(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クランクケース(4)内に配置されて前記クランクケース(4)に支持されるクランク軸(6,6A)を備え、前記クランク軸(6,6A)が、前記クランクケース(4)に支持されて回転軸線(A)を中心に回転可能なクランクジャーナル(61)と、コネクティングロッド(7)に連結されるクランクピン(62)とを有する往復動ポンプ(100)において、
前記クランクケース(4)に設けられ、前記クランクジャーナル(61)の軸受け部(64)を支持する軸受(9)と、
前記クランクケース(4)内に収容される液体を前記軸受け部(64)に導入する第1流路(65)および第2流路(66)と、を備え、
前記第2流路(66)は、前記クランクジャーナル(61)内に形成されて、前記軸受け部(64)に接続されており、
前記第1流路(65)の一端(65a)は、前記回転軸線(A)方向に交差する前記クランク軸(6,6A)の側面(63a)であって前記クランクジャーナル(61)に隣接する前記クランクピン(62)の周囲に露出する側面(63a)に開口すると共に、隣接する前記クランクピン(62)の前記回転軸線(A)に対する偏心方向とは反対側に配置されて前記回転軸線(A)から離間しており、
前記第1流路(65)の他端(65b)は、前記第2流路(66)に接続されると共に、前記回転軸線(A)から離間しており、
前記第1流路(65)は、前記第1流路(65)の前記一端(65a)を基準として前記クランク軸(6,6A)の回転方向(C)の上流側に延びていることを特徴とする往復動ポンプ。
クランクケース(4)内に配置されて前記クランクケース(4)に支持されるクランク軸(6,6A)を備え、前記クランク軸(6,6A)が、前記クランクケース(4)に支持されて回転軸線(A)を中心に回転可能なクランクジャーナル(61)と、コネクティングロッド(7)に連結されるクランクピン(62)とを有する往復動ポンプ(100)において、
前記クランクピン(62)の軸受け部(62a)を前記コネクティングロッド(7)に支持する軸受(10)と、
前記クランクケース(4)内に収容される液体を前記軸受け部(62a)に導入する第1流路および第2流路と、を備え、
前記第2流路は、前記クランクピン(62)内に形成されて、前記軸受け部(62a)に接続されており、
前記第1流路の一端は、前記回転軸線(A)方向に交差する前記クランク軸(6,6A)の側面であって前記クランクピン(62)に隣接する別の前記クランクピン(62)の周囲に露出する側面に開口すると共に、隣接する別の前記クランクピン(62)の前記回転軸線(A)に対する偏心方向とは反対側に配置されて前記回転軸線(A)から離間しており、
前記第1流路の他端は、前記第2流路に接続されると共に、前記回転軸線(A)から離間しており、
前記第1流路は、前記第1流路の前記一端を基準として前記クランク軸(6,6A)の回転方向(C)の上流側に延びていることを特徴とする往復動ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クランク軸とベアリングケースとの間の軸受に使用液体を供給するための構造として、
図12〜
図14に示される構造が考えられる。クランク軸103の軸受け部105には、円環状の溝118が設けられている。クランク軸103の内部には、クランクアーム115の側面115aから軸受け部105に繋がる2本の流路116,117が設けられている。第1流路116の一方の開口端116aは、クランクアーム115の側面115aに設けられている。この開口端116aは、クランク軸103の回転軸線Aから離れた位置に形成されている。第2流路117は、クランク軸103の回転軸線A上を通り、クランク軸103を直径方向に貫通している。第2流路117の両方の開口端117a,117aは軸受け部の溝118に連通している。
【0007】
図14に示されるように、第1流路116は、クランク軸103の回転軸線Aと開口端116aとを通る平面に沿って形成されている。すなわち、第1流路116は、開口端116aからクランク軸103の回転軸線Aに向けて延び、他方の開口端116bは、クランク軸103の回転軸線A上に形成されて第2流路117に接続されている。このような構造により、使用液体は開口端116aから流入して第1流路116を通り、開口端部116bを介して第2流路117に流入し、二手に別れて軸受け部105へと供給される。
【0008】
このような構造を想定した場合、使用液体は、ポンプの吸水口より流入した際の吸水圧の作用により第1流路116に流入する(
図13参照)。しかしながら、吸水圧が低い場合には、第1流路116に流入する使用液体の量が減少し、軸受け部105の潤滑が不十分になる可能性がある。また、クランク軸103の回転数が高くなると、使用液体が第1流路116に進入し難くなる。
【0009】
本発明は、潤滑用の液体が軸受け部に供給され易くすることにより、軸受の耐久性を向上することができる往復動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クランクケース(4)内に配置されてクランクケース(4)に支持されるクランク軸(6,6A)を備え、クランク軸(6,6A)が、クランクケース(4)に支持されて回転軸線(A)を中心に回転可能なクランクジャーナル(61)と、コネクティングロッド(7)に連結されるクランクピン(62)とを有する往復動ポンプ(100)において、クランクケース(4)に設けられ、クランクジャーナル(61)の軸受け部(64)を支持する軸受(9)と、クランクケース(4)内に収容される液体を軸受け部(64)に導入する第1流路(65)および第2流路(66)と、を備え、第2流路(66)は、クランクジャーナル(61)内に形成されて、軸受け部(64)に接続されており、第1流路(65)の一端(65a)は、回転軸線(A)方向に交差するクランク軸(6,6A)の
側面(63a)
であってクランクジャーナル(61)に隣接するクランクピン(62)の周囲に露出する側面(63a)に開口すると共に、
隣接するクランクピン(62)の回転軸線(A)に対する偏心方向とは反対側に配置されて回転軸線(A)から離間しており、第1流路(65)の他端(65b)は、第2流路(66)に接続されると共に、回転軸線(A)から離間しており、第1流路(65)は、第1流路(65)の一端(65a)を基準としてクランク軸(6,6A)の回転方向(C)の上流側に延びていることを特徴とする。
【0011】
この往復動ポンプ(100)では、クランクジャーナル(61)の軸受け部(64)は、軸受(9)によって支持される。クランク軸(6,6A)に形成された第1流路(65)の一端(65a)は、回転軸線(A)方向に交差するクランク軸(6,6A)の表面(63a)に開口している。第1流路(65)の他端(65b)は、クランクジャーナル(61)内の第2流路(66)に接続されている。第1流路(65)の一端(65a)および他端(65b)は、いずれもクランク軸(6,6A)の回転軸線(A)から離間しており、第1流路(65)は、第1流路(65)の一端(65a)を基準としてクランク軸(6,6A)の回転方向(C)の上流側に延びている。クランク軸(6,6A)が回転方向(C)に回転したとき、潤滑用の液体の流れは、相対的に回転方向(C)の上流側に向かう。液体の流れが第1流路(65)の向きに沿うので、液体は、第1流路(65)の一端(65a)から第1流路(65)内に導入され易い。したがって、潤滑用の液体が第1流路(65)および第2流路(66)を通って軸受け部(64)に供給され易くなり、軸受(9)が潤滑され易い。その結果として、軸受(9)の耐久性を向上することができる。
【0012】
本発明は、クランクケース(4)内に配置されてクランクケース(4)に支持されるクランク軸(6,6A)を備え、クランク軸(6,6A)が、クランクケース(4)に支持されて回転軸線(A)を中心に回転可能なクランクジャーナル(61)と、コネクティングロッド(7)に連結されるクランクピン(62)とを有する往復動ポンプ(100)において、クランクピン(62)の軸受け部(62a)を前記コネクティングロッド(7)に支持する軸受(10)と、クランクケース(4)内に収容される液体を軸受け部(62a)に導入する第1流路および第2流路と、を備え、第2流路は、クランクピン(62)内に形成されて、軸受け部(62a)に接続されており、第1流路の一端は、回転軸線(A)方向に交差するクランク軸(6,6A)の
側面であってクランクピン(62)に隣接する別のクランクピン(62)の周囲に露出する側面に開口すると共に、
隣接する別のクランクピン(62)の回転軸線(A)に対する偏心方向とは反対側に配置されて回転軸線(A)から離間しており、第1流路の他端は、第2流路に接続されると共に、回転軸線(A)から離間しており、第1流路は、第1流路の一端を基準としてクランク軸(6,6A)の回転方向(C)の上流側に延びていることを特徴とする。
【0013】
この往復動ポンプ(100)では、クランクピン(62)の軸受け部(62a)は、軸受(10)によって、コネクティングロッド(7)に支持される。クランク軸(6,6A)に形成された第1流路の一端は、回転軸線(A)方向に交差するクランク軸(6,6A)の表面に開口している。第1流路の他端は、クランクピン(62)内の第2流路に接続されている。第1流路の一端および他端は、いずれもクランク軸(6,6A)の回転軸線(A)から離間しており、第1流路は、第1流路の一端を基準としてクランク軸(6,6A)の回転方向(C)の上流側に延びている。クランク軸(6,6A)が回転方向(C)に回転したとき、潤滑用の液体の流れは、相対的に回転方向(C)の上流側に向かう。液体の流れが第1流路の向きに沿うので、液体は、第1流路の一端から第1流路内に導入され易い。したがって、潤滑用の液体が第1流路および第2流路を通って軸受け部(62a)に供給され易くなり、軸受(10)が潤滑され易い。その結果として、軸受(10)の耐久性を向上することができる。
【0014】
請求項1に記載の往復動ポンプ(100)において、クランクケース(4)内に収容される液体を軸受け部(6
4)に導入する第3流路(67)を更に備え、第3流路(67)の一端(65a)は、回転軸線(A)方向に交差するクランク軸(6A)の側面(63a)に開口すると共に、回転軸線(A)から離間しており、第3流路(67)の他端(67b)は、第2流路(66)に接続されると共に、回転軸線(A)から離間しており、第3流路(67)は、第3流路(67)の一端(65a)を基準としてクランク軸(6A)の回転方向(C)の下流側に延びている。
請求項2に記載の往復動ポンプ(100)において、クランクケース(4)内に収容される液体を軸受け部(62a)に導入する第3流路を更に備え、第3流路の一端は、回転軸線(A)方向に交差するクランク軸(6A)の側面に開口すると共に、回転軸線(A)から離間しており、第3流路の他端は、第2流路に接続されると共に、回転軸線(A)から離間しており、第3流路は、第3流路の一端を基準としてクランク軸(6A)の回転方向(C)の下流側に延びている。
【0015】
この構成によれば、クランク軸(6A)が正転(すなわち回転方向(C)へ回転)した場合、および、クランク軸(6A)が逆転(すなわち回転方向(C)とは逆方向へ回転)した場合のいずれの場合でも、上記したのと同じ作用により、潤滑用の液体が軸受け部(64,62a)に供給され易い。すなわち、クランク軸(6A)が正転した場合は第1流路(65)を通って液体が導入され易く、クランク軸(6A)が逆転した場合は第3流路(67)を通って液体が導入され易い。言い換えれば、ポンプの組立時において、クランク軸(6A)を組み入れるときに、クランク軸(6A)の向きに拘束されないという効果が奏される。すなわち、いずれの向きでクランク軸(6A)を組み込んでも、回転方向(C)に対して第1流路(65)および第3流路(67)が傾斜しているので、軸受け部(64,62a)に液体が供給され易くなっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、潤滑用の液体が軸受け部(64,62a)に供給され易くなり、軸受(9,10)の耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の往復動ポンプ100は、往復動部材1がシリンダ部2内を往復動(図示左右動)することにより、当該往復動部材1の往復動方向の前側(図示左側)に形成されたポンプ室3に使用液体(液体)を吸引し、当該使用液体を加圧して圧送するポンプ作用を行う。往復動ポンプ100は、クランクケース4とマニホルド5とを連結することで、その外形が構成されている。往復動ポンプ100は、ここでは、ポンプ作用を行う往復動部材1及びシリンダ部2を有する組が3組並設された3連式のポンプとされている(
図2参照)。
【0020】
往復動部材1は、前側に配置された円柱状のプランジャ1aと、プランジャ1aの後端部にボルト結合された円柱状のピストン元1bと、を有しており、プランジャ1aとピストン元1bとが一体となって往復動する。
【0021】
前側のプランジャ1aは、マニホルド5内に装着されたシリンダ部材16内に配置され、シリンダ部材16の内側(筒孔)を往復動する。シリンダ部材16の内側は、プランジャ1aが往復動する上記シリンダ部2を構成し、シリンダ部材16の前部には、上記ポンプ室3が形成されている。往復動部材1の後側のピストン元1bは、ピストンピン8を介して駆動部Mに連結されている。後側のピストン元1bは、前側のプランジャ1aよりも大径に構成され、その後部には、前側に向かって凹む凹部1cが形成されている。
【0022】
クランクケース4は中空に構成されており、中空部分に往復動部材1を往復動させる駆動部Mが収容されている。この中空部分は、使用液体が流れる流路Rとされ、使用液体が収容される。このように、往復動ポンプ100は、流路R中の使用液体に駆動部Mが浸漬し、駆動部Mが使用液体に浴する構成とされている。クランクケース4の後端面には、開口部41が形成されており、この開口部41は、ボルト締結された蓋42により閉じられている。
【0023】
使用液体は、ポンプ室3内に流入し、ポンプ室3でポンプ作用に供される液体である。使用液体としては、種々の液体を用いることができ、ここでは清水が用いられている。このような使用液体に浴する駆動部Mは、クランク軸6、コネクティングロッド(以下、コンロッドという)7、ピストンピン8及び軸受9,10,11等を有している。
【0024】
クランク軸6は、往復動部材1の往復動方向に直交する方向(
図1の紙面垂直方向、
図2の上下方向)に延びるように配置されている。
図2に示されるように、クランク軸6の両端側のクランクジャーナル61,61は、それぞれ、クランクケース4にボルト締結されたベアリングケース13,14により支持されている。クランク軸6は、ベアリングケース13,14を挿通して外部に突出している。
【0025】
クランクジャーナル61,61とベアリングケース13,14との間には、それぞれ円筒状の軸受9が配置され、軸受9によりクランク軸6が回転自在に支持されている。軸受9及び後述する軸受10,11を形成する材料としては、種々の樹脂を用いることができるが、ここでは、高強度耐水性樹脂であるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂が用いられている。クランク軸6とベアリングケース13,14との間であって、クランク軸6の軸線方向において軸受9,9よりも外側の両部分には、それぞれメカニカルシール15が配置されている。
【0026】
コンロッド7は、各往復動部材1に対応して設けられている。
図1及び
図2に示されるように、コンロッド7において、後側(クランク軸6側)の大径部7aは、円筒状の軸受10を介して、クランク軸6のクランクピン62に回転自在に連結されている。大径部7aは、軸線方向視において二分割されており、それぞれ中心角が180°の略半円形の本体部71及びキャップ部72を含んでいる。本体部71とキャップ部72とは、ボルトB,Bにより締結されている。コンロッド7において、前側(往復動部材1側)の小径部7bは、円筒状の軸受11を介して上記ピストンピン8に回転自在に連結されている。大径部7aの本体部71と小径部7bとは、棒状のロッド部7cにより連結されている。
【0027】
クランクケース4の内部において、前側の部分には、クランク軸6に接近するように後側に向かって突出する突出部分4aが設けられている。突出部分4aの内部には、円筒状のガイド部材12が収容固定されている。ガイド部材12は、例えば軸受9〜11と同様な樹脂により形成されており、その筒孔に往復動部材1のピストン元1bが挿入され、ピストン元1bの往復動をガイドする。ガイド部材12内に位置するピストン元1bの凹部1c内には、コンロッド7の前側の小径部7bが進入しており、ピストンピン8の両端がピストン元1bに圧入状態で固定されている。
【0028】
クランクケース4においてガイド部材12よりも前側には、ガイド部材12に当接して筒状のシールケース17が配置されている。シールケース17の軸線方向中程には、内側に突出する環状の鍔部17aが設けられており、鍔部17aの内側を往復動部材1のプランジャ1aが挿通している。シールケース17の内側であって鍔部17aの前側には、円筒状の高圧シール18が配置されている。高圧シール18を含むシリンダ部材16の内面が、シリンダ部2とされる。
【0029】
ガイド部材12、シールケース17、高圧シール18及びシリンダ部材16は、クランクケース4に対しマニホルド5を例えばボルト等により取り付けることによって、クランクケース4内とマニホルド5内との間に挟まれた状態で固定されている。
【0030】
図1に示されるように、クランクケース4の上部は、マニホルド5よりも上側(
図1において上側)に膨出しており、膨出部における前側(マニホルド5側)の端面には、クランクケース4内の流路Rに連通し、流路Rに使用液体を流入させる吸水口19が開口されている。また、クランクケース4におけるマニホルド5側の端面であって、各シールケース17よりも下側の位置には、クランクケース4内の流路Rに連通し流路Rからマニホルド5側へ使用液体を流出させるための流出口20が開口されている。
【0031】
マニホルド5には、クランクケース4の流出口20に連通する流入口21が開口されている。流入口21とポンプ室3との間には、クランクケース4内の流路Rからの使用液体が流れる吸水側流路R1が形成されている。吸水側流路R1には、当該吸水側流路R1を開閉する吸水弁22が設けられている。
【0032】
マニホルド5には、ポンプ室3からの使用液体を外部に吐出するための吐出口23が設けられ、各ポンプ室3の先端部には、当該ポンプ室3を構成するように吐出弁24がそれぞれ設けられている。各吐出弁24は、その開閉により各ポンプ室3を開閉し、各吐出弁24の吐出側と吐出口23との間には、ポンプ室3からの使用液体が流れる吐出側流路R2が形成されている。
【0033】
続いて、
図3〜
図5を参照して、クランク軸6の構造について説明する。
図3および
図4に示されるように、クランク軸6は、ベアリングケース13,14に支持されて、回転軸線Aを中心に回転可能な円柱状のクランクジャーナル61と、クランクジャーナル61に連設されて、クランクジャーナル61よりも大きい径を有する円盤状のクランクアーム63と、クランクアーム63に連設されて、回転軸線Aに対して偏心した円柱状のクランクピン62とを有する。上記したように、往復動部材1及びシリンダ部2を有する組が3組並設されているのに対応して、クランクピン62は3個設けられている。クランクピン62,62同士間にはクランクアーム63が設けられている。複数のクランクピン62は、回転軸線Aに対して、異なる方向に偏心している。
【0034】
クランクピン62の外周面には、円筒状の軸受け部62aが形成されている。この軸受け部62aに、上記した軸受10が配置される。軸受け部62aは、軸受10に対するクランクピン62の接触面である。軸受10は、クランクピン62の軸受け部62aをコンロッド7に対して支持する。
【0035】
クランクジャーナル61の外周面には、円筒状の軸受け部64が形成されている。この軸受け部64に、上記した軸受9が配置される。軸受け部64は、軸受9に対するクランクジャーナル61の接触面である。軸受9は、クランクケース4に設けられて、クランクジャーナル61の軸受け部64を支持する。クランクジャーナル61の外周面の一部には、円環状に窪む溝68が設けられている。軸受け部64と溝68とは連通している。
【0036】
クランクジャーナル61およびクランクアーム63には、クランクケース4内に収容されて流路Rを流れる使用液体を軸受け部64に導入するための第1流路65および第2流路66が形成されている。第1流路65および第2流路66は、たとえば、細長い円柱状に形成されている。第1流路65および第2流路66の中心軸線は直線状である。クランク軸6の両端に設けられるクランクジャーナル61,61のうち一方のクランクジャーナル61に、1本の第1流路65および1本の第2流路66が形成されている。クランク軸6の両端に設けられるクランクジャーナル61,61のうち他方のクランクジャーナル61に、1本の第1流路65および1本の第2流路66が形成されている。一方の第1流路65および第2流路66と他方の第1流路65および第2流路66とは、回転軸線Aを中心とした方位が異なるのみであり、同じ大きさ及び形状で形成されている。
【0037】
第2流路66は、クランクジャーナル61内に形成されている。第2流路66は、クランクジャーナル61の回転軸線Aを通り、クランクジャーナル61の直径方向に延びるように形成されている。第2流路66は、クランクジャーナル61に隣接するクランクピン62の偏心方向に対して垂直に延在する(
図7参照)。第2流路66の両端66a,66aは、溝68内に形成されている。すなわち、第2流路66は、溝68を介して、軸受け部64に接続されている。
【0038】
第1流路65は、クランクジャーナル61およびクランクアーム63に形成されており、クランクアーム63を貫通して、クランクジャーナル61内まで延びている。第1流路65の一端65aは、クランクアーム63の側面(回転軸線Aに交差するクランク軸6の表面)63aに開口している。第1流路65の他端65bは、第2流路66の途中部に接続されている(
図4及び
図7参照)。本実施形態の例では、第1流路65の他端65bは、第2流路66の一端66aに近い端部付近に接続されている。
【0039】
図7に示されるように、第1流路65の一端65aは、回転軸線Aから離間している。より詳しくは、第1流路65の一端65aは、回転軸線Aに対するクランクピン62の偏心方向とは反対側に配置されている。すなわち、クランクピン62の偏心軸A1と第1流路65の一端65aとの間に回転軸線Aが位置している。偏心軸A1と第1流路65の一端65aとを結ぶ方向と、第2流路66の延在方向とは直交する。
【0040】
第1流路65の他端65bは、回転軸線Aから離間している。上記したように、第1流路65の他端65bは第2流路66の端部付近に接続されているので、回転軸線Aに対して、第2流路66の延在方向にずらされている。
【0041】
第1流路65は、一端65aを基準として、クランク軸6の回転方向Cの上流側に延びている。すなわち、
図6に示すように、クランク軸6を一端65aの位置において回転軸線Aの放射方向外側から見た場合、第1流路65は、一端65aを基準として、回転軸線Aに対し回転方向Cの上流側へ倒れている。さらに別の言い方をすれば、第1流路65は、クランク軸6の回転軸線Aに対してねじれの方向に延び、回転軸線Aと第1流路65の一端65aとを通る仮想平面に対して、角度を成す方向に延びている。
【0042】
次に、
図1および
図2を参照して、往復動ポンプ100の動作について説明する。往復動ポンプ100では、クランクケース4内の流路Rに吸水口19から作動流体が導入され、駆動部Mが作動流体に浴した状態で駆動部Mが駆動される。
【0043】
クランク軸6が回転すると、回転運動がコンロッド7及びピストンピン8により往復運動に変換されて往復動部材1が往復動し、プランジャ1aがシリンダ部2内を後側に向かって移動することによってポンプ室3が減圧され、作動流体がクランクケース4内の流路Rからマニホルド5の吸水側流路R1及び吸水弁22を通してポンプ室3へ吸引される。続いて、プランジャ1aがシリンダ部2内を前側に向かって移動することによってポンプ室3が加圧され、ポンプ室3の作動流体が吐出弁24、吐出側流路R2を通して吐出口23から外部へ吐出される。このように、作動流体を吸引し吐出するポンプ作用が繰り返し行われる。
【0044】
このようなポンプ作用によるポンプ室3の減圧時には、クランクケース4内において使用液体は、吸水口19から流入し主として突出部分4aの上面に沿って後方へ向かいクランク軸6の上側から後側に回り込んでクランク軸6の下側に向かい、さらに流路R4を流れて流出口20に向かう流れを形成する。また、吸水口19から流入した使用液体の一部は、クランクケース4の突出部分4aとクランク軸6との間の流路R5を下方に向かって流れ、流路R4に合流する流れを形成する。
【0045】
なお、吸水口19から流入した作動流体の一部は、突出部分4aに設けられた連絡路28及び環状流路27、並びに、シールケース17に設けられた開口17bを通して、高圧シール18の裏側(後端面)に面すると共にピストン元1bより前側に設けられた環状の領域R3に導入される。また、吸水口19から流入した作動流体の一部は、ピストン元1bの凹部1c及びピストン元1bに設けられた連通孔26を通して、上記領域R3に導入される。これらの作動流体によって、軸受11及びガイド部材12の冷却及び潤滑、並びに、ピストン元1bの潤滑が行われる。
【0046】
ここで、第1流路65は、第1流路65の一端65aを基準としてクランク軸6の回転方向Cの上流側に延びているため、クランク軸6が回転方向Cに回転したとき、潤滑用の使用液体の流れは、相対的に回転方向Cの上流側に向かう(
図6参照)。使用液体の流れが第1流路65の倒れている向きに沿うので、使用液体は、第1流路65の一端65aから第1流路65内に導入され易い(
図6に示す流れF参照)。したがって、潤滑用の使用液体が第1流路65および第2流路66を通って軸受け部64に供給され易くなり、軸受9は十分に冷却および潤滑される。よって、軸受9としての機能が十分に発揮され、さらには軸受9の耐久性が向上する。
【0047】
このように、クランク軸6の回転に伴って、使用液体を第1流路65に強制的に入り込ませることができる。これにより、第1流路65に使用液体を入り込ませる作用は、吸水圧と、クランク軸6の回転により強制的に入り込ませる力との2つの要素となっている。よって、
図12〜14に示される方式に比して、クランク軸6の軸受け部64に潤滑用の使用液体が入り込むこととなり、高強度耐水性樹脂の軸受9の寿命が長くなっている。
【0048】
また、吸水圧が減少しても、クランク軸6の回転による強制的な流入による作用があるため、軸受け部64の潤滑が継続される。よって、軸受9の機能は継続されたままとなり、往復動ポンプ100の運転を継続することができる。
【0049】
次に、
図8および
図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。クランク軸6Aでは、第1実施形態の第1流路65および第2流路66に加えて、第1流路65の一端65aを基準として、クランク軸6の回転方向Cの下流側に延びる第3流路67を備えている。クランクアーム63の側面63aに形成された第3流路67の開口端は、一端65aである。すなわち、第1流路65および第3流路67において、一端65aが共有されている。第3流路67は、回転軸線Aおよび一端65aを通る仮想平面に関して、65と対称に形成されている。第3流路67の他端67bは、第2流路66の端部付近に接続されている。
【0050】
このように2本の第1流路65および第3流路67を備えた6Aでは、クランク軸6Aが正転(すなわち回転方向Cへ回転)した場合、および、クランク軸6Aが逆転(すなわち回転方向Cとは逆方向へ回転)した場合のいずれの場合でも、上記したのと同じ作用により、潤滑用の使用液体が軸受け部64に供給され易い。すなわち、
図10に示されるように、クランク軸6Aが回転方向Cに正転した場合は、第1流路65を通って使用液体が導入され易い(
図10に示す流れF参照)。
図11に示されるように、クランク軸6Aが逆転して回転方向Dに回転した場合は、第3流路67を通って使用液体が導入され易い(
図11に示す流れFa参照)。言い換えれば、往復動ポンプ100の組立時において、クランク軸6Aを組み入れるときに、クランク軸6Aの向きに拘束されないという効果が奏される。すなわち、いずれの向きでクランク軸6Aを組み込んでも、回転方向に対して第1流路65および第3流路67が傾斜しているので、軸受け部64に使用液体が供給され易くなっている。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、使用液体によって軸受9を潤滑させる場合に限られず、第1流路65および第2流路66、または、第1流路65、第2流路66および第3流路67と同様の流路を、クランクピン62の軸受10の潤滑・冷却のために設けてもよい。この場合、これらの流路は、クランクアーム63の側面63aから、クランクピン62の外周面である軸受け部62a(
図1および
図2参照)に向けて形成される。第2流路はクランクピン62に形成されて、軸受け部62aに接続される。第1流路および第3流路は、クランクアーム63およびクランクピン62に形成されて、第2流路に接続される。
【0052】
このようにすれば、クランク軸6の回転に伴って、使用液体が軸受け部62aに供給され易くなり、軸受10は十分に冷却および潤滑される。よって、軸受10としての機能が十分に発揮され、さらには軸受10の耐久性が向上する。第1流路65、第2流路66および第3流路67と同様の3本の流路を設けた場合には、クランク軸の正転時、逆転時のそれぞれにおいて、使用液体が軸受け部62aに供給され易くなる。しかも、往復動ポンプ100の組立時において、クランク軸を組み入れるときに、クランク軸の向きに拘束されない。
【0053】
また、本発明は、水潤滑に限られず、オイル潤滑に適用してもよい。クランク軸6,6Aがクランクアーム63を備えていない場合には、たとえば、クランクジャーナル61またはクランクピン62の側面(回転軸線Aに交差するクランク軸6の表面)に第1流路65の一端65aまたは第3流路67の一端が形成されてもよい。