特許第6148890号(P6148890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148890
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】水栓取付装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20170607BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20170607BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20170607BHJP
   F16B 13/04 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   E03C1/042 E
   F16L5/00 B
   F16B35/04 V
   F16B13/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-82413(P2013-82413)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-205950(P2014-205950A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】313003901
【氏名又は名称】株式会社カクダイ岐阜工場
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】西口 昌雄
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−059245(JP,A)
【文献】 特開2009−215834(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0137427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00 − 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓が取付けられる円筒状の上本体部、該上本体部の内周面から膨出していると共に下面が該上本体部の下面よりも下方へ突出している一対の膨出部、前記上本体部の下端外周面から外方へ延出している円環状のフランジ部、一対の前記膨出部の一方において上下に貫通している第一貫通孔、及び該第一貫通孔が貫通している前記膨出部とは異なる該膨出部を上下に貫通している第二貫通孔を有している上固定部材と、
該上固定部材の前記第一貫通孔が貫通している前記膨出部において前記第一貫通孔に隣接した位置から下方へ延出しており、外周が多角形に形成されている棒状のガイド部材と、
前記第一貫通孔よりも大径の第一頭部、該第一頭部から下方へ棒状に延びており外径が前記第一貫通孔よりも小径で外周に雄ネジが形成されている第一雄ネジ部、及び該第一雄ネジ部の外径よりも外方へ延出している延出部、を有しており、前記第一頭部よりも下側が前記第一貫通孔に挿入されていると共に、前記第一頭部を前記上本体部の上面に当接させた時に下端が前記ガイド部材の下端と略同じ高さとなる長さに形成されている第一雄ネジ部材と、
前記第二貫通孔よりも大径の第二頭部、該第二頭部から下方へ棒状に延びており外径が前記第二貫通孔よりも小径で外周に雄ネジが形成されている第二雄ネジ部、及び該第二雄ネジ部の下端から下方へ向うに従って径が小さくなる円錐台状の突起部、を有しており、前記第二頭部よりも下側が前記第二貫通孔に挿入されている第二雄ネジ部材と、
平面視の外形がC字状に形成されている下本体部、該下本体部を上下に貫通しており前記ガイド部材が摺動可能且つ回転不能に挿入されているガイド孔、前記下本体部を上下に貫通しており内周面に前記第一雄ネジ部と螺合する雌ネジが形成されている第一雌ネジ孔、及び前記下本体部を上下に貫通しており内周面に前記第二雄ネジ部と螺合する雌ネジが形成されている第二雌ネジ孔、を有しており、前記ガイド孔に前記ガイド部材を挿通させることにより、上下方向の軸周りに回転不能とされる下固定部材と
を具備していることを特徴とする水栓取付装置。
【請求項2】
前記第一雄ネジ部材は、
前記第一雄ネジ部の下端から下方へ棒状に延びており外径が該第一雄ネジ部よりも小径の軸部を更に有しており、
該軸部の下端に前記延出部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の水栓取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクやカウンター等の天板に形成されている取付孔に対して、上側から水栓を取付けるために用いられる水栓取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シンクやカウンター等の天板に形成されている取付孔に対して、上側から水栓を取付けるための水栓取付装置としては、例えば、水栓が取付けられる円筒状の台座と、台座の下側に配置される円環状の座金具と、上側から台座を通して座金具に接続されている可撓性を有した連結材と、台座の貫通孔を通して座金具のネジ孔に締結可能な雄ネジ部材と、を備えた水栓取付装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の水栓取付装置は、円環状の座金具が半円弧状に折り畳むことができ、座金具を折り畳んだ状態で、天板の取付孔に上側から座金具を挿入し、天板の下側で折り畳んだ座金具を展開させると共に、連結材により座金具を引上げて天板の下面に密着させ、台座の貫通孔を通して座金具のネジ孔に雄ネジ部材を締結する。これにより、台座と座金具とによって天板が挟持され、天板の上側に台座が固定された状態となる。そして、天板の上側に固定された台座に水栓を取付けることによって、取付孔に対して上側から水栓を取付けることができる。
【0004】
ところで、特許文献1の水栓取付装置では、折り畳んだ座金具を、取付孔を通して天板の下側で展開させなければならず、座金具の展開に手間がかかる問題があった。これに対して、この折り畳み可能な円環状の座金具を、馬蹄形状に形成された挟み込み部材に置き換え、挟み込み部材の一方の先端から取付孔に挿入して天板の下側へ位置させることができるようにした水栓取付装置が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の水栓取付装置では、取付孔を通して天板の下側に配置した座金具や挟み込み部材に対して、台座の貫通孔を通して座金具等のネジ孔に雄ネジ部材を締結させる際に、座金具等を引上げる連結材が可撓性を有しているため、台座の貫通孔と座金具等のネジ孔との位置が合わせ難く、雄ネジ部材の締結作業、つまり、台座の固定作業に手間がかかる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、シンクやカウンター等の天板の取付孔に対して上側から容易に固定することが可能な水栓取付装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る水栓取付装置は、「水栓が取付けられる円筒状の上本体部、該上本体部の内周面から膨出していると共に下面が該上本体部の下面よりも下方へ突出している一対の膨出部、前記上本体部の下端外周面から外方へ延出している円環状のフランジ部、一対の前記膨出部の一方において上下に貫通している第一貫通孔、及び該第一貫通孔が貫通している前記膨出部とは異なる該膨出部を上下に貫通している第二貫通孔を有している上固定部材と、該上固定部材の前記第一貫通孔が貫通している前記膨出部において前記第一貫通孔に隣接した位置から下方へ延出しており、外周が多角形に形成されている棒状のガイド部材と、前記第一貫通孔よりも大径の第一頭部、該第一頭部から下方へ棒状に延びており外径が前記第一貫通孔よりも小径で外周に雄ネジが形成されている第一雄ネジ部、及び該第一雄ネジ部の外径よりも外方へ延出している延出部、を有しており、前記第一頭部よりも下側が前記第一貫通孔に挿入されていると共に、前記第一頭部を前記上本体部の上面に当接させた時に下端が前記ガイド部材の下端と略同じ高さとなる長さに形成されている第一雄ネジ部材と、前記第二貫通孔よりも大径の第二頭部、該第二頭部から下方へ棒状に延びており外径が前記第二貫通孔よりも小径で外周に雄ネジが形成されている第二雄ネジ部、及び該第二雄ネジ部の下端から下方へ向うに従って径が小さくなる円錐台状の突起部、を有しており、前記第二頭部よりも下側が前記第二貫通孔に挿入されている第二雄ネジ部材と、平面視の外形がC字状に形成されている下本体部、該下本体部を上下に貫通しており前記ガイド部材が摺動可能且つ回転不能に挿入されているガイド孔、前記下本体部を上下に貫通しており内周面に前記第一雄ネジ部と螺合する雌ネジが形成されている第一雌ネジ孔、及び前記下本体部を上下に貫通しており内周面に前記第二雄ネジ部と螺合する雌ネジが形成されている第二雌ネジ孔、を有しており、前記ガイド孔に前記ガイド部材を挿通させることにより、上下方向の軸周りに回転不能とされる下固定部材とを具備している」ことを特徴とする。
【0008】
ここで、「多角形」としては、四角形、六角形、等を例示することができる。また、「延出部」としては、軸部に対して着脱自在としても良いし、軸部に取外し不能とされていても良い。
【0009】
本発明の水栓取付装置は、シンクやカウンター等の天板の水栓を取付ける位置において、上本体部を貫通している第一貫通孔及び第二貫通孔が臨む内径の取付孔に対して、上側から固定することができる。具体的には、まず、第二雄ネジ部材を上固定部材から外し、第一貫通孔に挿入されている第一雄ネジ部材の第一頭部を上本体部の上面に当接させると共に、第一雄ネジ部材の下端の延出部に下固定部材を当接させた状態とする。これにより、上固定部材からガイド部材と第一雄ネジ部材が隣接した状態で下方へ延出していると共に、それらガイド部材と第一雄ネジ部材の下端に下固定部材が位置し、上固定部材に対して下固定部材が最も離れた状態となる。
【0010】
この状態で、天板の取付孔に上側から下固定部材を傾けた状態で挿入し、天板の下側に下固定部材を位置させてから、天板に上固定部材を載置する。そして、第一雄ネジ部材を上方へ移動させることにより、第一雄ネジ部材の下端の延出部に当接している下固定部材を、第一雄ネジ部材と共に上昇させ、下固定部材を天板の下面に当接させる。この際に、ガイド部材が、下固定部材のガイド孔に摺動可能且つ回転不能に挿入されていることから、下固定部材は上下に延びた軸周りに対して回転することなく上昇する。つまり、下固定部材は、その第二雌ネジ孔が、上固定部材の第二貫通孔に対して同軸上に位置したままの状態で上昇する。
【0011】
そして、下固定部材を天板の下面に当接させた状態で、上固定部材の第二貫通孔に上側から第二雄ネジ部材の第二雄ネジ部を挿入して、第二雄ネジ部材を締め付ける方向へ回転させると、第二雄ネジ部が下固定部材の第二雌ネジ孔と螺合することとなる。この状態で第二雄ネジ部材を締め付けることにより、第二雄ネジ部材側において上固定部材と下固定部材とで天板が挟まれた状態で締結される。
【0012】
その後、第一雄ネジ部材を締め付ける方向へ回転させて第一雄ネジ部材を締め付けることにより、第一雄ネジ部材側においても上固定部材と下固定部材とで天板が挟まれた状態で締結される。これにより、天板に水栓取付装置が固定された状態となり、この水栓取付装置の上固定部材に水栓を取付けることにより、天板に水栓を取付けることができる。
【0013】
このように、本発明の水栓取付装置によれば、天板に形成されている取付孔に対して、上側から下固定部材を挿入させた上で、第一雄ネジ部材を介して上方へ移動させて天板の下面に当接させるだけで、上固定部材の第二貫通孔と、下固定部材の第二雌ネジ孔とを一致させることができるため、第二雄ネジ部材を第二雌ネジ孔へ簡単に螺合させることができ、水栓取付装置を天板の取付孔に対して上側から容易に固定することができる。
【0016】
本発明の水栓取付装置によれば、円筒状の上本体部の内側に第一貫通孔や第二貫通孔、及びガイド部材が配置されることとなるため、第一貫通孔や第二貫通孔を上本体部の円筒部分で貫通させるようにした場合と比較して、上本体部の外径を同じとした場合、上本体部の内径(内側の広さ)を相対的に大きくすることができる。従って、水栓の下端から下方へ延出している供給管を、筒状の上本体部に対して通し易くすることができ、水栓の取付作業を行い易くすることができる。
【0017】
また、本発明に係る水栓取付装置は、上記の構成に加えて、「前記第一雄ネジ部材は、前記第一雄ネジ部の下端から下方へ棒状に延びており外径が該第一雄ネジ部よりも小径の軸部を更に有しており、該軸部の下端に前記延出部が備えられている」ことを特徴としても良い。
【0018】
ところで、第一雄ネジ部や第二雄ネジ部の長さとしては、本発明の水栓取付装置が固定される天板の厚さに対して、下固定部材の厚さ(上下方向の高さ)を加えた長さが少なくとも必要である。これら第一雄ネジ部等が最小限の長さの場合では、天板に固定する前の上固定部材と下固定部材との間が狭くなるため、下固定部材を取付孔に挿入しようとすると、上固定部材が天板に当ってしまい、取付孔に挿入させることができなくなる問題がある。そこで、第一雄ネジ部等を充分に長くして上固定部材から下固定部材が遠く離れるようにすることにより、下固定部材を取付孔に挿入させる時に上固定部材が天板に当らないようにして、取付孔へ挿入させられるようにすることが考えられる。しかしながら、第一雄ネジ部等を充分に長くした場合、第一雌ネジ孔や第二雌ネジ孔に螺合させて締め付ける際に、第一雄ネジ部材や第二雄ネジ部材を回転させる回数が必要以上に多くなり、固定作業に手間がかかる問題が生じる。
【0019】
これに対して、本発明では、第一雄ネジ部材の第一雄ネジ部の下端に小径の軸部を備えると共に、その軸部の下端に延出部を備えているため、例えば、第一雄ネジ部の長さを必要最小限の長さとした場合、軸部の下端に下固定部材を位置させることにより上固定部材から下固定部材を充分に離すことができ、下固定部材を取付孔へ挿入し易くすることができると共に、第一雄ネジ部材により締結させる際に、第一雄ネジ部材を回転させる回数を必要最小限にすることができ、固定作業にかかる手間を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、シンクやカウンター等の天板の取付孔に対して上側から容易に固定することが可能な水栓取付装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である水栓取付装置を天板の取付孔に固定した状態を示す正面図である。
図2】(a)は図1の水栓取付装置を単品で示す上から見た斜視図であり、(b)は(a)を下から見た斜視図である。
図3】天板の取付孔に対して図1の水栓取付装置の固定方法を示す説明図である。
図4図3に続く固定方法を示す説明図である。
図5図4に続く固定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態である水栓取付装置1について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。本実施形態の水栓取付装置1は、シンクやカウンター等の天板Tに形成されている取付孔Hに、上側から水栓Sを取付けるために用いられる。水栓取付装置1は、水栓Sが取付けられると共に天板Tの上側に取付孔Hを覆うように載置される上固定部材2と、天板Tを挟んで上固定部材2の下側に配置される下固定部材3と、天板Tを挟んで上固定部材2と下固定部材3とを締結する第一雄ネジ部材4及び第二雄ネジ部材5と、上固定部材2から下固定部材3を貫通して下方へ延出する六角柱状のガイド部材6と、を備えている。図1では、水栓Sとして湯水混合水栓を記載しており、水栓Sの下端から水側と湯側の二つの供給管S1が下方へ延出している。
【0023】
上固定部材2は、水栓Sが取付けられる円筒状の上本体部2aと、上本体部2aの下端外周面から外方へ延出している円環状のフランジ部2bと、上本体部2aの内周面において周方向の一部から膨出している第一膨出部2cと、第一膨出部2cとは上本体部2aの内周面において周方向の異なる位置から膨出している第二膨出部2dと、第一膨出部2cを上下に貫通している第一貫通孔2eと、第二膨出部2dを上下に貫通している第二貫通孔2fと、を備えている。また、上固定部材2は、上本体部2aの外周面の下部において内周側へ凹んでいる環状の保持溝2gと、上本体部2aの外周面を貫通していると共に内面に雌ネジが形成されている水栓固定孔2hと、を備えている。
【0024】
上固定部材2は、円筒状の上本体部2aの内径が、天板Tの取付孔Hの内径と略同じに形成されている。また、フランジ部2bの外径は、取付孔Hよりも大径に形成されている。第一膨出部2c及び第二膨出部2dは、上面が上本体部2aの上面よりも下方へ窪んでいる。また、第一膨出部2c及び第二膨出部2dは、下面が、上本体部2aの下面よりも下方へ突出している。詳細な図示は省略するが、第一膨出部2c及び第二膨出部2dは、上本体部2aの図1において左右方向の中心を通る線に対して対称に形成されていると共に、上本体部2aの中心よりも図1において紙面の奥側に夫々形成されている。これにより、水栓Sから下方へ延びている供給管S1を、上本体部2a内を貫通させるためのスペースが確保されている。本実施形態では、図1において左側を第一膨出部2c、右側を第二膨出部2dとしている。
【0025】
第一貫通孔2e及び第二貫通孔2fは、第一膨出部2c及び第二膨出部2dにおいて可及的に互いに遠ざかった位置に形成されている。第一膨出部2cでは、その下面の第一貫通孔2eに隣接した位置にガイド部材6の上端側が固定されている。これにより、第一膨出部2cからガイド部材6が下方へ延出した状態となる。保持溝2gには、上本体部2aの外周と水栓Sの下端内周との間のガタツキを防止するためのゴム等の弾性体からなるOリング7が装着保持される。
【0026】
下固定部材3は、平面視の外形がC字状に形成されている下本体部3aと、下本体部3aを上下に貫通しており内周面に同じ雌ネジが形成されている第一雌ネジ孔3b及び第二雌ネジ孔3cと、第一雌ネジ孔3bに隣接した位置で下本体部3aを上下に貫通しておりガイド部材6が挿入されているガイド孔3dと、を備えている。また、下固定部材3は、上面の全面に上端が尖った複数の突部3eを備えている。下固定部材3は、上下の高さが、上固定部材2の高さの約1/2に形成されている。本実施形態では、図1において左側を第一雌ネジ孔3b、右側を第二雌ネジ孔3cとしている。
【0027】
下固定部材3の下本体部3aは、C字状の外周側が、上固定部材2のフランジ部2bの外径よりも大径の円弧状に形成されている。また、下本体部3aは、C字状の内周側が、上固定部材2の上本体部2aと第一膨出部2c及び第二膨出部2dとで形成されている内周形状の一部と略同じ形状に形成されている。第一雌ネジ孔3b及び第二雌ネジ孔3cは、平面視において上固定部材2の第一貫通孔2e及び第二貫通孔2fと同じ位置に形成されている。
【0028】
ガイド孔3dは、内周形状がガイド部材6の外周形状よりも若干大きい六角柱形状に形成されている。これにより、ガイド孔3dがガイド部材6を挿入させた状態では、ガイド部材6の長手方向へは相対的に移動(摺動)させることができるものの、ガイド部材6の軸芯周りには回転不能である。
【0029】
第一雄ネジ部材4は、上固定部材2の第一貫通孔2eよりも大径の第一頭部4aと、第一頭部4aから下方へ棒状に延びており外径が貫通孔2dよりも小径で外周に雄ネジが形成されている第一雄ネジ部4bと、第一雄ネジ部4bの下端から下方へ棒状に延びており外径が第一雄ネジ部4bよりも小径の軸部4cと、及び軸部4cの下端から第一雄ネジ部4bの外径よりも外方へ延出している延出部4d、を備えている。
【0030】
第一雄ネジ部材4の第一雄ネジ部4bは、下固定部材3の第一雌ネジ孔3bの雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。この第一雄ネジ部4bは、その軸方向の長さが、上本体部2aの内径(取付孔Hの直径)の約2倍に形成されている。軸部4cは、外周面が滑らかな円柱状に形成されている。また、軸部4cは、その軸方向の長さが、第一雄ネジ部4bの長さの約1/2に形成されている。延出部4dは、図2(b)に示すように、本実施形態では、Eリングとされており、軸部4cの外周下端に形成されている溝4eに着脱自在に取付けられている。
【0031】
第一雄ネジ部材4は、延出部4dを取外した状態とすることにより、上固定部材2の第一貫通孔2eや下固定部材3の第一雌ネジ孔3bに、第一雄ネジ部4bや軸部4cを挿通させることができる。また、貫通孔2dや第一雌ネジ孔3bに、第一雄ネジ部4bや軸部4cを挿通した状態で、延出部4dを取付けることにより、第一貫通孔2eや第一雌ネジ孔3b等から抜けないようにすることができる。
【0032】
第二雄ネジ部材5は、上固定部材2の第二貫通孔2fよりも大径の第二頭部5aと、第二頭部5aから下方へ棒状に延びており外径が貫通孔2dよりも小径で外周に雄ネジが形成されている第二雄ネジ部5bと、第二雄ネジ部5bの下端から下方へ向うに従って径が小さくなる円錐台状の突起部5cと、を備えている。
【0033】
第二雄ネジ部材5の第二雄ネジ部5bは、下固定部材3の第二雌ネジ孔3cの雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。この第二雄ネジ部5bは、軸方向の長さが、第一雄ネジ部4bの長さと同じに形成されている。
【0034】
ガイド部材6は、棒状で外周が六角形に形成されており、下端に下方へ向うに従って径が小さくなる円錐台状の突起部6aを備えている。このガイド部材6は、水栓取付装置1を天板Tの取付孔Hに固定した状態で、その下端が第一雄ネジ部材4の下端と略おなじ高さとなる長さに形成されている。
【0035】
本実施形態の水栓取付装置1は、真鍮やステンレス、亜鉛ダイカスト等の耐食性に優れた金属によって形成されている。
【0036】
次に、本実施形態の水栓取付装置1を天板Tの取付孔Hに上側から固定する方法を、主に図3乃至図5を参照して説明する。水栓取付装置1は、上固定部材2の第一膨出部2c及び第二膨出部2dにおいて上本体部2aから下方へ突出している部分を挿入することができる大きさの取付孔Hに取付けることができ、第一膨出部2c及び第二膨出部2dの下方へ突出している部分の外周径よりも若干大きい径の取付孔Hに取付けることができる。この水栓取付装置1は、取付孔Hに固定する前の状態では、第二雄ネジ部材5が上固定部材2から取外されており、上固定部材2の第一貫通孔2eに挿入されている第一雄ネジ部材4とガイド部材6に、下固定部材3が挿通されている。また、上固定部材2の下面に、薄い円環状のパッキン8が貼り付けられている(図1等を参照)。このパッキン8により、上固体部材2と天板Tとの間を水密にシールすることができる他、上固定部材2と天板Tとのガタツキをなくすことができ、上固定部材2を介して水栓Sを安定した状態に取付けることができる。
【0037】
固定する前の状態で、第一雄ネジ部材4の第一頭部4aを第一膨出部2cの上面に当接させると共に、第一雄ネジ部材4の下端の延出部4dに下固定部材3を当接させた状態とする(図2において第二雄ネジ部材5を外した状態)。これにより、上固定部材2に対して下固定部材3が最も離れた状態となる。
【0038】
この状態で、下固定部材3において第二雌ネジ孔3c側の端部から天板Tの取付孔Hに挿入されるように全体を傾けて、天板Tの上側から取付孔Hに下固定部材3を挿入し(図3(a)を参照)、天板Tの下側に下固定部材3を位置させてから、天板Tに上固定部材2を載置する(図3(b)を参照)。この際に、上固定部材2において第一膨出部2c及び第二膨出部2dの上本体部2aから下方へ突出している部位を、取付孔H内に挿入させた後に、上固定部材2を天板Tの上面に沿って移動させて、取付孔Hの軸芯と上固定部材2の軸芯とを合わせる。
【0039】
上固定部材2を天板Tに載置したら、次に、第一雄ネジ部材4を上方へ移動させることにより、第一雄ネジ部材4の下端の延出部4dに当接している下固定部材3を、第一雄ネジ部材4と共に上昇させ、下固定部材3を天板Tの下面に当接させる(図4(c)を参照)。この際に、ガイド部材6が、下固定部材3のガイド孔3dに摺動可能且つ回転不能に挿入されていることから、下固定部材3は上下に延びた軸周りに対して回転することなく上昇する。つまり、下固定部材3は、その第二雌ネジ孔3cが、上固定部材2の第二膨出部2dの第二貫通孔2fに対して同軸上に位置したままの状態で上昇する。
【0040】
そして、下固定部材3を天板Tの下面に当接させた状態で、上固定部材2の第二貫通孔2fに上側から第二雄ネジ部材5の第二雄ネジ部5bを挿入させて(図4(d)を参照)、上固定部材2を貫通させた上で、その下端を下固定部材3の第二雌ネジ孔3cに挿入させる。この際に、第二雄ネジ部材5の下端には、突起部5cが備えられているため、第二雄ネジ部材5の下端を第二雌ネジ孔3cへ容易に挿入させることができる。そして、第二雄ネジ部材5を締め付ける方向へ回転させると、第二雄ネジ部5が下固定部材3の第二雌ネジ孔3cと螺合することとなる。そして、第二雄ネジ部材5を締め付けることにより、第二雄ネジ部材5側において上固定部材2と下固定部材3とで天板Tが挟まれた状態で締結される(図5(e)を参照)。
【0041】
その後、第一雄ネジ部材4を下降させて、第一雄ネジ部4bの下端を下固定部材3の第一雌ネジ孔3bに挿入させると共に、第一雄ネジ部材4を締め付ける方向へ回転させることにより、第一雄ネジ部材4の第一雄ネジ部4bが下固定部材3の第一雌ネジ孔3bと螺合することとなる。そして、第一雄ネジ部材4を締め付けることにより、第一雄ネジ部材4側においても上固定部材2と下固定部材3とで天板Tが挟まれた状態で締結される(図5(f)を参照)。
【0042】
これら第一雄ネジ部材4及び第二雄ネジ部材5の締め付けにより、下固定部材3の複数の突部3eが、天板Tの下面に突き刺さり、下固定部材3が天板Tの面に沿った方向へ動くのが規制される。従って、天板Tの取付孔Hに対して水栓取付装置1が位置不動に固定された状態となる。
【0043】
天板Tの取付孔Hに水栓取付装置1を固定したら、上固定部材2の保持溝2gにOリング7を装着保持させる。その後、取付ける水栓Sの下端から延びている二つの供給管S1を、上固定部材2における上本体部2aの筒内の空きスペース及び取付孔Hを通して、天板Tの下側へ延出させる。そして、水栓Sの下端に上固定部材2の上本体部2aを挿入させた上で、水栓Sの外側から図示しないビスを上固定部材2の水栓固定孔2fに捩じ込むことにより、水栓Sが天板Tに取付けられる(図1を参照)。
【0044】
このように、本実施形態の水栓取付装置1によれば、ガイド部材6によって下固定部材3を回動不能としており、上固定部材2の第二貫通孔2fと、下固定部材3の第二雌ネジ孔3cとを一致させることができるため、第二雄ネジ部材5を第二雌ネジ孔3cへ簡単に螺合させることができ、水栓取付装置1を天板Tの取付孔Hに対して上側から容易に固定することができる。
【0045】
また、第一雄ネジ部材4の第一雄ネジ部4bの下端に小径の軸部4cを備えているため、例えば、第一雄ネジ部4bの長さを必要最小限の長さとした場合、軸部4cの下端に下固定部材3を位置させることにより上固定部材2から下固定部材3を充分に離れるようにすることができ、下固定部材3を取付孔Hへ挿入し易くすることができると共に、第一雄ネジ部材4により締結させる際に、第一雄ネジ部材4を回転させる回数を必要最小限にすることができ、固定作業にかかる手間を少なくすることができる。
【0046】
更に、第二雄ネジ部材5の下端に突起部5cを備えているため、ガタツキ等によって第二雄ネジ部5bの下端の中心が第二雌ネジ孔3cの中心とずれてしまっても、下端の突起部5cが第二雌ネジ孔3cに挿入されることにより、その下端の中心を第二雌ネジ孔3cの中心へ誘導することができ、第二雌ネジ孔3cに対して第二雄ネジ部5bを容易に螺合させることができる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、第一雄ネジ部材5の突起部5cとして、着脱自在なEリングとしたものを示したが、これに限定するものではなく、カシメ加工やバーリング加工等により取外し不能な突起部5cとしても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 水栓取付装置
2 上固定部材
2a 上本体部
2b フランジ部
2c 第一膨出部
2d 第二膨出部
2e 第一貫通孔
2f 第二貫通孔
3 下固定部材
3a 下本体部
3b 第一雌ネジ孔
3c 第二雌ネジ孔
3d ガイド孔
3e 突部
4 第一雄ネジ部材
4a 第一頭部
4b 第一雄ネジ部
4c 軸部
4d 延出部
4e 溝
5 第二雄ネジ部材
5a 第二頭部
5b 第二雄ネジ部
5c 突起部
6 ガイド部材
T 天板
H 取付孔
S 水栓
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2002−250060号公報
【特許文献2】特開2010−013852号公報
図1
図2
図3
図4
図5