(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記座板の左右両側の反り許容部の略中間領域には、前記座受部材との間で上下方向の変位が規制される変位規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
前記座受部材には、前記座板の前記被支持部よりも後方側領域の下面に当接可能に配置される下方変位規制面が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の椅子。
前記拘束支持部と前記被支持部の一方は、前後方向に沿って延出し左右のいずれかの方向に開口する係合溝によって構成され、前記拘束支持部と前記被支持部の他方は、前記係合溝に係合される突条によって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の椅子。
前記係合溝と前記突条とは前後方向に摺動可能に構成され、前記座板は、前記座受部材に対し、前記係合溝と前記突条を介して前後方向に位置調整可能にされていることを特徴とする請求項4に記載の椅子。
前記撓み助長構造は、前記座板に前後方向に沿って設けられた複数の補強リブと、前記座板の隣接する補強リブ間の一般面に間欠的に設けられた複数の肉抜き孔と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の椅子。
【背景技術】
【0002】
事務用等に用いられる一般的な椅子は、脚部の上端に、スライドフレーム等の座受部材を介して、座体の骨格部である座板が支持されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1〜3に記載の椅子は、前後方向に沿って延出し上方または下方に開口する断面略コ字状の係合溝と、その係合溝と係合する突条とが、座受部材と座板の間に設けられ、座受部材に対する座板の上下方向の変位が別の変位規制手段(脱落防止手段)によって規制されている。
これらの椅子の場合、相互に係合する係合溝と突条とは別に変位規制手段が設けられているため、部品点数が多くなり、構造が複雑になり易い。このため、現在、この点を改善した椅子が案出されている(例えば、特許文献4,5参照。)。
【0004】
特許文献4,5に記載の椅子は、前後方向に沿って延出し幅方向の内側に開口する断面略コ字状の係合溝が座板の左右の両縁部に設けられるとともに、座受部材の左右の両縁部に、座板の左右の各係合溝に係合するフランジ部が設けられ、座受部材に対する座板の上下方向の変位(脱落)がフランジ部と係合溝の係合によって阻止されるようになっている。これらの椅子では、座板側の係合溝は座板の前後方向のほぼ全域にわたって設けられており、座板の上下方向の変位が前後方向の全域にわたって規制されるようになっている。
また、特許文献5に記載の椅子においては、成形性や座り心地の観点から座板は可撓性を有する合成樹脂によって形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の椅子においては、着座者の着座安定性を高めるために、着座者が座体上に着座したときに、着座者の臀部が左右方向から包まれるように(左右方向にずれないように)座板が湾曲変形することが望ましい。この点、座板が撓み易い合成樹脂で形成される特許文献5に記載の椅子は好ましいが、以下の点でさらなる改善の余地がある。
特許文献5に記載の椅子は、座板の側縁部の前後方向のほぼ全域が座受部材によって上下方向の変位を規制されているため、着座者が座体に着座したときに座板の左右方向のほぼ中央領域が下方に湾曲変形するものの、座板上の着座者の臀部の両側部分は中央領域に比して上下方向の相対位置が僅かに高くなるに過ぎない。このため、着座者の臀部のずれ防止効果を適切に発揮できるとは言い難かった。
【0007】
そこでこの発明は、座受部材からの座板の離脱を防止しつつ、着座者の着座時には、着座者の臀部の側方が確実に保持されるようにして座体の着座安定性を高めることのできる椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る椅子では、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
この発明に係る椅子は、座体の骨格部を成す座板が、座受部材を介して脚部に支持される椅子において、前記座受部材に、前記座板の左右の側縁部を上下方向の変位を規制して支持する拘束支持部が設けられるとともに、前記座板の左右の各側縁部に、前記拘束支持部に支持される被支持部が設けられ、前記座板の左右の各側縁部の前記拘束支持部と前記被支持部との係合部よりも後方側領域には、前記座受部材に上方変位を規制されずに当該側縁部の反り変形が許容される反り許容部が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、座体の上部に着座者が着座してその着座者の荷重が座板に作用すると、座板は左右の側縁部で主に荷重を座受部材に支持されるとともに、座受部材からの脱落が、座受部材側の拘束支持部と座板側の被支持部との係合によって規制される。また、着座者の荷重が拘束支持部と被支持部との係合部よりも後方側領域に作用すると、その後方側領域の左右の反り許容部が上方に反り変形し、着座者の臀部の左右を側方から保持するようになる。
【0009】
前記座板の左右両側の反り許容部の略中間領域には、前記座受部材との間で上下方向の変位が規制される変位規制部が設けられていることが望ましい。
この場合、着座者の着座姿勢の変化等によって座板の後縁部側が上下方向に変位しようとすると、その変位が変位規制部によって規制され、座板の前後方向の傾動が抑制されるようになる。また、座受部材側の拘束支持部と座板側の被支持部との係合のみによって座板の上下の変位が規制される場合に比較し、座板上の上下方向の変位が規制される部位間の距離が短くなることから、座板のガタつきを効果的に抑制することが可能になる。
【0010】
また、前記座受部材には、前記座板の前記被支持部よりも後方側領域の下面に当接可能に配置される下方変位規制面が設けられていることが好ましい。
この場合、着座者の着座姿勢の変化等によって座板の後縁部側の一部に荷重が偏って作用したときに、座板の後縁部の部分的な沈み込みが下方変位規制面によって抑制されるようになる。
【0011】
前記拘束支持部と前記被支持部の一方は、前後方向に沿って延出し左右のいずれかの方向に開口する係合溝によって構成され、前記拘束支持部と前記被支持部の他方は、前記係合溝に係合される突条によって構成されるようにしても良い。
この場合、係合溝に前後方向から突条を係合させることにより、拘束支持部と被支持部とを容易に組み付けることが可能になる。
【0012】
さらに、前記係合溝と前記突条とは前後方向に摺動可能に構成され、前記座板は、前記座受部材に対し、前記係合溝と前記突条を介して前後方向に位置調整可能にされるようにしても良い。
この場合、係合溝と突条を利用して座板を座受部材に対して前後方向の任意位置に調整することが可能になり、前後のいずれの位置に調整したときにも、係合溝と突条の係合によって座板の上下方向の変位を規制することが可能になる。
【0013】
前記座板の前記反り許容部には、面方向の撓み変形を容易にする撓み助長構造が設けられていることが望ましい。
この場合、着座者の荷重が座板の被支持部よりも後方側領域に作用したときに、反り許容部が容易に反り変形するようになる。
【0014】
また、前記撓み助長構造は、前記座板の前後方向の剛性を維持したまま左右方向の曲げ剛性を低くする指向性を有する構造であることがさらに望ましい。
この場合、着座者の荷重が座板の被支持部よりも後方側領域に作用したときに、反り許容部の前後方向の大きな撓み変形を招くことなく、左右方向の曲げ(反り)変形が促進されるようになる。
【0015】
前記撓み助長構造は、前記座板に前後方向に沿って設けられた複数の補強リブと、前記座板の隣接する補強リブ間の一般面に間欠的に設けられた複数の肉抜き孔と、を備えた構造とすることができる。
この場合、反り許容部の前後方向の剛性は複数の補強リブによって維持され、左右方向の曲げ剛性は、隣接する補強リブ間の複数の肉抜き孔によって低く抑えられるようになる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、座受部材側の拘束支持部と座板側の被支持部との係合によって座受部材に対する座板の上下方向の変位を規制し、着座者の荷重が座板に作用したときには、座板の被支持部よりも後方側領域の反り許容部が上方に反り変形することにより、着座者の臀部の左右を側方から確実に保持することができるため、座板の脱落を防止しつつも座体の着座安定性をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、椅子に正規姿勢で着座した人の正面が向く図中矢印FRの指す向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子に正規姿勢で着座した人の上方の図中矢印UPの指す向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子1に正規姿勢で着座した人の左側の図中矢印LHの指す向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。
【0019】
最初に、
図1〜
図12に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態の椅子1の全体構成を示す側面図であり、
図2は、一部部品を取り去った椅子1を斜め下方から見た斜視図である。
これらの図に示すように、この実施形態の椅子1は、フロアF上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、着座者が着座する座体4と、支基3の上面に取り付けられ座体4を支持する座受部材5と、支基3から後部上方側に延出して座体4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ部6と、を備えている。
脚部2は、キャスタ7a付きの多岐脚7と、多岐脚7の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱8と、を備え、脚柱8の上端部に支基3が水平方向に回転可能に取り付けられている。支基3には、脚柱8の昇降調整機構と背凭れ部6の傾動調整機構が内蔵されている。背凭れ部6は、側面視略L字状の背凭れ支持フレーム9と、背凭れ支持フレーム9の後上部の前面に取り付けられ座体4に着座した着座者の背中を直接支持する背凭れ本体10と、を備え、背凭れ支持フレーム9の前部下端が支基3内の傾動調整機構に連結されている。
なお、
図1,
図2中符号11は、支基3上における背凭れ支持フレーム9の枢支軸であり、符号12は、支基3の側面に突設された傾動調整機構の操作ノブである。また、
図1中の符号90は、追加部品として座体4の左右両側の下面に取り付けられる肘掛けである。
【0020】
図3,
図4,
図5は、座体4と座受部材5の上面図と正面図と左側面図であり、
図6〜
図11は、座体4と座受部材5の断面図である。
座体4は、骨格部を成す座板13と、座板13の上部に取り付けられる座本体14と、を備えている。座本体14は、詳細な図示は省略するが、座板13の外周縁部に取り付けられる不図示の座枠と、座板13の上面に設置されるウレタン等から成る不図示のクッション材と、座枠に張設されてクッション材の上方側を覆うシート表皮材15と、を備えている。
【0021】
座板13は、弾性を有する合成樹脂によって形成され、
図2,
図3,
図6に示すように、上面視では四隅が丸みを帯びた略長方形状とされている。座板13の左右の側辺は後方側に向かって若干窄まり、後部側の隅部の円弧は前部側の隅部の円弧よりも大きくなっている。
また、座板13は、
図7〜
図9に示すように、左右方向の中央の所定範囲が正規設置状態で略水平になるように形成されている。ここで、この略水平になる領域を中央領域13aと呼ぶものとすると、座板13の中央領域13aの左右両側には、中央領域13aに対して上方側に傾斜する傾斜領域13bが連設されている。したがって、座板13の全域は左右方向の略中央部分が凹状に若干窪んだ形状とされている。
【0022】
座板13の後辺の中央領域を除く座板13の周縁部には、補強リブを兼ねる連続した遮蔽壁16が下方に向かって突設されている。この遮蔽壁16は、座板13の下面が側方から見えるのを隠すとともに、座板13全域の過大な撓み変形を規制するように機能する。座板13の左右の側縁部の下面には、遮蔽壁16の側辺領域に左右方向の内側に近接して前後方向に延出する支持壁17が突設されている。各支持壁17の内側面(左右方向内側に向く面)には二つの内向きフランジ18A,18Bが突設されている。これらの内向きフランジ18A,18Bは、
図8に示すように、各支持壁17と、その支持壁17に隣接する座板13の下面とともに、左右方向の内側に開口する略コ字状の係合溝19を構成している。
図3,
図6に示すように、各支持壁17に突設される一方の内向きフランジ18Aは、座板13の前後方向の前部寄り位置に配置され、他方の内向きフランジ18Bは、座板13の前後方向の略中央位置に配置されている。また、左側の支持壁17の前後の内向きフランジ18A,18Bの間の領域には、
図7に示すように切欠き部20が設けられ、座体4の前後位置をロックするためロックレバー21の傾動操作がその切欠き部20によって許容されるようになっている。
なお、この実施形態のロックレバー21は、操作者が把持する解除操作ノブ22と一体に形成され、解除操作ノブ22とともに、座板13の左側部の下面に回動可能に軸支されている。ロックレバー21と解除操作ノブ22は、図示しない付勢スプリングによってロックレバー21の先端部を座板13の下面に近接させるロック方向に回動付勢されており、解除操作ノブ22の上方側への引き上げ操作によってロック解除方向に回動操作されるようになっている。
【0023】
また、座板13の下面には、前後方向に延出する複数の補強リブ23…がほぼ等間隔に突設されている。これらの補強リブ23…の突出高さは、座板13の下面の遮蔽壁16や支持壁17の突出高さよりも低く設定されている。なお、補強リブ23…は、座板13の下面のうちの、左右の傾斜領域13bの側端部の所定の範囲と中央領域13aの一部の範囲を除くほぼ全域にわたって設けられている。また、
図8に示すように、座板13の左右の傾斜領域13bに形成される補強リブ23は、左右方向の端部に向かって補強リブ23の高さが次第に低くなっている。このため、各傾斜領域13bの剛性は、左右方向の端部に向かって次第に低くなっている。
また、座板13の中央領域13aの後部寄りの下面には、円筒状のボス部24が突設され、そのボス部24の下端には左右方向に突出する係止フランジ25が一体に形成されている。これらのボス部24と係止フランジ25の機能については後に詳述する。
【0024】
一方、座受部材5は、金属板から成り座板13を直接支持するベースプレート26と、ベースプレート26と支基3との間に介装される合成樹脂製の下部プレート27と、を備えている。下部プレート27は、支基3の上面に載置され、ベースプレート26は、支基3との間に下部プレート27を挟み込んだ状態において、支基3に図示しない固定手段によって固定される。
図12は、座受部材5のベースプレート26の下面図である。
同図にも示すように、ベースプレート26は、上面視では後部側の二隅が丸みを帯びた略長方形状とされている。ベースプレート26は、
図7〜
図9に示すように左右方向の中央の所定範囲が正規設置状態で略水平になるように形成されている。この略水平になる領域を中央領域26aと呼ぶものとすると、座板13と同様に、ベースプレート26の中央領域26aの左右両側には、中央領域26aに対して上方側に傾斜する傾斜領域26bが連設されている。ベースプレート26の外周端部の全域には、上方側に向かって立ち上がる起立壁28が設けられている。ベースプレート26の左右の側辺に位置される起立壁28の上端部には、座板13側の係合溝19に挿入係合される突条である外向きフランジ29が突設されている。
左右の各外向きフランジ29は、ベースプレート26の前後方向の略中央部から前端部にわたる範囲に設けられている。ただし、各外向きフランジ29の一部には、ベースプレート26に座板13を組み付けるための組付け用の切欠き部30が設けられている。
外向きフランジ29のこの切欠き部30には、座受部材5に座板13を組み付けるときに、座板13の前部側の内向きフランジ18Aが上方側から挿入される。座板13はこの状態のまま前方側に移動させることにより、左右の係合溝19内に座受部材5の左右の外向きフランジ29がそれぞれ係合されることになる。
【0025】
ここで、座板13は、左右の両縁部の略コ字状の係合溝19が座受部材5の左右両側の外向きフランジ29に係合されることにより、前後方向の略中央部から前部側にわたる領域が座受部材5によって上下方向の変位を規制されている。座板13は、これにより前後方向の略中央部から前部側にわたる領域が左右の側縁部で座受部材5に吊り下げ支持されている。この実施形態においては、座受部材5の左右両側の外向きフランジ29が座板13の側縁部の上下方向の変位を規制して支持する拘束支軸部を構成し、座板13の左右両側の係合溝19が、座受部材5側の拘束支持部に支持される被支持部を構成している。
一方、座板13の左右の傾斜領域26bのうちの係合溝19(内向きフランジ18B)よりも後方側に位置される部分は、座受部材5に上方変位を規制されておらず、側端部方向に向かっての反り変形が許容される反り許容部40とされている。
【0026】
また、ベースプレート26の外周端部の起立壁28の上端部には、外向きフランジ29のない領域に外向きの小フランジ34が屈曲して形成されており、その小フランジ34の上面が座板13の下面に対向して配置されるようになっている。この実施形態においては、ベースプレート26上の外向きフランジ29よりも後方側に位置される小フランジ34の上面が、座板13の内向きフランジ18Bよりも後方側領域の下面に当接して、座板13の当該領域の下方変位を規制する下方変位規制面を構成している。
なお、
図2,
図6において、符号35は、ベースプレート26の前部寄りの左側の側縁部に前後方向に沿って複数設けられたロックレバー21の嵌合孔であり、符号36は、肘掛け90(
図1参照。)を取り付けるための取付け部である。
【0027】
また、ベースプレート26の中央領域26aのうちの、左右方向の略中央位置の後縁には、
図9,
図11,
図12に示すように、上方側に凹状に窪む窪み部31が設けられ、その窪み部31の底部に前後方向に沿って延出する所定長さのスリット32が形成されている。このスリット32には、座板13の下面に突設されてボス部24が摺動自在に挿入される。なお、図中符号32aは、スリット32の前端部に設けられ、組付け時にボス部24の先端の係止フランジ25が挿入される拡幅部である。座板13に突設されたボス部24がベースプレート26のスリット32内に配置され、ボス部24の先端の係止フランジ25が窪み部31の下方に配置されると、座板13の下面や係止フランジ25がベースプレート26と当接することによって座板13の上下方向の変位が規制される。この実施形態においては、ボス部24と係止フランジ25、スリット32等が、座板13の両側の反り許容部40の略中間領域において、座受部材5に対する座板13の上下方向の変位を規制される変位規制部を構成している。
【0028】
一方、下部プレート27は、
図6に示すように、上面視(下面視)では、前部側の二隅が丸みを帯びた略正方形状とされ、ベースプレート26の中央領域の下面に重ねた状態で溶接固定されている。下部プレート27の前縁部と左右の側縁部にかけては、下方側に断面略U字状に屈曲した補強壁33が連続して設けられている。この補強壁33は、ベースプレート26の中央領域26aの周縁の剛性を高め、かつ座受部材5が支基3上に取り付けられたときに、支基3の上部側の前縁部と両側の側縁部の外側を覆うようになっている。また、下部プレート27は、ベースプレート26の下面に重ねられた状態において、ベースプレート26の後縁側の窪み部31の下方を覆うようになっている。
【0029】
この椅子1に着座する着座者が支基3や背凭れ部6に対する座体4の前後位置を調整する場合には、着座者が座体4の左側部の解除操作ノブ22を引き上げて座体4の前後方向のロックを解除し、その状態で座体4を座受部材5に対して適正な前後位置に調整する。このとき、座受部材5に対する座体4の前後移動は、座体4の前部側の側縁部の係合溝19内を座受部材5側の外向きフランジ29が相対移動(摺動)し、かつ、座体4の後部下面に突設されたボス部24が座受部材5の後縁のスリット32内を相対移動することによって行われる。こうして、座体4の前後位置を適正位置に調整した後に、着座者が解除操作ノブ22の把持を解除すると、ロックレバー21が付勢スプリングの力を受けて初期位置に戻り、ロックレバー21の結合爪が座受部材5の左側部の対応する嵌合孔35に嵌合する。この結果、座体4の前後位置は適正位置で固定される。
【0030】
この状態から椅子1の座体4に着座者が着座すると、着座者の荷重は、座本体14を通して合成樹脂製の座板13に入力される。こうして座板13に上方から荷重が入力されると、
図8に示すように、その荷重は座板13の左右の側縁の係合溝19部分(座板13の下面)で座受部材5の左右の外向きフランジ29によって主に支持される。このとき、係合溝19と外向きフランジ29との係合によって上下方向の変位を拘束されている座板13の前後方向の中央部付近から前端側にわたる領域は、上方からの荷重を受けて中央領域13aが下方に僅かに撓み変形する。また、このとき着座者の荷重が、座板13の係合溝19と座受部材5の外向きフランジ29との係合部よりも後方側領域に作用すると、上方変位が座受部材5によって規制されていない座板13の後方側の左右両縁の反り許容部40が
図9中の矢印で示すように上方側に反り変形する。この結果、座板13の後方側の左右両縁(反り許容部40)が着座者の臀部の左右の側部に近接するように迫り上がり、着座者の臀部が側方から包み込むように保持されるようになる。
【0031】
また、この椅子1において、座板13は、前後方向の中央部付近から前端側にわたる領域が、左右の側縁の係合溝19と座受部材5の外向きフランジ29とで係合することにより、上下方向の変位を規制されているため、着座者の着座姿勢が変化したり、座体4に偏った荷重が作用したりすることがあっても座受部材5からの座体4の脱落を確実に防止することができる。
特に、この実施形態においては、座板13の後縁部側の中央において、ボス部24に設けられた係止フランジ25が座受部材5側のスリット32の下面側の縁部に当接可能とされているため、座板13の後縁部側の中央の浮き上がりも、ボス部24や係止フランジ25、スリット32等から成る変位規制部によって確実に規制することができる。また、この実施形態の場合、座板13の左右の係合溝19と座受部材5の外向きフランジ29との係合のみによって座板13の上下方向の変位を規制する場合に比較して、座板13の上下方向の変位を規制する部位間の距離が短くなるため、座板13のガタつきをより効果的に抑制することができる。
なお、座板13の後縁部側の中央の上下方向の変位を規制するボス部24や係止フランジ25、スリット32等は省略することも可能である。
【0032】
また、この実施形態の椅子1の場合、座受部材5には、座板13の係合溝19よりも後方側の下面に対峙する小フランジ34が設けられているため、着座者の着座姿勢の変化等によって座板13の後縁部側の一部に荷重が偏って作用することがあっても、座板13の後縁部の部分的な沈み込みを小フランジ34によって抑制することができる。特に、この実施形態の場合、小フランジ34は起立壁28の上端に設けられているため、座板13の沈み込み荷重をより剛的に支えることができる。
【0033】
また、この実施形態においては、前後方向に沿って延出して左右方向の内側に開口する係合溝19が、座板13の左右の縁部に設けられるとともに、座受部材5の左右の縁部に、係合溝19に係合される突条である外向きフランジ29が設けられ、これらの係合溝19と外向きフランジ29とによって座板13側の拘束支持部と座受部材5側の被支持部が構成されているため、係合溝19に前後方向から外向きフランジ29を係合させることにより、座板13側の拘束支持部と座受部材5側の被支持部とを容易に組み付けることができる、という利点がある。
【0034】
さらに、この実施形態の場合、座板13の左右の係合溝19に座受部材5の左右の外向きフランジ29が挿入係合され、これらの係合部を介して座板13が座受部材5に対して前後方向に位置調整可能にされているため、座板13を前後のいずれの位置に調整したときにも、係合溝19と外向きフランジ29との係合によって座板13の上下方向の変位を確実に規制することができる。
【0035】
つづいて、
図13に示す第2の実施形態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、第1の実施形態と共通部分に同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
図13は、座体104の座板113部分の下面図である。この実施形態の椅子は、第1の実施形態とは座板113の構造のみが異なり、その他の部分は第1の実施形態と同様とされている。
座板113の左右の両縁部には、第1の実施形態と同様に係合溝19が設けられ、座板113の左右の各側縁部の係合溝119よりも後方側の反り許容部140(傾斜領域113b)に、撓み助長のための構造が設けられている。座板113の下面には、第1の実施形態と同様に前後方向に沿って延出する複数の補強リブ23…が等間隔に設けられ、反り許容部140(傾斜領域113b)の側端部と、左右の反り許容部140の間の領域(中央領域113a)の一部には補強リブ23…のない部分が設けられている。
【0036】
座板113の反り許容部140(傾斜領域113b)は、前記の複数の補強リブ23…と、隣接する補強リブ23,23間の一般面に間欠的に形成された複数の肉抜き孔50…と、を備えている。この実施形態の場合、各肉抜き孔50は、前後方向に長い長孔状に形成されている。
この座板113の反り許容部140は、前後方向に沿う複数の補強リブ23…と、隣接する補強リブ23,23間に配置される肉抜き孔50と、を備えることから、前後方向の剛性は補強リブ23によって高く維持され、左右方向の剛性は肉抜き孔50…によって弱められている。この実施形態の反り許容部140は、座板113の前後方向の剛性を維持したまま左右方向の曲げ剛性を低くする指向性を有する撓み助長構造を採用している。
【0037】
この実施形態の椅子は、座板113の反り許容部140に複数の肉抜き孔50…が設けられ、それによって反り許容部140の面方向の撓み変形が容易になっているため、着座者の荷重が座板113の係合溝19よりも後方側領域に作用したときにおける、反り許容部140の反り変形をより確実に得ることができる。
【0038】
特に、この実施形態の椅子においては、座板113の反り許容部140が、前後方向に延出する複数の補強リブ23…と、隣接する補強リブ23,23間の一般面に間欠的に形成された複数の肉抜き孔50…と、を備えた構成とされているため、着座者の荷重が座板113の係合溝19よりも後方側領域に作用したときに、反り許容部140の前後方向の大きな撓み変形を招くことなく左右方向の反り変形を促進させることができる。したがって、この実施形態の椅子においては、座体の着座安定性をより高めることができる。
【0039】
図14,
図15は、第3の実施形態を示す座体204の座板113部分の下面図と断面図である。
この実施形態の椅子は、基本的な構成は第2の実施形態の椅子と同様であるが、座体204に形成される肉抜き孔50…,50Aの数と位置が第2の実施形態のものと若干異なっている。
即ち、第2の実施形態の座体104は、座板113の係合溝19よりも後部領域のうちの左右の傾斜領域113bの隣接する補強リブ23,23間のみに肉抜き孔50が形成されていたが、この第3の実施形態の座体204は、座板213の係合溝19よりも後部領域のうちの左右の傾斜領域213bの隣接する補強リブ23,23間の一般面に複数の肉抜き孔50が形成され、さらに、中央領域213aの左右の一部にも複数の肉抜き孔50A…が形成されている。中央領域213aに設けられる肉抜き孔50A…は、その一部は補強リブ23の存在する部分において、隣接する補強リブ23,23間に配置されているが、残余の多くは補強リブ23の存在しない領域に配置されている。
中央領域213aの肉抜き孔50Aは、傾斜領域213bの肉抜き孔50と同様に長孔状に形成されているが、その孔幅は、傾斜領域213bの肉抜き孔50の孔幅よりも狭く設定されている。また、中央領域213aの複数の肉抜き孔50A…は、傾斜領域213bの肉抜き孔50…と同様に前後方向に沿って間欠的に配置されている。
【0040】
この第3の実施形態の椅子は、第2の実施形態と同様の基本的な効果を得ることができるが、座板213の中央領域213aの一部に跨るように複数の肉抜き孔50A…が設けられているため、着座者が座体204に着座したときにおける反り許容部240の反り変形をより確実で自然なものとすることができる。
【0041】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の各実施形態においては、座板の後縁部の反り許容部に複数の肉抜き孔を形成することにより、反り許容部の面方向の撓み変形が容易になる構造としているが、反り許容部は座板の板厚を部分的に薄くしたり、補強リブの高さを低くしたりすることにより、反り許容部の面方向の撓み変形を容易にすることも可能である。
また、上記の各実施形態のように座板に肉抜き孔を形成する場合には、その肉抜き孔の形成位置や長さ、間隔等については、撓み容易性(可撓性)と強度とのバランスに鑑みて、適宜選択可能である。また、上記の実施形態においては、座板の両縁部に左右方向の内向きに開口する係合溝を形成したが、座板の両縁部に左右方向の外向きに開口するように係合溝を形成するようにしても良い。さらに、係合溝は座受部材側に設けるようにしても良い。