【実施例】
【0053】
実施例は、本開示の物品を作製する方法およびそれをいかに作製するかをさらに説明する。
【0054】
未焼成体の作製。未焼成体が、「Batch Compositions for Cordierite Ceramics」という発明の名称の米国特許第5,332,703号明細書、および「Method of Making Fired Bodies」という発明の名称の同第6,221,308号明細書(両方ともCorning,Inc.に譲渡される)にしたがって、および本開示にしたがって変更されるように作製され得る。様々なガラス形成添加剤、セラミック組成物、および得られる微細構造および材料特性が、以下の実施例に記載され、Li
2O、リン酸塩、リン酸中への浸漬、過剰なシリカの添加、および最後にB
2O
3の添加の順序での添加剤および添加剤の添加によって確立される。
実施例1
バッチへの酸化リチウムガラス形成添加剤の添加。表1に列挙される0、0.5および1重量%のLi
2O超過添加を有する別々にバッチされた組成物A、B、Cを、300/14セル形状を有する1インチ(25.4mm)の直径のハニカムへとラム押し出しした(ram−extrude)。無機原料、細孔形成剤、および結合剤を、乾燥した状態で予め混合した。乾燥した混合原料を、鍋の中で組み合わせて、好適なペースト生地が達成されるまでバッチ水を加えながら温めた。リチウムを、バッチ水に溶解された酢酸リチウムとしてバッチに加えた。バッチ組成物AAは、表1に示される異なる細孔形成剤レベルを有する別の基準バッチである。
【0055】
【表1】
【0056】
次に、得られたペーストを、ラム押し出し機において、適切なサイズのハニカムダイおよびシムを有するハニカム形状へと押し出した。1インチ(25.4mm)のラム押し出しされた部分では、ダイ形状は、1平方インチ(645.2mm
2)当たり300個のセルおよび14ミル(0.36mm)の押し出された壁厚を有する(300/14)であった。
【0057】
押し出された未焼成ハニカム部品を、マイクロ波オーブン中で、中出力で5分間乾燥させ、乾燥オーブン中で、85℃で24時間(h)さらに乾燥させた。次に、この部分を、CM炉(cmfurnaces.com)中で、120℃/時の温度上昇速度、最高温度1390、1400、また1410℃および15時間(hr)の保持時間を用いて空気中で焼成した。全ての材料を押し出し、乾燥させ、亀裂形成による破壊問題を伴わずに焼成した。
【0058】
Liガラス形成添加剤を含有する完全に焼成された材料の微細構造。0.5および1%のLiを有する完全に焼成された材料BおよびCは、典型的な長石、チタン酸アルミニウム、およびアルミナの分布を示すが、伸張した粒界ガラスフィルムを有する非常に規則的に分布された小さいサイズのガラスポケットの存在によって、Liを含まないA材料と区別される。基準材料Aは、大きく、かつよく分布していない所々のガラスポケットを含む。微小亀裂は、Liガラスポケットが存在するチタン酸アルミニウム相を通って延在するようである。Liを含まない基準材料Aでは、亀裂が、長石相を通って伝播しやすい。Li含有試料では、微小亀裂はより小さく、長石領域においてより低い頻度で観察され、長石界面で停止されるようであり、材料全体を通って伝播しない。
【0059】
ドメインサイズ分析(異なるドメインの区別の基準として15度を超える配向ずれ)および粒度分析(異なる粒子の区別の基準として1度を超える配向ずれ)とともに、電子後方散乱回折(EBSD)は、チタン酸アルミニウムの平均粒度が10マイクロメートルであり、平均ドメインサイズが、1%のLiを含む材料について約40マイクロメートルであることを示した。特定のテクスチャ化は、チタン酸アルミニウムの極点図において観察されなかった。Li含有バッチから得られた材料中のチタン酸アルミニウムの微細構造特性は、基準材料と非常に類似している。チタン酸アルミニウム粒度は、ガラスのフラックスにもかかわらずより大きくない。
【0060】
図2A〜2Dは、リチウムを原料とする薄い粒界ガラスを有する例示的なセラミック材料;特に、1%のLiを含有する上記の実験C材料の研磨された断面のSEM画像(電子後方散乱回折)を示す。
【0061】
図2Aは、典型的な粒度分布を示す帯域コントラスト(band contrast)の画像であり;粒子は、様々な階調レベルで見え、粒界または粒子界面位置を示す暗いコントラスト線によって隔てられている。各画像の底部のバースケールは、100マイクロメートルに相当する。
【0062】
図2Bは、様々な階調レベルで示される相とともに高い倍率での相のコントラストの画像であり;細孔(201)は黒色であり、チタン酸アルミニウム(202)はミディアムグレーであり、アルミナ(203)は濃いグレーであり、長石(204)は薄いグレーである。
【0063】
図2Cは、任意の選択された階調レベルによって、個々の粒子の分離を伴うチタン酸アルミニウム粒子のみを示す。1.5度のc軸の配向ずれが、異なる粒子間の区別の基準として選択された。
【0064】
図2Dは、より大きい領域を示し、任意の選択された階調レベルによって、個々のドメインの分離を伴うチタン酸アルミニウム相のみを表す。15度のc軸の配向ずれが、異なるドメイン間の区別の基準として選択された。
【0065】
画像の底部の黒色のスケールバーは、500マイクロメートルに相当する。
【0066】
図3Aおよび3Bは、焼成セラミックのリチウムを含まない材料Aの研磨された断面の異なる倍率でのSEM画像を示す。
図3Aは、細孔構造(バースケールは、200マイクロメートルである)を示す。
図3Bにおいて、細孔が黒色領域であり、チタン酸アルミニウムがグレーであり、アルミナが濃いグレーであり、長石が薄いグレーであり、微小亀裂が、チタン酸アルミニウム粒子を通って、また長石を通って明らかに伝播する黒色の波線である位相分布が示される。
【0067】
図3Cおよび3Dは、1410Cにおける焼成後の、バッチ中の0.5%の酸化リチウムを有する材料Bを示す。
図3Cは、細孔構造(バースケールは、200マイクロメートルである)を示す。
図3Dは、細孔が黒色であり、チタン酸アルミニウムがミディアムグレーであり、アルミナが濃いグレーであり、長石が、小さいガラスで満たされた粒子の結合部とともに薄いグレーであり、微小亀裂がチタン酸アルミニウム粒子および粒界ガラスフィルムを通って優先的に伝播する黒色の波線である位相分布を示す。
【0068】
リチウムを含む材料における細孔の分布は、リチウムを含まない材料における細孔の分布を非常に類似している(
図AおよびC)。差は、
図3Bおよび3Dの位相分布に見ることができ;リチウムを含まない材料におけるガラスポケットが、リチウム含有材料におけるガラスポケットよりサイズがはるかに大きい。粒界に沿ってリチウム含有材料における微細なガラスポケットの伸張が見られる。リチウムを含まない材料における微小亀裂は非常に大きく、優先なく、長石およびチタン酸アルミニウム粒子を横断する。リチウム含有材料において、統計は、はるかに微細な亀裂を示し、亀裂が、バルク長石粒子ではなく、チタン酸アルミニウム粒子および界面を通って優先的に伝播することも示す。
【0069】
Liを含む完全に焼成された(1410℃、15時間)材料のXRDは、チタン酸アルミニウム、Sr長石、未反応の過剰のアルミナ、および微量のルチル以外に、追加の結晶相を全く示さない。相の割合(phase fraction)はまた、Liを含まないバッチにおける相の割合と類似している。最高温度1400℃で15時間にわたる焼成により、同じ相の組成が得られ、これは、より低い温度における、添加剤を用いた材料の焼成の可能性を実証している。それぞれ、最高温度1410℃で15時間にわたる焼成の後の1%のLiを含有する完全に焼成された材料Cおよび最高温度1410℃で15時間/1410℃/15時間にわたる焼成、最高温度1400℃で15時間にわたる焼成(4C)の後の0.5%のLiを含有する材料BのXRD(本明細書において詳細なリストで提供されない)により、全ての場合に最終的な生成物への完全な転化が達成されたことが確認される。XRDは、主相(main phase)としてのチタン酸アルミニウムおよびストロンチウム長石ならびに典型的なわずかな少量レベルのアルミナおよびチタニアを示す。1400℃のより低い焼成温度でさえ、材料Cは、完全な転化、および少なくとも15℃高い温度で焼成した後にのみリチウムを含まない材料について得られる相の組成を達成する。
【0070】
物理的特性。Li
2Oの添加のない(材料A)、0.5%(材料B)、および1重量%のLi
2Oを含む(材料C)焼成された製品の物理的特性が、表2に列挙される。
【0071】
【表2】
【0072】
多孔度。Li含有バッチから作製された製品は、Liを含まない基準バッチと比較してその多孔度における利点を示す(
図4を参照)。
図4は、それぞれ0%、0.5%、および1%のLiの添加を有する材料A、B、およびCについての比較可能な細孔径分布を示す。挿入図は、Liを含まない材料Aが、リチウムを原料とする材料バッチBおよびCから得られる材料と比較してわずかに増加した(肩部)小さい細孔径含量を有することを示す。全体的な多孔度は非常に類似しているが、中央細孔径は、Li含量の増加とともに増加し、d係数(d−factor)は、Li含量の増加とともに減少する。
図4の差込図(inlet)に示される細孔径分布の詳細は、dが5マイクロメートル未満である微細な多孔度が、1%のLi添加を含むバッチにおいてほぼ完全に抑制されることおよびdが10マイクロメートル未満である多孔度が、Liを含まないバッチにおける多孔度の約半分であることを示す。細孔径分布は、Li含有バッチから作製された材料ではより狭く、これは、より均一な細孔径の場合のより低い圧力低下を示す。
【0073】
熱膨張。0.5%のLiを含有するB材料バッチの熱膨張挙動は、Liを含まない基準A材料と比較して変更されていない。1%のLiを含有するC材料は、熱サイクルの際にわずかに増大したヒステリシスを示す。詳細が、
図5Aに示される。室温から800℃の範囲内のCTEは、Liを含有するバッチでは、4.6×10
−7K
−1を有するLiを含まない基準バッチと比較してより低く、それぞれ3.3および3×10
−7K
−1である。熱サイクルの際の安定性は、バッチにとっての一般的な懸念事項であり、さらなる熱処理の際に再結晶化し得るガラスを形成し得る添加剤の存在下で対処される必要がある。サイクル(cycling)の際の材料の安定性を試験するために、1%のLiを含む材料を広範囲に循環させ、次に、CTEを再度測定する(
図5B)。ヒステリシスは、サイクルの際に減少し、全体的なCTEは、4.7×10
−7K
−1へとわずかに増加し、これは、ガラスポケットが、熱処理の際に部分的に結晶化することを示す。1×10
−7K
−1のCTEの変動は、標準材料の典型的な変動の範囲内である。
【0074】
図5Aおよび5Bは、それぞれ初期のサイクル(5A)および5回の温度サイクル後(5B)の、フラックスを含まない基準材料Aならびに0.5重量%および1重量%のLiを有するバッチから作製された材料BおよびCについての熱膨張曲線を示す。
図5Aは、Liを含まない基準材料A(交互の短い破線および長い破線)ならびにそれぞれ0.5%および1%の酸化リチウム源を有するバッチから作製される材料B(短い破線)および材料C(実線)についての室温から1000℃までの加熱およびその後の室温への冷却の際の熱膨張曲線を示す。より高いCTEを有する上側の線の組が、冷却曲線に相当する。下側の線が、加熱曲線に相当する。
図5Bは、焼成されたまま(実線)および熱サイクル後(斜交平行線の陰影が付けられたグレーの線)の材料Cについての加熱および冷却の際の熱膨張曲線を比較した。より高いCTEを有する上側の線の組が、冷却曲線に相当し、下側の線が、加熱曲線に相当する。
【0075】
弾性率。熱サイクルに応じた弾性率およびそのヒステリシスは、Liを含まない材料と比較して差を示す。それらの差が多孔度のわずかな差によらないことを確実にするために、測定されたデータは、セルの形状および多孔度について標準化されたデータとともに示される。高密度の材料への外挿における2つの標準材料が差を示さないため、この補正が、セルの形状および多孔度の差を有効に補正することを示すために、非常に異なる多孔度を有する別の標準的な材料をグラフに追加する。しかしながら、Li含有材料は、より高い弾性率(E−mod)値およびより大きいヒステリシスを示す。材料における単により高い微小亀裂密度がより大きいヒステリシスをもたらす他の例と比較して、より広い温度のヒステリシスの大きい差が示される。標準材料および0.5%のLiを含有する材料の弾性率(E−mod)の最高値が同じである一方、0.5%のLiを含有する材料のヒステリシスは、温度がより広い。高温におけるヒステリシスの伸張は、完全な微小亀裂の修復に基準材料より高い温度が必要であることを示唆する。これは、例えば、ガラス相との微小亀裂の相互作用、亀裂へのガラス相の侵入、および閉鎖の阻害または減速によって説明され得る。1%のLiの材料は、微小亀裂密度の増加とともに、同じ特徴を示す。
【0076】
図6Aおよび6Bは、熱サイクルの際の弾性率ヒステリシスを示し、ここで、下側の線は、加熱曲線に相当し、上側の線は、冷却曲線に対応する。
図6Aは、リチウムを含まない基準材料A(四角)、異なる多孔度レベルを有する材料AA(菱形)、および1%のLiを有するバッチから作製される材料C(丸)についての熱サイクルの際の弾性率を示す。
図6Bは、リチウムを含まない基準材料A(四角)、異なる多孔度レベルを有する材料AA(菱形)、および1重量%のLiを有するバッチから作製される材料C(丸)についての熱サイクルの際の密度が標準化された弾性率(すなわち、材料の相対密度によって除算した弾性率)を示す。結果は、リチウムを含まない材料についての曲線が、重複し、リチウム含有材料と異なる曲線を有することを示す。
【0077】
材料の強度。微小亀裂の数が増加されたようであるが、チタン酸アルミニウムに限定されるそれらの長さが集まり、Li含有材料がLiを含まない材料と同じ多孔度およびわずかに大きい細孔径を有するという上記の情報に基づいて、曲げ試験によって測定される破壊係数(MOR)の直接の比較が行われ得る。比較は、材料強度がLi含量の増加とともに増加することを示し、Liを含まない標準材料Aの約260psi(1792.44kPa)から、0.5%のLiを含む材料Bでは320psi(2206.08kPa)へと増加し、1%のLiを用いて作製された材料Cでは330psi(2275.02kPa)へと増加する。これは、化学組成の小さい変更に対して、25%を越えるMORの著しい増加である。
【0078】
Li酸化物焼結添加剤についての結論。材料の全ての他の物理的特性が、少量のLiの存在下でわずかに向上されたため、このような非常に低い添加剤レベルにおける強度の向上および基準材料Aより低い焼成温度の示唆は、著しくより高い強度を有するより高い多孔度のより薄い壁のディーゼル粒子フィルタを作製するための経路を提供するため、公知のチタン酸アルミニウム−長石複合体の改良のための重要な利点を提供する。それに加えてまたはその代わりに、酸化リチウムの添加は、焼成サイクルの長さの減少または最高焼成温度の低下のいずれかを可能にする。
実施例2
酸化リンガラス形成剤。酸化リンは、様々な酸化物におけるガラスの形成を促進することが知られているため、1〜5%の酸化リンレベルを有するATタイプのバッチを作製した。酸化リンを、リン酸アルミニウムの形態でバッチに加えた。バッチ組成物が、表3にまとめられている。
【0079】
【表3】
【0080】
1〜4.7%のAlPO
4を含む完全に焼成されたチタン酸アルミナ材料、材料D〜Fは、リンを含まない材料Aと同じ長石、チタン酸アルミニウム、およびアルミナの分布を示すが、ガラスポケットの存在によって材料Aと区別される。高いリン酸塩レベルで、得られた微細構造は、完全に変更される。リンは、混合されたケイ酸塩−リン酸塩長石の形成下で長石に組み込まれる。一部のチタン酸アルミニウム相が、リン含有ガラスに溶解される。コントラストの変化によって材料のSEM画像に見られるような交換反応は、チタン酸アルミニウム粒子および長石粒子の両方の境界で起こった。微小亀裂は、チタン酸アルミニウム粒子界面を優先的に辿り、より低い確率で、チタン酸アルミニウムおよび長石のバルク粒子を横断する。リン酸塩含量が増加するにつれて、微小亀裂サイズ、および未反応のアルミナのレベルの両方が増加する。より高いレベルのリン酸塩を有する試料は、それらの冷却サイクル、ポストアニール(post−annealing)サイクル、またはその両方に応じて、様々なレベルの残留ガラスを示す。低いレベルのリンを含む試料では、低融点のガラスが微細構造にわたって均一に分布し、細孔に浸透し、小さい細孔の焼結および消失を促進する。これにより、より狭い細孔径分布およびより大きい中央細孔径が生じる。
【0081】
図7A〜7Cはそれぞれ、3つのレベルの倍率(上=低倍率、中央=中倍率、下=高倍率)を有し、それぞれ、1%(
図7A)、3%(
図7B)、および5%(
図7C)と増加する量の添加リン酸アルミニウムを有する、バッチD、E、およびFの3つの焼成セラミック試料の研磨された断面として複合されたSEM顕微鏡写真を示す。最も低いレベルのリンの添加(
図7A)が、Pを含まない材料Aと比較して材料微細構造の大きい変更を引き起こさず、薄い粒界ガラスフィルムおよび小さいガラスポケットのみによって優れている一方、
図7Bおよび7C中のより高いリンレベルを有する材料は、ガラスに部分的に溶解された丸みを帯びたチタン酸アルミニウム粒子と、高いレベルのリンを組み込み、冷却の際に再結晶化された液体またはガラス質のマトリックス材料のようにチタン酸アルミニウム粒子を囲む反応された長石とを含むそれらの微細構造の著しい変更を反映している。伸張されたリン相互拡散領域が、粒界および粒子界面において見られ、ここで、リンが、バルク粒子へとよりゆっくりと組み込まれた。低倍率が細孔径分布(左)を視覚化し、より高い倍率(中央および右)が位相分布を視覚化する。
【0082】
示差走査熱量測定(DSC)は、加熱の際の溶融事象および冷却の際の再結晶化を示し、これらは両方ともガラス相の存在を反映している。また、AlPO
4を含有する未焼成製品のDSCによって示されるように、ガラスの存在により、複合体の最終的な溶融が1440℃超から約1380℃へと低下する。ガラス相の溶融は、4.7重量%のAlPO
4の添加の場合1320℃で起こり、DSCを加熱する際にさらなる吸熱事象として見られ;最高焼成温度から室温へのDSCの冷却は、ガラスの結晶化に関連する小さい発熱を示す。結晶化は、より大きいリンレベルの存在下でより速くなる。その溶融の際、ガラスは、粒界を湿潤させ、小さい細孔中に容易に浸透し、ここで、焼結および微細なサイズの多孔度の低下を促進する。
【0083】
図8Aおよび8Bは、選択された、焼成された材料A、D、およびEについての示差走査熱量測定の結果を示す。
図8Aは、加熱曲線を示し、ここで、ガラスの溶融事象が、材料EおよびFの曲線では1200℃を超える発熱として見られ、リンを含まない基準材料Aでは見られない。
図8Bは、材料A、EおよびFの冷却曲線を示し、ここで、ガラス結晶化が、材料EおよびFにおいて、約1100℃の冷却の際の吸熱事象として起こる。Pを含まない材料Aは、冷却の際のこのような吸熱事象を示さない。
図8Aは、溶融し、冷却の際に再結晶化するガラス相の形成の典型的な特性を示す。
【0084】
AlPO
4を含む完全に焼成された(1410℃、15時間)試料のXRD測定は、チタン酸アルミニウム、リン酸アルミナ、Sr長石、未反応の過剰なアルミナ、および微量のルチル以外に、追加の結晶相を全く示さなかった。長石相は、三斜晶系構造から単斜晶系構造へと変更される。ガラスレベルは低く、XRDにおいて目視できない。
【0085】
AlPO
4が添加されない焼成製品Aおよび1〜4.7%のAlPO
4超過添加のリン酸塩を含む材料D、E、Fの物理的特性が、表4において比較される。
【0086】
【表4】
【0087】
AlPO
4を含有するバッチから作製された製品は、中央細孔径がAlPO
4含量の増加とともに増加し、細孔径分布の幅がAlPO
4含量の増加とともに減少することを実証する。細孔径分布の詳細は、7マイクロメートル未満の直径を有する微細な多孔度が、AlPO
4を含むバッチにおいてほぼ完全に消失していることを示す。より大きい中央細孔径およびより狭い細孔径分布は、DPFのより低い圧力低下を促進する。
【0088】
図9Aは、異なるレベルのリン源の添加を有するバッチから作製された焼成された試料A、D、E、およびFの細孔径分布特性を示す。中央細孔径は、リンを含まない材料Aと比較して、リンレベルの増加とともに著しく増加した(最大値がより大きいサイズに変化した)。
図9Bは、リンガラス相の存在下におけるより有効な焼結によって小さい細孔を消失したP含有材料D、E、およびFと比較して、材料A(対照、0%のリン酸アルミニウム)におけるより高い小さい細孔径の含量を保っている肩部領域を示す
図9Aの小さい細孔の領域(矢印)の拡大図を示す。
【0089】
図10は、異なるレベルのリン酸塩の添加を有する表4のバッチA、D、E、およびFから得られる試料の熱膨張曲線を示す。1%のAlPO
4を含有するバッチから作製された試料の熱膨張挙動は、AlPO
4を含まない基準バッチと比較して変化していない。より高いAlPO
4レベルを有する試料は、室温から800℃の間でより小さい全体的な膨張を有するが、より大きいヒステリシスも有する。さらに、それらは、温度による混合されたリンケイ酸塩−長石相の相変態による曲線の不連続性を反映している。理論によって制約されないが、より大きい微小亀裂は、より大きいヒステリシスに関与する可能性が高い。
【0090】
測定されたままのMORが、特性表
4に示される。しかしながら、多孔度およびd
50の変化により、多孔度が標準化されたMORは、より深い洞察を提供し、1%のAlPO
4の添加の場合の多孔度が標準化された強度の23%の増加を示す一方、より高いレベルのリン酸塩は、長石およびチタン酸アルミニウム相、および大量のガラスの著しい変更により、この利益をなくす。多孔度および細孔径が標準化されたMOR(材料密度および細孔径について標準化された、測定されたMOR)は、強度の倍増を示す。
【0091】
約1重量%などの少量のリン酸アルミナが、ATタイプの材料の強度を34%も増加させることができ、CTEにわずかな影響を与え得ることが結論付けられ得る。少量のリン含有ガラスの形成は、全体的な多孔度のほんのわずかな低下を生じさせ、小さいサイズの細孔をなくし、細孔径分布の幅を減少させる。変更された細孔構造は、より低い圧力低下を生じることが予測され得る。粒界および粒子界面に沿ったリン含有ガラスの均一な分布は、ガラスフィルムに沿った亀裂の伝播を促進し、ガラス内の亀裂偏向、界面剥離、および亀裂の増大を促進し、それによって、より強い材料が得られる(より高いMORによって示されるように)。しかしながら、ガラスの量は少なくする必要がある。高いレベルのリン酸アルミニウムの添加は、多い量のガラス相および混合された長石を形成させ、好ましい亀裂の伝播の経路としての薄い粒界ガラス層を提供せず、より低い材料強度をもたらす。
実施例3
完全に焼成されたハニカムをリン酸中に浸漬することによるガラスの形成。A、G、およびHの完全に焼成された部分を、リン酸(10重量%、水溶液)中に浸漬し、次に、アニールした(1400℃)。これらのバッチ組成物が、表5に列挙される。
【0092】
【表5】
【0093】
H
3PO
4に浸漬され、焼成された部分は、元の製品と比較して、微細な細孔の消失および細孔径分布の狭小化による多孔度の減少を示す。浸漬はまた、例えば、直径が8.5%および長さが5.3%の部分の収縮をもたらす。多孔度の著しい減少が、高い多孔度の部分GおよびHについて観察された一方、より低い多孔度のA部分は、その多孔度をほぼ保っていた。MORは、G、H、およびAについてそれぞれ51%、97%、および29%だけ、全ての場合に増加した。多孔度についての標準化により、多孔度が標準化されたMORの、それぞれ7%、35%、および28%の増加が得られた。
【0094】
表6は、焼成されたままの製品A、G、およびHならびにリン酸中に浸漬され(「−d」)、次にアニールされた同じ焼成された製品A−d、G−d、およびH−dの特性をまとめている。
【0095】
【表6】
【0096】
図11A〜11Cはそれぞれ、浸漬する前の焼成された試料G(11A)、H(11B)、およびA(11C)(菱形)および焼成された試料をH
3PO
4中に浸漬し、次にアニールした後の試料(四角)(「−d」の添え字)についての細孔径分布を示す。
【0097】
図11Aは、焼成されたままの材料Gおよび焼成された材料Gを10%のH
3PO
4中に浸漬し、それを1400℃でアニールすることによって得られた材料G−dについての細孔径分布を示す。浸漬およびアニールの後のこの高い多孔度の材料の細孔径分布ははるかに狭く、水銀ポロシメトリー測定において10マイクロメートル未満の直径を有する全ての細孔が、完全に消失しており、中央細孔径が増加していた。
【0098】
図11Bは、焼成されたままの材料Hおよび焼成された材料Gを10%のH
3PO
4中に浸漬し、それを1400℃でアニールすることによって得られた材料H−dについての細孔径分布を示す。浸漬およびアニールの後のこの高い多孔度の材料の細孔径分布ははるかに狭く、水銀ポロシメトリー測定において10マイクロメートル未満の直径を有する全ての細孔が、完全に消失しており、中央細孔径が増加していた。
【0099】
図11Cは、焼成されたままの材料Aおよび焼成された材料Gを10%のH
3PO
4中に浸漬し、それを1400℃でアニールすることによって得られた材料A−dについての細孔径分布を示す。細孔径分布は、浸漬およびアニールの後、まだ狭いが、効果は、材料GおよびHよりこのより低い多孔度の材料ではあまり目立たない。
【0100】
A−d、G−d、およびH−d、すなわち、焼成された試料A、G、およびHを10%のリン酸中に浸漬し、それらを1400℃でアニールした後のXRDの結果(図示せず)は、チタン酸アルミニウムおよび長石を主相としてまだ示すが、三斜晶系から単斜晶系への長石相の対称性の変化を示す。
【0101】
【表7】
【0102】
図12A〜12Fは、焼成されたままの部分およびリン酸中に浸漬され、次にアニールした後のこれらの同じ部分の研磨された断面(
図12A〜12C)および表面(
図12D〜12F)のSEM画像を示す。
図12Aは、焼成されたままの試料G(非浸漬;左)およびG−d(浸漬;右)に該当する。
図12Bは、焼成されたままの試料H(非浸漬;左)およびH−d(浸漬;右)に該当する。
図12Cは、焼成されたままの試料A(非浸漬;左)およびA−d(浸漬;右)に該当する。
図12Dは、焼成されたままの試料G(非浸漬;左)およびG−d(浸漬;右)の表面に該当する。
図12Eは、焼成されたままの試料H(非浸漬;左)およびH−d(浸漬;右)の表面に該当する。
図12Fは、焼成されたままの試料A(非浸漬;左)およびA−d(浸漬;右)の表面に該当する。全てのリン酸に浸漬された試料は、ポストアニールの際に粒界および粒子界面に沿ってアニールの際に浸透し、ガラスの量を拡大しながら長石およびチタン酸アルミニウム粒子を溶解させるリンガラスから得られる出発材料と比較して、長石相のいくらかの変更を示す。ポストアニールされたガラス相の部分は、ポストアニールの後の冷却の際に結晶化する。浸漬およびアニールの後の微小亀裂も変更され;微小亀裂はAT粒界を辿り、長石/ガラスの交差部分において偏向される。
【0103】
平均CTEが、浸漬手順によってそれほど変化されない一方、浸漬後に増加された微小亀裂密度は、浸漬されていない部分より、浸漬され、後焼成された部品について、加熱−冷却サイクルの際のはるかに大きいヒステリシスをもたらす。
【0104】
図13A、13B、および13Cは、それぞれ試料A、GおよびHの元の部分、リン酸に浸漬され、後焼成された部分のCTEを示す。リン酸浸漬後の微小亀裂密度の増加はまた、弾性率(E−mod)の増大した温度ヒステリシスにおいて見られる。
【0105】
図14A、14B、および14Cはそれぞれ、試料A、H、およびGについての焼成された部分およびリン酸に浸漬された、焼成された部分の加熱および冷却の際の弾性率のヒステリシスを示す。
【0106】
リン酸の10%の溶液中へのH部分の浸漬と、その後の800℃または1000℃での後焼成により、多孔度の変化は得られず、MORの増加が得られた。1400℃までの焼成の際、溶融事象が起こり、収縮および多孔度のかなりの低下がそれに伴っていた。表8は、多孔度の変化を列挙している。
【0107】
【表8】
【0108】
リン酸シリカガラスが、浸漬後のポストアニールの際に形成され、長石と反応し、チタン酸アルミニウム粒子の周縁部でアルミナおよびチタニアを溶解させる。表9に列挙される3つのガラス組成物を、マイクロプローブ分析によって同定した。3つのガラス組成物は、ストロンチウム、カルシウム、リン、アルミナとともに高いレベルのシリカを含有し、チタンを溶解させ、これにより、変更された長石を、CaAl
2PSiO
8、SrAl
2PSiO
8、またはNaAl
2PSiO
8の組成と一致させる。ガラスは、焼結を促進し、小さい細孔をなくし、細孔径分布を狭くする。再び、ガラスがより高い強度を生じるが;浸漬プロセスによって得られるMORの増加は、バッチへのリン酸アルミニウムの添加によって得られるものより小さい。
【0109】
【表9】
【0110】
実施例4
0、1、2、および5%のチタン−ストロンチウム−ランタンシリケートガラスを得るために、追加のチタニア、ストロンチア、酸化ランタン、およびシリカと残留アルミナとともにチタン酸アルミニウムおよびストロンチウム長石を含有するように材料I、J、K、およびLをバッチした。さらなるバッチMを、過剰なアルミナおよび5%の同じガラスを用いずに作製した。
【0111】
【表10】
【0112】
【表11】
【0113】
ガラスの添加は、多孔度および中央細孔径の低下を生じない一方、試料の強度に影響を与える。測定されたままのMORおよび標準化されたMORは、試料における増加されたガラスレベルとともに著しい増加を示す。「ゼロ」ガラスレベルの試料は、原料中の天然の不純物によりバッチするのが難しく、わずかに変更された相混合物を生じるため、ゼロガラス基準材料は、この傾向にしたがわない。
【0114】
図15は、0、1、2、および5重量%のガラス含量を有するチタン酸アルミニウム−ストロンチウム長石複合体試料I、J、K、およびLについての細孔径分布の結果を示す。ガラスレベルの著しい変化にもかかわらず、細孔径分布の小さい変化が生じるに過ぎない。ガラス相の存在下における強化された焼結による中央細孔径の減少は観察されなかった。5%のガラスの場合、より低いかまたはゼロのガラスレベルを有する材料と比較して中央細孔径の小さい増加さえ示され得る。さらに、5%のガラス含有材料は、他の材料と比較して小さいサイズの細孔の割合の著しい減少を示し、したがって、より狭い細孔径分布によるより小さい圧力低下が保証される。
【0115】
図16Aおよび16Bは、過剰なアルミナ、0、1、3、または5%のガラスを含む選択されたチタン酸アルミニウム−ストロンチウム長石複合体、および過剰なアルミナ相および5%のガラスを含まない複合体の測定されたままのMOR(16A)および多孔度が標準化されたMOR(16B)の棒グラフを示す。ガラス含量がゼロの材料をバッチするのは難しいことがある。少ない不純物が存在することがあり、規定されていないガラスを含む、小さいレベルの望ましくない第2の相の形成を引き起こすことがある。したがって、ゼロのガラスレベルを有する材料は、比較から除外されるであろう。ゼロのガラスレベルを有する材料は、他の材料と全く同じ位相分布を有さない。1〜5%のガラス含量を有する他の材料の場合、ガラス含量とともにMORの連続的な増加が観察され得る。MORの増加は強化機構に起因してもよく、この強化機構は、ガラスフィルムによって導入され、4点曲げMOR試験の際のサブクリティカル亀裂成長(subcritical crack growth)の減少に寄与し、それによって、材料の強度が向上される。材料の画像化により、亀裂が、ガラス粒界フィルムと強く相互作用し、優先的な亀裂の伝播の経路としてガラスフィルムを選択し、粒子遮断部(grain interception)において3点で分岐ガラスと強く相互作用することが示された。
実施例5
ATにおけるガラスの形成のための酸化ホウ素の添加。表12は、6重量%のMgO、バッチNを有するコージエライト−ムライト−チタン酸アルミニウム複合体にガラス形成剤として加えられた低いレベル(例えば、0.5〜2重量%)の酸化ホウ素を列挙している。バッチOは、0.5%、バッチPは1%を含有し、バッチQは2%の酸化ホウ素を有する。
【0116】
【表12】
【0117】
試料のXRD(図示せず)は、主相として(Mg、Al、Ti)
3O
5およびムライトを示し;コージエライトは、副相として存在する。主相は、ホウ素の添加によって変化しない一方、コージエライト相の割合は、ガラス相へのシリカの組み込みにより、ホウ素の添加によって減少する。
【0118】
表13は、中間の焼成特性および6%のMgOおよび0〜2%の酸化ホウ素の添加を有するCMATの完全に焼成された試料の特性をまとめている。
【0119】
【表13】
【0120】
表13に列挙される得られた特性は、前の実施例と同様の結果を有していた。0.5%を超える酸化ホウ素の添加により、焼成された材料の全体的な多孔度が減少した一方、中央細孔径は増加し、d係数は、ガラス相の存在下における促進された焼結および小さい多孔度の低下の結果として減少した。材料強度は、0.5%を超える酸化ホウ素添加剤により明らかに大幅に増加する。0.5%の最も低いレベルの酸化ホウ素の場合、添加剤レベルは、均一な分布および境界の良好な湿潤を有する実質的なガラスレベルを生じるには低過ぎた。さらに、中間の焼成強度は、酸化ホウ素の存在下で著しく向上した。酸化ホウ素を含まない(または0.5%以下の)バッチが、焼成強度を容易に測定することができないほど低い強度を有する一方、1および2%を有する試料はそれぞれ、64psi(441.22kPa)および75psi(517.05kPa)の許容可能な焼成強度を示し、または焼成前の湿潤老化後に158psi(1089.25kPa)および95psi(654.93kPa)を示す。
【0121】
図17は、6%のMgOを有し、バッチへの0%(試料N;対照)、0.5%(試料O)、1(試料P)、または2重量%(試料Q)の酸化ホウ素の添加を有するアルミナ−コージエライト−ムライト複合体の細孔径分布を示す。
図17は、全体的な細孔径分布を示し、
図17の挿入図は、特に試料N(0%の酸化ホウ素の添加;対照)についての、小さいサイズの領域における増加した肩部を示す。ガラスを含まない材料と比較して、アルミノ−チタニオ−ランタノ−シリケート(alumino−titanio−lanthano−silicate)ガラスの添加が、中央細孔径をより大きい値へと移行させ、同時に、小さい細孔を抑制するのを助けることが分かる。中央細孔径の増加が、3および5%のガラスでわずかに見られる一方、小さい細孔の喪失(ガラスを含まないバッチについての挿入図の肩部)が、1%のガラスの添加では既に効率的に実現される。
特性評価の技術
微細構造の特性評価。標準的な走査電子顕微鏡法(SEM)の特性評価を、ハニカム壁表面および研磨されたハニカム断面(ハニカムチャネルに垂直に切断された)について行った。研磨された断面の観察では、焼成された製品を、エポキシに浸透し、薄く切り、研磨した。顕微鏡的レベルで存在する多孔度および相の空間分布を、研磨された試料断面について視覚化した。材料多孔度PSEM(%)、平均細孔径d
平均、SEMを、画像分析技術と組み合わせたSEMによって評価した。
【0122】
配向マッピング(SEM/EBSD)。SEMにおける電子後方散乱回折(EBSD)を、ハニカム形状に対して存在する相の粒度、相対的な配向、およびテクスチャを導き出すために、研磨された試料断面の配向マッピングに使用した。試料をエポキシに埋め込み、注意深く研磨し、薄い(10Å(1nm))イリジウムの層で被覆した。全てのEBSD分析を、Oxford/HKL EBSDシステムを備えたHitachi SU70 SEMにおいて完了した。23×10
−9アンペアのビーム電流、20kVの加速電位、全体的な配向情報について2マイクロメートルおよび粒度測定について0.2マイクロメートルの間隔(interstep)で、約1900マイクロメートル×700マイクロメートルの領域について、データ収集を完了した。完全に焼成されたAT材料の同定に使用される相は、チタン酸アルミニウム、コランダム、ルチル、および長石(Ca、Srアルミニウムシリケート)を含んでいた。5°のデータクラスタリングを用いたHKL Mamboソフトウェアを用いて極点図を生成した。
【0123】
ポロシメトリー。Autopore IV 9500ポロシメータを用いた水銀圧入ポロシメトリーによって、細孔径分布を調べた。この方法は、非湿潤液体(non−wetting liquid)および円筒状細孔に関する毛管法(capillary law)を使用する。細孔径分布は、通常、Washburn式D=−(1/P)4y cos θ(式中、Dが細孔径であり、Pが加えられる圧力であり、yが表面張力であり、θが接触角である)で表される。水銀の容積は、圧力に正比例する。Micrometricsのソフトウェアのデータ整理は、微分および対数微分を用いて、計算された対数直径の関数として、累積比圧入容積の一次導関数を計算する。
【0124】
熱膨張。40K/分の速度での室温から1200℃への加熱およびその後の室温への冷却の際の、寸法0.25インチ(6.4mm)×0.25インチ(6.4mm)×2インチ(50.8mm)を有する棒状の試料について熱膨張を測定した。特性表13に報告されるデータでは、試験棒材の長軸を、ハニカムチャネルの方向に配向して、ハニカム部品の軸方向における熱膨張を得た。
【0125】
様々な温度範囲についての平均熱膨張係数、CTE
20〜800(K−1)(室温から800℃までの温度範囲における平均熱膨張係数としてL(800℃)−L(20℃)/780として定義される室温から800℃までの平均熱膨張係数)、CTE
20〜1000(K−1)(室温から1000℃までの温度範囲における平均熱膨張係数としてL(1000℃)−L(20℃)/980として定義される室温から1000℃までの平均熱膨張係数)、CTE
500〜900(K−1)(500℃〜800℃の温度範囲における平均熱膨張係数としてL(900℃)−L(500℃)/400として定義される500〜900℃の平均熱膨張係数)を特性表13に記録した。CTE
500〜900は、自動車における排ガスの後処理のためのハニカム部品の用途に特に重要であり、ここで、ハニカム部品は、激しい急な温度変化に曝され、500〜900℃の温度範囲は、よく見られる動作温度範囲に一致するであろう。
【0126】
機械的強度。セラミックの強度は、3点または4点曲げを用いて試験され得る。破壊の前の最大応力は、破壊係数またはMORと呼ばれることが多い。強度の値(4点曲げ、MOR)を、2インチ(50.8mm)の下スパンおよび0.75インチ(19mm)の上スパンを用いた4点曲げを用いて測定した。4点曲げ試験のための検体形状は、2.5インチ(63.5mm)の長さ、0.5インチ(12.7mm)の幅および0.25インチ(6.4mm)の厚さであった。使用される力測定システムは、最大の力の読み出し装置(read−out)および校正されたロードセル(calibrated load cell)を備えていた。MOR値を、曲げ強度式を用いて計算した。
【0127】
【数1】
【0128】
しかしながら、この式は、検体を通るセルチャネルを考慮に入れず、材料の真の強度ではない。試験される全ての検体は、長さの方向にチャネルを備えた四角形セル(ハニカム)を有していた。壁の強度(σ
壁)と呼ばれることが多い実際の材料強度は、セル構造を考慮に入れて測定される必要がある。
【0129】
弾性率の測定。寸法5インチ(127mm)×1インチ(25.4mm)×0.5インチ(12.7mm)を有する棒状の試料およびハニカムチャネルの方向に配向された長軸を用いて、曲げ共振周波数(flexural resonance frequency)によって弾性率を測定した。試料を1200℃まで加熱し、室温に冷却した。各温度について、弾性率を、共振周波数から直接導き出し、ASTM C 1198−01を参照して、試料形状および重量について標準化した。
【0130】
耐歪み性。耐歪み性MOR/弾性率(E−mod)は、材料の強度およびそのヤング率から導き出され得る。この耐歪み性は、材料が歪みに対処する能力を表す。耐歪み性が高いほど、材料が破損しにくくなる。耐歪み性は、ハニカム形状とは関係なく、異なるセル密度または壁厚を有する部分について直接比較され得る。
【0131】
熱衝撃。自動車の排ガスの後処理として使用するためのハニカムの耐熱衝撃性は、その部分が急速な加熱、冷却の際、および再生の際の過酷な熱サイクルを受けるため、重要である。材料の耐熱衝撃性は、性能指数によって予測されることが多い。これらのうち最も一般的なものはRパラメータであり、これは、単に、材料の強度を超える応力をもたらし得る温度差である。第2の熱衝撃性能指数はR
stパラメータであり、これは、材料の予め亀裂が形成された状態を考慮し、強度の代わりに材料の靱性(K)を考慮に入れる以外はRパラメータと同様である。ハニカムの耐熱衝撃性は、その材料の高い強度、高い靱性、低い弾性率、および低い熱膨張とともに向上することが予測される。
【0132】
【数2】
【0133】
上記の開示の任意の態様、特徴、または実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載される任意の1つ以上の他の態様、特徴、または実施形態と任意に組み合わせてまたは置き換えて使用され得る。
【0134】
本開示は、様々な特定の実施形態および技術を参照して記載されている。しかしながら、本開示の範囲内に留まりながら、多くの変形および変更が可能である。