【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、経済産業省、「戦略的基盤技術高度化支援事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が、グルコン酸カルシウム、貝殻カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳清カルシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイトからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の粉末組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ソホロリピッドとは、ソホロース又はヒドロキシル基が一部アセチル化したソホロースと、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質である。なお、ソホロースとは、β1→2結合した2分子のブドウ糖からなる糖である。ヒドロキシル脂肪酸とは、ヒドロキシル基を有する脂肪酸である。また、ソホロリピッドは、ヒドロキシ脂肪酸のカルボキシル基が遊離した酸型(一般式(1))と、分子内のソホロースが結合したラクトン型(一般式(2))とに大別される。酵母の発酵によって得られるソホロリピッドには、一般式(1)と一般式(2)の混合物であり、脂肪酸鎖長(R
3)が異なるもの、ソホロースの6’(R
2)及び6”位(R
1)がアセチル化あるいはプロトン化されたもの等、30種以上の構造同族体の集合体として得られるものがある。
【0014】
前記一般式(1)又は(2)において、R
0は水素あるいはメチル基のいずれかである。R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素又はアセチル基である。R
3は飽和脂肪族炭化水素鎖又は二重結合を少なくとも一個有する不飽和脂肪族炭化水素鎖であり、一以上の置換基を有していても良い。該置換基は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、ハロゲン、水酸基、低級(C
1〜6)アルキル基、ハロ低級(C
1〜6)アルキル基、ヒドロキシ低級(C
1〜6)アルキル基、ハロ低級(C
1〜6)アルコキシ基等が挙げられる。また、R
3の炭素数は、通常11〜20、好ましくは13〜17、より好ましくは14〜16である。
【0015】
本発明のソホロリピッド粉末は、ソホロリピッドを含有する粉末であれば本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、酵母を培養して得られた培養液からソホロリピッド含有液を分離し、該ソホロリピッド含有液を粉末化して得られるものが好ましい。通常、酵母を培養して得られるソホロリピッド含有液(天然型ソホロリピッド含有液)中には、酸型ソホロリピッド及びラクトン型ソホロリピッドの両方が含有されているが、コスト等の面からは、その混合物をそのまま使用することが好ましい。また、化学的安定性の面からは、天然型ソホロリピッド含有液におけるラクトン型ソホロリピッドを加水分解する等の方法により、酸型ソホロリピッドの含有量を増加させたソホロリピッド含有液(酸型ソホロリピッド含有液)を用いることも好ましい。安定性の面で好ましい態様における酸型ソホロリピッドの含有量としては、ソホロリピッド全体に対し、例えば、約30%以上が酸型であることが好ましく、約45%以上であることがより好ましく、約78%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
前記酵母としては、例えば、Starmerella(Candida) bombicola、C.apicola、C.petrophilum、Rhodotorula(Candia) bogoriensis、C. batistae、C.gropengiesseri、Wickerhamiella domercqiae及びYarrowia lipolytica等が挙げられ、これらの酵母を公知の方法で培養することにより、ソホロリピッドが産生される。前記酵母は、保存機関から分譲された菌株又はその継代培養によって得られた菌株であってもよい。ここで、Rhodotorula(Candia) bogoriensis NRCC9862が生産するソホロリピッドは、13−[(2’−O−β−D−glucopyranosyl−β−D−glucopyranosyl)oxy] docosanoic acid6’, 6’’−diacetateであり、アルキル基の中央のヒドロキシル基とソホロースがグリコシド結合している。このソホロリピッドは前記一般式(1)及び(2)とは異なるが、ソホロースとヒドロキシル脂肪酸から構成される点では同じであり、本発明においてはそのような化合物もソホロリピッドに包含される。
【0017】
ソホロリピッド産生のための酵母の培養方法としては、例えば、高濃度の糖と疎水性の油性基質を同時に与えて培養する方法等が好ましく挙げられる。又は、これに限らず、本発明の効果を妨げない限り広く公知の方法を適用できる。前記公知の方法は、特開2002−045195号公報等に記載されたものであってもよい。具体的には、糖としてグルコース、疎水性の油性基質として脂肪酸と植物油からなる炭素源を用いて、Starmerella (Candida) bombicolaを生産酵母として培養する手法であってもよい。
【0018】
培地組成は、特に限定されないが、ソホロリピッドの脂肪酸部分は、与える疎水性基質の脂肪酸鎖長やその割合に依存することが知られており、ある程度の制御が可能である。疎水性基質としては、例えば、オレイン酸又はオレイン酸を高い割合で含有する脂質が好適である。そのような脂質としては、例えば、パーム油、米ぬか油、ナタネ油、オリーブ油、サフラワー油等の植物油、及び豚脂や牛脂等の動物油等が挙げられる。さらに、疎水性基質にトリグリセライドとオレイン酸の混合基質を用いれば、高い割合でオレイン酸を含むソホロリピッドを高い収量・収率で得ることが可能である。産業利用の観点からは、安定に高い収量・収率でソホロリピッドを発酵生産することが求められるが、この場合、炭素源として親水性の糖と疎水性の油脂を混合したものが好ましい。親水性基質としては、グルコースが多用される。
【0019】
得られた培養液から、例えば遠心分離、デカンテーション等の方法で分離後、水洗いすることにより、ソホロリピッド含有液が得られる。前記培養液から、公知の方法によりソホロリピッド含有液を回収する方法は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、特開2003−9896号公報等に記載されたものであってもよい。具体的には、精製プロセスでは、培養終了液中で沈殿するソホロリピッド(前記一般式(1)及び(2)の混合物)のpHを変更することで、水への溶解性を制御し、有機溶剤を一切使用することなく、約50%含水物として天然型ソホロリピッド含有液を得ることができる。
【0020】
ソホロリピッド含有液における酸型ソホロリピッドの含有量を増やす場合、加水分解等によりラクトン型ソホロリピッドのラクトン環を開環してもよい。前記加水分解には、本発明の効果を妨げない限り、公知の方法を用いることができ、例えば、水酸化物の金属塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムなど)、炭酸塩、リン酸塩、アルカノールアミン等の塩基を用いたアルカリ加水分解等が好ましく挙げられる。さらに、各種の触媒、例えば、アルコール等を用いることも可能である。前記アルカリ加水分解を行う温度、圧力及び時間は、本発明の効果を妨げない限り適宜設定できるが、効率的に加水分解を進行させ、かつ、目的産物である酸型ソホロリピッドの分解及び化学修飾等の副反応を抑制することが好ましい。この点から、温度は通常約30℃〜120℃であり、約50℃〜90℃が好ましい。圧力は、約1気圧〜10気圧であり、約1気圧〜2気圧が好ましい。時間は約10分〜5時間であり、約1時間〜3時間が好ましい。また、アルカリ加水分解を行う時間は、ソホロリピッド含有液の濃度及び量等によって適宜設定できる。
【0021】
また、本発明に使用する酸型ソホロリピッド含有液は、例えば、特開2008−247845号応報等に記載されるように、酸型ソホロリピッドのみを一段階で選択的に生産する発酵生産方法により得られたものであってもよい。また、当該発酵生産で得られたものをさらにアルカリ処理したものであってもよい。
【0022】
本発明のソホロリピッド粉末の原料となるソホロリピッド含有液は、酵母等に起因する不快臭が抑えられる等の点から、高純度のものを用いることが好ましく、安定性の面からは、高純度酸型ソホロリピッド含有液を用いることがより好ましい。ソホロリピッド含有液におけるソホロリピッドの純度を高める方法としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動、限外ろ過等の方法が挙げられ、製造効率等の点から、特に液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーが好ましい。
【0023】
前記高純度酸型ソホロリピッド含有液は、例えば、酸型ソホロリピッド含有液のpHを酸性領域に調整する工程、及び前記工程で得られた酸性の酸型ソホロリピッド含有液をクロマトグラフィー分離する工程を有する方法により、好ましく得ることができる。前記酸性領域とは、より具体的にはpH6未満程度であることが好ましく、pH1〜5程度がより好ましく、pH1〜4.5程度がさらに好ましく、特に好ましいのはpH1〜4程度である。pHを前記範囲に調整することにより、より高純度で安定な酸型ソホロリピッドが得られる。ここで用いられるpH調整剤としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、ホウ酸及びフッ化水素酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸などの有機酸などが使用される。
【0024】
前記クロマトグラフィー分離に供するソホロリピッド含有液は、分離効率の面から、粘度が約5〜50mPa・Sであることが好ましく、約5〜20mPa・Sであることがより好ましい。ソホロリピッド含有液の粘度が高い場合、前記範囲内に粘度を調節したものを用いることが好ましい。粘度の調整方法としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、人体及び環境等に対する悪影響が低減されることから、エタノール及び精製水で希釈することが好ましい。
【0025】
前記クロマトグラフィーにおいて、固定相として用いられる充填剤(吸着剤)には、例えば、当該分野で公知の任意のシリカゲル、オクタデシルシリカゲル(ODS)樹脂、イオン交換樹脂、合成吸着剤などが用いられる。また、前記クロマトグラフィーは、溶離液(展開相)として、安全性の高いものを選択できる等の点から、逆相クロマトグラフィーであることが好ましい。前記クロマトグラフィーが逆相クロマトグラフィーである場合、充填剤としては、ODS樹脂等を用いることがより好ましい。シリカゲル担体に疎水性オクタデシル基等が化学修飾されたODS樹脂を用いることで、ソホロリピッドのアルキル側鎖との疎水性相互作用を利用して、より効率よく高純度ソホロリピッド含有液を得ることができる。逆相クロマトグラフィーの溶離液には、充填剤より極性の強い溶媒が用いられることが分離効率等の点から好ましい。このような溶離液としては、例えば、メタノール及びエタノール等が好ましく挙げられ、安全性の面からはエタノール等が特に好ましく挙げられる。
【0026】
前記ソホロリピッド含有液は、所望により、粉末化する前に、蒸留等の方法で濃縮されてもよい。該蒸留方法としては、例えば、分子蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留等が挙げられ、工業的観点からは、特に減圧蒸留が好ましい。粉末化が容易である、微細な粉末が得られる等の点から、粉末化前のソホロリピッド含有液は、ソホロリピッド含有量が約50質量%以下であることが好ましく、約30質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは約20%質量以下である。また、安定性等の点から、粉末化前に、ソホロリピッド含有液のpHを調節してもよい。好ましいpH値は、用いるソホロリピッド含有液の組成等により異なるが、天然型ソホロリピッド含有液の場合、例えば、炭酸水素ナトリウム等公知のpH調整剤を用いて、pH5〜9程度に調節されることが好ましく、pH6〜8程度がより好ましく、pH6.5〜7.5程度が最も好ましい。
【0027】
ソホロリピッド含有液を粉末化させる方法としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、フリーズドライ法、再結晶法及びスプレードライ法等の公知の方法が用いられ、特に、生産の効率性の面で、スプレードライ法等が好ましく用いられる。前記スプレードライ法では、賦形剤を用いても用いなくてもよいが、より高純度なソホロリピッド粉末を得る観点からは、賦形剤を用いないことが好ましい。前記スプレードライ法の条件は、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、高温かつ高回転で処理することで(例えば、温度約100℃以上、回転数約12000rpm以上等)、流動性が高く、だまの少ないソホロリピッド粉末を得ることができる。
【0028】
本発明のソホロリピッド粉末には、所望により、ソホロリピッド以外の成分が含まれていても良い。該成分としては、例えば、デキストリン等の炭水化物、脱脂粉乳等のタンパク質含有原料、粉末油脂原料、ビタミン、ミネラル、植物ステロール、乳酸菌粉末及びその他食品として利用可能な粉末原料等が挙げられる。また、本発明のソホロリピッド粉末は、流動層造粒等、公知の方法により造粒されていることが好ましい。造粒には、転動流動コーティング装置を用いて行うことが、粉末の流動性が優れる点から特に好ましい。造粒後の粉末は、平均粒径が約300μm以下であることが好ましく、約200μm以下であることがより好ましい。本発明において、平均粒径とはふるい分け法によって測定した粒度分布の積算重量が50重量%に到達する粒径で定義されるものとする。
【0029】
本発明のソホロリピッド粉末は、造粒後、所望により、予め、酵母細胞壁(キリン協和フーズ社製、イーストラップ等)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等により被覆されていてもよい。被覆方法は特に限定されないが、簡便性等の点から、噴霧により行われることが好ましい。また、微粒子コーティング装置を用いて被覆することが好ましい。酵母細胞壁で被覆されたソホロリピッド粉末は、流動性が高まり、次のコーティング工程に好ましく供される。
【0030】
本発明のソホロリピッド含有粉末組成物は、ソホロリピッド粉末が(A)マグネシウム塩及び/又はカルシウム塩を含有するコーティング層(以下、A層ともいう。)及び(B)樹脂を含有するコーティング層(以下、B層ともいう。)により被覆されてなる粉末を含有することを特徴とする。
【0031】
前記A層におけるマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、グルコン酸カルシウム、貝殻カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳清カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、乳酸カルシウム及びクエン酸カルシウム等が挙げられ、コーティング時の流動性に優れる点から、特に、グルコン酸カルシウム、貝殻カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳清カルシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイト等が好ましく用いられる。これらは、単独又は適宜混合して用いられる。被覆方法は特に限定されないが、簡便性等の点から、溶液又は分散液等を噴霧することが好ましい。また、微粒子コーティング装置を用いて被覆することが好ましい。前記溶液又は分散液の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、0.5%〜20%程度が好ましく、1%〜5%程度がより好ましい。溶媒又は分散媒としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、水、エタノール、及びグリセリン等が挙げられるが、分散性の点から、水等を用いることが特に好ましい。
【0032】
前記B層における樹脂は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、可食性の樹脂が広く含まれる。前記樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体、アクリル酸エチルとメタクリル酸の共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート及びシェラック等が挙げられる。これらは、単独又は適宜混合して用いられる。また、必要により、前記樹脂にはさらに可塑剤を添加してもよい。可塑剤として、例えばトリアセチン、マクロゴール400、クエン酸トリエチル、Tween80、ヒマシ油及び中鎖脂肪酸等が用いられる。被覆方法は特に限定されないが、簡便性等の点から、溶液又は分散液等を噴霧することが好ましい。また、微粒子コーティング装置を用いて被覆することが好ましい。前記溶液又は分散液の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、0.5%〜30%程度が好ましく、1%〜10%程度がより好ましい。溶媒又は分散媒としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、水、エタノール、及びグリセリン等が挙げられるが、溶解性の点から、エタノール等を用いることが特に好ましい。
【0033】
本発明においては、A層、B層どちらのコーティングを先に行ってもよいが、粉末の流動性がより確保されるため、A層のコーティングを先に行うことが好ましい。粉末が流動性を有することで、コーティングを多層重ねても、均一なコーティングを行うことが出来る。本発明のソホロリピッド含有粉末は、苦味を有効にマスキングするため、A層及びB層合計で4層以上のコーティング層を有することが好ましく、6層以上がより好ましく、10層以上がさらに好ましい。また、A層及びB層は、交互に積層させることが好ましく、コーティング層の最外殻は、A層、B層どちらでもよいが、外観の点からB層であることが好ましい。コーティング後の粉末組成物の平均粒径は、約500μm以下であることが好ましく、約300μm以下であることがより好ましく、約200μm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
このように、(i)マグネシウム塩及び/又はカルシウム塩を含有するコーティング材でソホロリピッド粉末を被覆する工程、及び(ii)樹脂を含有するコーティング材で前記工程(i)で得られた被覆体を被覆する工程を少なくとも有する粉末組成物の製造方法も、本発明に包含される。
【0035】
本発明のソホロリピッド含有粉末組成物を経口投与する場合は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤及びカプセル剤等の固型製剤としてもよく、シロップ剤等の液剤としてもよいが、保存安定性等の点から、散剤及び錠剤等が特に好ましく、経口摂取における簡便性、取扱いの容易性等の点から、前記粉末組成物を打錠して得られる錠剤等が最も好ましい。これらの製剤を製造する場合には、その製剤形態に応じた担体又は添加剤を使用することができる。また、前記製剤には、本発明のソホロリピッド含有粉末組成物以外に、その他の有効成分が含有されていてもよい。
【0036】
前記担体又は添加剤としては、例えば、賦形剤(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロース、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸及びリン酸カリウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、精製タルク及びポリエチレングリコール等)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カルシウム等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム液、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びポリビニルピロリドン等)、溶解補助剤(アラビアゴム及びポリソルベート80等)、吸収促進剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びトリス緩衝液等)、保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等)、増粘剤(プロピレングリコール、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリエチレングリコール等)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸及びジブチルヒドロキシトルエン等)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸及び酢酸等)等を挙げることができる。
【実施例】
【0037】
(製造例1)
培養培地として、1L当たり、グルコース10g(日本食品化工社製、製品名:日食含水結晶ブドウ糖)、ペプトン10g(オリエンタル酵母社製)、酵母エキス5g(アサヒフードアンドヘルスケア社製、製品名:ミーストパウダーN)を含有する液体培地を使用し、30℃で2日間、Candida bombicola ATCC22214を振盪培養し前培養液とした。
この前培養液を、5L容量の発酵槽に仕込んだ本培養培地(3L)に仕込み量の4%の割合で植菌し、30℃で6日間、通気0.6vvmの条件下で培養し発酵させた。なお、本培養培地の組成としては、1L当たり、グルコース100g、パームオレイン50g(日油製、製品名:パーマリィ2000)、オレイン酸50g(ACID CHEM製、製品名:パルマック760)、塩化ナトリウム1g、リン酸一カリウム10g、硫酸マグネシウム7水和物10g、酵母エキス2.5g、尿素1gを含む培地(滅菌前のpH4.5〜4.8)を用いた。培養開始6日目後に発酵を停止し、発酵槽から取り出した培養液を加熱してから室温に戻し、2〜3日間静置することで、下から順に、液状の褐色沈殿物層、主に菌体と思われる乳白色の固形物層、上澄の3層に分離した。上澄を除去した後、工業用水または地下水を、除去した上澄の量と同量添加した。これを攪拌しながら、48質量%の水酸化ナトリウム溶液を徐々に加えてpH6.5〜6.9とし、培養液中に含まれるソホロリピッドを可溶化した。これを卓上遠心分離機(ウェストファリア:ウェストファリアセパレーターAG製)で遠心処理することにより、乳白色の固形物を沈殿させ、上澄を回収した。回収した上澄を攪拌しながら、これに62.5質量%硫酸を徐々に加えてpH2.5〜3.0とし、ソホロリピッドを再不溶化した。これを2日間静置後、デカンテーションにより上澄を可能な限り除去し、残留物をソホロリピッド含有液(約50%含水物、製造例品1)として得た。
【0038】
(製造例2)
前記製造例1で分取したソホロリピッド含有液に水酸化ナトリウムを加えてpH12に調製し、80℃で2時間加水分解(アルカリ加水分解)を行った。次いで、室温に戻してから発生した不溶物をろ過除去し、ろ液を硫酸(9.8M水溶液)を用いてpH3.2に調製した。これを逆相カラムクロマトグラフィー(コスモシル40C18―PREP、ナカライテスク、5kg)に供した。具体的には、pH3.2に調製した酸型ソホロリピッド含有液を3L(固定相充填量に対し、エタノール可溶分として約3質量%)添加し、次に、10%エタノール水溶液の移動相20Lを供し、次いで、50%エタノール水溶液の移動相35Lを供することにより、水溶性不純物である臭気及び塩類、一部の色素物質を溶出除去した。そして、70%エタノール水溶液の移動相30Lで目的とする酸型ソホロリピッドを樹脂から溶離させた。得られた高純度酸型ソホロリピッド含有液は、酸型ソホロリピッド濃度1質量%、pH3.3、エタノール濃度70%、粘度15.3mPa・s、エタノール臭のある無色透明の溶液であった(製造例品2)。ここで述べたエタノール可溶分とは、試料をエタノールで溶解し、エタノールに溶ける物質の量を示したものである。当該「エタノール可溶分(%)」は、JIS K3362−2008に従って測定することができる。
【0039】
(製造例3)
前記高純度酸型ソホロリピッド含有液(製造例品1)をエバポレーター(東洋ケミカルフードプラント)で蒸留した。得られた濃縮液は、酸型ソホロリピッド濃度15%、pH3.3、エタノール濃度5%以下、粘性10.2mPa・s、エタノール臭の無色透明の溶液であった。該濃縮液を、スプレードライヤ(乾燥粉体化装置)(SUS304製R-3型、水分蒸発能力MAX5kg/h、坂本技研社製)で粉末化した。スプレードライの条件は、アトマイザー12000rpm、槽内温度105℃とした。
【0040】
(実施例1)
製造例3で得られた粉末200gを転動流動コーティング装置(MP−01 パウレック社製)で水200mLを噴霧しながら流動層造粒を実施し、ソホロリピッド造粒物を得た。MP−01のユニットを微粒子コーティングユニットに付け替え、該ソホロリピッド造粒物150gに、ドロマイト層、シェラック層の順で交互に、5層ずつとなるようコーティングを実施した(計10層)。1回のコーティングにつき、ドロマイト層は、ドロマイト(ドロマイトW 明治フードマテリア社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。また、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5質量%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。
【0041】
(実施例2)
実施例1の粉末を、製造例3で得られた粉末20gとデキストリン(パインデックス#2 松谷化学社製)180gを混合したものに変えて実施した。
【0042】
(実施例3)
製造例3で得られた粉末20gとデキストリン(パインデックス#2 松谷化学社製)180gを混合した。転動流動コーティング装置(MP−01 パウレック社製)で水200mLを噴霧しながら流動層造粒を実施した。MP−01のユニットを微粒子コーティングユニットに付け替え、得られたソホロリピッド造粒物150gに酵母細胞壁(イーストラップ 固形分含量8.5質量% キリン協和フーズ社製)を180g噴霧し、コーティンングを実施し、酵母細胞壁コーティング物を得た。酵母細胞壁コーティング物150gに、ドロマイト層、シェラック層の順で交互に、5層ずつとなるようコーティングを実施した(計10層)。1回のコーティングにつき、ドロマイト層は、ドロマイト(ドロマイトW 明治フードマテリア社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。また、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5質量%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。
【0043】
(実施例4)
製造例3で得たソホロリピッド粉末150gに、シェラック層、ドロマイト層の順で交互に、5層ずつとなるようコーティングを実施した(計10層)。1回のコーティングにつき、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。また、ドロマイト層は、ドロマイト(ドロマイトW 明治フードマテリア社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。
【0044】
(実施例5)
実施例3に記載の方法で得た酵母細胞壁コーティング物150gに、シェラック層、ドロマイト層の順に交互に、5層ずつとなるようにコーティングを実施した(計10層)。1回のコーティングにつき、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5質量%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。また、ドロマイト層は、ドロマイト(ドロマイトW 明治フードマテリア社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。
【0045】
(実施例6)
実施例3のドロマイトをミルクカルシウム(ミルクカルシウムCA−28 森永乳業社製)に変えてコーティングを実施した。
【0046】
(実施例7)
実施例3のドロマイトを貝殻未焼成カルシウム(シェルパウダー 明治フードマテリア社製)に変えてコーティングを実施した。
【0047】
(実施例8)
実施例3のドロマイトをリン酸一水素カルシウム(太平化学産業社製)に変えてコーティングを実施した。
【0048】
(実施例9)
実施例3のドロマイトを炭酸マグネシウム(富田製薬社製)に変えてコーティングを実施した。
【0049】
(実施例10)
実施例3のドロマイトをグルコン酸カルシウム(ピューラック社製)に変えてコーティングを実施した。
【0050】
(実施例11)
実施例3において、微粒子コーティングユニットを用いずにコーティングを実施した(流動層造粒装置を用いた)。その結果、流動性を維持したまま5層目以降のコーティングを実施することは困難であったため、4層のコーティングとした。
【0051】
(実施例12)
実施例3のドロマイトを乳酸カルシウム(扶桑化学工業社製)に変えてコーティングを実施した。その結果、流動性を維持したままコーティング7層目以降のコーティングを実施することは困難であったため、6層のコーティングとした。
【0052】
(実施例13)
実施例3のドロマイトをクエン酸カルシウム(扶桑化学工業社製)に変えてコーティングを実施した。その結果、流動性を維持したままコーティング7層目以降のコーティングを実施することは困難であったため、6層のコーティングとした。
【0053】
(実施例14)
製造例1で得た天然型ソホロリピッド含有液50gに水25gを加えて攪拌した。炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7.0に調整し、水を加えて100gとして、中性天然型ソホロリピッド含有希釈液を得た。β−シクロデキストリン(CAVAMAX(R) W7 Food シクロケム)50gに中性天然型ソホロリピッド含有希釈液60gを添加した。よく混合した後、凍結乾燥機(タイテック製 VD-800R)を用いて凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、250μmのメッシュを通すことでソホロリピッド粉末を得た。
このソホロリピッド粉末150gに、ドロマイト層、シェラック層の順で交互に、5層ずつとなるようコーティングを実施した(計10層)。1回のコーティングにつき、ドロマイト層は、ドロマイト(ドロマイトW 明治フードマテリア社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。また、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5質量%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。
【0054】
(実施例15)
製造例2のなかで得たpH3.2の酸型ソホロリピッド含有液50gにβ−シクロデキストリン(CAVAMAX(R) W7 Food シクロケム)50gを添加した。よく混合した後、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、250μmのメッシュを通すことでソホロリピッド粉末を得た。
このソホロリピッド粉末150gに、ドロマイト層、シェラック層の順で交互に、5層ずつとなるようコーティングを実施した(計10層)。1回のコーティングにつき、ドロマイト層は、ドロマイト(ドロマイトW 明治フードマテリア社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。また、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5質量%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。
【0055】
(比較例1)
実施例3の酵母細胞壁コーティング物に対して、微粒子コーティング装置でシェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)の5質量%エタノール溶液(シェラック濃度1.6質量%)を連続的に噴霧した。その結果、流動性低下により5質量%シェラックを230g以上噴霧することができず、コーティングの続行が困難となったため、230g噴霧時点でコーティングを終了した。
【0056】
(比較例2)
実施例3に記載の方法で得た酵母細胞壁コーティング物150gに、シェラック層、デンプン層の順に交互にコーティングを実施した。1回のコーティングにつき、シェラック層は、シェラック(シェラック濃度32質量% ラックグレーズ32E−N 日本シェラック)をエタノールで希釈して5質量%シェラック(シェラック濃度1.6質量%)とし、140g噴霧した。また、デンプン層は、馬鈴薯デンプン(アミコールHG−N 日澱化学社製)を水で2.5質量%濃度に分散し、90gを噴霧した。その結果、流動性の低下によって3層目以降のコーティングが達成できなかったため、2層のコーティングとした。
【0057】
(試験例1)
前記実施例1〜15、比較例1及び2で得られた粉末に関し、10人のパネラーによる官能試験を実施した。具体的には、粉末を口に含み、30秒間保持して、苦味のマスキング効果を評価した(表1)。評価基準は以下の通りとし、最も人数が多い評価を結果とした。
◎:苦味が完全にマスキングされており、全く苦味を感じない。
○:苦味がマスキングされているが、わずかに苦味を感じる。
×:苦味のマスキングが不十分で、苦味を感じる。
【0058】
【表1】
【0059】
コーティングは複数回繰り返すことが必要であり、マスキングの効果を得るためにはA層及びB層を各2層以上(4層コーティング)、苦味を完全にマスキングするためには各5層(10層コーティング)繰り返すことが望ましい結果となった。
【0060】
(試験例2)
実施例1において、造粒前の混合物、シェラックとドロマイトWのコーティングを各5回実施後の粒度分布を比較した。造粒前は100μm以下の粒子が主であったが、コーティング後は250μm以下に粒子の分布が変化した(
図1)。