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特許6148614複数の動作環境を有する、生体試料を分析するための分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148614
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】複数の動作環境を有する、生体試料を分析するための分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20170607BHJP
   G06F 9/445 20060101ALI20170607BHJP
   G06F 11/36 20060101ALI20170607BHJP
   G06F 9/46 20060101ALI20170607BHJP
   G06Q 50/22 20120101ALI20170607BHJP
【FI】
   G01N35/00 E
   G06F9/06 650C
   G06F9/06 620P
   G06F9/06 610A
   G06F9/46 350
   G06Q50/22
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-259001(P2013-259001)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2014-122889(P2014-122889A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】12199116.0
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】パウル・フランク
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ・レーリグ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・シュヴァイクハウザー
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−277424(JP,A)
【文献】 特開2005−003455(JP,A)
【文献】 特開2008−021114(JP,A)
【文献】 特開2009−085885(JP,A)
【文献】 特開平04−172249(JP,A)
【文献】 米国特許第08201732(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を分析するための分析システムであって、
少なくとも1つの分析器であり、前記生体試料を分析して分析結果を取得するための分析部を備え、分析器コントローラ(AC)を各々が備える少なくとも1つの分析器と、
少なくとも2つの動作環境から選択される、選択された動作環境の、選択情報を受信するように動作可能な分析器データ管理システム(ADMS)と
を備え、
前記ADMSは、前記選択情報を受信すると、前記分析システムを前記選択された動作環境に切換えるように動作可能であり、前記少なくとも2つの動作環境の各々は、分析器制御システム(ACS)が実装されたACオペレーティングシステム、および検査データ管理システム(LDMS)が実装されたADMSオペレーティングシステムを提供し、前記ACSは、前記分析部を制御して前記分析結果を取得するように動作可能であり、前記ACSは、前記LDMSに前記分析結果を提供するように動作可能であり、
前記ADMSオペレーティングシステムは、前記分析結果を検査情報システム(LIS)へ転送するように動作可能であり、前記LDMSは、テスト状態と検証済状態とを示す検証フラグを備え、前記検証フラグは、前記テスト状態にある前記LISに対する前記分析結果の前記転送を無効にするように動作可能であり、前記LDMSは、ユーザーインターフェースを備え、前記LDMSは、前記ユーザーインターフェースからフラグ選択命令を受け取るように動作可能であり、前記フラグ選択命令は、前記テスト状態または前記検証済状態を記述し、前記LDMSは、前記フラグ選択命令に従って、前記検証フラグをセットするように動作可能である、分析システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの分析器は、前記ACSからのコマンドを受け取るように動作可能な1つまたは複数の組込みシステムをさらに備え、前記ACSは、コマンドを前記組込みシステムに送信し、前記分析部を制御して前記分析結果を取得するように動作可能であり、前記少なくとも1つの組込みシステムは、ファームウェアを備え、前記ACSは、前記選択された動作環境へ切換える場合に、前記ファームウェアを変更するように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
記選択された動作環境の前記ADMSオペレーティングシステムに実装された前記LDMSは、さらに、前記選択された動作環境のソフトウェアの変更を検出するように動作可能であり、前記LDMSは、前記ソフトウェアの変更が検出された場合に、前記検証フラグを前記テスト状態にセットするように動作可能である、請求項に記載の分析システム。
【請求項4】
前記ADMSは、ADMSブートローダを備え、前記ADMSは、ADMS記憶装置を備え、前記ADMS記憶装置は、前記少なくとも2つの動作環境の各々について、ADMSシステム記憶装置パーティションを備え、前記ADMSブートローダは、前記選択情報を受信するように動作可能であり、前記選択情報は、前記少なくとも2つの動作環境の各々に対して、ADMS記憶装置パーティションから選択される、選択されたADMS記憶装置パーティションを決定し、前記ADMSブートローダは、前記ADMSに対して、前記選択されたADMS記憶装置パーティションを起動させるように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
前記ADMSは、前記少なくとも2つの動作環境の各々に対して、ADMS仮想マシンを提供するためのADMS仮想化システムを備え、前記ADMS仮想化システムは、前記選択情報を受信するように動作可能であり、前記選択情報は、動作可能なADMS仮想マシンを決定し、前記動作可能なADMS仮想マシンは、前記少なくとも2つの動作環境の各々に対して、前記ADMS仮想マシンから選択され、前記ADMS仮想化システムは、前記動作可能なADMS仮想マシンだけが、前記ACSに対して前記分析結果を要求できるように動作可能であり、前記ADMS仮想化システムは、前記動作可能なADMS仮想マシンだけが、前記LDMSからのデータを受信できるように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項6】
前記ADMS仮想化システムは、前記少なくとも1つの分析器をエミュレートするよう動作可能なエミュレータに対して、非選択の仮想マシンを接続するように動作可能であり、前記非選択の仮想マシンは、前記少なくとも2つの動作環境の各々に対して、前記ADMS仮想マシンから選択され、前記非選択の仮想マシンは、前記動作可能なADMS仮想マシンではない、請求項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記分析器は、ACブートローダを備え、前記ACは、AC記憶装置を備え、前記AC記憶装置は、前記少なくとも2つの動作環境の各々について、AC記憶装置パーティションを備え、前記ACブートローダは、前記LDMSから前記選択情報を受信するように動作可能であり、前記選択情報は、選択されたAC記憶装置パーティションを決定し、前記ACブートローダは、前記選択情報を受信すると、前記ACに対して、前記選択されたAC記憶装置パーティションを起動させるように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項8】
前記ACは、前記少なくとも2つの動作環境の各々に対して、分析器仮想マシンを提供するための分析器仮想化システムを備え、前記分析器仮想化システムは、前記選択情報を受信するように動作可能であり、前記選択情報は、動作可能な分析器仮想マシンを決定し、前記動作可能な分析器仮想マシンは、前記少なくとも2つの動作環境の各々に対して、前記分析器仮想マシンから選択され、前記分析器仮想化システムは、前記動作可能な分析器仮想マシンだけが、前記分析器を制御して前記生体試料を分析できるように動作可能であり、前記仮想化システムは、前記動作可能な分析器仮想マシンだけが、前記分析結果を、前記選択された動作環境の前記LDMSに送信できるように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項9】
前記少なくとも2つのオペレーティングシステムの各々は、一意的な識別子を有し、前記ADMSは、前記少なくとも1つの分析器の各ACに対して、前記一意的な識別子を送信するように動作可能であり、前記ACは、前記一意的な識別子を受けると、前記選択されたオペレーティングシステムを切換えるように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項10】
前記少なくとも2つのオペレーティングシステムの各々は、一意的な識別子を有し、前記ACがオンされた場合に、前記ACは、前記ADMSに対して、前記一意的な識別子を要求するように動作可能である、請求項に記載の分析システム。
【請求項11】
前記少なくとも2つの動作環境は、少なくとも3つの動作環境であり、前記少なくとも3つのオペレーティングシステムのうちの少なくとも1つは、トレーニング環境を含む、請求項10に記載の分析システム。
【請求項12】
前記LDMSは、前記ACSに対して、前記分析結果を要求するように動作可能であり、前記ACSは、前記分析部を制御して前記測定データを得るように動作可能であり、前記ACSは、前記LDMSに前記分析結果を提供するように動作可能であり、前記ADMSは、前記選択情報を受信すると、前記選択された動作環境に切換えるように動作可能であり、前記ACは、前記選択情報を受信すると、前記選択された動作環境に切換えるように動作可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項13】
少なくとも2つの動作環境のうちの1つは未検証動作環境である請求項1に記載の分析システムを検証する方法であって、
前記未検証動作環境を選択された動作環境として選択するステップと、
前記未検証動作環境が前記選択された動作環境である場合に、前記未検証動作環境を用いる検証プロトコルを少なくとも部分的に実行するステップと、
前記検証プロトコルが完全に実行される場合、および前記検証プロトコルが成功する場合に、前記未検証動作環境を検証するステップと
を含む方法。
【請求項14】
少なくとも2つの動作環境のうちの1つは検証済動作環境である請求項1に記載の分析システムを作動させる方法であって、
前記検証済動作環境を、選択された動作環境として選択するステップと、
前記検証済動作環境が前記選択された動作環境である場合に、前記検証済動作環境を用いて、分析結果を取得するステップと、
前記分析結果を検査情報システム(LIS)に送信するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料の自動分析に関し、特に、制御ソフトウェアの複数の実装を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
信頼性の高い診断を行うためには、分析システムが正確で一貫したデータを取得することが必須である。診断もしくは血液スクリーニング検査室が新規な分析機器を取得するか、または既存の機器に新しいソフトウェアをインストールする場合には、高品質の標準規格を達成し、規制要件を満たすために、分析システムの検証を行う必要がある。ガイドラインおよび文献の概要は、Validation of analytical methods、Ludwig Huber、Agilent Technologies、2010、および、Gen. principles of software validation;final guidance for industry and FDA staff、U.S. Department of Health and Human Services、FDA、2002に見いだされる。
【0003】
国の特別の規制および検査標準操作手順によって、分析システムの検証および確認は、非常に費用のかかる、そして時間を浪費する手続きとなっている。その際には、新規なシステムが検証されるまで、診断検査室は、この処理のためにさらに余分な機器を購入するか、あるいは分析試験を停止する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Validation of analytical methods、Ludwig Huber、Agilent Technologies、2010
【非特許文献2】Gen. principles of software validation;final guidance for industry and FDA staff、U.S. Department of Health and Human Services、FDA、2002
【非特許文献3】Mc−Dowall、Chemom. Intell. Lab. Syste.、Lab. Inf. Management 17(1992)265
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、独立請求項において、分析システム、分析システムを検証する方法、および分析システムを作動させる方法を提供する。実施形態は、従属請求項において与えられる。
【0006】
本発明の実施形態によれば、同一ハードウェア上で試料テストとソフトウェア検証とを切換えることができる分析システムを提供することができる。これによって、コストを著しく低減することができる。例えば、試料テストが一時的に制限される場合、例えば通常、血液銀行が夕方に試料を入手し、夜間に試料テストを行う場合、残りの時間を新規なソフトウェアを検証するために用いることができる。この場合には、ソフトウェア検証のための余分な機器は不要であり、分析システムの費用のかかる待機時間が短縮される。
【0007】
当業者には明らかなように、本発明の態様は、装置、方法またはコンピュータプログラム製品として実施することができる。したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、またはソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせる実施形態をとることができる。これらは、全て一般的に、本明細書では、「回路」、「モジュール」または「システム」と呼ぶ。さらに、本発明の態様は、コンピュータプログラム製品という形をとることができる。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ実行可能コードを含む1つまたは複数のコンピュータ可読媒体で実現される。
【0008】
1つまたは複数のコンピュータ可読媒体のいかなる組合せも、利用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体でもよい。本明細書で用いられる「コンピュータ可読記憶媒体」は、計算デバイスのプロセッサによって実行可能である命令を格納することができるいかなる有形の記憶媒体も含む。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読固定記憶媒体とも呼ばれ得る。また、コンピュータ可読記憶媒体は、有形コンピュータ可読媒体とも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、計算デバイスのプロセッサによってアクセス可能なデータを格納できてもよい。コンピュータ可読記憶媒体の例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、半導体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、およびプロセッサのレジスタファイルなどである。光ディスクの例としては、コンパクトディスク(CD)およびデジタル多用途ディスク(DVD)、例えばCD−ROM、CD−RW、CD−R、DVD−ROM、DVD−RWまたはDVD−Rディスクなどがある。また、用語「コンピュータ可読記憶媒体」は、ネットワークまたは通信リンクを介して計算デバイスによってアクセス可能な様々な形式の記録媒体をも意味する。例えば、データは、モデムを通じて、インターネットを通じて、または、ローカルエリアネットワークを通じて取り出すことができる。コンピュータ可読媒体上に実現されるコンピュータ実行可能コードは、任意の適切な媒体を使用して送信され得る。この媒体は、無線、有線、光ファイバーケーブル、RFなど、またはこれらの任意の好適な組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0009】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンドまたは搬送波の一部で実現される、コンピュータ実行可能コードを有する伝播されたデータ信号を含むことができる。このような伝搬された信号は、これらに限定されないが、電磁気的、光学的、またはこれらの好適な組合せを含む様々な形態のいずれかをとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではないが、命令実行システム、装置、もしくはデバイスにより、または、それらに関連して用いられるプログラムを通信し、伝搬し、移送することができる、いかなるコンピュータ可読媒体であってもよい。
【0010】
「コンピュータメモリ」または「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶装置」または「記憶装置」は、コンピュータ可読記憶媒体の他の例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。いくつかの実施形態において、コンピュータ記憶装置は、コンピュータメモリまたはその逆でもよい。
【0011】
本明細書で用いられる「プロセッサ」は、プログラムまたは計算機実行可能命令またはコンピュータ実行可能コードを実行することができる電子部品を含む。「プロセッサ」を備える計算デバイスの参照は、場合により複数のプロセッサまたは処理コアを含むように、解釈されるものとする。例えばプロセッサは、マルチコアプロセッサでもよい。また、プロセッサは、単一コンピュータシステム内の、あるいは、多重コンピュータシステム間に分散した、プロセッサの集合体を指してもよい。計算デバイスという用語も、場合により1つまたは複数のプロセッサを各々備える計算デバイスの集合体またはネットワークを指すように、解釈されるものとする。コンピュータ実行可能コードは、同一計算デバイス内のマルチプロセッサによって、あるいは、複数の計算デバイスに分散したマルチプロセッサによっても、実行され得る。本明細書で用いられる「計算デバイス」または「コンピュータ」は、プロセッサを備えるいかなるデバイスも含む。
【0012】
コンピュータ実行可能コードは、計算機実行可能命令またはプロセッサに本発明の態様を実行させるプログラムを含むことができる。本発明の態様に関する動作を実行するコンピュータ実行可能コードは、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書くことができる。プログラミング言語には、例えばJava(登録商標)、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および例えば「C」プログラミング言語や類似のプログラミング言語など従来の手続きプログラミング言語、および計算機にコンパイルされた実行可能命令が含まれる。いくつかの例では、コンピュータ実行可能コードは、高級言語の形式またはプレコンパイルド形式であってもよく、実行中に計算機実行可能命令を生成するインタプリタと共に用いることができる。
【0013】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザーのコンピュータで、部分的にユーザーのコンピュータで、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザーのコンピュータでかつ部分的にリモートコンピュータで、または、完全にリモートコンピュータもしくはサーバーで、実行することができる。後のシナリオにおいて、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含む任意の型のネットワークを通して、ユーザーのコンピュータに接続することができる。あるいは、外部コンピュータ(例えば、インターネットサービスプロバイダを用いたインターネットを通して)に接続することができる。
【0014】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)およびコンピュータプログラム製品のフローチャート、説明図および/またはブロック図を参照しながら記載される。フローチャート、説明図および/またはブロック図の各ブロックまたは一部のブロックは、適用可能な場合に、コンピュータ実行可能コード形式のコンピュータプログラム命令によって実装できることが理解されよう。さらに、異なるフローチャート、説明図および/またはブロック図のブロックの組合せが、互いに排他的でない場合には、可能であることが理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに供給されて、計算機を生成することができる。そうすると、その命令が、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサにより実行されて、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで特定される機能/動作を実装するための手段を生成する。
【0015】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスを、特定の方法の機能に向けることができるコンピュータ可読媒体に記憶することもできる。このようにして、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで特定される機能/動作を実装する命令を含む製品を生成する。
【0016】
また、コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスにロードされて、コンピュータ、他のプログラム可能な装置または他のデバイスで実行される一連の動作ステップを生成し、コンピュータ実行処理を行う。このようにして、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置で実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで特定される機能/動作を実装するための処理を行う。
【0017】
本明細書で用いられる「ユーザーインターフェース」は、ユーザーまたは操作者がコンピュータまたはコンピュータシステムと対話することができるインターフェースである。「ユーザーインターフェース」は、「ヒューマンインターフェースデバイス」とも呼ばれ得る。ユーザーインターフェースは、情報またはデータを操作者へ提供し、および/または、情報またはデータを操作者から受け取ることができる。ユーザーインターフェースは、コンピュータが操作者からの入力を受け取ることを可能にし、コンピュータからユーザーに出力を提供することができる。換言すれば、ユーザーインターフェースによって、操作者がコンピュータを制御または操作することができる。そして、インターフェースによって、コンピュータが操作者の制御または操作の効果を示すことができる。ディスプレイまたはグラフィックユーザーインターフェースに表示されるデータまたは情報は、操作者に対する情報提供の一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ペダル、ワイヤードグローブ、ダンスパッド、リモートコントロール、1つまたは複数のスイッチ、1つまたは複数のボタン、および加速度計によるデータの受信は、全て、操作者からの情報またはデータの受信を可能にするユーザーインターフェースの構成要素の例である。
【0018】
本明細書で用いられる「ハードウェアインターフェース」は、コンピュータシステムのプロセッサが、外部の計算デバイスおよび/または装置と対話し、および/またはそれを制御することを可能にするインターフェースを含む。ハードウェアインターフェースによって、プロセッサが、外部の計算デバイスおよび/または装置に、制御信号または命令を送信することができる。また、ハードウェアインターフェースによって、プロセッサが、外部の計算デバイスおよび/または装置と、データを交換することができる。ハードウェアインターフェースの例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、汎用シリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS−232ポート、IEEE−488ポート、ブルートゥース接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インターフェース、MIDIインターフェース、アナログ入力インターフェースおよびデジタル入力インターフェースなどである。
【0019】
本明細書で用いられる「ディスプレイ」または「表示装置」は、画像またはデータを表示するのに適する出力装置またはユーザーインターフェースを含む。ディスプレイは、映像、音声、および/または触覚のデータを出力することができる。ディスプレイの例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、コンピュータモニター、テレビジョンスクリーン、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクトルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネセントディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクター、およびヘッドマウントディスプレイなどである。
【0020】
本明細書で用いられる「データベース」は、プロセッサによってアクセスできるデータを含むデータファイルまたはリポジトリを含む。データベースの例として、データファイル、リレーショナルデータベース、データファイルを含むファイルシステムフォルダ、およびスプレッドシートファイルがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書で用いられる「ネットワーク接続」は、2台の異なるコンピュータまたは計算デバイスの間のデータ交換のための手段を含む。計算デバイスは、ネットワークインターフェースを用いたネットワーク接続を確立する。ネットワークの例として、ブルートゥースネットワーク、WIFIネットワーク、LAN、およびインターネットプロトコルがあるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
一態様では、本発明は、生体試料を分析するための分析システムを提供する。分析システムは、少なくとも1つの分析器を備える。分析器は、生体試料を分析して分析結果を得るための分析部を備える。
【0023】
「分析部」という用語は、生体試料(例えば血液、尿、唾液または他の試料タイプ)について、1つまたは複数の分析を実行するように動作可能な装置を指す。分析部は、様々な化学的、生物学的、物理的、光学的、または他の技術的な方法により、試料のパラメータまたはその構成要素を決定するように動作することができる。以下のパラメータが「測定値」と呼ばれる。分析部は、試料の、または、少なくとも1つの分析物の、上記パラメータを測定して、得られた測定値を返すように動作可能である。分析器によって返される可能性がある分析結果のリストは以下のものを含むが、これらに限定されるものではない。試料中の分析物の濃度、試料中の分析物の存在(検出レベルを超える濃度に対応する)を示すデジタル結果(イエスまたはノー)、光学パラメータ、DNAまたはRNA配列、タンパク質または代謝物質の質量分析から得られるデータ、および、様々なタイプの物理的もしくは化学的パラメータである。分析結果は、定性的、および/または定量的であり得る。
【0024】
分析器は、複数の分析部を有することができる。「1つの」分析部への言及は、1つに限定するものではなく、複数の分析部も表すことができると理解される。分析結果を取得するための生体試料を分析することによって、「取得する」が分析結果を測定することを意味することができると理解される。分析結果は、測定データであってもよいし、あるいは測定データを含んでもよい。いくつかの実施形態において、分析結果は、生体試料および/または測定条件を記述したメタデータを加えた測定データを含む。各分析器は、分析器コントローラ(AC)を備える。ACはプロセッサを備える計算デバイスであり得る。そして、ACは1つまたは複数の分析部を制御するように動作可能であり得る。ACは、頭文字ACを使用して略記することができる。
【0025】
分析システムは、分析器データ管理システムをさらに備える。分析器データ管理システムは、本明細書において、頭文字ADMSにより略記することができる。ADMSは、少なくとも2つの動作環境から選択される、選択された動作環境の選択情報を受信するように動作可能である。2つの動作環境は、各々独立している。ADMSは、選択情報を受信すると、分析システムを選択された動作環境に切換えるように動作可能である。少なくとも2つの動作環境の各々は、ACオペレーティングシステムが分析器制御システム(ACS)を実装するように動作可能にし、またADMSオペレーティングシステムが検査データ管理システム(LDMS)を実装するように動作可能にする。ACSは、頭文字ACSによって略記することができる。LDMSは、頭文字LDMSによって略記することができる。ACSは、分析部を制御して分析結果を取得するように動作可能である。ACSは、LDMSに分析結果をもたらすように動作可能である。
【0026】
ADMSは、検査室で使用され、1つまたは複数の分析器を制御するために用いられる。極めて典型的には、それは複数の分析器を制御するために用いられる。検査室で使用される場合には、ソフトウェアのアップグレードが問題となり得る。これは、ADMSで、さらにまた分析器で使用されるソフトウェアの全てを完全にテストすることが必要になるかもしれないからである。これは、ACで使用されるソフトウェア、および/または、分析部で使用される任意のファームウェアもしくはソフトウェアを含むことができる。各動作環境は、分析器およびデータ管理システムの全てに対して、ソフトウェアおよび/またはオペレーティングシステムの別々の1組を提供する。分析システムは、分析システムの全ての構成要素上にある全てのソフトウェアを、素早く変更するための機構を提供する。これは、異なる動作環境間の切換えを容易にする。例えば、検査室において生体試料の通常処理を行う間に、限定されたソフトウェアを含む動作環境を用いることができる。ADMSが異なる動作環境の選択情報を受信すると、全システムは自動的にそのソフトウェアを変更する。例えば、これは、様々なソフトウェアコンポーネントの動作をチェックし、その次に、分析中の生体試料の最初の動作環境に戻すために用いることができる。分析システムは、適切なソフトウェアが分析システムの各構成要素で確実に使用されるようにする手段を提供することができる。
【0027】
別の実施形態では、ADMSおよび分析器は、ネットワーク接続を介して通信する。
別の実施形態では、少なくとも1つの分析器は、ACからのコマンドを受け取るように動作可能な1つまたは複数の組込みシステムをさらに備える。例えば、分析部は、分析部を制御して生体試料を分析するために用いられる組込みシステムを備えることができる。ACSは、コマンドを組込みシステムに送信し、分析部を制御して分析結果を得るように動作可能である。少なくとも1つの組込みシステムは、ファームウェアをさらに備える。選択された動作環境へ切換える場合に、ACSはファームウェアを変更するように動作可能である。この実施形態は、特に有益であり得る。なぜなら、異なる動作環境間を行き来する際に、ファームウェアを変更することが必要であるならば、操作者側が手動でファームウェアを変更するという時間のかかる操作が要求され得るからである。ファームウェアを自動的に変更するためのいかなる機能も、2つの動作環境を切換える時間を短縮する。
【0028】
別の実施形態では、ADMSオペレーティングシステムは、分析結果を検査情報システムへ転送するように動作可能である。検査情報システムは、本明細書において、頭文字LISを使用して略記することができる。本明細書で用いられるLISは、データベースシステムを含み、このデータベースシステムは、管理を低減し、最終報告の作成を加速するために、研究および試料情報を検査機器からの取得データと組み合わせるように設計される(Mc−Dowall、Chemom. Intell. Lab. Syste.、Lab. Inf. Management 17(1992)265)。
【0029】
LDMSは、テスト状態と検証済状態とを示す検証フラグを備える。例えば、これは、動作環境と関連したメモリまたはファイルシステムのいくつかの場所に記憶される変数でもよい。検証フラグは、ソフトウェアが現在テストされているか、それとも検証される必要があるかについてのインジケータである。検証フラグは、テスト状態にあるLISに対する分析結果の転送を無効にするように動作可能である。例えば、特定の動作環境が検証されない場合には、分析結果をLISへ転送することは、望ましくないことがある。LDMSは、ユーザーインターフェースを備える。LDMSは、ユーザーインターフェースからフラグ選択命令を受け取るように動作可能である。例えば、ユーザーインターフェースは、キーボードまたはグラフィックユーザーインターフェースを含むことができ、そして、操作者は所望の動作環境を単純に選択する。フラグ選択命令は、テスト状態または検証済状態を記述する。LDMSは、フラグ選択命令に従って、検証フラグをセットするように動作可能である。
【0030】
別の実施形態では、LISおよびLDMSは、ネットワーク接続を介して通信する。
別の実施形態では、LDMSは、選択された動作環境のADMSオペレーティングシステムに実装される。それは、さらに、選択された動作環境のソフトウェアの変更を検出するように動作可能である。LDMSは、ソフトウェアの変更が検出された場合に、検証フラグをテスト状態にセットするように動作可能である。例えば、何らかの新しいソフトウェアが、ADMSの分析器、ファームウェア、またはどこか他の場所にインストールされた場合には、LDMSは、検証フラグを検証済状態からテスト状態に自動的に変更するように動作可能である。それによって、ソフトウェアが無許可で分析システムにインストールされることを防止できるので、これは有益であり得る。これは、分析システムに対するより高いセキュリティと、分析結果に対するより良い完全性を提供することができる。例えば、もし無許可のソフトウェアインストールが実行されたとすると、それはデータの完全性を損なうおそれがあり、また分析結果の妥当性に疑問が生じるおそれがある。例えば、これは、ADMSまたは分析器のオペレーティングシステムのソフトウェアの変更を検出することができる。
【0031】
別の実施形態では、ADMSは、ADMSブートローダを備える。ADMSは、ADMS記憶装置を備える。ADMS記憶装置は、少なくとも2つの動作環境の各々について、ADMSシステム記憶装置パーティションを備える。ADMSブートローダは、選択情報を受信するように動作可能である。選択情報は、少なくとも2つの動作環境の各々に対して、ADMS記憶装置パーティションから選択される、選択されたADMS記憶装置パーティションを決定する。ADMSブートローダは、選択情報を受信すると、ADMSに対して、選択されたADMS記憶装置パーティションを起動させるように動作可能である。
【0032】
換言すれば、例えば、ADMSは、例えば複数のパーティションを有するハードドライブなどの大容量記憶装置を有することができる。動作環境の各々に対応するパーティションがある。適切なソフトウェアだけがインストールされて、動作環境を変更することを確実にするために、パーティションの各々は個別に起動される。こうすることで、適切なソフトウェアがロードされ、2つの動作環境間にソフトウェアの混用がないことを確実にする安全な方法が提供される。本質的には、パーティションの選択情報は、どの動作環境が使用されるかを選択する。
【0033】
別の実施形態では、ADMSは、少なくとも2つの動作環境の各々に対してADMS仮想マシンを提供するためのADMS仮想化システムを備える。ADMS仮想化システムは、選択情報を受信するように動作可能である。選択情報は、動作可能なADMS仮想マシンを決定する。動作可能なADMS仮想マシンは、少なくとも2つの動作環境の各々に対して、ADMS仮想マシンから選択される。ADMS仮想化システムは、動作可能なADMS仮想マシンだけが、ACSに対して分析結果を要求できるように動作可能である。ADMS仮想化システムは、動作可能なADMS仮想マシンだけがLDMSからのデータを受信できるように動作可能である。
【0034】
換言すれば、本実施形態では、ADMSは、仮想システムを有することによって実装される。どのソフトウェアが分析結果を要求することができるかを制御するために、動作中の仮想マシンは切換えられ、1台の仮想マシンだけが分析結果を要求することができる。この実施形態では、複数の仮想マシンを同時に使用できるという利点があり得る。例えば、様々な動作が、特定の動作環境のソフトウェア検証を実行するために必要であり得る。現在検査室で使用されている動作環境を使用することができて、またそれは少なくとも1つの分析器を制御することができる。しかし、バックグラウンドでは、テストバージョンのための動作環境を表す仮想マシンが、現在時刻に分析器にアクセスを必要としない動作を実行することができる。
【0035】
別の実施形態では、ADMS仮想化システムは、少なくとも1つの分析器をエミュレートするように動作可能なエミュレータに対して、非選択の仮想マシンを接続するように動作可能である。非選択の仮想マシンは、少なくとも2つの動作環境の各々に対して、ADMS仮想マシンから選択される。非選択の仮想マシンは、動作可能なADMS仮想マシンではない。
【0036】
別の実施形態では、分析器は、ACブートローダを備える。ACは、AC記憶装置を備える。AC記憶装置は、少なくとも2つの動作環境の各々について、AC記憶装置パーティションを備える。ACブートローダは、ADMSから選択情報を受信するように動作可能である。選択情報は、選択されたAC記憶装置パーティションを決定する。ACブートローダは、選択情報を受信すると、ACに対して、選択されたAC記憶装置パーティションを起動させるように動作可能である。本実施形態では、ACは、複数のパーティションを有する記憶装置を有する。ソフトウェアを分離するために、ACは、パーティションの1つを起動するように動作可能である。特定のパーティションを使用して完全なソフトウェア環境を実装することができて、異なる動作環境の様々なソフトウェアコンポーネントを各々確実に分離できるから、これは有益であり得る。本実施形態では、極めて本質的であるが、パーティションの選択情報は、どの動作環境が使用されるかを選択する。
【0037】
別の実施形態では、ACは、少なくとも2つの動作環境の各々に対して、分析器仮想マシンを提供するための分析器仮想システムを備える。分析器仮想化システムは、選択情報を受信するように動作可能である。選択情報は、動作可能な分析器仮想マシンを決定する。動作可能な分析器仮想マシンは、少なくとも2つの動作環境の各々に対して、分析器仮想マシンから選択される。分析器仮想化システムは、動作可能な分析器仮想マシンだけが、分析器を制御して生体試料を分析できるように動作可能である。仮想化システムは、動作可能な分析器仮想マシンだけが、分析結果を、選択された動作環境のLDMSに送信できるように動作可能である。本実施形態では、動作環境の各々に対応する仮想マシンがある。動作環境は、仮想マシンの1つを動作可能にすることによって選択される。
【0038】
別の実施形態では、少なくとも2つのオペレーティングシステムの各々は、一意的な識別子を有する。ADMSは、少なくとも1つの分析器の各ACに対して、一意的な識別子を送信するように動作可能である。ACは、一意的な識別子を受けると、選択されたオペレーティングシステムを切換えるように動作可能である。
【0039】
別の実施形態では、少なくとも2つのオペレーティングシステムの各々は、一意的な識別子を有する。ACがオンされた場合に、ACは、ADMSに対して一意的な識別子を要求するように動作可能である。選択情報が受信された場合に、ACをオフすることができるので、この実施形態は有益であり得る。この実施形態では、ACが適切な動作環境を作動させることが確実になる。
【0040】
別の実施形態では、少なくとも2つの動作環境は、少なくとも3つの動作環境である。少なくとも3つのオペレーティングシステムのうちの少なくとも1つは、トレーニング環境を含む。本明細書で用いられるトレーニング環境は、操作者に対して分析システムの使用方法を訓練するために用いられる環境である。トレーニング環境は、少なくとも1つの分析器を操作するためのアクセスを有しても有しなくてもよい。いくつかの実施形態では、エミュレータが、分析器の代わりに用いられることができる。
【0041】
別の実施形態では、LDMSは、ACSに対して、分析結果を要求するように動作可能である。ACSは、分析部を制御して測定データを得るように動作可能である。ACは、LDMSに分析結果を提供するように動作可能である。ADMSは、選択情報を受信すると、選択された動作環境に切換えるように動作可能である。ACまたはACSは、選択情報を受信すると、選択された動作環境に切換えるように動作可能でもよい。トレーニング環境がある場合には、トレーニング環境はLISに接続しなくてよい。
【0042】
別の態様では、本発明は、本発明の一実施形態による分析システムを検証する方法を提供する。少なくとも2つの動作環境のうちの1つは、未検証動作環境である。これは、テスト状態にセットされた検証フラグと等価であり得る。本方法は、未検証動作環境を選択された動作環境として選択するステップを含む。本方法は、未検証動作環境が選択された動作環境である場合に、未検証動作環境を用いる検証プロトコルを少なくとも部分的に実行するステップをさらに含む。本方法は、検証プロトコルが完全に実行される場合、および検証プロトコルが成功する場合に、未検証動作環境を検証するステップをさらに含む。
【0043】
別の態様では、本発明は、一実施形態による分析システムを作動させる方法を提供する。少なくとも2つの動作環境のうちの1つは、検証済動作環境である。少なくとも2つの動作環境のうちの1つは、未検証動作環境である。検証済動作環境は、検証済状態にセットされた検証フラグを有することができる。そして、未検証動作環境は、テスト状態にセットされた検証フラグを有することができる。本方法は、検証済動作環境を、選択された動作環境として繰り返し選択するステップを含む。本方法は、検証済動作環境が選択された動作環境である場合に、検証済動作環境を用いた分析結果を繰り返し取得するステップをさらに含む。本方法は、未検証動作環境を、選択された動作環境として繰り返し選択するステップをさらに含む。本方法は、未検証動作環境が選択された動作環境である場合に、未検証動作環境を用いる検証プロトコルを、繰り返し少なくとも部分的に実行するステップをさらに含む。本方法は、検証プロトコルが完全に実行される場合、および検証プロトコルが成功する場合に、未検証動作環境を検証するステップをさらに含む。本明細書で用いられる検証プロトコルは、ADMSおよび少なくとも1つの分析器が適切な分析結果を得ていることを検証するために、分析システムを用いて実行される試験手順の一組を含む。
【0044】
別の態様では、本発明は、本発明の一実施形態による分析システムを作動させる方法を提供する。少なくとも2つの動作環境のうちの1つは、検証済動作環境である。これは、検証フラグが検証済状態にセットされることを意味することができる。本方法は、検証済動作環境を、選択された動作環境として選択するステップを含む。本方法は、検証済動作環境が選択された動作環境である場合に、検証済動作環境を用いて、分析結果を取得するステップをさらに含む。本方法は、分析結果を検査情報システムに送信するステップをさらに含む。
【0045】
組み合わされた実施形態が相互に排他的でない限り、上述した本発明の実施形態の1つまたは複数を組み合わせることができるものと理解される。
以下では、本発明の実施形態について、例としてのみ下記の図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施形態による分析システムの機能図を示す。
図2】本発明のさらに別の実施形態による分析システムの機能図を示す。
図3】本発明のさらに別の実施形態による分析システムの機能図を示す。
図4】一方法を説明するフローチャートを示す。
図5】さらに別の方法を説明するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
これらの図で同じような符号を付された要素は、等価な要素であるか、または同一の機能を実行する。既に説明した要素が、機能が等価であれば、後の図で必ずしも説明されるわけではない。
【0048】
図1は、本発明の一実施形態による分析システム100の機能図を示す。分析システム100は、分析器102とADMS104とを備える。分析器102は、AC106と分析部108とを備える。分析部は、分析結果を得るための生体試料を分析するように動作可能である。分析部108は、分析部108を制御するための組込みシステム110を備えることができる。AC106は、複数の動作環境112、120をサポートするように動作可能である。第1の動作環境112は、ACS116を実装するACオペレーティングシステム114を有するものとして示されている。ACS116はユーザーインターフェース118を有し、これにより操作者はACS116の動作を制御または変更することができる。この例におけるAC106は、第2の動作環境120もサポートする。
【0049】
第2の動作環境120は、ACS124を実装するACオペレーティングシステム122を有する。ACS124は、操作者が使用するユーザーインターフェース126を有することもできる。ACS116、124は、分析器が分析部を制御することを可能にするソフトウェアコードを格納する。ACS116と組込みシステム110との間には、接続128がある。また、ACS124と組込みシステム110との間にある接続130が示されている。
【0050】
ADMS104は、動作環境112および動作環境2 120もサポートするように示されている。同一期間では、動作環境1 112のみ、または動作環境2 120のみがアクティブになる。同一の動作環境が、ADMS104およびAC106の両方でアクティブになる。ADMSにおいて、動作環境1は、ADMSオペレーティングシステム132を有する。ADMSオペレーティングシステム132には、検証フラグ138およびユーザーインターフェース140を備えるLDMSが実装される。操作者が、ADMSの機能を制御し、またコマンドをADMSに送信して動作環境を切換えるために、ユーザーインターフェース140を用いることができる。例えば、検証フラグ138は、テスト状態または検証済状態を示すために用いることができる。
【0051】
また、ADMS104も、動作環境2 120を実装するものとして示されている。第1の動作環境142と同様に、第2の動作環境120も、LDMS144を含むADMSオペレーティングシステム142を実装する。LDMS144も、検証フラグ146とユーザーインターフェース148とを備える。検証フラグ146も、テスト状態もしくは検証済状態を含むか、または示すことができる。ユーザーインターフェース148は、ユーザーインターフェース140と同じ機能を有する。LDMS134は、ACS116に対するネットワーク接続150を有するように示されている。
【0052】
LDMS144は、ACS124に対するネットワーク接続152を有するように示されている。検証フラグ138の状態によって、ネットワーク接続150、152を、有効または無効にすることができる。本実施形態において、ADMSオペレーティングシステム132は、LIS154に対するネットワーク接続156を有するように示されている。LDMS144は、LIS154に対するネットワーク接続158を有するように示されている。いくつかの実施形態において、テスト状態にセットされた検証フラグ138、146は、ネットワーク接続156または158を無効にすることができる。
【0053】
この例では、第1の動作環境112のみ、または第2の動作環境120のみが、特定の時間にアクティブになる。図1に示す例は、代表的なものを示すことが目的であって、ここではADMS104が仮想システムまたは個々のパーティションを用いて実装されるシステムを示すことができる。同様に、AC106は、動作環境112、120に対して仮想システムを実装することができる。あるいは、AC106は、ACを起動するための別々のブートパーティションを含むことができる。
【0054】
図2は、分析システム200の実装を示す。分析システムは、分析器102とADMS104とを備える。ADMS104は、プロセッサ202を備えるように示されている。プロセッサ202は、ユーザーインターフェース204、ネットワークインターフェース206、コンピュータ記憶装置208およびコンピュータメモリ210と通信する。
【0055】
コンピュータ記憶装置208は、ブートローダ212を含むように示されている。この例では、ブートローダは、第1のパーティション214、第2のパーティション216および第3のパーティション218をロードするように動作可能である。第1のパーティション214には、第1のオペレーティングシステム220がある。第2のパーティション216には、第2のオペレーティングシステム222がある。第3のパーティション218の中には、第3のオペレーティングシステム224がある。第1のパーティション214には、第1のLDMS実装226がある。第2のパーティション216には、第2のLDMS実装228がある。第3のパーティション218には、第3のLDMS実装230がある。第1のパーティション214には、第1の検証フラグ232がある。第2のパーティション216には、第2の検証フラグ234がある。第3のパーティション218には、第3の検証フラグ236がある。記憶装置208は、パーティション214、216、218のいずれを起動するべきかを識別する選択情報238も含むように示されている。
【0056】
ブートローダは3つのパーティション214、216、218のいずれか1つをロードし、特定のパーティションがロードされると、選択されたオペレーティングシステム220、222または224が起動する。それから、オペレーティングシステムは、特定のLDMS実装226、228、230をロードする。このようにして、ソフトウェアは、確実に分離され得る。LDMS実装226、228、230がテスト状態であるか検証済状態であるかを選択するために、検証フラグ232、234、236が用いられる。LDMS実装226、228、230が分析システムの他の構成要素とどのようにやり取りするか、という動作を制御するために、検証フラグ232、234、236を用いることができる。例えば、LDMS226、228、230とLIS154との通信を防止することができる。あるいは、データをLIS154へ転送することができるが、そのデータは無効な結果を含むとしてフラグが立てられる。
【0057】
コンピュータメモリ210は、パーティション216からロードされるオペレーティングシステム222を有するように示されている。したがって、また、第2のパーティション216からのLDMS実装228は、メモリ210内にある。メモリ210もまた、1つの分析システムの選択情報238を含むように示されている。いくつかの実施形態では、ブートローダは、スタートアップ時に選択情報をチェックして、正しいパーティションを起動する。この場合、オペレーティング構成の変更は、LDMS228によって実行される。LDMSが選択情報238を変更し、システムが再起動される。選択情報238の変更によって、LDMS実装228がブートローダ212と通信することが生じ、またADMS104に対して、異なるパーティション(例えば214または218)を再起動するように指示することがあり得る。
【0058】
分析器102は、プロセッサ240を有するAC106も含むように示されている。プロセッサ240は、ネットワーク接続242、ハードウェアインターフェース244、コンピュータ記憶装置246およびコンピュータメモリ248と通信する。コンピュータ記憶装置246は、ブートローダ250を含むように示されている。ブートローダ250は、ADMSに対して、第1のパーティション252、第2のパーティション254または第3のパーティション256を起動させるように動作可能である。第1のパーティションには、第1のオペレーティングシステム258がある。第2のパーティション254の中には、第2のオペレーティングシステム260がある。第3のパーティション256の中には、第3のオペレーティングシステム262がある。第1のパーティション252の中には、第1のACS264がある。第2のパーティション254の中には、第2のACS266がある。第3のパーティション256の中には、第3のACS268がある。第1のパーティション252の中には、第1のファームウェア270がある。第2のパーティション254の中には、第2のファームウェア272がある。第3のパーティション256の中には、第3のファームウェア274がある。
【0059】
ファームウェア270、272、274は、分析部108のためにある。コンピュータメモリ248は、第2のオペレーティングシステム260およびACS266の第2の実装を含むように示されている。ブートローダ250が特定のパーティション252、254、256を起動させるために、選択情報238は、ADMS104からAC106まで伝達され得る。いくつかの実施形態において、選択情報238はローカルに記憶装置246に格納することができ、AC106は選択されたパーティションを自動的に起動する。更なる実施形態では、ローカルに格納された選択情報が、ADMSによって出力された選択情報238と一致することを、ACがチェックする。
【0060】
コンピュータメモリ248は、分析部108から受け取った分析結果276を含むように示されている。分析結果276は、分析器102へ伝達して戻すことができる。ネットワーク接続278は、2つのネットワークインターフェース206、242の間に示されている。これによって、ADMS104および分析器102が、データと命令を交換することが可能になる。特定のオペレーティングシステムがACによって起動される場合には、それは対応するファームウェア270、272、274を分析部108にインストールすることができる。
【0061】
分析部108は、組込みシステム110を有するように示されている。組込みシステムは、少なくとも2つの記憶場所282、284と通信するプロセッサ280を備える。第1の記憶場所282は、ファームウェア272を含むように示されている。ファームウェア272は、対応するACS266によって更新され得る。記憶場所284は、測定結果または分析結果276を含むように示されている。符号286は、分析部108で測定される生体試料を表す。
【0062】
ADMS104は、ネットワーク接続278’、278’’、278’’’を介して、付加された分析器102’、102’’、102’’’を制御することもできる。ネットワーク接続206によって、ADMS104がLIS154と通信することも可能になる。
【0063】
図3は、図2に示したものと類似する分析システム300の別の実施形態を示す。しかし、この例では、パーティションの代わりに、仮想マシンが用いられる。ADMS104には、パーティションの代わりに、第1の仮想マシン304、第2の仮想マシン306および第3の仮想マシン308がある。仮想マシン304、306、308は、ADMS104の記憶装置208およびメモリ210の一部を使用するように示されている。ホストオペレーティングシステム302もまた、記憶装置208およびメモリ210の部分を使用する。ホストオペレーティングシステム302はコードを含み、このコードによって、ユーザーインターフェース204を介して受け取られた選択情報238が、仮想マシン304、306または308のうちいずれがアクティブであるかを選択することができる。
【0064】
選択情報238は、AC106にも伝達される。この場合にも、パーティションが仮想マシン312、314、316に置き換えられていること以外は、AC106は図2のACに類似する。第1の仮想マシン312は、記憶装置246およびメモリ248のメモリを消費する部分の一部を含むように示されている。第2の仮想マシン314も、記憶装置246およびメモリ248の一部を使用する。第3の仮想マシン316も、記憶装置246およびメモリ248の一部を使用する。ホストオペレーティングシステム310もまた、記憶装置246およびメモリ248の一部を使用する。ホストオペレーティングシステム310は、仮想マシン312、314、316のうちどれをアクティブにして、分析部108の制御をさせるかについての、制御を行うことができる。選択情報238の選択は、分析システム300の全体にわたって伝達される。
【0065】
図2には、記憶装置246、208の分割のみを示す。そして、図3では、仮想マシンの使用のみが用いられる。仮想マシンとパーティションとを混合して使用できることに留意されたい。ネットワーク接続278は、いずれの場合においても、ADMS104と分析器102とを接続するために用いられる。選択情報238は、2つのシステム間で伝達され得る。そして、仮想システムを使用するか、記憶装置の分割を使用するかの選択は、各ADMSおよび/または各分析器102について選択され得る。また、同一のシステムで、複数の分析器があってもよい。1つの分析器は仮想システムを使用することができ、別の分析器は記憶装置の分割を使用して、異なるパーティションを起動することができる。
【0066】
図4は、本発明の一実施形態による方法を示すフローチャートである。この方法で、本発明の一実施形態による分析システムが実証される。少なくとも2つの動作環境がある。本方法は、未検証動作環境を、選択された動作環境として選択するステップを備える。最初に、ステップ400において、未検証動作環境が選択された動作環境として選択される。次に、ステップ402において、未検証動作環境が選択された動作環境にある場合には、検証プロトコルが、未検証動作環境を用いて少なくとも部分的に実行される。次に、ステップ404において、検証プロトコルが完全に実行され、検証プロトコルが成功した場合には、未検証動作環境が検証される。
【0067】
図5は、さらに別の方法を説明するフローチャートである。図5のフローチャートは、本発明の一実施形態による分析システムを動作させる方法を示す。少なくとも2つの動作環境のうちの1つは、検証済動作環境である。ステップ500において、検証済動作環境が、選択された動作環境として選ばれる。ステップ502において、検証済動作環境が選択された動作環境である場合には、分析結果が検証済動作環境を用いて取得される。最後に、ステップ504において、分析結果は、検査情報システムに送信される。
【符号の説明】
【0068】
100 分析システム
102 分析器
102’ 分析器
102’’ 分析器
102’’’ 分析器
104 分析器データ管理システム(ADMS)
106 分析器コントローラ(AC)
108 分析部
110 組込みシステム
112 動作環境1
114 ACオペレーティングシステム
116 分析器制御システム(ACS)
118 ユーザーインターフェース
120 動作環境2
122 ACオペレーティングシステム
124 ACS
126 ユーザーインターフェース
128 接続
130 接続
132 ADMSオペレーティングシステム
134 検査データ管理システム(LDMS)
138 検証フラグ
140 ユーザーインターフェース
142 ADMSオペレーティングシステム
144 LDMS
146 検証フラグ
148 ユーザーインターフェース
150 ネットワーク接続
152 ネットワーク接続
154 検査情報システム(LIS)
156 ネットワーク接続
158 ネットワーク接続
200 分析システム
202 プロセッサ
204 ユーザーインターフェース
206 ネットワークインターフェース
208 コンピュータ記憶装置
210 コンピュータメモリ
212 ブートローダ
214 パーティション1
216 パーティション2
218 パーティション3
220 オペレーティングシステム1
222 オペレーティングシステム2
224 オペレーティングシステム3
226 LDMS実装1
228 LDMS実装2
230 LDMS実装3
232 検証フラグ1
234 検証フラグ2
236 検証フラグ3
238 選択情報
240 プロセッサ
242 ネットワーク接続
244 ハードウェアインターフェース
246 コンピュータ記憶装置
248 コンピュータメモリ
250 ブートローダ
252 パーティション1
254 パーティション2
256 パーティション3
258 オペレーティングシステム1
260 オペレーティングシステム2
262 オペレーティングシステム3
264 ACS1
266 ACS2
268 ACS3
270 ファームウェア1
272 ファームウェア2
274 ファームウェア3
276 分析結果
278 ネットワーク接続
278’ ネットワーク接続
278’’ ネットワーク接続
278’’’ ネットワーク接続
280 プロセッサ
282 メモリ
284 メモリ
286 生体試料
300 分析システム
302 ホストオペレーティングシステム
304 仮想システム1
306 仮想システム2
308 仮想システム3
310 ホストオペレーティングシステム
312 仮想システム1
314 仮想システム2
316 仮想システム3
図1
図2
図3
図4
図5