【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
使用時の上側位置と不使用時の前方下側位置との間で略180°回動可能な構造を有する折畳式のヘッドレストであって、
後壁部A
1と左右一対の側壁部A
2,A
3とを有し、後壁部A
1の下部に係止部A
4が設けられた回動ブラケットと、
左右一対の縦フレーム部と、縦フレーム部の上部同士を連結する横フレーム部とを有するゲート状を為し、回動ブラケットに固定されたヘッドレストフレームと、
ヘッドレストステーの上部又はシートバックフレームの上部に対して直接的又は間接的に固定されて、回動ブラケットが回動可能に支持される主軸と、
後壁部B
1と左右一対の側壁部B
2,B
3とを有し、後壁部B
1の上部に係止部B
4が設けられ、主軸に対して固定された固定ブラケットと、
回動ブラケットを前方下側位置に向かって常時付勢するための回動ブラケット付勢バネと、
回動ブラケットの側壁部A
2,A
3又は固定ブラケットの側壁部B
2,B
3に対して昇降回動可能に支持され、その外周面の一部に係止部C
1を有するロックピンと、
ロックピンを、その係止部C
1が、回動ブラケットと固定ブラケットのうちロックピンが支持されていない方の側壁部A
2,A
3又は側壁部B
2,B
3に設けられた係止部X
1に係止されるロック方向に常時付勢するためのロックピン付勢バネと、
ロックピンをその係止部C
1が係止部X
1から外れるロック解除方向に強制的に移動させるロック解除部材と、
で構成され、
係止部A
4又は係止部B
4のうち少なくとも一方が、後壁部A
1の下部又は後壁部B
1の上部に設けられた折曲部とされ、
使用時の上側位置にあるときには、
係止部X
1とロックピンの係止部C
1とが係止することによって、後方から力が加えられた場合であっても前方回動が規制され、
固定ブラケットの係止部B
4と回動ブラケットの係止部A
4とが係止することによって、前方から力が加えられた場合であっても後方回動が規制され、
ロック解除部材を操作してロックピンをロック解除方向に移動させると、係止部X
1とロックピンの係止部C
1とが外れ、回動ブラケット付勢バネの付勢力によって前方回動して不使用時の前方下側位置となるようにした
ことを特徴とするヘッドレスト
を提供することによって解決される。
【0011】
本発明のヘッドレストは、180度折畳式のものであるところ、上記のように、使用時における前方回動や後方回動の規制を単純な構造で実現するとともに、前方回動を規制する部材として昇降回動可能なロックピンを採用したことによって、ヘッドレストフレームが上下に長い場合(ヘッドレストの背が高い場合。例えば、ヘッドレストの回動中心からヘッドレストの上端部までの高さが320mmでその箇所に980Nの負荷が加わる場合。)であっても、ヘッドレストの前後厚を40mm程度にすることが可能なものとなっている。ここで、「昇降回動」とは、ヘッドレストの側方からロックピンを見たときに、ロックピンが円弧状の軌跡を描いて上下動することを云う。
【0012】
また、本発明のヘッドレストは、後述するように、高さ調節を行う態様にも好適に採用することのできるものとなっている。さらに、本発明のヘッドレストでは、固定ブラケットを主軸に対して100mm程度の十分な長さの溶接で固定、一体化し、回動ブラケットを、後壁部A
1と側壁部A
2,A
3とを有する溝型部材として、固定ブラケットを、後壁部B
1と側壁部B
2,B
3とを有する溝型部材とし、側壁部A
2,A
3のそれぞれ、又は、側壁部B
2,B
3のそれぞれに係止部X
1を設けたことにより、ロックピンから回動ブラケット又は固定ブラケットに加えられる力を、側壁部A
2と側壁部A
3とで、又は、側壁部B
2と側壁部B
3とで分散させることができる等、ヘッドレストの回動機構を構成する各部材の板厚を小さくしても、必要な強度を得ることができるようになっている。したがって、ヘッドレストの軽量化を図ることができるだけでなく、各部材の成形を一般的なプレス加工で行うことができる等、ヘッドレストの生産性の向上を図ることも可能となっている。
【0013】
本発明のヘッドレストにおいては、
回動ブラケットの側壁部A
2,A
3を、固定ブラケットの側壁部B
2,B
3よりも外側に位置させるとともに、
ヘッドレストフレームの縦フレーム部における外周面に当接した状態で、側壁部A
2,A
3を配置し、
ヘッドレストフレームの縦フレーム部の下端部を、主軸の近傍まで延在させる
と好ましい。
【0014】
これにより、回動側部材における主軸付近(ヘッドレストの回動中心付近)の剛性をさらに高めることが可能になる。したがって、回動機構を、その前後厚を抑えながらも、さらに大きなトルクに耐え得るものとして、ヘッドレストの背が高い場合であっても、より好適に採用できるものとすることが可能になる。
【0015】
本発明のヘッドレストにおいては、ロックピンを、固定ブラケットの側壁部B
2,B
3に支持し、係止部X
1を、回動ブラケットの側壁部A
2,A
3に設けてもよい。また、回動ブラケットと固定ブラケットは、1組のみ設けてもよい。さらに、固定ブラケットは、主軸を介して、ヘッドレストステーやシートバックフレームに間接的に固定する構造としてもよい。
しかし、
ロックピンを、回動ブラケットの側壁部A
2,A
3に支持して、
係止部X
1を、固定ブラケットの側壁部B
2,B
3に設けるとともに、
回動ブラケット及び固定ブラケットを、ヘッドレストフレームにおける左側の縦フレーム部の下端部と右側の縦フレーム部の下端部とにそれぞれ設けて、
主軸を、左側の固定ブラケットと右側の固定ブラケットとに挿通して溶接結合し、
左側の固定ブラケットと右側の固定ブラケットとを、左右一対のヘッドレストステーにおけるそれぞれのステーの上端部、又は、シートバックに収容されたシートバックフレームの上部に対して固定する
と好ましい。
【0016】
というのも、固定ブラケットを、主軸を介して、ヘッドレストステーやシートバックフレームに間接的に固定する構造(後述する第一実施態様のヘッドレスト(
図1)を参照)を採用すると、使用時のヘッドレストに対して前方から力が加わった場合に、その力の略全てが、最終的には、主軸と固定ブラケットとの結合部分に加わるようになるため、主軸と固定ブラケットとの結合部分が捩じれて破損等する虞があるところ、上記のように、固定ブラケットをヘッドレストステーやシートバックフレームに対して直接的に固定する構造(後述する第三実施態様のヘッドレスト(
図7)を参照)を採用すると、使用時のヘッドレストに対して前方から力が加わった場合に、その力の略全てを、ヘッドレストステー又はシートバックフレームに対して固定された固定ブラケットで直接的に受けるようにし、主軸に捩じり力がかかることがなく、主軸と固定ブラケットとの結合部分に大きな負荷がかからないようにすることが可能になるからである。
【0017】
また、回動ブラケット及び固定ブラケットを1組のみ設ける構造(後述する第一実施態様のヘッドレスト(
図1)を参照)を採用すると、使用時のヘッドレストに対して後方から力が加わった場合に、その力を、回動ブラケットの側壁部A
2,A
3に設けられた計2箇所の係止部X
1で受けるようになるところ、上記のように、回動ブラケット及び固定ブラケットを左右一対に設ける構造(後述する第三実施態様のヘッドレスト(
図7)を参照)を採用すると、使用時のヘッドレストに対して後方から力が加わった場合に、その力を、左側の固定ブラケット及び右側の固定ブラケットにおけるそれぞれの側壁部B
2,B
3に設けられた計4箇所の係止部X
2で受け、より十分な強度を確保することも可能になるからである。
【0018】
さらに、回動ブラケット及び固定ブラケットを1組のみ設ける構造(後述する第一実施態様のヘッドレスト(
図1)を参照)を採用すると、ヘッドレストの本体に片当たりしたとき(左右方向片側にのみ力が加えられたとき等)に、ヘッドレストの本体の左側と右側のうち一方が前方へ移動して他方が後方へ移動する向きの捩じれが生じ得るところ、上記のように、回動ブラケット及び固定ブラケットを左右一対に設けて、それぞれの固定ブラケットを左右それぞれのヘッドレストステーに直接的に固定し、それぞれの回動ブラケットをヘッドレストフレームの左右それぞれの縦フレーム部に直接的に固定する構造(後述する第三実施態様のヘッドレスト(
図7)を参照)を採用すると、ヘッドレストの本体に片当たりしたときであっても、その捩じれを抑えることも可能になるからである。
【0019】
このように、固定ブラケットをヘッドレストステーやシートバックフレームに対して直接的に固定する構造や、回動ブラケット及び固定ブラケットを左右一対に設ける構造は、様々な利点を有しており、ヘッドレストを大型化しなくても、ヘッドレストの強度を高めることができるという効果を得ることができるものとなっている。この点、ロックピンを可動ブラケットの側壁部A
2,A
3に支持し、係止部X
1を、固定ブラケットの側壁部B
2,B
3に設けることによって、そのような構造を簡素に実現することができる。
【0020】
本発明のヘッドレストにおいて、ロック解除部材の具体的な構成は、特に限定されない。本発明のヘッドレストに係る構成は、以下のように、ロック解除部材として、ワイヤ(ロック解除ワイヤ)を用いる態様と、レバー(ロック解除レバー)を用いる態様のいずれにも採用することができる。
【0021】
ロック解除部材としてワイヤ(ロック解除ワイヤ)を用いる態様としては、以下の構成が好適である。
すなわち、
少なくとも一方が上端部を開放された中空パイプからなる左右一対のヘッドレストステーと、
シートバックの上部に固定され、ヘッドレストステーを昇降可能な状態で保持するステーホルダと、
左右一対のヘッドレストステーのうち、上端部を開放された中空パイプからなる側のヘッドレストステーの上端部に固定されたワイヤ固定部材及びワイヤ固定補助部材と、
をさらに備え、
ロックピンが、その一端側の外周面にカム部C
2を有し、
ロック解除部材が、
上端部を開放された中空パイプからなるヘッドレストステーの内部に挿通されたロック解除ワイヤと、
カム部D
1を有し、ロック解除ワイヤの上端部に固定されたロック解除プレートと、
で構成され、
使用時の上側位置にあるときに、ロック解除ワイヤを引張操作すると、ロック解除プレートのカム部D
1がロックピンのカム部C
2に作用して、ロックピンがロック解除方向に移動するようにする
構成である。
【0022】
この構成は、左右一対のヘッドレストステーを、シートバックの上部(より正確には、シートバックの上部に固定されたステーホルダ)に対して昇降可能に保持させる場合に、特に好適に採用することができる。というのも、上記の構成は、ロック解除ワイヤに固定されたロック解除プレートが、ロックピンの端部に設けられたカム部C
2に作用するようになっており、ヘッドレストを高さ調節可能な構造とした場合であっても、ロック解除ワイヤを複雑に取り回す必要がないからである。
【0023】
また、ロック解除部材としてレバー(ロック解除レバー)を用いる態様としては、以下の構成が好適である。すなわち、ロック解除部材を、ロックピンをロック解除方向に移動させるためのロック解除レバーとする構成である。ロック解除レバーは、ロックピンに対して一体的に形成されたものであってもよいし、歯車やワイヤ等の動力伝達機構を介してロックピンに間接的に連結されたものであってもよい。この構成では、ロック解除部材を非常に単純な構造とすることができる。この構成は、ヘッドレストの固定ブラケットを、シートバックの上部に対して昇降可能に保持されたヘッドレストステーの上部に固定する場合にも採用することができるが、その固定ブラケットを、シートバックフレームの上部に固定する場合にも採用することができる。
【0024】
ロック解除部材としては、上述した、ロック解除ワイヤを用いるものや、ロック解除レバーを用いるものに限定されず、押ボタンを用いるものとしたり、ストラップを用いるものとしたりすることもできる。
【0025】
ところで、本発明のヘッドレストにおいて、シートバックの上部に対してヘッドレストステーを昇降可能な構造としない場合には、
シートフレームに固定するためのシートフレームブラケットをさらに備え、
シートフレームブラケットと、固定ブラケットのうち、
又は、
シートフレームブラケットと、別途設けられた主軸ブラケットのうち、
一方に、フック部が形成され、他方に、当該フック部に嵌合可能なフック嵌合部を形成され、
フック部に対してフック嵌合部を嵌合させることによって、回動ブラケット、ヘッドレストフレーム、主軸、固定ブラケット、回動ブラケット付勢バネ、ロックピン、ロックピン付勢バネ及びロック解除部材で構成されるヘッドレストユニットをシートフレームブラケットに対して位置決めし、その状態で互いをボルトで固定できるようにする
ことも好ましい。
【0026】
これにより、ヘッドレストメーカーでユニット化して製造したヘッドレストを、アセンブリメーカーがシートバックに対して容易に組み付けることが可能になる。加えて、ヘッドレストの詳細な仕様に変更があった場合であっても、アセンブリメーカーでは、変更前のものと同様の手法で、ヘッドレストをシートバックに対して組み付けることも可能になる。また、使用時のヘッドレストをぐらつきにくくすることも可能になる。特に、使用時のヘッドレストに外力が加わった場合(特に、前方からの外力が加わった場合)に、その外力をフック部とフック嵌合部とで受けることも可能になる。