコン10で行った設定や解析の内容等をプリントアウトする際に用いられる。リーダライタ17は、カードスロット17aから挿入したメモリカードCに対するデータの書き込み及び読み出しを、パソコン10のCPUの制御によって行う。
【0024】
ドライブレコーダ3は、例えば不図示の車両のフロントガラスに取り付けられる。ドライブレコーダ3の本体はカメラ35aを内蔵しており、また、外付けのカメラ35b〜35nを有している。
【0025】
図2のブロック図に示すように、ドライブレコーダ3は、本体に内蔵されたCPU31、ROM32、RAM33、メモリ34、カメラ35a〜35nのインタフェース(I/F)35i、メモリカードCに対するデータの書き込み及び読み出し用のリーダライタ38、及び、外部接続用のインタフェース部39を有している。このインタフェース部39には、車両の車速センサ41、GPS(全地球測位システム)モジュール43、スピーカユニット45等が接続される。
【0026】
GPSモジュール43は、ドライブレコーダ3を搭載した不図示の車両の現在位置を検出するモジュールである。スピーカユニット45は、CPU31が生成した音声データを出力するユニットである。
【0027】
また、ドライブレコーダ3は、各カメラ35a〜35nにそれぞれ対応する加速度センサ37a〜37nを有している。カメラ35aに対応する加速度センサ37aは本体に内装され、他の加速度センサ37b〜37nは、対応する外付けの各カメラ35b〜35nの設置箇所にそれぞれ配置される。
【0028】
ドライブレコーダ3のCPU31は、ROM32に格納されたプログラムにしたがって、カメラ35a〜35nが撮影する画像を、SRAM等で構成されるメモリ34を用いて一旦録画する。そして、本体のカードスロット38a(
図1参照)からリーダライタ38に挿入されたメモリカードCにダウンロードし書き込む。
【0029】
メモリカードCに画像を録画するモードは2つある。一つは常時記録モードであり、リーダライタ38にメモリカードCが装填されている間、あるいは、車両の運行開始及び終了の指示がインタフェース部39を介して外部機器(図示せず)からCPU31に入力される間、比較的低い画質で長時間画像を録画するモードである。
【0030】
もう一つはトリガ記録モードであり、加速度センサ37a〜37nによる一定値以上の加速度検出時や、車速センサ41から入力される車速の一定速度以上の変化、インタフェース部39に接続された不図示の外部機器から荷台ドアの開閉や作業開始等の指示が入力された際に、そのトリガ時点の前後一定時間について、比較的高い画質で短時間画像を録画するモードである。
【0031】
ドライブレコーダ3のCPU31は、メモリカードCの専用領域からリーダライタ38が読み出した画質設定情報に基づいて、常時記録モードやトリガ記録モードでカメラ35a〜35nが撮影した画像をそれぞれ設定された画質でメモリカードCに録画する。
【0032】
なお、メモリカードCには、画像等の運行状況を記録情報として記憶させる専用領域の他に、識別子の記憶領域とハザードマップデータの記憶領域とが設けられている。識別子の記憶領域には、ドライブレコーダ3で記録情報を収集する車両又はその運転者を特定するために、メモリカードCに割り当てられたID情報が記憶される。また、ハザードマップデータの記憶領域には、危険地点を示すデータが記憶される。
【0033】
次に、
図1に示すドライブレコーダ解析ユニット1のパソコン10のCPUがROMのプログラムにしたがって実行する、リーダライタ17に装填したメモリカードCに対して行う処理の手順を、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
まず、パソコン10のCPUは、リーダライタ17に装填したメモリカードCの専用領域から記録情報を読み出し(ステップS1)、読み出した記録情報中に、危険地点に該当する地点で記録されるトリガ(危険)データが存在するか否かを確認する(ステップS3)。トリガデータが存在しない場合は(ステップS3でNO)、後述するステップS15に移行する。
【0035】
一方、トリガデータが存在する場合は(ステップS3でYES)、パソコン10内のハードディスク(図示せず)等に格納された危険地点のデータベースに同じ地点が登録されているか否かを確認する(ステップS5)。登録されていない場合は(ステップS5でNO)、新規の危険地点としてデータベースに登録した後(ステップS7)、ステップS15に移行する。
【0036】
また、トリガデータと同じ地点がデータベースに登録されている場合は(ステップS5でYES)、トリガデータの発生回数(危険地点として記録情報に記録された回数)が規定の回数を超えたか否かを確認する(ステップS9)。規定回数を超えていない場合は(ステップS9でNO)、データベース内においてカウントされている発生回数をカウントアップした後(ステップS11)、ステップS15に移行する。
【0037】
一方、トリガデータの発生回数が規定回数を超えた場合は(ステップS9でYES)、データベースにおいて規定されているその危険地点の危険レベルを1段階上げて発生回数のカウント値をリセットした後(ステップS13)、ステップS15に移行する。
【0038】
ステップS15では、ステップS7乃至ステップS13の手順によって変更された不図示のハードディスクのデータベースの内容に合わせてハザードマップデータを更新する。続いて、リーダライタ17に装填したメモリカードCの識別子を読み出して(ステップS17)、読み出した識別子の車両(又は識別子の運転者が運転する車両)の運行経路を示す運行計画データを、不図示のハードディスクに予め登録された運行計画データの中から抽出する(ステップS19)。
【0039】
そして、抽出した運行計画データが示す運行経路を、不図示のハードディスクのハザードマップデータと照合して、運行経路上に存在する危険地点を抽出し(ステップS21)、抽出した危険地点をメモリカードCのハザードマップデータの記憶領域に書き込ませた後(ステップS23)、リーダライタ17からメモリカードCを取り出して(ステップS25)、一連の処理を終了する。
【0040】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図3のフローチャートにおけるステップS21が、請求項中の抽出手段に対応する処理となっている。また、本実施形態では、
図3中のステップS23が、請求項中の記録手段に対応する処理となっている。
【0041】
上述した手順で、車両の運行経路上に存在する危険地点が書き込まれたメモリカードCは、その後、対応する車両のドライブレコーダ3のカードスロット38aからリーダライタ38に装填される。そして、CPU31の制御により危険地点がメモリカードCから読み出されて、RAM33又はメモリ34に一時格納される。
【0042】
この危険地点は、GPSモジュール43が検出する車両の現在位置と常時照合され、両者が一致して車両が走行中に危険地点に差しかかったことがわかるとが、危険地点であることを警報する音声メッセージが、CPU31の制御によりスピーカユニット45から出力される。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態のドライブレコーダシステムによれば、ドライブレコーダ3において危険地点の走行を運転者に警報するのに必要な危険地点のデータを、その車両の運行経路上に存在するものだけ抽出してメモリカードCに記憶させるようにした。このため、ドライブレコーダ解析ユニット1のパソコン10で構築した危険地点のデータベースを全てメモリカードCにハザードマップデータとして記録させるよりも、メモリカードCに記憶させるデータ量を大幅に縮減させることができる。
【0044】
よって、メモリカードCに本来記憶させるべき、ドライブレコーダ3が収集した運行状況の記録情報の記憶領域が、ハザードマップデータを記憶させることで減ってしまうのを防ぐことができる。その上で、ドライブレコーダ解析ユニット1のパソコン10で構築した危険地点のデータベースに基づいて作成した、内容の充実した最新のハザードマップデータ(運転支援情報)を、各車両で必要な危険箇所のみに絞ったコンパクトなデータ量で、メモリカードCを介して車両側(のドライブレコーダ3)に供給することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、メモリカードCに車両又はその運転者の識別子を記録し、その識別子に対応する車両の運行経路(運行計画データ)をパソコン10内のハードディスクから抽出して、ハードディスクのハザードマップデータと照合する構成とした。しかし、パソコン10に例えばキーボード11から車両を特定する入力を行って、車両の運行経路(運行計画データ)をハードディスクから抽出する構成としてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、危険地点を特定する基となる車両の運行状況の記録情報を、ドライブレコーダ3において収集する場合について説明した。しかし、車両の時々刻々変化する運行情報(イベントデータ)を収集するデジタルタコグラフ(車両運行情報収集装置)において収集した運行情報から危険地点を特定する場合にも、本発明は適用可能である。
【0047】
その場合には、デジタルタコグラフとその解析装置(本実施形態におけるドライブレコーダ解析ユニット1に相当する装置)との間で運行情報の受け渡しに用いるメモリカードに、車両の運行経路上の危険地点を記録すればよい。