(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、インクの吐出量を補正する各色のインクの吐出量を、当該各色の補正前のインクの吐出量に応じて補正することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
前記制御部は、インクの吐出量を補正する各色に対応する各ノズルの、基準色に対応するノズルに対する前記ノズル配列方向におけるずれ量に応じて、当該各色のインクの吐出量を補正することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
前記制御部は、前記境界部の画素に対する基準色のインクの吐出量が閾値以上の場合は、当該画素に対するインクの吐出量の補正を省略することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
前記制御部は、前記境界部の画素に対して使用される各インク色のうち明度が最も低い色を基準色として選択することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0021】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびインクジェットヘッドの概略構成図である。
図3は、搬送部およびインクジェットヘッドの平面図である。
図4は、ヘッドユニットの概略構成図である。
【0023】
以下の説明において、
図2の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図2において、左から右へ向かう方向が用紙PAの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送方向における上流、下流を意味する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、印刷部3と、制御部4とを備える。
【0025】
搬送部2は、用紙PAを搬送する。
図2に示すように、搬送部2は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13,14,15とを備える。
【0026】
搬送ベルト11は、用紙PAを吸着保持して搬送する。搬送ベルト11は、駆動ローラ12および従動ローラ13〜15に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト11には、用紙PAを吸着保持するためのベルト穴が多数形成されている。搬送ベルト11は、ファン(図示せず)の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、上面に用紙PAを吸着保持する。搬送ベルト11は、
図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙PAを右方向に搬送する。
【0027】
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を回転させる。駆動ローラ12は、図示しないモータにより駆動される。
【0028】
従動ローラ13〜15は、搬送ベルト11を介して駆動ローラ12に従動する。従動ローラ13は、駆動ローラ12と略同じ高さで、駆動ローラ12の左側に配置されている。従動ローラ14,15は、駆動ローラ12および従動ローラ13の下方において、互いに左右方向に離間して、略同じ高さに配置されている。
【0029】
印刷部3は、搬送部2により搬送される用紙PAに画像を印刷する。印刷部3は、インクジェットヘッド21A,21Bと、ヘッド駆動部22とを備える。
【0030】
インクジェットヘッド21A,21Bは、ライン型のインクジェットヘッドであり、搬送部2により搬送される用紙PAにインクを吐出する。インクジェットヘッド21Aは、シアン(C)およびブラック(K)のインクを吐出する。インクジェットヘッド21Bは、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出する。インクジェットヘッド21A,21Bは、上流側からこの順で、用紙PAの搬送方向(左右方向)に沿って配置されている。
【0031】
インクジェットヘッド21A,21Bは、それぞれ複数のヘッドユニット31A、複数のヘッドユニット31Bを有する。本実施の形態では、インクジェットヘッド21A,21Bは、
図3に示すように、それぞれ6個のヘッドユニット31A、6個のヘッドユニット31Bから構成されている。
【0032】
6個のヘッドユニット31Aは、用紙PAの搬送方向(副走査方向)に直交する前後方向(主走査方向)に沿って千鳥配置されている。すなわち、6個のヘッドユニット31Aは、前後方向に沿って配列され、かつ、1つおきに左右方向における位置をずらして配置されている。6個のヘッドユニット31Bは、6個のヘッドユニット31Aと同様に、前後方向に沿って千鳥配置されている。
【0033】
ヘッドユニット31Aは、
図4に示すように、ヘッドモジュール32Cとヘッドモジュール32Kとが貼り合わされて構成されている。ヘッドモジュール32Cがヘッドモジュール32Kの上流側に配置されている。ヘッドユニット31Bは、ヘッドモジュール32Mとヘッドモジュール32Yとが貼り合わされて構成されている。ヘッドモジュール32Mがヘッドモジュール32Yの上流側に配置されている。なお、
図4は、ヘッドユニット31A,31Bを下側から見た図である。
【0034】
ヘッドモジュール32C,32K,32M,32Yは、それぞれノズル列33C,33K,33M,33Yを有する。ノズル列33C,33K,33M,33Yは、それぞれ複数のノズル34C、複数のノズル34K、複数のノズル34M、複数のノズル34Yからなる。なお、色の区別が必要ない場合等に、符号における色を示すアルファベットの添え字(C,K,M,Y)を省略することがある。
【0035】
ノズル34C,34K,34M,34Yは、それぞれシアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。ヘッドモジュール32では、1つのノズル34から1画素に対して吐出するインクの液滴数(ドロップ数)を変えることができるようになっており、ドロップ数により濃度を表現する階調印刷が行われる。具体的には、ノズル34は、1画素に対して1〜7ドロップを吐出できる。ノズル34は、ヘッドモジュール32の下面に開口している。各ノズル列33において、ノズル34は、ノズル配列方向である主走査方向(前後方向)に沿って所定のピッチPで等間隔に配置されている。
【0036】
ヘッドユニット31Aにおいて、ノズル列33Cのノズル34Cとノズル列33Kのノズル34Kとが、互いに主走査方向に半ピッチ(P/2)だけずれるように配置されている。ヘッドモジュール32C,32Kが主走査方向に互いにずれるように貼り合わされることで、
図4のようにノズル列33C,33Kが互いに半ピッチだけずらされている。
【0037】
同様に、ヘッドユニット31Bにおいて、ノズル列33Mのノズル34Mとノズル列33Yのノズル34Yとが、互いに主走査方向に半ピッチだけずれるように配置されている。ヘッドモジュール32M,32Yが主走査方向に互いにずれるように貼り合わされることで、ノズル列33M,33Yが互いに半ピッチだけずらされている。
【0038】
図4に示すように、ヘッドユニット31Aのノズル列33Cの各ノズル34Cと、ヘッドユニット31Bのノズル列33Mの各ノズル34Mとは、主走査方向における位置が一致している。また、ヘッドユニット31Aのノズル列33Kの各ノズル34Kと、ヘッドユニット31Bのノズル列33Yの各ノズル34Yとは、主走査方向における位置が一致している。すなわち、ヘッドユニット31Aとヘッドユニット31Bとは、主走査方向における各ノズル34の位置が互いに一致するように配置されている。
【0039】
図4のようなノズル34の配置のため、インクジェット印刷装置1では、隣接するノズル列間で主走査方向に互いに半ピッチだけ離れた位置のノズル34を同一画素の形成に使用する。したがって、同一画素に対応するノズル34C,34K,34M,34Yにおいて、ノズル34C,34Mとノズル34K,34Yとの間で主走査方向における位置が半ピッチずれている。
【0040】
ヘッド駆動部22は、インクジェットヘッド21A,21Bを駆動させる。具体的には、ヘッド駆動部22は、ヘッドモジュール32を駆動させ、ノズル34からインクを吐出させる。
【0041】
制御部4は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0042】
制御部4は、印刷時において、用紙PAを搬送させつつ、ドロップデータに基づき、インクジェットヘッド21A,21Bのノズル34から用紙PAへインクを吐出して画像を印刷するよう搬送部2および印刷部3を制御する。ドロップデータは、インクジェットヘッド21A,21Bによるインク吐出に対応する形式の画像データであり、各画素に吐出する各色のインクのドロップ数を示すデータである。
【0043】
制御部4は、
図5に示す吐出量対応補正係数テーブル41を記憶している。吐出量対応補正係数テーブル41は、後述するように、吐出量補正処理において参照される。吐出量補正処理は、主走査方向における、画像とその外部との境界部の画素に対するインクのドロップ数(吐出量)を補正する処理である。画像の外部は、ドロップデータにおいて全色のドロップ数が0の領域である。
【0044】
吐出量対応補正係数テーブル41は、補正前のドロップ数に応じた吐出量対応削減係数Kdcおよび吐出量対応増加係数Kdiの値を保持している。吐出量対応削減係数Kdcは、吐出量補正処理でドロップ数が削減される色のインクの、削減後のドロップ数を決定するために用いられるものである。吐出量対応増加係数Kdiは、吐出量補正処理でドロップ数が増加する色のインクの、増加後のドロップ数を決定するために用いられるものである。
【0045】
また、制御部4は、
図6に示すずれ量対応補正係数テーブル42を記憶している。ずれ量対応補正係数テーブル42は、上述の吐出量対応補正係数テーブル41と同様に、吐出量補正処理において参照される。
【0046】
ずれ量対応補正係数テーブル42は、吐出量補正処理でドロップ数が補正される色に対応するノズル34の基準色に対応するノズル34に対する主走査方向におけるずれ量に応じたずれ量対応削減係数Kgcおよびずれ量対応増加係数Kgiの値を保持している。ずれ量対応削減係数Kgcは、吐出量補正処理でドロップ数が削減される色のインクの、削減後のドロップ数を決定するために用いられるものである。ずれ量対応増加係数Kgiは、吐出量補正処理でドロップ数が増加する色のインクの、増加後のドロップ数を決定するために用いられるものである。
【0047】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0048】
図7は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図7のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷対象の画像データが入力されることにより開始となる。
【0049】
図7のステップS1において、制御部4は、RGB形式の画像データからドロップデータを生成する。
【0050】
次いで、ステップS2において、制御部4は、ドロップデータを解析して、主走査方向における境界部の画素を、補正対象の画素として検出する。主走査方向における境界部の画素は、主走査方向における、画像とその外部との境界部の画素である。
【0051】
主走査方向における境界部の画素としては、印刷される画像の主走査方向(前後方向)における前側の端部の画素、および後側の端部の画素がある。また、副走査方向(左右方向)に沿って印刷される1画素幅の細線の画素も、主走査方向における境界部の画素に含まれる。
【0052】
次いで、ステップS3において、制御部4は、ステップS2で検出した補正対象の画素に対する吐出量補正処理を行う。
【0053】
具体的には、まず、制御部4は、補正対象の画素における基準色を選択する。ここで、制御部4は、補正対象の画素に対して使用される各インク色のうち最も明度が低い色を、当該画素における基準色として選択する。例えば、補正対象の画素に対してシアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色が使用される場合、制御部4は、それらの中で最も明度が低い色であるブラックを、当該画素における基準色として選択する。
【0054】
そして、基準色のドロップ数が閾値(例えば、5ドロップ)未満の場合において、補正対象の画素に対する基準色以外の色のインクのドロップ数の補正を行う。基準色のドロップ数が閾値以上の場合、制御部4は、当該画素に対するインクのドロップ数の補正を省略する。
【0055】
基準色のドロップ数が閾値未満の場合、制御部4は、補正対象の画素における削減対象の色のインクのドロップ数を、ドロップデータにおける補正前のドロップ数から削減する。削減対象の色は、補正対象の画素に対して使用される各インク色に対応する各ノズル34のうち主走査方向において基準色に対応するノズル34より画像の外部側にあるノズル34に対応する色である。
【0056】
また、制御部4は、補正対象の画素における増加対象の色のインクのドロップ数を、ドロップデータにおける補正前のドロップ数から増加させる。増加対象の色は、補正対象の画素に対して使用される各インク色に対応する各ノズル34のうち主走査方向において基準色に対応するノズル34より画像の内部側にあるノズル34に対応する色である。
【0057】
ここで、上述の削減対象の色、増加対象の色を決定する方法の具体例を説明する。なお、後述のように、ヘッドユニット31A,31Bにおいて取付位置の位置ずれが生じる場合があるが、ここでは、位置ずれはなく、ヘッドユニット31A,31Bのノズル34C,34K,34M,34Yは
図4のような位置関係であるとして説明する。
【0058】
例えば、前後方向(主走査方向)における画像の前側の端部における補正対象の画素に対してシアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色が使用されるとする。この場合、基準色はブラックである。また、画像の前側の端部においては、前側が画像の外部側、後側が画像の内部側である。
【0059】
そして、
図4のようなノズル34の配置から、補正対象の画素に使用される各色に対応する各ノズル34のうち、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の外部側(前側)に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の内部側(後側)のノズルはない。したがって、この例のような画像の前側の端部の補正対象の画素では、削減対象の色はシアンおよびマゼンタであり、増加対象の色はない。
【0060】
また、例えば、前後方向における画像の後側の端部における補正対象の画素に対してシアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色が使用されるとする。画像の後側の端部においては、後側が画像の外部側、前側が画像の内部側である。
【0061】
この場合、補正対象の画素に使用される各色に対応する各ノズル34のうち、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の内部側(前側)に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の外部側(後側)のノズルはない。したがって、この例のような画像の後側の端部の補正対象の画素では、削減対象の色はなく、増加対象の色はシアンおよびマゼンタである。
【0062】
また、例えば、副走査方向(左右方向)に沿って印刷される1画素幅の細線の画素に対してシアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色が使用されるとする。ここで、前述のように、副走査方向に沿って印刷される1画素幅の細線の画素も、主走査方向における境界部の画素に含まれ、補正対象の画素となる。
【0063】
副走査方向に沿う1画素幅の細線では、画像である細線が主走査方向において1画素の幅しかないため、細線の前側および後側をいずれも画像の外部側とみなせる。したがって、この場合、補正対象の画素に使用される各色に対応する各ノズル34のうち、ブラックに対応するノズル34Kより画像の外部側に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の内部側のノズルはない。よって、この例のような細線の画素である補正対象の画素では、削減対象の色はシアンおよびマゼンタであり、増加対象の色はない。
【0064】
以上のように、吐出量補正処理における削減対象の色、増加対象の色が決定される。
【0065】
削減対象の色、増加対象の色におけるドロップ数の削減、増加を行う際、制御部4は、
図5の吐出量対応補正係数テーブル41および
図6のずれ量対応補正係数テーブル42を参照する。そして、補正対象の画素における削減対象の色のインクについては、式(1)で算出されるDccの値の小数点以下を切り捨てた値を、削減後(補正後)のドロップ数として決定する。ここで、式(1)におけるDcは、補正対象の画素における削減対象の色のインクの、ドロップデータにおける補正前のドロップ数である。
【0066】
Dcc=Kdc×Kgc×Dc …(1)
また、補正対象の画素における増加対象の色のインクについては、式(2)で算出されるDacの値の小数点以下を切り上げた値を、増加後(補正後)のドロップ数として決定する。ここで、式(2)におけるDaは、補正対象の画素における増加対象の色のインクの、ドロップデータにおける補正前のドロップ数である。
【0067】
Dac=Kdi×Kgi×Da …(2)
図5に示すように、吐出量対応削減係数Kdcは、補正前のドロップ数が大きいほど、ドロップ数の削減率を大きくするような係数である。また、吐出量対応増加係数Kdiは、補正前のドロップ数が小さいほど、ドロップ数の増加率を大きくするような係数である。これにより、印刷画質に過度の変化が生じることを抑えるようにしている
また、
図6に示すように、ずれ量対応削減係数Kgcは、ずれ量が大きいほど、ドロップ数の削減率を大きくするような係数である。また、ずれ量対応増加係数Kgiは、ずれ量が大きいほど、ドロップ数の増加率を大きくするような係数である。これにより、同一画素に対応する各ノズル34の位置関係に応じて、補正量を適切に調整するようにしている。
【0068】
ここで、インクジェット印刷装置1では、
図4に示したように、ヘッドユニット31Aとヘッドユニット31Bとは、主走査方向における各ノズル34の位置が互いに一致するように配置される。このため、ヘッドユニット31A,31Bの取付位置が正確であれば、ドロップ数が補正される色に対応するノズル34の基準色に対応するノズル34に対する主走査方向におけるずれ量は、0かP/2となる。
【0069】
しかし、前述のように、ヘッドユニット31A,31Bの取付位置に位置ずれが生じる可能性がある。すなわち、ノズル34Cとノズル34Mの主走査方向における位置がずれ、同様にノズル34Kとノズル34Yの主走査方向における位置がずれる可能性がある。
【0070】
このような位置ずれがある場合、同一画素に対応するノズル34C,34K,34M,34Yにおける主走査方向の位置ずれが最小になるように、ノズル34C,34K,34M,34Yの対応関係が決定される。ここで、ヘッドユニット31A,31Bの位置関係によって、同一画素に対応するノズル34C,34K,34M,34Yのなかで、主走査方向に最大で3P/4の位置ずれが生じる。したがって、ヘッドユニット31A,31Bの取付位置のずれを考慮すると、ドロップ数が補正される色に対応するノズル34の基準色に対応するノズル34に対する主走査方向におけるずれ量は、最大で3P/4となる。このようなことから、
図6におけるずれ量の値は0とP/2とに限られてはおらず、その最大値が3P/4となっている。
【0071】
ここで、ヘッドユニット31A,31Bの位置ずれは、副走査方向に沿って並列するヘッドユニット31A,31Bの組ごとに生じる。ヘッドユニット31A,31Bの位置ずれが生じているか否かは、テストパターンの印刷等により予め検出される。また、ヘッドユニット31A,31Bの組ごとに、同一画素に対応するノズル34C,34K,34M,34Yの主走査方向における前後位置関係や相互間の距離も予め検出され、それらを含むノズル位置情報が制御部4に記憶される。
【0072】
吐出量補正処理において、制御部4は、上述のノズル位置情報に基づき、補正対象の画素における基準色に対応するノズル34と他の色に対応するノズル34との前後位置関係を判断し、削減対象の色、増加対象の色を決定する。
【0073】
また、ドロップ数の削減、増加を行う際には、制御部4は、ノズル位置情報に基づき、基準色に対応するノズル34に対する他の色に対応するノズル34の主走査方向におけるずれ量を算出する。そして、制御部4は、算出したずれ量に応じてずれ量対応削減係数Kgc、ずれ量対応増加係数Kgiの値を選択する。
【0074】
前述のように、式(1),(2)を用いて、補正対象の画素における補正対象の色のインクの補正後のドロップ数を決定すると、
図7のステップS4において、制御部4は、印刷を実行する。
【0075】
具体的には、制御部4は、搬送部2の駆動ローラ12を回転駆動させる。これにより、搬送ベルト11が回転する。図示しない給紙部から用紙PAが給紙されると、用紙PAが搬送部2により搬送される。制御部4は、搬送部2により搬送される用紙PAに対し、吐出量補正処理後のドロップデータに基づき、インクジェットヘッド21A,21Bを駆動させてインクの液滴を吐出させる。これにより、用紙PAに画像が印刷される。
【0076】
ここで、本実施の形態の吐出量補正処理を行わずに印刷した画像のドットイメージの例を
図8に示す。
図8は、
図4のように位置ずれのないヘッドユニット31A,31Bにより、シアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色を使用して印刷したものである。なお、
図8では、見易さのため、各色のドット51C,51K,51M,51Yを紙面の上下にずらして描いているが、実際は主走査方向に沿った同じライン上に打たれるものである。
【0077】
図4のようなノズル34の配置により、
図8に破線で囲んで示す画像の前側の端部では、シアンのドット51Cおよびマゼンタのドット51Mが、画像の外部側である前側に突出して形成されている。また、一点鎖線で囲んで示す画像の後側の端部では、ブラックのドット51Kおよびイエローのドット51Yが、画像の外部側である後側に突出して形成されている。
【0078】
このため、
図8の画像において、前側の端部では、シアンおよびマゼンタによる色味が強調される。一方、後側の端部では、ブラックおよびイエローによる色味が強調される。
【0079】
これに対し、
図8と同様の画像を、本実施の形態の吐出量補正処理を行って印刷した画像のドットイメージを
図9に示す。
図9の画像において、シアン、ブラック、マゼンタ、イエローのなかで最も明度が低いブラックが基準色である。
【0080】
図4のようなノズル34の配置から、
図9の画像の前側の端部では、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の外部側(前側)に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の内部側(後側)のノズルはない。したがって、前側の端部の画素では、シアンおよびマゼンタが削減対象の色であり、増加対象の色はない。
【0081】
このため、
図9では、前側の端部の画素において、シアンのドット61Cおよびマゼンタのドット61Mが、元のドロップデータにおけるドロップ数から削減されたドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図9のドット61C,61Mは、それぞれ
図8のドット51C,51Mより小さくなっている。これにより、
図9の画像では、
図8の画像に比べて、前側の端部におけるシアンのドットおよびマゼンタのドットの、外部側(前側)への突出量が減少している。
【0082】
一方、
図9の画像の後側の端部では、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の内部側(前側)に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の外部側(後側)のノズルはない。したがって、後側の端部の画素では、削減対象の色はなく、シアンおよびマゼンタが増加対象の色である。
【0083】
このため、
図9では、後側の端部の画素において、シアンのドット62Cおよびマゼンタのドット62Mが、元のドロップデータにおけるドロップ数から増加したドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図9のドット62C,62Mは、それぞれ
図8のドット51C,51Mより大きくなっている。これにより、
図9の画像では、
図8の画像に比べて、後側の端部におけるブラックのドットおよびイエローのドットの、外部側(後側)への突出量が減少している。
【0084】
このように、
図9の画像では、
図8の画像に比べて、前側の端部におけるシアンのドットおよびマゼンタのドットの突出量が減少し、後側の端部におけるブラックのドットおよびイエローのドットの突出量が減少している。この結果、
図9の画像では、
図8の画像に比べて、前側の端部および後側の端部における色ずれが軽減される。
【0085】
次に、本実施の形態の吐出量補正処理を行わずに印刷した副走査方向に沿う1画素幅の細線の画素のドットイメージの例を
図10に示す。
図10は、
図4のように位置ずれのないヘッドユニット31A,31Bにより、シアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色を使用して印刷したものである。
【0086】
図4のようなノズル34の配置により、
図10の細線の画素では、シアン、マゼンタのドット51C,51Mと、ブラック、イエローのドット51K,51Yとが、前後にずれて形成されている。このため、細線の前側では、シアンおよびマゼンタによる色味が強調される。一方、細線の後側では、ブラックおよびイエローによる色味が強調される。
【0087】
これに対し、
図10と同様の細線の画素を、本実施の形態の吐出量補正処理を行って印刷した細線の画素のドットイメージを
図11に示す。
【0088】
前述のように、副走査方向に沿う1画素幅の細線の画像では、細線の前側および後側をいずれも画像の外部側とみなせる。したがって、
図4のようなノズル34の配置から、
図10の細線の画像では、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の外部側に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の内部側のノズルはない。よって、削減対象の色はシアンおよびマゼンタであり、増加対象の色はない。
【0089】
このため、
図11では、シアンのドット71Cおよびマゼンタのドット71Mが、元のドロップデータにおけるドロップ数から削減されたドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図11のドット71C,71Mは、それぞれ
図10のドット51C,51Mより小さくなっている。これにより、
図11の画素による細線では、
図10の画素による細線に比べて、シアンのドットおよびマゼンタのドットの、ブラックのドット51Kおよびイエローのドット51Yに対する前側への突出量が減少している。この結果、細線の前側と後側との間での色ずれが軽減される。
【0090】
次に、ヘッドユニット31A,31Bの取付位置に位置ずれがある場合について説明する。
【0091】
ここでは、
図12に示すように、ヘッドユニット31A,31B間の位置ずれにより、ノズル34Cとノズル34Mの主走査方向における位置が互いにP/4だけずれているものとする。ノズル34Kとノズル34Yの主走査方向における位置も互いにP/4だけずれている。
図12のヘッドユニット31A,31Bにおける同一画素に対応するノズル34の組み合わせの1つを、一点鎖線で囲んで示す。
【0092】
図12に示す配置のヘッドユニット31A,31Bにより、本実施の形態の吐出量補正処理を行わずに印刷した画像のドットイメージの例を
図13に示す。
図13は、シアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色を使用して印刷したものである。
【0093】
図12のようなノズル34の配置により、
図13に破線で囲んで示す画像の前側の端部では、シアンのドット51Cが、画像の外部側である前側に最も突出し、マゼンタのドット51Mが次に突出して形成されている。また、一点鎖線で囲んで示す画像の後側の端部では、イエローのドット51Yが、画像の外部側である後側に最も突出し、ブラックのドット51Kが次に突出して形成されている。
【0094】
このため、
図13の画像において、前側の端部では、シアンおよびマゼンタ、特にシアンによる色味が強調される。一方、後側の端部では、イエローおよびブラック、特にイエローによる色味が強調される。
【0095】
これに対し、
図12に示す配置のヘッドユニット31A,31Bにより、
図13と同様の画像を、本実施の形態の吐出量補正処理を行って印刷した画像のドットイメージを
図14に示す。
【0096】
図12のようなノズル34の配置から、
図14の画像の前側の端部では、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の外部側(前側)に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。また、ノズル34Kより画像の内部側(後側)に、イエローに対応するノズル34Yがある。したがって、前側の端部の画素では、シアンおよびマゼンタが削減対象の色であり、イエローが増加対象の色である。
【0097】
このため、
図14では、前側の端部の画素において、シアンのドット81Cおよびマゼンタのドット81Mが、元のドロップデータにおけるドロップ数から削減されたドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図14のドット81C,81Mは、それぞれ
図13のドット51C,51Mより小さくなっている。また、
図14では、前側の端部の画素において、イエローのドット81Yが、元のドロップデータにおけるドロップ数から増加したドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図14のドット81Yは、
図13のドット51Yより大きくなっている。これにより、
図14の画像では、
図13の画像に比べて、前側の端部の画素における各色のドットの前側の端の位置の、相互の位置ずれが小さくなっている。
【0098】
一方、
図14の画像の後側の端部では、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の内部側(前側)に、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するノズル34C,34Mがある。一方、ノズル34Kより画像の外部側(後側)に、イエローに対応するノズル34Yがある。したがって、後側の端部の画素では、シアンおよびマゼンタが増加対象の色であり、イエローが削減対象の色である。
【0099】
このため、
図14では、後側の端部の画素において、シアンのドット82Cおよびマゼンタのドット82Mが、元のドロップデータにおけるドロップ数から増加したドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図14のドット82C,82Mは、それぞれ
図13のドット51C,51Mより大きくなっている。また、
図14では、後側の端部の画素において、イエローのドット82Yが、元のドロップデータにおけるドロップ数から削減されたドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図14のドット82Yは、それぞれ
図13のドット51Yより小さくなっている。
【0100】
これにより、
図14の画像では、
図13の画像に比べて、後側の端部の画素における各色のドットの後側の端の位置の、相互の位置ずれが小さくなっている。
【0101】
このように、
図14の画像では、
図13の画像に比べて、前側の端部の画素における各色のドットの前側の端の位置の、相互の位置ずれが小さくなっている。また、
図14の画像では、
図13の画像に比べて、後側の端部の画素における各色のドットの後側の端の位置の、相互の位置ずれが小さくなっている。この結果、
図14の画像では、
図13の画像に比べて、前側の端部および後側の端部における色ずれが軽減される。
【0102】
次に、
図12に示す配置のヘッドユニット31A,31Bにより、本実施の形態の吐出量補正処理を行わずに印刷した副走査方向に沿う1画素幅の細線の画素のドットイメージの例を
図15に示す。
図15は、シアン、ブラック、マゼンタ、イエローの4色を使用して印刷したものである。
【0103】
図12のようなノズル34の配置により、
図15の細線の画素では、シアンのドット51C、マゼンタのドット51M、ブラックのドット51K、イエローのドット51Yが、前側からこの順で、互いにずれて形成されている。このため、細線の前側では、シアンおよびマゼンタによる色味が強調される。一方、細線の後側では、ブラックおよびイエローによる色味が強調される。
【0104】
これに対し、
図12に示す配置のヘッドユニット31A,31Bにより、
図15と同様の細線の画素を、本実施の形態の吐出量補正処理を行って印刷した細線の画素のドットイメージを
図16に示す。
【0105】
前述のように、副走査方向に沿う1画素幅の細線の画像では、細線の前側および後側をいずれも画像の外部側とみなせる。したがって、
図12のようなノズル34の配置から、
図15の細線の画像では、基準色であるブラックに対応するノズル34Kより画像の外部側に、シアン、マゼンタ、イエローにそれぞれ対応するノズル34C,34M,34Yがある。一方、ノズル34Kより画像の内部側のノズルはない。よって、削減対象の色はシアン、マゼンタ、およびイエローであり、増加対象の色はない。
【0106】
このため、
図16では、シアンのドット91C、マゼンタのドット91M、およびイエローとドット91Yが、元のドロップデータにおけるドロップ数から削減されたドロップ数のインクで形成されている。したがって、
図16のドット91C,91M,91Mは、それぞれ
図15のドット51C,51M,51Yより小さくなっている。これにより、
図16の画素による細線では、
図15の画素による細線に比べて、シアンのドット、マゼンタのドット、およびイエローのドットの、ブラックのドット51Kに対する外部側(前側および後側)への突出量が減少している。この結果、細線の前側と後側との間での色ずれが軽減される。
【0107】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部4は、主走査方向における境界部の画素に対するインクの吐出量(ドロップ数)の補正を行う。具体的には、制御部4は、境界部の画素に対して使用される各インク色に対応する各ノズル34のうち主走査方向において基準色に対応するノズル34より画像の外部側にあるノズル34に対応する色のインクの境界部の画素に対する吐出量を削減する。また、制御部4は、基準色に対応するノズル34より画像の内部側にあるノズル34に対応する色のインクの境界部の画素に対する吐出量を増加させる。これにより、主走査方向における各色のノズル34の位置ずれに起因する画像の境界部(輪郭)の色ずれを軽減できる。この結果、印刷画質の低下を軽減できる。
【0108】
また、制御部4は、インクの吐出量を補正する各色のインクの吐出量を、当該各色の補正前のインクの吐出量に応じて補正する。具体的には、制御部4は、補正後の吐出量を決定するために、補正前のドロップ数(吐出量)に応じた吐出量対応削減係数Kdcおよび吐出量対応増加係数Kdiを用いる。これにより、吐出量に応じた補正量とすることで、印刷画質に過度の変化が生じることを抑制できる。
【0109】
また、制御部4は、インクの吐出量を補正する各色に対応する各ノズル34の、基準色に対応するノズル34に対する主走査方向におけるずれ量に応じて、当該各色のインクの吐出量を補正する。具体的には、制御部4は、補正後の吐出量を決定するために、補正する色に対応するノズル34の基準色に対応するノズル34に対する主走査方向におけるずれ量に応じたずれ量対応削減係数Kgcおよびずれ量対応増加係数Kgiを用いる。これにより、インクの吐出量を補正する各色に対応する各ノズル34の位置関係に応じて、補正量を適切に調整することができる。
【0110】
また、制御部4は、主走査方向における境界部の画素に対する基準色の吐出量(ドロップ数)が閾値以上の場合、当該画素に対するインクの吐出量の補正を省略する。基準色の吐出量が多く、そのドットが大きい場合は、他の色のドットに基準色のドットが重なる範囲が広く、基準色のドットから外部側への他の色のドットの突出量が小さくなる。このため、境界部の色ずれが目立ちにくい。そこで、基準色の吐出量が閾値以上の場合は、当該画素に対するインクの吐出量の補正を省略することで、制御部4の処理負担を抑えるとともに、不要な印刷画質の変化を抑制できる。
【0111】
また、制御部4は、主走査方向における境界部の画素に対して使用される各インク色のうち明度が最も低い色を基準色として選択する。これにより、視認性が高い色を基準色とすることで、境界部の色ずれをより目立ちにくくすることができる。
【0112】
なお、上記実施の形態では、2つのインクジェットヘッド21A,21Bにおいて、ノズル列33が2列ずつ配置されている構成としたが、ノズル列の構成はこれに限らない。互いに異なる色のインクに対応する複数のノズル列のうちの少なくとも1つのノズル列が、それ以外の少なくとも1つのノズル列に対して、ノズルの位置が主走査方向にずれるように配置されているものであれば、本発明は適用可能である。
【0113】
また、上記実施の形態では、用紙を移動させつつ固定のインクジェットヘッドにより印刷するライン型のインクジェット印刷装置について説明したが、インクジェットヘッドを移動させつつ印刷するシリアル型のインクジェット印刷装置にも本発明は適用可能である。
【0114】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。