特許第6148524号(P6148524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148524
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】車両用灯具部品および車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170607BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170607BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20170607BHJP
【FI】
   F21S8/10 181
   F21S8/10 182
   F21W101:10
   F21Y101:00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-86895(P2013-86895)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-211990(P2014-211990A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】久保庭 拓也
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−166767(JP,A)
【文献】 実開平02−097710(JP,U)
【文献】 実開昭61−061254(JP,U)
【文献】 特開平09−306219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色の樹脂材料から成形された車両用灯具部品であって、
樹脂材料が露出している着色部と、
前記樹脂材料の一部の表面が蒸着によって形成された金属膜で覆われている蒸着部と、
前記着色部と前記蒸着部との境界に沿って形成されている溝部と、を有し、
前記境界は、前記溝部の底部に形成されていることを特徴とする車両用灯具部品。
【請求項2】
プロジェクタ型灯具ユニットの凸レンズが挿入される開口部を更に備え、
前記蒸着部は、前記開口部を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具部品。
【請求項3】
請求項に記載の車両灯具部品と、
前記開口部に挿入されたプロジェクタ型灯具ユニットと、
を備える車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具部品に関し、特に車両用前照灯に用いられる部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具を構成する部品の多くには、樹脂の成形品が用いられている。樹脂の成形品は、材料自体の黒やグレーなどの色が付いた部品である。近年、車両用前照灯において、高級感を演出するデザインが各部品に求められている。このような部品の一つであるエクステンションと言われる部品は、前照灯の正面から見た見栄えを向上するために用いられる部品であり、リフレクタとランプボディとの間の隙間を覆い隠すように配置される。
【0003】
このようなエクステンションにおいて、材料自身の色を示す黒色部とアルミニウムなどの金属を蒸着した蒸着部とを混在させ、灯具の立体感を演出するというデザインのニーズが多くなっている。また、蒸着部と黒色部とを一部品で実現するための方法として、蒸着部となる部分以外をマスキングし、アルミニウム蒸着を行う方法が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−306219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の方法においてマスキング部材を樹脂成形品に当接させると、接触によるキズが発生するおそれがある。一方、樹脂成形品にキズを発生させないようにマスキング部材を樹脂成形品から離間させた状態で蒸着を行うと、蒸着部となるべき領域の外側まで隙間から蒸着物質が吹き込み、蒸着部と黒色部との境界がぼやける。そのため、部品の見栄えを悪くし、外観不良による歩留りの低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用灯具部品の外観不良を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具部品は、有色の樹脂材料から成形された車両用灯具部品であって、樹脂材料が露出している着色部と、樹脂材料の一部の表面が蒸着によって形成された金属膜で覆われている蒸着部と、着色部と蒸着部との境界に沿って形成されている溝部と、を有する。境界は、溝部の内部に位置している。
【0008】
この態様によると、仮に着色部と蒸着部との境界において、蒸着部の輪郭が不鮮明であったり蒸着部が理想的な範囲から多少ずれたりしても、境界が溝部の内部に位置することで、境界を挟んだ着色部と蒸着部とのコントラストの低下の影響を抑制できる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、車両用灯具部品である。この車両用灯具部品は、有色の樹脂材料から成形された車両用灯具部品であって、樹脂材料が露出している着色部と、樹脂材料の一部の表面が蒸着によって形成された金属膜で覆われている蒸着部と、着色部と蒸着部との境界の近傍であって、境界に沿って形成されている段差部または屈曲部と、を有する。着色部は、少なくとも境界の周囲にシボ面が形成されている。
【0010】
この態様によると、仮に着色部と蒸着部との境界において、蒸着部の輪郭が不鮮明であったり蒸着部が理想的な範囲から多少ずれたりしても、境界の周囲にシボ面が形成されていることで、境界を挟んだ着色部と蒸着部とのコントラストの低下の影響を抑制できる。
【0011】
本発明のさらに別の態様もまた、車両用灯具部品である。この車両用灯具部品は、有色の樹脂材料から成形された車両用灯具部品であって、樹脂材料が露出している着色部と、樹脂材料の一部の表面が蒸着によって形成された金属膜で覆われている蒸着部と、着色部と蒸着部との境界の近傍であって、境界に沿って形成されている段差部または屈曲部と、を有する。着色部は、少なくとも境界の周囲に光沢面が形成されている。
【0012】
この態様によると、仮に着色部と蒸着部との境界において、蒸着部の輪郭が不鮮明であったり蒸着部が理想的な範囲から多少ずれたりしても、境界の周囲に光沢面が形成されていることで、境界を挟んだ着色部と蒸着部とのコントラストの低下の影響を抑制できる。
【0013】
プロジェクタ型灯具ユニットの凸レンズが挿入される開口部を更に備えてもよい。蒸着部は、開口部を囲むように形成されていてもよい。これにより、開口部に設けられる灯具ユニットの光源が非点灯状態であっても、開口部を囲むように形成されている蒸着部によって開口部の輪郭が強調される。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、車両用前照灯である。この車両用前照灯は、上述の車両灯具部品と、開口部に挿入されたプロジェクタ型灯具ユニットと、を備えている。これにより、意匠性が高く、高級感のある車両用前照灯を実現できる。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用灯具部品の外観不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る自動車用ヘッドランプの正面図である。
図2】本実施の形態に係る自動車用ヘッドランプの平面図である。
図3図1に示す自動車用ヘッドランプのA−A水平断面図である。
図4図1に示す自動車用ヘッドランプのB−B縦断面図である。
図5】第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの正面図である。
図6】第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの平面図である。
図7】第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの左側面図である。
図8図8(a)〜図8(e)は、本実施の形態に係るエクステンションリフレクタの蒸着部と着色部とを模式的に示した図である。
図9】マスクを用いてエクステンションリフレクタの表面に蒸着部を形成する工程を模式的に示した図である。
図10】マスクをよりエクステンションリフレクタに近付けて蒸着部を形成する工程を模式的に示した図である。
図11】第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの要部を模式的に示した図である。
図12】第2の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの要部を模式的に示した図である。
図13】第2の実施の形態の変形例に係るエクステンションリフレクタの要部を模式的に示した図である。
図14】プロジェクタ型灯具ユニットの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
(第1の実施の形態)
[車両用前照灯]
はじめに、本発明に係る車両用灯具部品が好適な車両用前照灯の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る自動車用ヘッドランプの正面図である。図2は、本実施の形態に係る自動車用ヘッドランプの平面図である。図3は、図1に示す自動車用ヘッドランプのA−A水平断面図である。図4は、図1に示す自動車用ヘッドランプのB−B縦断面図である。図5は、第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの正面図である。図6は、第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの平面図である。図7は、第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの左側面図である。
【0020】
車両用の灯具であるヘッドランプ100は、容器状のランプボディ10と、ランプボディ10の前面開口部に組み付けられている前面カバー20と、を備える。ランプボディ10は合成樹脂で形成されている。また、前面カバー20は、光源からの光を透過させる透明な合成樹脂で形成されている。ランプボディ10と前面カバー20とが組み付けられた状態で灯室Sが構成されている。
【0021】
灯室S内には、放物面形状のリフレクタ30に光源であるバルブ31を挿着したロービーム形成用の光源ユニットUと、放物面形状のリフレクタ36に光源であるバルブ37を挿着した走行ビーム形成用の光源ユニットUとが左右に隣接して配置されている。
【0022】
クリアランスバルブ39は、ランプボディ10における光源ユニットU1が配設されている位置に設けられている。バルブ球39aは、光源ユニットU2のリフレクタ36に設けられた貫通孔36a(図3参照)を貫通して前方に突出している。
【0023】
ターンシグナルバルブ40は、ランプボディ10における光源ユニットU1が配設されている位置の下方に設けられている。また、ターンシグナルバルブ40から出射した光の一部を反射するリフレクタ46は、ランプボディ10に対し固定されている。バルブ球40aは、リフレクタ46に設けられた貫通孔46a(図4参照)を貫通して前方に突出している。
【0024】
ヘッドランプ100のランプボディ10の前面開口部は、図1〜4に示すように、車体の前方から側方にかけて開口している。前面カバー20は、そのシール脚21がランプボディ10のシール溝11に組み付けられている。また、前面カバー20は、車体の前方から側方にかけて大きく回り込む形状に形成されている。そして、前面カバー20の内側には、エクステンションリフレクタ34が設けられている。エクステンションリフレクタ34は、光源ユニットU,Uを取り囲むように延在する枠体状に形成されており、灯室S内全体をリフレクタ30,36と同様の鏡面色に見せるように、前面カバー20に沿って設けられている。
【0025】
エクステンションリフレクタ34は、図5乃至図7に示すように、前面カバー20の傾斜に倣った形状に形成されるとともに、リフレクタ30,36に対応する略円形状の開口34a,34bおよびリフレクタ46に対応する略横長矩形状の開口34cが設けられている。
【0026】
[車両用灯具部品]
次に、本実施の形態に係る車両用灯具部品の一つであるエクステンションリフレクタ34の製造方法について詳述する。近年、自動車用ヘッドランプにおいて、高級感を演出するデザインが求められている。そこで、本実施の形態に係るエクステンションリフレクタ34では、光沢性のある樹脂成形品の材料生地の色である着色部(黒色部)とアルミニウムなどの金属を蒸着した蒸着部とを混在させている。
【0027】
図8(a)〜図8(e)は、本実施の形態に係るエクステンションリフレクタの蒸着部と着色部とを模式的に示した図である。エクステンションリフレクタ34は、有色の樹脂材料から成形された車両用灯具部品である。図8(a)は、ヘッドランプの光源が配置されるエクステンションリフレクタ34の開口34a,34bを囲むように蒸着部50を設けた例を示している。なお、蒸着部50は、例えば、図6に示すように、有効反射面50a(開口34bを囲う部分)と加飾面50b(折り返し部)とがつながっている領域に形成されていてもよい。
【0028】
図8(b)は、エクステンションリフレクタ34の外周部に蒸着部52を設けた例を示している。図8(c)、図8(d)は、エクステンションリフレクタ34の外周部の一部に蒸着部54,56を設けた例を示している。図8(e)は、エクステンションリフレクタ34の外周部の一部にライン状の反射部として蒸着部58を設けた例を示している。なお、各図において、エクステンションリフレクタ34の蒸着部以外の部分は、意匠面としてそのまま使用できるような着色樹脂からなる着色部60である。
【0029】
このように有色の着色樹脂からなる成形品表面の一部に蒸着部を形成する場合について説明する。図9は、マスク62を用いてエクステンションリフレクタ34の表面に蒸着部を形成する工程を模式的に示した図である。
【0030】
図9に示すように、エクステンションリフレクタ34の表面のうち、着色部60が蒸着源から遮蔽されるようにマスク62を配置する。この状態で蒸着を行うと、マスク62とエクステンションリフレクタ34との隙間から蒸着物質(例えばアルミニウム)が、設計上は露出すべき着色部60まで吹き込む場合がある。そのため、露出した着色部60となるべき領域まで蒸着部52aが形成されてしまい、着色部60と蒸着部52との境界において、輪郭が不鮮明(ぼやけ)となる。このような現象は、エクステンションリフレクタ34ひいてはヘッドランプ100の見栄えを悪化させるため、製造工程において外観不良による歩留りの低下を招くおそれがある。
【0031】
そこで、蒸着物質が吹き込まないようにマスクをエクステンションリフレクタ34により近付けることが一案である。図10は、マスク62をよりエクステンションリフレクタ34に近付けて蒸着部を形成する工程を模式的に示した図である。図10に示すように、マスク62の端部62aをエクステンションリフレクタ34に近付けることで、蒸着物質が着色部60側に吹き込むことは抑制される。しかしながら、マスク62の端部62aとエクステンションリフレクタ34との距離が短いため、各部品の精度や公差によっては端部62aがエクステンションリフレクタ34と接触し、エクステンションリフレクタ34の表面にキズ64を発生させるおそれがある。このような場合も、エクステンションリフレクタ34の外観不良による歩留りの低下を招くことになる。
【0032】
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、仮に着色部と蒸着部との境界が不鮮明になる状況であっても、それを外部から認識しづらくするエクステンションリフレクタの表面構造(溝や段差)や表面形態(光沢面、シボ面)に想到した。特に、高級感のある表面光沢を有する樹脂成形品を露出させ、材料自体の色をそのまま着色部として活かすとともに、部品の一部表面に部分蒸着された車両用灯具部品において、外観不良を抑制するために好適な技術に想到した。
【0033】
図11は、第1の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの要部を模式的に示した図である。図11に示すエクステンションリフレクタ66は、樹脂材料が露出している着色部68と、樹脂材料の一部の表面が蒸着によって形成された金属膜で覆われている蒸着部70と、着色部68と蒸着部70との境界71に沿って形成されている溝部72と、を有する。境界71は、溝部72の内部に位置している。溝部72は、図11の紙面と交差する方向へ延伸している。
【0034】
これにより、仮に着色部68と蒸着部70との境界71において、蒸着部70の輪郭が不鮮明であったり蒸着部70が理想的な範囲から多少ずれたりしても、境界71が溝部72の内部に位置することで、境界71を挟んだ着色部68と蒸着部70とのコントラストの低下の影響を抑制できる。なお、着色部68と蒸着部70とのコントラストが高いとは、境界71が鮮明であり境界のぼやけが少ない状況ととらえることができる。一方、着色部68と蒸着部70とのコントラストが低下する状況とは、例えば、境界71がぼやけている状況である。そして、コントラストの低下の影響を抑制できるとは、例えば、コントラストの低下が生じても観察者が実際にそれを認識しづらい状況ととらえることができる。具体的には、境界自体が見えにくい場所にある、境界よりもコントラストの強い輪郭が別にある場合などである。
【0035】
また、エクステンションリフレクタ66に蒸着部70を成膜する場合、マスク74を溝部72の内部まで挿入して溝部72の底部に境界71を形成する。そのため、仮にマスク74が溝部72の底部と接触し、エクステンションリフレクタ66の表面にキズが生じても、外部からそのキズを認識しづらくなる。
【0036】
なお、溝部72の深さDは、例えば、0.3〜10.0mm程度である。また、溝部72の底部の幅Wは、例えば、0.3〜3.0mm程度である。また、溝部72の各屈曲部の角度α1〜α4は、エクステンションリフレクタ66を成形する際の型の形状等に応じて適宜設定すればよく、例えば、30〜150°の範囲で選択すればよい。
【0037】
(第2の実施の形態)
図12は、第2の実施の形態に係るエクステンションリフレクタの要部を模式的に示した図である。図12に示すエクステンションリフレクタ76は、樹脂材料が露出している着色部78と、樹脂材料の一部の表面が蒸着によって形成された金属膜で覆われている蒸着部80と、着色部78と蒸着部80との境界82の近傍であって、境界82に沿って形成されている段差部84と、を有する。着色部78は、少なくとも境界82の周囲にシボ面78aが形成されている。段差部84は、図12の紙面と交差する方向へ延伸している。
【0038】
これにより、仮に着色部78と蒸着部80との境界において、蒸着部80の輪郭が不鮮明であったり蒸着部80が理想的な範囲から多少ずれたりしても、境界82の周囲にシボ面78aが形成されていることで、蒸着むらやキズが目立ちにくくなり、境界82を挟んだ着色部78と蒸着部80とのコントラストの低下の影響を抑制できる。また、段差部84の屈曲部84aがアクセントとなって、境界82における輪郭の不鮮明の影響を緩和できる。
【0039】
なお、着色部78は、少なくとも境界82の周囲において、シボ面78aの代わりに光沢面が形成されていてもよい。蒸着部80の表面は通常鏡面(光沢面)に近い状態のため、隣接する着色部78の少なくとも一部を光沢面とすることで、蒸着部80と着色部78との表面形態が類似し、境界82を挟んだ写り込みが均質化し、境界82自体が認識しづらくなる。これにより、仮に着色部78と蒸着部80との境界において、蒸着部80の輪郭が不鮮明であったり蒸着部80が理想的な範囲から多少ずれたりしても、境界82の周囲に光沢面が形成されていることで、着色部78と蒸着部80との境界82における輪郭の不鮮明の影響を緩和できる。
【0040】
なお、段差部84の高さHは、例えば、0.3〜3.0mm程度である。また、段差部84の各屈曲部の角度α5、α6は、エクステンションリフレクタ76を成形する際の型の形状等に応じて適宜設定すればよく、例えば、30〜150°の範囲で選択すればよい。
【0041】
図13は、第2の実施の形態の変形例に係るエクステンションリフレクタの要部を模式的に示した図である。図13に示すエクステンションリフレクタ86は、屈曲部86aが形成されている。そして、着色部88と蒸着部90との境界92近傍であって、着色部側の一部の領域88aにシボ面や光沢面が形成されている。一部の領域88aは、屈曲部86aから約3mm以内の範囲である。
【0042】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態で述べた表面が光沢面であるエクステンションリフレクタ(ワーク)を、複数の金型を組み合わせて製造する場合、金型の成形面のうち少なくとも光沢面を形成する領域を鏡面とする必要がある。この場合、金型から成形物であるエクステンションリフレクタを離型する際に、エクステンションリフレクタの光沢面が金型に吸着することで離型性が低下する。
【0043】
そこで、本実施の形態に係るエクステンションリフレクタは、意匠面となる表側に光沢面がある場合、意匠面とはならない裏側の少なくとも一部の領域の表面粗さが、表側の光沢面の表面粗さより大きくなるように構成されている。つまり、複数の金型のうち意匠面とはならない裏側と接する金型の成形面の一部領域の粗さが、意匠面となる表側の光沢面と接する金型の成形面の粗さよりも大きくなるように構成されている。
【0044】
例えば、図7に示すエクステンションリフレクタ34において、裏側の領域94aや領域94bの表面の粗さを、意匠面となる表側の光沢面の粗さよりも大きくなるように構成している。また、粗面とする領域94aや領域94bは、離型する際の金型の移動方向(図7のZ方向)に対して斜めになる場所が好ましい。これにより、エクステンションリフレクタ34は、摩擦により裏側に接している金型とともに移動しやすくなり、表側の意匠面と接している金型からは離型しやすくなる。
【0045】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態で説明した光源ユニットUや光源ユニットUは、いわゆる反射型の灯具ユニットである。しかしながら、例えば、図5乃至図7に示す円形状の開口34a,34bは、プロジェクタ型灯具ユニットの凸レンズが挿入される開口部としても機能する。図14は、プロジェクタ型灯具ユニットの概略構成を示す図である。
【0046】
図14に示す灯具ユニット102は、光源としてのバルブ104と、バルブ104から出射した光を車両前方に反射するリフレクタ106と、リフレクタ106で反射した光の一部を遮光するシェード108と、シェードの先端形状を車両前方に投影する凸レンズ110と、を備える。これにより、車両前方にロービーム用配光パターンを形成できる。
【0047】
そして、ヘッドランプ100は、このような灯具ユニット102をロービーム形成用の光源ユニットUの代わりに用いることで、開口34aに設けられる灯具ユニット102のバルブ104が非点灯状態であっても、開口34aを囲むように形成されている蒸着部50(図8(a)参照)によって開口34aの輪郭が強調される。特に、蒸着部50の周囲の着色部が黒色系の場合、非点灯時における光源の輪郭が更に強調される。
【0048】
このように、ヘッドランプ100は、エクステンションリフレクタ34と、開口34aに挿入されたプロジェクタ型の灯具ユニット102と、を備えている。これにより、意匠性が高く、高級感のある車両用前照灯を実現できる。
【0049】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0050】
上述の実施の形態では、車両用灯具部品としてエクステンションリフレクタを例に説明したが、本願発明はランプボディやインナーレンズ等の他の車両用灯具部品にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 ランプボディ、 20 前面カバー、 30 リフレクタ、 31 バルブ、 34 エクステンションリフレクタ、 34a,34b,34c 開口、 36 リフレクタ、 50 蒸着部、 50a 有効反射面、 50b 加飾面、 52 蒸着部、 100 ヘッドランプ、 102 灯具ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14