特許第6148839号(P6148839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6148839太陽電池パネルの設置構造、及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148839
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】太陽電池パネルの設置構造、及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20140101AFI20170607BHJP
   E04D 13/10 20060101ALI20170607BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20170607BHJP
【FI】
   E04D13/18ETD
   E04D13/10 Z
   H02S20/23 A
   H02S20/23 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-210361(P2012-210361)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-66020(P2014-66020A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
(72)【発明者】
【氏名】田澤 浩臣
(72)【発明者】
【氏名】西田 和倫
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/044845(WO,A1)
【文献】 特開2004−332384(JP,A)
【文献】 特開2004−211372(JP,A)
【文献】 特開2001−234619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00、13/10、13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に固定された取付材と、該取付材に、その水上側の端縁の底面を載置させるか又は端縁の側縦面を沿わせる太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの水上端を押さえて前記取付材に固定される押さえ材と、からなり、
前記取付材又は前記押さえ材に前記太陽電池パネル表面より上面側に延出して堰き止めた雪を水上側に隣り合う太陽電池パネルとの配設間隔からその裏面空間に落とすことができる突出部を設けたことを特徴とする太陽電池パネルの設置構造。
【請求項2】
突出部を設けた取付材又は押さえ材は連続材であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池パネルの設置構造。
【請求項3】
太陽電池パネルの水下端を固定部材にて押さえ保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池パネルの設置構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の太陽電池パネルの設置構造を施工する方法であり、
下地に取付材を固定する第1工程の後、
前記取付材に、太陽電池パネルの水上側の端縁の底面を載置させるか又は端縁の側縦面を沿わせるする工程と、
前記太陽電池パネルの水上端を押さえる押さえ材を前記取付材に固定する工程と、を行い、
前記取付材又は前記押さえ材に突出部を設け、前記太陽電池パネル表面より上面側に延出させることを特徴とする太陽電池パネルの設置構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルを容易に設置することができ、しかも太陽電池パネルの表面より上面側に延出する雪止め具等の突出部を、太陽電池パネル自体の強度を低下させること無く容易に取り付けることができる太陽電池パネルの設置構造、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池を屋根上に設置或いは屋根材として敷設した場合、降雪等による積雪に対し、以下のような対策が取られている。
例えば特許文献1には、太陽電池瓦1の軒側に固定した横フレーム2bに雪止め具5を固定する構成が記載され、特許文献2には、太陽電池モジュール10の水下側に雪止部材160を配設した構造が記載され、特許文献3には、雪止部1b及び回転防止部bcを有する雪止め部材1を、フレーム部材3を介して太陽電池モジュール2に固定する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3700646号公報
【特許文献2】特開2009−299451号公報
【特許文献3】特開2006−278671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1〜3等に記載の提案では、雪止め具自体に固定部が設けられ、該固定部をフレーム等に固定する構成であるため、雪止め具に積雪や雪の滑落等の荷重が作用してフレーム等の変形や強度低下などを引き起こすおそれがあった。
また、前記提案では、前記雪止め具で雪の滑落を防ぐものであるが、雪の滑落を防ぐことにより積雪部分が太陽電池の受光面積を減少させ、その結果、発電量の低下に繋がるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、太陽電池パネルを容易に設置することができ、しかも太陽電池パネルの表面よりを上面側に延出する雪止め具等の突出部を、太陽電池パネル自体の強度を低下させること無く容易に取り付けることができる太陽電池パネルの設置構造、及びその施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、下地に固定された取付材と、該取付材に、その水上側の端縁の底面を載置するか又は端縁の側縦面を沿わせる太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの水上端を押さえて前記取付材に固定される押さえ材と、からなり、前記取付材又は前記押さえ材に前記太陽電池パネル表面より上面側に延出して堰き止めた雪を水上側に隣り合う太陽電池パネルとの配設間隔からその裏面空間に落とすことができる突出部を設けたことを特徴とする太陽電池パネルの設置構造に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記太陽電池パネルの設置構造において、突出部を設けた取付材又は押さえ材は連続材であることを特徴とする太陽電池パネルの設置構造をも提案する。
【0009】
また、本発明は、前記太陽電池パネルの設置構造において、太陽電池パネルの水下端を固定部材にて押さえ保持することを特徴とする太陽電池パネルの設置構造をも提案する。
【0010】
さらに、本発明は、前記太陽電池パネルの設置構造を施工する方法であって、下地に取付材を固定する第1工程の後、前記取付材に、太陽電池パネルの水上側の端縁の底面を載置するか又は端縁の側縦面を沿わせる工程(以下、パネル敷設工程という)と、前記太陽電池パネルの水上端を押さえる押さえ材を前記取付材に固定する工程(以下、押さえ材取付工程という)と、を行い、前記取付材又は前記押さえ材に突出部を設け、前記太陽電池パネル表面より上面側に延出させることを特徴とする太陽電池パネルの設置構造の施工方法をも提案するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽電池パネルの設置構造は、太陽電池パネル表面より上面側に延出する突出部が、取付材又は押さえ材に設けられているため、突出部に作用する例えば積雪や雪の滑落、風の吹き付け等の荷重を下地に負担させることができる。そのため、従来構造のように雪止め具に作用する荷重を、太陽電池パネルを構成するフレーム等に作用させて変形や強度低下を引き起こすことが決してない。また、太陽電池パネルを構成するフレーム等の形状や寸法などに影響されることなく強固に固定できるので、各種の太陽電池パネルに対して適用できる。
また、太陽電池パネルの水上側の端縁の底面を載置するか又は端縁の側縦面を沿わせる共に押さえ材にて保持する構造であって、上方へ延出する突出部も太陽電池パネルの水上端に設けられる構造となるので、突出部にて雪や雨水を、太陽電池パネルの水上端側から配設間隔へ、更には裏面空間に落としたり、流下させることができるため、雪の堰き止めが生ずることがなく、該堰き止め(にて遮光されること)による効率低下を防ぐこともできる。
さらに、前記突出部は、太陽電池パネルの裏面空間内の空気を排出する作用も果たすので、太陽電池パネルの裏面空間内の排熱が円滑に行え、太陽電池セルの発電効率の低下を抑制することができる。
しかも、この裏面空間の排熱が太陽電池パネルの配設間隔又はその裏面空間に落とした雪を円滑に溶かし、逆に裏面空間に落とされた雪が裏面空間の温度上昇の抑制に寄与するものとなる。
【0012】
また、突出部を設けた取付材又は押さえ材が連続材である場合には、突出部の長さを長く連続状に形成することもできるため、必要に応じて雪止め作用等を増強することも可能となる。
【0014】
さらに、太陽電池パネルの設置構造の施工方法は、下地に取付材を固定する第1工程の後、パネル敷設工程と押さえ材取付工程との何れを先に行ってもよく、何れにしても下地に先に取付材を取り付けた後に太陽電池パネルを配設するので、極めて容易に太陽電池パネルを配設することができ、少なくとも対向方向におけるズレを生ずること無く適正な位置に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明の第1実施例の太陽電池パネルの設置構造を施工する方法における第1工程を示す断面図、(b)そのパネル敷設工程と押さえ材取付工程とを示す断面図、(c)施工された太陽電池パネルの設置構造(第1実施例)の要部を示す断面図である。
図2】第1実施例に用いた取付材等を示す斜視図である。
図3】(a)本発明の別の実施例(第2実施例)の太陽電池パネルの設置構造を施工する方法における第1工程を示す断面図、(b)施工された太陽電池パネルの設置構造(第2実施例)の要部を示す断面図、(c)別の実施例(第3実施例)の太陽電池パネルの設置構造の要部を示す断面図、(d)別の実施例(第4実施例)の太陽電池パネルの設置構造の要部を示す断面図、(e)別の実施例(第5実施例)の太陽電池パネルの設置構造の要部を示す断面図、(f)別の実施例(第6実施例)の太陽電池パネルの設置構造の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の太陽電池パネルの設置構造は、下地に固定された(A)取付材と、該取付材に、その対向する一方側(例えば水上側とする)を載置又は沿設する(B)太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの対向する一方側(この場合も水上側となる)を押さえて前記取付材に固定される(C)押さえ材と、からなり、前記取付材又は前記押さえ材に前記太陽電池パネル表面より上面側に延出する突出部を設けたことを特徴とする。
この構成により、太陽電池パネル表面より上面側に延出する突出部が、取付材又は押さえ材に設けられているため、突出部に作用する積雪や雪の滑落等の荷重を下地に負担させることができる。そのため、従来構造のように雪止め具に作用する荷重を、太陽電池パネルを構成するフレーム等に作用させて変形や強度低下を引き起こすことがない。また、太陽電池パネルを構成するフレーム等の形状や寸法などに影響されることなく強固に固定できるので、広範な各種の太陽電池パネルに対して適用でき、実用的価値が高い。以下、本発明に用いる(A)取付材、(B)太陽電池パネル、及び(C)押さえ材について説明する。
【0017】
(A)取付材
本発明に用いる取付材は、既存屋根や既存屋根に取り付けられる架台等の下地に取り付けられるものであり、ピース材又は通し材(連続材)からなり、太陽電池パネルの端縁が載置状又は沿設状に配設されるものである。
【0018】
また、前記下地は、前述のように太陽電池パネルを敷設する既存の瓦、スレート、金属等の公知の屋根であっても、これらの既存屋根に取り付けられる鋼材等を組み合わせた架台等であってもよい。後述する(B)太陽電池パネルは、この下地上に空間(裏面空間)を介して取り付けられ、この裏面空間は少なくとも流れ方向に連通している。また、この裏面空間は、取付材を取り付けた(下地の)取付箇所より下方部分をも含む。
【0019】
(B)太陽電池パネル
本発明に用いる太陽電池パネルは、前述のように平面形状を略矩形状に形成されるものであって、二対の対向する端縁が形成されるが、前記(A)取付材に、その対向する一方側の端縁を載置又は沿設する。なお、前記「対向する一方側」とは、この太陽電池パネルを敷設した状態において対向する辺の一方側を指すものであり、原則的にはパネルの敷設方向と大凡一致するが、実質的にパネル自体の長辺とか短辺とかを指すものと見なしても何等支障はない。要するに太陽電池パネルの何れの端縁でもよいが、前記(A)取付材に載置又は沿設する側の端縁と、後述する(C)押さえ材にて押さえ保持される端縁とが、同じ端縁であることを示している。したがって、当然のことながら予め太陽電池パネルの配設方向は施工以前に特定され、それに応じて取付材や押さえ材の形状等も決定しているので、施工に際して任意に端縁を変更されるものではない。そして、その敷設方向は、下地の流れ方向でも桁行き方向でもよく、或いは流れ方向(傾斜)が明瞭でない略平坦状に敷設する場合などには、それらに限定するものではない。
この太陽電池パネルは、結晶系等の太陽電池セルをガラス等に積層させてモジュール化したものであっても、アモルファス等の薄膜のものであってもよく、薄膜等にあっては、基材となる金属板等に一体化してシート状(板状)或いはボード状にしたものであってもよい。
また、太陽電池パネルは、上記のモジュール、シート、ボード等をそのまま敷設するものでも、周縁に枠体(フレーム)を配して敷設するものでもよい。
さらに、発電量を増大させるために両面受光(発電)型の太陽電池を用いてもよく、この場合、太陽電池の裏面側に反射部を介在させればよく、下地が兼用するものでも別途設けるものでもよい。
そして、この太陽電池パネルは、太陽電池セルやモジュールの周縁に枠体(フレーム)を配した状態で製品とされており、前述のように雪止め具等をフレームに取り付ける仕様は、フレームの強度低下の観点から到底看過されないことが多い。
【0020】
(C)押さえ材
本発明に用いる押さえ材は、前記(B)太陽電池パネルの対向する一方側の端縁を押さえる部材を指し、前記(A)取付材に固定されるものである。例えば前記取付材に、太陽電池パネルの水上側の端縁を沿わせて配設した場合には、太陽電池パネルの水上側の端部をこの押さえ材にて押さえるように配設して固定する。即ち(A)取付材に載置又は沿設させた側の(B)太陽電池パネルの端縁をこの(C)押さえ材にて固定するものである。その固定方法は、ビス等による直止め、ボルトナットによる締着、係合や嵌合等の公知の固定方法であればよい。また、この押さえ材はピース材であっても通し材(連続材)であってもよい。
【0021】
さらに、本発明に用いる突出部は、前述のように前記構成の(A)取付材又は前記構成の(C)押さえ材に一体に形成されるものであっても、突出部を備える別部材を(A)取付材又は(C)押さえ材に組み付ける(取り付ける)ものであってもよい。別部材を取り付ける場合、その取付方法、ビス等による直止め、ボルトナットによる締着、係合、嵌合等が想定される。また、突出部は、連続材が好ましいが、雪止め、空気の排出効果が得られれば必ずしも連続材に限定するものではない。
また、この突出部は、前述のように雪止め、空気の排出効果を目的に設けられるものであるから、例えば流れ方向が明らかである下地、即ち勾配のある下地に対して太陽電池パネルを配設する場合には水上側に設けることが好ましいが、例えば略平坦状の下地、即ち勾配が殆ど無い下地に対して太陽電池パネルを配設する場合には、設置条件(風向き等)を考慮して設ければよい。
【0022】
本発明では、前記(A)取付材に(B)太陽電池パネルの対向する一方側を配設し、この(B)太陽電池パネルの対向する一方側を(C)押さえ材にて押さえる(=保持する)構成であり、(B)太陽電池パネルの対向する他方側については特に限定しないが、後述する図示実施例に示すように固定部材等にて保持すればよい。
【0023】
そして、本発明では、前述のように(B)太陽電池パネル表面より上面側に延出する突出部が、(A)取付材又は(C)押さえ材に設けられている構成であるため、突出部に作用する例えば積雪や雪の滑落、風の吹き付け等の荷重を、太陽電池パネルを構成するフレーム等に作用させずに、下地に負担させることができる。そのため、太陽電池パネルの変形や強度低下を引き起こすことがなく、また太陽電池パネルを構成するフレーム等の形状や寸法などに影響されることなく強固に固定できるので、各種の太陽電池パネルに対して適用できる。
なお、前述のように太陽電池パネルの裏面空間は、取付材の取付箇所(固定部)より下方部分をも含み、下地との間隔空間を指す。
【0024】
また、特に対向する一方側が水上側であって、対向する他方側が水下側である場合には、太陽電池パネルの水上端を取付材(の水下側)に載置又は沿設すると共に押さえ材にて保持する構造となり、上方へ延出する突出部も太陽電池パネルの水上端に設けられる構造となる。したがって、突出部にて雪や雨水を、太陽電池パネルの水上端側から裏面空間に落としたり、流下させることができ、雪の堰き止めが生ずることがなく、該堰き止め(にて遮光されること)による効率低下を防ぐこともできる。さらに、この突出部は、吹き付けられた風を上方に乱流を起こすように導くため、この乱流による減圧にて、太陽電池パネルの裏面空間内の空気を排出することが可能であり、太陽電池パネルの裏面空間内の排熱が円滑に行え、太陽電池セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0025】
また、本発明の施工方法は、下地に取付材を固定する第1工程の後、前記取付材に太陽電池パネルの対向する一方側を載置又は沿設するパネル敷設工程と、前記太陽電池パネルの対向する一方側を押さえる押さえ材を前記取付材に固定する押さえ材取付工程と、を行うものであって、パネル敷設工程と押さえ材取付工程との何れを先に行ってもよい。
さらにその後、後述する図示実施例に示すように太陽電池パネルの対向する他方側を各種の固定部材等にて保持してもよい。
何れにしても下地に先に取付材を取り付けた後に太陽電池パネルを配設するので、極めて容易に太陽電池パネルを配設することができ、少なくとも太陽電池パネルの対向方向におけるズレを生ずること無く適正な位置に配設することができる。
【実施例1】
【0026】
図1に示す本発明の第1実施例は、取付材1に突出部4(15)を一体的に形成した例であって、図中に破線にて示す下地5に固定された取付材1と、該取付材1に、その対向する一方側を載置又は沿設する太陽電池パネル2と、該太陽電池パネル2の対向する一方側を押さえて前記取付材1に固定される押さえ材3と、からなる構成である。なお、図中に破線で示した下地5は、固定部11を固定した取付箇所のレベルを示すものであって、この下方にも太陽電池パネル2の裏面空間22は延在している。即ちフレーム21の側方ばかりでなく、その下端より下方にも裏面空間22は及んでいる。また、太陽電池パネル2の対向する一方側とは、図中では右側に位置する水上側を指すものである。
【0027】
この第1実施例における取付材1は、図1図2に示すように下地5に接地して固定具(ビス)12にて固定する横片である固定部11と、該固定部11から僅かに高いレベルに形成された横片である、太陽電池パネル2の端縁(下端)を載置する載置受部13と、太陽電池パネル2の端縁(側端)を沿わせる縦片状の沿設受部14と、この沿設受部14の上端からやや水上側へ傾斜する突出部4(15)とを有する連続材である。
【0028】
この第1実施例における太陽電池パネル2は、図1図2に示すように平面形状を略躯体状に形成した太陽電池モジュール20の流れ方向(図1では左から右、図2では右奥から左手前)に対向する端縁にフレーム21,21を一体的に取り付けた構成である。このフレーム21は、上端に太陽電池モジュール20の端縁を保持ずる略コ字状の保持部211と、該保持部211から下方へ延在する縦片212と、該縦片212の下端から内側へ略水平状に延在する横片213とからなる。
【0029】
この第1実施例における押さえ材3は、図1(b),(c)に示すように略L字状のピース材であって、その横片部分が前記太陽電池パネル2の対向する一方側(図では右側)の端縁を押さえる押さえ部31であり、その縦片部分が前記取付材1に固定具(ビス)33にて固定される固定部32である。
【0030】
そして、これらの取付材1、太陽電池パネル2、及び押さえ材3からなる第1実施例の設置構造は、図1(a)〜(c)に示す手順にて施工することができる。
【0031】
まず、図1(a)に示すように第1工程として、下地5に前記構成の取付材1を固定する。具体的には取付材1の固定部11を下地5に接地させて固定具(ビス)12にて固定する。
【0032】
次に、図1(b)に示すように前記第1工程にて固定した取付材1に、太陽電池パネル2の対向する一方側(図では右側)の端縁を載置又は沿設するパネル敷設工程を行い、その後、配設した太陽電池パネル2の対向する一方側(図では右側)の端縁を前記構成の押さえ材3にて押さえると共に前記取付材1に固定する押さえ材取付工程を行う。
【0033】
前記パネル敷設工程は、具体的には取付材1の載置受部13に太陽電池パネル2の端縁の下端を載置させると共に取付材1の沿設受部14に太陽電池パネル2の端縁の側端を沿設させるので、ズレ等を生ずることなく太陽電池パネル2を容易に適正位置に敷設することができる。
前記押さえ材取付工程は、具体的には前記構成の押さえ材3の押さえ部31にて、太陽電池パネル2の右側の端縁(より詳しくはフレーム21の保持部211の上顎部分)を押さえると共に押さえ材3の固定部32を固定具33にて前記取付材1の沿設受部14に固定する。
なお、この押さえ材取付工程は、押さえ部31と取付材1の載置受部13との間に、太陽電池パネル2を挿入可能な空間を形成するように予め配設することにより、前記パネル敷設工程に先立って行うようにしてもよい。即ちパネル敷設工程と押さえ材取付工程とは何れを先に行うようにしてもよいし、同時に行うようにしてもよい。
【0034】
その後、この第1実施例では、図1の右半に示すように太陽電池パネル2の対向する他方側(図では左側の)を固定部材6にて押さえ保持するようにした。
前記固定部材6は、略Z字状のピース材であって、太陽電池パネル2の左側に位置する水下側の端縁を押さえる横片状の押さえ部61を有し、断面逆U字状の台状部材7Aに下地5の裏面側から立設させたボルト7Bとナットにて下地5に固定されている。
【0035】
このように施工される第1実施例の設置構造は、太陽電池パネル2表面より上面側に延出する突出部4(15)が、取付材1に設けられているため、突出部4(15)に作用する例えば積雪や雪の滑落、風の吹き付け等の荷重を下地5に負担させることができる。そのため、太陽電池パネル2を構成するフレーム21等の形状や寸法などに影響されることなく強固に固定でき、各種の太陽電池パネル2に対して適用できる。
【0036】
また、この第1実施例では、対向する一方側は水上側であって、対向する他方側は水下側であるため、太陽電池パネル2の水上端を取付材1に載置、沿設すると共に押さえ材3にて保持する構造となり、上方へ延出する突出部4(15)も太陽電池パネル2の水上端に設けられる構造となる。そのため、突出部4(15)にて雪や雨水を、太陽電池パネル2の水上端側から裏面空間22に落としたり、流下させることができるため、雪の堰き止めが生ずることがなく、該堰き止め(にて遮光されること)による効率低下を防ぐこともできる。
しかも、突出部4(15)は、連続材である取付材1の長さ方向に連続するように設けたので、雪止め作用等が多大に増強されるものである。
【0037】
さらに、前記突出部4(15)は、太陽電池パネル2の裏面空間22内の空気を排出する作用も果たすので、太陽電池パネル2の裏面空間22内の排熱が円滑に行え、太陽電池セル20の発電効率の低下を抑制することができる。
しかも、この裏面空間22の排熱が太陽電池パネル2,2間又はその裏面空間22に落とした雪を円滑に溶かし、逆に裏面空間22に落とされた雪が裏面空間22の温度上昇の抑制に寄与するものとなる。
【0038】
図3(a),(b)に示す第2実施例は、押さえ材3IIに突出部4(34)を一体的に形成した例であって、この第2実施例における押さえ材3IIは、太陽電池パネル2の端縁を押さえる押さえ部31と取付材1IIに固定する固定部32が面一状に形成され、その水上側(図では左側)に傾斜状の突出部34が設けられた構成である。なお、この押さえ材3IIは、ピース材でも連続材でもよい。
また、この第2実施例の取付材1IIは、図3(a)に示すように縦片状の沿設受部14の上端に突出部15に代えて略水平状の固定受部16を外向きに設けた以外は前記第1実施例の取付材1とほぼ同様である。さらに、それ以外の太陽電池パネル2や固定部材6等の構成についても前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
この第2実施例は、前述のように突出部4が押さえ材3IIに形成された構成であって、突出部4を取付材1に形成した前記第1実施例と基本的な機能は殆ど変わらない。但し、前記第1実施例では、連続材である取付材1に突出部4(15)を設けて雪止め作用等を多大に増強させたが、この第2実施例では、押さえ材3II自体もピース材でも連続材でもよいようにしたので、必要とされる雪止め作用等に応じて適宜に選択することができる。
【0040】
図3(c)に示す第3実施例は、押さえ材3IIIに突出部4(34')を一体的に形成する点では、前記第2実施例と同様であるが、取付材1IIIとの固定は、取付材1IIIに一体的に保持されたボルト1bにナット1cを締着させて行われる。なお、この押さえ材3IIIに設けた突出部4(34')は湾曲状である。
また、この第3実施例の取付材1IIIは、前記第2実施例における略平坦状の固定受部に代えて、上方に開放する溝部17を設け、該溝部17内にボルト1bの頭部を嵌合した状態で長さ方向に移動可能とし、該ボルト1bを押さえ材3IIIに設けた孔(又は長孔)に挿通させた状態でナット1cを締着させて固定することができる。即ちこの取付材1IIIは、その溝部17に一体的に取り付けたボルト1bとナット1cとからなる複数部材にて構成されるものである。また、この取付材1IIIの固定部11及び載置受部13は、略M字状に成形された中央に固定部11が位置し、その左右に僅かに高いレベルに載置受部13が位置する構成である。
【0041】
この第3実施例は、前述のように突出部4が押さえ材3IIIに形成された構成であり、しかも前述のように押さえ部材3III自体を長さ方向に移動可能であるため、突出部4を季節や風向きに対して最も効率的に働く位置に適宜に移動させることができる。
【0042】
図3(d)に示す第4実施例は、押さえ材3IVに突出部4(34)を一体的に形成する点では、前記第2,3実施例と同様であるが、太陽電池パネル2の左側に位置する水下側の保持構造とほぼ同様の構成であって、この第4実施例における取付材1IVは、断面逆U字状の台状部材7Aとほぼ同様であり、それ以外の押さえ補助材6b、固定部材6、ボルトナット7Bは、それぞれこの第4実施例における押さえ材3IVを構成する本体、略Z字状材3b、ボルト3c及びナット3dに相当する。即ちこの押さえ材3IVは、突出部4(34)を形成した本体と、略Z字状材3b、ボルト3c及びナット3dとからなる複数部材にて構成されるものである。
【0043】
この第4実施例は、前述のように取付材1IVが断面逆U字状の台状部材であるため、その第1工程では、下地5にボルト3c及びナット3dにてズレ動かない程度に固定しておき、押さえ材取付工程に際して本体3IVや略Z字状材3bと共に強固に取り付けるようにすればよい。
そして、この第4実施例では、太陽電池パネル2の水上側と水下側との保持構造が殆ど同一となるため、使用する部材を共有(流用)することもできる。また、ほぼ同様な取付構造にて取り付けられるので、前記第1〜第3実施例に比べて太陽電池パネル2を平滑に維持することができる。
【0044】
図3(e)に示す第5実施例、及び図3(f)に示す第6実施例は、前記第4実施例と同様に太陽電池パネル2の水上側と水下側との保持構造とほぼ同様にしている点で共通するものであり、押さえ材3V,3VIに突出部4(34)を一体的に形成する点でも共通する。
【0045】
図3(e)の第5実施例における取付材1Vは、押さえ材3Vを固定する固定受部が上方が開放する嵌合係止溝18であり、押さえ材3Vに形成した下向き楔状の係止部35と弾性的に係合する以外は、前記第3実施例の取付材1IIIと同様である。なお、太陽電池パネル2の水下側に配設した取付用部材7Vは、この取付材1Vと全く同様の構成であって、説明を省略するが、部材の流用(共有)も可能である。
また、この第5実施例の押さえ材3Vは、前述の係止部35を有する以外は、前記第4実施例の押さえ材3IV本体と同様である。なお、太陽電池パネル2の水下側に配設した固定6Vは、突出部4(34)を備えない以外はこの押さえ材3Vと全く同様の構成であって説明を省略する。
【0046】
図3(f)の第6実施例における取付材1VIは、水下側の取付用部材を兼ねる部材であり、略中央に設けた隆状部19に下地5の裏面側から立設させたボルト1dを挿通させてナット1eにて固定し、さらにその左右にも下地5と接地させた固定部11,11を固定具(ビス)12,12にて固定している。上方が開放する嵌合係止溝18を設けた構成は前記第5実施例の取付材1Vと同様であり、そこに取り付ける押さえ材3Vは前記第5実施例に用いたものと全く同一である。
【0047】
そして、これらの第5,第6実施例では、前記第4実施例と同様に太陽電池パネル2の水上側と水下側との保持構造が殆ど同一となるため、使用する部材を共有(流用)することもできる。また、ほぼ同様な取付構造にて取り付けられるので、前記第1〜第3実施例に比べて太陽電池パネル2を平滑に維持することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1II,1III、1IV,1V,1VI, 取付材
2 太陽電池パネル
3,3II,3III、3IV,3V 押さえ材
4 突出部
5 下地
6 固定部材
図1
図2
図3