特許第6148703号(P6148703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6148703活性炭含有粒状ゲル担体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148703
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】活性炭含有粒状ゲル担体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/10 20060101AFI20170607BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20170607BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20170607BHJP
   B01J 2/06 20060101ALI20170607BHJP
   C01B 32/30 20170101ALI20170607BHJP
【FI】
   C02F3/10 A
   B01D15/00 K
   C02F3/00 D
   B01J2/06
   C01B32/30
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-174817(P2015-174817)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-47400(P2017-47400A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】311015931
【氏名又は名称】浅野テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】高梨 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−154335(JP,A)
【文献】 特開平04−048995(JP,A)
【文献】 特開昭58−028288(JP,A)
【文献】 特開平06−239608(JP,A)
【文献】 特開2003−235554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00
C12N 11/00−13/00
B01D 15/00
C01B 32/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥法において微生物の活性化を促す活性炭含有粒状ゲル担体の製造方法であって、サトウキビの抽出液に活性炭を投入して前記活性炭にリグニン様物質を吸着させる工程と、前記活性炭を含む前記サトウキビの抽出液にアルギン酸ナトリウムを加えて混合溶液を製造する工程と、前記混合溶液を塩化カルシウム溶液中に滴下して造粒する工程と、を有することを特徴とする活性炭含有粒状ゲル担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物処理に用いられた活性炭を利用して製造される活性炭含有粒状ゲル担体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においては、活性汚泥等に含まれる多様な微生物を活性化することができ、排水中の有機汚濁物質の増加・減少に容易に対応でき、安定した排水処理ができ、汚泥発生量が少なくなるような活性汚泥等を活性化する粒状ゲル担体が開示されている。そのような粒状ゲル担体は、サトウキビ等の糖蜜から製造される。
【0003】
図4は、糖蜜から粒状ゲル担体を製造する工程を説明する図である。製造工程を簡単に説明すると、まず、糖蜜を水で希釈し(S01)、その希釈溶液に活性炭を投入して黒褐色のリグニン様物質等の有機物を吸着処理し(S02)、その有機物処理を施した溶液をフィルターでろ過し(S03)、ろ液からは粒状ゲル担体50を製造し(S20)、残渣は土壌改良材とする(S30)というものである。これらの工程を更にそれぞれ詳細に説明する。
【0004】
まず、サトウキビから糖蜜と称する濃縮された植物抽出液を製造する。具体的には、収穫したサトウキビの茎を細かく砕いて汁を搾り、その汁の不純物を沈殿させて、上澄み液を取り出してフィルターで濾過し、煮詰める。煮詰めた液を沈殿させ、フィルターで濾過してさらに煮詰めて濃縮するという工程を何回か繰り返す。その結果、黒褐色で粘度の高い液体状の糖蜜が得られる。この糖蜜は、粘度が高いので、水で希釈してサトウキビの植物抽出液とする(S01)。
【0005】
このサトウキビの植物抽出液は、多糖類、ミネラル、黒褐色のリグニン様物質を含んでいる。黒褐色のリグニン様物質は、炭水化物ではあるが、難生物分解物質である。そのため、黒褐色になった処理水を所定の水質にするためには、一般的には更に多量の水を加えて希釈しなければならない。
【0006】
そこで、水を加えずに処理水の黒褐色の色素を取り除くために、サトウキビの植物抽出液に、活性炭を投入する(S02)。投入された活性炭は黒褐色のリグニン様物質を吸着して脱色するので、処理水を所定の水質にすることができる。
【0007】
そして、リグニン様物質を吸着する有機物処理を施したサトウキビの植物抽出液をフィルターでろ過(S03)すると、ろ液はほぼ無色透明な液体となる。この濾し取られた活性炭には、糖分等が付着しており堆肥等の土壌改良材として利用することができる(S30)。
【0008】
一方、ろ過されたサトウキビの植物抽出液は無色透明な糖蜜液になっており、そこにアルギン酸ナトリウムを加温溶解させる。そして、アルギン酸ナトリウムを溶解させた液体を、サイホン方式等によって、塩化カルシウム液に滴下する。そうすると、アルギン酸ナトリウムは化学変化を起こしてアルギン酸カルシウムとなり、ゲル化して小球状の担体が造粒される。このようにして造粒した担体を分離して取り出すことで、糖蜜液を含有する粒状ゲル担体50が得られる。
【0009】
この粒状ゲル担体50を活性汚泥と混合させると、活性汚泥の微生物が、粒状ゲル担体50に付着する。粒状ゲル担体50がサトウキビの植物抽出液を含むアルギン酸カルシウムのゲルであり、ともに有機物が主成分であるため、活性汚泥の多様な微生物にとっては、良好な餌となり、多様な微生物を活性化することができる。なお、糖蜜そのものを微生物の餌として投入する場合とは異なり、粒状ゲル担体50にすることで、BOD成分等が一気に溶出せず、活性汚泥中の微生物群との接触により徐々に生物分解されて、一定期間を経ると完全に消滅するという利点がある。このため、粒状ゲル担体50の使用量が過剰であっても槽内のBOD負荷が上昇することはない。
【0010】
また、粒状ゲル担体50を網籠に入れて槽内に浸漬して活性汚泥と接触させてもよいし、粒状ゲル担体50を直接投入した場合でも、槽出口にスクリーンを設置して流出を防止することができるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願2013−154335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した通り、粒状ゲル担体の製造の際に有機物処理に用いられた活性炭は、堆肥等の土壌改良材として利用することができる。しかし、本発明は、活性炭が有する悪臭発生防止効果等の特性をより有効に活用するため、有機物処理に使用された活性炭を含有し、活性汚泥法に用いることができる活性炭含有粒状ゲル担体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の活性炭含有粒状ゲル担体は、有機物処理に用いられた活性炭を含有するものである。そして、その有機物処理が、サトウキビの抽出液からリグニン様物質を吸着処理することとすればよい。
【0014】
また、本発明の活性炭含有粒状ゲル担体の製造方法としては、有機物処理に用いられた活性炭を乾燥させて粉末にする工程と、その粉末を水に分散させて水溶液を製造する工程と、その水溶液にアルギン酸ナトリウムを加えて混合溶液を製造する工程と、その混合溶液を塩化カルシウム溶液中に滴下して造粒する工程と、を有することとする。さらに、有機物処理は、サトウキビの抽出液からリグニン様物質を吸着処理することとすればよい。
【0015】
更に、本発明の別の活性炭含有粒状ゲル担体の製造方法は、サトウキビの抽出液に活性炭を投入してその活性炭にリグニン様物質を吸着させる工程と、その活性炭を含むサトウキビの抽出液にアルギン酸ナトリウムを加えて混合溶液を製造する工程と、その混合溶液を塩化カルシウム溶液中に滴下して造粒する工程と、を有することとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の活性炭含有粒状ゲル担体は、サトウキビの抽出液から黒褐色のリグニン様物質を吸着するなどの有機物処理に用いられた活性炭を有効に利用するものであり、また、活性汚泥法において微生物が吸着物を餌とすることで活性化を促し、更に、活性炭に空いた活性炭孔を利用して悪臭の発生防止や脱色等に効果を発揮し、活性炭孔に微生物が棲息できるので、生物活性炭機能を発揮して難分解性物質の生物分解に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】糖蜜液付着活性炭含有粒状ゲル担体を製造する工程を説明する図である。
図2】糖蜜液および活性炭含有粒状ゲル担体を製造する工程を説明する図である。
図3】活性炭含有粒状ゲル担体の拡大模式図である。
図4】糖蜜から粒状ゲル担体を製造する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る活性炭含有粒状ゲル担体の製造方法を、添付図面を参照して説明する。ここでは、サトウキビから抽出した糖蜜を用いた実施例で説明するが、サトウキビ以外の植物を用いる場合もあるし、サトウキビから製造した黒糖を水に溶かして用いることも可能である。
【0019】
図1は、糖蜜液付着活性炭含有粒状ゲル担体を製造する工程を説明する図である。なお、以下に説明する各工程の数値は実施例としての参考値であり、特にこれらの数値に限定するものではない。
【0020】
糖蜜を水で希釈して5.0%糖蜜溶液とし(S01)、その溶液に糖蜜原液1gあたり0.30gの活性炭を投入して黒褐色のリグニン様物質を吸着する有機物処理を施し(S02)、その有機物処理後の溶液をろ過し(S03)、ろ液から粒状ゲル担体50を造粒する(S20)ことは、従来の工程と基本的には同じである。
【0021】
従来では、ろ過した残渣を土壌改良材に用いることを提案していたが、本発明では、残渣を用いて活性炭含有粒状ゲル担体1を製造する(S10)ところに特徴がある。
【0022】
活性炭含有粒状ゲル担体1を製造する工程(S10)は、まず、有機物処理(S02)とろ過(S03)を行った残渣である活性炭を天日乾燥する。なお、この活性炭には有機物処理によって吸着したリグニン様物質が付着しているだけでなく、もともとの水溶液に溶けていた糖蜜液も付着している。そして乾燥させた活性炭を水に分散させて水1Lあたり活性炭20gの水溶液を製造し、その水溶液に2重量%のアルギン酸ナトリウムを溶解して混合溶液とし、その混合溶液を塩化カルシウム溶液に滴下して造粒する。このようにして造粒した担体を分離して取り出すことで、糖蜜液が付着した活性炭含有粒状ゲル担体1が得られる。
【0023】
図1に示した工程では、糖蜜液が付着した活性炭含有粒状ゲル担体1と、ろ液から製造した粒状ゲル担体50の2種類の担体が得られることになる。ろ液から製造した粒状ゲル担体50は、従来通り、活性汚泥法において微生物を活性化させる餌として使用される。一方、糖蜜液が付着した活性炭含有粒状ゲル担体1は、活性汚泥法において微生物が活性炭の吸着物を餌として活性化することを促すだけでなく、更に、活性炭孔を利用して悪臭の発生防止や脱色にも効果を発揮することができる。また、活性炭孔に微生物が長期間棲息することで、難分解性物質を生物分解するという生物活性炭機能にも寄与できる。
【0024】
図2は、糖蜜液および活性炭含有粒状ゲル担体を製造する工程を説明する図である。なお、以下に説明する各工程の数値は実施例としての参考値であり、特にこれらの数値に限定するものではない。
【0025】
糖蜜を水で希釈して5.0%糖蜜溶液とし(S01)、その溶液に糖蜜原液1gあたり0.30gの活性炭を投入して黒褐色のリグニン様物質を吸着する有機物処理を施す(S02)。これらの工程は、基本的には従来と同様であるが、活性炭は、後に担体にするため、粉末状の活性炭が用いられる。そして、活性炭を含んだ有機物処理後の溶液に2重量%のアルギン酸ナトリウムを溶解して混合溶液とし、その混合溶液を2%の塩化カルシウム溶液に滴下し、造粒・分離して糖蜜液を含有する活性炭含有粒状ゲル担体2を製造する(S11)。
【0026】
この製造方法(S01+S02+S11)では、図1で示した製造方法とは異なり、1種類の担体しか得られないが、製造工程が簡易であり、また、主成分の糖蜜液を大量に含有しているという特徴がある。それによって、活性汚泥中に棲息する有用微生物群の餌となって活性汚泥を活性化させることができ、併せて、微生物群が粒状ゲル担体活性炭表面及び内部に付着した糖蜜成分と接触することで、活性炭に活性炭孔が現れ、それによって悪臭発生防止や脱色の効果を奏することができる。また、活性炭孔に微生物が棲息することで、長期間に及び難分解性物質を生物分解するという生物活性炭機能にも寄与することができる。つまり、図2に示す製造方法を用いれば、図1で示した粒状ゲル担体50と糖蜜液が付着した活性炭含有粒状ゲル担体1の両方の特徴を備えた活性炭含有粒状ゲル担体2が製造できることになる。
【0027】
もう少し詳しく活性炭含有粒状ゲル担体2の特徴を説明すると、水処理効果としては、従来の粒状ゲル担体50と同様に、系内にBOD成分等は溶出しないという特徴がある。そして、活性汚泥との接触により、ゲル化した糖蜜液は生物分解を受けて徐々に消滅するため、処理水のBOD上昇はみられない。また、活性汚泥中の有用微生物群を活性化して、生物分解や硝化反応を促進させて生物処理機能が上昇する。そして、活性炭表面のBOD成分が生物分解されることにより、この活性炭が人工透析排液や抗生物質を服用する家庭用合併浄化槽で生物阻害から発生する悪臭を防止する。なお、活性炭含有粒状ゲル担体2と粒状ゲル担体50との違いとしては、粒状ゲル担体50は最終的には完全に消滅するが、活性炭含有粒状ゲル担体2は最終的には活性炭となり、この活性炭は活性汚泥中に取り込まれ、汚泥処理の際に引抜き処理される。また、活性炭含有粒状ゲル担体2は、上記のような粒状ゲル担体50の特徴だけでなく、活性炭孔を利用して、悪臭の発生防止や着色排水の脱色の効果を発揮し、更には、生物活性炭機能にも寄与することができる。
【0028】
図3は、活性炭含有粒状ゲル担体の拡大模式図である。ここで示した活性炭含有粒状ゲル担体は、図1に示す工程で製造した活性炭含有粒状ゲル担体1と、図2に示す工程で製造した活性炭含有粒状ゲル担体2のいずれにも該当するものであるが、活性炭含有粒状ゲル担体2は、活性炭含有粒状ゲル担体1に比べて、大量に糖蜜等の有機物を含有していることになる。つまり、図3において有機物20は、点で表しているが、これは活性炭含有粒状ゲル担体1を表した状態に近く、活性炭含有粒状ゲル担体2の場合はもっと大量の有機物20を含有しており、活性炭10全体を覆ってしまうくらい有機物20を吸着していると考えるとよい。
【0029】
活性炭含有粒状ゲル担体1,2は、主に活性炭10からなり、その活性炭10には枝状に分岐した活性炭孔11が何本もあいている。そして、この活性炭含有粒状ゲル担体1,2を槽内に投入した直後は、活性炭10の表面や活性炭孔11の内側には、ゲル化した糖蜜等の有機物20が吸着している。この有機物20に微生物30が接触することで、有機物20で満たされていた活性炭孔11は、徐々に隙間が大きくなる。そうして穿けられた活性炭孔11は、次第に微生物30の棲家となり、長期間にわたって、生物活性炭機能に寄与することとなる。
【0030】
なお、活性炭10に吸着した有機物20等の溶離は、薬品添加や熱処理に依らなければ、簡単に水に移行して溶出することはない。したがって、図2に示す工程(S01+S02+S03)において、活性炭を投入して、予めリグニン様物質等を吸着する有機物処理を行うことによって、処理水が黒褐色に染まることを予防することができる。また、活性炭を粒状ゲル担体にすることで、生物分解後は活性汚泥中に捕捉されて汚泥処理により系外に排出されて処理水に影響を及ぼさないという効果もある。更に、活性炭の有する脱臭機能や脱色機能を利用でき、活性炭が系内に長期間滞留することで生物活性炭機能を発揮し、難分解性物質の生物分解に寄与できるという効果も奏する。このように、有機物処理に用いられた活性炭を利用して活性炭含有粒状ゲル担体を製造することは、多くの効果をもたらすことになる。
【0031】
なお、本発明による活性炭含有粒状ゲル担体の具体的な使用場所としては、人口透析排液処理や抗生物質使用により生物処理阻害から発生する悪臭防止対策として合併浄化槽に用いたり、工場排水処理施設において臭気・着色排水の処理に利用したりと多岐に亘る。
【符号の説明】
【0032】
1,2 活性炭含有粒状ゲル担体
10 活性炭
11 活性炭孔
20 有機物
30 微生物
50 粒状ゲル担体
図1
図2
図3
図4