(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1開口、前記第2開口及び前記第3開口は、前記ハウジングを平面方向から見たときに、三角形の頂点にそれぞれ配置されるように構成されている請求項1記載の燃料タンク用弁装置。
前記第1開口及び前記第3開口を結ぶラインと、前記第2開口及び前記第3開口を結ぶラインとは、前記ハウジングを平面方向から見たときに、鋭角をなすように構成されている請求項2記載の燃料タンク用弁装置。
前記バイパス流路は、前記仕切壁の棚状壁部の上面から垂直方向下方に伸びており、その下端が前記燃料蒸気配管の内周に連通する形状をなしている請求項6又は7記載の燃料タンク用弁装置。
前記天井壁の内面には、前記第1溝部と前記バイパス流路との間を通り、かつ、前記燃料蒸気排出口から離れる方向に伸びるリブが形成されている請求項6〜8のいずれか1つに記載の燃料タンク用弁装置。
前記第1溝部の、前記棚状壁部上面からの深さは、前記棚状壁部と前記天井壁との間に形成された隙間の高さよりも大きく形成されている請求項1〜9のいずれか1つに記載の燃料タンク用弁装置。
前記第1溝部を、その延出方向に垂直な面で切断したときの面積は、前記第2開口の面積よりも大きく形成されている請求項1〜10のいずれか1つに記載の燃料タンク用弁装置。
前記ハウジングは、前記弁室、前記通気室、前記仕切壁、前記凹部、前記燃料蒸気排出口を有する本体部を有しており、該本体部の上方に、別体の前記天井壁が装着されるように構成されている請求項1〜11のいずれか1つに記載の燃料タンク用弁装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1〜12を参照して、本発明の燃料タンク用弁装置の一実施形態について説明する。
【0028】
図1,2に示すように、この燃料タンク用弁装置10(以下、「弁装置10」という)は、本体部17(
図2参照)と、該本体部17の上方に装着される別体の天井壁80とからなる、ハウジング15を有している。前記本体部17は、第1フロート弁30が収容される第1ケーシング20及びその下方に装着される第1キャップ25と、第2フロート弁50が収容される第2ケーシング40及びその下方に装着される第2キャップ55と、前記第1ケーシング20及び第2ケーシング40の上方に装着され両者を連結するカバー60とを有している。
【0029】
まず、第1ケーシング20、第2ケーシング40、及び、それらに収容される第1フロート弁30、第2フロート弁50等について説明する。
【0030】
第1ケーシング20は、下方が開口した円筒状の周壁21を有している。また、第1ケーシング20の上方には、第1開口23が形成された第1仕切壁22が設けられている。この第1仕切壁22の上面であって、第1開口23の外周には、環状壁22aが突設されている。また、第1ケーシング20の周壁21の外周所定箇所には、取付ブラケット27が複数設けられており、該取付けブラケットに燃料タンクに設けられた図示しない係止片が取付ブラケット27に係合することにより、燃料タンク1(
図10〜12参照)内に第1ケーシング20が取付けられるようになっている。また、第1ケーシング20の周壁21には、通孔21aが形成されている。
【0031】
上記第1ケーシング20の下方開口部には、第1キャップ25が装着されており、それによって、第1仕切壁22の下方に、第1フロート弁30が収容される第1弁室V1が画成されている(
図10参照)。なお、第1キャップ25の底面には、通孔25aが形成されている。この通孔25a及び前記通孔21aによって、第1弁室V1は、燃料タンク内に連通している。
【0032】
第1弁室V1内には、第1キャップ25との間に第1スプリングS1を介在させて、第1フロート弁30が昇降可能に収容されている。また、この第1フロート弁30の上方には、揺動可能な弁頭32が装着されている(
図10参照)。
【0033】
一方、第2ケーシング40は、下方部分が拡径し上方部分がそれよりも縮径した円筒状の周壁41を有している。この第2ケーシング40の縮径した上方部分の外周には、シールリング45が装着されている。
【0034】
また、第2ケーシング40の上方には、第2開口43が形成された第2仕切壁42が設けられている。
図10に示すように、この第2仕切壁42は、前記第1仕切壁22よりも高い位置に形成されている。また、この第2ケーシング40は、第1ケーシング20よりも小径で長さも短く形成されている。第2開口43は、第2仕切壁42の上面から筒状に突出した部分を有しており、この突出した部分に、図示しない切欠きが形成されており、後述するチェック弁56が当接した状態において(
図10及び
図11参照)、第2開口43が完全には閉塞しないようになっている。
【0035】
上記第2ケーシング40の下方開口部には、第2キャップ55が装着されており、それによって、第2仕切壁42の下方に、第2フロート弁50が収容される第2弁室V2が画成されるようになっている(
図10参照)。なお、第2キャップ55の底面には、通孔55aが形成されている。また、第2ケーシング40の周壁41の外周には、複数の係合爪44が突設されており、更に同周壁41には、第2弁室V2に連通する通孔41aが形成されている。
【0036】
第2弁室V2内には、第2キャップ55との間に第2スプリングS2を介在させて、第2フロート弁50が昇降可能に収容されている。また、第2フロート弁50の上方には、弁頭52が設けられている。
【0037】
そして、
図10に示すように、第1フロート弁30又は第2フロート弁50は、燃料が浸漬していない状態では、その自重により各スプリングS1,S2を圧縮して、各キャップ25,55上に載置され、第1開口23や第2開口43が開いた状態に保持される。
【0038】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体状の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
【0039】
上記状態で、燃料タンク内の燃料液面が上昇し、各フロート弁30,50が燃料に浸漬されると、各スプリングS1,S2の付勢力及び各フロート弁30,50自体の浮力により、各フロート弁30,50が上昇するようになっている(
図10及び
図11参照)。
【0040】
そして、第1フロート弁30は、燃料タンク内の液面が設定された満タン液面に達すると、第1開口23を閉塞して、それ以上の過給油を防止する満タン規制弁をなし、第2フロート弁50は、燃料の揺動等によって燃料タンク内の液面が異常に上昇したときに、第2開口43を閉塞して、燃料の外部漏出を防ぐ燃料流出防止弁をなしている。
【0041】
また、前記第2ケーシング40の周壁41の縮径した上方部分には、複数の通孔58aを有する蓋体58が装着されており、その内側であって第2仕切壁42の上方には、円盤状をなし、複数の通孔56aを設けたチェック弁56が収容されている。
【0042】
このチェック弁56は、第1フロート弁30によって第1開口23が閉塞された状態で、燃料タンク内の圧力低下時に、蓋体58の通孔58a、チェック弁56の通孔56a、第2開口43の図示しない切欠きを通じて、空気を燃料タンク内に流入する一方、燃料タンク内の圧力増大時に上昇して第2開口43を開いて、燃料蒸気を燃料タンク外に排出するものである。
【0043】
次に、上記第1ケーシング20及び第2ケーシング40の上方に装着されて、両者を互いに連結して一体化させるカバー60、及び、その上方に装着される天井壁80について説明する。
【0044】
図3に示すように、前記カバー60は、略円筒状をなす第1筒部61と、同じく略円筒状をなす第2筒部62と、第1筒部61及び第2筒部62の間に配置され両筒部61,62どうしを接続する棚状壁部63とを有している。なお、第1筒部61の方が第2筒部62よりも拡径しており、更に第1筒部61の方が第2筒部62よりも下方に向けて長く伸びている。
【0045】
前記第2筒部62の内部には、前記第2ケーシング40の周壁41の縮径した上方部分が挿入されて、その上端側内周に第2開口43を有する第2仕切壁42が配置されるようになっている(
図10参照)。
【0046】
一方、第1筒部61の下方には、前記第1ケーシング20の周壁21の上方部分が装着されて、第1筒部61の下端開口部に、第1開口23を有する第1仕切壁22が配置されるようになっており、この第1開口23の周縁に、前記棚状壁部63よりも低く形成された凹部64が設けられている(
図10参照)。すなわち、この凹部64は通気室の一部を画成すると共に、該凹部64の底部に第1開口23が形成され、該第1開口23は棚状壁部63よりも低くなっている。
【0047】
また、前記棚状壁部63は、第2筒部62側の第2仕切壁42に設けた第2開口43の周縁から、第1筒部61側の第1仕切壁22の第1開口23周縁に設けた前記凹部64内周に至るように伸びている(
図5及び
図6参照)。更に、棚状壁部63と、カバー60の上方に装着される天井壁80との間には、隙間R3が形成されるようになっている(
図7及び
図9〜12参照)。なお、両筒部61,62の上部外周及び棚状壁部63の外周には、溶着溝65が形成されている(
図3(a)参照)。
【0048】
図3(a)に示すように、前記第1筒部61の下端外周縁からは、フランジ部66が延設され、その裏側周縁には、環状の溶着突部66aが突設されている(
図3(b)参照)。このフランジ部66を第1ケーシング20の周壁21の上方に配置すると共に、溶着突部66aを第1仕切壁22の環状壁22aの外周に配置し、溶着突部66aを第1仕切壁22の上面に溶着させることで、第1ケーシング20がカバー60に連結される(
図10参照)。
【0049】
一方、第2筒部62の外周からは、係合孔68aを有する係合片68が、下方に向けて複数延出している。この第2筒部62内に、第2ケーシング40の周壁41の縮径した上方部分を挿入し、各係合爪44を係合片68の各係合孔68aに係合させることで、第2ケーシング40が、シールリング45を介して気密的にカバー60に連結される(
図10参照)。
【0050】
なお、各ケーシング20,40のカバー60への連結方法は、上記態様に限定されるものではない。
【0051】
前記カバー60は、上記のように各ケーシング20,40が連結されることで、各筒部61,62の下方開口が各仕切壁22,42により覆われ、上方に天井壁80が装着されることで、各筒部61,62の上方開口が覆われると共に、前記棚状壁部63の上方が覆われる。
【0052】
それによって、第1筒部61内に設けられ前記第1弁室V1の上方に配置された第1通気室R1と、第2筒部62内に設けられ前記第2弁室V2の上方に配置された第2通気室R2と、第1通気室R1と第2通気室R2とに連通する前記隙間R3とからなる、本発明における「通気室」が画成される。なお、本実施形態においては、
図10に示すように、第1弁室V1及び第2弁室V2が水平方向に並んで(横並びに)配置されている。
【0053】
また、上記のようにカバー60に各ケーシング20,40が装着されることによって、
図6に示すように、第1ケーシング20の第1仕切壁22と、第2ケーシング40の第2仕切壁42との間に、両仕切壁22,42を連設する前記棚状壁部63が配置される。この実施形態では、これらの第1仕切壁22、第2仕切壁42及び棚状壁部63が、本発明における「仕切壁」をなしている。
【0054】
更に、
図3(a)、
図5及び
図6に示すように、棚状壁部63の上面には、第2仕切壁42の第2開口43側から、第1開口23の凹部64内周に連通するように伸びる第1溝部70が形成されている。この第1溝部70の上方に、棚状壁部63との間に隙間R3を介して前記天井壁80が装着されるようになっている(
図7及び
図10参照)。なお、第1溝部70は、その一端部が前記第1通気室R1に連通し、他端部が前記第2通気室R2に連通し、更に上方が前記隙間R3に連通するようになっている(
図10参照)。
【0055】
図6に示すように、この第1溝部70は、弁装置10を平面的に見たときに(仕切壁に対向する方向から見たときに)、第2開口43側から第1開口23側に向かう経路L(第2開口43の中心から第1開口23の中心へと向かう経路)に対して、後述する燃料蒸気排出口71と反対側に位置して、経路Lとほぼ平行となるように直線状に形成されている。
【0056】
また、
図7(b)に示すように、第1溝部70の、棚状壁部63の上面からの深さD1は、棚状壁部63と天井壁80との間に形成された隙間R3の高さD2よりも大きく形成されている。第1溝部70の深さD1は、2.5〜3.5mmであることが好ましく、また、隙間R3の高さD2は、0.3〜0.8mmであることが好ましい。なお、
図7(a)においては、後述する燃料蒸気配管73や燃料蒸気排出口71を、便宜上省略している。
【0057】
更に
図7(b)に示すように、第1溝部70を、その延出方向に垂直な面で切断したときの面積A1は、第2仕切壁42に形成された第2開口43の面積A2よりも大きく形成されている。なお、第1溝部70の面積A1は、第2開口43の面積A2に対して1.5〜20倍であることが好ましく、3〜7倍であることがより好ましい。
【0058】
また、この実施形態における第1溝部70の内周形状は、曲面状をなしているが(
図5及び
図7参照)、角形状やV溝状等をなしていてもよく、特に限定はされない。更に、第1溝部70は、棚状壁部63上に複数形成してもよい。
【0059】
ところで、燃料タンク内に燃料が所定量貯留され、満タン規制弁たる第1フロート弁30が上昇して第1開口23が閉塞した状態では、燃料タンク内の燃料蒸気や空気等は、主として、第2弁室V2、第2開口43、第2通気室R2、第1溝部70や隙間R3を順次通過して、第1通気室R1へと流動するようになっており、この流路をエバポラインとする。前記第1溝部70は、このエバポラインの一部を構成するものとなっている。
【0060】
また、この弁装置10は、通気室に連通するように燃料蒸気排出口が形成されている。
図10〜12に示すように、第1筒部61内であって前記凹部64の内周の所定位置には、第1通気室R1に連通する燃料蒸気排出口71(以下、「排出口71」という)が形成されている。この実施形態における排出口71は、前記経路Lに対して前記第1溝部70とは反対側に形成されている(
図6参照)。なお、排出口71の形成位置に特に限定はない。
【0061】
更に上記排出口71及び前記第1通気室R1に連通するように、燃料タンク外に配置される配管との接続用の、燃料蒸気配管73(以下、「配管73」という)が、前記経路Lに対して鋭角状をなすように第1筒部61の外周に接続されている。
図9〜12に示すように、この配管73は、前記棚状壁部63の下方を通って水平方向に伸びており、その基端部は棚状壁部63の下面に接合されている。なお、配管73は、少なくとも一部が棚状壁部63の下方を通るように設けられていることが好ましいが、そのような形状に限定されるわけではない。また、第1筒部61の外周に対する配管73の接続角度は特に限定はない。
【0062】
また、
図5、
図6及び
図9に示すように、ハウジング15を構成するカバー60には、一端が棚状壁部63に開口して前記隙間R3に連通し、他端が前記配管73の内周に開口して連通したバイパス流路78が設けられている。
【0063】
図9に示すように、この実施形態では、バイパス流路78は、棚状壁部63の上面から垂直方向下方に向けて伸びており、その下端が、棚状壁部63の下面に接合された前記配管73の基端部内周に連通する形状をなしている。この実施形態におけるバイパス流路78は、細長く垂直に伸びる角孔状をなしているが、例えば、円形孔状や楕円孔状等をなしていてよく、特に限定はない。
【0064】
なお、バイパス流路78は、棚状壁部63に設けられた開口と、配管73の内周に設けられた開口とを、管状の部材等を介して連結した構造等で構成してもよい。
【0065】
また、
図3(a)、
図6、
図8及び
図9に示すように、前記第1筒部61の内周面からは、前記排出口71を囲む筒状壁74が突設され、該筒状壁74の外周面と天井壁80の内面との間に空隙C1が形成されている(
図8参照)。
【0066】
更に
図3(a)、
図5、
図6、
図8に示すように、前記棚状壁部63の上面であって、前記第1溝部70と前記排出口71との間には、リブ挿入溝75が形成されている。このリブ挿入溝75は、その上方が前記隙間R3に連通し、一端部が第1通気室R1と連通し、かつ、前記第1溝部70に対して所定角度で斜めに形成されている(
図5及び
図6参照)。
【0067】
また、
図3(a)、
図5及び
図6に示すように、前記第1筒部61の内周であって、前記筒状壁74の周方向両側には、第1通気室R1の上下方向に沿って伸びる一対の縦リブ76,76が設けられている。各縦リブ76は、その下端部76aが、第1通気室R1の内径方向に向けてL字状に延出した形状をなし(
図5及び
図10参照)、それらの先端が第1仕切壁22の第1開口23の内周縁よりも内径側に突出するように伸びている(
図6参照)。更に、
図3(b)及び
図6に示すように、第1筒部61の下端内周からは、前記縦リブ76,76に対して均等な間隔をあけて、横リブ77が第1通気室R1の内径方向に向けて延出しており、その先端は第1開口23の内周縁よりも内径側に突出している。
【0068】
以上説明したように、各構成部材(第1ケーシング20、第1キャップ25、第2ケーシング40、第2キャップ55、カバー60)からなる本体部17は、弁室(第1弁室V1、第2弁室V2)、通気室(第1通気室R1、第2通気室R2、隙間R3)、仕切壁(第1仕切壁22、第2仕切壁42、棚状壁部63)、凹部64、排出口71を有している。
【0069】
また、上記カバー60の上方に装着される天井壁80は、
図1及び
図4に示すように、前記カバー60の上面開口部に適合する長板状をなしている。この天井壁80の内面であって、第2ケーシング40側の一端部には、第2ケーシング40上方に装着される蓋体58との干渉を防ぐ、円形状の凹部82が形成されている。
【0070】
この天井壁80の内面周縁からは、環状の溶着突部81が突設されており、該溶着突部81を前記カバー60の上面の溶着溝65に挿入して溶着させることで、前記棚状壁部63の上方に天井壁80が配置され、棚状壁部63との間に隙間R3が形成されるようになっている。
【0071】
すなわち、この実施形態においては、本体部17とは別体の天井壁80を、本体部17の上方に装着することで、棚状壁部63(本発明における「仕切壁の壁部」)と天井壁80との間に隙間R3が形成されるようになっているので、隙間R3の高さを調整しやすくなり、小さい隙間R3であっても容易に形成することができる。
【0072】
なお、カバー60に対する天井壁80の装着構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0073】
そして、前記第1通気室R1上に配置される天井壁80の内面には、前記第1溝部70と前記バイパス流路78との間を通り、かつ、前記排出口71から離れる方向に伸びるリブ83が設けられている(
図5及び
図6参照)。
【0074】
図4〜6に示すように、このリブ83は、第1リブ84と第2リブ85とを有している。前記第1リブ84は、基端側が低く、それ以外の部分が高く立設した略L字形の板状をなし(
図4参照)、他の部分よりも低く形成された基端84aが前記リブ挿入溝75に挿入され、先端84bが排出口71から離れるようにR状に屈曲した形状となっている。一方、第2リブ85は、前記第1リブ84に対してほぼ直交して直線状に伸びている。また、前記第2リブ85の基端側からは、前記排出口71側に向けて、同一幅の延長リブ87が延長線上に伸びている。更に、この延長リブ87から所定隙間を空けた位置であって、前記第1リブ84に対して所定角度傾斜した位置には、前記筒状壁74の開口部側に配置される、長板状のカバー壁89が垂設されている。
【0075】
そして、カバー60の上方に天井壁80が装着された状態で、
図5及び
図6に示すように、前記リブ83は、第1溝部70と排出口71との間を通るように、かつ、第1溝部70の第1通気室R1側の開口をカバーするように配置されると共に、前記カバー壁89が、前記筒状壁74の開口部側に配置されるようになっている。
【0076】
なお、上記各リブ83、87及びカバー壁89の形状は、特に限定されるものではない。
【0077】
ところで、燃料タンク内への給油時に燃料タンク外へと排出される、燃料タンク内の空気や燃料蒸気は、主として、第1弁室V1、第1開口23を通過して、第1通気室R1に流入し、更に排出口71から配管73へと流入して、配管73に接続されたキャニスタ等へ排出されるようになっており、この流路をベントラインとする。
【0078】
また、本実施形態における弁装置10は、2つのフロート弁30,50を備えるものであるが、フロート弁が1つの弁装置に適用してもよい。
【0079】
次に、上記構成からなる本発明の弁装置10の作用効果について説明する。
【0080】
図10に示すように、燃料タンク内への燃料が十分に給油されておらず、第1フロート弁30又は第2フロート弁50が燃料に浸漬していない状態では、第1開口23や第2開口43が開いている。
【0081】
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、前記ベントライン(第1弁室V1、第1開口23、第1通気室R1、排出口71、配管73)を通って、燃料タンク内の空気や燃料蒸気が燃料タンク外のキャニスタ等に排出される。
【0082】
そして、燃料タンク内に燃料が給油されて、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、燃料が、第1キャップ25の通孔25aや第1ケーシング20の通孔21aを通って第1弁室V1内に流入し、第1フロート弁30に燃料が所定高さ以上浸漬すると、第1スプリングS1及び第1フロート弁30自体の浮力により、第1フロート弁30が浮き上がり、
図11に示すように、弁頭32が第1仕切壁22の第1開口23を閉塞するので、燃料タンク内の空気や燃料蒸気の排出量が低下して、それ以上の燃料給油を防止することができる。
【0083】
また、車両が旋回したり大きく傾いたりして、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、燃料が、第2キャップ55の通孔55aや第2ケーシング40の通孔41aを通って第2弁室V2内に流入し、第2フロート弁50に燃料が所定高さ以上浸漬すると、第2スプリングS2及び第2フロート弁50自体の浮力により、第2フロート弁50が浮き上がり、
図12に示すように、弁頭52が第2仕切壁42の第2開口43を閉塞するので、燃料が第1開口43を通って第2通気室R2内に流入することが阻止されて、燃料タンク外への燃料漏れを防止することができる。
【0084】
ところで、車両が悪路を走行して上下に振動したり左右に揺動したり、或いは、急旋回したりした場合、第2フロート弁50の上昇による第2開口43の閉塞が間に合わずに、燃料や燃料の飛沫が、第2開口43から第2通気室R2内に勢いよく流入することがある。
【0085】
このとき、第2通気室R2内に流入した燃料は、棚状壁部63と天井壁80との間に形成された隙間R3には入り込みにくく、もっぱら棚状壁部63に形成された第1溝部70を集中的に流れて、第1通気室R1内に入り込むこととなる。そして、第1通気室R1に入り込んだ燃料は、
図6、
図7(a)及び
図11に示すように、リブ83によって、排出口71から離れた方向へ流れるように案内されると共に、同リブ83をつたって、第1開口23の周縁の凹部64に落下する(
図6及び
図11参照)。その後、燃料は、第1開口23を通過して第1弁室V1内に流入し、第1ケーシング20の通孔25a等を通じて燃料タンク内に戻されるので、第1通気室R1に流入した燃料を、排出口71に流入しにくくして、配管73に流入することを抑制することができる。
【0086】
このとき、この実施形態においては、天井壁80の内面には、第1溝部70とバイパス流路78との間を通り、かつ、前記排出口71から離れる方向に伸びるリブ83が形成されているので、第2開口43から第2通気室R2内に流入して第1溝部70を流れる燃料を、排出口71から離れる方向に流動させることができ、燃料を排出口71により流入しにくくすることができる。
【0087】
なお、この実施形態では、天井壁80側に設けたリブ83に連設したカバー壁89が、筒状壁74の開口部側に配置されているので、排出口71への燃料の流入をより効果的に抑制することができる。
【0088】
一方、第1フロート弁30が上昇して、第1仕切壁22の第1開口23が閉塞された状態で、燃料タンク内の圧力が上昇すると、第2仕切壁42の第2開口43から燃料蒸気が第2通気室R2内に流入する。このとき、この弁装置10においては、仕切壁を構成する棚状壁部63と天井壁80との間に隙間R3が形成されているので、
図7(a)に示すように、燃料蒸気はこの隙間R3を通って第1開口23の周縁の凹部64に流入し、該凹部64の内周に設けた排出口71に流入して、配管73から排出することができる。
【0089】
上記のように、この弁装置においては、棚状壁部63に形成した第1溝部70によって、液体状の燃料を流通させ、棚状壁部63と天井壁80との間に形成された隙間R3によって、燃料蒸気を流通させることができ、液体状の燃料や燃料蒸気の性質に応じて、好ましい流通路が選択されて、液体状の燃料や燃料蒸気をスムーズに流通させることができる。
【0090】
このとき、この実施形態においては、排出口71は、凹部64の内周の周方向において、第1溝部70とは異なる位置に形成されているので、第1溝部70を流れて第1通気室R1内に流入した燃料を、排出口71に流入しにくくすることができ、配管73への燃料の流入をより効果的に抑制することができる。
【0091】
また、この実施形態においては、前述したように、第1溝部70の、棚状壁部63の上面からの深さDは、棚状壁部63と天井壁80との間に形成された隙間R3よりも大きく形成されているので(
図7(a)参照)、第2開口43から第2通気室R2内に流入した燃料が第1溝部70を流れるときに、より集中的に流すことができる。
【0092】
更にこの実施形態においては、第1溝部70を、その延出方向に垂直な面で切断したときの面積A1は、第2仕切壁42に形成された第2開口43の面積A2よりも大きく形成されているので(
図7(a)参照)、第2開口43から第2通気室R2内に流入した燃料を、第1溝部70に効果的に集めて、より一層集中的に流すことができる。
【0093】
上記のように、この弁装置10においては、燃料蒸気は、棚状壁部63と天井壁80との間の隙間R3を通って、第1開口23の周縁の凹部64に流入し、凹部64内周の排出口71に流入して配管73から排出される。
【0094】
しかしながら、例えば、車両を坂道や傾斜路等に駐車したときや、車両が長い坂道等を走行中のときのように、車両が傾斜した状態となった場合には、凹部64が液没して前記排出口71が塞ってしまって、燃料蒸気を配管73から逃がすことができなくなる。これに対してこの弁装置10によれば、そのような場合であっても、一端が棚状壁部63に開口して隙間R3に連通し、他端が配管73の内周に開口して連通したバイパス流路78が設けられているので、燃料蒸気をバイパス流路78を通して配管73に流入させて排出することができる(
図5、
図6及び
図9参照)。また、バイパス流路78の一端は、棚状壁部63上の隙間R3に開口しているので、液体状の燃料を流入させにくくすることができる。
【0095】
また、この実施形態によれば、配管73は、少なくとも一部が棚状壁部63の下方を通るように設けられているので、前記経路Lに対して鋭角状をなして第1筒部61に接続された配管73に対して、比較的短い経路で、バイパス流路78の一端と他端とを連通させることができ、バイパス流路78を形成しやすくすることができる。
【0096】
更にこの実施形態によれば、バイパス流路78は、棚状壁部63の上面から垂直方向下方に伸び、その下端が配管73の内周に連通する形状をなしているので(
図9参照)、ハウジング成形型(ここではカバー60成形用の型)の抜型方向に沿ってバイパス流路78を形成することができ、型構造を簡単にして、製造コストの低減を図ることができる。
【0097】
図13〜19には、本発明の燃料タンク用弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0098】
この実施形態の燃料タンク用弁装置10A(以下、「弁装置10A」という)は、前記実施形態とは、主として、ハウジングを構成するカバー及びその上方に装着される天井壁の構造が異なっている。
【0099】
すなわち、この実施形態のカバー60Aは、前記実施形態とは、排出口71の形成位置及び配管73の接続角度が異なっている。
図15、
図17及び
図18に示すように、カバー60Aにおける排出口71は、凹部64の内周の周方向において、前記第1溝部70とは異なる位置(この実施形態では、第1溝部70に対向する位置)に形成されている。また、
図18に示すように、弁装置10Aを平面的に見たときに、第2開口43側から第1開口23側に向かう経路Lの延長線上となるように、カバー60の第1筒部61の外周に配管73が接続されている。更に、この実施形態の天井壁80Aは、
図16に示すように、前記実施形態のようなリブ83やカバー壁89等のない、長板状をなしている。
【0100】
そして、この実施形態においても、第2開口43から第2通気室R2内に流入した燃料について、棚状壁部63に形成した第1溝部70によって、液体状の燃料を流通させ、棚状壁部63と天井壁80との間に形成された隙間R3によって、燃料蒸気を流通させることができ、液体状の燃料や燃料蒸気をスムーズに流通させることができる。
【0101】
図20〜30には、本発明の燃料タンク用弁装置の、更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0102】
この実施形態の燃料タンク用弁装置10B(以下、「弁装置10B」という)は、主として、カバー60Bの形状が前記実施形態と異なっており、また、これに合わせて第1ケーシング20B、第2ケーシング40B、天井壁80Bの形状も異なっている。
【0103】
まず、第1ケーシング20B及び第2ケーシング40Bについて説明する。すなわち、前記第1ケーシング20Bは、第1仕切壁22の外周縁から、環状のフランジ24が突設されており、該フランジ24の外周縁から環状壁24aが突設されている。
【0104】
また、
図25に示すように、第2ケーシング40の第2開口43の、筒状の突出部分43aに形成された切欠き43bは、第2筒部62の、第1開口23側に向けて形成された切欠き62a(後述する)とは、反対向きに位置するように配置されている。また、第2ケーシング40Bの周壁41から突設した各係合爪44の下方には、略コ字状をなした保持枠46が設けられている。
【0105】
一方、この実施形態におけるカバー60Bは、
図22(a)に示すように、棚状壁部63Bと、該棚状壁部63Bの周縁から立設した枠状の外壁65Bとを有しており、下方及び外周に壁部があり、上方が開口した薄型箱状をなしている。また、前記外壁65Bの外周には、天井壁80Bとの溶着用の溶着溝67aが形成され、該溶着溝67aを介して、外壁65Bの外周には、同外壁65Bよりも高さの低い環状壁部67が設けられている。
【0106】
なお、
図26〜29に示すように、カバー60Bの上方に天井壁80Bが装着された状態では、外壁65Bと、天井壁80Bの内面(通気室の天井面を意味する。以下同様)との間には、所定隙間R3が形成されるようになっている。また、前記外壁65Bは、第1フロート弁30が収容される第1弁室V1、第2フロート弁50が収容される第2弁室V2、及び第3開口71Bを囲むように配置されている。
【0107】
図25を併せて参照すると、前記棚状壁部63Bは、ハウジング15を構成するカバー60Bを平面方向から見たときに、略三角形状をなしており、各頂点が円弧状に丸みを帯びた形状となっている。
【0108】
図22(b)、
図26及び
図27に示すように、略三角形状をなした棚状壁部63Bの頂点の一つには、前記第1開口23の周囲に配置されるように、略円筒状をなした第1筒部61が下方に向けて延設されている。この第1筒部61は、棚状壁部63Bに対して直交する方向に開口しており、カバー60Bを平面方向から見たときに、第1筒部61の下方部分を視認可能となっている。
【0109】
そして、第1筒部61のフランジ部66裏側の溶着突部66aを、
図26及び
図27に示すように、前記第1ケーシング20Bの第1仕切壁22の環状壁22aの外径側で、且つ、フランジ24の環状壁24aの内径側に配置して、その箇所で第1仕切壁22の上面に溶着させることで、第1ケーシング20Bがカバー60Bに連結されるようになっている。
【0110】
その結果、第1筒部61の下方開口部に、前記第1ケーシング20Bの第1仕切壁22が配置されると共に、同第1筒部61の中心に第1開口23が配置されるようになっており、
図25に示すように、カバー60Bを平面方向から見たときに、第1筒部61を介して、カバー60Bの三角形の頂点の1つに第1開口23が配置されるようになっている。
【0111】
図22(a)、
図24、
図25及び
図27に示すように、略三角形状をなした棚状壁部63Bの頂点のもう一つには、前記第2開口43の周囲に配置されるように、円筒状をなした第2筒部62が設けられている。この第2筒部62は、棚状壁部63Bの上面(天井壁80側の面)から、天井壁80の天井面との間に所定隙間R3を設けるように、前記外壁65Bと同じ高さで上向きに突出すると共に、棚状壁部63Bの下面(第1ケーシング20B及び第2ケーシング40B側の面)から所定長さで下向きに突出している。また、第2筒部62は、前記棚状壁部63Bに対して直交する方向に開口しており、カバー60Bを平面方向から見たときに、第2筒部62の下方部分を視認可能となっている。
【0112】
また、
図22、
図24及び
図25に示すように、第2筒部62の上方部分であって、前記第1開口23側の周面には、通気室に連通する切欠き62aが形成されている。この切欠き62aは、第2開口43の上方突出部に設けた切欠き43bに対して、反対向きに配置されている(
図25参照)。
【0113】
更に
図22(b)に示すように、この実施形態においては、各係合片68の上下方向に沿って、一対の係合孔68a,68aが形成されており、第2ケーシング40Bの周壁41の縮径した上方部分を、第2筒部62の下方突出部内周に挿入していくと、各係合片68の係合孔68a,68aに、第2ケーシング40Bの係合爪44が順次係合していき、上方の係合孔68aに係合爪44が係合することで、第2ケーシング40Bが、シールリング45を介して気密的にカバー60Bに連結されるようになっている(
図27及び
図28参照)。なお、係合片68の先端部は、第1ケーシング20Bの周壁21に設けた保持枠46内に挿入されて、その拡開が規制されるようになっている(
図21参照)。
【0114】
そして、第2筒部62の下方開口部に、前記第2ケーシング40Bの第2仕切壁42が配置されると共に、同第2筒部62の中心に第2開口43が配置されるようになっており、
図25に示すように、カバー60Bを平面方向から見たときに、第2筒部62を介して、カバー60Bの三角形の頂点の1つに第2開口43が配置されるようになっている。
【0115】
図22(a)、
図24及び
図25に示すように、三角形状の棚状壁部63Bの頂点の更にもう一つには、燃料蒸気排出口をなす、丸孔状の第3開口71Bが設けられている。この第3開口71Bは、前記棚状壁部63Bに対して直交する方向に開口している。また、
図25に示すように、カバー60Bを平面方向から見たときに、上記第3開口71Bは、前記棚状壁部63Bの、第1開口23が配置される凹部64から離間した位置に形成されている。
【0116】
そして、
図22及び
図26に示すように、この第3開口71Bの、棚状壁部63Bの下面側周縁からは、ハウジング15の下方に向けて配管73が延設されている。
【0117】
以上説明したように、この実施形態の弁装置10Bにおいては、第1開口23、第2開口43及び第3開口71Bは、ハウジング15を構成するカバー60Bを平面方向から見たときに、カバー60Bの略三角形状をなした棚状壁部63Bの、三角形の頂点にそれぞれ配置されるように構成されている(
図25参照)。
【0118】
図25に示すように、カバー60Bを平面方向から見たとき、第1開口23の中心と第3開口71Bの中心とを結ぶラインをL1とし、第1開口23の中心と第2開口43の中心とを結ぶラインをL2とし、第2開口43の中心と第3開口71Bの中心とを結ぶラインをL3とする。そして、この実施形態では、カバー60Bを平面方向から見たときに、前記ラインL1と前記ラインL3との角度θは、鋭角をなすように構成されている。なお、この実施形態では、前記ラインL1と前記ラインL2との角度も、鋭角をなしており、前記ラインL2と前記ラインL3との角度は、ほぼ直角とされている。
【0119】
また、
図22(a)、
図24及び
図25に示すように、第2開口43及び第3開口71Bを結ぶラインL3の間には、通気室の高さ方向上方の隙間R3(
図26〜29参照)を狭くするように、通気室の底面(棚状壁部63Bの上面)から、第1障壁69が天井壁80の天井面に当接しない高さで立設されている。
【0120】
この第1障壁69は、その基端部が、外壁65Bの、第2筒部62と第3開口71Bとの間の壁面に連結されて、その先端部が、凹部64の内周縁に至るように、第1開口23側に向けて伸びた形状をなしている。また、第1障壁69は、その中間部よりもやや凹部64寄りの位置において、円筒状をなした第2筒部62との間隔がほぼ一定になるように、曲面状に出っ張った形状をなしている。更に第1障壁69の先端には、前記凹部64及び通気室を構成する前記隙間R3に連通するように、凹溝状のリブ挿入溝75が形成されている。なお、この実施形態の第1障壁69は、カバー60Bを平面方向から見たときに、モンキーレンチのような形状をなしているが、第2開口43及び第3開口71Bを結ぶラインL3の間に配置されるものであれば、その形状は特に限定されない。
【0121】
また、
図22(a)、
図24及び
図25に示すように、カバー60Bと天井壁80Bとの間には、上記第1障壁69を境界にして、第2開口43から凹部64に連通するように伸び、前記第1開口23に至る第1溝部70と、第1開口23から第3開口71Bに至るように、凹部64と第3開口71Bとを連通するように伸びる、第2溝部72とが形成されている。これらの第1溝部70や第2溝部72は、概ね前記ラインL2や前記ラインL1に沿って形成されている。更に
図28及び
図29に示すように、これらの第1溝部70及び第2溝部72の底面(棚状壁部63Bの上面)は、前記第1障壁69の上端面よりも低く形成されている。
【0122】
また、第2溝部72の底面、すなわち、棚状壁部63Bの、第2溝部72が形成された部分の上面には、高さの異なる複数の底面が設けられている。すなわち、
図22(a)、
図24及び
図26に示すように、この第2溝部72の底面は、第1開口23側に配置された第1底面72aと、該第1底面72aから連続して第3開口71B側に形成され、第1底面72aよりも高い第2底面72bと、該第2底面72bから連続して、第2底面72bよりも低く且つ第1底面72aより高く形成され、前記第3開口71Bが設けられた第3底面72cとから構成されている。
【0123】
図22(b)、
図25及び
図26に示すように、第2溝部72を形成する壁面であって、前記凹部64側の端部には、凹部64の内径方向に向かって突出する、ひさし状壁部79が形成されている。このひさし状壁部79は、凹部64の周方向に沿って所定幅で形成された、円弧形のリブ状をなしている。また、
図22(b)、
図25及び
図26に示すように、このひさし状壁部79の周方向(幅方向)両側には、凹部64の内径方向に向かって、前記一対の縦リブ76,76が突設されている。
【0124】
図22、
図24及び
図25に示すように、通気室の外周には、第1弁室V1及び第2弁室V2を囲むように配置された外壁65Bよりも、外径方向に向けて突出するフランジ部79Bが設けられている。この実施形態のフランジ部79Bは、
図22(a)に示すように、外壁65Bよりも更に外周に形成された環状壁部67の外周縁から、外径方向に向かって所定長さで張り出している。
【0125】
上記フランジ部79Bを設けたことにより、
図22(b)に示すように、仮想線で示す壁部7によって、第1筒部61及び第2筒部62を囲むことができ、ひいては、第1筒部61に連通した第1弁室V1を有する第1ケーシング20B全体や、第2筒部62に連通した第2弁室V2を有する第2ケーシング40B全体を、前記壁部7で囲むことが可能となっている。
【0126】
以上説明したカバー60Bの上方に装着される天井壁80Bは、
図20及び
図23に示すように、略三角形状をなした前記カバー60Bの上面開口部に適合するように、各頂点が円弧状に丸みを帯びた略三角形の板状をなしている。また、天井壁80Bの外周縁は、下方に向けて緩やかに屈曲した形状をなしている。
【0127】
更に
図23〜25に示すように、前記第2開口43及び前記第3開口71Bを結ぶラインL3の間には、通気室の底面(棚状壁部63Bの上面)との間に所定隙間C2(
図27及び
図28参照)を設けて、通気室の天井面、すなわち、天井壁80Bの内面から、第2障壁90が垂設されており、該第2障壁90が、前記カバー60Bの棚状壁部63Bから立設した第1障壁69に隣接して配置されている。この第2障壁90は、第2開口43から通気室内に流入した燃料を、第3開口71Bに流入しにくくさせるものである。
【0128】
図25に示すように、この実施形態における第2障壁90は、前記第1障壁69に対応して、その基端部が、前記カバー60Bの外壁65Bの、第2筒部62と第3開口71Bとの間の壁面に近接して配置されていると共に、第1障壁69に沿って直線状に伸びており、その中間部よりもやや先端寄りの部分が、第1障壁69の曲面状の出っ張り部分や第2筒部62の外周面に適合するように、第2筒部62側に向けて緩やかにカーブした屈曲形状をなしており、更に先端部が折り返されて、第1開口23と第2開口43とを結ぶラインL2に沿って、凹部64に向けてほぼ直線状に伸びており、その最先端が凹部64の内周縁よりもやや内径側に突出するように配置されている。また、この第2障壁90は、前記第1障壁69に対して、ほぼ一定間隔の隙間を維持しつつ隣接配置されている(
図25参照)。
【0129】
なお、上記のような形状をなした第2障壁90は、
図29に示すように、カバー60B側に設けた第1障壁69と相俟って、隙間R3や隙間C2が上下に交互に配置された、迷路のようなラビリンス構造を形成している。
【0130】
また、上記第2障壁90に隣接した位置であって、前記天井壁80の内面からは、第2開口43から通気室内に流入した燃料を凹部64内へと案内するための、ガイドリブ91(
図24及び
図26参照)が垂設されている。
【0131】
図23〜25に示すように、このガイドリブ91は、前記第2障壁90の先端部に所定長さ重なるように配置されると共に、前記カバー60Bのリブ挿入溝75に挿入される、第1リブ91aと、該第1リブ91aに対してほぼ直角に形成されると共に、第1開口23と第2開口43とを結ぶラインL2の途中であって、前記第1溝部70の、第1開口側の開口よりも、凹部内方側に配置されて、同開口を所定範囲カバーする第2リブ91bとからなる。これらのリブ91a,91bは、前記第1障壁90よりも長く立設されている。また、前記第1リブ91aが、リブ挿入溝75に挿入されて入り込んだ部分には、
図29に示すように、第1リブ91aとリブ挿入溝75の内面との間に、凹状の隙間が形成されるようになっている。なお、このガイドリブ91は、第2筒部62の切欠き62aから第1溝部70内に流入した燃料が、凹部64内へ流入しようとするときに、同燃料を第1リブ91aや第2リブ91bに衝突させて、凹部64内に落下させやすくするものである。
【0132】
更に、天井壁80Bの内面(通気室の天井面)からは、第1開口23や凹部64を通じて、通気室内に入り込んだ燃料が、第3開口71Bへと流入するのを抑制するための、流入抑制リブ92が垂設されている。この流入抑制リブ92は、第1開口23と第3開口71Bとを結ぶラインL1の途中であって、前記第2溝部72の、第1開口側の開口よりも、凹部内方側に配置されて、同開口を所定範囲カバー可能なように、天井壁80の内面から垂設されている。また、この流入抑制リブ92に隣接した位置には、同流入抑制リブ92と同じく、通気室内に入り込んだ燃料を、第3開口71Bへと流入するのを抑制するための、補助リブ92aが天井壁80の内面から垂設されている。なお、これらのリブ92,92aは、前記第2障壁90及び前記ガイドリブ91よりも長く立設されている。
【0133】
次に、この実施形態の弁装置10Bの作用効果について説明する。
【0134】
すなわち、車両が傾斜して、凹部64が液没した状態となっても、棚状壁部63Bの凹部64から離間した位置に、燃料蒸気排出口をなす第3開口71Bが設けられているので、燃料タンク内の燃料蒸気を、棚状壁部63Bと天井壁80との隙間R3を通して、第3開口71Bへと排出することができ、前記実施形態の弁装置10の、燃料蒸気排出用のバイパス流路78を別途設ける必要がなく、弁装置10Bの構造を簡略化することができる。
【0135】
また、この弁装置10Bは、第1ケーシング20に設けられた取付ブラケット27を介して、装置全体が燃料タンク1の内部に取付けられるようになっているが、この実施形態においては、第1開口23、第2開口43、及び、燃料蒸気排出口をなす第3開口71Bは、ハウジング15を構成するカバー60Bを平面方向から見たときに、略三角形状をなした棚状壁部63Bの、三角形の頂点にそれぞれ配置されるように構成されているので(
図25参照)、これらの開口が直線上に配置された弁装置等と比べて、比較的コンパクトに弁装置10Bを形成することができる。
【0136】
また、上記のように第3開口71Bを設けたことにより、同第3開口71Bの棚状壁部63Bの下面側周縁から、ハウジング15の下方に向けて、キャニスタに連結される配管との接続用の配管73を延設させることができ、弁装置10B全体を燃料タンク1の内部に設置した場合であっても、キャニスタに連結される配管を、燃料タンク1の内壁や、燃料タンク内に配置されるチューブやパイプ等の他部材等に、干渉しにくくすることができ、弁装置10Bのレイアウト性を高めることができる。
【0137】
更にこの実施形態においては、カバー60Bを平面方向から見たときに、第1開口23及び第3開口71Bを結ぶラインL1と、第2開口43及び第3開口71Bを結ぶラインL3との角度θが、鋭角をなすように構成されている。このため、第1開口23から第3開口71Bまでの距離、及び、第2開口43から第3開口71Bまでの距離を、長く確保することができ、弁室V1,V2を通じて第1開口23や第2開口43から通気室R内に流入した燃料を、キャニスタ側の第3開口71Bへと入り込みにくくすることができる。また、第3開口71Bから延設する配管73を、その軸方向に直交する方向にスライドする分割型によって、成形することができるので、ハウジング15の成形性(ここではカバー60Bの成形性)を高めることができる。
【0138】
また、この実施形態においては、前記棚状壁部63Bには、底部に第1開口23が形成された凹部64と、第3開口71Bとを連通する第2溝部72が形成されているので、この第2溝部72によって、第1開口23を通じて通気室内に流入した燃料タンク内の空気や燃料蒸気を、通過させて第3開口71Bへと排出させることができると共に、第3開口71Bを通じて通気室内に流入した空気を、凹部64へと流動させて、第1開口23から燃料タンク内に取り込むことができる。したがって、通気室内において、空気や燃料蒸気をスムーズに流動させることができ、通気性を向上させることができる。
【0139】
更にこの実施形態においては、棚状壁部63Bに形成された、第2溝部72の凹部側の端部に、凹部64の内径方向に向かって突出する、ひさし状壁部79が形成されているので、
図30に示すように、車両が傾斜した場合に、第1開口23から凹部64内に流入した燃料を、凹部64内で堰き止めることができ、第3開口71Bに流入しにくくすることができる。
【0140】
またこの実施形態においては、前記ひさし状壁部79の幅方向両側に、凹部64の内径方向に向かって突設された、縦リブ76,76が設けられているので、車両が傾斜して、第1開口23から凹部64内に流入した燃料が、ひさし状壁部79を回りこみながら、凹部64から流出してしまうことを抑制して、燃料を凹部64内で安定して堰き止めることができ、第3開口71Bにより流入しにくくすることができる。