(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タップ付きの調整変圧器と、複数のタップ切換用スイッチと、タップ切換の過程で流れるタップ間短絡電流を制限する複数の限流抵抗器とを有して前記調整変圧器のタップを切り換えるタップ切換装置とを備え、前記タップ切換用スイッチは、前記調整変圧器を収容したタンクの外側に支持された収納箱内に収納されている自動電圧調整装置であって、
前記タップ切換用スイッチは、サイリスタにより主回路を構成した気中仕様の交流サイリスタスイッチからなり、
前記タップ切換装置に設けられたすべての交流サイリスタスイッチは同一のヒートシンクに熱的に結合された状態で装着され、
前記ヒートシンクは、前記収納箱の一つの側壁の少なくとも一部を構成していること、
を特徴とする自動電圧調整装置。
前記交流サイリスタスイッチは、三相分の主回路を構成する複数のサイリスタと該複数のサイリスタを制御する制御部とが一つのハウジング内に収容されているソリッドステートコンタクタである請求項1に記載の自動電圧調整装置。
前記限流抵抗器は、巻線抵抗体素子をアルミニウムからなる容器内に収めて耐熱性樹脂を充填してモールドした構造を有するメタルクラッド抵抗器からなっていて、前記ソリッドステートコンタクタが装着されたヒートシンクに熱的に結合された状態で取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の自動電圧調整装置。
【背景技術】
【0002】
通常タップ切換装置は、各タップを通して流れる電流をオンオフするタップ選択スイッチを備えている。またタップ切換の際に流れるタップ間短絡電流を制限するために限流抵抗器が設けられ、この限流抵抗器の投入及び切り離しを行うためにスイッチが設けられている。また自動電圧調整装置において、配電線電圧を調整変圧器の一次側に印加し、調整変圧器の二次側から得られる調整電圧を、直列変圧器を通して配電線に印加する構成をとる場合には、調整変圧器から直列変圧器の一次巻線に印加する電圧の極性を切り換える極性切換スイッチが設けられる。本明細書では、これらタップ切換装置に設けられるスイッチをタップ切換用スイッチと呼ぶ。
【0003】
特許文献1や特許文献2に示されているように、タップ切換用スイッチとしてサイリスタにより主回路を構成する交流サイリスタスイッチ(双方向性を有して交流をオンオフできるスイッチ)を用いて、タップ切換装置の無接点化を図った配電用自動電圧調整装置が知られている。この種の自動電圧調整装置においては、限流抵抗器や交流サイリスタスイッチで多くの発熱を生じるため、従来は、タップ切換装置を油中仕様(充電部を有する部品を絶縁油中に浸漬した状態で配置する仕様)として、限流抵抗器及び交流サイリスタスイッチを、タップ切換装置のケース内に充填した絶縁油中に配置していた。タップ切換装置の限流抵抗器及び交流サイリスタスイッチを気中で使用するようにした例は未だない。
【0004】
気中仕様の交流サイリスタスイッチとして、スイッチの主回路(主回路電流が流れる部分)を構成するサイリスタと、その開閉制御部とを一体化したソリッドステートコンタクタ(SSC)と呼ばれる交流半導体接触器が市販されている。また信頼性が高い気中仕様の電力用抵抗器として、巻線抵抗体素子をアルミニウムの容器内に収めるとともに、該容器内に特殊耐熱性樹脂を充填してモールドした構造を有するメタルクラッド抵抗器が市販されている。
【0005】
しかしながら、交流半導体接触器及びメタルクラッド抵抗器を、気中仕様としたタップ切換装置のケース内に収容した場合に生じる温度上昇の問題を解決するための具体的な提案がされた例はなく、交流半導体接触器をタップ切換用スイッチとして用い、メタルクラッド抵抗器を限流抵抗器として用いてタップ切換装置を気中仕様とした自動電圧調整装置が実用に供された実績はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タップ切換用スイッチとして交流サイリスタスイッチを用いた従来の自動電圧調整装置は、タップ切換装置が油中仕様となっていたため、半導体スイッチ素子やその制御部のメンテナンスを行う際にタップ切換装置のケース内の絶縁油を抜いたり、ケースを解体したりする必要があり、メンテナンスの際に面倒な作業を必要とするという問題を有していた。
【0008】
上記のような問題が生じないようにするため、タップ切換装置を気中仕様とすることが考えられるが、気中仕様とすると、発熱が多い半導体スイッチ及び限流抵抗器を冷却するために、半導体スイッチ相互間の間隔及び半導体スイッチと限流抵抗器との間の間隔を広く設定しておく必要がある。そのため、タップ切換装置を気中仕様とすると、そのケースが大形化し、自動電圧調整装置の寸法を、高圧配電線の装柱許容寸法内に収めることが困難になる。
【0009】
自動電圧調整装置の寸法を装柱許容寸法内に収めるため、タップ切換装置のケースに換気用のファンを設置することも考えられる。しかしながら、換気用ファンは寿命が短く、数年毎に交換する必要があるため、自動電圧調整装置のメンテナンスが面倒になるのを避けられない。これらの理由から、自動電圧調整装置において、タップ切換装置を気中仕様とすることは困難であるとされており、SSCやメタルクラッド抵抗器のような、タップ切換装置に用いることが可能な気中仕様の交流サイリスタスイッチや抵抗器が市販されているにもかかわらず、タップ切換装置を気中仕様とすることは行われていなかった。
【0010】
また油中仕様のサイリスタをタップ切換用スイッチとして用いて、サイリスタとその制御部とを絶縁油中に収容したタップ切換装置は、タップ切換用スイッチとして機械式スイッチを用いたタップ切換装置に比べて非常に高価であるため、普及が進んでいない。
【0011】
本発明の目的は、コストの大幅な上昇と大形化とを招くことなく、かつ換気用ファンのような寿命が短い要素を用いることなく、タップ切換装置を気中仕様として無接点化を図り、装柱を可能とした自動電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、タップ付きの調整変圧器と、複数のタップ切換用スイッチと、タップ切換の過程で流れるタップ間短絡電流を制限する複数の限流抵抗器とを有して調整変圧器のタップを切り換えるタップ切換装置とを備えて、タップ切換用スイッチが、調整変圧器を収容したタンクの外側に支持された収納箱内に収納されている自動電圧調整装置を対象とする。
【0013】
本発明においては、タップ切換用スイッチが、サイリスタにより主回路を構成した気中仕様の交流サイリスタスイッチからなり、タップ切換装置に設けられたすべての交流サイリスタスイッチが同一のヒートシンクに熱的に結合された状態で装着されている。ヒートシンクは、収納箱の一つの側壁の少なくとも一部を構成している。
【0014】
上記のように、交流サイリスタスイッチをタップ切換用スイッチとして用いる場合、定常状態においてオン状態にされるのは、三相のタップ巻線の通電中の2つのタップに接続されている2つの交流サイリスタスイッチのみである。従って、タップ切換装置のすべてのタップ切換用スイッチを構成する交流サイリスタスイッチを同じヒートシンクに取り付けた場合、ヒートシンクの各部のうち、交流サイリスタスイッチから直接熱が伝達される部分は一部のみであり、オフ状態にある大部分の交流サイリスタスイッチが取り付けられた部分は、オン状態にある一部の交流サイリスタスイッチを冷却するために機能させることができる。つまり、同一のヒートシンクに取り付ける交流サイリスタスイッチの数が多ければ多いほど、ヒートシンクのより広い面積の部分を、オン状態にある2つの交流サイリスタスイッチが発生する熱を放散させる部分として機能させて、冷却効果を高めることができる。
【0015】
従って、タップ切換装置を構成するすべての交流サイリスタスイッチを同一のヒートシンクに取り付ける構成をとると、ヒートシンクを大形にすることなく、オン状態にある交流サイリスタスイッチの冷却を図ることでき、気中仕様のタップ切換装置をコンパクトな収納箱に収めて、装柱を可能にすることができる。
【0016】
また本発明では、タップ切換用スイッチとして、油中仕様のサイリスタに比べて安価な気中仕様の交流サイリスタスイッチを用いるため、無接点化された自動電圧調整装置を低コストで提供することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様では、上記交流サイリスタスイッチを、三相分の主回路を構成する複数のサイリスタと該複数のサイリスタを制御する制御部とが一つのハウジング内に収容されているソリッドステートコンタクタにより構成する。
【0018】
上記のように、交流サイリスタスイッチとしてソリッドステートコンタクタを用いる場合、ヒートシンクは、その熱抵抗値が0.3K/W以下であることが好ましい。このようにヒートシンクを構成しておくことにより、ソリッドステートコンタクタの温度上昇を許容範囲内に収め得ることが実験で確認されている。
【0019】
本発明の他の好ましい態様では、限流抵抗器を、アルミニウムからなる容器内に巻線抵抗体素子を収めて、容器内に耐熱性樹脂を充填してモールドした構造を有するメタルクラッド抵抗器により構成して、該限流抵抗器を、ソリッドステートコンタクタが装着されたヒートシンクに熱的に結合した状態で取り付ける。このように構成することで、限流抵抗器の温度上昇をも抑制することができる。
【0020】
メタルクラッド抵抗器は、放熱を効率よく行わせるために、巻線抵抗体をアルミニウム容器内に収容した構成を有しているため、もともと温度上昇が抑制されているが、本発明では、このメタルクラッド抵抗器をヒートシンクに取り付けるため、巻線抵抗体の温度上昇を更に効果的に抑制して、限流抵抗器の温度上昇を抑制することができる。
【0021】
また限流抵抗器が発熱するのは、タップ切換が行われる過程での瞬時のみであるため、タップ切換を行う過程以外の定常状態においては、ヒートシンクの限流抵抗器が取り付けられた部分を、オン状態にある2つのソリッドステートコンタクタの冷却に寄与させることができ、ソリッドステートコンタクタの冷却を効率よく行わせることができる。
【0022】
上記のようにヒートシンクに限流抵抗器をも取り付ける場合、ヒートシンクは、その熱抵抗値が0.25K/W以下となるように構成されていることが好ましい。このようにヒートシンクを構成しておくことにより、メタルクラッド抵抗器及びソリッドステートコンタクタの温度上昇を許容範囲に収めることができることが実験で確認されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タップ切換装置に設けられるすべてのタップ切換用スイッチを同一のヒートシンクに取り付けることにより、ヒートシンクの各部のうち、定常状態においてオフ状態にある大部分のタップ切換用スイッチが取り付けられた部分を、オン状態にある2つのタップ切換用スイッチの冷却に寄与させて、通電中のタップ切換用スイッチの冷却を効率よく行わせるとともに、タップ切換用スイッチとして、油中仕様のサイリスタよりも安価な、気中仕様の交流サイリスタスイッチを用いるので、コストの大幅な上昇と大形化とを招くことなく、かつ換気用ファンのような寿命が短い要素を用いることなく、装柱を可能とした無接点式の自動電圧調整装置を得ることができる。
【0024】
本発明によれば、気中仕様の安価な交流サイリスタスイッチをタップ切換用スイッチとして用いるため、タップ切換用スイッチのメンテナンスや故障の修理を行う際に絶縁油の回収を行う必要がない。従って、タップ切換用スイッチの修理やメンテナンスを行う際に自動電圧調整装置を電柱から降ろす作業や、工場での作業を極力省略して、修理及びメンテナンスに要するコストの低減を図ることができる。
【0025】
特に請求項4に記載された発明によれば、アルミニウムからなる容器内に巻線抵抗体素子を収めて、容器内に耐熱性樹脂を充填してモールドした構造を有する気中仕様のメタルクラッド抵抗器により限流抵抗器を構成して、該限流抵抗器を、交流サイリスタスイッチが装着されたヒートシンクに熱的に結合した状態で取り付けたので、限流抵抗器の温度上昇をも抑制することができ、タップ切換装置の信頼性を損なうことなく、タップ切換装置を気中仕様とすることができる。またタップ切換装置に設けるすべてのタップ切換用スイッチと限流抵抗器とを同じヒートシンクに取り付けたことにより、タップ切換装置を完全に気中仕様とすることができるため、メンテナンスを容易にすることができる。また限流抵抗器を調整変圧器のタンク内に収容する必要がないため、調整変圧器の小形化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。先ず
図3を参照して、本実施形態に係る自動電圧調整装置の電気的な構成を説明する。
図3は自動電圧調整器の1相分の構成を示したもので、同図において、1は系統電流Iが流れる高圧配電線、2は一次巻線201及び二次巻線202を有する直列変圧器、3は一次巻線301と、タップ3aないし3dを有する二次巻線302とを備えた調整変圧器である。直列変圧器2は実際には3相分設けられていて、三相の直列変圧器の二次巻線202がそれぞれ三相の高圧配電線1に直列に接続されている。調整変圧器3は実際には三相分設けられていて、三相の調整変圧器3のそれぞれの一次巻線301の一端が中性点Nに接続されることによりY結線され、三相の高圧配電線1の相電圧が、Y結線された一次巻線に入力されている。三相の調整変圧器の二次巻線302は、三相のタップ切換装置4を介して直列変圧器2の一次巻線201に接続されている。
【0028】
タップ切換装置4は、調整変圧器のタップ3aないし3cに一端が接続され、他端が共通接続されたタップ選択スイッチSa,Sb及びScと、一端がタップ3dに接続された第1の極性切換用タップ選択スイッチSt1と、一端がタップ3aに接続され、他端が第1の極性切換用タップ選択スイッチSt1の他端に共通接続された第2の極性切換用タップ選択スイッチSt2と、タップ選択スイッチSa,Sb及びScの共通接続点に一端が接続された限流抵抗器Rと、限流抵抗器Rの他端と極性切換用スイッチSt1及びSt2の共通接続点との間に接続された限流抵抗器投入・開放スイッチSsとを有し、タップ選択用スイッチSa〜Scの共通接続点及び極性切換用タップ選択スイッチSt1及びSt2の共通接続点がそれぞれ直列変圧器2の一次巻線201の一端及び他端に接続されている。
【0029】
図3に示された自動電圧調整装置は、高圧配電線1の電圧に応じて、調整変圧器の各相の一次巻線301に接続されたスイッチのうち、タップ選択スイッチSaないしScの内の一つと、極性切換用タップ選択スイッチSt1及びSt2の何れか一方との2つのスイッチをオン状態にして、調整変圧器3の二次巻線から直列変圧器2を通して配電線に調整電圧を印加することにより、配電線電圧を調整する。オン状態にする極性切換用タップ選択スイッチを切り換えることにより、合計6種類の調整電圧を高圧配電線に印加することができる。従って、調整変圧器3は、6タップの調整変圧器として機能する。限流抵抗器投入・開放スイッチSsは、タップ切換中に流れるタップ間短絡電流を抑制する限流抵抗器Rの投入・開放を行うスイッチで、限流抵抗器Rを投入する短時間の間だけオン状態にされ、定常状態ではオフ状態に保持される。
【0030】
上記のように、本実施形態で用いるタップ切換装置においては、タップ選択スイッチSa〜Scと、極性切換用タップ選択スイッチSt1及びSt2と、限流抵抗器投入・開放スイッチSsとの合計6個のスイッチが、タップ切換用スイッチとして、各相のタップ巻線に対して設けられ、これらのタップ切換用スイッチによりタップ切換用のスイッチ回路が構成されている。これらのスイッチのうち、定常状態でオン状態にされるのは、調整変圧器に設けられた各相のタップ巻線の通電中の2つのタップに接続されている2つスイッチのみであり、他のスイッチはオフ状態に保持される。
【0031】
本実施形態においては、各タップ切換用スイッチを構成する交流サイリスタスイッチとして、ソリッドステートコンタクタ(SSC)5を用い、タップ切換装置に設けるすべてのソリッドステートコンタクタを同一のヒートシンクに熱的に結合した状態で装着する。
【0032】
ソリッドステートコンタクタ5は、
図5に示すように、三相分の主回路501u,501v及び501wを構成する3組のサイリスタ(Thu1,Thu2),(Thv1,Thv2)及び(Thw1,Thw2)と、これらのサイリスタを制御する制御部502とを一つのハウジング503内に収容した構成を有するものである。各相の主回路に双方向性を持たせるため、各組の主回路を構成するサイリスタは逆並列接続され、各サイリスタのゲートが制御部502に接続されている。三相の主回路501uないし501wの一端からそれぞれ端子5R、5S及び5Tが引き出され、三相の主回路501uないし501wの他端からそれぞれ端子5U、5V及び5Wが引き出されている。
【0033】
ソリッドステートコンタクタ5は、3相分の主回路を有するため、1つのソリッドステートコンタクタ5により、三相分のタップ切換スイッチを構成することができる。例えば、
図3に示されたタップ選択スイッチSaの三相分を一つのソリッドステートコンタクタにより構成することができ、タップ選択スイッチSbの三相分を一つのソリッドステートコンタクタにより構成することができる。従って、
図3に示されたように6個のタップ切換用スイッチにより、タップ切換装置の1相分のスイッチ回路が構成される場合には、6個のソリッドステートコンタクタを用いることによりタップ切換装置の三相のスイッチ回路を構成することができる。一般に、配電線用の自動電圧調整器のタップ数は6タップ以上であり、ソリッドステートコンタクタは6個以上必要となる。
【0034】
図4は、ソリッドステートコンタクタ5の外観の一例を示したものである。図示の例では、三相の主回路を構成するサイリスタ群と制御部とを収納したハウジング503の背面が放熱面(放熱フィン取付け面)503aとなっている。このソリッドステートコンタクタは、その放熱面503aに指定寸法の放熱フィン504を取り付けた状態で使用することが推奨されている。
【0035】
図1を参照すると、タップ切換装置4の要部の構成が概略的に示されている。同図において、301は調整変圧器3を絶縁油と共に収容したタンク、401はタップ切換装置4の主要部を収納する収納箱である。収納箱401は、鋼板により6面が構成された直方体からなっていて、タップ切換装置4の主要部を収納するために必要な高さ寸法d1と、幅寸法d2と、奥行き寸法d3とを有するように構成されている。収納箱401は、その側面を、調整変圧器のタンク301に取り付け金具6を介して結合することにより調整変圧器3に取り付けられている
【0036】
本実施形態においては、タップ切換装置4の構成要素のうち、限流抵抗器Rを除くスイッチ回路の構成要素が収納箱401内に収納されている。限流抵抗器Rは、油中仕様のものからなっていて、調整変圧器3を収容したタンク301内で絶縁油中に浸漬されている。本実施形態では、収納箱401の背面側の側壁401aの一部が、放熱フィン402aを有する矩形状のヒートシンク402により構成され、このヒートシンク402に、タップ切換装置4を構成するすべてのソリッドステートコンタクタ5が、それぞれの放熱面503aをヒートシンク402に熱結合した状態で装着されている。収納箱401内に収容された機器はすべて気中仕様である。ヒートシンク402は、銅やアルミニウムなどの熱伝導性が良好な金属により構成することが好ましい。
【0037】
図示してないが、直列変圧器2は、調整変圧器3を収容したタンク301と同一タンク内に収容されるか、または別タンクに収容されてタンク301の近傍に配置され、タップ切換装置4と直列変圧器との間及びタップ切換装置4と調整変圧器3との間が図示しない配線により接続されている。
【0038】
図示の例では、ヒートシンク402の上半部に、タップ選択スイッチSa〜Scをそれぞれ構成する3つのソリッドステートコンタクタ5が横方向に並べた状態で取り付けられ、ヒートシンク402の下半部に、極性切換用タップ選択スイッチSt1 及びSt2と限流抵抗器投入・開放スイッチSsとをそれぞれ構成する3つのソリッドステートコンタクタ5が横方向に並べた状態で取り付けられている。各ソリッドステートコンタクタは、そのハウジング503の背面の放熱面503aを、推奨される放熱フィン504なしで直接ヒートシンク402に熱的に結合させた状態で(放熱面503aとヒートシンク402との間で熱伝導を良好に行わせることができる状態で)、ヒートシンク402に装着されている。
【0039】
上記の実施形態のタップ切換装置4において、定常状態においてオン状態にされるのは、三相のタップ巻線の通電中の2つのタップに接続されている2つのソリッドステートコンタクタ5のみである。従って、タップ切換装置のすべてのタップ切換用スイッチを構成するソリッドステートコンタクタ5を同じヒートシンク402に取り付けた場合、ヒートシンクの各部のうち、ソリッドステートコンタクタ5から直接熱が伝達される部分は一部のみであり、オフ状態にある大部分のソリッドステートコンタクタ5が取り付けられた部分は、オン状態にある一部のソリッドステートコンタクタを冷却するために機能させることができる。従って、タップ切換装置を構成するすべてのソリッドステートコンタクタを同一のヒートシンクに取り付ける構成をとると、ヒートシンクのより広い面積の部分を、オン状態にある2つのソリッドステートコンタクタが発生する熱を放散させる部分として機能させて、ヒートシンクを大形にすることなく、オン状態にあるソリッドステートコンタクタの冷却を図ることでき、気中仕様のタップ切換装置をコンパクトな収納箱に収めて、装柱を可能にすることができる。またソリッドステートコンタクタは、油中仕様のサイリスタに比べて安価であるため、タップ切換用スイッチとしてソリッドステートコンタクタを用いると、無接点化された自動電圧調整装置を低コストで提供することができる。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施形態を示したもので、この実施形態では、ヒートシンク402として、
図1に示した実施形態で用いたヒートシンクよりも高さ寸法が大きいものが用いられ、このヒートシンク402に、6個のソリッドステートコンタクタ5と、三相の限流抵抗器Rとが取り付けられている。6個のソリッドステートコンタクタ5は、ヒートシンク402の下半部に
図1に示した実施形態と同様に縦横に並べて配置されて、それぞれのハウジングの放熱面がヒートシンク402に熱的に結合されている。
【0041】
また限流抵抗器Rは、アルミニウムからなる容器内に巻線抵抗体素子を収めて、該容器内に耐熱性樹脂を充填してモールドした構造を有する気中仕様のメタルクラッド抵抗器からなっている。限流抵抗器を構成するメタルクラッド抵抗器は横長に形成されていて、ヒートシンク402の上部に上下に並べた状態で配置されて、ヒートシンク402に熱的に結合されている。
【0042】
メタルクラッド抵抗器は、放熱を効率よく行わせるために、巻線抵抗体をアルミニウム容器内に収容した構成を有しているため、温度上昇が抑制されている。本発明では、このメタルクラッド抵抗器を限流抵抗器Rとして用いて、ヒートシンクに取り付けるため、巻線抵抗体の温度上昇を更に効果的に抑制して、限流抵抗器の過度の温度上昇を防ぐことができる。
【0043】
また限流抵抗器が発熱するのは、タップ切換が行われる過程での瞬時のみであるため、タップ切換を行う過程以外の定常状態においては、ヒートシンクの限流抵抗器が取り付けられた部分を、オン状態にある2つのソリッドステートコンタクタの冷却に寄与させることができる。従って、ソリッドステートコンタクタと共に限流抵抗器をもヒートシンクに取り付けると、ソリッドステートコンタクタの冷却をより一層効率よく行わせることができる。
【0044】
ソリッドステートコンタクタは、複数の会社から販売されており、ソリッドステートコンタクタ同士を横方向に並べて配置する場合のソリッドステートコンタクタ相互間の距離の最小値、ソリッドステートコンタクタ同士を上下方向に並べて配置する場合のソリッドステートコンタクタ相互間の距離の最小値、ソリッドステートコンタクタと他の機器とを横方向に並べて配置する場合のソリッドステートコンタクタと他の機器との間の距離の最小値、ソリッドステートコンタクタと他の機器とを上下方向に並べて配置する場合のソリッドステートコンタクタと他の機器との間の距離の最小値等が、指定寸法の放熱フィンを取り付けた場合について製品毎に定められている。
【0045】
発明者は、
図1に示すように、6個のソリッドステートコンタクタを同一のヒートシンクに取り付けた場合と、指定の放熱フィンを取り付けた6個のソリッドステートコンタクタをヒートシンクを有しない収納箱内に収納した場合とについて、ソリッドステートコンタクタの放熱面の温度を測定する実験を行った。実験では、定格電流が40[A]で、放熱面の許容温度の上限が100℃であるA社製のソリッドステートコンタクタを用いた。このソリッドステートコンタクタでは、ソリッドステートコンタクタ同士を横方向に並べて配置する場合及びソリッドステートコンタクタと他の機器とを横方向に並べて配置する場合にソリッドステートコンタクタ相互間及びソリッドステートコンタクタと他の機器との間に指定距離10mm以上の間隔をとり、ソリッドステートコンタクタ同士を上下方向に並べて配置する場合及びソリッドステートコンタクタと他の機器とを上下方向に並べて配置する場合にソリッドステートコンタクタ相互間及びソリッドステートコンタクタと他の機器との間に指定距離300mm以上の距離をとることが必要であるとされている。
【0046】
[比較例]
先ず比較例として、
図6に示したように、ヒートシンクを有しない鋼板製の収納箱4′の背面に、放熱フィンを取り付けた6個のソリッドステートコンタクタ5を縦横に並べて取り付けたものを製作した。放熱フィンを取り付けた状態でのソリッドステートコンタクタ5の縦方向寸法Lは120mm、横方向寸法Wは110mm、奥行き寸法Dは135mmである。収納箱401の高さ寸法d1は740mm、幅寸法d2は490mm、奥行き寸法d3は200mmとした。また横方向に並ぶソリッドステートコンタクタ5,5相互間の距離d4を30mm、上下方向に並ぶソリッドステートコンタクタ相互間の距離d5を70mm、収納箱401の底壁部と下側に配置されたソリッドステートコンタクタ5との間の距離d6を100mm、収納箱401の左右の側壁とこれらの側壁に隣接するソリッドステートコンタクタ5との間の距離d7を50mm、収納箱の天井壁と上側に配置されたソリッドステートコンタクタ5との間の距離d8を330mmとした。
【0047】
なお
図6に示された比較例では、上下に並ぶソリッドステートコンタクタ相互間の距離が指定距離(300mm)よりも短くなっているが、これは、上下に並ぶソリッドステートコンタクタ相互間の距離を指定距離(300mm)とすると、収納箱401の高さを少なくとも1100mm以上にする必要があり、現実的でないためである。
【実施例1】
【0048】
本実施例では、放熱フィンを外した状態にある6個のソリッドステートコンタクタ5を、それぞれのハウジングの背面の放熱面をヒートシンク402に密接させて、熱的に結合させた状態でヒートシンクに取り付けた。放熱フィンを外した状態でのソリッドステートコンタクタ5の縦方向寸法L(
図1参照)は100mm、横方向寸法Wは80mm、奥行き寸法Dは50mmである。収納箱401の高さ寸法d1は740mm、幅寸法d2は450mm、奥行き寸法d3は200mmとした。また横方向に並ぶソリッドステートコンタクタ5,5相互間の距離d4を30mm、上下方向に並ぶソリッドステートコンタクタ相互間の距離d5を70mm、収納箱401の底壁部と下側に配置されたソリッドステートコンタクタ5との間の距離d6を100mm、収納箱401の左右の側壁とこれらの側壁に隣接するソリッドステートコンタクタ5との間の距離d7を75mm、収納箱の天井壁と上側に配置されたソリッドステートコンタクタ5との間の距離d8を370mmとした。またヒートシンク402の熱抵抗は0.35K/Wであった。
【0049】
上記比較例と実施例1とについて、周囲温度を真夏の想定最高温度である40℃とした状況下で、2つのソリッドステートコンタクタ5に定格電流40Aを流した場合の、ソリッドステートコンタクタの取付け面(放熱面)の温度を測定した。比較例では、通電開始後まもなくソリッドステートコンタクタの取付け面の温度が許容温度の上限である100℃を超えたため、その時点で測定を中止した。これに対し、実施例1では、通電を継続しても、ソリッドステートコンタクタの取付け面の温度が、70℃までしか上昇せず、許容温度の上限値100℃に対して30℃の余裕があることが明らかになった。ヒートシンク402の熱抵抗を実施例で用いたものよりも更に低くすることにより、更に温度上昇を抑制することが期待できる。このことから、実施例1によれば、ソリッドステートコンタクタに定格電流を流した状態での運転が可能であり、ソリッドステートコンタクタの通電性能を最大限活用して自動電圧調整装置を動作させ得ることが確認された。
【実施例2】
【0050】
図2(A),(B)に示した実施形態を具体化した自動電圧調整装置を実施例2として製作した。本実施例では、ヒートシンク402に三相分の限流抵抗器Rを装着するためにヒートシンク402の高さを高くしてその放熱面積を拡大した。そのため、ヒートシンク402の熱抵抗は0.25K/Wに低減されている。限流抵抗器Rと限流抵抗器投入・開放スイッチSsを構成するソリッドステートコンタクタ5とからなるタップ間短絡回路は、タップ切換中に約0.1秒オン状態になって、約500W発熱する。
【0051】
本実施形態においても、放熱フィンを外した状態でのソリッドステートコンタクタ5の縦方向寸法Lは100mm、横方向寸法Wは80mm、奥行き寸法Dは50mmである。実施例1と同様に、収納箱401の高さ寸法d1は740mm、幅寸法d2は450mm、奥行き寸法d3は200mmとした。また横方向に並ぶソリッドステートコンタクタ5,5相互間の距離d4は30mm、上下方向に並ぶソリッドステートコンタクタ相互間の距離d5は70mm、収納箱401の底壁部と下側に配置されたソリッドステートコンタクタ5との間の距離d6は100mm、収納箱401の左右の側壁とこれらの側壁に隣接するソリッドステートコンタクタ5との間の距離d7は75mm、収納箱の天井壁と上側に配置されたソリッドステートコンタクタ5との間の距離d8は370mmとした。本実施例で用いている限流抵抗器Rを構成するメタルクラッド抵抗器の長さd9は335mmであり、高さ寸法d10は30mmである。本実施形態では、上側に配置されたソリッドステートコンタクタ5と一番下の限流抵抗器Rとの間の距離d11を70mmとし、3つの限流抵抗器Rが配置された領域の上下方向寸法d12を200mm、最上部の限流抵抗器Rと収納箱401の天井壁までの距離d13を100mmとした。
【0052】
本実施形態において、周囲温度を真夏の想定最高温度である40℃とした状況下で、2つのソリッドステートコンタクタに定格電流40Aを通電し、タップ切換を切換間隔4秒で繰り返したときのソリッドステートコンタクタの放熱面の温度の測定結果を
図8に示した。
図8に示されているように、タップ切換を繰り返しても、ソリッドステートコンタクタの取付け面の温度は最大で97℃に抑制されており、許容温度の上限100℃を下回っている。これより、限流抵抗器として気中仕様のものを用い、該限流抵抗器をソリッドステートコンタクタとともに同一のヒートシンクに取り付けた構成として、各ソリッドステートコンタクタに定格電流を通電することが可能であり、かつタップ切換間隔を4秒以上とすれば、連続タップ切換運転を行うことが可能であることが分かる。
【0053】
実施例2によれば、限流抵抗器を気中仕様として、この限流抵抗器をタップ切換装置に設けるすべてのタップ切換用スイッチを構成するソリッドステートコンタクタとともに、同じヒートシンク402に取り付けることができるため、タップ切換装置の構成要素をすべて同じ収納箱内に収納して、自動電圧調整器を実施例1よりも更にコンパクトに構成することができる。また限流抵抗器を気中仕様としたことにより、タップ切換装置のメンテナンスを行う際にオイルを回収する作業を省略することができるため、タップ切換装置のメンテナンスを容易にすることができる。またソリッドステートコンタクタを冷却するために、冷却ファンのような消耗品を設ける必要がないため、自動電圧調整装置の寿命を伸ばすことができる。
【0054】
上記の説明では、高圧配電系統の柱上に設置される自動電圧調整装置を例にとったが、本発明は、タップ切換装置を有する自動電圧調整装置に広く適用することができ、低圧配電系統に設置する自動電圧調整装置(負荷時タップ切換変圧器等をも含む)にも適用することができる。
【0055】
上記の説明では、主回路を構成する半導体スイッチと該半導体スイッチを制御する制御部を一体化した市販のソリッドステートコンタクタをタップ切換用スイッチとして用いるとしたが、サイリスタにより主回路を構成するソリッドステートコンタクタ以外の交流サイリスタスイッチを用いる場合にも本発明を適用することができる。