【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 平成24年6月7日 販売場所 北陸電力株式会社小松支店 販売日 平成24年6月20日 販売場所 名古屋クロスコートタワー
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の場合、シートの両側部を支持枠により支持しているだけであり、支持枠とシートの間より水が浸入するおそれがある。特許文献2は、取付け柱を起立させて通路の壁に固定する際、壁と取付け柱との間の完全な水密性を実現できる構成にする必要がある。この場合、取付け柱を着脱自在として、且つ、高い水密性を維持することは、技術的に困難である。特許文献3は、止水膜と支柱との間の水密性を実現するため、ローラを用いた挟持機構により止水膜を支柱に押し当てるようにしており、構成が極めて複雑であり、しかも、この構成で完全な水密性を実現することも困難である。特許文献4は、防水シートの両側部を戸当たりに押し付ける機構を採用しているが、この場合も完全な水密性を維持する点で課題がある。さらに、特許文献5の場合、通路口の両側部に予め固定されている縁部シートは、押さえ金具により構造物に押し付けられているだけであり、十分な水密性が得られる構造とは言えない。また、中央部シートは、補強のために左右の壁にチェーンを用いて固定しており、構成が複雑になってしまう。
【0008】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたものであって、建造物の出入り口に対して、防水シートを極めて容易且つ短時間で取り付けることができるとともに、完全な水密性を簡単で廉価な構成により実現することのできるシート式浸水防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシート式浸水防止装置は、建造物の出入り口の一方の側壁に水密に固定され、上部に第1係合板が配設される第1取付部と、前記出入り口の他方の側壁に水密に固定され、上部に第2係合板が配設される第2取付部と、
上端部がパイプを介して前記第1係合板と前記第2係合板とに係合し、前記建造物内への浸水を防止する防水シートと、前記第1取付部と前記第2取付部とに装着され、前記防水シートの側部に連結される連結シートと、前記出入り口の床に形成され、前記防水シートの下端部が固定され、前記防水シートを収納する収納部と、前記第1取付部と前記第2取付部とに配設され、
前記連結シートの押さえ板により上下方向に延在する線状部材を
前記連結シートに当接させ、前記連結シートを前記第1取付部と前記第2取付部とに水密に固定する連結シート押さえ部と、前記収納部に配設され、
前記防水シートの押さえ板により水平方向に延在する線状部材を
前記防水シートに当接させ、前記防水シートの下端部
を前記収納部の内壁に水密に固定する防水シート押さえ部と、前記各連結シートと前記防水シートとを分離可能に連結する第1水密ファスナと、前記収納部に取り付けられ、前記連結シート押さえ部との干渉を回避する切欠部が端部に形成され、前記収納部を閉塞する蓋部と、前記蓋部の所定部位に配設され、前記蓋部により前記収納部が閉塞された状態でクッション部材を介して前記収納部の内壁に当接する脚部と、を備え、前記防水シートは、前記第1水密ファスナにより前記各連結シートから分離された状態で前記収納部に収納可能であることを特徴とする。
【0010】
前記シート式浸水防止装置において、前記防水シートは、上端部にパイプが配設される複数のシート部により構成され、前記各シート部の側部同士が第2水密ファスナにより分離可能に連結され、前記各シート部の上端部は、前記出入り口の所定位置に着脱可能に立設される支持柱の係合板に前記パイプを介して係合されることを特徴とする。
【0011】
また、前記シート式浸水防止装置において、前記第1取付部と、前記第2取付部と、前記支持柱とは、前記出入り口に対して前記防水シートを含む多角形を構成する関係に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート式浸水防止装置では、収納部に収納された防水シートを引き上げ、その上端部のパイプを第1取付部の第1係合板と第2取付部の第2係合板とに係合させ、第1水密ファスナにより各連結シートと防水シートとを連結させることにより、極めて容易且つ短時間で防水シートを取り付けることができる。
【0013】
また、防水シートは、第1取付部及び第2取付部に対して、第1水密ファスナを介して各連結シートに連結されているため、第1取付部及び第2取付部に対する防水シートの高い取り付け精度が要求されることがなく、容易に高い水密性が確保される。
【0014】
また、防水シートに連結される連結シートは、線状部材を介して押さえ板により第1取付部及び第2取付部に水密な状態で固定され、また、防水シートの下端部も同様の構成により水密な状態で収納部に固定される。従って、第1取付部及び第2取付部と連結シートとの間、及び、収納部と防水シートの下端部との間の水密性は、確実に保証され、しかも、簡単で廉価な構成により実現することができる。
【0015】
また、収納部を閉塞する蓋部の端部には、切欠部が形成されているため、防水シートを収納した収納部を蓋部により閉塞させた状態において、連結シート押さえ部と蓋部との干渉を回避することができる。さらに、蓋部には、クッション部材を介して収納部の内壁に当接する脚部が配設されているため、閉塞状態の蓋部の上を人や物が通過する際の騒音の発生を抑えることができる。
【0016】
また、本発明のシート式浸水防止装置は、防水シートを第2水密ファスナにより分離可能な複数のシート部で構成することにより、間口の広い出入り口に対しても適用することができる。
【0017】
さらに、本発明のシート式浸水防止装置は、第1取付部と第2取付部との間に支持柱を立設し、第1取付部、第2取付部及び支持柱を、防水シートを含む多角形を構成する関係に配置することにより、外側に突出した形態の出入り口や外側に開くドアを有する出入り口に対しても適用することができる。
【0018】
本発明のシート式浸水防止装置は、第1取付部及び第2取付部を建造物の側壁に水密に固定し、出入り口の床に収納部を設けるだけでよく、従って、既設の建造物の出入り口に対して、容易に設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
<シート式浸水防止装置10の構成の説明>
図1Aは、防水状態に設定された第1実施形態のシート式浸水防止装置10の斜視図、
図1Bは、防水シート12が収納部14に収納されている第1実施形態のシート式浸水防止装置10の斜視図である。
図2は、使用していない状態における第1実施形態のシート式浸水防止装置10の斜視図である。
図3Aは、防水状態に設定された第1実施形態のシート式浸水防止装置10の正面断面図、
図3Bは、防水シート12が収納部14に収納されている第1実施形態のシート式浸水防止装置10の正面断面図である。
【0022】
シート式浸水防止装置10は、建造物の出入り口の外側部分に設置される。この場合、出入り口には、横方向に移動させることで出入り口を開閉するドア16a、16bが配設されている。
【0023】
シート式浸水防止装置10は、第1取付部20aと、第2取付部20bと、防水シート12と、水密ファスナ22a、22bと、連結シート押さえ部32a、32bと、収納部14と、防水シート押さえ部32cとを備える。
【0024】
第1取付部20aは、建造物の出入り口の一方の側壁18aに水密に固定される本体部26aと、本体部26aにヒンジ28aを介して連結される蓋部30aとを備える。本体部26aには、上下方向に延在する連結シート12aを本体部26aに水密に固定する連結シート押さえ部32aが配設される。本体部26aの上部には、防水シート12の上端部27に装着されたパイプ24の一端部が係合する係合板42a(第1係合板)及びブラケット44aが配設される(
図1A、
図3A)。ブラケット44aは、係合板42aに係合するパイプ24の長手方向に対する位置ずれを規制する。
【0025】
第2取付部20bは、建造物の出入り口の他方の側壁18bに水密に固定される本体部26bと、本体部26bにヒンジ28bを介して連結される蓋部30bとを備える。本体部26bには、上下方向に延在する連結シート12bを本体部26bに水密に固定する連結シート押さえ部32bが配設される。本体部26bの上部には、パイプ24の他端部が係合する係合板42b(第2係合板)及びブラケット44bが配設される。
【0026】
防水シート12は、第1取付部20aと第2取付部20bとの間に配設される。防水シート12の両側部には、第1取付部20a及び第2取付部20bに固定される連結シート12a、12bが連結される。防水シート12と各連結シート12a、12bとは、下端側で連通する1枚のシートから構成される。防水シート12の両側部と各連結シート12a、12bとは、水密ファスナ22a、22b(第1水密ファスナ)により分離可能な状態で連結される。防水シート12の上端部27には、十分な強度を備えた、例えば、金属からなる円筒状のパイプ24が挿入される。パイプ24は、両端部が上端部27の両側に所定量突出する。
【0027】
水密ファスナ22a、22bは、スライダ23a、23b及び連結要素25a、25bを備える。水密ファスナ22a、22bは、スライダ23a、23bを連結要素25a、25bに沿って上又は下に移動させることで、防水シート12と各連結シート12a、12bとを連結し、又は、分離する。この場合、連結要素25aの一方が連結シート12aに固定され、連結要素25aの他方が防水シート12の一方の側部に固定される。同様に、連結要素25bの一方が連結シート12bに固定され、連結要素25bの他方が防水シート12の他方の側部に固定される。
【0028】
図4Aは、第1実施形態のシート式浸水防止装置10における連結シート押さえ部32aの
図3Aに示すIVA−IVA線断面図である。
図4Bは、
図4Aに示す連結シート押さえ部32aの正面図である。
【0029】
本体部26aに配設される連結シート押さえ部32aは、2本の線状部材34a、36aと、押さえ板38aと、複数のボルト40aとを備える。押さえ板38aは、上下方向に延在する。押さえ板38aには、2本の線状部材34a、36aが当接する。線状部材34a、36aは、水平方向に所定距離離間し、互いに平行で上下方向に延在する。連結シート12aは、線状部材34a、36aを介して、押さえ板38aと本体部26aとの間に配設される。連結シート12aは、押さえ板38a側から本体部26aに複数のボルト40aを螺合させることで、本体部26aと押さえ板38aとの間に挟持される。本体部26bに配設される連結シート押さえ部32bは、連結シート押さえ部32aと同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0030】
収納部14は、第1取付部20aと第2取付部20bとの間の出入り口の床に形成され、水密ファスナ22a、22bにより連結シート12a、12bから分離された状態の防水シート12を収納する。
【0031】
収納部14の上部には、ヒンジ46を介して連結される蓋部48が取り付けられる。蓋部48は、収納部14が閉塞された状態において、収納部14の内壁にクッション部材50を介して当接する複数の脚部52を有する。また、蓋部48の長手方向両端部には、収納部14が閉塞された状態において、第1取付部20a及び第2取付部20bから収納部14内に延在する連結シート押さえ部32a、32bとの干渉を回避するための切欠部54a、54bが形成される(
図1A、
図1B、
図2)。
【0032】
図4Cは、収納部14に収納されている防水シート12及び防水シート押さえ部32cの
図3Aに示すIVC−IVC線断面図である。防水シート押さえ部32cは、2本の線状部材34c、36cと、押さえ板38cと、複数のボルト40cとを備える。押さえ板38cは、水平方向に延在する(
図3A)。押さえ板38cには、2本の線状部材34c、36cが当接する。線状部材34c、36cは、上下方向に所定距離離間し、互いに平行で水平方向に延在する。防水シート12の下端部29は、線状部材34c、36cを介して、押さえ板38cと収納部14の内壁との間に配設される。下端部29は、押さえ板38c側から収納部14の内壁に複数のボルト40cを螺合させることで、前記内壁と押さえ板38cとの間に挟持される。
【0033】
<シート式浸水防止装置10の使用に関する説明>
シート式浸水防止装置10を使用しない場合、作業者は、水密ファスナ22a、22bのスライダ23a、23bを引き下げ、連結要素25a、25bによる係合を解除させる。これにより、防水シート12と連結シート12a、12bとが分離される。次いで、パイプ24が係合板42a、42bから取り外され、パイプ24を中心に防水シート12が巻回され、収納部14に収納される(
図1B)。この場合、連結シート12a、12bは、第1取付部20a及び第2取付部20bの連結シート押さえ部32a、32bに残っており、防水シート12のみが収納部14に収納される。従って、作業者は、スライダ23a、23bを下方向に移動させた後、防水シート12を収納部14に収納するだけの作業で、建造物の出入り口を迅速に開放することができる。しかも、この作業は、一人で容易に行うことができる。
【0034】
次いで、作業者は、収納部14の蓋部48と、第1取付部20a及び第2取付部20bの蓋部30a、30bとを閉じる(
図2、
図4C)。この場合、収納部14の蓋部48には、切欠部54a、54bが形成されている。従って、蓋部48は、下端部側が収納部14内に延在する連結シート押さえ部32a、32b(
図1B)に干渉することなく、収納部14を閉塞させることができる。
【0035】
蓋部48により収納部14が閉塞された状態において、人等は、ドア16a、16bを介して出入り口を自由に通行することができる。この場合、収納部14の蓋部48は、
図4Cに示すように、脚部52によって収納部14の内壁に支持されているため、十分な強度が確保されている。従って、蓋部48が湾曲したり、変形してしまうおそれはない。また、脚部52の下端部には、ゴム等からなるクッション部材50が配設されている。そのため、蓋部48の上を人が歩いた場合に、脚部52が収納部14の内壁に直接当たることがなく、騒音の発生を防ぐことができる。
【0036】
次に、豪雨等に対処するため、シート式浸水防止装置10の防水シート12を出入り口に取り付ける場合について説明する。
【0037】
先ず、作業者は、第1取付部20a及び第2取付部20bの蓋部30a、30bを開き、次いで、収納部14の蓋部48を開く(
図1B、
図3B)。次に、作業者は、パイプ24の両端部を把持して防水シート12を収納部14から引き上げる。次いで、作業者は、防水シート12の上端部27に配設されているパイプ24の両端部を本体部26a、26bの係合板42a、42bに係合させる。そして、作業者は、水密ファスナ22aのスライダ23aと、水密ファスナ22bのスライダ23bとを引き上げる。スライダ23a、23bが引き上げられることにより、連結要素25a、25bが係合し、連結シート12a、12bと防水シート12とが連結される。これで防水シート12の装着作業が終了し、豪雨等に対する処置が完了する(
図1A、
図3A)。
【0038】
この場合、作業者は、防水シート12を収納部14から引き上げ、水密ファスナ22a、22bのスライダ23a、23bを引き上げるという極めて簡単な作業を行うだけでよく、一人の作業者がその作業を容易に遂行することができる。また、防水シート12は、上端部27のパイプ24の両端部を係合板42a、42bに係合するだけで本体部26a、26bに保持させることができるため、取り付けの作業も極めて容易である。
【0039】
さらに、防水シート12の両側部に連結される連結シート12a、12bは、連結シート押さえ部32a、32bにより垂直方向に水密に固定されている。すなわち、連結シート12a、12bの左右には、上下方向の全範囲に亘って線状部材34a、36a、34b、36bが当接しており、これらの線状部材34a、36a、34b、36bを介して、押さえ板38a、38bが複数のボルト40a、40bにより固定されている。従って、連結シート12a、12bは、第1取付部20a及び第2取付部20bの本体部26a、26bと、押さえ板38a、38bとの間に隙間なく挟持されて固定される。そのため、第1取付部20a及び第2取付部20bの部分からドア16a、16b側に水が浸入するおそれは全くない。しかも、連結シート12a、12bと防水シート12とは、水密ファスナ22a、22bによって連結されている。この場合、防水シート12の上端部27が第1取付部20a及び第2取付部20bの係合板42a、42bに係合しているため、水圧によって防水シート12が変形するような場合であっても、防水シート12が脱落してしまう事態が生じることはない。また、防水シート12の下端部29は、連結シート押さえ部32a、32bと同様の構成からなる防水シート押さえ部32cにより、水平方向に水密に固定されている(
図4C)。従って、防水シート12の下端部29からドア16a、16b側に水が浸入するおそれも全くない。この結果、シート式浸水防止装置10は、出入り口に対する水の浸入を確実に阻止することができる。
【0040】
<シート式浸水防止装置60の構成の説明>
図5Aは、防水状態に設定された第2実施形態のシート式浸水防止装置60の平面図、
図5Bは、防水状態に設定された第2実施形態のシート式浸水防止装置60の正面断面図である。第1実施形態のシート式浸水防止装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
シート式浸水防止装置60を構成する防水シート62は、中央で分離可能に連結される2つのシート部62c、62dから構成される。シート部62c、62dの各側部には、連結シート押さえ部32a、32bにより第1取付部20a及び第2取付部20bに水密に固定される連結シート62a、62bが連結される。防水シート62は、連結シート62a、62bとシート部62c、62dとを下端部63側で連通する1枚のシートから構成される。防水シート62の下端部63は、防水シート押さえ部32cにより収納部64の内壁に水密に固定される。連結シート62aとシート部62cとの側部同士、シート部62cとシート部62dとの側部同士、及び、シート部62dと連結シート62bとの側部同士は、水密ファスナ66a、66b(第2水密ファスナ)及び66cにより分離可能な状態で連結される。シート部62c、62dの上端部65c、65dには、パイプ68、70が挿入される。なお、水密ファスナ66a〜66cの数は、防水シート62の上端部65c、65dを支持するパイプ68、70の本数に1を加算した数となる。各パイプ68、70は、各両端部が上端部65c、65dの両側に所定量突出する。シート部62c、62dは、シート式浸水防止装置60を使用しない場合、収納部64に収納される。
【0042】
第1取付部20aと第2取付部20bとの間の床には、出入り口に対して着脱可能な支持柱72が立設される。支持柱72の上部には、対向するパイプ68、70の各端部が係合する係合板74が配設される。なお、支持柱72の数は、分割されたシート部62c、62dの数から1を減算した数となる。
【0043】
<シート式浸水防止装置60の使用に関する説明>
シート式浸水防止装置60を使用しない場合、作業者は、水密ファスナ66a〜66cのスライダ69a〜69cを引き下げ、連結要素71a〜71cによる係合を解除させる。これにより、連結シート62aとシート部62c、シート部62cとシート部62d、及び、シート部62dと連結シート62bがそれぞれ分離される。次いで、各パイプ68、70が係合板42a、74及び42bから取り外され、パイプ68、70を中心に各シート部62c、62dが巻回され、収納部64に収納される。そして、作業者は、収納部64の蓋部76と、第1取付部20a及び第2取付部20bの蓋部30a、30bとを閉じる。この場合、蓋部76の両端部には、切欠部78a、78bが形成されている。従って、蓋部76は、連結シート押さえ部32a、32bに干渉することなく、収納部64を閉塞させることができる。なお、第1取付部20aと第2取付部20bとの間の支持柱72は、床から抜き取り、シート部62c、62dとともに収納部64に収納させることができる。
【0044】
このようにして、2個所のシート部62c、62dを収納部64に収納しておくことにより、出入り口に広い間口を確保することができる。
【0045】
一方、シート式浸水防止装置60の防水シート62を出入り口に取り付ける場合、作業者は、第1取付部20a及び第2取付部20bの蓋部30a、30bと、収納部64の蓋部76とを開く。そして、収納部64に収納されている支持柱72を第1取付部20aと第2取付部20bとの間の出入り口の床の所定位置に立設する。次いで、作業者は、パイプ68の両端部を把持してシート部62cを収納部64から引き上げる。次いで、作業者は、上端部65cに配設されているパイプ68の両端部を、第1取付部20aの係合板42aと、支持柱72の係合板74とに係合させる。同様にして、パイプ70の両端部を把持してシート部62dを収納部64から引き上げ、上端部65dに配設されているパイプ70の両端部を、第2取付部20bの係合板42bと、支持柱72の係合板74とに係合させる。そして、水密ファスナ66a〜66cのスライダ69a、69bを引き上げる。この結果、水密ファスナ66a〜66cの連結要素71a〜71cが係合し、連結シート押さえ部32aに固定されている連結シート62aと、シート部62cと、シート部62dと、連結シート押さえ部32bに固定されている連結シート62bとが水密な状態で連結され、防水シート62の装着作業が終了する(
図5B)。
【0046】
この場合、作業者は、2つに分離された防水シート62の各シート部62c、62dを収納部64から別々に引き上げて、第1取付部20aと支持柱72との間、及び、第2取付部20bと支持柱72との間にそれぞれ装着することができる。従って、シート式浸水防止装置60を間口の広い出入り口に適用する場合であっても、取り扱う各シート部62c、62dの重量を、間口の狭いシート式浸水防止装置10(
図1A)の防水シート12の重量に匹敵する軽量なものとすることができる。この結果、作業者は、シート部62c、62dの取り付け作業を極めて容易に行うことができる。なお、防水シート62の水圧に対する耐久性は、幅が防水シート62の略半分である各シート部62c、62dによって確保されるため、1つの防水シート62で構成する場合と比較すると、防水シート62に過大な耐久性が要求されることがない。
【0047】
<シート式浸水防止装置80の構成の説明>
図6Aは、防水状態に設定された第3実施形態のシート式浸水防止装置80の斜視図、
図6Bは、防水状態に設定された第3実施形態のシート式浸水防止装置80の平面図である。第2実施形態のシート式浸水防止装置60と同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0048】
シート式浸水防止装置80は、
図6A及び
図6Bの点線の矢印で示すように、外開きの回動式のドア82a、82bを有する出入り口に適用されるものである。シート式浸水防止装置80は、ドア82a、82bの可動範囲を確保することのできる多角形を構成する略コ字状の形態に設定される。
【0049】
シート式浸水防止装置80を構成する防水シート84は、分離可能に連結される4つのシート部84c〜84fから構成される。シート部84c及び84fの各側部には、連結シート押さえ部32a、32b(
図6B)により第1取付部20a及び第2取付部20bに水密に固定される連結シート84a、84bが連結される。防水シート84は、連結シート84a、84bとシート部84c〜84fとを下端部85側で連通する1枚のシートから構成される。防水シート84の下端部85は、防水シート押さえ部86a〜86cにより収納部88a〜88cの内壁に水密に固定される。連結シート84a、84b及びシート部84c〜84fは、水密ファスナ90a〜90eにより水平方向に分離可能な状態で連結される。シート部84c〜84fの上端部87c〜87fには、パイプ92、94、96、98が挿入される。なお、水密ファスナ90a〜90eの数は、防水シート84の上端部87c〜87fを支持するパイプ92、94、96、98の本数に1を加算した数となる。各パイプ92、94、96、98は、各両端部が上端部87c〜87fの両側に所定量突出する。シート部84cは、収納部88aに収納され、シート部84d、84eは、収納部88bに収納され、シート部84fは、収納部88cに収納される。
【0050】
シート部84c、84d間、シート部84d、84e間、及び、シート部84e、84f間の床には、出入り口に対して着脱可能な支持柱100a〜100cが立設される。なお、支持柱100a〜100cの数は、分割されたシート部84c〜84fの数から1を減算した数となる。また、支持柱100a〜100cを立設する位置は、ドア82a、82bの可動範囲を考慮して設定される。従って、第1取付部20aと第2取付部20bと支持柱100a〜100cとは、通路に対して防水シート84を含む多角形を構成する関係に配置される。支持柱100aの上部には、パイプ92及び94の各端部が係合する係合板102a及び102bが配設される。支持柱100bの上部には、パイプ94及び96の各端部が係合する係合板102cが配設される。支持柱100cの上部には、パイプ96及び98の各端部が係合する係合板102d及び102eが配設される。
【0051】
<シート式浸水防止装置80の使用に関する説明>
シート式浸水防止装置80を使用しない場合、作業者は、水密ファスナ90a〜90eのスライダ91a〜91eを引き下げ、連結要素93a〜93eによる係合を解除させる。これにより、連結シート84a、84b、シート部84c〜84fがそれぞれ分離される。次いで、各パイプ92、94、96、98が係合板42a、102a〜102e及び42bから取り外される。その後、パイプ92を中心にシート部84cが巻回されて収納部88aに収納され、パイプ94、96を中心にシート部84d、84eが巻回されて収納部88bに収納され、パイプ98を中心にシート部84fが巻回されて収納部88cに収納される。そして、作業者は、収納部88a〜88cの蓋部104a〜104cと、第1取付部20a及び第2取付部20bの蓋部30a、30bとを閉じる。この場合、収納部88aの蓋部104aの端部と、収納部88cの蓋部104cの端部とには、切欠部106及び108がそれぞれ形成されている。従って、蓋部104a及び104cは、連結シート押さえ部32a、32bに干渉することなく、収納部88a及び88cを閉塞させることができる。なお、各支持柱100a〜100cは、床から抜き取り、シート部84c〜84fとともに収納部88a〜88cに収納させることができる。
【0052】
シート式浸水防止装置80の防水シート84を出入り口に取り付ける場合、作業者は、第2実施形態のシート式浸水防止装置60と同様に、支持柱100a〜100cを出入り口の床の所定位置に立設する。次いで、作業者は、各パイプ92、94、96、98の両端部を把持してシート部84c〜84fを収納部88a〜88cから引き上げる。次に、作業者は、上端部87c〜87fに配設されているパイプ92、94、96、98の各両端部を、第1取付部20a、支持柱100a〜100c及び第2取付部20bの各係合板42a、102a〜100e及び42bに係合させる。そして、水密ファスナ90a〜90eのスライダ91a〜91eを引き上げる。この結果、水密ファスナ90a〜90eの連結要素93a〜93cが係合し、防水シート84が1枚のコ字状に設定された状態となり、防水シート84の装着作業が終了する(
図6A)。
【0053】
この場合、作業者は、防水シート84の各シート部84c〜84fを収納部88a〜88cから別々に引き上げ、容易に装着作業を行うことができる。また、防水シート84は、コ字状に配置されるため、
図6A、
図6Bに示すドア82a、82bの可動範囲を確保した状態で、浸水防止を図ることができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0055】
本実施形態では、防水シートの材料について特に規定していないが、想定される水深や水圧を考慮して、水平方向の水圧に十分に耐えることのできる材料を選択することが望ましい。
【0056】
本実施形態では、防水シートは、パイプに巻回させた状態で収納部に収納させるものとしているが、収納部に収納できる形態であれば、これに限定されるものではなく、例えば、折り畳んだ状態で収納部に収納してもよい。
【0057】
本実施形態では、防水シートの上端部に配設されるパイプを円筒状の金属としているが、必要な強度が得られるものであれば、これに限定されるものではなく、使用目的に応じて、例えば、炭素繊維、樹脂材料、角柱形状等、種々の材質や形状のものを適用することができる。なお、1本のパイプの長さは、3m以内に設定することが好ましい。
【0058】
本実施形態では、防水シートの上端部のパイプを係合させるために、係合板を配設しているが、防水シートの上端部を支持できるものであれば、これに限定されるものではなく、例えば、係合板に代えて、パイプの端部を係合保持するチャック機構等を適用することもできる。
【0059】
また、前記係合板は、防水シートの上端部のパイプが脱落しない機能を有していることが望ましい。従って、係合板は、第1取付部及び第2取付部側に所定角度傾斜して設定することが好ましい。また、係合板の上面に対して、パイプを係止させることのできる摩擦部材を配設してもよい。
【0060】
本実施形態では、防水シートの装着位置について特に規定していないが、一人の作業者が防水シートを収納部から引き上げ、第1取付部及び第2取付部の係合板に係合させるためには、適応させる水面高さにもよるが、作業者の身長を考慮した高さに設定することが好ましい。防水シートの高さは、例えば、人の平均的な身長を考慮して、150cm以内に設定すると好適である。
【0061】
第2実施形態では、防水シートを2つのシート部に分割しているが、通路の間口の広さ、作業性を考慮した各シート部の重量等に応じた分割数であれば、2分割に限定されるものではなく、例えば、3分割以上とすることもできる。なお、各シート部の上端部に配設されるパイプの重量を加算した各シート部の重量は、一人の作業者が防水シートを比較的容易に引き上げることのできる範囲として、例えば、20kg以下となるように、分割数やシート部の材料を適宜選択することが好ましい。また、分割数を決める際、シート部の幅が高さの半分以上の長さとなるように設定することが好ましい。
【0062】
第2実施形態及び第3実施形態では、防水シートの上端部を支持する支持柱を床に対して着脱自在に構成しているが、シート式浸水防止装置を使用しない状態において、通行を妨げないものであれば、これに限定されるものではない。例えば、シート式浸水防止装置を使用しない場合、床に横臥状態に配置可能な形態、床の鉛直下方向にスライドさせて収納する形態等を適用することができる。
【0063】
第3実施形態では、防水シートを略コ字状の形態に設定しているが、出入り口に配設されるドア等の建造物の形状、可動範囲等を阻害しない形態であれば、これに限定されるものではない。例えば、第3実施形態では、防水シートにより方形状の領域を確保しているが、出入り口に対して多角形を構成する関係となるように、防水シート及び支持柱の配置を選択することができる。なお、防水シートを構成する隣接するシート部間の角度は、角度をθとすると、50°<θ<180°の範囲で選択することが可能である。