(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、防蟻剤は約5年しか効果を持続させることができず、5年を目途として防蟻剤の再処理を行わなければならないが、特許文献1の技術では、防蟻テープの防蟻効果がきれても、防蟻テープはコンクリート基礎に埋め込まれているため、コンクリート基礎を傷めることなく更新することができない。よって、特許文献1の技術では、防蟻剤の更新が困難である。また、温度変化によるコンクリートの収縮や地震などによって、コンクリート基礎と鞘管の外面との間に隙間が生じると、防蟻テープはその防蟻効果を適切に発揮できなくなるが、特許文献1の技術では、コンクリート基礎を形成した後に防蟻テープの状態を目視確認することができないため、防蟻テープが防蟻効果を持続できているかどうかに不安があった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、防蟻システムを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、確実な防蟻効果を持続させることができ、かつ将来的な更新も可能な、防蟻システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、建物のコンクリート基礎を貫通する鞘管内に内管を挿通させた二重配管が施工された配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、鞘管
と内管との間の空間の上方に配置され、当該空間を塞ぐ受け板、受け板の上方および受け板の外周縁から所定距離の範囲に所定高さを有するように集積される粒子状または小片状の白蟻侵入防止剤、および白蟻侵入防止剤の外周を規定する外周規定部を備
え、受け板の外径は鞘管の上部開口の外径より大きくかつ外周規定部の内径より小さい、防蟻システムである。
【0009】
第1の発明では、防蟻システム(10)は、二重配管(102)が施工されたコンクリート基礎(100)の配管貫通部分に施工されるものであり、受け板(12)を備えている。受け板(12)は、たとえばドーナツ板状に形成され、
鞘管と内管との間の空間を塞ぐように、当該空間の上に配置される。受け板の上方および周囲には、白蟻侵入防止剤(28)が集積される。白蟻侵入防止剤は、コレマナイトやガラスを粒子状または小片状にしたものであり、その粒子自体または小片自体に防蟻性能を有している。そして、白蟻が白蟻侵入防止剤を上下方向ないし水平方向に通過することを防止できるように、受け板の上方および受け板の外周縁から所定の水平距離の範囲に所定高さを有するように集積される。さらに、受け板よりも外側には、白蟻侵入防止剤の外周を規定する外周規定部(16)が設けられる。たとえば、外周規定部は、コンクリート基礎の水平面(100a)上に固定されて、集積させた白蟻侵入防止剤が崩れて移動したりすることを防止する。
そして、受け板の外径は鞘管の上部開口の外径より大きくかつ外周規定部の内径より小さくされる。
【0010】
第1の発明によれば、防蟻システムをコンクリート基礎の配管貫通部分に施工することにより、鞘管とコンクリート基礎との隙間や、鞘管と内管との隙間など二重配管の配管貫通部分に侵入した白蟻が屋内へ侵入することを防止できる。
【0011】
そして、白蟻侵入防止剤が崩れて移動したりすることを外周規定部によって防止しているので、確実な防蟻効果を持続させることが可能であり、また、もし集積させた白蟻侵入防止剤が崩れて移動した場合にも、白蟻侵入防止剤を交換しまたは再配置するだけの簡単な作業で、白蟻侵入防止剤の更新や補修を行うことができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、受け板は、コンクリート基礎の屋内側の水平面の上に配置される。
【0013】
第2の発明では、受け板(12)は、たとえば、コンクリート基礎(100)の水平面(100a)より上部に露出した内管(106)に外嵌されるとともに、コンクリート基礎の水平面上に配設される。こうすることにより、受け板の上方および周囲に集積させた白蟻侵入防止剤(28)がコンクリート基礎の水平面に露出するので、防蟻システム(10)を施工した後でも、白蟻侵入防止剤を簡単に目視確認できるようになる。
【0014】
第2の発明によれば、白蟻侵入防止剤の更新や補修をより簡単に行うことができるようになる。
【0015】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、鞘管の管端には、上端がコンクリート基礎の屋内側の水平面と面一になる継ぎ管が接続され、受け板は、継ぎ管の上端およびコンクリート基礎の水平面の上に配置される。
【0016】
第3の発明では、二重配管(102)の鞘管(104)の屋内側受口(112)には、継ぎ管(128)が接続され、継ぎ管の上端はコンクリート基礎(100)の水平面(100a)と面一になるようにされる。受け板(12)は、コンクリート基礎の水平面より上部に露出した内管(106)に外嵌され、コンクリート基礎の水平面および継ぎ管の上端の上に配設される。
【0017】
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明に従属し、外周規定部と着脱可能に設けられ、白蟻侵入防止剤の上方を覆う蓋部材をさらに備える。
【0018】
第4の発明では、受け板(12)の上方および周囲に集積した白蟻侵入防止剤(28)の上方が蓋部材(46)によって覆われている。蓋部材は、外周規定部(16)のたとえば上端付近に着脱可能に設けられ、白蟻侵入防止剤が外周規定部を越えてそれよりも外側に移動することを防止する。
【0019】
第4の発明によれば、集積した白蟻侵入防止剤を固化剤などを利用して固める作業を行う必要がなくなるので、施工性を向上させることができる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明に従属し、蓋部材は、中央部に内管を挿通させる開口が形成された蓋本体、および蓋本体の開口を規定する内縁から外縁まで延びて形成される切断部を含む。
【0021】
第5の発明では、蓋部材(46)は、たとえば中央部に開口(50)を有するドーナツ板状に形成される蓋本体(48)を含み、この蓋本体には、開口を規定する内縁から外縁にかけて延び、蓋本体を周方向に分断する切断部(54)が形成される。そして、蓋部材を設置するときには、切断部を通して内管(106)を開口に挿通させ、切断部を閉じることによって、蓋部材を内管に外嵌させる。
【0022】
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明に従属し、受け板と外周規定部とが一体的に形成される。
【0023】
第6の発明では、受け板(12)と外周規制部(16)とが一体的に形成され、それらが白蟻侵入防止剤集積ユニット(30)としてパッケージ化される。たとえば、受け板の外周縁には、垂直方向に立ち上がる立上り部(32)が形成され、立上り部の上端には、立上り部と外周規制部とを連結する連結部(34)が形成される。
【0024】
第6の発明によれば、白蟻侵入防止剤集積ユニットをコンクリート基礎に固定して、その内部に白蟻侵入防止剤を集積するだけで、防蟻システムを施工できるようになる。すなわち、受け板の外周縁と外周規制部との間の距離を施工現場で正確に計測する作業などを行う必要がなくなるので、施工性に優れる。
【0025】
第7の発明は、建物のコンクリート基礎を貫通する鞘管内に内管を挿通させた二重配管が施工された配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、コンクリート基礎の屋内側の水平面から鞘管の屋内側の管端まで上下に貫通する開口部、
鞘管の上部開口の外径より大きくかつコンクリート基礎の開口部の内径より小さい外径を有し、開口部内に配置され
て鞘管と内管との間の空間を塞ぐ受け板、および開口部内で受け板の上方に所定高さを有するように集積される粒子状または小片状の白蟻侵入防止剤を備え、白蟻侵入防止剤の外周が開口部の周囲のコンクリート基礎によって規定され、
鞘管の屋内側管端がコンクリート基礎の上面より低くされた、防蟻システムである。
【0026】
第7の発明では、防蟻システム(10)は、開口部(42)、受け板(12)、および白蟻侵入防止剤(28)を備えている。開口部は、たとえばコンクリート基礎(100)の水平面(100a)に形成される円柱形の開口であり、コンクリート基礎の水平面から鞘管(104)の屋内側の管端まで上下方向に貫通する。受け板は、
鞘管の上部開口の外径より大きくかつコンクリート基礎の開口部の内径より小さい外径を有し、開口部内で内管(106)に外嵌され、たとえば鞘管の屋内側受口(112)に嵌め込むように配置さ
れ、鞘管と内管との間の空間を塞ぐ。白蟻侵入防止剤は、開口部内で受け板の上方に集積され、その外周が開口部の周囲のコンクリート基礎によって規定される。白蟻侵入防止剤は、白蟻が白蟻侵入防止剤の内部ないし周縁を上下方向に通過することを防止できるように、受け板の上方に所定高さを有するように集積される。
鞘管の屋内側管端はコンクリート基礎の上面より低くされる。
【0027】
第7の発明によれば、防蟻システムをコンクリート基礎の配管貫通部分に施工することにより、鞘管とコンクリート基礎との隙間や、鞘管と内管との隙間など二重配管の配管貫通部分に侵入した白蟻が屋内へ侵入することを防止できる。
【0028】
そして、白蟻侵入防止剤が崩れて移動したりすることを開口部の周囲のコンクリート基礎によって防止しているので、確実な防蟻効果を持続させることが可能であり、また、もし集積させた白蟻侵入防止剤が崩れて移動した場合にも、白蟻侵入防止剤を交換しまたは再配置するだけの簡単な作業で、白蟻侵入防止剤の更新や補修を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、受け板の上方および周囲に白蟻侵入防止剤を集積させ、その外周を外周規制部やコンクリート基礎などで規定するようにしているので、確実な防蟻効果を長期間に亘って持続させることが可能である。
【0030】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照して、この発明の一実施例である防蟻システム10は、建物の床下などに施工されるものであり、ベタ基礎などのコンクリート基礎100に施工された二重配管102がコンクリート基礎100を貫通している配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止する。
【0033】
先ず、後述するこの発明の理解に必要な範囲で、二重配管102について簡単に説明する。
【0034】
図1および
図2を参照して、二重配管102は、鞘管104および内管106を含み、建物のコンクリート基礎100に鞘管104が埋め込まれ、その鞘管104内に挿通された内管106が屋内外の排水管どうしを接続する。ただし、以下に説明する二重配管102は、単なる一例であって、この発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0035】
図1および
図2に示すように、鞘管104は、ポリエチレンなどの合成樹脂からなり、それぞれ別体として成形された第1鞘管部108および第2鞘管部110を組み合わせることによって、略L字状に形成される。第1鞘管部108は、垂直またはほぼ垂直方向に延びて、その上端がコンクリート基礎100の屋内側で開口する。第1鞘管部108の上端は、拡径受口形状を有しており、その受口(屋内側受口)112に後述する継ぎ管128が接続される。また、第1鞘管部108の下端部には、水平方向に向けて短円筒状に突き出す接続部114が形成される。たとえば、接続部114の内面には、ねじ溝が形成されている。
【0036】
第2鞘管部110は、第1鞘管部108の開口部114から水平またはほぼ水平方向に延びる。たとえば、第2鞘管部110の一端の外面には、ねじ山が形成されており、このねじ山が接続部114のねじ溝に螺合される。第2鞘管部110の他端は、拡径受口形状を有しており、その受口(屋外側受口)116がコンクリート基礎100の屋外側で開口する。
【0037】
一方、内管106は、塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、それぞれ別体として成形された屈曲内管部118、第1内管部120および第2内管部122を組み合わせることによって、略L字状に形成される。屈曲内管部118は、たとえば90°エルボであり、第1鞘管部108の内部に配置される。屈曲内管部118の一端には、垂直上方向に開口する第1受口124が形成され、その他端には、水平方向に開口する第2受口126が形成される。
【0038】
さらに、第1鞘管部108内には、垂直上方向に延びる第1内管部120が配置される。第1内管部120は、塩化ビニル管などであり、その一端は、屈曲内管部118の第1受口124に挿入され、たとえば接着剤等で接着接合される。第1内管部120の他端は、第1鞘管部108から屋内に向けて延び、継手や合流ますなどを介して屋内排水管(図示せず)に接続される。
【0039】
また、第2鞘管部110内には、水平方向に延びる第2内管部122が配置される。第2内管部122は、塩化ビニル管などであり、その一端は、屈曲内管部118の第2受口126に挿入され、たとえば水密状態でゴム輪接合される。第2内管部122の他端は、第2鞘管部110から屋外に向けて延び、継手などを介して屋外排水管(図示せず)に接続される。
【0040】
このような二重配管102は、建物のコンクリート基礎100への施工時には、コンクリート基礎100を作るための基礎型枠(図示せず)内に配置されて、コンクリート基礎100に埋め込まれる。
【0041】
具体的には、先ず、鞘管104内に、内管106を挿通させる。ただし、コンクリート基礎100を打設した後で鞘管104内に内管106を挿通させるようにしてもよい。それから、鞘管104の屋内側受口112がコンクリート基礎100の屋内側の水平面(上面)100aのやや下方で開口し、かつ鞘管104の屋外側受口116が屋外に露出して開口するように、鞘管104を基礎型枠内の配筋に支持具などで吊り下げることによって固定する。
【0042】
ただし、このコンクリート基礎100の水平面100aとは、あくまでコンクリート基礎100において屋内側で水平方向に拡がる面を意味し、「水平」とは、厳密に水平と一致するか否かを定義するものではない。
【0043】
そして、鞘管104の屋内側受口112に継ぎ管128を挿入して、基礎型枠内にコンクリートを打設し、コンクリート基礎100を形成する。なお、継ぎ管128は、塩化ビニルなどの合成樹脂で形成された直管であり、その外径は鞘管104の屋内側受口112の径と等しくなるように設定される。続いて、コンクリートが乾いたら、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した継ぎ管128を必要に応じて切断して、作業を終了する。
【0044】
以上で、建物のコンクリート基礎100に施工される二重配管102について説明した。
【0045】
以下に、このような二重配管102を前提にして、必要に応じてそれらを援用しながら、本発明の実施例または実施形態について説明する。
【0046】
図3および
図4に示すように、防蟻システム10は、上述したような二重配管102が施工されたコンクリート基礎100の配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止するものであり、内管106(ここでは、第1内管部120)の周囲に設けられる受け板12を備えている。
【0047】
受け板12は、ポリエチレンなどの合成樹脂からなり、中央部に開口14を有するドーナツ板状に形成され、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106に外嵌されるとともに、コンクリート基礎100の水平面100aおよび継ぎ管128の上端の上に配設される。すなわち、受け板12の開口14には内管106が挿通され、受け板12の内径(つまり、開口14の径)は、内管106の外径と略等しくなるように設定される。具体的には、受け板12の内径は、受け板12の内周縁と内管106の外面との隙間が多くとも1mm以下になるようにされ、たとえば89.5mmである。また、受け板12の外径は、鞘管104の屋内側受口112の径よりも大きくなるように設定され、たとえば246mmである。
【0048】
受け板12よりも外側には、外周規定部16が設けられる。外周規定部16は、後述する白蟻侵入防止剤28の外周を規定するものであり、ポリエチレンなどの合成樹脂によって略短円筒状に形成され、コンクリート基礎100の水平面の上に固定される。
図5に示すように、外周規定部16は、短円筒部18を有している。短円筒部18は、上下方向に延びる短円筒状に形成され、その下端には、短円筒部18の外面からその全周に亘って外側に突き出すドーナツ板状の支持部20が形成される。支持部20は、周方向に間隔を隔てて並ぶ複数、たとえばこの実施例では4つの突部22を含み、この突部22には、厚み方向に貫通するボルト孔24が形成される。そして、
図3および
図4に示すように、突部22のボルト孔24に挿通したボルト26をコンクリート基礎100の水平面100aに打ち込むことにより、外周規定部16をコンクリート基礎100の水平面100a上に固定する。
【0049】
また、受け板12の上方および周囲には、白蟻侵入防止剤28が集積される。白蟻侵入防止剤28は、コレマナイトやガラスを粒子状または小片状にしたものであり、その粒子自体または小片自体に防蟻性能を有している。すなわち、白蟻侵入防止剤28は、白蟻の侵入を物理的に防ぐものであり、集積した白蟻侵入防止剤28の内部や周縁に沿った経路を白蟻が通過することを防止する。このため、防蟻薬剤などを利用して白蟻の侵入を防ぐ場合と比較して、定期的な再処理が不要であり、また、環境や人への負荷も低減できる。たとえば、この実施例では、白蟻侵入防止剤28として尖角形状のガラス片を使用しており、具体的には、フクビ化学工業株式会社製のノンケミアリダンクリスタル(商品名)などを使用し得る。ただし、白蟻侵入防止剤28として、防蟻薬液含浸無機質粒子なども使用可能である。
【0050】
上述したように、白蟻侵入防止剤28の外周は外周規定部16によって規定される。すなわち、白蟻侵入防止剤28は、外周規定部16の短円筒部18の内面と内管106の外面とコンクリート基礎100の水平面100aとによって囲まれた上側開口の容器状の空間に集積(充填)され、全体としてリング形状を有するようにされる。そして、
図3および
図6に示すように、白蟻侵入防止剤28を集積可能な最大高さが、短円筒部18の上下方向の長さ(高さ)に応じて規定され、白蟻侵入防止剤28を集積可能な最大範囲が、短円筒部18の内径に応じて規定されることとなる。
【0051】
ここで、本願発明者等による実験によると、本実施例の白蟻侵入防止剤28を集積させたときに、白蟻は、その集積した白蟻侵入防止剤28の内部や、白蟻侵入防止剤28の周縁に沿った経路を10mm以上進むことができないことが確認された。
【0052】
すなわち、白蟻が白蟻侵入防止剤28の内部や周縁に沿った経路を上下方向に通過することを防止するためには、白蟻侵入防止剤28が少なくとも10mm以上の高さを有している必要があり、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上であることが望ましい。そこで、この実施例では、外周規定部16の短円筒部18の高さd1を30mmに設定し、その短円筒部18の高さd1に合わせて、白蟻侵入防止剤28を30mmの高さまで集積するようにしている。
【0053】
また、同じように、白蟻が白蟻侵入防止剤28の内部や周縁に沿った経路を水平(横)方向に通過することを防止するためには、白蟻侵入防止剤28が水平方向に10mm以上の長さ(水平距離)を有している必要があり、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上であることが望ましい。そこで、この実施例では、外周規定部16の短円筒部18の内径を317mmに設定し、その短円筒部18の内面と受け板12の外周縁との水平距離d2が約36mmになるようにしている(∵(317−246)÷2=35.5mm)。そして、こうすることにより、受け板12の外周縁から水平距離が30mmの範囲に白蟻侵入防止剤28を集積するようにしている。
【0054】
図1を参照して、このような防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工するためには、先ず、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した継ぎ管128を切断し、継ぎ管128の上端がコンクリート基礎100の水平面100aと面一になるようにする。
【0055】
それから、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106(ここでは、第1内管部120)に受け板12を外嵌させて、受け板12をコンクリート基礎100の水平面100aおよび継ぎ管128の上端の上に配置する。
【0056】
そして、受け板12の外周から所定の距離を確保した位置に外周規定部16を配置し、その外周規定部16をボルト26によってコンクリート基礎100の水平面100a上に固定する。そして、短円筒部18の内面と内管106の外面とコンクリート基礎100の水平面とによって囲まれた上側開口の容器状の空間に白蟻侵入防止剤28を全体としてリング形状を有するように集積し、その集積した白蟻侵入防止剤28が外周規定部16を越えてそれよりも外側に移動(散乱)することがないように、白蟻侵入防止剤28の表面に専用の固化剤を吹き付けて固める。たとえば、固化剤としては、特殊樹脂エマルジョン系等の接着剤を使用し得る。これにより、コンクリート基礎100の配管貫通部分への防蟻システム10の施工が完了する。
【0057】
このようにして防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工することにより、
図7(a)に示すように、白蟻が屋外から鞘管104の外側(鞘管104とコンクリート基礎100との隙間)を通って配管貫通部分へ侵入したときには、鞘管104および継ぎ管128の外面上を上って受け板12とコンクリート基礎100の水平面100aとの間に到達した白蟻が、受け板12の外周縁から上方に向けて白蟻侵入防止剤28の内部を進もうとしても、白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の高さに白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の内部を上方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0058】
また、
図7(b)に示すように、同じように受け板12とコンクリート基礎100の水平面100aとの間に到達した白蟻が、受け板12の外周縁から外方に向けて白蟻侵入防止剤28の底部に沿った経路(つまり、白蟻侵入防止剤28の底部とコンクリート基礎100の水平面100aとの隙間)を進もうとしても、受け板12の外周縁から白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の距離の範囲に白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の底部に沿った経路を外方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0059】
さらに、
図7(c)に示すように、白蟻が屋外から内管106の外側(鞘管104と内管106との隙間)を通って配管貫通部分へ侵入したときにも、内管106の外面上を上って内管106と受け板12の内周縁との間に到達した白蟻が、そこから白蟻侵入防止剤28の内周縁に沿った経路(つまり、白蟻侵入防止剤28の内周縁と内管106の外面との隙間)を上方に向けて進もうとしても、白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の高さに白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の内周縁に沿った経路を上方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0060】
以上のように、防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工することにより、鞘管104とコンクリート基礎100との隙間や、鞘管104と内管106との隙間など二重配管102の配管貫通部分に侵入した白蟻が屋内へ侵入することを防止できる。
【0061】
ここで、白蟻侵入防止剤28は白蟻の侵入を物理的に防ぐので、上述したように、定期的な再処理は不要であるが、集積させた白蟻侵入防止剤28が崩れて移動したりすると、白蟻侵入防止剤28はその防蟻性能を発揮することができない。しかしながら、この防蟻システム10では、集積させた白蟻侵入防止剤28の外周を外周規定部16によって規定するようにしているので、集積させた白蟻侵入防止剤28の形状を固定的に保持して、白蟻侵入防止剤28が崩れて移動することを防止できる。したがって、この実施例によれば、確実な防蟻効果を持続させることが可能である。
【0062】
しかも、この防蟻システム10では、白蟻侵入防止剤28がコンクリート基礎100の水平面100aに露出しているので、地震や地盤沈下などが生じた場合にも、集積させた白蟻侵入防止剤28が崩れて移動していないかを簡単に目視確認することができる。そして、もし白蟻侵入防止剤28が崩れて移動していた場合にも、白蟻侵入防止剤28を交換しまたは再配置するだけの簡単な作業で、白蟻侵入防止剤28の更新(または、補修)を行うことができる。
【0063】
すなわち、この実施例によれば、防蟻システム10を施工した後でも、白蟻侵入防止剤28を目視確認することが可能であるので、白蟻侵入防止剤28の更新を簡単に行うことができる。
【0064】
なお、この実施例では、鞘管104の屋内側受口112に継ぎ管128が接続され、その継ぎ管128の上端およびコンクリート基礎100の水平面100aの上に受け板12が配置されたが、これに限定される必要はなく、受け板12を鞘管104の管端付近に設けているのであればよい。
図8に示すように、鞘管104の屋内側受口112がコンクリート基礎100の水平面100aで露出して開口するように鞘管104を配置し、その管端(つまり、屋内側受口112の端面)およびコンクリート基礎100の水平面100aの上に受け板12を配置するようにしてもよい。この場合には、鞘管104を配置した後、鞘管104のコンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した屋内側受口112を必要に応じて切断して、鞘管104の管端がコンクリート基礎100の水平面100aと面一になるようにする。
【0065】
また、この実施例では、受け板12と外周規制部16とがそれぞれ別々に設けられたが、これに限定される必要はない。
【0066】
たとえば、
図9に示すこの発明の他の一実施例である防蟻システム10は、コンクリート基礎100の水平面100a上に配置される白蟻侵入防止剤集積ユニット30を備えている。以下には、
図9に示す防蟻システム10について具体的に説明するが、
図1に示す防蟻システム10と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0067】
図9および
図10に示すように、白蟻侵入防止剤集積ユニット30は、ポリエチレンなどの合成樹脂からなり、受け板12および外周規制部16を含む。受け板12は、中央部に開口14を有するドーナツ板状に形成され、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106に外嵌されるとともに、コンクリート基礎100の水平面100aおよび継ぎ管128の上端の上に配設される。そして、受け板12の外周縁には、周方向の全長に亘って垂直方向に立ち上がる立上り部32が形成される。立上り部32の上端には、周方向に間隔を隔てて複数、たとえば4つの連結部34が形成される。連結部34は、矩形の板状に形成され、立上り部32の上端から外側かつ上方に延びて、立上り部32と外周規制部16とを連結する。
【0068】
外周規制部16は、短円筒部18および突部36を有している。短円筒部18は、上下方向に延びる短円筒状に形成され、その下端には、周方向に間隔を隔てて並ぶ複数、たとえば4つの突部36が形成される。突部36は、短円筒部18の外面から外側に突き出し、突部36には、ボルト40を挿通するためのボルト孔38が形成される。そして、この突部36のボルト孔38に挿通したボルト40をコンクリート基礎100の水平面100aに打ち込むことにより、白蟻侵入防止剤集積ユニット30をコンクリート基礎100の水平面100a上に固定する。
【0069】
さらに、受け板12の上方および周囲には、白蟻侵入防止剤28が集積される。白蟻侵入防止剤28は、たとえば尖角形状のガラス片であり、外周規定部16の短円筒部18の内面と内管106の外面とコンクリート基礎100の水平面100aとによって囲まれた上側開口の容器状の空間に全体としてリング形状を有するように集積(充填)される。
【0070】
白蟻侵入防止剤28の外周は外周規定部16によって規定され、
図1の実施例と同様に、白蟻侵入防止剤28を集積可能な最大高さが、短円筒部18の高さに応じて規定され、白蟻侵入防止剤28を集積可能な最大範囲が、短円筒部18の内径に応じて規定される。
【0071】
すなわち、
図9および
図11に示すように、短円筒部18の上下方向の長さ(高さ)d3は、白蟻が白蟻侵入防止剤28の内部や周縁に沿った経路を上下方向に通過することを防止できるように、たとえば30mmに設定され、その短円筒部18の高さd3に合わせて、白蟻侵入防止剤28を30mmの高さまで集積するようにしている。
【0072】
また、白蟻が白蟻侵入防止剤28の内部や周縁に沿った経路を水平方向に通過することを防止できるように、立上り部32と短円筒部18との間の距離(つまり、受け板12の外周縁と外周規制部16との間の距離)d4は、たとえば30mmに設定され、こうすることにより、受け板12の外周縁から水平距離が30mmの範囲に白蟻侵入防止剤28を集積するようにしている。
【0073】
図9を参照して、このような防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工するためには、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106に受け板12を外嵌させて、そのまま白蟻侵入防止剤集積ユニット30をコンクリート基礎100の水平面100aおよび継ぎ管128の上端の上に配置する。
【0074】
それから、白蟻侵入防止剤集積ユニット30を、突部36のボルト孔38に挿通したボルト40によってコンクリート基礎100の水平面100a上に固定する。そして、短円筒部18と内管106とコンクリート基礎100の水平面とに囲まれたリング状の空間の全体に白蟻侵入防止剤28を集積し、その集積した白蟻侵入防止剤28の表面に専用の固化剤を吹き付けて固める。これにより、コンクリート基礎100の配管貫通部分への防蟻システム10の施工が完了する。
【0075】
このようにして防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工することにより、
図12(a)に示すように、白蟻が屋外から鞘管104の外側を通って配管貫通部分へ侵入したときには、受け板12とコンクリート基礎100の水平面100aとの間に到達した白蟻が、受け板12の外周縁から上方に向けて白蟻侵入防止剤28の内部を進もうとしても、白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の高さに白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の内部を上方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0076】
また、
図12(b)に示すように、同じように受け板12とコンクリート基礎100の水平面100aとの間に到達した白蟻が、受け板12の外周縁から外方に向けて白蟻侵入防止剤28の底部に沿った経路を進もうとしても、受け板12の外周縁から白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の距離の範囲に白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の底部に沿った経路を外方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0077】
さらに、
図12(c)に示すように、白蟻が屋外から内管106の外側を通って配管貫通部分へ侵入したときにも、内管106と受け板12の内周縁との間に到達した白蟻が、そこから白蟻侵入防止剤28の内周縁に沿った経路を上方に向けて進もうとしても、白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の高さに白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の内周縁に沿った経路を上方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0078】
このように、
図9の実施例においても、鞘管104とコンクリート基礎100との隙間や、鞘管104と内管104との隙間など二重配管102の配管貫通部分に侵入した白蟻が屋内へ侵入することを防止できる。
【0079】
また、
図9の実施例においても、外周規制部16によって白蟻侵入防止剤28が崩れて移動したりすることを防止しているので、確実な防蟻効果を持続させることが可能であり、また、防蟻システム10を施工した後でも、白蟻侵入防止剤28を目視確認することができるので、白蟻侵入防止剤28の更新を簡単に行うことができる。
【0080】
さらに、
図9の実施例では、受け板12と外周規制部16とを一体的に形成して白蟻侵入防止剤集積ユニット30としてパッケージ化するようにしているので、白蟻侵入防止剤集積ユニット30をコンクリート基礎100の水平面100aの所定位置に固定して、そこに白蟻侵入防止剤28を集積するだけで、防蟻システム10を施工することができる。すなわち、
図1の実施例のように、白蟻侵入防止剤28を受け板12の外周縁から所定の距離の範囲に集積できるように受け板12の外周縁と外周規制部16との間の距離を施工現場で正確に計測する作業などを行う手間がなくなるので、施工性が向上される。
【0081】
また、
図13に示すこの発明のさらに他の一実施例である防蟻システム10は、
図1の防蟻システム10とは白蟻侵入防止剤28を集積する場所が異なる。以下には、
図13に示す防蟻システム10について具体的に説明するが、
図1に示す防蟻システム10と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0082】
図13に示すように、防蟻システム10は、開口部42、受け板12、および白蟻侵入防止剤28を備えている。開口部42は、
図14および
図15に示すように、コンクリート基礎100の水平面100aに形成される円柱形の開口であり、鞘管104の屋内側の管端コンクリート基礎100の水平面100aから、つまり屋内側受口112まで上下方向に貫通する。
【0083】
開口部42内では、内管106の周囲に受け板12が設けられる。受け板12は、中央部に開口14を有するドーナツ板状に形成され、開口部42の内部で内管106に外嵌されるとともに、鞘管104の屋内側受口112に嵌め込むように配設される。受け板12の内径は、内管106の外径と略等しくなるように設定され、その外径は、鞘管104の屋内側受口112の径と等しいかそれよりもやや小さくなるように設定される。
【0084】
さらに、開口部42内では、受け板12の上方に白蟻侵入防止剤28が集積(充填)される。白蟻侵入防止剤28は、たとえば尖角形状のガラス片であり、その上端がコンクリート基礎100の水平面100aと面一になるように開口部42内に集積される。
【0085】
開口部42の周囲(周縁)はコンクリート基礎100によって囲まれているため、白蟻侵入防止剤28の外周はコンクリート基礎100によって規定され、白蟻侵入防止剤28を集積可能な最大高さは、コンクリート基礎100の水平面100aと受け板12の上面との高低差(つまり、開口部42の上下方向の長さ)に応じて規定されることとなる。
【0086】
すなわち、
図14および
図15に示すように、コンクリート基礎100の水平面100aと受け板12の上面との高低差d5は、白蟻が白蟻侵入防止剤28の内部や周縁に沿った経路を上下方向に通過することを防止できるように、たとえば40mmに設定され、こうすることにより、白蟻侵入防止剤28を40mmの高さまで集積するようにしている。また、それよりも外側では、鞘管104の屋内側受口112が受け板12よりも上方まで立ち上がっているので、コンクリート基礎100の水平面100aと鞘管104の屋内側受口112の端面(つまり、鞘管104の管端)からコンクリート基礎100の水平面100aまでの高さd6が、たとえば30mmになるようにしている。
【0087】
図14および
図16を参照して、このような防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工するためには、先ず、二重配管102の施工時に、
図16(a)に示すように、鞘管104の屋内側受口112にボイド管130を挿入しておいて、基礎型枠内にコンクリートを打設し、コンクリート基礎100を形成する。なお、ボイド管130は、紙で形成された直管であり、その外径は鞘管104の屋内側受口112の径と等しくなるように設定される。そして、コンクリートが乾いたら、ボイド管130を解体してコンクリート基礎100から取り除く。すると、
図16(b)に示すように、コンクリート基礎100に開口部42が形成される。
【0088】
次に、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106に受け板12を外嵌させて、その受け板12を鞘管104の屋内側受口112内に(つまり、屋内側受口112のストッパに係止されるように)配設する。そして、開口部42内で受け板12の上方に白蟻侵入防止剤28を集積(充填)し、その集積した白蟻侵入防止剤28の表面に専用の固化剤を吹き付けて固める。これにより、コンクリート基礎100の配管貫通部分への防蟻システム10の施工が完了する。
【0089】
このようにして防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工することにより、
図17(a)に示すように、屋外から鞘管104の外側を通って配管貫通部分へ侵入した白蟻が、鞘管104の管端(屋内側受口112の端面)から白蟻侵入防止剤28の外周縁に沿った経路(つまり、白蟻侵入防止剤28の外周縁とコンクリート基礎100との隙間)を上方に向けて進もうとしても、白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の高さに白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の外周縁に沿った経路を上方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0090】
また、
図17(b)に示すように、屋外から内管106の外側を通って配管貫通部分へ侵入し、受け板12の内周縁と内管106との間に到達した白蟻が、そこから白蟻侵入防止剤28の内周縁に沿った経路を上方に向けて進もうとしても、白蟻侵入防止剤28が防蟻性能を発揮できる所定の高さに白蟻侵入防止剤28を集積していることにより、白蟻は白蟻侵入防止剤28の内周縁に沿った経路を上方に向けて通過することができないので、屋内への白蟻の侵入を防止できる。
【0091】
このように、
図13の実施例においても、鞘管104とコンクリート基礎100との隙間や、鞘管104と内管106との隙間など二重配管102の配管貫通部分に侵入した白蟻が屋内へ侵入することを防止できる。
【0092】
また、開口部42の周囲のコンクリート基礎100によって白蟻侵入防止剤28が崩れて移動したりすることを防止しているので、確実な防蟻効果を持続させることが可能であり、また、防蟻システム10を施工した後でも、白蟻侵入防止剤28を目視確認することができるので、白蟻侵入防止剤28の更新を簡単に行うことができる。
【0093】
さらに、
図13の実施例では、コンクリート基礎100に設けた開口部42内に白蟻侵入防止剤28を集積するだけで、防蟻システム10を施工することができる。すなわち、
図1の実施例のように、白蟻侵入防止剤28を受け板12の外周縁から所定の距離の範囲に集積できるように受け板12の外周縁と外周規制部16との間の距離を施工現場で正確に計測する作業などを行う手間がなくなるので、施工性が向上される。
【0094】
なお、上述の各実施例ではいずれも、集積した白蟻侵入防止剤28が外周規定部16を越えてそれよりも外側に移動(散乱)することがないように、白蟻侵入防止剤28を集積した後でその表面に専用の固化剤を吹き付けて固めるようにしたが、これに限定される必要はなく、予め白蟻侵入防止剤28と専用の固化剤とを混合しておいたものを集積するようにしてもよい。
【0095】
さらにまた、必ずしも固化剤を利用する必要はなく、たとえば、
図18に示すこの発明のさらに他の一実施例である防蟻システム10では、集積した白蟻侵入防止剤28の上方に蓋部材46を設置し、その蓋部材46によって白蟻侵入防止剤28の移動を防止するようにしている。以下には、
図18に示す防蟻システム10について具体的に説明するが、
図1に示す防蟻システム10と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0096】
図18に示すように、防蟻システム10では、受け板12は、中央部に開口14を有するドーナツ板状に形成され、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106に外嵌されるとともに、コンクリート基礎100の水平面100aおよび継ぎ管128の上端の上に配設される。
【0097】
また、受け板12よりも外側には、コンクリート基礎100の水平面の上に外周規定部16が設けられる。外周規定部16の短円筒部18の上端付近には、
図19(a)および(b)に示すように、短円筒部18を厚み方向に貫通する複数(この実施例では3つ)の切り込み44が形成されている。切り込み44は、周方向に一定間隔で並んで形成され、この切り込み44に後述する蓋部材46の爪52が嵌め込まれる。
【0098】
さらに、
図18に示すように、受け板12の上方および周囲には、白蟻侵入防止剤28が集積される。白蟻侵入防止剤28は、外周規定部16の短円筒部18の内面と内管106の外面とコンクリート基礎100の水平面100aとによって囲まれた上側開口の容器状の空間に全体としてリング形状を有するように集積される。そして、白蟻侵入防止剤28が外周規定部16を越えてそれよりも外側に移動しないように、白蟻侵入防止剤28の上方が蓋部材46によって覆われている。
【0099】
蓋部材46は、
図20に示すように、透明塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、中央部に開口50を有するドーナツ板状に形成される蓋本体48を含み、内管106に外嵌されるとともに、外周規定部16の短円筒部18の上端付近に着脱可能に設置される。すなわち、蓋本体48の開口50には内管106が挿通され、蓋本体48の内径(つまり、開口50の径)は、内管106の外径と略等しく設定される。具体的には、蓋本体48の内径は、蓋本体48の内周縁と内管106の外面との隙間が5mm程度になるようにされ、たとえば100mmである。また、蓋本体48の外径は、外周規定部16の内径よりも小さくなるように設定され、たとえば313mmである。
【0100】
蓋本体48の外周縁には、上述した短円筒部18の切り込み44に対応する位置に、複数(この実施例では3つ)の爪52が形成される。爪52は、蓋本体48の周方向に一定間隔で並んで形成され、蓋本体48の外周縁から径方向の外側に延出し、蓋部材46を設置する時に上述した外周規定部16の切り込み44に嵌め込まれる。
【0101】
さらに、蓋本体48には、開口50を規定する内縁から外縁にかけて延び、蓋本体48を周方向に分断する切断部(スリット)54が形成される。切断部54は、複数の爪52の中の1つの爪52を2つの爪分割体52a,52bに分断するように形成され、この切断部54を閉じた時に2つの爪分割体52a,52bが接合して爪52を形成する。
【0102】
図18−20を参照して、このような防蟻システム10を施工するためには、コンクリート基礎100の水平面100aより上部に露出した内管106に受け板12を外嵌させて、受け板12をコンクリート基礎100の水平面100aおよび継ぎ管128の上端の上に配置する。
【0103】
次に、受け板12の外周から所定の距離を確保した位置に外周規定部16を配置し、その外周規定部16をコンクリート基礎100の水平面100a上に固定する。そして、短円筒部18の内面と内管106の外面とコンクリート基礎100の水平面とによって囲まれた上側開口の容器状の空間に白蟻侵入防止剤28を集積し、その集積した白蟻侵入防止剤28を上方から覆うように蓋部材46を設置する。
【0104】
具体的には、蓋部材46を設置するときに、内管106(第1内管部120の他端)をすでに屋内排水管(つまり、継手や合流ますなど)に接続している場合には、先ず、蓋本体48を少し弾性変形させて切断部54を開き、切断部54を通して内管106を開口50に収容し、切断部54を閉じることによって蓋部材46を内管106に外嵌させる。それから、蓋部材46の各爪52を外周規定部16の短円筒部18の各切り込み44に嵌め込むことによって、蓋部材46を外周規定部16に固定的に設置する。ただし、内管106をまだ屋内排水管に接続していない場合には、蓋部材46の蓋本体48の開口50に内管106を挿通させることによって蓋部材46を内管106に外嵌させるようにするとよい。
【0105】
このようにして防蟻システム10をコンクリート基礎100の配管貫通部分に施工することにより、
図1の実施例と同様に、鞘管104とコンクリート基礎100との隙間や、鞘管104と内管104との隙間など二重配管102の配管貫通部分に侵入した白蟻が屋内へ侵入することを防止できる。
【0106】
さらに、この実施例では、蓋部材46によって白蟻侵入防止剤28が外周規定部16を越えてそれよりも外側に移動することを防止するようにしている。このため、集積した白蟻侵入防止剤28を固める専用の固化剤を吹き付ける作業を行う必要がなくなり、施工性を向上させることができる。しかも、固化剤の効果の継続時間に依存せずに白蟻侵入防止剤28の移動を防止できるので、システム10のより長寿命化を実現することができる。
【0107】
さらにまた、この実施例では、蓋部材46が透明性を有するようにしているので、防蟻システム10を施工した後でも、白蟻侵入防止剤28を目視確認することが可能である、したがって、白蟻侵入防止剤28の更新を簡単に行うことができる。ただし、必ずしも蓋部材46を透明性を有する合成樹脂によって形成する必要はない。
【0108】
なお、この実施例では、
図1の実施例のシステム10において固化剤を利用する代わりに、集積した白蟻侵入防止剤28の上方に蓋部材46を設置したが、
図9の実施例のシステム10や
図13の実施例のシステム10においても固化剤を利用する代わりに蓋部材を適用するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0109】
たとえば、
図13の実施例のシステム10に蓋部材46を適用する場合には、外周規定部16の短円筒部18の切り込み44や蓋部材46の爪52は不要であり、ドーナツ板状に形成した蓋部材46をコンクリート基礎100の水平面100a上に接着テープなどによって着脱可能に固定するとよい。
【0110】
また、この実施例では、蓋本体48に1つの切断部54が形成され、蓋本体48を少し弾性変形させて切断部54を開き、切断部54を通して内管106を開口50に収容するようにしたが、これに限定される必要はない。
【0111】
たとえば、
図21に示すように、蓋本体48に2つの切断部54を形成して、蓋本体48を第1蓋本体48aと第2蓋本体48bとを組み合わせて構成するようにしてもよい。すなわち、蓋本体48には、開口50を規定する内縁から外縁にかけて延びる2つの切断部54が形成され、この2つの切断部54によって蓋本体48が略半円板状の第1蓋本体48aと第2蓋本体48bとに分割されている。そして、第1蓋本体48aと第2蓋本体48bとを2つの切断部54が閉じるように組み合わせた時に、蓋本体48の中央部に開口50が構成されることとなる。蓋本体48の外周縁には、たとえば4つの爪52が周方向に並んで形成されており、切断部54は、複数の爪52の中の2つの爪52を2つの爪分割体52a,52bに分断するように形成され、この切断部54を閉じた時に2つの爪分割体52a,52bが接合して爪52を形成する。こうすることにより、各蓋本体48aをそれ単体でも外周規定部16の短円筒部18に固定できるようになる。ただし、2つの爪分割体52a,52bが接合して爪52を形成するようにせずに、第1蓋本体48aと第2蓋本体48bとを接着テープなどによって接合するようにしてもよい。
【0112】
また、
図22に示すように、2つの爪分割体52a,52bの両隣りに補助爪56をそれぞれ形成し、この補助爪56を爪分割体52a,52bとともに外周規定部16の短円筒部18の各切り込み44に嵌め込むようにしてもよい。この場合には、蓋部材46をより安定的に外周規定部16に設置することが可能になる。
【0113】
さらにまた、
図23に示すように、蓋部材46の蓋本体48の開口50の周囲に易切断部58を同心円状に形成するようにしてもよい。たとえば、易切断部58は、所定間隔で薄肉部やミシン目状の切れ目が形成されたものであり、この易切断部58に沿って作業者は手で簡単に蓋本体48を切断することが可能である。この場合には、内管の径寸法に合わせて蓋本体48の内周側を易切断部58に沿って切断する(取り外す)ことによって蓋本体48の開口50の径寸法を変えることができるようになるので、サイズの異なる複数の内管に対して共通する蓋部材46を設置することが可能になり、製品の種類および在庫量の削減を図ることができる。なお、図示は省略するが、易切断部58は受け板12にも形成することが可能である。
【0114】
また、蓋部材の素材や形状は上述したものに限定される必要はなく、ドーナツ状の板やシートであればよい。すなわち、集積した白蟻侵入防止剤28の上方を蓋部材によって覆い、その蓋部材によって白蟻侵入防止剤28が外周規定部16を越えてそれよりも外側に移動することを防止できるのであれば、蓋部材の素材や形状は適宜変更可能である。
【0115】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、白蟻侵入防止剤28として尖角形状のガラス片を使用し、白蟻侵入防止剤28の内部や周縁を白蟻が通過することを防止するために、白蟻侵入防止剤28を少なくとも10mm以上の高さおよび水平距離で集積するようにした。しかしながら、これは単なる一例であって、白蟻侵入防止剤を集積させる高さおよび水平距離などの数値は、白蟻侵入防止剤の種類に応じて適宜設定すればよい。
【0116】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、コンクリート基礎100の屋内側の上面(水平方向に拡がる面)100aのやや下方で開口する鞘管104の管端付近に防蟻システム10を施工したが、これに限定される必要はなく、コンクリート基礎100の屋内側の側面(垂直方向に拡がる面)に配管されている鞘管の管端付近にも防蟻システム10を施工することが可能である。また、同様にして、コンクリート基礎100の屋外側の水平面や側面に配管されている鞘管の管端付近にも防蟻システム10を施工することが可能である。
【0117】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、垂直方向に延びる第1鞘管部108と水平方向に延びる第2鞘管部110とを略L字状に組み合わせた鞘管104を建物のコンクリート基礎100に埋め込み、その鞘管104内に、屈曲内管部118、第1内管部120および第2内管部122を略L字状に組み合わせた内管106を挿通させたが、上述したとおり、これに限定される必要はなく、二重配管102の構造は適宜変更可能である。たとえば、コンクリート基礎100内を鞘管が上方にやや傾斜して立ち上がるようにしてもよいし、鞘管を曲管状に形成してもよいし、内管をコルゲート管などの可撓管によって形成してもよい。
【0118】
さらにまた、上述した径や長さ等の各種寸法の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。