(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6148776
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】粘膜免疫増強用食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20170607BHJP
A61K 36/8962 20060101ALI20170607BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20170607BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20170607BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20170607BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/8962
A61P37/04
A61K36/899
A23L19/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-201452(P2016-201452)
(22)【出願日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年10月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 BIOMEDICAL REPORTS Vol.5(平成28年5月20日)SPANDIDOS PUBLICATIONS発行第63−67頁に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398013554
【氏名又は名称】株式会社健康家族
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】仲宗根 靖
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−068604(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/088892(WO,A1)
【文献】
特開2005−179195(JP,A)
【文献】
田村弘司、草野崇一,発酵ニンニクの免疫賦活作用,日本農芸化学会2009年度(平成21年度)大会講演要旨集,社団法人 日本農芸化学会,2009年 3月 5日,p. 202, 3P0365A
【文献】
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2013年11月 7日,Vol. 77, No. 11,p. 2298-2301
【文献】
BIOMEDICAL REPORTS,2016年 5月20日,Vol. 5, No. 1,p. 63-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
A61K 36/00
A61P 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酢にんにくを有効成分として含む、粘膜免疫を増強させるための食品。
【請求項2】
黒酢が、有機発芽玄米黒酢である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
にんにくが、有機にんにくである、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
さらに、有機黒酢もろみを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘膜免疫を増強させるための食品に関する。
【背景技術】
【0002】
にんにく(Allium sativum)には、ガンマデルタT細胞やNK細胞の活性増加のような、免疫細胞機能を増強する効果があることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
黒酢は、約200年前、鹿児島県福山地方で造り始められた、米、米麹及び水を壺の中で、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵の三工程を含む伝統的製造方法で造られている。黒酢には、脂質代謝改善作用、赤血球変形機能改善作用、抗アレルギー作用、血圧調整作用、血糖調整作用などがあるとされている。
【0004】
黒酢にんにくは、滋養強壮や疲労回復効果があるとされ、多くのサプリメントが市販されている。しかし、実験的データによって裏付けられた、黒酢にんにくの具体的な免疫調節作用については、何らの報告も知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nantz MP et al, Clin Nutr 2012 31(3) 337-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粘膜免疫を増強させるための食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、驚くべきことに、黒酢にんにくが、唾液中の分泌性イムノグロブリンAの放出を増強することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下に示すとおりである。
[1]黒酢にんにくを有効成分として含む、粘膜免疫を増強させるための食品、
[2]黒酢が、有機発芽玄米黒酢である、[1]に記載の食品、
[3]にんにくが、有機にんにくである、[1]又は[2]に記載の食品、
[4]さらに、有機黒酢もろみを含む、[1]〜[3]に記載の食品。
【0008】
本発明において、黒酢にんにくとは、にんにくを黒酢に浸漬したものをいう。浸漬期間は、少なくとも2週間であり、好ましくは、3月以上である。場合により、黒酢にんにくは、さらに黒酢もろみを含むことができる。黒酢にんにくは、その全体を粉末化、好ましくはフリーズドライすることができる。
【0009】
本発明において、にんにくは、従来公知の食用のものを用いることができる。にんにくは、有機農業で栽培されたにんにく(本発明において、有機にんにくともいう。)であることが好ましい。有機農業とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業である。より具体的には、農薬と化学肥料を3年以上使用しない田畑で、栽培したものを有機農産物という(有機農産物の日本農林規格)。
【0010】
本発明において、黒酢は、従来公知の食用の黒酢を用いることができるが、米黒酢であることが好ましい。米黒酢は、穀物酢のうち、原材料として米(玄米のぬか層の全部を取り除いて精白したものを除く。以下この項において同じ。)又はこれに小麦若しくは大麦を加えたもののみを使用したもので、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵及び熟成によって褐色又は黒褐色に着色したものをいう(食酢品質表示基準、平成23年8月31日 消費者庁告示第8号)。
【0011】
本発明において、黒酢もろみとは、黒酢を作る過程で生まれる沈殿物をいう。
【0012】
本発明の食品は、ソフトカプセル、錠剤、ハードカプセル、粉末、顆粒の形態で利用することができる。
【0013】
本発明の食品の機能については、たとえば、粘膜免疫の増強、疾病の予防、免疫力アップ、上気道感染の予防、インフルエンザ・風邪等の感染予防と表示することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食品は、粘膜免疫を増強させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】唾液中のsIgA(分泌性イムノグロブリンA)の放出に対する黒酢にんにくの摂取の影響の経時変化を示す。縦軸は唾液中のsIgA放出の速度の変化(μg/分)である。Placeboは、P群であり、Activeは、A群である。
【0016】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0017】
54人の被験者を無作為に2つの群に分け、P群(28人)では、プラセボ食品を、A群(26人)では黒酢にんにく食品を投与した。被験者は、それぞれ、一日当たり6カプセルを摂取した。一日摂取量(6カプセル)当たりの組成を以下に示す。
【0018】
成分(mg) プラセボ 黒酢にんにく
アマニ油 1,098 1,035
デンプン 430.8 430.8
酢酸フレーバー 90.0 90.0
カラメル色素 30.0 30.0
黒酢にんにく末 0.0 300.0
グリセロール 363.6 363.6
蜜蝋 252.0 252.0
ゲル化剤 165.6 165.6
【0019】
唾液中のsIgAの測定
被験者は、試験の前に150mlの水で、口を2回ゆすぎ、2回うがいをした。着席15分後に、被験者は、サリソフト(Salisoft、Aarstedt、Numbrecht、ドイツ)を用いて唾液を120秒間採取した。回収された唾液の量を記録した。sIgAno唾液中の濃度をBML社の社内プロトコールにしたがって免疫比濁法によって測定した。
【0020】
A群において、第4週で、唾液中のsIgA放出速度が、P群に比べて有意に高かった(P=0.028)(
図1)。A群における第8週での速度も、P群に比べて高かった(
図1)。試験前の値からの経時変化は、黒酢にんにくの摂取後のsIgA分泌の速度の増加傾向を示している。
【0021】
試験中には、いかなる有害事象も認められなかった。
【0022】
以上の結果より、黒酢にんにくを含む食品の摂取が、粘膜免疫の増強において有益であると考えらえる。
【0023】
sIgAは、主要な粘膜免疫エフェクター分子を構成し、Streptococcus mutansやPorphyromonas gingivalisのような、病原体に対する防御の重要な最前線を提供する。管腔sIgAは、粘膜上皮細胞に付着する病原体を妨害し、病原体の細胞内中和化を促進すると仮定される。IgA分泌細胞は、粘膜と関連するリンパ組織において分化する。IgA分泌細胞の大部分は、腸粘膜に存在する。増加する証拠は、抗体分泌細胞の腸への移動が防御的免疫応答を与えることにおいて重要であることを示唆している。本発明の食品は、カプセルとして提供し、消化管は、それに含まれる成分に最初に暴露される組織である。したがって、消化管における免疫系が、黒酢にんにくによって最初に刺激され、次いで、抗体分泌細胞の口腔内粘膜組織への移動によって唾液中sIgA放出に影響したと考えられる。
【要約】 (修正有)
【課題】粘膜免疫を増強させるための食品の提供。
【解決手段】黒酢にんにくを有効成分として含む、粘膜免疫を増強させるための食品、黒酢が有機発芽玄米黒酢である前記食品、にんにくが有機にんにくである前記食品、及び有機黒酢もろみを更に含む前記食品。
【選択図】なし