特許第6148799号(P6148799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6148799ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6148799
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20170607BHJP
   C08K 5/3467 20060101ALI20170607BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20170607BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20170607BHJP
   C07D 257/12 20060101ALI20170607BHJP
   C07D 407/14 20060101ALI20170607BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20170607BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20170607BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K5/3467
   C08K3/04
   C07D401/14
   C07D257/12
   C07D407/14
   C07D409/14
   C07D403/14
   B60C1/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-572604(P2016-572604)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2016079170
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-195368(P2015-195368)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 慎也
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−093928(JP,A)
【文献】 特開昭49−047439(JP,A)
【文献】 特開2005−200641(JP,A)
【文献】 特表2009−526649(JP,A)
【文献】 特表2014−515776(JP,A)
【文献】 特開昭47−001705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00−19/12
C07D 257/12、401/14、403/14、407/14、
409/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、ゴム成分用低発熱化剤。
【請求項2】
及びXが、複素環基である請求項1に記載の低発熱化剤。
【請求項3】
ゴム成分が、ジエン系ゴムである請求項1又は2に記載の低発熱化剤。
【請求項4】
ゴム成分、及び請求項1〜3のいずれか一項に記載の低発熱化剤を含むゴム混合物を用いて作製された変性ポリマー。
【請求項5】
ゴム成分が、ジエン系ゴムである請求項4に記載の変性ポリマー。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の変性ポリマー、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
【請求項7】
トレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる、ゴム成分、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低発熱化剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分が、ジエン系ゴムである請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【請求項10】
ゴム成分、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低発熱化剤、及び無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混合する工程(A)、並びに
工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程(B)を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
工程(A)が、ゴム成分、及び請求項1〜3のいずれか一項に記載の低発熱化剤を混合する工程(A−1)、並びに
工程(A−1)で得られた混合物、及び無機充填材及び/又はカーボンブラックを混合する工程(A−2)である、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する配慮から、世界的に二酸化炭素の排出規制が厳しくなっており、自動車の低燃費化に対する要求が非常に高まっている。低燃費化は、エンジン等の駆動系及び伝達系の効率の寄与が大きいが、タイヤの転がり抵抗も大きく関与しており、自動車の低燃費化には、転がり抵抗を小さくすることが重要である。
【0003】
タイヤの転がり抵抗を低減する手法としては、発熱性の低いゴム組成物をタイヤに適用することが知られている。このような低発熱性のゴム組成物としては、例えば、(1)充填材であるカーボンブラック及びシリカとの親和性を高めた官能化重合体を含むゴム組成物(特許文献1);(2)ジエンエラストマー、補強フィラーとしての無機フィラー、カップリング剤としての多硫化アルコキシシラン、1,2−ジヒドロピリジン、及びグアニジン誘導体を含むゴム組成物(特許文献2);(3)ゴム成分、アミノピリジン誘導体及び無機充填材を含むゴム組成物(特許文献3);(4)末端変性ポリマー及び無機フィラーを含むゴム組成物(特許文献4及び5)等が挙げられる。
【0004】
これら特許文献1〜5に記載されている発明によれば、充填材とゴム成分との親和性を高めることにより、ゴム組成物の発熱性を低くすることができ、その結果、ヒステリシスロス(転がり抵抗性)の低いタイヤを得ることができる。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜5のゴム組成物を用いても、低発熱性の改良は不十分であった。
【0006】
自動車の低燃費化の要望は、一段と高まっており、低発熱性に極めて優れたタイヤの開発が熱望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−514079号公報
【特許文献2】特表2003−523472号公報
【特許文献3】特開2013−108004号公報
【特許文献4】特開2000−169631号公報
【特許文献5】特開2005−220323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的の一つは、低発熱性を発現し得るゴム組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的の一つは、低発熱性を付与し得る変性ポリマーを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的の一つは、低発熱性に優れたタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、テトラジン系化合物がゴム成分に低発熱性を付与できることを発見した。本発明者らは、かかる知見に基づき、さらに検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下に示す、ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤、変性ポリマー、ゴム組成物、該ゴム組成物の製造方法、及びタイヤを提供する。
項1.
ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤であって、
下記一般式(1):
【0014】
【化1】
【0015】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、添加剤。
項2.
及びXが、複素環基である項1に記載の添加剤。
項3.
複素環基がピリジル基又はフラニル基である項2に記載の添加剤。
項4.
複素環基が、2−ピリジル基又は3−ピリジル基である項2に記載の添加剤。
項5.
ゴム成分が、ジエン系ゴムである項1〜4のいずれか一項に記載の添加剤。
項6.
ゴム成分、及び項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤を含むゴム混合物を用いて作製された変性ポリマー。
項7.
ゴム成分が、ジエン系ゴムである項6に記載の変性ポリマー。
項8.
ジエン系ゴムに、項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤を用いて処理された変性ポリマー。
項9.
ジエン系ゴムに、項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤を処理して得られる変性ポリマー。
項10.
ジエン系ゴムが、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムである項7〜9のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
項11.
合成ジエン系ゴムが、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体ゴム、及びスチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つである項10に記載の変性ポリマー。
項12.
ジエン系ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つである項10に記載の変性ポリマー。
項13.
ゴム成分100質量部中、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つを50〜100質量部含有する項11又は12に記載の変性ポリマー。
項14.
ゴム成分100質量部中、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つを75〜100質量部含有する項11〜13のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
項15.
下記式(2)〜(12)で表される化合物構造から選ばれる少なくとも1つを有する変性ポリマー。
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、X及びXは、項1におけるそれらと同じ。Rはハロゲン原子又はアルキル基を示す。]
項16.
ゴム成分、項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
項17.
項6〜15のいずれか一項に記載の変性ポリマー、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
項18.
ゴム成分100質量部に対して、項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤を0.1〜10質量部含有する項16又は17に記載のゴム組成物。
項19.
無機充填材がシリカを含む、項16〜18のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項20.
ゴム成分100質量部に対して、シリカを20〜120質量部含有する項19に記載のゴム組成物。
項21.
ゴム成分100質量部に対して、シリカを40〜120質量部含有する項19に記載のゴム組成物。
項22.
ゴム成分が、ジエン系ゴムである項16〜21のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項23.
ジエン系ゴムが、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムである項22に記載のゴム組成物。
項24.
合成ジエン系ゴムが、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体ゴム、及びスチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つである項23に記載のゴム組成物。
項25.
ジエン系ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つである項23に記載のゴム組成物。
項26.
ゴム成分100質量部中、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つを50〜100質量部含有する項24又は25に記載のゴム組成物。
項27.
ゴム成分100質量部中、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つを75〜100質量部含有する項24又25に記載のゴム組成物。
項28.
ゴム成分100質量部中、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及び/又はブタジエンゴムが50〜100質量部、シリカ20〜120質量部、及び項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤0.1〜10質量部を含有するゴム組成物。
項29.
ゴム成分100質量部中、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム及び/又はブタジエンゴムが75〜100質量部、シリカ20〜120質量部、及び項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤0.1〜10質量部を含有するゴム組成物。
項30.
トレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる、項16〜29のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項31.
トレッド部及びサイドウォール部からなる群から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる、項16〜29のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項32.
トレッド部の部材に用いられる、項16〜29のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項33.
項16〜29のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
項34.
ゴム成分、項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤、及び無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混合する工程(A)、並びに
工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程(B)を含む、ゴム組成物の製造方法。
項35.
工程(A)が、ゴム成分、及び項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤を混合する工程(A−1)、並びに
工程(A−1)で得られた混合物、及び無機充填材及び/又はカーボンブラックを混合する工程(A−2)である、項34に記載の製造方法。
項36.
一般式(1):
【0018】
【化3】
【0019】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、分散剤。
項37.
一般式(1):
【0020】
【化4】
【0021】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、低発熱化剤。
項38.
一般式(1):
【0022】
【化5】
【0023】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、発熱防止剤。
項39.
一般式(1):
【0024】
【化6】
【0025】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、発熱抑制剤。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤を提供することができる。該添加剤は、テトラジン系化合物を含んでおり、該添加剤によって、ゴム成分中に無機充填材及び/又はカーボンブラックが分散される。
【0027】
本発明は、低発熱性を発現し得るゴム組成物、及び低発熱性を付与し得る変性ポリマーを提供することができる。
【0028】
本発明は、低発熱性を発現し得るゴム組成物を用いてタイヤを作製することで、タイヤの転がり抵抗を小さくし、かつタイヤの発熱性を低くすることができることから、低燃費タイヤを提供することができる。また、シリカが高充填されたゴム組成物においても高い低発熱性を示すことから、高い運動性能を有する低燃費タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】テトラジン化合物(1b)の13C−NMRチャートである。
図2】S−SBRの13C−NMRチャートである。
図3図2の拡大図である。
図4】テトラジン化合物(1b)で変性した変性S−SBRの13C−NMRチャートである。
図5図4の拡大図である。
図6】テトラジン化合物(1b)、S−SBR及び変性S−SBRの13C−NMRチャートを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0031】
1.ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤
本発明のゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤(以下、「本発明の添加剤」ということもある)は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩(以下、「テトラジン化合物(1)」ということもある。)を含む。
【0032】
【化7】
【0033】
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【0034】
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキル基等が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はn−ペンチル基であり、特に好ましくはメチル、又はエチル基である。
【0035】
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキルチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、1−エチルプロピルチオ、n−ペンチルチオ、ネオペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、イソヘキシルチオ、3−メチルペンチルチオ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、シクロヘプチルチオ、シクロオクチルチオ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキルチオ基等が挙げられる。好ましいアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、又はイソブチルチオ基であり、より好ましくはメチルチオ基又はエチルチオ基である。
【0036】
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル基等が挙げられる。より好ましいアラルキル基としては、ベンジル基又はフェネチル基であり、より好ましくはベンジル基である。
【0037】
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H−フルオレニル基等が挙げられる。より好ましいアリール基としては、フェニル基又はナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0038】
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ、ビフェニルチオ、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0039】
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピラジニル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ピリミジル、3−ピリダジル、4−ピリダジル、4−(1,2,3−トリアジル)、5−(1,2,3−トリアジル)、2−(1,3,5−トリアジル)、3−(1,2,4−トリアジル)、5−(1,2,4−トリアジル)、6−(1,2,4−トリアジル)、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル、2−キノキサリル、3−キノキサリル、5−キノキサリル、6−キノキサリル、7−キノキサリル、8−キノキサリル、3−シンノリル、4−シンノリル、5−シンノリル、6−シンノリル、7−シンノリル、8−シンノリル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、5−キナゾリル、6−キナゾリル、7−キナゾリル、8−キナゾリル、1−フタラジル、4−フタラジル、5−フタラジル、6−フタラジル、7−フタラジル、8−フタラジル、1−テトラヒドロキノリル、2−テトラヒドロキノリル、3−テトラヒドロキノリル、4−テトラヒドロキノリル、5−テトラヒドロキノリル、6−テトラヒドロキノリル、7−テトラヒドロキノリル、8−テトラヒドロキノリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、4−(1,2,3−チアジアゾリル)、5−(1,2,3−チアジアゾリル)、3−(1,2,5−チアジアゾール)、2−(1,3,4−チアジアゾール)、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)、5−(1,2,4−オキサジアゾリル)、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)、1−(1,2,3−トリアゾリル)、4−(1,2,3−トリアゾリル)、5−(1,2,3−トリアゾリル)、1−(1,2,4−トリアゾリル)、3−(1,2,4−トリアゾリル)、5−(1,2,4−トリアゾリル)、1−テトラゾリル、5−テトラゾリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、1−イソインドリル、2−イソインドリル、3−イソインドリル、4−イソインドリル、5−イソインドリル、6−イソインドリル、7−イソインドリル、1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル、6−ベンゾイミダゾリル、7−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、4−ベンゾフラニル、5−ベンゾフラニル、6−ベンゾフラニル、7−ベンゾフラニル、1−イソベンゾフラニル、3−イソベンゾフラニル、4−イソベンゾフラニル、5−イソベンゾフラニル、6−イソベンゾフラニル、7−イソベンゾフニル、2−ベンゾチエニル、3−ベンゾチエニル、4−ベンゾチエニル、5−ベンゾチエニル、6−ベンゾチエニル、7−ベンゾチエニル、2−ベンゾオキサゾリル、4−ベンゾオキサゾリル、5−ベンゾオキサゾリル、6−ベンゾオキサゾリル、7−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、4−ベンゾチアゾリル、5−ベンゾチアゾリル、6−ベンゾチアゾリル、7−ベンゾチアゾリル、1−インダゾリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、6−インダゾリル、7−インダゾリル、2−モルホリル、3−モルホリル、4−モルホリル、1−ピペラジル、2−ピペラジル、1−ピペリジル、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、2−テトラヒドロチオピラニル、3−テトラヒドロチオピラニル、4−テトラヒドロチオピラニル、1−ピロリジル、2−ピロリジル、3−ピロリジル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチエニル、3−テトラヒドロチエニル等が挙げられる。中でも、好ましい複素環基としては、ピリジル、フラニル、チエニル、ピリミジル又はピラジルであり、より好ましくはピリジルである。
【0040】
本明細書において、「アミノ基」には、−NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s−ブチルアミノ、t−ブチルアミノ、1−エチルプロピルアミノ、n−ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3−メチルペンチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0041】
これらアルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基及びアミノ基の各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個有していてもよい。
【0042】
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
【0043】
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基等が挙げられる。
【0044】
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0045】
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0046】
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n−ブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N−メチルアセトアミド、N−ベンジルアセトアミド基等のN−置換アミド基;等が挙げられる。
【0048】
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ−n−プロピル、カルボキシ−n−ブチル、カルボキシ−n−ブチル、カルボキシ−n−ヘキシル基等のカルボキシ−アルキル基(好ましくはカルボキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
【0049】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ−n−プロピル、ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ−アルキル基(好ましくはヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
【0050】
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0051】
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0052】
一般式(1)で表されるテトラジン化合物の「塩」としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0053】
これらテトラジン化合物(1)の中でも、好ましい化合物は、X及びXが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基である化合物である。
【0054】
より好ましいテトラジン化合物(1)は、X及びXが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基である化合物である。
【0055】
さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、X及びXが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい2−ピリジル基、置換基を有していてもよい3−ピリジル基、置換基を有していてもよい4−ピリジル基、置換基を有していてもよい2−フラニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよい1−ピラゾリル基、置換基を有していてもよい2−ピリミジル基、又は置換基を有していてもよい2−ピラジル基である化合物であり、これらの中でも、置換基を有していてもよい2−ピリジル基、置換基を有していてもよい3−ピリジル基、又は置換基を有していてもよい2−フラニル基である化合物が特に好ましい。
【0056】
具体的に、テトラジン化合物(1)としては、例えば、
1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ジフェニル−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ジベンジル−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3−メチル−6−(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−チエニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3−メチル−6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピリミジニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピラジル)−1,2,4,5−テトラジン等が挙げられる。
【0057】
中でも、好ましいテトラジン化合物(1)は、3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン、3−メチル−6−(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、及び3−メチル−6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンであり、さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、及び3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンである。
【0058】
テトラジン化合物(1)をゴム成分に添加することで、ゴム成分に低発熱性を付与することができる。このようなテトラジン化合物(1)を含むゴム組成物から作製(製造)されたタイヤは、低発熱性を付与できることから、転がり抵抗が低減され、その結果、低燃費性能を発現する。
【0059】
ゴム成分
本明細書において、ゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
【0060】
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどが挙げられ、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなども、本発明の天然ゴムに含まれる。
【0061】
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0062】
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
【0063】
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500〜3000000、分子量分布1.5〜15が好ましい。
【0064】
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0065】
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。また、これらのブレンド比率は、特に制限はないが、ゴム成分100質量部中に、SBR、BR又はこれらの混合物を50〜100質量部の比率で配合することが好ましく、75〜100質量部で配合することが特に好ましい。SBR及びBRの混合物を配合する場合には、SBR及びBRの合計量が上記範囲であることが好ましい。また、このときのSBRは50〜100質量部であり、BRが0〜50質量部の範囲であるのが好ましい。
【0066】
2.変性ポリマー
本発明の変性ポリマーは、ジエン系ゴム、及び上記本発明の添加剤を含むゴム混合物を用いて作製される。
【0067】
つまり、本発明の変性ポリマーは、ジエン系ゴムに、テトラジン化合物(1)を用いて処理された変性ポリマーである。
【0068】
また、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基等で変性されたジエン系ゴムに、テトラジン化合物(1)を作用させることで、さらに変性することができる。
【0069】
本発明の変性ポリマーを製造するための原料は、上記テトラジン化合物(1)、及びジエン系ゴムを含んでいる。該テトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、後述するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部となるように適宜調整すればよい。
【0070】
本発明の変性ポリマーは、窒素原子等のヘテロ原子を有しており、このヘテロ原子がシリカ及びカーボンブラックと強く相互作用をすることから、ジエン系ゴム成分へのシリカ又はカーボンブラックの分散性を高めて、変性ポリマーに高い低発熱性を付与することができる。
【0071】
本発明の変性ポリマーは、好ましくは下記式(2)〜(12)で表される化合物構造から選ばれる少なくとも1つを有している。
【0072】
【化8】
【0073】
[式中、X及びXは、項1におけるそれらと同じ。Rはハロゲン原子又はアルキル基を示す。]
【0074】
ここで、本発明の変性ポリマーは、下記の反応メカニズムにより得られるものと考えられる。
【0075】
[ゴム成分と本発明の添加剤との反応メカニズム]
テトラジン化合物(1)と、ゴム成分中の二重結合との間で逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応が進行する。
【0076】
具体的には、次の反応式−1乃至4に示すような反応が進行することにより、ジエン系ゴムの二重結合部位にテトラジン化合物(1)が結合して六員環構造を形成し、変性ポリマーが製造される。
反応式−1
【0077】
【化9】
【0078】
[式中、X及びXは前記に同じ。]
反応式−1においては、式(A−1)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)との逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応によって、式(B−1)で表されるビシクロ環構造を形成する。このビシクロ環構造中の−N=N−部は、脱窒素化が容易に進行し、式(C−1)、(C−2)又は(C−3)で表される六員環構造を形成するが、更に空気中の酸素によって酸化され、式(2)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。
反応式−2
【0079】
【化10】
【0080】
[式中、X及びXは前記に同じ。]
反応式−2においては、反応式−1と同様に、式(A−2)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)とから、式(B−2)又は(B−2’)で表されるビシクロ環構造、次いで式(C−4)乃至(C−9)で表される六員環構造を形成した後、式(3)又は(4)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。
反応式−3
【0081】
【化11】
【0082】
[式中、X及びXは前記に同じ。Rはアルキル基又はハロゲン原子を示す。]
反応式−3においては、式(A−3)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)との逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応により、式(B−3)又は(B−3’)で表されるビシクロ環構造を形成した後、脱窒素化により式(5)乃至(8)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。なお、式(A−3)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位上Rがハロゲン原子である場合は、そのハロゲン原子の脱離が生じることがあり、その場合は、酸化反応により式(2)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。
反応式−4
【0083】
【化12】
【0084】
[式中、X、X及びRは前記に同じ。]
反応式−4においては、反応式−3の反応と同様に、式(A−4)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)との反応により、式(B−4)又は、(B−4’)で表されるビシクロ環構造を形成した後、式(9)乃至(12)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。
【0085】
また、本発明の添加剤の作用によって、シリカをゴム成分中に分散させることができる。そのシリカ分散メカニズムは以下のとおりと推測される。
【0086】
[シリカ分散メカニズム]
本発明の添加剤を構成するテトラジン化合物(1)の窒素原子がシリカと高い親和性を示し、また、ゴム成分とテトラジン化合物(1)とが反応して生成した変性ポリマーは、そのテトラジン化合物由来の窒素原子の存在により、さらにシリカとの親和性が改善されると推測される。特に、テトラジン化合物(1)の3位(X基)及び6位(X基)に、ヘテロ原子を有する置換基又は極性基を導入することで、シリカとの親和性が増強されることが推測される。よって、本発明の添加剤によって、ゴム成分中にシリカが分散されると考えられる。
【0087】
変性ポリマーの製造方法
本発明の変性ポリマーの製造方法としては、特に制限はない。本発明の変性ポリマーは、例えば、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム成分、及びテトラジン化合物(1)を含むゴム混合物を用いて作製される。
【0088】
本発明の変性ポリマーの具体的な作製方法としては、ゴム成分が固体の場合は、該ゴム成分とテトラジン化合物(1)とを加熱条件下で混練する方法(混練方法);
ゴム成分が液状(液体)である場合は、該ゴム成分の溶液又は乳液(懸濁液)と、テトラジン化合物(1)とを加熱条件下で混合する方法(液状混合方法)等が挙げられる。
【0089】
加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、上記混練方法の場合は、ゴム組成物の温度の上限が、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、液状ゴム組成物の温度の上限が、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。
【0090】
混合時間又は混練時間としては、特に制限はなく、例えば、混練方法の場合は、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から7分間であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、10秒間から60分間であることが好ましく、30秒間から40分間であることがより好ましく、60秒間から30分間であることがさらに好ましい。液状混合方法による混合反応後は、例えば、減圧下において、混合物中の溶剤を飛ばし(取り除き)、固形のゴム組成物を回収することができる。
【0091】
本発明に変性ポリマーの製造方法において、テトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部となるよう適宜調整して用いればよい。
【0092】
3.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、上記本発明の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含んでいる。
【0093】
また、本発明のゴム組成物は、上記変性ポリマー、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含んでいる。
【0094】
該ゴム成分、本発明の添加剤、及び変性ポリマーは、上述したとおりである。
【0095】
上記本発明の添加剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0096】
無機充填材及び/又はカーボンブラックの配合量は、特に限定はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜200質量部であり、好ましくは30〜130質量部であり、より好ましくは35〜110質量部である。無機充填材及びカーボンブラックの両方を配合する場合には、両成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
【0097】
無機充填材及び/又はカーボンブラックの配合量が、2質量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、200質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。なお、無機充填材及び/又はカーボンブラックを配合するときは、予めポリマーと湿式または乾式で混合されたマスターバッチを用いてもよい。
【0098】
上記無機充填材又はカーボンブラックは、通常、ゴムの補強性を向上させるために用いられる。なお、本明細書においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれない。
【0099】
無機充填材
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0100】
無機充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常10〜200質量部である。
【0101】
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
【0102】
シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
【0103】
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40〜350m/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
【0104】
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80〜300m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積が100〜270m/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積が110〜270m/gの範囲にあるシリカである。
【0105】
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積 =165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積 =115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積 =200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積 =250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積 =240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m/g)等が挙げられる。
【0106】
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜120質量部であり、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
【0107】
通常、シリカを添加することで運動性能が向上するが、大量に添加することで低発熱性が悪化する傾向にある。しかしながら、本発明の添加剤を用いることによって、シリカを大量に配合しても優れた低発熱性を発現する。
【0108】
特に運動性能と低燃費性能との両立を図る場合のシリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常40〜120質量部であり、好ましくは60〜115質量部であり、より好ましくは70〜110質量部である。
【0109】
無機充填材、特にシリカを配合するゴム組成物において、テトラジン化合物(1)を配合することにより、シリカの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。つまり、本発明の添加剤は、無機充填材及び/又はカーボンブラックの分散剤、低発熱化剤、発熱防止材、又は発熱抑制剤として利用でき、好ましくは、ゴム用分散剤、ゴム用低発熱化剤、ゴム用発熱防止材、又はゴム用発熱抑制剤として利用できる。
【0110】
カーボンブラック
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、さらにゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
【0111】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0112】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60〜200cm/100g、より好ましくは70〜180cm/100g以上、特に好ましくは80〜160cm/100gである。
【0113】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30〜200m/g、より好ましくは40〜180m/g、特に好ましくは50〜160m/gである。
【0114】
カーボンブラックが配合されたゴム組成物では、テトラジン化合物(1)が、又はゴム成分とテトラジン化合物(1)との反応物が、カーボンブラックと強く相互作用をすることが考えられる。したがって、本発明のゴム組成物によれば、特にカーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。
【0115】
カーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。
【0116】
カーボンブラックでの配合量が2質量部以上であれば、静電気防止性能及びゴム強度性能を確保する観点から好ましく、150質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。
【0117】
その他の配合剤
本発明のゴム組成物には、上記テトラジン化合物(1)並びに無機充填材及び/又はカーボンブラック以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0118】
また、シリカなどの無機充填材が配合されたゴム組成物においては、シリカによるゴム組成物の補強性を高める目的、又はゴム組成物の低発熱性と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤を配合してもよい。
【0119】
無機充填剤と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0120】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0121】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0122】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0123】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0124】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0125】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0126】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0127】
本発明においては、シランカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、無機充填材100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部であることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の低発熱性向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
【0129】
ゴム組成物の用途
本発明のゴム組成物の用途としては、特に制限はなく、例えば、タイヤ、防振ゴム、コンベアベルト、これらのゴム部分等が挙げられる。中でも、好ましい用途は、タイヤである。
【0130】
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に制限されない。本発明のゴム組成物の製造方法は、例えば、ゴム成分、本発明の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混練する工程(A)、並びに工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混練する工程(B)を含んでいる。
【0131】
工程(A)
工程(A)は、ゴム成分、本発明の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混練する工程であり、加硫剤を配合する前の工程であることを意味している。
【0132】
工程(A)では、さらに必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。
【0133】
工程(A)における混練方法としては、例えば、ゴム成分と、本発明の添加剤と、無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分とを含む組成物を混練する方法が挙げられる。この混練方法においては、各成分の全量を一度に混練してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混練してもよい。また、ゴム成分と無機充填材及び/又はカーボンブラックとを混練した後、本発明の添加剤を投入して混練するか、ゴム成分と本発明の添加剤とを混練した後、無機充填材及び/又はカーボンブラックを投入して混練してもよい。各成分を均一に分散させるために、混練操作を繰り返し行ってもよい。
【0134】
また、工程(A)における別の混練方法としては、ゴム成分と本発明の添加剤とを混練する工程(A−1)、並びに工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)と無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分とを混練する工程(A−2)を含む二段階の混練方法を挙げることができる。
【0135】
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度の上限が120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
【0136】
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。
【0137】
工程(A−1)におけるゴム成分と本発明の添加剤とを混合する際の温度としては、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。該混合温度が80℃より低いと反応が進行せず、また、190℃以上になると、ゴムの劣化が進行するためである。
【0138】
工程(A−1)における混合時間としては、10秒間〜20分間が望ましく、30秒間〜10分間であることがより好ましく、60秒間〜7分間であることがさらに好ましい。該混合時間が10秒より短いと反応が十分に進行せず、また、20分間以上は生産性が低下するためである。
【0139】
工程(A−2)における工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)と無機充填材及び/又はカーボンブラックとを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
【0140】
工程(A−2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。
【0141】
工程(A)において、本発明の添加剤であるテトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10であり、好ましくは0.25〜5であり、より好ましくは0.5〜2である。
【0142】
工程(A)において、ゴム成分(ジエン系ゴム)の二重結合部と本発明の添加剤、テトラジン化合物(1)とが反応し、上記式(2)乃至(12)で表される六員環構造を有する変性ポリマーを形成し、無機充填材及び/又はカーボンブラックが好適に分散された混合物を得ることができる。
【0143】
工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程(B)であり、混練の最終段階を意味している。
【0144】
工程(B)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤等を配合することができる。
【0145】
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。
【0146】
混合(又は混練)時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
【0147】
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
【0148】
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、亜鉛華等の加硫促進剤、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
【0149】
本発明におけるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、二軸押出機等を用いて混合又は混練りされる。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0150】
4.タイヤ
本発明のタイヤは、上記本発明の添加剤、ゴム組成物又は変性ポリマーを用いて作製されたタイヤである。
【0151】
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
【0152】
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
【0153】
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0154】
本発明のタイヤにおいて、上記添加剤、ゴム組成物又は変性ポリマーは、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0155】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0156】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0157】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0158】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0159】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0160】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0161】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
【0162】
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0163】
本発明のタイヤは、低発熱性を有し、タイヤの転がり抵抗が小さくなることから、自動車の低燃費化を図ることができる。また、シリカが高充填されたゴム組成物においても高い低発熱性を示すことから、高い運動性能を有する低燃費タイヤを提供することができる。
【実施例】
【0164】
以下、製造例及び実施例を示して、本発明について具体的に説明する。ただし、実施例はあくまで一例であって、本発明は、実施例に限定されない。
【0165】
製造例1:3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(1a)の製造
200mL四つ口フラスコに、3−シアノピリジン24g(0.23モル)、水加ヒドラジン15g(1.3当量)、及びメタノール48mLを加え、室温で撹拌した。次いで、この混合物に、硫黄3.6g(15重量%)を加え、還流管を装着して外温70℃にて一晩加熱撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過して少量の冷メタノールで洗浄した。粗結晶を減圧下乾燥し、橙色のジヒドロテトラジン粗結晶19gを得た。
【0166】
得られた粗結晶17.8gを、酢酸178g(40当量)に溶解し、硫黄を濾去した。1L四つ口ナスフラスコに、ジヒドロテトラジン酢酸溶液、及び蒸留水178mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム15.5g(3当量)を蒸留水35mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、室温で一晩撹拌した。析出した結晶を濾過し、結晶を10%重層水で中和し粗結晶とした。該粗結晶をシリカゲルカラム(酢酸エチル)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1a)8.4g(赤紫色、針状結晶)を得た。
融点:200℃、
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):
7.59(ddd,J =0.9,5.1,7.8 Hz,2H),8.89−8.96(m,4H),9.88(dd,J =0.9,2.4Hz,2H)
【0167】
製造例2:3,6−ジフェニル−1,2,4,5−テトラジン(1d)の製造
500mL四つ口フラスコに、ベンゾニトリル120g(1.16モル)、水加ヒドラジン76g(1.3当量)、及びメタノール348mLを加え、室温で撹拌した。次いで、この混合物に、硫黄10g(8.6重量%)を加え、還流管を装着して外温70℃にて一晩加熱撹拌した。得られた反応液を氷冷し、結晶を濾過し、少量の冷メタノールで洗浄した。得られた粗結晶を2.5Lの温メタノールに溶解し、不溶物を濾過した後、濾液の溶媒を留去した。得られた粗結晶を減圧下乾燥し、黄色のジヒドロテトラジン粗結晶48gを得た。
【0168】
300mL四つ口ナスフラスコに、粗結晶4.8g、酢酸48mL、及び蒸留水48mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム4.2g(3当量)を蒸留水48mLに溶解した。この反応液に1時間程度かけて滴下し、その後室温で一晩撹拌した。反応液に蒸留水100mLを加え結晶を濾過した。得られた粗結晶を10mLの酢酸で洗浄し、濾過することで、表題のジフェニルテトラジン化合物(1d)3.9g(赤紫色、針状結晶)を得た。
融点:166℃、
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):
7.58−7.68(m,6H),8.64−8.69(m,4H)
【0169】
製造例3:3,6−ジベンジル−1,2,4,5−テトラジン(1e)の製造
300mL四つ口フラスコに、フェニルアセトニトリル58.5g(0.5モル)、水加ヒドラジン100g(4.0当量)を加え、室温で撹拌した。次いで、この混合物に、硫黄9.0g(15重量%)を加え、還流管を装着して外温90℃にて一晩加熱撹拌した。この反応液を氷冷し、蒸留水100mLを加えて内容物を薬匙で粉砕した後、結晶を濾過して蒸留水で洗浄した。粗結晶を減圧下乾燥し、白色のジヒドロテトラジンを含む粗結晶61gを得た。
【0170】
1L四つ口ナスフラスコに、得られた粗結晶61g、酢酸210g及び蒸留水200mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム23.9g(1.5当量)を蒸留水100mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、室温で一晩撹拌した。反応液に蒸留水500mLを加え、酢酸エチル100mLで3回抽出した。得られた有機層を蒸留水100mLで一回、飽和重層水200mLで一回、飽和食塩水200mLで一回洗浄した後、溶媒を留去し赤色の粗結晶48gを得た。該粗結晶をシリカゲルカラム(n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1e)5.1g(赤色、鱗片状結晶)を得た。
融点:68℃、
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):
4.60(s,4H),7.22−7.35(m,6H),7.39−7.43(m,4H)
【0171】
製造例4:3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン(1f)の製造
50mL3つ口フラスコに、2−フロニトリル3g(0.032モル)、水加ヒドラジン3.3g(2.0当量)、及びエタノール15mLを加え、氷冷下で撹拌した。次いで、この混合物に、硫黄0.3グラム(10重量%)を加え、還流管を装着して外温80℃にて2時間加熱撹拌した。得られた反応液を氷冷し、結晶を濾過した後、減圧下乾燥することで黄色のジヒドロテトラジン粗結晶2.48gを得た。
【0172】
500mL四つ口ナスフラスコに、粗結晶2.48g、クロロホルム150mL、及び亜硝酸イソアミル35mLを加え、室温で一晩撹拌した。減圧乾燥により溶媒を取り除き、得られた粗結晶2.39gをシリカゲルカラム(クロロホルム:n−ヘキサン=3:1)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1f)1.31g(赤色固体)を得た。
融点:198−199℃、
H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):
7.81(dd,J = 0.4,1.7Hz,2H),7.67(dd,J = 0.4,3.6Hz,2H),6.72(dd,J = 1.7,3.6Hz,2H)
【0173】
製造例5:3−メチル−6−(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(1g)の製造
2L四つ口フラスコに氷冷下で、3−シアノピリジン124.8g(1.2モル)、アセトアミジン塩酸塩567.6g(5.0当量)、水加ヒドラジン564g(10.0当量)を加え、室温で一晩撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過した後、減圧下乾燥することで粗結晶431.2gを得た。
【0174】
5Lビーカーに粗結晶431.2gを、酢酸720g(10当量)及び蒸留水200mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム300g(3.7当量)を蒸留水720mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、氷冷下で1時間撹拌した。反応液を重曹水で中和し、酢酸エチルで抽出した後、有機層を減圧濃縮することで粗結晶156.54gを得た。これをシリカゲルカラム(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1g)71.81g(赤紫色、結晶)を得た。
融点:102℃、
H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):
9.80(m,J = 1.6Hz,1H),8.84−8.87(m,2H),7.55(ddd,J = 0.7,4.9,8.0Hz,1H),3.14(s,3H)
【0175】
製造例6:3,6−ビス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−1,2,4,5−テトラジン(1h)の製造
2000mL四つ口フラスコに、アミノグアニジン塩酸塩250g(2.26モル)、水加ヒドラジン249g(2.2当量)、及びメタノール400mLを加え、24時間加熱還流した。室温に冷却した後、固体をろ過し、メタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、白色のトリアミノグアニジン塩酸塩286g(収率90%)を得た。
【0176】
2000mL四つ口フラスコに、合成したトリアミノグアニジン塩酸塩150g(1.07モル)、及び蒸留水1250mLを加え、内温を30℃以下に保ちながら、20分かけてアセチルアセトン214g(2.0当量)を加えた。その後、内温70℃に昇温させ、5時間撹拌を継続した。室温に冷却した後、固体をろ過し、蒸留水及びn−ヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、薄黄色のジヒドロテトラジン125g(収率86%)を得た。
【0177】
5000mLビーカーに、合成したジヒドロテトラジン65g(0.24モル)、蒸留水350mL、及び酢酸137mL(10.0当量)を加え、氷浴にて冷却した。そこへ50mLの蒸留水に溶かした亜硝酸ナトリウム33g(2.0当量)を滴下した。氷浴中で2時間撹拌を継続した後、室温に昇温し、さらに4時間撹拌を継続した。その後、固体をろ過し、蒸留水及びn−ヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、赤色の表題のテトラジン(1h)64g(収率98%)を得た。
融点:220℃、
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):
2.40(s,6H),2.72(s,6H),6.20(s,2H)
【0178】
製造例7:3,6−ビス(2−チエニル)−1,2,4,5−テトラジン(1i)の製造
300mL四つ口フラスコに氷冷下で、2−シアノチオフェン21.48g(0.197モル)、硫黄4.3g(20重量%)、エタノール92mL及び水加ヒドラジン20.1g(2.1当量)を加え、65℃で4時間撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過し、蒸留水で洗浄した後、減圧下乾燥することで20.56gの粗結晶を得た。
【0179】
1Lビーカーに粗結晶20.56gを、酢酸59.1g(5当量)及び蒸留水60mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム40.7g(3当量)を蒸留水80mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、氷冷下で5時間撹拌した。反応液を重曹水で中和し、酢酸エチルで抽出した後、有機層を減圧濃縮することで粗結晶18.7gを得た。これをシリカゲルカラム(ジクロロメタン:n−ヘキサン=2:1)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1i)16.8g(赤色、結晶)を得た。
融点:198℃、
H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):
8.28(dd,J = 0.9,3.8Hz,2H),7.69(dd,0.9,5.0Hz,2H),7.28(m,2H)
【0180】
製造例8:3−メチル,6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(1j)の製造
100mL四つ口フラスコに氷冷下で、2−シアノピリジン5g(0.048モル)、アセトアミジン塩酸塩22.7g(5.0当量)、及び水加ヒドラジン24g(10.0当量)を加え、室温で一晩撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過した。粗結晶を減圧下乾燥することで14.15gの粗結晶を得た。
【0181】
1Lビーカーに粗結晶14.15gを、酢酸42.5g(15当量)及び蒸留水41mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム32.2g(10当量)を蒸留水60mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、氷冷下で5時間撹拌した。反応液を重曹水で中和し、酢酸エチルで抽出した後、有機層を減圧濃縮することで粗結晶4.74gを得た。これをシリカゲルカラム(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1j)1.02g(赤色、結晶)を得た。
融点:63℃、
H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):
8.96(m,1H),8.65(m,1H),7.99(ddd,J = 1.5,7.8,8.3Hz,1H),7.57(ddd,J = 0.7,4.7,7.8Hz,1H),3.17(s,3H)
【0182】
製造例9:3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン(1k)の製造
300mL3つ口フラスコに、4−ヒドロキシベンゾニトリル50.0g(0.42モル)、及び水加ヒドラジン63.0g(3.0当量)を加え、氷冷下で撹拌した後、70℃で20時間加熱撹拌した。得られた反応液を氷冷し、結晶を濾過した後、減圧下乾燥することで黄色のジヒドロテトラジン粗結晶49.8gを得た。
【0183】
1L四つ口ナスフラスコに、粗結晶49.8g、及びクロロホルム500mLを加え、室温で撹拌しながら酸素を20時間バブリングした。これをろ過した後、粗結晶をDMFで再結晶することで表題のテトラジン化合物(1k)52.0g(赤色固体)を得た。
融点:320℃(分解)、
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):
8.36(m,4H),7.03(m,4H)
【0184】
製造例10:3,6−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン(1l)の製造
300mL四つ口フラスコに、3−シアノフェノール50g(0.42モル)、水加ヒドラジン42g(2当量)、及び硫黄5g(10重量%)を加え、室温で撹拌した後、還流管を装着し外温50℃にて一晩加熱撹拌した。得られた反応液を氷冷し、結晶を濾過し、少量の冷エタノールで洗浄した。これを減圧下乾燥し、ジヒドロテトラジン粗結晶21.5gを得た。
【0185】
1Lナスフラスコに、粗結晶21.5g、及びエタノール430mLを加え、室温で撹拌した。この反応液に酸素をバブリングしながら10時間撹拌した後、減圧濃縮することで粗結晶21.5gを得た。これをエタノール及び蒸留水で洗浄することで表題のテトラジン化合物(1l)7.3g(橙色、固体)を得た。
融点:304−305.5℃、
H−NMR(500MHz,d−DMSO,δppm):
10.01(s,2H),7.98(dd,J = 1.6,7.8Hz,2H),7.94(dd,J = 1.6,1.8Hz,2H),7.49(dd,J = 7.8,8.0Hz,2H),7.09(dd,J = 1.8,8.0Hz,2H)
【0186】
製造例11:3,6−ビス(2−ピリミジニル)−1,2,4,5−テトラジン(1m)の製造
200mL四つ口フラスコに、2−シアノピリミジン25g(0.238モル)、水加ヒドラジン23.8g(2当量)、酢酸28.6g(2当量)、及びジメチルスルホキシド(8.3mL)を加え、室温で撹拌した。この混合液を外温50℃にて一晩加熱撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過、減圧下乾燥し、ジヒドロテトラジン粗結晶30.1gを得た。
【0187】
5Lビーカーに粗結晶30.1g、テトラヒドロフラン500mL、及び0.5N塩酸3.8L(8当量)を加え、氷冷下で撹拌した。亜硝酸ナトリウム32.8g(2当量)を蒸留水60mLに溶解し、反応液に0.5時間程度かけて滴下し、氷冷下で一時間撹拌した。塩化メチレンで抽出し、減圧濃縮によって得られた粗結晶3.4gをアセトン250mLで洗浄することで、表題のテトラジン化合物(1m)3.2g(紫色、固体)を得た。
融点:264−267℃、
H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):
9.18(d,J =4.9 Hz,4H),7.63(t,J =4.9 Hz,2H)
【0188】
製造例12:3,6−ビス(2−ピラジニル)−1,2,4,5−テトラジン(1n)の製造
2L四つ口フラスコに、シアノピラジン25g(0.238モル)、水加ヒドラジン23.8g(2当量)、酢酸28.6g(2当量)及びメタノール720mLを加え、室温で撹拌した。この混合液を外温50℃にて一晩加熱撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過し、メタノールで洗浄し、減圧下乾燥し、ジヒドロテトラジン粗結晶26.6gを得た。
【0189】
5Lビーカーにジヒドロテトラジン粗結晶のうち半量13.3g、テトラヒドロフラン400mL、0.5N塩酸2.4L(10当量)を加え氷冷下で撹拌した。亜硝酸ナトリウム24.6g(3当量)を蒸留水50mLに溶解し、反応液に0.5時間程度かけて滴下し、氷冷下で一時間撹拌した。塩化メチレンで抽出し、減圧濃縮によって粗結晶を得た。同様の操作をジヒドロテトラジン体の粗結晶の残り半分に対しても行うことで、テトラジン粗結晶19.1gを得た。これをクロロホルム960mLに溶かし、n−ヘキサン320mLを加えてろ過して、ろ液を減圧濃縮することで表題のテトラジン化合物(1n)11.9g(赤色、固体)を得た。
融点:208−210℃、
H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):
9.97(s,2H),8.98(s,2H),8.92(d,J =2.1Hz,2H)
【0190】
製造例13〜44:変性ポリマーの混練製造
表1〜3に記載の各ゴム成分及びテトラジン化合物をその割合(質量部)で、バンバリーミキサーを用いて混練した。混合物の温度が130〜150℃に達した時点から、その温度を維持するように調整しながら約2分間混練し、その後ロールミルで冷却して変性ポリマーを製造した。
【0191】
【表1】
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
[表中の記号の説明]
実施例(表中)において使用する原料を以下に示す。
*1: 溶液重合SBR(S−SBR)、PetroChina Dushanzi Petrochemical Company製、商品名「RC2557S」
*2: 溶液重合SBR(S−SBR)、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「Tafdene3835」
*3: 溶液重合SBR(S−SBR)、LANXESS社製、商品名「Buna VSL 5025−2」
*4: 溶液重合SBR(S−SBR)、LANXESS社製、商品名「Buna VSL 4526−2」
*5: 溶液重合SBR(S−SBR)、LANXESS社製、商品名「Buna VSL 2538−2」
*6: 末端変性溶液重合SBR(末端変性S−SBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol NS116R」
*7: 末端変性溶液重合SBR(末端変性S−SBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol NS616」
*8: 末端変性溶液重合SBR(末端変性S−SBR)、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「F3420」
*9: 末端変性溶液重合SBR(末端変性S−SBR)、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「アサプレンY031」
*10: エマルション重合SBR(E−SBR)、Shenhua Chemical Industrial Co., Ltd.製、商品名「SBR1739」
*11: エマルション重合SBR(E−SBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1502」
*12: ブタジエンゴム(BR)、Sinopec Qilu Petrochemical Co., Ltd.製、商品名「BR9000」
*13: 天然ゴム(NR)、GUANGKEN RUBBER社製、商品名「TSR20」
*14: 天然ゴム(NR)、中化国際社製、商品名「RSS3」
*15: イソプレンゴム(IR)、Sterlitamak社製、商品名「IR−1」
*16: イソプレンゴム(IR)、Sterlitamak社製、商品名「IR−2」
*17: イソプレンゴム(IR)、Sterlitamak社製、商品名「SKI−3」
*18: ニトリルゴム(NBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「NBR3350」
*19: クロロプレンゴム(CR)、三井プラスチック貿易有限公司製、商品名「DCR40A」
*20: カーボンブラック、Cabot社製、商品名「N234」
*21: カーボンブラック、Cabot社製、商品名「N330」
*22: カーボンブラック、Cabot社製、商品名「N375」
*23: カーボンブラック、Cabot社製、商品名「N550」
*24: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD60MP」
*25: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD90MP」
*26: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD115MP」
*27: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD165MP」
*28: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD200MP」
*29: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD250MP」
*30: Evonik Industries AG社製、商品名「Si69」
*31: 張家港市国泰華栄化工新材料有限公司製、商品名「SCA−1113」
*32: 張家港市国泰華栄化工新材料有限公司製、商品名「SCA−113」
*33: 張家港市国泰華栄化工新材料有限公司製、商品名「SCA−403」
*34: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「6−PPD」
*35: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「DPG」
*36: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「CBS」
*37: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「TMQ」
*38: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「DM」
*39: AkzoNobel社製、商品名「DCP」
*40: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「TMTD」
*41: Rhein Chemie Rheinau GmbH社製、商品名「Antilux 111」
*42: ステアリン酸、Sichuan Tianyu Grease Chemical Co., Ltd.製
*43: 酸化亜鉛、Dalian Zinc Oxide Co., Ltd.製
*45: 硫黄、Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd.製
*46: Hansen & Rosenthal社製、商品名「Vivatec 500」
*47: Hansen & Rosenthal社製、商品名「Vivatec 700」
*48: 江蘇宏信化工有限公司製、商品名「DOP」
*49: 浙江黄岩浙東ゴム助剤有限公司製、商品名「MB」
*50: 締展国際貿易有限公司製、商品名「OCTAMINE」
*51: テトラジン化合物(1a):3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例1で製造した化合物)
*52: テトラジン化合物(1b):3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業株式会社製
*53: テトラジン化合物(1c):3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業株式会社製
*54: テトラジン化合物(1d):3,6−ジフェニル−1,2,4,5−テトラジン(製造例2で製造した化合物)
*55: テトラジン化合物(1e):3,6−ジベンジル−1,2,4,5−テトラジン(製造例3で製造した化合物)
*56: テトラジン化合物(1f):3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例4で製造した化合物)
*57: テトラジン化合物(1g):3−メチル−6−(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例5で製造した化合物)
*58: テトラジン化合物(1h):3,6−ビス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例6で製造した化合物)
*59: テトラジン化合物(1i):3,6−ビス(2−チエニル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例7で製造した化合物)
*60: テトラジン化合物(1j):3−メチル−6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例8で製造した化合物)
*61: テトラジン化合物(1k):3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例9で製造した化合物)
*62: テトラジン化合物(1l):3,6−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例10で製造した化合物)
*63: テトラジン化合物(1m):3,6−ビス(2−ピリミジニル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例11で製造した化合物)
*64: テトラジン化合物(1n):3,6−ビス(2−ピラジニル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例12で製造した化合物)
*65: 製造例13で製造した変性S−SBR
*66: 製造例14で製造した変性S−SBR
*67: 製造例15で製造した変性S−SBR
*68: 製造例16で製造した変性S−SBR
*69: 製造例17で製造した変性S−SBR
*70: 製造例18で製造した変性S−SBR
*71: 製造例19で製造した変性BR
*72: 製造例20で製造した変性S−SBR・BR
*73: 製造例21で製造した変性S−SBR・BR
*74: 製造例22で製造した変性S−SBR・BR
*75: 製造例23で製造した変性S−SBR・BR
*76: 製造例24で製造した変性S−SBR・BR
*77: 製造例25で製造した変性E−SBR
*78: 製造例26で製造した変性E−SBR
*79: 製造例27で製造した変性S−SBR・E−SBR
*80: 製造例28で製造した変性NR
*81: 製造例29で製造した変性NR
*82: 製造例30で製造した変性NR・BR
*83: 製造例31で製造した変性NR・BR
*84: 製造例32で製造した変性IR
*85: 製造例33で製造した変性NBR
*86: 製造例34で製造した変性S−SBR・BR
*87: 製造例35で製造した変性S−SBR・BR
*88: 製造例36で製造した変性S−SBR・BR
*89: 製造例37で製造した変性S−SBR・BR
*90: 製造例38で製造した変性S−SBR・BR
*91: 製造例39で製造した変性CR
*92: 製造例40で製造した変性S−SBR・BR
*93: 製造例41で製造した変性S−SBR・BR
*94: 製造例42で製造した変性S−SBR・BR
*95: 製造例43で製造した変性S−SBR・BR
*96: 製造例44で製造した変性S−SBR・BR
【0195】
製造例45:テトラジン変性ポリマーの製造及び構造確認
(1)S−SBR*2(100質量部)及びテトラジン化合物(1b)(5質量部)をバンバリーミキサーで混練した。混合物の温度が130〜150℃に達した時点から、その温度を維持するよう調整しながら約2分間混練し、その後ロールミルで冷却して変性ポリマー(変性S−SBR)を製造した。
【0196】
(2)テトラジン化合物(1b)、S−SBR及びTHF抽出した変性S−SBRをCDClに溶解させて13C−NMRを測定した。テトラジン化合物(1b)の測定結果を図1に、S−SBRの測定結果を図2及び3に、THF抽出した変性S−SBRの測定結果を図4及び5に示す。さらに、テトラジン化合物(1b)、S−SBR及び変性S−SBRの13C−NMRチャートを比較した図を図6に示す。
【0197】
図6より、テトラジン化合物(1b)のピークは消失し、新たに
【0198】
【化13】
【0199】
を示唆するピークが確認された。上記の結果より、明らかにテトラジン化合物(1b)とSBRの二重結合とで逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応が進行したことがわかる。
【0200】
テトラジン化合物は赤〜紫色を有する化合物であり、SBRと練ることでテトラジン特有の色が消失する。テトラジン変性ポリマーの製造例に示すSBR以外のポリマーにおいても同様にテトラジン化合物特有の色が消失することから、ポリマーの二重結合と逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応が進行していることがわかる。
【0201】
実施例1〜129
下記表4〜13の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合物の最高温度が160℃になるように回転数を調整しながら5分間混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表4〜11の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が110℃以下になるよう調整しながら混練して、ゴム組成物を製造した。
【0202】
実施例130〜133
下記表14の工程(A−1)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合物の温度が表14に記載の温度(混合物温度)を保つように回転数を調整しながら、表14に記載する時間(混練時間)混練した後、工程(A−2)に記載の各成分をその割合で投入し、混合物の温度が160℃になるよう調整しながら4分間混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表14の工程(B)に記載の各成分をその割合で加えて、バンバリーミキサーで最高温度が110℃以下になるように回転数を調整しながら1分間混練して、ゴム組成物を製造した。
【0203】
【表4】
【0204】
【表5】
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
【表10】
【0210】
【表11】
【0211】
【表12】
【0212】
【表13】
【0213】
【表14】
【0214】
低発熱性(tanδ指数)試験
下記実施例1〜133のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15Hzでtanδを測定した。比較するために、テトラジン化合物を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(リファレンス)をそれぞれ作製し、そのtanδの逆数をそれぞれ100とした。下記式に基づいて、低発熱性指数を算出した。なお、低発熱性指数の値が大きい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。また、それぞれのリファレンスの加硫ゴム組成物の低発熱性は100とする。
式:低発熱性指数={(テトラジン化合物(1)を添加していないゴム組成物のtanδ)/(本発明のゴム組成物のtanδ)}×100
【0215】
いずれの実施例のゴム組成物もテトラジン化合物を添加しない比較用のゴム組成物に対して優れた耐発熱性を示した。中でも、実施例2、4、7、11、21、22、24、26、27、36、37、41、42、52〜54、73、75、76、81、84、88、122、123及び131〜133のゴム組成物は低発熱性指数130以上140未満を示し、実施例13、29、63、68、72、74、83、85、87、111、113、119、124及び128のゴム組成物は低発熱性指数140以上150未満を示した。さらに、実施例3、5、19、30、35、62、66、67、79、82、99、110、114、116、117、126、127及び129のゴム組成物は、低発熱性指数150以上を示した。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明のゴム組成物は、テトラジン化合物(1)を配合することにより、無機充填材(例えば、シリカ等)及び/又はカーボンブラックの分散性が向上し、低発熱性に優れている。ゴム組成物中に、シランカップリング剤を添加しなくても、ゴム組成物の低発熱性に優れる。よって、各種自動車の各種空気入りタイヤの各部材、特に空気入りラジアルタイヤのトレッド用部材、サイドウォール用部材、ビードエリア用部材、ベルト用部材、カーカス用部材、及びショルダー用部材として利用することができる。
【要約】
ゴム成分に低発熱性を付与するための添加剤であって、
下記一般式(1):
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、添加剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6