(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被写体に励起光を照射し、該励起光によって励起された蛍光を受光する走査型共焦点内視鏡と、該走査型共焦点内視鏡が受光した前記蛍光に基づいて画像を生成するプロセッサと、からなる走査型共焦点内視鏡システムの画像評価に用いられる指標ユニットであって、
前記蛍光に相当する波長の光を発光可能なLEDと、
前記LEDの発光面に取り付けられたコリメートレンズと、
前記コリメートレンズに取り付けられ、前記画像評価のための指標が形成されたチャートと、からなり、
前記LEDからの光が、前記コリメートレンズを通って前記チャートを照射することにより、前記指標が発光する、または前記チャートの前記指標以外の部分が発光することを特徴とする、指標ユニット。
被写体に励起光を照射し、該励起光によって励起された蛍光を受光する走査型共焦点内視鏡と、該走査型共焦点内視鏡が受光した前記蛍光に基づいて画像を生成するプロセッサと、からなる走査型共焦点内視鏡システムの画像評価に用いられる画像の取得方法であって、
LEDから前記蛍光に相当する波長の光を発光し、前記画像評価のための指標が形成されたチャートを照射するステップと、
前記照射による前記指標の発光、または前記チャートの前記指標以外部分の発光を、前記走査型共焦点内視鏡によって受光するステップと、
前記プロセッサによって、前記走査型共焦点内視鏡が受光した前記発光に基づいて、前記指標の画像を生成するステップと、を含むことを特徴とする、画像取得方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載されるような走査型内視鏡システムにおいては、走査領域(観察部位)からの反射光又は蛍光を所定周期のタイミング(以下、「サンプリング点」という。)で受光し、各サンプリング点での輝度情報をモニタの表示座標系(内視鏡画像の画素位置)に割り当てて、二次元の内視鏡画像を表示している。従って、歪みの無い再現性の高い内視鏡画像を生成するためには、各サンプリング点の走査位置をモニタの表示座標系に正確に合わせる必要がある。そこで、この種の走査型内視鏡システムにおいては、実際の走査パターン(走査軌跡)をモニタしながら、理想的な走査パターンが得られるように較正(キャリブレーション)している。詳しくは、特許文献1に記載のシステムでは、光ファイバから射出される照明光をPSD(Position Sensitive Detector)によって受光し、走査パターン(走査軌跡)中の照射スポットの位置を検出しながら、二軸アクチュエータへの印加電圧の振幅、位相、周波数等を調整し、理想的な走査パターンが得られるようにキャリブレーションしている。
【0006】
また、キャリブレーションの一つとして、走査型内視鏡システムによってロッド状の真鍮部材に貼り付けられたグリッド(格子模様)などの指標の画像を取得し、取得された画像の歪みを測定して、画像の評価や歪み補正を行うことも可能である。ここで、従来、特許文献2に記載されるような走査型共焦点内視鏡システムにおいて、画像の評価を行う場合には、指標として用いるグリッドに蛍光塗料を塗布して、得られる蛍光画像に基づいて評価を行っている。しかしながら、グリッドに塗布した蛍光塗料は、時間経過や照射されるレーザ光量によって退色してしまうため、頻繁に蛍光塗料を塗り直す必要があり、大変煩雑である。また、蛍光塗料を塗布する際に濃淡にムラが発生してしまうこともあり、このような場合には、システムに起因する画像の歪みを適切に判定できなくなってしまう。さらに、蛍光塗料の退色や濃淡のムラが発生することにより、取得される画像に再現性がなく、安定した評価を行うことも困難であるといった問題もある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、走査型共焦点内視鏡システムにおいて、蛍光塗料を用いることなく、容易かつ安定してキャリブレーションに用いるための画像を取得することを可能とする指標ユニットおよび画像取得方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明により、被写体に励起光を照射し、該励起光によって励起された蛍光を受光する走査型共焦点内視鏡と、該走査型共焦点内視鏡が受光した蛍光に基づいて画像を生成するプロセッサと、からなる走査型共焦点内視鏡システムの画像評価に用いられる指標ユニットが提供される。また、本発明の指標ユニットは、蛍光に相当する波長の光を発光可能なLEDと、LEDの発光面に取り付けられたコリメートレンズと、コリメートレンズに取り付けられ、画像評価のための指標が形成されたチャートと、からなり、LEDからの光が、コリメートレンズを通ってチャートを照射することにより、指標が発光する、またはチャートの指標以外の部分が発光することを特徴とする。
【0009】
このように、LEDからの蛍光に相当する波長の光によって指標を発光させることで、指標に対して蛍光塗料を塗布する必要がない。そのため、蛍光塗料の退色による塗り直しなどの手間や、濃淡ムラによる画像のひずみが解消され、キャリブレーションにおける画像評価のための画像を、容易にかつ安定して取得することができる。
【0010】
また、上記指標ユニットは、LED、コリメートレンズ、およびチャートを収納するハウジングをさらに備え、ハウジングは、走査型共焦点内視鏡に装着可能なキャップ形状を有する構成であっても良い。このように構成することにより、従来のような大掛かりなキャリブレーション装置に比べて、手軽にキャリブレーションを行うことが可能になるとともに、指標と走査型共焦点内視鏡との位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0011】
また、コリメートレンズおよび記チャートには、反射防止加工が施されていても良い。さらに、チャートは、ガラスもしくは石英からなるものであっても良い。このように構成することにより、LEDからの光を効率よつ走査型共焦点内視鏡に入射することが可能となる。
【0012】
また、LEDは、発光する光の波長を変更可能であっても良い。このように構成することにより、走査型共焦点内視鏡システムにおいて、任意の波長の光の画像を取得して、評価を行うことが可能となる。
【0013】
さらに、本発明により、被写体に励起光を照射し、該励起光によって励起された蛍光を受光する走査型共焦点内視鏡と、該走査型共焦点内視鏡が受光した蛍光に基づいて画像を生成するプロセッサと、からなる走査型共焦点内視鏡システムの画像評価に用いられる画像の取得方法であって、LEDから蛍光に相当する波長の光を発光し、画像評価のための指標が形成されたチャートを照射するステップと、照射による指標の発光、またはチャートの指標以外部分の発光を、走査型共焦点内視鏡によって受光するステップと、プロセッサによって、走査型共焦点内視鏡が受光した発光に基づいて、指標の画像を生成するステップと、を含むことを特徴とする、画像取得方法が提供される。
【0014】
また、本発明の画像取得方法は、走査型共焦点内視鏡における励起光の照射を停止するステップをさらに含んでも良い。このように構成することで、指標の画像のノイズを軽減することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の画像取得方法は、プロセッサにおける受光量に基づいて、走査型共焦点内視鏡の焦点位置を検出するステップをさらに含んでも良い。このように構成することで、走査型共焦点内視鏡の位置決めを簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の指標ユニットおよび画像取得方法を用いることにより、蛍光塗料を用いることなくキャリブレーションのための画像を取得することができるため、煩雑な作業を必要とせずに、再現性のある安定した画像評価を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1は、共焦点顕微鏡の原理を応用して設計されたシステムであり、高倍率かつ高解像度の被写体を観察するのに好適に構成されている。
図1に示されるように、走査型共焦点内視鏡システム1は、システム本体100、共焦点プローブ200、およびモニタ300を有している。走査型共焦点内視鏡システム1を用いた共焦点観察は、可撓性を有する管状の共焦点プローブ200の先端面を被写体に当て付けた状態で行う。
【0020】
システム本体100は、光源102、光分波合波器(フォトカップラ)104、ダンパ106、CPU108、CPUメモリ110、光ファイバ112、フィルタ113、受光器114、映像信号処理回路116、画像メモリ118、および映像信号出力回路120を有している。共焦点プローブ200は、光ファイバ202、共焦点光学ユニット204、サブCPU206、サブメモリ208、走査ドライバ210を有している。
【0021】
まず、走査型共焦点内視鏡システム1による通常観察について以下に説明する。光源102は、CPU108の駆動制御に従い、患者の体腔内に投与された薬剤を励起する励起光(波長:488nm)を射出する。励起光は、光分波合波器104に入射する。光分波合波器104のポートの一つには、光コネクタ152が結合している。光分波合波器104の不要ポートには、光源102から射出された励起光を無反射終端するダンパ106が結合している。前者のポートに入射した励起光は、光コネクタ152を通過して共焦点プローブ200内に配置された光学系に入射する。
【0022】
光ファイバ202の一端(以下、「基端」という。)は、光コネクタ152を通じて光分波合波器104と結合している。光ファイバ202の他端(以下、「先端」という。)は、共焦点プローブ200の先端部に組み込まれた共焦点光学ユニット204内に収められている。光分波合波器104から射出された励起光は、光コネクタ152を通過して光ファイバ202の基端に入射後、光ファイバ202を伝送して光ファイバ202の先端から射出される。
【0023】
図2(a)は、共焦点光学ユニット204の構成を概略的に示す図である。以下、共焦点光学ユニット204を説明する便宜上、共焦点光学ユニット204の長手方向をZ方向と定義し、Z方向に直交しかつ互いに直交する二方向をX方向、Y方向と定義する。
図2(a)に示されるように、共焦点光学ユニット204は、各種構成部品を収容する金属製の外筒204Aを有している。外筒204Aは、外筒204Aの内壁面形状に対応する外壁面形状を持つ内筒204Bを同軸(Z方向)にスライド自在に保持している。光ファイバ202は、外筒204A、内筒204Bの各基端面に形成された開口を通じて内筒204Bに収容支持されており、光ファイバ202の先端(以下、符号「202a」を付す。)は、走査型共焦点内視鏡システム1の二次的な点光源として機能する。点光源である先端202aの位置は、CPU108による制御に基づいて周期的に変化する。なお、
図2(a)中、中心軸AXは、Z方向に配置された光ファイバ202の軸心を示しており、光ファイバ202の先端202aが振動していない状態(初期状態)のとき、中心軸AXは、光ファイバ202の光路と一致する。
【0024】
図1に戻って、サブメモリ208は、共焦点プローブ200の識別情報や各種プロパティ等のプローブ情報を格納している。サブCPU206は、システム起動時にサブメモリ208からプローブ情報を読み出して、システム本体100と共焦点プローブ200とを電気的に接続する電気コネクタ154を介してCPU108に送信する。CPU108は、送信されたプローブ情報をCPUメモリ110に格納する。CPU108は、格納したプローブ情報を必要時に読み出して共焦点プローブ200の制御に必要な信号を生成して、サブCPU206に送信する。サブCPU206は、CPU108から送信された制御信号に従って走査ドライバ210に必要な設定値を指定する。
【0025】
走査ドライバ210は、指定された設定値に応じたドライブ信号を生成して、先端202a付近の光ファイバ202の外周面に接着固定された二軸アクチュエータ204Cを駆動制御する。
図2(b)は、二軸アクチュエータ204Cの構成を概略的に示す図である。
図2(b)に示されるように、二軸アクチュエータ204Cは、走査ドライバ210と接続された一対のX軸用電極(図中「X」、「X´」)及びY軸用電極(図中「Y」、「Y´」)を圧電体上に形成した圧電アクチュエータである。
【0026】
走査ドライバ210は、所定の周波数を有する交流電圧Xを二軸アクチュエータ204CのX軸用電極間に印加して圧電体をX方向に振動させると共に、交流電圧Xと同一の周波数を有し、位相が直交する交流電圧YをY軸用電極間に印加して圧電体をY方向に振動させる。交流電圧X、Yはそれぞれ、振幅が時間に比例して線形に増加して、時間(X)、(Y)かけて実効値(X)、(Y)に達する電圧として定義される。光ファイバ202の先端202aは、二軸アクチュエータ204CによるX方向、Y方向への運動エネルギーが合成されることにより、X−Y平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記す。)上において中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように回転する。先端202aの回転軌跡は、印加電圧に比例して大きくなり、実効値(X)、(Y)の交流電圧が印加された時点で最も大きい径を有する円の軌跡を描く。
図3に、XY近似面上の先端202aの回転軌跡を示す。
【0027】
励起光は、二軸アクチュエータ204Cへの交流電圧の印加開始直後から印加停止までの期間中、光ファイバ202の先端202aから射出される。以下、説明の便宜上、この期間を「サンプリング期間」と記す。上述したように、二軸アクチュエータ204Cへ交流電圧が印加されると、光ファイバ202の先端202aは、中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように回転する。そのため、サンプリング期間中、光ファイバ202の先端202aから射出した励起光は、中心軸AXを中心とした所定の円形の走査領域を渦巻状に走査する。サンプリング期間が経過して二軸アクチュエータ204Cへの交流電圧の印加が停止すると、光ファイバ202の振動が減衰する。XY近似面上における先端202aの円運動は、光ファイバ202の振動の減衰に伴って収束し、光ファイバ202の振動は、所定時間後に略ゼロとなる(すなわち、先端202aは、中心軸AX上でほぼ停止する)。以下、説明の便宜上、サンプリング期間が終了してから先端202aが中心軸AX上にほぼ停止するまでの期間を「ブレーキング期間」と記す。ブレーキング期間の経過後、さらに所定時間の経過を待って、次のサンプリング期間が開始される。以下、説明の便宜上、ブレーキング期間が終了してから次のサンプリング期間の開始までの期間を「セトリング期間」と記す。セトリング期間は、光ファイバ202の先端202aを中心軸AX上に完全に停止させるための待機時間であり、セトリング時間を設けることにより、先端202aを精確に走査させることが可能となる。また、一フレームに対応する期間は、一つのサンプリング期間と一つのブレーキング期間で構成されており、セトリング期間を調整することによって、フレームレートを調整することができる。つまり、セトリング期間は、光ファイバ202の先端202aが完全に停止するまでの時間とフレームレートとの関係から適宜設定することができるようになっている。なお、ブレーキング期間を短縮するため、ブレーキング期間の初期段階に二軸アクチュエータ204Cに逆相電圧を印加して制動トルクを積極的に加えてもよい。
【0028】
光ファイバ202の先端202aの前方には、対物光学系204Dおよびカバーガラス204Gが設置されている。対物光学系204Dは、複数枚の光学レンズで構成されており、図示省略されたレンズ枠を介して外筒204Aに保持されている。レンズ枠は、外筒204Aの内部において、内筒204Bと相対的に固定され支持されている。そのため、レンズ枠に保持された光学レンズ群は、外筒204Aの内部を内筒204Bと一体となってZ方向にスライドする。カバーガラス204Gは、外筒204Aの先端を覆うように固定されている。
【0029】
内筒204Bの基端面と外筒204Aの内壁面との間には、圧縮コイルばね204E及び形状記憶合金204Fが取り付けられている。圧縮コイルばね204Eは、自然長からZ方向に初期的に圧縮狭持されている。形状記憶合金204Fは、Z方向に長尺な棒形状を持ち、常温下で外力が加わると変形して、一定温度以上に加熱されると形状記憶効果で所定の形状に復元する性質を有している。形状記憶合金204Fは、形状記憶効果による復元力が圧縮コイルばね204Eの復元力より大きくなるように設計されている。走査ドライバ210は、サブCPU206が指定した設定値に応じたドライブ信号を生成して、形状記憶合金204Fを通電し加熱して伸縮量を制御する。形状記憶合金204Fは、伸縮量に応じて内筒204Bを光ファイバ202ごとZ方向に進退させる。
【0030】
光ファイバ202の先端202aから射出された励起光は、対物光学系204Dおよびカバーガラス204Gを透過して被写体の表面又は表層でスポットを形成する。スポット形成位置は、点光源である先端202aの進退に応じてZ軸方向に変位する。すなわち、共焦点光学ユニット204は、二軸アクチュエータ204Cによる先端202aのXY近似面上の周期的な円運動とZ方向の進退を併せることで、被写体を三次元走査する。
【0031】
光ファイバ202の先端202aは、対物光学系204Dの前側焦点位置に配置されているため、共焦点ピンホールとして機能する。先端202aには、励起光により励起された被写体の散乱成分(蛍光:ピーク波長515nm)のうち先端202aと光学的に共役な集光点からの蛍光のみが入射する。蛍光は、光ファイバ202を伝送後、光コネクタ152を通過して光分波合波器104に入射する。光分波合波器104は、入射した蛍光を光源102から射出される励起光と分離して光ファイバ112に導く。また、光ファイバ202の先端202aには、蛍光とともに励起光の反射光も入射し、光ファイバ112に導かれる。励起光の反射光は、蛍光画像を生成する際のノイズとなるため、受光器114の手前に設けられたフィルタ113によってカットされ、蛍光のみが受光器114で検出される。受光器114は、微弱な光を低ノイズで検出するため、例えば光電子増倍管等の高感度光検出器としてもよい。
【0032】
検出信号は、映像信号処理回路116に入力する。映像信号処理回路116は、CPU108の制御下で動作して、検出信号を一定のレートでサンプルホールド及びAD変換してデジタル検出信号を得る。ここで、サンプリング期間中の光ファイバ202の先端202aの位置(軌跡)が決まると、当該位置に対応する観察領域(走査領域)中のスポット形成位置、当該スポット形成位置からの戻り光を検出してデジタル検出信号を得る信号取得タイミングがほぼ一義的に決まる。本実施形態においては、予め、校正治具等を用いた実測結果を参考に信号取得タイミングからスポット形成位置が推定され、推定位置に対応する画像上の位置が決定されている。CPUメモリ110には、決定された信号取得タイミングと画素位置(画素アドレス)とを関連付けたリマップテーブルが格納されている。
【0033】
映像信号処理回路116は、リマップテーブルを参照して、各デジタル検出信号により表現される点像の画素アドレスへの割り当てを信号取得タイミングに応じて行う。以下、説明の便宜上、上記の割り当て作業をリマッピングと記す。映像信号処理回路116は、リマッピング結果に従って、各点像の空間的配列によって構成される画像の信号を画像メモリ118にフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングで画像メモリ118から映像信号出力回路120に掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ300に出力される。モニタ300の表示画面には、高倍率かつ高解像度の被写体の三次元の共焦点蛍光画像が表示される。
【0034】
続いて、本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1のキャリブレーションについて説明する。より詳しくは、走査型共焦点内視鏡システム1によって取得される画像を評価するための画像の取得方法について説明する。
図4は、本実施形態の画像評価のための画像取得に用いられる指標ユニット400の概略構成を示す側断面図である。
図4に示すように、指標ユニット400は、LED(Light Emitting Diode)410、LED駆動基板415、コリメートレンズ420、チャート430、およびこれらを収納する円筒形のキャップ状のハウジング450からなる。
【0035】
LED410は、所定の面積において均一の光を発光する面発光の緑色LEDである。別の実施形態では、複数の小型のLEDを用いて面発光させる構成としても良い。LED410は、LED駆動基板415に実装され、LED駆動基板415の駆動制御に従って、蛍光に相当する緑色の光(500nm〜600nm)を発光する。LED駆動基板415は、LED410に安定電流を供給するための定電流回路や電源などを備え、指標ユニット400に設けられた操作ボタン(不図示)の操作などに応じてLED410の駆動制御を行う。
【0036】
コリメートレンズ420は、LED410の発光面に装着され、LED410が発光する光を平行光に変換する。コリメートレンズ420の共焦点プローブ200側(光の出射側)の面には、LED410からの光が効率よく共焦点プローブ200に入射するように、AR(Anti Reflection:反射防止)コートが施されている。なお、コリメートレンズ420の共焦点プローブ200側のLED410側(光の入射側)の面には、一般的に、ARコートが施されている。
【0037】
チャート430は、走査型共焦点内視鏡システム1の画像評価に用いられる指標であり、コリメートレンズ420に接着固定されている。チャート430の共焦点プローブ200側の面(コリメートレンズ420に接着された面と反対の面)には、画像評価の目的に応じた様々なパターンがエッチングなどによって形成されている。本実施形態では、LED410からの光がコリメートレンズ420を通ってチャート430の背面から照射されることにより、チャート430のパターンニングが発光(ネガ)または、パターンニング以外が発光(ポジ)する。これにより、共焦点プローブ200によって、チャート430に形成されるパターンの画像が取得される。
【0038】
図5に、チャート430のパターン例を示す。
図5(a)は、グリッド(格子)パターンであり、
図5(b)は、縦横ラインパターンである。
図5(a)および
図5(b)は、主に画像の歪みを評価する場合に用いられる。また、
図5(c)は、光ファイバ202の走査領域を確認するためのパターンであり、
図5(d)は、解像度を確認するためのパターンである。本実施形態の共焦点プローブ200の光ファイバ202は、円の軌跡を描くように走査されるため、
図5(c)および
図5(d)のパターンは円形状となっている。これら4種類のパターンは、それぞれ別々のチャートに形成されても良いが、これら4種類のパターン全てを一枚のチャート上に形成しても良い。
【0039】
また、チャート430はLED410からの光を効率良く導くために、ガラス(青板)もしくは石英ベースで作成される。好適には、チャート430をクロムチャートで作成することによってキズを防ぐことができ、パターンが劣化することなく長期間使用することが可能となる。また、チャート430のコリメートレンズ420との接着面には、LED410からの光を反射しないようにARコートが施されている。さらに、チャート430の厚さはLED410からの光を効率良く共焦点プローブ200に導くため可能な限り薄く構成される。
【0040】
ハウジング450は、生体適合性を有するポニフェレンエーテル(PPE)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂を用いて形成される。ハウジング450には、共焦点光学ユニット204の外筒204Aの外径に対応する内径を有する装着孔455が形成される。共焦点プローブ200を装着孔455に挿入することで、チャート430(指標)に対する共焦点光学ユニット200のX方向およびY方向の位置決めを容易に行うことができる。また、指標ユニット400が共焦点プローブ200に装着されていない場合に、LED410の光がハウジング450からもれるのを防ぐため、装着孔455の入口455aにシャッタ(不図示)を設けても良い。シャッタは、共焦点プローブ200が装着孔455に押し込まれると開き、抜きとられると自動的に閉じる構成であっても良い。
【0041】
次に、
図6を参照して、本実施形態におけるキャリブレーションのための画像取得の流れを説明する。まず、共焦点プローブ200の先端に指標ユニット400を装着する(S1)。続いて、キャリブレーションの開始の指示に従って、CPU108の制御の下、光源102からの励起光をOFFにする(S2)。キャリブレーションの開始の指示は、ユーザ(術者、介助者など)による操作ボタン(不図示)の操作、または、指標ユニット400が共焦点プローブ200に装着されたことを自動的に検出して判断される。
【0042】
続いて、指標ユニット400の操作ボタン(不図示)を操作するなどしてLED410を駆動する(S3)。これにより、LED410から蛍光に相当する波長の光が発光される。続いて、共焦点プローブ200のサブCPU206によって、共焦点光学ユニット204の内筒204BをZ方向に進退させるよう、走査ドライバ210を制御する(S4)。このとき、CPU108は、受光器114における受光量をモニタリングし、受光量が最大となるZ位置(焦点位置)を検出する。そして、受光量が最大となるZ位置を発見した場合(S5:YES)、当該Z位置を共焦点プローブ200のサブメモリ208に記憶する(S6)。このように共焦点プローブ200が備えるZ方向への移動機構を利用することで、焦点位置を容易に検出することができる。そのため、指標ユニット400を共焦点プローブ200に取り付ける際に、チャート430に対する共焦点プローブの先端部のZ方向の位置決めを厳密に行う必要がない。
【0043】
その後、記憶したZ位置において、上述した通常観察時と同様の方法で、チャート430の画像を取得する(S7)。ここでは、光源102からの励起光はOFFされているため、LED410から発光される光(蛍光)に基づいたチャート430の画像(蛍光画像)が取得される。このようにして取得された画像に基づいて、画像の歪みや解像度などの評価が行われる。
【0044】
このように、本実施形態では、キャリブレーションを行う際に使用する指標に蛍光塗料を塗布する必要がないため、蛍光塗料の退色や濃淡ムラによる影響を受けることなく、容易に安定した画像の取得および評価を行うことができる。また、LEDを指標として用いることで、電流制御によって光量を容易にかつ安定して制御できるため、いつでも同じ光量の画像を取得することができ、再現性の高い評価を行うことができる。
【0045】
また、画像評価のための指標をキャップ形状の部材とすることで、従来のようなマイクロステージを備えた大がかりなキャリブレーション装置を必要とすることなく、手軽にキャリブレーションを行うことができる。さらに、チャート430においてミクロンオーダーのパターンニングが可能となるため、従来の金属グリッドでは不可能だった解像度などの評価を行うことも可能となる。また、LEDを用いることで、受光効率を評価することも可能となる。
【0046】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の各実施形態における構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な組み合わせおよび変形が可能である。まず、上記実施形態は、観察対象を渦巻状に走査する走査型共焦点内視鏡システムに適用した場合について説明したが、本発明は、その他の走査型共焦点内視鏡システムにも適用することが可能である。例えば、走査領域の水平方向を往復走査するラスタスキャン方式や、走査領域を正弦波的に走査するリサージュスキャン方式等を採用する走査型内視鏡システムにも本発明を適用することが可能である。この場合は、走査による軌跡の形状に応じたチャート430のパターンが用いられる。また、本実施形態の共焦点プローブ200は、電子内視鏡の鉗子チャネルを介して、患者の体内(例えば消化管内)に挿入されるプローブタイプのものとして説明したが、共焦点プローブ200は、電子内視鏡と一体に構成されてもよい。その場合、指標ユニット400の装着孔455の内径は電子内視鏡の外径に対応するよう形成され、チャート430は、共焦点光学ユニット204によって画像を取得できる位置に適宜固定される。
【0047】
また、LED410は、緑色LEDに限定されるものではなく、少なくとも蛍光に相当する波長の光を含む、白色LEDであっても良い。さらに、LED410は、少なくとも蛍光に相当する波長の光を発光可能な、波長を変更可能なLEDであってもよい。この場合、蛍光以外の画像(例えば赤色光による画像)を取得することが可能となり、評価の幅を広げることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、指標ユニット400を独立したユニットとして構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、指標ユニット400をシステム本体100に内蔵する構成としても良い。