(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148809
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】穿孔の中心点を決めるための位置決め装置を有するシステム機器
(51)【国際特許分類】
B23B 49/00 20060101AFI20170607BHJP
B23B 45/00 20060101ALI20170607BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
B23B49/00 A
B23B45/00 Z
B23Q17/24 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-543408(P2015-543408)
(86)(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-500029(P2016-500029A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2013074137
(87)【国際公開番号】WO2014079829
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年7月4日
(31)【優先権主張番号】102012221262.0
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン サットラー
(72)【発明者】
【氏名】ガーボア ヴィダ
【審査官】
永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04597185(US,A)
【文献】
特開2000−354904(JP,A)
【文献】
特開2001−030105(JP,A)
【文献】
特開2012−121089(JP,A)
【文献】
特開2002−086442(JP,A)
【文献】
特開2000−343309(JP,A)
【文献】
米国特許第05302045(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0104731(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0105978(US,A1)
【文献】
米国特許第5660508(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 49/00
B23B 45/00
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心点(M)を有する孔(26)を基板(22)に掘削するためのシステム機器であって、
駆動軸(15)に取り付けることができるとともに回転軸(17)の周囲を回ることができる掘削ヘッド(14)を有する第1の電動工具(12)と、
駆動軸(15)に取り付けることができるとともに回転軸(17)の周囲を回ることができる掘削ヘッド(14)を有する第2の電動工具(12)と、
前記第1または第2の電動工具(12)を保持するガイドレール(23)とガイドブロック(24)とを有する工具スタンド(11)と、
前記ガイドレール(23)に沿って前記第1または第2の電動工具(12)を動かす送り機構(13)と、
掘削の対象となる前記孔(26)の前記中心点(M)を決めるための位置決め装置(27)であって、前記位置決め装置(27)は、前記ガイドレール(23)に取り付けるための留め具(41)を備える
システム機器において、
前記位置決め装置(27)は、1つまたは複数のレーザービーム(37.1、37.2)を発する発光体(34)を有するレーザ装置(31)を備え、前記留め具(41)は前記第1の電動工具用の第1のアダプター部品(51)及び前記第2の電動工具用の第2のアダプター部品(52)を備え、前記レーザ装置(31)はコネクタ(33)を介して前記第1のアダプター部品(51)または前記第2のアダプター部品(52)に接続可能である、
ことを特徴とするシステム機器。
【請求項2】
中心点(M)を有する孔(26)を基板(22)に掘削するためのシステム機器であって、
駆動軸(15)に取り付けることができるとともに回転軸(17)の周囲を回ることができる掘削ヘッド(14)を有する電動工具(12)と、
前記電動工具(12)を保持するガイドレール(23)とガイドブロック(24)とを有する第1の工具スタンド(11)と、
前記電動工具(12)を保持するガイドレール(23)とガイドブロック(24)とを有する第2の工具スタンド(11)と、
前記第1または第2のガイドレール(23)に沿って前記電動工具(12)を動かす送り機構(13)と、
掘削の対象となる前記孔(26)の前記中心点(M)を決めるための位置決め装置(27)であって、前記位置決め装置(27)は、前記第1または第2のガイドレール(23)に取り付けるための留め具(41)を備える
システム機器において、
前記位置決め装置(27)は、1つまたは複数のレーザービーム(37.1、37.2)を発する発光体(34)を有するレーザ装置(31)を備え、前記留め具(41)は前記第1の工具スタンド用の第1のアダプター部品(51)及び前記第2の工具スタンド用の第2のアダプター部品(52)を備え、前記レーザ装置(31)はコネクタ(33)を介して前記第1のアダプター部品(51)または前記第2のアダプター部品(52)に接続可能である、
ことを特徴とするシステム機器。
【請求項3】
前記第1の電動工具と第2の電動工具とは、または前記第1の工具スタンドと前記第2の工具スタンドとは、各々前記駆動軸(15)と前記ガイドレール(23)との距離が異なっている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のシステム機器。
【請求項4】
前記留め具(41)が磁石を有する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のシステム機器。
【請求項5】
前記位置決め装置(27)が前記ガイドレール(23)に面する側面に案内を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1に記載のシステム機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載する穿孔の中心点を決めるための位置決め装置を有するシステム機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、工具スタンドと、工具スタンドに可動に配置された電動工具と、工具スタンドに沿って電動工具を動かす送り機構から成るシステム機器を記載している。電動工具はコアドリルとして構成され、駆動軸に取り付けられて回転軸の周囲を回ることができる掘削ヘッドを備える。掘削ヘッドは基板に特定の直径と中心点を有する穿孔を作る。工具スタンドはコアドリルを保持するガイドレールとガイドブロックとを備え、コアドリルはガイドブロックを介してガイドレールに配置され、送り機構によってガイドレール沿いに動かすことができる。
【0003】
所望の穿孔の中心点と回転軸とを直線上に並べるため、システム機器はレーザ源として構成される発光体を持つ位置決め装置を有する。レーザ源は、作業の対象となる基板の表面に回転軸の位置を印す1つまたは複数のレーザビームを発する。位置決め装置のハウジングは円筒形状でネジ接続を備え、位置決め装置はそれにより駆動軸にねじ止めされている。
【0004】
特許文献2は、穿孔の中心点を決めるためのもう1つの既知のシステム機器用の位置決め装置を開示している。このシステム機器は、コアドリルと、工具スタンドと送り機構とを備えている。位置決め装置は1つまたは複数のレーザビームを発するレーザ源を有し、磁石により駆動軸に取り付けられている。
【0005】
穿孔の中心点を決める既知の位置決め装置の問題は、位置決め装置が駆動軸に取り付けられていることである。位置決め装置が穿孔の中心点を決めて回転軸と穿孔の中心点を直線上に並べることができるように
するためには、その前に掘削ヘッドを駆動軸から取り外さなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国実用新案登録第202004005221号明細書
【特許文献2】特開2000−354904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、操作者の作業量を減らすために、穿孔の中心点を迅速かつ高精度に決める位置決め装置の開発である。穿孔の中心点を決めるために掘削ヘッドを取り外す必要性をなくすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項である請求項1に記載の本発明のシステム機器の特徴により達成される。有利な実施例については、従属項から導き出すことができる。
【0009】
本発明では、留め具により位置決め装置をガイドレールに取り付けることができる。位置決め装置をガイドレールに取り付けることができるため、回転軸が穿孔の中心点と直線上に並んだ時でも、掘削ヘッドは駆動軸に装着したままで良い。操作者は送り機構を介してガイドブロック及び電動工具を上に動かすので、掘削ヘッドの底部と基板との間に十分な位置決め装置用の空間ができる。位置決め装置はガイドレールに配置され、留め具は位置決め装置をガイドレールに固定する。
【0010】
留め具は磁石を有することが好ましい。磁石により位置決め装置の組立て及び分解を容易に行うことができるうえ、磁石は位置決め装置をガイドレールに固定する。本発明の位置決め装置は、掘削する孔の中心点を迅速に決めることができる。
【0011】
位置決め装置は、ガイドレールに面する側面に案内を有することが好ましい。ガイドレールに適合したこの案内を介して、位置決め装置のアラインメントが定められ、レーザマーキングが駆動軸と掘削ヘッドとの回転軸と一致することが保証される。位置決め装置の正確なアラインメントは、磁石として構成される留め具には特に重要であり、それによって掘削する孔の中心点を正確に定めることができる。
【0012】
好ましい実施例において、位置決め装置は、発光体を有するレーザ装置と留め具を有するアダプター部品とを備え、レーザ装置とアダプター部品がコネクタを介して接続することができることを特徴とする。2つの部分で構成される位置決め装置はレーザ装置とアダプター部品から成り、この構成により位置決め装置は異なる工具スタンド及び/又は異なる電動工具で使用することができる。電動工具の駆動軸と工具スタンドのガイドレールとの距離は、電動工具及びガイドレールに合わせて変えることができるので、位置決め装置を異なる工具スタンドまたは電動工具で使用する際には、その距離を考慮に入れる必要がある。
【0013】
システム機器は、第1の電動工具または第1の工具スタンド用の第1のアダプター部品と、第2の電動工具または第2の工具スタンド用の第2のアダプター部品とを備えることが特に好ましい。ここで第1の電動工具及び第2の電動工具または第1の工具スタンド及び第2の工具スタンドは、駆動軸とガイドレールの距離が異なる。電動工具の駆動軸と工具スタンドのガイドレールの距離は、アダプター部品により調整される。適合するアダプター部品は、各電動工具及び各工具スタンド用に提供されている。発光体を有するハウジング部は適合するアダプター部品とともに組立てられ、その後ガイドレールに取り付けられる。
【0014】
以下では図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。図面は実施例を縮尺通りに表わすものではないが、概略的及び/又はそれに準ずる形で明確に図示することが必要なため図面を提供している。図面から直接導き出すことができる追加的事項については、関連の先行技術を参照されたい。しかし、本発明の一般的な概念から逸脱しない限り、形状及び実施例の詳細については変更が可能であることは考慮されるべきである。発明の詳細な説明、図面、及び請求項に記載の本発明の特徴は、発明の個々の改良及び所望の組み合わせにも不可欠となり得る。発明の詳細な説明、図面、及び/又は請求項の記載する少なくとも2つの特徴の組み合わせはすべて、本発明の範囲内である。本発明の一般的概念は、以下で記載する好ましい実施例そのものまたはその詳細に限られるものでも、請求項に記載された発明の要旨との比較において限定されるであろう要旨に限られるものでもない。境界が特定された範囲内のいかなる数値も、境界値として開示され、所望の使用及び請求の対象となる。同一若しくは類似の部品または同一若しく類似の特徴を有する部品は、明瞭性確保のため、以下では同じ参照番号を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】コアドリルと工具スタンドから成り、穿孔の中心点を決めるための位置決め装置が取り付けられたことを特徴とする本発明のシステム機器を示す図である。
【
図2】
図1の工具スタンド及びレーザマーキーングを生成するレーザ装置並びに磁石によりガイドレールに取り付けられたアダプター部品を有する位置決め装置を示す図である。
【
図3】レーザ装置と様々なコアドリルまたは工具スタンド用の複数のダプター部品とを有する
図2の位置決め装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明のシステム機器10を示す。システム機器10は、工具スタンド11と、工具スタンド11に可動に配置される電動工具12と、工具スタンド11に沿って電動工具12を動かす送り機構13から成る。
【0017】
電動工具はコアドリル12として構成され、掘削ヘッド14として構成される加工工具を備える。掘削ヘッド14は、駆動軸15に配置され、回転軸17の周囲を回るように駆動手段16により駆動される。「駆動手段」という用語は、駆動軸15を除く、掘削ヘッド14用の全ての駆動部品を総称したものである。
図1に概略的に示される駆動手段16は、機器のハウジング18に配置される。
【0018】
工具スタンド11は、作業対象となる基板22に取り付けられた底板21と、底板21に接続されたガイドレール23とから成る。コアドリル12はガイドブロック24を介してガイドレール23に配置され、送り機構13によりガイドレール23沿いに送り方向25に向かって回転軸17と平行に動かすことができる。掘削ヘッド14は、直径D及び中心点Mを有する孔26を基板に掘削する。この直径Dは掘削ヘッド14の直径に対応し、穿孔26の中心点Mは掘削ヘッド14の回転軸17上に位置する。
【0019】
基板22に孔が掘削される前にオペレーターは、掘削ヘッド14の回転軸17が所望の穿孔26の中心点Mに一致するように掘削ヘッド14の位置決めを行う必要がある。迅速かつ高精度に穿孔26の中心点Mを位置決めするために、システム機器10は掘削ヘッド14の位置決めを行う装置27を有している。位置決め装置27はガイドレール23に取り付けられ、基板22の表面28にレーザマーキーングを印す。
【0020】
図2は、ガイドレール23に取り付けられた
図1の位置決め装置27を示す拡大図である。位置決め装置27は、レーザ装置31とアダプター部品32の2つの部分から成る。レーザ装置31とアダプター部品32は、アダプターラッチとして構成されるコネクタ33を介してお互いに接続されている。
【0021】
レーザ装置31は、ハウジング部36に配置されるビームユニット34及び電源35を備える。ビームユニットは、交点で交わりお互いに垂直な2つの線形レーザビーム37.1、37.2を生成する。2つのレーザビーム37.1、37.2の交点は、掘削ヘッド14の回転軸17を示す。ハウジング部36のオン−オフスイッチ38で、レーザ装置31のスイッチを入れる。スイッチを入れた後、
ビームユニット34が2つの線状レーザビーム37.1、37.2を発する。スイッチを入れたレーザ装置31は、もう一度オン−オフスイッチ38を押してスイッチを切る。さらに、例えば1分間等、予め設定した時間の経過後、レーザ装置31は自動的にスイッチが切れる。
【0022】
アダプター部品32は、位置決め装置27をガイドレール23に取り付ける役割をする。アダプター部品32には、ガイドレール23に取り付ける磁石41として構成された留め具がある。磁石41により位置決め装置27の組立て及び分解が容易にできるようになるだけでなく、位置決め装置27をガイドレール23に固定する。磁石41の形状、強度及び磁石の数はレーザ装置31に適合させられている。例えば、強度の高い磁石を1つ使うのではなく、それほど強度の高くない複数の磁石を留め具として使用している。
【0023】
ガイドレール23に面するアダプター部品32の裏には、ガイドレール23に適合する案内42がある。案内42を介して位置決め装置27のアラインメントが定められ、2つの線状レーザビーム37.1、37.2の交点が駆動軸15及び掘削ヘッド14の回転軸17と一致することが保証される。アダプター部品32は、案内42を介してガイドレール23沿いに上向きまたは下向きに動かすこともできる。
【0024】
位置決め装置27を用いて穿孔26の中心点Mの位置を決めるには、コアドリル12を上方に移動させ、掘削ヘッド14と作業対象となる基板22の表面28との間に、位置決め装置27をガイドレール23に取り付けるための十分な空間ができるようにする。位置決め装置27はガイドレール23に配置され、磁石41は位置決め装置27をガイドレール23に固定する。次に、オン−オフスイッチ38でレーザ装置31のスイッチを入れる。
【0025】
図3は、レーザ装置31及び複数のアダプター部品51、52、53を有する位置決め装置27を示す。アダプター部品51、52、53は、異なる工具スタンド及び/またはコアドリルに適合し、それぞれ奥行が異なる。大きな掘削ヘッド14を有するコアドリルに適したドリルスタンドは、小さな掘削ヘッド14を有するコアドリルにのみ適したドリルスタンドよりも、ガイドレール23と駆動軸15の距離がより大きい。ガイドレール23と駆動軸15の距離の違いは、アダプターの奥行を変えることで対応する。
【0026】
レーザ装置31は、アダプターラッチ33経由でアダプター部品51、52、53に接続されている。レーザ装置31のハウジング36では、2つのタブ54がアダプター部品51、52、53の嵌合溝55に挿入され、そこで締結されている。