特許第6148462号(P6148462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148462
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】車両用熱電発電装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20170607BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20170607BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20170607BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20170607BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H02N11/00 A
   F02G5/04 G
   F02G5/04 L
   F01P3/20 T
   F01N5/02 J
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-278479(P2012-278479)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-86713(P2014-86713A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0119122
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン,ホ−チャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジョン−ホ
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0008896(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0121942(KR,A)
【文献】 特開2000−018095(JP,A)
【文献】 特開2006−214350(JP,A)
【文献】 特開2007−006619(JP,A)
【文献】 特開2006−340439(JP,A)
【文献】 特開2006−314180(JP,A)
【文献】 特開2006−217756(JP,A)
【文献】 特開平10−220909(JP,A)
【文献】 特開2006−002704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00−34
H02N 11/00
F01N 5/02
F02G 5/02−04
F01P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流れる排気パイプに取り付けられ、排気ガスと冷却水の温度差を利用して電気を生産する車両用熱電発電装置であって、
パイプ形状として、排気パイプが内部を貫通するように取り付けられたハウジングと、
前記ハウジングの外周面に取り付けられ、前記ハウジングの長さ方向に沿って複数の列をなすように取り付けられ、温度差によって電気を生産する熱電モジュールと、
内部に冷却水が流れ、前記熱電モジュールをハウジングに密着させるように取り付けられ、前記熱電モジュールの各列ごとに密着する複数の冷却水チューブと、
前記ハウジングの縦方向に沿って一側に位置する前記冷却水チューブが開通するように前記冷却水チューブの両側末端の各々に取り付けられ、冷却水が出入りする第1冷却水筒と、
前記ハウジングの縦方向に沿って他側に位置する前記冷却水チューブが開通するように前記冷却水チューブの両側末端の各々に取り付けられ、冷却水が出入りする第2冷却水筒と、を有してなり、
前記排気パイプは、ハウジングと排気パイプとの間に排気ガスが流入されるように取り付けられ、
前記排気パイプは、長さ方向に沿って相対的に前方側に位置する第1排気パイプと、相対的に後方側に位置する第2排気パイプに分けられ、
前記第1排気パイプの後方末端には、スプリングに連結され、排気ガスの圧力に応じて第1排気パイプの後方末端を遮蔽するバルブプレートが取り付けられ、
前記第1排気パイプの後方末端が遮蔽された時に、排気ガスが流れる孔が前記第1排気パイプの外周面に形成されることを特徴とする車両用熱電発電装置。
【請求項2】
前記排気パイプと前記ハウジングとの間には、熱伝導部材が内蔵され、前記熱伝導部材は、排気ガスが通過可能であり、熱を吸収できる多孔性のメッシュ構造で形成されることを特徴とする請求項に記載の車両用熱電発電装置。
【請求項3】
前記冷却水チューブの両末端には連結部材が取り付けられ、前記冷却水チューブは前記連結部材を介して前記第1冷却水筒または前記第2冷却水筒と連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用熱電発電装置。
【請求項4】
前記冷却水チューブが熱電モジュールに密着するようにハウジングの周縁に沿って巻かれるクランプをさらに含んで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用熱電発電装置。
【請求項5】
前記冷却水チューブは、金属材で製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用熱電発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱電発電装置に関し、より詳しくは、熱電モジュールの両側の温度差を大きくして発電効率性をより向上させ、組み立ておよび部品交換が容易にできる車両用熱電発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電発電は、加熱素子と冷却素子との間の温度差を利用して電気を得る構造であり、機械的な作動がなく、熱源から直接に電気エネルギーを生産できる長所がある。
熱電発電方式は、自動車以外の分野においては、以前から既に用いられており、僻地での電源施設、惑星探査船(Voyager II)などに用いられた事例があり、最近では、ゴミ焼却炉の廃熱利用システム、地熱発電、海洋温度差発電などへの適用も検討されている。
【0003】
一方、自動車におけるエネルギー流れを調べてみれば、ガソリンが有する化学エネルギーはエンジンにおいて燃焼して機械エネルギーに変換されるが、この時の熱効率は30%程度に過ぎず、残りのエネルギーは熱エネルギー、振動エネルギー、音響エネルギーなどとして放出される。
したがって、燃費向上のためには、放出されたエネルギーを再利用することが求められる。また、放出された熱エネルギーの中でも温度が高い方がエネルギーとしての効用が高いため、数百度の高い温度領域を有するエンジンの排気熱を高温熱源として用いる方法が開発されている。
【0004】
一方、車両に電気を供給するために用いられるオルタネータ(alternator)は、その効率が約33%程度に過ぎないだけでなく、車両の所要電力が増加すれば軸動力を増大させなければならないため、軸動力の損失も増加して、燃料消耗が大きく、さらにこれによる公害排出物が増大するという問題点があった。
【0005】
この時、オルタネータの駆動に消費されるエネルギーは車両の運転状態および電力使用状態によって変化するが、電力使用の少ない昼間の一般運転時にも消費される。
したがって、熱電発電などを介した追加的な発電は、オルタネータの機能を分担することで燃費向上の効果が期待できる。
【0006】
車両に適用されて、排気ガスの排気熱と冷却水を用いて電気を生産する構造の熱電発電として、エンジンの排気系に熱電素子を配置して発電する排熱発電装置の提案がなされている〔例えば、特許文献1、特許文献2参照〕。具体的には、P型あるいはN型の半導体で構成された熱電モジュールを排気パイプに取り付け、一方を高温の排気ガス系に接し、他方を低温の冷却水系に接するようにして構成される。この時、熱電モジュールの発電効率を高くするためには、熱電モジュールに伝えられる熱源(排気ガス)と冷却源(冷却水)間の温度差を大きくしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−16747号公報
【特許文献2】特開2010−255632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、熱源と冷却源の温度差を大きくすることで発電効率を高めることができ、組み立てが容易で、故障発生時の部品交換が簡単な車両用熱電発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の車両用熱電発電装置は、排気ガスが流れる排気パイプに取り付けられ、排気ガスと冷却水の温度差を利用して電気を生産する車両用熱電発電装置であって、a)パイプ形状として、排気パイプが内部を貫通するように取り付けられたハウジングと、b)ハウジングの外周面に取り付けられ、ハウジングの長さ方向に沿って複数の列をなすように取り付けられ、温度差によって電気を生産する熱電モジュールと、c)内部に冷却水が流れ、熱電モジュールをハウジングに密着させるように取り付けられ、熱電モジュールの各列ごとに密着する複数の冷却水チューブと、d)ハウジングの縦方向に沿って一側に位置する冷却水チューブが開通するように冷却水チューブの両側末端の各々に取り付けられ、冷却水が出入りする第1冷却水筒と、e)ハウジングの縦方向に沿って他側に位置する冷却水チューブが開通するように冷却水チューブの両側末端の各々に取り付けられ、冷却水が出入りする第2冷却水筒と、を有して構成される。
【0010】
好ましい形態では、排気パイプは、ハウジングと排気パイプとの間に排気ガスが流入されるように取り付けられ、排気パイプは、長さ方向に沿って相対的に前方側に位置する第1排気パイプと、相対的に後方側に位置する第2排気パイプに分けられ、第1排気パイプの後方末端には、スプリングに連結され、排気ガスの圧力に応じて第1排気パイプの後方末端を遮蔽するバルブプレートが取り付けられ、第1排気パイプの後方末端が遮蔽された時に、排気ガスが流れる孔が第1排気パイプの外周面に形成される。
【0011】
また、排気パイプとハウジングとの間には、熱伝導部材が内蔵され、熱伝導部材は、排気ガスが通過可能であり、熱を吸収できる多孔性のメッシュ構造で形成される。
冷却水チューブの両末端には弾性を有する連結部材が取り付けられ、冷却水チューブは連結部材を介して第1冷却水筒または第2冷却水筒と連結される。
【0012】
さらに、冷却水チューブが熱電モジュールに密着するようにハウジングの周縁に沿って巻かれるクランプをさらに含んで構成される。
冷却水チューブは、金属材で製造される。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成された本発明は、冷却水チューブが第1冷却水筒および第2冷却水筒にモジュール化された形態で組み立てられることにより、組み立て性が向上し、故障時に部分的な部品交換が容易な効果がある。
本発明の構造において、冷却水チューブは、冷却水チューブ全体の熱交換ではなく、熱電モジュールと接触した部位にのみ熱交換が集中できるので、発電効率をより大きくすることができる。
【0014】
本発明では、適当量の排気ガスが流れれば発電が行われるが、(スプリングの弾性力を克服するほどの)多量の排気ガスが流れたときには、迅速に排気ガスを排出して、エンジンの出力低下を防止し、熱電モジュールの過熱を防止することができる。
冷却水チューブは、弾性を有する連結部材やラバーを介して第1冷却水筒または第2冷却水筒と連結されることにより、組立の誤差および部品間に発生した間隙を吸収できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による車両用熱電発電装置の斜視図である。
図2】(a)は図1において第1冷却水筒および第2冷却水筒の各々のカバー部を除去した様子を示す斜視図であり、(b)は図1においてハウジング内部に取り付けられた排気パイプの様子が表れるように透視して示す図である。
図3図1に示されたA−A方向に沿って切開した様子を示す断面図である。
図4図1に示されたB−B方向に沿って切開した様子を示す断面図である。
図5図1に示されたC−C方向に沿って切開した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明による車両用熱電発電装置を、好ましい実施形態を挙げて詳細に説明する。
図1図2を参照すると、車両用熱電発電装置のハウジング50は、パイプ形状とし、排気パイプ(60:60a、60b)が内部を貫通するように取り付けられる。排気パイプ60は、前方側(図面の左側)はエンジンと連結され、後方側(図面の右側)に排気ガスが排出されるように構成される。通常の場合(排気ガスが適正量である場合)、排気ガスは、ハウジング50と排気パイプ60との間に流れる。排気パイプ60は、長さ方向に沿って相対的に前方側に位置する第1排気パイプ60aと、相対的に後方側に位置する第2排気パイプ60bに分けられて構成される。
【0017】
第1排気パイプ60aの後方末端にはスプリング62が連結され、排気ガスの圧力に応じて第1排気パイプ60aの後方末端を遮蔽するバルブプレート61が取り付けられている。また、第1排気パイプ60aの外周面には孔63が形成されていて、第1排気パイプ60aの後方末端が遮蔽された時、排気ガスが迂回することができるバイパス(bypass)を形成する。
【0018】
ハウジング50の外周面には、温度差によって電気を生産する複数の熱電モジュール40が取り付けられる。熱電モジュール40は、2つの平面がある板状であって、ハウジング50の長さ方向に沿って複数の列をなすように取り付けられる。複数の熱電モジュール40がなす列は、ハウジング50の周縁に沿って並んで配置される。
【0019】
熱電モジュール40の平面のうちの1つの面はハウジング50の外周面に向けられ、他の面は冷却水チューブ70に向いて加圧されるように密着される。冷却水チューブ70は、長さ方向に沿って内部に冷却水が流れ、熱電モジュール40の各列ごとに密着するように複数で構成される。
【0020】
この実施形態では、冷却水チューブ70をハウジング50に固定させるように第1冷却水筒(10:10a、10b、10c、10d)と第2冷却水筒(20:20a、20b、20c、20d)が設けられ、第1冷却水筒10と第2冷却水筒20のそれぞれは、排気パイプ60を挟んで、ハウジング50の前方側と後方側に取り付けられるように互いに向き合う括弧状、すなわち、“(”形状と“)”形状を持つようにする。
【0021】
第1冷却水筒10と第2冷却水筒20それぞれは、連結部材30が嵌められるカバー部(10b、10d、20b、20d)と、カバー部に結合されて冷却水が流れることができる空間を作るバルク部(10a、10c、20a、20c)で構成される。
【0022】
図示したように、第1冷却水筒10は、ハウジング50の縦方向(長さ方向)に沿って一側に位置し、第2冷却水筒20は、ハウジング50の縦方向に沿って第1冷却水筒10と向き合う他側に位置し、第1冷却水筒10と第2冷却水筒20は、冷却水チューブ70の両側それぞれの末端で、冷却水流入管80と冷却水吐出管90が連結される。
【0023】
一方、図3図5に示すように、冷却水チューブ70の両末端には連結部材30が取り付けられ、冷却水チューブ70が連結部材30を介して第1冷却水筒10または第2冷却水筒20に連結される。
【0024】
連結部材30は、通常、組立時の誤差を吸収することができるように弾性を有する合成ゴム材または合成樹脂材で製造される。また、連結部材30を冷却水チューブ70と一体に成形するようにしてもよく、この場合、前述したような組立誤差を吸収できるように弾性を有するラバー21をカバー部(10b、10d、20b、20d)と連結部材30との間に設けるようにするのがよい。
【0025】
本発明では、排気ガスが流れる時に、排気ガスとの接触面積を大きくするように、図4に示すように排気パイプ60とハウジング50との間には熱伝導部材51が内蔵される。排気パイプ60とハウジング50との間は、排気ガスの流路でもあるので、熱伝導部材51は、排気ガスが通過可能で、熱を吸収できる多孔性構造を有するものを選ぶ。例えば、熱伝導性の良いスチールまたはアルミニウムのような金属材をメッシュ(mesh)形態で加工した後、ハウジング50内に挿入可能に成形してハウジング50内に挿入してもよい。
【0026】
冷却水チューブ70は、第1冷却水筒10と第2冷却水筒20によってハウジング50の両末端に固定され、中間位置(ハウジングの中間位置)で冷却水チューブ70と熱電モジュール40の間が離れたり密着力が低下したりすることがないように、1つ以上のクランプ(図示していない)で押さえるのがよい。すなわち、クランプは、冷却水チューブ70が熱電モジュール40に密着するように(冷却水チューブの外側からハウジングの周縁に沿って)巻くようにして設置する。
【0027】
本発明による冷却水チューブ70は、金属材で製造可能でもあるが、不要な部分(熱電モジュールと接触しない部分)まで熱が伝導することを防止するために相対的に熱伝導性の低い合成樹脂材で製造することが好ましい。
【0028】
上記のように構成された本発明の車両用熱電発電装置は、排気ガスの高熱と冷却水の低温との温度差を利用して発電することができ、さらに、バイパス(bypass)構造を有することにより、排気ガスが多いときには多くの排ガスがバイパスを通って流れて熱電モジュール40の過熱を防止し、排気ガスを迅速に排出してエンジンの出力低下を防止し、適正量の排気ガスが排出しているときにだけ発電が行われるようにしている。
【0029】
本発明は、第1冷却水筒10と第2冷却水筒20が分離した状態で冷却水チューブ70に連結されることにより、組み立てが容易であり、部品交換が容易な長所があり、(図1に示すように)冷却水の流入は第1冷却水筒10と第2冷却水筒20の下方で行われ、冷却水の排出は第1冷却水筒10と第2冷却水筒20の上方で行われるように構成されるので、冷却水の循環が効率的に行われる効果がある。
【0030】
上記した実施形態は、本発明の理解を助けるために提示したものであって、これにより本発明の範囲を限定するものではない。ここに開示した実施形態以外にも本発明の技術的思想に基づいた他の変形例が実施可能であるということは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0031】
10:第1冷却水筒
10a、10c:(第1冷却水筒の)バルク部
10b、10d:(第1冷却水筒の)カバー部
20:第2冷却水筒
20a、20c:(第2冷却水筒の)バルク部
20b、20d:(第2冷却水筒の)カバー部
21:ラバー
30:連結部材
40:熱電モジュール
50:ハウジング
51:熱伝導部材
60、60a、60b:排気パイプ
61:バルブプレート
70:冷却水チューブ
80:冷却水流入管
90:冷却水吐出管
図1
図2
図3
図4
図5