【課題を解決するための手段】
【0007】
保存中の温度変化によってクロニジンの結晶析出製剤の経皮吸収性の変化が起きる理由の一つとして、温度変化によるクロニジンの結晶状態の変化が関与していることが考えられる。クロニジン貼付剤における基剤には、クロニジンを安定的に保持すると共に、皮膚に貼付剤を貼付した際に結晶状態で存在するクロニジンが望ましい速度で持続的に膏体層中へ溶解し、皮膚表面へ拡散していく機能を有することが必要とされる。一方、本発明の課題である温度変化による結晶状態の変化を防ぐためには、クロニジンの溶解及び拡散挙動の温度依存性が少ないことも必要である。これらを同時に実現するためには、基剤として、粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤と、クロニジンを溶解させることが可能な液状添加剤とを一定量含有させ、さらに、上記粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤に対する液状添加剤の重量比を一定の範囲内にすることが有効であることを本発明者等は見出した。
【0008】
本発明の貼付剤は、支持体、及び、上記支持体の一面に積層一体化された膏体層であり、結晶状態のクロニジンを含むクロニジン5〜30重量%と、粘度平均分子量が80万以上である高分子基剤(A)25〜90重量%と、上記クロニジンを溶解させることができる液状添加剤5〜60重量%とを含有し、且つ上記高分子基剤(A)に対する上記液状添加剤の重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が、0.1〜2.0である上記膏体層を含むことを特徴とする。
【0009】
(クロニジン)
貼付剤の膏体層には、有効成分(主薬)として遊離塩基型のクロニジン(2,6−ジクロロ−N−2−イミダゾリジニリデンベンゼンアミン)が含有されている。遊離塩基型のクロニジンは、クロニジン塩酸塩及びクロニジンフマル酸塩などのクロニジンと、無機酸又は有機酸との塩を含まない。
【0010】
膏体層におけるクロニジンの含有量は、5〜30重量%に限定されるが、5〜25重量%が好ましく、8〜20重量%がより好ましく、10〜15重量%がより好ましい。
【0011】
膏体層中におけるクロニジンの含有量が少ないと、クロニジンの経皮吸収速度が所望の時間まで持続しなかったり、クロニジンの経皮吸収量が不足して、貼付剤の皮膚への貼付面積を大きくしないとクロニジンの血中濃度を所望の範囲まで上昇させることができなかったりする虞れがある。一方、膏体層中におけるクロニジンの含有量が多いと、膏体層中にクロニジンの結晶が過剰に析出して膏体層の凝集力や粘着力が不足するために、保存中や貼付中に貼付剤側面へ膏体層がはみ出したり、支持体や皮膚からはがれたりしやすくなる虞れがある。また、膏体層中におけるクロニジンの含有量が過剰であるとクロニジンが無駄になり不経済である。
【0012】
膏体層中には、高分子基剤及び液状添加剤の混合物に常温下にて溶けるクロニジンの量の上限を超えてクロニジンが含まれているため、膏体層に含まれているクロニジンは、その一部分は結晶状態となって析出していると共に、残余部分は高分子基剤及び液状添加剤に溶解している。貼付剤が皮膚に適用された際、膏体層中では、まず溶解状態のクロニジンが拡散して皮膚に吸収されると共に、溶解状態のクロニジンの減少に伴って結晶状態のクロニジンが徐々に高分子基剤及び液状添加剤に溶解する。このように一部のクロニジンが結晶状態となって存在している膏体層を形成するためには、後述する膏体層形成用溶液を製造する際に、高分子基剤及び液状添加剤の混合物に常温下にて溶けるクロニジンの量の上限を超えてクロニジンを含む膏体層形成用溶液を作製し、この膏体層形成用溶液を支持体や離型紙上など適当な基材上に塗工し乾燥させる方法が用いられる。このような方法により、一部のクロニジンが結晶状態となって析出している膏体層を形成することができる。
【0013】
なお、本発明において、膏体層中に結晶状態のクロニジンが存在するか否かは下記の要領で確認することができる。まず、貼付剤から膏体層のみを取り出し、この膏体層を一辺が2cmの正方形状に切断して観察用試料を得る。次に、観察用試料を100倍の倍率で偏光顕微鏡にて観察し、写真撮影を行う。そして、得られた写真を観察することにより結晶状態のクロニジンの有無を判断することができる。膏体層中に結晶径が1μm以上の結晶が観察された場合、結晶状態のクロニジンが存在していると判断する。なお、結晶径とは、写真上において結晶を包囲し得る最小径の真円の直径を意味する。
【0014】
(高分子基剤)
本発明の貼付剤の膏体層に含有させる高分子基剤としては、粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤(A)が用いられる。粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤(A)が一定以上の割合で膏体層中に含有される場合、クロニジンの保存安定性が高まることが本発明者らにより確認されている。このような効果が得られる詳細な機構は、明らかではないが、膏体層中に含まれているクロニジンの結晶状態を安定化することができ、これにより、保存時の温度変化によって、膏体層中で、結晶状態で存在するクロニジンが溶解したり析出したりすることを高く低減できることがメカニズムの一つとして推測される。
【0015】
膏体層における高分子基剤(A)の含有量は、25〜90重量%に限定され、25〜85重量%が好ましく、25〜50重量%がより好ましく、25〜45重量%が特に好ましい。
【0016】
膏体層における高分子基剤(A)の含有量が少ないと、膏体層の凝集性が低下するために、保存時の膏体層のはみ出し、及び貼付時の膏体層の糊残りが起こり易いだけでなく、上述した結晶状態のクロニジンの溶解や析出が起こり易く、これに伴って経皮吸収性の変化が起こり易くなる。一方、膏体層における高分子基剤(A)の含有量が多いと、膏体層の粘着力が低下したり、薬物や添加剤の拡散速度が遅くなって所望のクロニジン血中濃度を得ることができなくなったりする虞れがある。
【0017】
また、高分子基剤(A)の粘度平均分子量は、80万以上に限定されるが、90万〜400万が好ましく、100万〜300万がより好ましく、100万〜150万が特に好ましい。上述の通り、粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤(A)を用いることにより、膏体層中におけるクロニジンの結晶状態を安定化できる。
【0018】
膏体層は、粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤(A)の他に、粘度平均分子量が1万以上80万未満の高分子基剤(B)をさらに含んでいるのが好ましい。高分子基剤(B)を用いることにより、膏体層の貼付性とクロニジンの経皮吸収性の両方を良好に保持することができる。
【0019】
膏体層における高分子基剤(B)の含有量は、1〜69重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、1〜15重量%が特に好ましい。
【0020】
また、高分子基剤(B)の粘度平均分子量は、1万以上80万未満に限定されるが、1万〜40万が好ましく、2万〜10万がより好ましく、2万〜5万が特に好ましい。高分子基剤(B)の粘度平均分子量が小さ過ぎると、膏体層の凝集力が不足するために、貼付剤を剥離する際に糊残りが発生しやすくなる。また、高分子基剤(B)の粘度平均分子量が大き過ぎると、膏体層が固くなって剥がれやすくなるのに加え、クロニジンの経皮吸収性が不十分になる虞れがある。
【0021】
本発明において、高分子基剤(A)及び(B)の粘度平均分子量の測定は、例えば、毛細管粘度計によりポリマー希釈溶液の固有粘度[η]を求め、シュタウディンガーの粘度式等を用いて算出する方法によって行うことができる。
【0022】
高分子基剤(A)及び(B)としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤等の感圧接着性粘着剤が好ましいが、感圧接着性を有しない高分子基剤も用いることができる。感圧接着性粘着剤は温度変化に伴う反応性や物性の変化が少ないことから好ましく用いられる。
【0023】
ゴム系粘着剤としては、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体および天然ゴム等が挙げられる。
【0024】
本発明に使用可能なゴム系粘着剤として市販品を用いることができる。粘度平均分子量が80万以上のゴム系粘着剤の市販品としては、例えば、商品名「ビスタネックスMML−80」(粘度平均分子量990,000、エクソン化学社製)、商品名「オパノールB100」(粘度平均分子量1,100,000、BASF社製)、商品名「オパノールB120」(粘度平均分子量1,500,000、BASF社製)、及び商品名「ビスタネックスMML−140」(粘度平均分子量2,100,000、エクソン化学社製)などが挙げられる。また、粘度平均分子量が1万以上80万未満のゴム系粘着剤の市販品としては、商品名「オパノールB10SFN」(粘度平均分子量36,000、BASF社製)、及び商品名「ハイモール6H」(粘度平均分子量:60,000、日本石油化学社製)などが挙げられる。
【0025】
アクリル系粘着剤としては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート成分を60重量%以上含有する共重合体が好ましく挙げられる。このような、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートデシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレートなどが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0026】
さらに、上記共重合体は、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート以外の他の単量体成分を含んでいてもよい。他の単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアシド、エチレングリコールジメタクリレート、及びエチレングリコールジアクリレートなどの重合性官能基を1分子中に2個以上有する多官能性単量体、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどが挙げられる。このような単量体を含有させることにより、膏体層中のクロニジンの溶解性や拡散性、貼付剤の粘着力を調節することができる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0027】
上記単量体の中でも、粘着物性やクロニジン溶解性の点から、極性官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましく、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキルメタクリレート成分を60重量%以上含有する共重合体がより好ましく、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキルメタクリレート成分を70重量%以上含有する共重合体が特に好ましい。ここで、極性官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基が挙げられる。その他、アクリル系粘着剤の市販品としては、DURO−TAK(登録商標)87−4098などが好ましく挙げられる。
【0028】
その他の高分子基剤としては、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化生成物、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのようなビニルベースの高分子材料も用いることができる。これらの高分子材料は貼付性の調節に有効であるがクロニジンの溶解性が比較的高いので、高分子材料の含有量が高すぎると結晶状態のクロニジンを保持できなくなる。このため、高分子材料を膏体層中に配合する場合は、膏体中における高分子材料の含有量は、1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
【0029】
なかでも、高分子基剤(A)は、本発明の効果を充分に発揮し、さらに薬物の安定性に優れ、皮膚刺激性が少ない基剤であることから、ゴム系粘着剤及び極性官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましく、ポリイソブチレンがより好ましい。
【0030】
また、高分子基剤(B)としても同様に、本発明の効果を充分に発揮し、さらに薬物の安定性に優れ、皮膚刺激性が少ない基剤であることから、ゴム系粘着剤及び極性官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましく、ポリイソブチレンがより好ましく挙げられる。
【0031】
(液状添加剤)
本発明の貼付剤には、その膏体層を皮膚に貼付することで、膏体層中に含有させているクロニジンを皮膚を介して吸収させ、クロニジンの経皮吸収速度を一定に持続できることが要求される。このようにクロニジンの経皮吸収速度を一定に保つためには、膏体層表面におけるクロニジンの溶解性及び拡散性を一定の状態に持続させることが必要となる。本発明では、膏体層にクロニジンを溶解させることができる液状添加剤を一定量以上含有させ、さらに、膏体層中における粘度平均分子量が80万以上の高分子基剤(A)に対する液状添加剤の重量比を一定の範囲内にすることにより、クロニジンの経皮吸収速度を一定に維持できること、さらには膏体層の保存安定性及び貼付性を良好にできることを見出した。
【0032】
膏体層に含まれているクロニジンは、上述の通り、一部が結晶状態として析出して存在し、残りの部分が高分子基剤及び液状添加剤中に溶解している。貼付剤が皮膚に適用された際、膏体層中では、まず溶解状態のクロニジンが拡散して皮膚に吸収されると共に、結晶状態のクロニジンが徐々に溶解する。この時、クロニジンの溶解速度及び拡散速度は高分子基剤(A)と液状添加剤の比に影響を受ける。高分子基剤(A)に対する液状添加剤の比が高くなるほどクロニジンの溶解速度及び拡散速度が高まって経皮吸収性が向上する。しかしながら、液状添加剤の割合が高いほど保存時の温度変化によってクロニジンの溶解性が大きく変化し、高温時に溶解したクロニジンが膏体層表面や支持体との界面部分に移動して低温時に析出する現象が起こるため、クロニジンの経皮吸収性が保存中に低下したり、逆に上昇したりする場合がある。このようなクロニジンの性状の変化は、膏体層におけるクロニジンの含有量が5重量%以上の場合に顕著に現れる傾向がある。
【0033】
膏体層における高分子基剤(A)に対する液状添加剤の重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]は、0.1〜2.0の範囲に限定され、0.5〜1.9が好ましく、0.7〜1.7がより好ましい。重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が0.1未満であると、クロニジンの経皮吸収性が不十分となる虞れがある。また、重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が2.0を超えると、膏体層の凝集力が不足すると共に、クロニジンの経皮吸収性の変化が起き易くなる虞れがある。
【0034】
膏体層における液状添加剤の含有量は、5〜60重量%に限定され、10〜50重量%が好ましく、25〜50重量%がより好ましい。液状添加剤の含有量が5重量%未満であると、クロニジンの経皮吸収性や持続性が不十分となる虞れがある。液状添加剤の含有量が60%を超えると、膏体層の凝集力が不足して、保存時や貼付時に膏体層がはみ出し易くなる。また、液状添加剤の含有量が60%を超えると温度変化によるクロニジンの溶解性の変化が著しく生じて、保存中にクロニジンの結晶状態の変化が起き易く、膏体層の経皮吸収性や貼付性などの特性が変化する場合がある。
【0035】
また、膏体層には、クロニジンを溶解させることが可能な液状添加剤が用いられる。具体的には、25℃の液状添加剤100重量部に対して、0.001〜30重量部のクロニジンが溶解できる液状添加剤が好ましい。
【0036】
クロニジンを溶解させることができる液状添加剤としては、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノラウリン酸グリセリン、セバシン酸ジエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸と1価または多価のアルコールとのエステル、オレイン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール等の高級アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール等の多価アルコール、その他オリーブ油、ヤシ油等の天然物由来の油脂等が挙げられる。
【0037】
(その他の成分)
膏体層は、その性能を失わない範囲で、膏体層中に、充填剤、安定化剤、粘着力調整剤等の添加剤を含有していてもよい。例えば、充填剤としては、膏体層の貼付性の調整や、薬物放出性の調整のために添加することができる。このような充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、乳糖、結晶セルロース、無水ケイ酸、ベントナイト、タルクなどが挙げられる。なかでも、クロニジンの安定性や膏体層の貼付性を確保することができることから、無水ケイ酸が好ましく、軽質無水ケイ酸がより好ましく挙げられる。
【0038】
膏体層における充填剤の含有量が少ないと、充填剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある。一方、膏体層における充填剤の含有量が多いと、貼付性を低下させたり、或いは薬物の経皮吸収性や安定性に悪影響を与えたりすることがある。したがって、膏体層における充填剤の含有量は、1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましい。
【0039】
安定化剤は、膏体層中での薬物の分解や、高分子基剤の物性変化、あるいは着色変化を抑える目的で添加される。このような安定化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸、酢酸トコフェロールなどの酸化防止剤、シクロデキストリン、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。膏体層における安定化剤の含有量は0.05〜10重量%であればよい。
【0040】
膏体層の厚さは、吸収性を持続できるクロニジン量を確保でき、且つ良好な貼付性を実現できる範囲で適宜設定されるが、20〜200μmが好ましく、30〜120μmがより好ましい。膏体層の厚さが20μmより薄いと、充分量のクロニジンを保持できないだけでなく、皮膚に貼付する際に充分な接着性を発現できない場合がある。一方、膏体層の厚さが200μmを超えると、必要以上にクロニジンを含有することになり無駄になるだけでなく、保存中に膏体層が側面にはみ出しやすく、使用時に包装袋から貼付剤を取り出しづらくなる場合がある。
【0041】
本発明の貼付剤では、支持体の一面に膏体層が積層一体化されている。支持体の一面には、1層の膏体層のみが積層一体化されてもよく、2層以上の膏体層が積層一体化されていてもよい。
【0042】
支持体の一面に2層の膏体層が積層一体化された貼付剤としては、支持体と、この支持体の一面に積層一体化された第1の膏体層と、この第1の膏体層の一面に積層一体化された第2の膏体層とを含む貼付剤が挙げられる。このようにして複数の膏体層が積層一体化されている貼付剤では、膏体層から皮膚に移行するクロニジンの速度や量を所望の範囲内に容易に制御することができる。
【0043】
第1の膏体層は、結晶状態のクロニジンを含むクロニジン10〜30重量%と、粘度平均分子量が80万以上である高分子基剤(A)25〜50重量%と、上記クロニジンを溶解させることができる液状添加剤30〜55重量%とを含有し、且つ上記高分子基剤(A)に対する上記液状添加剤の重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が、0.5〜2.0であることが好ましい。
【0044】
第2の膏体層は、結晶状態のクロニジンを含むクロニジン5重量%以上且つ10重量%未満と、粘度平均分子量が80万以上である高分子基剤(A)25〜50重量%と、上記クロニジンを溶解させることができる液状添加剤30〜55重量%とを含有し、且つ上記高分子基剤(A)に対する上記液状添加剤の重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が、0.5〜2.0であることが好ましい。
【0045】
第1の膏体層及び第2の膏体層は、それぞれ、充填剤、安定化剤、粘着力調整剤等の他の添加剤を含有していてもよい。なお、第1の膏体層及び第2の膏体層に用いられるクロニジン、高分子基剤(A)、高分子基剤(B)、液状添加剤、及び他の添加剤の詳細については、上述した通りである。
【0046】
(粘着層)
膏体層の一面に膏体層よりもクロニジンの含有量(重量%)の少ない粘着層が積層一体化されていることが好ましい。粘着層は、通常、膏体層の皮膚の面する側に積層一体化される。粘着層を設けることによってクロニジンの経皮吸収性と持続性を保持しつつ、皮膚への貼付性をより高めることができる。
【0047】
粘着層の組成は、上記膏体層からの経皮吸収性を妨げず、製剤としての貼付性を高める目的を達成するものであれば特に限定されない。例えば、膏体層と同じ成分を含み、貼付性としてより好ましい範囲までクロニジン濃度を下げた組成とすることができる。
【0048】
粘着層は、クロニジン、粘度平均分子量が80万以上である高分子基剤(A)、及びクロニジンを溶解させることができる液状添加剤を含有していることが好ましく、上記の成分に加えて粘度平均分子量が1万以上80万未満の高分子基剤(B)をさらに含有していることがより好ましい。粘着層に用いられるクロニジン、高分子基剤(A)、液状添加剤及び高分子基剤(B)としては、上述した膏体層と同様のものを用いることができる。
【0049】
粘着層におけるクロニジンの含有量は、0.5〜3重量%が好ましく、0.7〜2重量%がより好ましい。粘着層におけるクロニジンの含有量が少ないと、クロニジンの経皮吸収速度が所望の時間まで持続しなかったり、クロニジンの経皮吸収量が不足して、貼付剤の皮膚への貼付面積を大きくしないとクロニジンの血中濃度を所望の範囲まで上昇させることができなかったりする虞れがある。また、粘着層におけるクロニジンの含有量が多いと、粘着層の粘着力が低下する虞れがある。
【0050】
粘着層における高分子基剤(A)の含有量は、25〜90重量%が好ましく、25〜60重量%がより好ましく、25〜45重量%が特に好ましい。粘着層における高分子基剤(A)の含有量が少ないと、粘着層の凝集性が低下するために、保存時の粘着層のはみ出し、及び貼付時の粘着層の糊残りが起こり易くなる。また、粘着層における高分子基剤(A)の含有量が多いと、粘着層の粘着力が低下したり、薬物や添加剤の拡散速度が遅くなって所望のクロニジン血中濃度を得ることができなくなったりする虞れがある。
【0051】
また、粘着層が高分子基剤(B)を含む場合には、粘着層における高分子基剤(B)の含有量は、1〜25重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、1〜15重量%が特に好ましい。粘着層における高分子基剤(B)の含有量が少ないと、粘着層の粘着力が低下する虞れがある。また、粘着層における高分子基剤(B)の含有量が多いと、粘着層の凝集性が低下するために、保存時の粘着層のはみ出し、及び貼付時の粘着層の糊残りが起こり易くなる。
【0052】
粘着層における液状添加剤の含有量は、5〜60重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、30〜50重量%が特に好ましい。粘着層における液状添加剤の含有量が少ないと、クロニジンの経皮吸収性や持続性が不十分となる虞れがある。また、粘着層における液状添加剤の含有量が多いと、粘着層の凝集性が低下するために、保存時の粘着層のはみ出し、及び貼付時の粘着層の糊残りが起こり易くなる。
【0053】
粘着層における高分子基剤(A)に対する液状添加剤の重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]は、0.1〜2.0が好ましく、0.5〜1.9がより好ましく、0.7〜1.7が特に好ましい。粘着層における重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が0.1未満であると、クロニジンの経皮吸収性や持続性が不十分となる虞れがある。また、粘着層における重量比[液状添加剤/高分子基剤(A)]が2.0を超えると、粘着層の凝集性が低下するために、保存時の粘着層のはみ出し、及び貼付時の粘着層の糊残りが起こり易くなる。
【0054】
粘着層の厚さは、20〜200μmが好ましく、25〜200μmがより好ましい。粘着層の厚さが20μm未満であると粘着層の粘着力が不十分となる虞れがある。また、粘着層の厚さが200μmを超えると保存中に粘着層が貼付剤の側面からはみ出し易くなる。
【0055】
粘着層は、充填剤、安定化剤、粘着力調整剤等の他の添加剤を含有していてもよい。なお、粘着層に用いられる他の添加剤としては、膏体層と同様のものを用いることができる。
【0056】
(制御層)
本発明の貼付剤が、上述した第1の膏体層及び第2の膏体層を含む場合、第1の膏体層と第2の膏体層との間に制御層を設けることが好ましい。第1の膏体層、制御層、及び第2の膏体層はこの順で支持体の一面に積層一体化されて用いられる。このように制御層を設けることによって、クロニジン吸収の持続性をさらに高めることができる。
【0057】
また、本発明の貼付剤が、上述した粘着層を含む場合にも、膏体層と粘着層との間に制御層を設けることが好ましい。制御層及び粘着層はこの順で膏体層の一面に積層一体化されて用いられる。このように制御層を設けることによって、クロニジン吸収の持続性をさらに高めることができる。
【0058】
制御層には、クロニジンの安定性に影響を与えず、膏体層及び粘着層の密着性、又は第1の膏体層及び第2の膏体層の密着性を確保できるポリマーが好適に用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、酢酸セルロース、エチルセルロース、レーヨン、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらのポリマーは細孔を有しない膜として、又は細孔が均一に設けられた多孔膜として用いることができる。上記制御層の厚さや細孔の大きさ、数は、期待するクロニジンの拡散速度の制御レベルにより適宜調節される。
【0059】
制御層としては、上記ポリマーからなり且つ両面間に亘って貫通する多数の貫通孔を有する多孔膜と、上記多孔膜に含浸された液状添加剤とが含浸されてなる制御層が好ましく用いられる。上記ポリマーからなる多孔膜に液状添加剤が含浸された制御層を用いることにより、クロニジンの拡散速度を制御して温度の変化に伴うクロニジンの結晶状態の変化をより高く抑制することができる。なお、液状添加剤としては、膏体層と同様のものを用いることができる。
【0060】
多孔膜は、ポリオレフィン系樹脂からなることが好ましく、ポリエチレン又はポリプロピレンからなることがより好ましい。このようなポリオレフィン系樹脂からなる多孔ポリオレフィン系樹脂膜を用いることにより、クロニジンの吸収持続性を向上させることができる。
【0061】
また、多孔膜への液状添加剤の含浸は、多孔質膜が有する貫通孔に液状添加剤を充填することによって行うことができる。
【0062】
(支持体)
支持体は、柔軟であるが貼付剤に自己支持性を付与し且つ薬物の損失を防止する役目を果たすことができれば、特に制限されない。このような支持体を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、酢酸セルロース、エチルセルロース、レーヨン、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウム、ポリビニルアルコール、綿などが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0063】
支持体の形態としては、特に限定されず、例えば、フィルム、発泡体、不織布、織布、編布などの布が挙げられる。支持体として、複数の支持体を積層一体化させて用いてもよい。例えば、柔軟性と薬物損失防止の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの柔軟な樹脂フィルムや不織布と、ポリエチレンテレフタレートフィルムとを一体化させてなるラミネートフィルムを支持体として用いることができる。さらに、アルミニウム等の金属箔層や蒸着層を支持体の少なくとも一面に設けることによって、支持体の遮光性やバリア性を高めることができる。複数の支持体を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、接着剤による方法、熱融着による方法などが挙げられる。
【0064】
なかでも、支持体としては、貼付剤の破損を高く防止することができることから、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0065】
支持体の厚さは、10〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。
【0066】
さらに、膏体層を積層一体化させる支持体の表面には、支持体と膏体層との一体性を向上させるために、支持体表面に適度な凹凸を設けたり、コロナ処理やプラズマ放電処理を施したり、或いはアンカーコート剤を塗布してもよい。
【0067】
(離型紙)
膏体層や粘着層中のクロニジンの損失防止、及び膏体層や粘着層を保護する目的で、膏体層表面、又は貼付剤が粘着層を有する場合には粘着層の表面に離型紙を剥離可能に積層しておくのが好ましい。上記離型紙としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどからなる樹脂フィルムや紙などが挙げられる。離型紙の膏体層と対向させる面に離型処理が施されていることが好ましい。なお、上記離型紙は、単層からなっても、複数層からなってもよい。また、上記離型紙のバリア性を向上させる目的で、離型紙にアルミ箔やアルミ蒸着の層を設けてもよい。さらに、上記離型紙が紙からなる場合、離型紙のバリア性を向上させる目的で、離型紙にポリビニルアルコールなどの樹脂を含浸させてもよい。
【0068】
(製造方法)
次に、本発明の貼付剤の製造方法を説明する。貼付剤の製造方法は、特に限定されないが、膏体層を構成する成分及び必要に応じて溶剤等を加えて均一に混合することにより膏体層形成用溶液を調製し、この膏体層形成用溶液を溶剤塗工法、ホットメルト法、カレンダー法などの公知の塗工法で支持体上に展延して膏体層を得る方法が用いられる。
【0069】
例えば、溶剤塗工法であれば、先ず、クロニジン、高分子基剤(A)、液状添加剤及び必要に応じて他の添加剤と、トルエンなどの溶剤とを混合し、均一になるまで攪拌して膏体層形成用溶液を調製した後、この膏体層形成用溶液をコーターによって支持体の一面に塗工した後に、乾燥させることにより支持体の一面に積層一体化された膏体層を得る方法が用いられる。その後、この膏体層の一面に、シリコン等で離型処理された離型紙を、離型処理が施された面が膏体層に対向した状態となるように積層することが好ましい。また、上記と同様にして膏体層形成用溶液を調製した後、上記と同様の塗工法によって離型紙の離型処理が施された面上に膏体層形成用溶液を塗工し、乾燥させることにより、離型紙上に膏体層を形成し、この膏体層に支持体を積層一体化させる方法なども用いられる。
【0070】
膏体層の一面に粘着層を形成するには、先ず、クロニジン、高分子基剤(A)、液状添加剤及び必要に応じて他の添加剤と、トルエンなどの溶剤とを混合し、均一になるまで攪拌して粘着層形成用溶液を調製した後、上記と同様の塗工法によって離型紙の離型処理が施された面上に粘着層形成用溶液を塗工し、乾燥させることにより、離型紙上に粘着層を形成し、その後、上記粘着層を膏体層に積層一体化させる方法などが用いられる。