(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148690
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】中鎖脂肪酸のトリグリセリドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C11C 3/02 20060101AFI20170607BHJP
C11B 3/00 20060101ALI20170607BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20170607BHJP
C07C 69/30 20060101ALI20170607BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20170607BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/664 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20170607BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20170607BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
C11C3/02
C11B3/00
C07C67/08
C07C69/30
A61K47/14
A61K47/10
A61K31/337
A61K31/7068
A61K31/664
A61K31/706
A61K31/513
A61K31/23
!C07B61/00 300
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-559042(P2014-559042)
(86)(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公表番号】特表2015-510010(P2015-510010A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】CA2013000174
(87)【国際公開番号】WO2013126990
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/605,489
(32)【優先日】2012年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516212946
【氏名又は名称】プロメティック・ファーマ・エスエムティ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PROMETIC PHARMA SMT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ブーロ・ザシャリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−シモン・デュセップ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ペニー
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−536908(JP,A)
【文献】
特表2006−516987(JP,A)
【文献】
特表2004−525957(JP,A)
【文献】
特開昭51−045105(JP,A)
【文献】
特開2003−135001(JP,A)
【文献】
特開昭62−056452(JP,A)
【文献】
特開2008−174483(JP,A)
【文献】
特開平04−145046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
C07B 61/00
C07C 69/30,67/08
A61K 31/00−31/327
A61K 9/00− 9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
A61K 47/00−47/48
A61K 31/33−33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中鎖脂肪酸のトリグリセリドの製造方法であって、
a)グリセロールを3モル当量または過剰の前記中鎖脂肪酸と混合するステップであって、前記中鎖脂肪酸の各々が6〜12個の炭素の鎖を含有する、ステップと、
b)ステップ(a)の前記混合物を二価または三価の金属陽イオン触媒と反応させるステップと、
c)160℃〜180℃の温度で、1mmHg〜20mmHgの部分真空下で、前記トリグリセリドを形成するのに十分な一定期間にわたって加熱するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記グリセロールが、過剰の前記脂肪酸と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)の前記加熱温度が170℃〜175℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
5mmHg〜15mmHgの前記部分真空である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱ステップ(c)が8時間〜24時間の期間にわたる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、酸化タングステン、塩化タングステン、タングステンカルボニル、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化モリブデン、塩化モリブデン、酸化クロム、または塩化クロムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、酸化カルシウム、酸化タングステン、または酸化亜鉛である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記中鎖脂肪酸の各々が、6個の炭素の鎖を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記中鎖脂肪酸の各々が、8個の炭素の鎖を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記中鎖脂肪酸の各々が、10個の炭素の鎖を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記中鎖脂肪酸の各々が、12個の炭素の鎖を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記中鎖脂肪酸が、8個の炭素の鎖を有する脂肪酸および10個の炭素の鎖を有する脂肪酸を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記中鎖脂肪酸の各々が、8〜12個の炭素の鎖を含有し、
d)前記部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)アルコール溶液を形成するように熱アルコールを添加するステップであって、前記熱アルコールが60℃からアルコール沸点温度までの温度を有するステップと、
g)前記アルコール溶液を濾過し、濾液を得るステップと、
h)前記濾液を0℃〜20℃の間の温度で、前記形成されたトリグリセリドを結晶化するために十分な一定期間にわたって維持するステップとをさらに含む、請求項1〜7および9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記熱アルコールが、80℃の温度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(h)の前に冷アルコールを濾液に添加するステップを含み、前記冷アルコールが、0℃〜5℃の温度を有する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルコールが、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記アルコールが、エタノールである、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ステップ(g)で、前記温度が少なくとも1時間にわたって維持される、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記中鎖脂肪酸の各々が、6〜7個の炭素の鎖を含有し、
d)前記部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)有機溶液を形成するように、前記トリグリセリドを溶解させるための有機溶媒を添加するステップと、
g)水酸化ナトリウムの水溶液を前記有機溶液に添加するステップと、
h)前記有機溶液を回収し、前記水溶液を廃棄するステップと、
i)前記有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
j)前記有機溶液をシリカゲルに通して濾過するステップと、
k)前記有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
l)前記有機溶媒を蒸発させるステップとをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、またはエーテルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥剤が、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、75%〜95%の収率でかつ少なくとも99%または99.5%の純度でトリグリセリドを生成し、前記方法は、
a)グリセロールを少なくとも3モル当量の前記中鎖脂肪酸と混合するステップであって、前記中鎖脂肪酸の各々が8〜12個の炭素の鎖を含有する、ステップと、
b)ステップ(a)の前記混合物を、酸化カルシウム、酸化タングステン、または酸化亜鉛と反応させるステップと、
c)前記トリグリセリドが形成されるように、170℃〜175℃の温度で、5mmHg〜15mmHgの部分真空下で、22時間の期間にわたって加熱するステップと、
d)前記部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)アルコール溶液を形成するように、80℃の温度を有する熱アルコールを添加するステップと、
g)前記アルコール溶液を濾過し、濾液を得るステップと、
h)前記濾液を0℃〜5℃の間の温度で、2時間の期間にわたって維持するステップとを含む、請求項1〜7および9〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、75%〜95%の収率でかつ少なくとも99%または99.5%の純度でトリグリセリドを生成し、前記方法が、
a)グリセロールを少なくとも3モル当量の前記中鎖脂肪酸と混合するステップであって、前記中鎖脂肪酸の各々が6〜7個の炭素の鎖を含有する、ステップと、
b)ステップ(a)の前記混合物を、酸化カルシウム、酸化タングステン、または酸化亜鉛と反応させるステップと、
c)前記トリグリセリドが形成されるように、170℃〜175℃の温度で、5mmHg〜15mmHgの部分真空下で、22時間の期間にわたって加熱するステップと、
d)前記部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)有機溶液を形成するように、前記トリグリセリドを溶解させるための有機溶媒を添加するステップと、
g)1〜2% NaOHの水溶液を添加するステップと、
h)前記有機溶液を回収し、前記水溶液を廃棄するステップと、
i)前記有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
j)前記有機溶液をシリカゲルに通して濾過するステップと、
k)前記有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
l)前記有機溶媒を蒸発させるステップとを含む、請求項1〜8および19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
中鎖モノカルボン酸の脂肪酸のグリセロールエステル(トリグリセリド)の製造方法が開示され、それは触媒の存在下で、部分真空下での、前駆体の遊離脂肪酸およびグリセロールの反応からなる。本方法は、溶媒を用いずにトリグリセリドの形成を可能にする。本プロセスは、好ましくは、タングステン、モリブデン、カルシウム、亜鉛、クロム、またはマグネシウムの酸化物または塩化物等の金属触媒を使用する。本発明の方法は、最終トリグリセリドの高収率および高純度(99.5%超)での製造を可能にする。本方法は、中鎖脂肪酸のトリグリセリドの大規模な製造のために特に好都合である。
【背景技術】
【0002】
中鎖トリグリセリド(複数可)またはMCT(複数可)として知られる、中鎖脂肪酸のトリグリセリドは、グリセロールを、C8(オクタン酸またはカプリル酸)またはC10(デカン酸またはカプリン酸)の炭素鎖長の脂肪酸でエステル化することによって合成することができる。MCTは、通常、C8およびC10脂肪酸のグリセロールエステルと、C6(ヘキサン酸またはカプロン酸)およびC12(ドデカン酸またはラウリン酸)の少量(各々の1%以下)のグリセロールエステルとの混合物として市販されている。
【0003】
MCTおよびそれらの構成物である中鎖脂肪酸は、食品および製薬産業で使用される、非毒性材料である。例えば、Traul K.A.et al.(Food and Chemical Toxicology 38:79−98,2000)は、MCTが、ますます多くの食品および栄養用途において利用されてきていると述べている。また、Roach,R.R.(Cereal Chem.73(2):197−98,1996)によると、トリカプリン(C10のトリグリセリド)が、通常トリカプリリン(C8のトリグリセリド)との混合物において、プラスチック、滑沢剤、水処理のための消泡剤および帯電防止剤、ならびにベーカリー製品およびキャンディのための離型剤として使用されることが報告された。加えて、MCTはまた、種々のヒトおよび獣医科用医薬製剤において、ならびに化粧品において、主に乳化剤として使用される。米国特許第7,745,488号は、造血の誘導因子としての中鎖脂肪酸または金属塩またはトリグリセリドまたはMCTの使用を記載する。MTCの安全性を支持するいくつかの毒物学研究が存在する。例えば、最大1g/kgのMCTのヒトの食物としての消費の安全性が、数件の臨床治験において確認されてきた。実際、連邦規則集(Code of Federal Regulations)(CFR)のパート170によれば、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)(FDA)は、脂肪酸のトリグリセリドを、食物成分としての使用に対して、GRAS(一般に安全と認められる(ステータスとして承認してきた。また、化粧品におけるトリカプリンまたはトリカプリリン等のトリグリセリドの使用に関する文献概説は、これらの化合物の安全性を支持した(International Journal of Toxicology 2001,(20),61−94)。同様に、化粧品成分審査委員会(Cosmetic Ingredient Review)(CIR)エキスパートパネルは、トリカプリンおよびトリカプリリンが化粧品における現在の使用法および濃度に関して安全であると結論付けた(Elder,R.L.et al.J.Environ.Pathol.Toxicol.4:105−120,1980)。米国特許第4,602,040号は、薬学的賦形剤としてのMCTの別の適用を記載している。より最近では、MCTは、嗜好性および安定性を向上するように(Pharmaceutical Development and Technology,2003,Vol.8,(1),111−115)、または薬物分布/溶解度プロフィールを改善するように、既存の薬物を製剤化するために使用された。実際、難水溶性(薬物の製剤のためのトリグリセリドの使用が、ナノ粒子、ミセル、およびエマルションを含む、異なるアプローチによって調査されてきた。例えば少し水溶性のある(薬物アネトールトリチオンの経口バイオアベイラビリティは、マイクロエマルション未満(sub−microemulsion)のMCT製剤の使用によって向上する(Si−Fei,H et al.,International Journal of Pharmaceutics 2009,379(1),18−24)。また、難水溶性(poorly water soluble)の癌薬物パクリタキセルの抗腫瘍効能および吸収は、ビヒクルとしてのMCTの使用によって改善されてきた(Hong,J.W.et al.Mol.Cancer Ther.2007,6(12)3239−47、米国特許出願第2006/0104999号)。
【0004】
当該技術分野で典型的に知られているが、MCTは、酸の存在下かつ高温(140〜260℃)での、または70〜90℃でのリパーゼ等の酵素の使用による、グリセロールの中鎖脂肪酸との反応によって、得られる。これらの既知の技法によって得られる低純度のトリグリセリドは、脱色およびクロマトグラフィー精製/蒸留を必要とし、このため大規模な合成を困難にしている。一般に、これらの既知の技法によって得られる収率および純度は、不完全なエステル化ならびに後処理および精製中の生成物の損失に起因して、75%を超えることはない。
【0005】
MCTの合成の収率を改善する必要性が存在する。大規模な製造を考慮してその製造プロセスを単純化する必要性もまた存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明のある態様は、中鎖脂肪酸のトリグリセリドの製造方法に関し、
a)グリセロールを3モル当量または過剰の該中鎖脂肪酸と混合するステップであって、その中鎖脂肪酸の各々が6〜12個の炭素の鎖を含有する、ステップと、
b)ステップ(a)の該混合物を二価または三価の金属陽イオン触媒と反応させるステップと、
c)160℃以上の温度で、部分真空下で、該トリグリセリドを形成するのに十分な一定期間にわたって加熱するステップとを含む。該温度は、好ましくは約160℃〜約180℃、および好ましくは約170℃〜約175℃の、およびより好ましくは約175℃の温度である。該一定期間は、好ましくは8〜24時間、およびより好ましくは約22時間である。
【0007】
グリセロールは、中鎖脂肪酸に結合するための3つの反応部位を有するため、中鎖脂肪酸の化学量論的当量は、3モル当量、または1個のグリセロールの分子に対して3個の中鎖脂肪酸の分子を意味する。過剰の中鎖脂肪酸は、1個のグリセロールの分子に対して3個を超える中鎖脂肪酸の分子、または3モル当量を超えることを意味する。好ましい実施形態において、グリセロールは、3当量を超える中鎖脂肪酸と混合される。別の好ましい実施形態において、グリセロールは、少なくとも4モル当量の中鎖脂肪酸と混合される。
【0008】
好ましい実施形態において、部分真空は、約1mmHg〜約20mmHg、および好ましくは約5mmHg〜約15mmHg、およびより好ましくは約10mmHgの真空である。
【0009】
好ましい実施形態において、金属塩触媒は、酸化タングステン、塩化タングステン、タングステンカルボニル、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化モリブデン、塩化モリブデン、酸化クロム、または塩化クロムである。好ましい触媒には、酸化タングステン、塩化タングステン、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化モリブデン、塩化モリブデン、酸化クロム、および塩化クロムが含まれる。最も好ましい触媒は、酸化カルシウムである。別の最も好ましい触媒は、酸化タングステンである。さらに最も好ましい触媒は、酸化亜鉛である。触媒の量は、好ましくは約0.5%〜約2.5%(w/w)、より好ましくは約1%〜約2%(w/w)である。
【0010】
好ましい実施形態において、中鎖脂肪酸の各々は、6個の炭素の鎖、8個の炭素の鎖、10個の炭素の鎖、または12個の炭素の鎖のいずれかを含有する。
【0011】
好ましい実施形態において、中鎖脂肪酸は、8個の炭素の鎖を有する脂肪酸および10個の炭素の鎖を有する脂肪酸の混合物を含む。
【0012】
中鎖脂肪酸が8〜12個の炭素の鎖を含有する場合の実施形態において、本方法はさらに、回収ステップを含み、それは、
d)部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)アルコール溶液を形成するように熱アルコールを添加するステップであって、その熱アルコールが約60℃からアルコール沸点温度まで様々な温度、好ましくは約80℃の温度を有する、ステップと、
g)アルコール溶液を濾過し、濾液を得るステップと、
h)濾液を約0℃〜約20℃の間の温度、好ましくは約0℃〜約5℃で、形成されたトリグリセリドを結晶化するために十分な一定期間にわたって、好ましくは少なくとも1時間の期間にわたって、およびより好ましくは約2時間の期間にわたって維持するステップとを含む。
【0013】
部分真空から除くとは、溶液を標準圧または周囲の大気圧に戻すことを意味することが考慮される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、熱アルコールは、エタノールまたはイソプロパノールである。別の好ましい実施形態において、熱アルコールは、エタノールであり、その温度は、約80℃の温度である。熱アルコールの体積は、好ましくは、形成されているトリグリセリドを溶解させるのに必要である体積である。
【0015】
冷却および結晶化前にアルコール溶液を濾過するステップは、存在し得る固体不純物の除去を可能にする。
【0016】
好ましい実施形態において、プロセスはさらに、冷温で維持してその間に結晶化が起こる前に、冷アルコールを濾液に添加する追加のステップを含む。冷アルコールは、好ましくは約0℃〜約5℃、およびより好ましくは約0℃の温度を有する。冷アルコールの添加は、トリグリセリドの冷却およびその結晶化に寄与する。
【0017】
好ましい実施形態において、冷アルコールは、熱アルコールと同じ種類のアルコールである。冷アルコールの体積は、好ましくは、トリグリセリドを冷却するのに有用である体積である。
【0018】
6〜7個の炭素の中鎖脂肪酸は、揮発性脂肪酸であり、したがって回収ステップは、この特性に適合させる必要がある。中鎖脂肪酸が6〜7個の炭素の鎖を含有する場合の実施形態において、本方法はさらに、回収ステップを含み、それは、
d)部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)有機溶液を形成するように、トリグリセリドを溶解させるための有機溶媒を添加するステップと、
g)水酸化ナトリウムの水溶液を前記有機溶液に添加するステップであって、その水溶液が好ましくは1〜2% NaOHである、ステップと、
h)有機溶液を回収し、水溶液を廃棄するステップと、
i)有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
j)有機溶液をシリカゲルに通して濾過するステップと、
k)有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
l)有機溶媒を蒸発させるステップとを含む。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、有機溶媒は、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、またはエーテルである。有機溶媒の体積は、好ましくは、反応によって形成されている全てのトリグリセリドを可溶化するのに必要である体積である。シリカゲル上での濾過は、トリグリセリドの迅速な精製を可能にする。シリカゲルは、好ましくはパッド、すなわち、シリカゲルパッドの形態である。水酸化ナトリウムの水溶液での洗浄ステップは、未反応の脂肪酸の除去を可能にする。乾燥剤で処理するステップは、乾燥剤を溶液に添加し、乾燥剤を濾過によって除去するステップを含む、化学分野で周知の処理である。乾燥剤の量は、好ましくは、有機溶液中に残った全ての水分子を捕捉するのに必要である量である。本発明の好ましい実施形態において、乾燥剤は、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、触媒は、酸化カルシウム、酸化タングステン、または酸化亜鉛であり、および生成されたトリグリセリドの収率は、75〜95%の収率である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は、75%〜95%の収率でかつ少なくとも99%または99.5%の純度でトリグリセリドを生成し、該方法は、
a)グリセロールを少なくとも3モル当量の該中鎖脂肪酸と混合するステップであって、その中鎖脂肪酸の各々が8〜12個の炭素の鎖を含有する、ステップと、
b)ステップ(a)の混合物を、酸化カルシウム、酸化タングステン、または酸化亜鉛と反応させるステップと、
c)トリグリセリドが形成されるように、約175℃の温度で、約10mmHgの部分真空下で、約22時間の期間にわたって加熱するステップと、
d)部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)アルコール溶液を形成するように、約80℃の温度を有する熱アルコールを添加するステップと、
g)アルコール溶液を濾過し、濾液を得るステップと、
h)濾液を約0℃〜約5℃の間の温度で、約2時間の期間にわたって維持するステップとを含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は、75%〜95%の収率でかつ少なくとも99%または99.5%の純度でトリグリセリドを生成し、該方法は、
a)グリセロールを少なくとも3モル当量の該中鎖脂肪酸と混合するステップであって、その中鎖脂肪酸の各々が6〜7個の炭素の鎖を含有する、ステップと、
b)ステップ(a)の混合物を、酸化カルシウム、酸化タングステン、または酸化亜鉛と反応させるステップと、
c)トリグリセリドが形成されるように、約175℃の温度で、約10mmHgの部分真空下で、約22時間の期間にわたって加熱するステップと、
d)部分真空から除くステップと、
e)80℃以下の温度で冷却するステップと、
f)有機溶液を形成するように、トリグリセリドを溶解させるための有機溶媒を添加するステップと、
g)1〜2% NaOHの水溶液を添加するステップと、
h)有機溶液を回収し、水溶液を廃棄するステップと、
i)有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
j)有機溶液をシリカゲルに通して濾過するステップと、
k)有機溶液を乾燥剤で処理するステップと、
l)有機溶媒を蒸発させるステップとを含む。
【0023】
本発明はまた、本発明の方法によって製造される中鎖脂肪酸のトリグリセリドに関する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の方法によって製造される中鎖脂肪酸のトリグリセリドは、少なくとも99%の純度を有し、より好ましくは、トリグリセリドは、少なくとも99.5%の純度を有する。
【0025】
本発明はさらに、賦形剤として、本発明の中鎖脂肪酸のトリグリセリドを含む、薬学的製剤に関する。トリグリセリドは、難水溶性を有する活性成分の可溶化を改善するその能力を含む、異なる特性のために高く評価され得る。薬学的製剤中のトリグリセリドの濃度は、約50%〜約90%(w/w)の間で、好ましくは約70%および約80%(w/w)の間で変動し得、最も好ましくは約80%(w/w)である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、薬学的製剤は、約25〜約75%(w/w)のデカン酸エチルおよび約2.5〜約10%(w/w)のエタノールをさらに含む。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、薬学的製剤は、その中に可溶化されている活性成分をさらに含む。有利には、活性成分は、約1mg/100mL未満の水溶性を有する。本発明の製剤から有利に便益を得ることができる活性成分の例としては、パクリタキセル、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、および5−フルオロウラシルがある。
【0028】
本発明のある態様は、活性成分として、本発明の中鎖脂肪酸(複数可)のトリグリセリドを含む、薬学的組成物に関する。薬学的組成物中で、トリグリセリドは、好ましくは治療上有効量にある。中鎖脂肪酸のトリグリセリドは、多くの治療効果を有することが知られており、したがって、その治療的活性量は、所望の治療効果に応じて変動し得る。薬学的製剤中のトリグリセリドの濃度は、変動し得る。好ましくは50%〜100%(W/W)の間である。
【0029】
本発明の第13の好ましい実施形態において、薬学的組成物は、第2の活性成分をさらに含む。第2の活性成分は、トリグリセリドとのその組み合わせによる相乗効果から便益を得る場合も、得ない場合もある。かかる第2の活性成分は、パクリタキセル、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、または5−フルオロウラシルであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、中鎖脂肪酸(すなわち、6〜12個の炭素原子の鎖長)のトリグリセリドの合成のための、改善されたプロセスを提供する。グリセロールは、過剰の遊離脂肪酸、好ましくは少なくとも3モル当量、およびより好ましくは4モル当量の遊離脂肪酸と反応させられる。遊離脂肪酸は、有利にはC6〜C12から選択される、所望の鎖長を有する。本発明によれば、グリセロールの遊離脂肪酸との反応は、触媒の存在下かつ溶媒の不在下で行われる。反応は、トリグリセリド生成物を生成するために、部分真空下かつ160〜180℃(好ましくは175℃)の間の様々な温度で行われる。本発明で企図される部分真空は、初歩的な機器を備える研究室において達成することができる低真空であり、その圧力は、大気圧よりも低く、かつ1mmHgまたは1トルよりも高い。プロセスは、有利には、溶媒を用いずにトリグリセリドの合成を可能にする。触媒、部分真空、および熱の組み合わせは、全ての中鎖脂肪酸がグリセロールのヒドロキシル基と反応するような、中鎖脂肪酸によるグリセロールのエステル化のために理想的な条件を提示する。故に、過剰の中鎖脂肪酸が本発明の条件下でグリセロールと共に存在するとき、グリセロールの全ての、またはほぼ全てのヒドロキシル基は、中鎖脂肪酸によりエステル化される。
【0031】
本発明の触媒は、金属塩触媒である。かかる金属塩は、次の金属のうちの1つの酸化物または塩化物である:タングステン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、モリブデン、またはクロム。好ましい触媒は、タングステンの酸化物およびカルシウムの酸化物である。本方法によって製造される好ましいトリグリセリドは、カプリル酸(C8脂肪酸)のトリグリセリド、およびカプリン酸(C10脂肪酸)のトリグリセリドである。
【0032】
本発明の化合物は、グリセロールとの中鎖脂肪酸のトリエステルであるそれらの生成物に限定されないが、本発明の特許請求の範囲外にあるが、それにもかかわらず明白である、ある特定の構造修正が本発明の範囲内に該当することは、当業者によって理解されるであろう。例えば、中鎖脂肪酸ジグリセリドが、本発明によって、グリセロールをセリノールで置き換え、そして中鎖脂肪酸の2個の分子をセリノールの2個のヒドロキシルにエステル化することによって製造され得ることは、明白な実施例を構成する。同様に、中鎖脂肪酸(複数可)のそれぞれ2個の分子および1個の分子がグリセロールにエステル化される、中鎖脂肪酸ジおよびモノグリセリドは、別の明白な実施例を提供する。さらに、種々の鎖長の炭素の中鎖脂肪酸の源を使用できることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、中鎖トリグリセリドの市販の混合物(例えば、様々な割合でのC8およびC10脂肪酸のグリセロールエステルの混合物)もまた、さらなる明白な実施例を構成する。最後に、本発明の別の態様において、またさもなければ不溶性の薬物の可溶化を可能にするために、中鎖トリグリセリドは、送達ビヒクルまたは賦形剤として用いることができる。さらに、デカン酸エチルおよびエタノールが共溶媒として使用されてもよい。
【0033】
好ましくは、本プロセスによって合成されるトリグリセリドは、冷アルコールからの結晶化および/または沈殿によって回収される。かかる冷アルコールは、エタノールまたはイソプロパノールであり得る。
【0034】
現存する問題は、高収率、高純度で、かつ妥当な費用で中鎖脂肪酸のトリグリセリドの好都合な大規模製造を提供するであろう方法を見出すことである。驚くべきことに、グリセロールが中鎖脂肪酸と混合され、部分真空下で、金属酸化物または塩化物の存在下で加熱されるとき、トリグリセリド生成物がエタノールからの沈殿後に高収率および高純度で得られることが見出されてきた。この高収率および高純度は、カラムクロマトグラフィー/蒸留による大規模な精製に関連する難題を克服する。次の実施例に示されるように、精製は、粗生成物をアルコール中に溶解させ、それをその後、好ましくは氷浴中で冷却して、純トリグリセリド生成物を沈殿させることによって達成される。
【0035】
中鎖脂肪酸のトリグリセリドは、C6(カプロン酸、ヘキサン酸)、C8(カプリル酸、オクタン酸)、C10(カプリン酸、デカン酸)、およびC12(ラウリン酸、ドデカン酸)を含む、6〜12個の炭素の炭素鎖長を有するモノカルボン酸の脂肪酸によるトリグリセリドを指す。偶数の炭素原子鎖長が本発明の好ましい実施形態を構成するが、グリセロールの奇数の炭素原子鎖長カルボン酸トリグリセリドもまた、高い生成物収率および純度で好都合に製造され得る。奇数の炭素原子鎖には、7(ヘプタン酸)、9(ノナン酸)および11(ウンデカン酸)が含まれる。好ましい実施形態によれば、中鎖脂肪酸のトリグリセリドは、トリカプラート(トリカプリン)およびトリカプリラート(トリカプリリン)である。反応温度は、好ましくは10mmHgの部分真空下で160℃、およびより好ましくは同じ真空下で175℃である。後者の条件は、反応中に形成される副生成物の水を完全に除去し、それにより生成物トリグリセリドの形成を加速させる。160℃未満の温度は、これが、反応速度を低減し、遊離脂肪酸およびグリセロール反応体に対するトリグリセリド生成物の収率低減をもたらすので、比較的望ましくない場合がある。粗生成物は、好ましくは冷エタノール中に溶解され、濾過され、次いで冷エタノールから結晶化される。反応体の比率、温度、および反応の長さの適切な選択によって、75%〜95%の収率を達成することができる。
【0036】
本発明のトリグリセリドは、薬学的に許容される担体を使用して、当業者に既知の方法によって製剤化されてもよい(Merck Index,Merck & Co.,Rahway,NJ)。これらの組成物には、固体、液体、油、エマルション、ゲル、エアロゾル、吸入剤、カプセル、丸薬、パッチ、および坐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明のトリグリセリドはまた、より低い粘度、アルコール中の溶解度、皮膚上での脂っぽくない感触等の、普通の脂肪とは異なる物理的特性を有し、したがって製薬産業および化粧品・トイレタリー産業において特別な有用性を見出す。しかしながら、その比較的高い融点に起因して、トリカプリンおよびトリラウリンは、上述の混合されたトリグリセリドまたはカプリントリグリセリドとは対照的に、固体組成物において使用することができる。
【0038】
次の実施例は、本発明を例示するために提示されるが、本発明の範囲を限定することは意図されない。これらの実施例は、下の方程式によって要約される:
【化1】
【0039】
全てのHPLCクロマトグラムおよび質量スペクトルは、分析Zorbax SB−フェニルカラムを使用したHP 1100 LC−MS Agilent器具上に、溶離液として0.01%トリフルオロ酢酸を用いた15〜99%アセトニトリル−水の8分間にわたる勾配、および2mL/分の流量で記録した。ELSD検出器を使用して、トリグリセリドを分析した。
【実施例】
【0040】
実施例1:トリカプリン(カプリン酸:n=8)
グリセロール(5.0g、54.3mmol)を含有し、冷却器を装着した250mLのフラスコに、カプリン酸(37.4g、217.2mmol)および酸化カルシウム(45.4mg、0.8mmol)を添加した。混合物を175℃で、部分真空下(1トル、水ポンプ真空)で22時間加熱した。冷却器中の水の温度は、カプリン酸の穏やかな還流を維持するため、および真空下での水の除去を加速するために、およそ35℃であった。反応物を室温まで冷却し、残渣を熱エタノール(95%、400mL)中に溶解した。この溶液を木炭で処理し、繊維ガラス上で濾過し、0〜5℃の氷浴中で2時間冷却した。トリカプリンが白色の固体として結晶化し、それを濾過し、冷エタノール(95%、40mL)で洗浄した。生成物の収率:27.5g(91%);mp 29〜31℃;
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ5.22〜5.29(m、1H)、4.29(dd、J=11.9、J=4.3、2H)、4.14(dd、J=11.9、J=6.1、2H)、2.26〜2.34(m、6H)、1.54〜1.65(m、6H)、1.18〜1.36(m、36H)、0.87(t、J=7.0、9H)。
13C NMR(101MHz、CDCl
3):δ73.54、173.13、69.07、62.32、34.44、34.27、32.09、29.67、29.65、29.51、29.50、29.34、29.30、25.13、25.08、22.90、14.33;MS(ES)m/z578(M+Na
+);HPLC:5.6分。
【0041】
実施例2:トリラウリン(ラウリン酸:n=10)
ラウリン酸のトリグリセリドを、実施例1に記載されるように、15gのラウリン酸(74.9mmol)、1.7gのグリセロール(18.7mmol)、および15.7mgの酸化カルシウム(0.28mmol)の使用によって製造した。生成物の収率:9g(78%);mp=45〜47℃;
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ5.25〜5.28(m、1H)、4.29(dd、J=11.7、J=4.3、2H)、4.14(dd、J=11.9、J=6.1、2H)、2.28〜2.34(m、6H)、1.55〜1.66(m、6H)、1.20〜1.36(m、48H)、0.87(t、J=7.0、9H)。
13C(101MHz、CDCl
3):δ?173.55、173.14、69.07、62.33、34.45、34.29、32.15、29.86、29.73、29.71、29.58、29.53、29.50、29.35、29.31、25.10、22.92、14.36;HPLC:6.5分。
【0042】
実施例3:トリカプリリン(カプリル酸:n=6)
カプリル酸のトリグリセリドを、実施例1に記載されるように、11gのカプリル酸(74.9mmol)、1.7gのグリセロール(18.7mmol)、および15.7mgの酸化カルシウム(0.28mmol)の使用によって製造した。トリカプリリンは液体であるため、粗生成物を、繊維ガラスの代わりにシリカゲル上で、酢酸エチル/ヘキサン(5〜10%)を使用して濾過した。これにより、無色の油として純粋な生成物を得た。収率:8g(89%);
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ5.25〜5.28(m、1H)、4.29(dd、J=11.9、J=4.3、2H)、4.14(dd、J=11.9、J=6.1、2H)、2.28〜2.34(m、6H)、1.56〜1.66(m、6H)、1.20〜1.36(m、24H)、0.87(t、J=7.0、9H)。
13C(101MHz、CDCl
3):δ173.56、173.14、69.07、62.33、34.45、34.28、31.89、31.88、29.28、29.24、29.16、29.14、25.13、25.08、22.83、14.30;HPLC:4.5分。
【0043】
実施例4:トリカプロアート(カプロン酸:n=4)
トリカプロアートは揮発性化合物であるため、実施例1に記載される手順を若干修正した。実施例4に詳述される手順は、6〜7個の炭素の鎖の脂肪酸等の揮発性中鎖脂肪酸によりトリグリセリドを製造する方法に適用可能である。グリセロール(1.73g、18.7mmol)を含有し、冷却器、およびカプロン酸を充填したディーン・スターク・トラップ(Dean−Stark trap)を装着した、250mLのフラスコ中に、カプロン酸(8.7g、74.9mmol)および酸化カルシウム(15.7mg、0.3mmol)を添加した。混合物を175℃で、真空下で一晩(22時間、10mmHg)で加熱した。混合物を冷却し、酢酸エチル中に溶解させた。この溶液を10%水酸化ナトリウム、ブライン(NaCl)で洗浄し、水の除去のために硫酸マグネシウム−木炭で処理し、繊維ガラス上で濾過した。濾液を濃縮して、黄色の油を得、それをヘキサン中に溶解させ、10×10cm
2シリカゲルパッド上に注いだ。化合物を10%酢酸エチル/ヘキサンで溶出した。純粋な画分を合わせて、濃縮して、無色の油を得た。収率:5.8g、80%;
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ5.23〜5.29(m、1H)、4.29(dd、J=11.9、J=4.3、2H)、4.14(dd、J=11.9、J=6.1、2H)、2.27〜2.34(m、6H)、1.56〜1.66(m、6H)、1.22〜1.37(m、12H)、0.89(t、J=7.0、9H)。
13C(101MHz、CDCl
3):δ173.56、173.14、69.07、62.32、34.39、34.23、31.45、31.41、24.78、24.75、22.51、14.12;HPLC:3.8分。
【0044】
実施例5:異なる金属触媒の使用により得られる中鎖脂肪酸のトリグリセリドの収率。
酸化カルシウム触媒をマグネシウム、亜鉛、タングステン、モリブデン、およびクロム塩と置き換えたことを除いて、実施例1〜4に記載される手順に従って、トリカプロイン、トリカプリリン、トリカプリン、およびトリラウリンの合成を行った。
【表1】
【0045】
特許請求の範囲の意義の内に入る全ての修正および置換、ならびにそれらの法的均等物が、それらの範囲内に包含されるものとする。
【0046】
前述から、本発明が、その趣旨または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得ることは、当業者に明らかであろう。本発明のために提供される法的保護の範囲は、本明細書によらず、添付の特許請求の範囲により指定されるので、記載される実施形態は、限定ではなく、例示説明のみとして考慮されるべきである。