特許第6148654号(P6148654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6148654-屋内用植物栽培装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148654
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】屋内用植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20060101AFI20170607BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   A01G9/00 C
   A01G7/00 601A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-236039(P2014-236039)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-96773(P2016-96773A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】加納 光寿
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−27322(JP,A)
【文献】 特開2010−130934(JP,A)
【文献】 特開昭58−86022(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3152224(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/89037(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00− 9/02
A01G 7/00
A01G 31/00−31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の植栽容器にそれぞれ植えられた複数の植物を育成する屋内用植物栽培装置であって、
光源を支持する支柱が立設された基台と、
該支柱の軸心を中心軸とする逆円錐面の複数本の母線に沿って長手方向に移動可能に配設され、前記植栽容器が所定間隔で着脱可能に装着された複数本の支持ケーブルと、
該複数本の支持ケーブルをそれぞれ送る送り装置と
を、含むことを特徴とする屋内用植物栽培装置。
【請求項2】
前記支柱の上部には、前記支持ケーブルを支持するための複数本の支持アームが突設され、
前記支持ケーブルの上部は、該支持アームに直接または間接的に支持される
ことを特徴とする請求項1に記載の屋内用植物栽培装置。
【請求項3】
前記支柱を中心とする上部円に沿って周方向に等間隔で配置された複数個の上部滑車が、前記支持アームに直接または間接的に設けられ、
前記支柱を中心とする下部円に沿って周方向に等間隔で配置された複数個の下部滑車が、前記支柱または基台に設けられ、
前記複数本の支持ケーブルは、前記上部滑車および下部滑車にそれぞれ巻き掛けられた無端環状ケーブルである
ことを特徴とする請求項2に記載の屋内用植物栽培装置。
【請求項4】
前記送り装置は、前記無端環状ケーブルのうち、前記母線に沿った部分を除いた部分を巻き掛ける送りローラと、該送りローラに操作力を伝達する減速機と、該減速機に操作力を入力する電動機または操作ハンドルとを有するものである
ことを特徴とする請求項3の屋内用植物栽培装置。
【請求項5】
前記減速機は、前記基台に設けられたウオーム型減速機である
ことを特徴とする請求項4の屋内用植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内用植物栽培装置に関し、特に、屋内において植物を効率よく且つばらつき無く育成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば葉物野菜、果実野菜、観葉植物などの植物を、屋内において効率的に栽培することを可能とする植物栽培装置が種々提案されている。たとえば、特許文献1に記載された栽培棚がそれである。
【0003】
この特許文献1に記載の植物栽培装置によれば、植物を栽培する棚床が多段に形成され、その棚床上に証明装置が上下動自在に設けられた栽培棚において、照明装置に適正距離を示す水平ガイドバーを懸吊させ、その照明装置は、棚床の大きさに応じて形成された反射板と、その反射板に多数設けられた蛍光灯又はLEDバーとから成り、その反射板の四隅が、各ワイヤーで支持され、その各ワイヤーが昇降装置で上下動自在に設けられている。
【0004】
これによれば、植物を栽培する棚床が多段に形成され、その棚床の上に照明装置が上下動可能に設けられている栽培棚において、照明装置に、適正照射距離を示す水平ガイドバーを懸吊させたので、水平ガイドバーを見ながら、その水平ガイドバーを葉物野菜等の植物の上部に位置するように照明装置の上限位置を調整することで、生育する植物の背丈に応じて適正照射距離を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−000044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような植物栽培装置では、複数の栽培棚毎に光源が複数必要となるため、各植物への照射効率が低く、装置が高価となるという欠点があった。また、たとえば異種植物を育成するときのように植物間で成長のばらつきがある場合はその植物の育成状況のばらつきに対応した照射量の調整が困難であった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、光源による照射効率が高く、その植物の育成状況のばらつきに対応した照射量の調整が可能な屋内用植物栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明者等は種々検討を重ねた結果、上側ほど大径となる逆円錐面に沿って複数の植物を配置し、その逆円錐面の母線に沿って小径側から大径側へ向って植物をその成長に応じてそれぞれ独立に移動させるようにすると、光源による照射効率が高く、しかもその植物の育成状況のばらつきに対応した照射量の調整が可能な可能となることを見出した。本発明は、斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a)複数の植栽容器にそれぞれ植えられた複数の植物を育成する屋内用植物栽培装置であって、(b)光源を支持する支柱が立設された基台と、(c)該支柱の軸心を中心軸とする逆円錐面の複数本の母線に沿って長手方向に移動可能に配設され、前記植栽容器が所定間隔で着脱可能に装着された複数本の支持ケーブルと、(d)該複数本の支持ケーブルをそれぞれ送る送り装置とを、含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された屋内用植物栽培装置によれば、前記複数の植栽容器が、支柱の軸心を中心軸とする逆円錐面の複数本の母線に沿って長手方向に移動可能に配設された複数本の支持ケーブルに、所定間隔で着脱可能に装着されている結果、該支柱を中心軸とする逆円錐面に沿って位置するので、単一の光源により各植栽容器に植えられた植物に対する照射が、高い効率で行なわれる。また、送り装置によって支持ケーブルをそれぞれ送ることができるので、その植物の育成状況のばらつきに対応した照射量の調整が可能となる。特に、異種植物を育成する場合にはその効果が重要となる。
【0011】
ここで好適には、(e)前記支柱の上部には、前記支持ケーブルを支持するための複数本の支持アームが突設され、(f)前記支持ケーブルの上部は、該支持アームに直接または間接的に支持される。このようにすれば、複数本の支持ケーブルの上部は、該支持アームに直接または間接的に支持されるので、該支持ケーブルは、前記支柱の軸心を中心軸とする逆円錐面の複数本の母線に沿って配設される。
【0012】
また、好適には、(g)前記支柱を中心とする上部円に沿って周方向に等間隔で配置された複数個の上部滑車が、前記支持アームに直接または間接的に設けられ、(h)前記支柱を中心とする下部円に沿って周方向に等間隔で配置された複数個の下部滑車が、前記支柱または基台に設けられ、(i)前記複数本の支持ケーブルは、前記上部滑車および下部滑車にそれぞれ巻き掛けられた無端環状ケーブルである。このようにすれば、前記複数本の支持ケーブルは、前記上部滑車および下部滑車にそれぞれ巻き掛けられた無端環状ケーブルから構成されるので、ケーブルを巻くためのロールが不要となる。
【0013】
また、好適には、(j)前記送り装置は、前記無端環状ケーブルのうち、前記母線に沿った部分を除いた部分を巻き掛ける送りローラと、(k)該送りローラに操作力を伝達する減速機と、(l)該減速機に操作力を入力する電動機または操作ハンドルとを有するものである。このようにすれば、電動機または操作ハンドルから減速機に操作力が入力されると、無端環状ケーブルが容易に長手方向に移動させられ、複数の植栽容器の位置が変更される利点がある。
ことを特徴とする請求項3の屋内用植物栽培装置。
【0014】
また、好適には、(m)前記減速機は、前記基台に設けられたウオーム型減速機である。このようにすれば、ウオーム型減速機は入力軸のトルクが零でも出力軸に制動トルクが作用するので、非操作時に無端環状ケーブルが複数の植栽容器の荷重によって動くことを止めるための制動装置が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例である屋内用植物栽培装置を示す正面図である。
図2図1の実施例において、ケーブルを除去して示す斜視図である。
図3図2の実施例において、植栽容器の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例である屋内用植物栽培装置10を示す正面図であり、図2は、その屋内用植物栽培装置10の支持ケーブル20を除去して示す斜視図であり、図3はその図2の屋内用植物栽培装置10の平面を示す図である。なお、図1では、左右対象であるため、左半分が省略されて示されている。
【0018】
図1図2、および図3において、屋内用植物栽培装置10は、光源12を支持する支柱14が中心から立設された円盤状の基台16を備えている。光源12は、たとえば蛍光灯或いはLEDを含む円板状であって、光合成に有効な波長帯の光、たとえば可視光領域を含む400〜700nm程度の波長域を有する光を、光合成に有効な光量で、連続光またはパルス光で出力する。
【0019】
屋内用植物栽培装置10は、支柱14の軸心Cを中心軸とする逆円錐面CSの複数本の母線Mに沿って長手方向に移動可能に配設され、複数の植栽容器Bが所定間隔で着脱可能に装着された無端環状の複数本の支持ケーブル20を備え、複数の植栽容器Bにそれぞれ植えられた複数の植物Pを、支柱14の軸心Cを中心とする逆円錐面CSに沿って配置して光源12からの光を受けて、その逆円錐面CSの母線Mに沿って移動させつつ育成する。逆円錐面CSは、支柱14の軸心Cを中心とする小径の下部円DCと、支柱14の軸心Cを中心とするそれより大径の上部円UCとの間に形成されている。
えている。
【0020】
屋内用植物栽培装置10は、無端環状の支持ケーブル20を支持するために支柱14の上部から水平方向外向きに且つ周方向等間隔で突設された複数本の支持アーム22と、その支持アーム22の先端部に配設されて、上部円UCに沿って周方向に等間隔で配置された複数個の上部滑車24aおよび24bと、支柱14または基台16に設けられ下部円DCに沿って周方向に等間隔で配置された複数個の下部滑車26と、送りローラ28を出力軸に有して基台16に設けられた、送り装置として機能する複数の減速機30とを、備えている。支持ケーブル20は、送りローラ28、下部滑車26、上部滑車24aおよび24bに順次巻き掛けられて所定の張力が付与されている。
【0021】
減速機30は、送りローラ28が装着された出力軸とともに回転する図示しないウオームホイールと、図示しない電動機或いは操作ハンドルとともに回転してそのウオームホイールに噛み合うウオームとを備えるウオーム型減速機であり、図示しない電動機或いは操作ハンドルから入力される操作力によって出力軸が回転するが、たとえば支持ケーブル20からトルクが加えられて力軸が回転しないという制動機能を有する特徴がある。
【0022】
以上のように構成された本実施例の屋内用植物栽培装置10は、図1或いは図2に示すように、植物Pがそれぞれ植えられた複数の植栽容器Bが支持ケーブル20に装着された状態で、光源12からの光を受けて育成する。このとき、逆円錐面CSの内部の大径側に位置する光源12から光線が放射されるので、複数の植物Pはその位置に拘わらず光線を直接的に略均等に受けることができ、しかも複数の植物Pが光源12を覆っているので、単一の光源12の照射効率すなわち利用効率が大幅に高くされている。
【0023】
また、植物Pに対する水やりは、光源12の下側に支持アーム22に設けたスプレイノズル32を用いて行なわれる。この場合、光源12の場合と同様に、逆円錐面CSの内部の大径側に位置するスプレイノズル32から水が噴射されるので、複数の植物Pはその位置に拘わらず上記の水の噴射を直接的に略均等に受けることができ、しかも複数の植物Pがスプレイノズル32を覆っているので、単一のスプレイノズル32の噴射効率すなわち利用効率が大幅に高くされている。
【0024】
植物Pのうち、生育にしたがって大きくなった植物Pの植栽容器Bは支持ケーブル20から取り外されて、1ピッチ分支持ケーブル20が送られた後、新たな小さな植物Pが植栽された植栽容器Bが下側位置に追加される。このとき、植物Pの大きさに合わせて、支持ケーブル20は任意の位置で固定される。たとえば、上側に位置する植物Pが最も光源12に接近する位置に固定し、その植物Pの成長に応じてその植物Pが植栽されている植栽容器Bの位置を逐次下降させることもできる。また、支持ケーブル20毎に、成長速度が異なる異種の植物Pを植栽した植栽容器Bを装着することで、その異種の植物Pの成長或いは必要照射量に適合した送りを行なうことができるので、同時に複数種類の植物を生育させることもできる。
【0025】
上述のように、本実施例の屋内用植物栽培装置10よれば、複数の植栽容器Bが、支柱14の軸心Cを中心軸とする逆円錐面CSの複数本の母線Mに沿って配設された支持ケーブル20に、所定間隔で着脱可能に装着されている結果、支柱14の軸心Cを中心軸とする逆円錐面CSに沿って位置するので、単一の光源12により各植栽容器Bに植えられた植物Pに対する照射が、高い効率で行なわれる。また、ウオーム型減速機30(送り装置)によって支持ケーブル20をそれぞれ送ることができるので、その植物Pの育成状況や必要照射量のばらつきに対応した照射量の調整が可能となる。特に、異種植物を育成する場合にはその効果が重要となる。
【0026】
また、本実施例の屋内用植物栽培装置10によれば、支柱14の上部には、支持ケーブル20を支持するための複数本の支持アーム22が突設され、支持ケーブル20の上部は、その支持アーム22に直接または間接的に支持される。このため、支持ケーブル20は、支柱14の軸心Cを中心軸とする逆円錐面CSの複数本の母線Mに沿って配設される。
【0027】
また、本実施例の屋内用植物栽培装置10によれば、支柱14の軸心Cを中心とする上部円UCに沿って周方向に等間隔で配置された複数個の上部滑車24a、24bが、支持アーム22に直接または間接的に設けられ、支柱14の軸心Cを中心とする下部円DCに沿って周方向に等間隔で配置された複数個の下部滑車26が、支柱14または基台16に設けられ、複数本の支持ケーブル20は、上部滑車24a、24bおよび下部滑車26にそれぞれ巻き掛けられた無端環状ケーブルである。このため、複数本の支持ケーブル20は、上部滑車および下部滑車にそれぞれ巻き掛けられた無端環状ケーブルから構成されるので、ケーブルを巻くためのロールが不要となる。
【0028】
また、本実施例の屋内用植物栽培装置10によれば、支持ケーブル20の送り装置は、無端環状の支持ケーブル20のうち、母線Mに沿った部分を除いた部分を巻き掛ける送りローラ28と、送りローラ28に操作力を伝達するウオーム型減速機30と、そのウオーム型減速機30に操作力を入力する電動機または操作ハンドルとを有するものである。このため、電動機または操作ハンドルから減速機に操作力が入力されると、無端環状の支持ケーブル20が容易に長手方向に移動させられ、複数の植栽容器Bの位置が変更される利点がある。
【0029】
また、本実施例の屋内用植物栽培装置10によれば、減速機として、基台16に設けられたウオーム型減速機30が用いられる。このウオーム型減速機30は入力軸のトルクが零でも出力軸に制動トルクが作用するので、非操作時に無端環状ケーブルが複数の植栽容器の荷重によって動くことを止めるための制動装置が不要となる。
【0030】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0031】
たとえば、前述の実施例においては、支柱14は、ケーブルの内側において基台16から立設された比較的小径のものであったが、基台16の外周縁から立設された軸心Cを中心軸とする比較的大径の円筒状或いは角筒状の支柱であってもよい。この場合の支持アーム22は、内向きに突設される。また、支柱14は、その円筒状或いは角筒状の支柱が周方向において分割されたような複数本の支柱群から構成されたものであってもよい。
【0032】
また、前述の実施例においては、光源12の下にアームが突設されていたが、アームの下に光源12が支持されていてもよい。
【0033】
また、前述の実施例においては、上部滑車24a、24bが支持アーム22に直接設けられて支持ケーブル20は支持アーム22に直接的に支持されたものであったが、上部滑車24a、24bが支持アーム22間に架け渡された環状の部材に設けられたものでもよい。この場合、支持ケーブル20は、支持アーム22にまたは間接的に支持される。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
10:屋内用植物栽培装置
12:光源
14:支柱
16:基台
20:支持ケーブル
22:支持アーム
24a、24b:上部滑車
26:下部滑車
28:送りローラ
30:ウオーム型減速機(送り装置)
32:スプレイノズル
B:植栽容器
C:支柱の軸心
CS:円錐面
UC:上部円
DC:下部円
M:母線
P:植物
図1
図2
図3